車両の乗員保護装置
【課題】車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れを確実に抑制することのできる車両の乗員保護装置を提供する。
【解決手段】車両の乗員保護装置は、前席(運転席)の乗員(運転者)における右足Frの踵Phが載せられる踵載せ部25と、足先Ptが載せられる足先載せ部(アクセルペダル)とが前席の前方に設けられた車両に適用される。この乗員保護装置は、車両の前面衝突に際し、踵載せ部25を押し上げる押上げ部(傾斜押上げ部47)と、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出して、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部55とを備える。さらに、足受け止め部55の乗員側の表面27Aは、踵載せ部25の乗員側の表面25Aに連続して形成されている。
【解決手段】車両の乗員保護装置は、前席(運転席)の乗員(運転者)における右足Frの踵Phが載せられる踵載せ部25と、足先Ptが載せられる足先載せ部(アクセルペダル)とが前席の前方に設けられた車両に適用される。この乗員保護装置は、車両の前面衝突に際し、踵載せ部25を押し上げる押上げ部(傾斜押上げ部47)と、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出して、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部55とを備える。さらに、足受け止め部55の乗員側の表面27Aは、踵載せ部25の乗員側の表面25Aに連続して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前面衝突時に前席の乗員の足首を背屈や捩れから保護する車両の乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前席(運転席)の前方にはトーボードが設けられるとともに、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の各種操作ペダル、さらにはフットレストが配置されている。そして、車両の走行時には乗員(運転者、助手席の乗員等)は、上記各種ペダル、フットレスト及びトーボードの少なくとも1つを足先載せ部とし、ここに足先を載せている。また、乗員は足の踵を、前席前方の車両フロア上のフロアカーペットに載せている。この状態で車両が前面衝突し、その衝撃により上記足先載せ部が車両後方側へ移動した場合、乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメントが作用して、足首に背屈(足首の角度が狭くなる現象)を生じさせることがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1及び特許文献2には、車両フロア及びフロアカーペット間にエアバッグを配設し、車両の前面衝突に際し、エアバッグを膨張用ガスによって膨張させるようにした乗員保護装置が記載されている。この乗員保護装置では、エアバッグによって乗員の踵を押上げて上記前後方向のモーメントを低減し、足首の背屈を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2000−289562号公報
【特許文献2】特表2003−526565号公報
【特許文献3】特開2006−248358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前面衝突時の衝撃により足先載せ部が車両後方側へ移動した場合には、足に対し、踵を支点とする上記前後方向のモーメントのほかに車幅方向のモーメントが作用することがある。後者のモーメントは、足首が車幅方向に捩れる現象(他方の足に近づく側へ捩れる現象は「内反」と呼ばれ、他方の足から遠ざかる側へ捩れる現象は「外反」と呼ばれる)を引き起こす一因となる。
【0005】
この点、上記特許文献1及び特許文献2に記載された乗員保護装置では、フロアカーペットにおいて踵が載せられた箇所を車両フロアに対し略平行に押し上げているにすぎず、上記車幅方向のモーメントについての対策は何ら講じられていない。そのため、上記乗員保護装置では、足首の背屈を抑制できるものの、内反、外反等の捩れを抑制することができない。
【0006】
なお、特許文献3には、操作ペダルの前方近傍に脚部保護構造体を設けた乗員保護装置が記載されている。脚部保護構造体には、ペダルアームと当接したときに足先を側方から支持する支持部が設けられている。この乗員保護装置によれば、足先載せ部の車両後方側への移動に伴い足首が車幅方向へ捩れようとしたとき、足先が支持部によって側方から支持される。その結果、足首の過度の捩れが抑制され、もって足首への衝撃が低減される。
【0007】
そのため、この特許文献3の技術を上記特許文献1又は特許文献2に適用することで、足首の背屈及び捩れの抑制を図ることも考えられる。しかしながら、この組み合わせの技術では、前面衝突前には操作ペダルから前方へ大きく離れている支持部が、前面衝突時の衝撃により操作ペダルに近づくにすぎない。支持部は操作ペダルに最も近づいたときでも、その操作ペダルの側方近傍に位置するにとどまる。そのため、上記組み合わせの技術は、支持部が足の外縁部分のみと接触することをもって、車幅方向のモーメントを受け止めることとなり、これでは足首の捩れを十分抑制することが難しい。特に、特許文献3における第3実施形態では、前面衝突時に操作ペダルと支持部との間に比較的大きな隙間が生ずる。そのため、足の外縁部分がこの隙間に入り込んで足首が捩れる現象が起こりやすい。
【0008】
さらに、足首の捩れは、踵から足先までの領域において生ずるものであるが、上記支持部は、足先を車幅方向についての一方から支持するにとどまり、踵を支持するものではない。そのため、足のうち足先においてのみ車幅方向のモーメントを受け止めることとなるため、同モーメントを充分受け止めることができず、足首の捩れを意図するほど抑制できないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れを確実に抑制することのできる車両の乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、乗員の足の踵が載せられる踵載せ部と、同足の足先が載せられる足先載せ部とが前席の前方に設けられた車両に適用されるものであり、前記車両の前面衝突に際し、前記踵載せ部を押し上げる押上げ部と、前記車両の前面衝突に際し、前記押上げ部にて押し上げられた前記踵載せ部よりも高い位置まで突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられた前記足の少なくとも踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部とを備え、前記足受け止め部の前記乗員側の表面が、前記踵載せ部の前記乗員側の表面に連続して形成されていることを要旨とする。
【0011】
ここで、足先載せ部は前席の乗員、例えば運転席に着座した運転者等が足先を載せる箇所である。この足先載せ部の対象となる部材には、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等、乗員(運転者)が車両の運転に際し足で操作する操作ペダル類が含まれるほか、フットレスト、さらにはトーボードも含まれる。
【0012】
車両の前面衝突時には、その衝撃により、前席の前方の足先載せ部が車両後方へ移動し、踵載せ部に踵を載せ、かつ足先載せ部に足先を載せた乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメント、及び車幅方向のモーメントが作用する場合がある。これらのモーメントは、乗員の足首に背屈や捩れを引き起こす原因となる。
【0013】
しかし、請求項1に記載の発明では、車両の前面衝突時には、押上げ部により、踵載せ部とその上の足の踵とが押し上げられる。そのため、上記のように足先載せ部が車両後方へ移動して乗員の足に対し踵を支点とする前後方向のモーメントが作用しても、足首の角度が狭くなる現象(背屈)が生じにくい。
【0014】
一方、車両の前面衝突時には、足受け止め部が、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部よりも高い位置まで突出する。この足受け止め部は、踵載せ部とともに押し上げられた足の少なくとも踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める。ここで、踵は、車幅方向のモーメントが作用して足首が捩れる際の支点となる箇所である。少なくともこの踵において車幅方向のモーメントが受け止められることで、単に足先のみにおいて受け止める場合よりもモーメントが効率よく受け止められる。そのため、足に対し、踵を支点とする車幅方向のモーメントが作用しても、足首の捩れを抑制する効果が充分得られる。
【0015】
また、足受け止め部の乗員側の表面が、踵載せ部の乗員側の表面に連続して形成されていることから、両表面間に隙間が生じない。そのため、足の外縁部分が隙間に入り込んで足首が捩れる現象が起こらない。
【0016】
このように、請求項1に記載の発明によれば、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れが確実に抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、前記踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように前記踵載せ部を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部からなり、前記足受け止め部は、前記車両の前面衝突に際し、傾斜状態の前記踵載せ部における最下部近傍から上方へ突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられる前記足の少なくとも前記踵を受け止めるものであることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、傾斜押上げ部により踵載せ部が傾斜状態で押し上げられる。これに伴い、踵載せ部上の乗員の踵も押し上げられる。そのため、足先載せ部が車両後方へ移動して乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメントが作用しても、足首に背屈が生じにくい。
【0018】
また、上記傾斜状態では、踵載せ部は、踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くされる。この踵載せ部の押上げに伴う傾斜により、同踵載せ部上の足には、踵を支点として踵載せ部の低い側へ向かうモーメントが作用する。このように、足に対しては、車幅方向の特定の一方向にのみ向かうモーメントが作用する。このモーメントにより足は、踵を支点として踵載せ部の低い側へ強制的に傾かせられる。足が踵を支点として上記とは逆方向(足受け止め部から遠ざかる側)へ傾くことはない。
【0019】
一方、車両の前面衝突時には、上記傾斜状態の踵載せ部における最下部近傍から足受け止め部が上方へ突出する。この足受け止め部が、上記のように押し上げられて傾かせられる踵載せ部上の足の少なくとも踵を、その傾かせられた側から受け止める。その結果、足首の捩れを抑制する効果が確実に得られる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられるエアバッグ内であって前記踵載せ部よりも下方の空間により構成されており、前記空間の車幅方向についての複数箇所には、前記踵から前記一方側へ離れるほど高さが低くなるように前記傾斜押上げ部の膨張を規制するテザーが設けられており、前記踵載せ部は、前記膨張の規制された前記傾斜押上げ部により傾斜させられることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によってエアバッグが膨張させられる。これに伴い、エアバッグ内であって踵載せ部よりも下方の空間によって構成される傾斜押上げ部も膨張し、踵載せ部が迅速に押し上げられる。この際、傾斜押上げ部の膨張がテザーによって、踵から車幅方向の一方側へ離れるほど高さが低くなるように規制される。この膨張の規制された傾斜押上げ部により、踵載せ部は車両の前面衝突に際し、踵から車幅方向の一方側へ離れるほど低くなるように傾斜させられる。このように、(i)膨張流体によって膨張するエアバッグ内の空間によって傾斜押上げ部を構成し、(ii)複数のテザーによって傾斜押上げ部の膨張を規制する、といった簡単な構成でありながら、踵載せ部を迅速に傾斜状態にすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記車両の前面衝突に際し、膨張流体により膨張させられるエアバッグにより構成されていることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によってエアバッグが膨張させられる。これに伴い、少なくとも一部がエアバッグにより構成される足受け止め部は、傾斜状態の踵載せ部における最下部近傍から上方へ迅速に突出して、傾斜状態の踵載せ部上の足の少なくとも踵を受け止める。このように、エアバッグを足受け止め部の少なくとも一部とするといった簡単な構成でありながら、傾斜状態の踵載せ部上の足の少なくとも踵を足受け止め部によって迅速に受け止めることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記足受け止め部は、上下方向に並設され、かつ前記膨張流体によりそれぞれ膨張させられる複数の膨張部を含むことを要旨とする。
【0025】
上記の構成によれば、車両の前面衝突に際し、エアバッグに膨張流体が供給されて、上下方向に並設された複数の膨張部がそれぞれ膨張する。全部の膨張部が膨張することで、各膨張部の膨張時の高さが僅かでも足受け止め部は全体として高くなり、乗員の足のより広い領域を足受け止め部によって受け止めることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記足先載せ部は、ブレーキペダルを基準として車幅方向の一方側に配設されており、前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、車幅方向について前記ブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させた状態で押上げることを要旨とする。
【0027】
車両においては、通常、ブレーキペダルの車幅方向の一方側にアクセルペダルが配置される。これに加え、車幅方向の他方側にフットレストやクラッチペダルが配置される車両もある。これらのアクセルペダル、フットレスト、クラッチペダル等が足先載せ部とされた場合には、車幅方向についてブレーキペダルに近づくほど低くなるように踵載せ部を傾斜させることが難しい。踵載せ部の最下部近傍に設けられる足受け止め部がブレーキペダルと干渉するおそれがあるからである。
【0028】
一方、踵載せ部を挟んでブレーキペダルとは反対側、すなわち、踵載せ部に対し、車幅方向についてブレーキペダルから遠ざかる側には、通常、足受け止め部と干渉するものは設けられていない。そのため、請求項6に記載の発明によるように、傾斜押上げ部により、車幅方向についてブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させることで、踵載せ部の最下部近傍に設けられる足受け止め部を、ブレーキペダルを含む他の部材との干渉を招くことなく作動させることができる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられた状態の主エアバッグであって前記踵載せ部よりも下方の部分により構成されており、前記主エアバッグにおいて前記踵載せ部の車幅方向近傍には、前記膨張流体を同主エアバッグの外部へ流出するための流出口が設けられており、前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記流出口から流出する前記膨張流体により膨張させられる補助エアバッグにより構成されていることを要旨とする。
【0030】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によって主エアバッグが膨張させられる。主エアバッグにおいて踵載せ部よりも下方に位置する部分である押上げ部も膨張し、踵載せ部が迅速に押し上げられる。これに伴い、踵載せ部上の乗員の足の踵も押し上げられる。
【0031】
また、主エアバッグに供給された膨張流体の一部は、同主エアバッグにおいて踵載せ部の車幅方向近傍に設けられた流出口を通じて主エアバッグの外部へ流出する。この流出した膨張流体により補助エアバッグが膨張させられ、少なくとも一部が補助エアバッグによって構成された足受け止め部が、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部よりも高い位置まで突出する。踵載せ部とともに押し上げられた踵がこの足受け止め部により受け止められる。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグの外部に収容されていることを要旨とする。
【0033】
上記の構成によれば、補助エアバッグは、膨張流体による膨張前の段階から主エアバッグの外部に位置している。そのため、補助エアバッグは自身の膨張の過程で、流出口を通って主エアバッグの外部へ飛び出す必要がなく、その分、補助エアバッグの早期の膨張が可能となる。
【0034】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグ内に収容されており、前記車両の前面衝突に際し、前記膨張流体により前記流出口を通じて前記主エアバッグから飛び出して膨張するものであることを要旨とする。
【0035】
上記の構成によれば、車両の非前面衝突時には、主エアバッグの内部空間の一部が補助エアバッグの配置のためのスペースとして利用され、補助エアバッグが主エアバッグの内部に収容されている。そのため、主エアバッグ及び補助エアバッグの両者の占める空間が小さくてすみ、非前面衝突時には、これらの主エアバッグや補助エアバッグは足先載せ部や同足先載せ部に載せた足先の邪魔となりにくい。
【0036】
車両の前面衝突時には、膨張流体によって主エアバッグが膨張させられる過程で、その膨張流体の圧力が補助エアバッグに加わる。この圧力により補助エアバッグが流出口を通じて主エアバッグの外部へ押し出される。さらに、主エアバッグ内の膨張流体の一部が流出口から流出して補助エアバッグ内に流入する。この流入する膨張流体によって補助エアバッグが膨張する。ここで、流出口として、幅の狭いスリット状をなすものを採用すれば、流出口及びその近傍での補助エアバッグの膨張厚みが流出口によって規制される。従って、狭い空間でも補助エアバッグの膨張が可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の車両の乗員保護装置によれば、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方(車両前方)として説明し、車両の後進方向を後方(車両後方)として説明する。また、以下の記載における左右方向は、車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
【0039】
図1及び図5の少なくとも一方に示すように、車両のボディのうち、車室11の底部を構成する車両フロア上には、その車両フロアの上面形状に合わせて成形されたフロアカーペット13が敷設されている。なお、図5ではフロアカーペット13の図示が省略されている。また、車両フロア上の前部には、前席として運転席14及び助手席(図示略)が車幅方向に並設されている。運転席14は、運転者D(乗員)の下半身を下側から支えるシートクッション(座部)15と、シートクッション15の後端部に配置されて運転者Dの上半身を後ろ側から支えるシートバック(背もたれ部)16と、シートバック16上に配置されて運転者Dの頭部を後ろ側から支えるヘッドレスト17とを備えて構成されている。
【0040】
車室11内の前部には、メーター類やスイッチ類が組み込まれたインストルメントパネル18が設けられている。また、車室11内の運転席14の前方近傍には、車両の進行方向を任意に変えるための操舵装置が設けられている。操舵装置の一部は、運転者Dによる操作が行われる箇所であるステアリングホイール19によって構成されている。
【0041】
エンジンルーム(図示略)と車室11とは隔壁によって仕切られている。この隔壁のうち、インストルメントパネル18の下方に相当する箇所はトーボード21を構成している。インストルメントパネル18の下方であってトーボード21の後方近傍には、アクセルペダル22、ブレーキペダル23等の各種操作ペダルや、フットレスト24が配置されている(図5参照)。これらの部材の位置関係は次のようになっている。ブレーキペダル23を基準とし、アクセルペダル22が車幅方向外側(車外側)に位置し、フットレスト24が車幅方向内側(車内側)に位置している。このような配置のもと、第1実施形態では、アクセルペダル22は、運転席14に着座した運転者D(図1参照)により右足Frの足先Ptが乗せられる足先載せ部とされている。また、フットレスト24は、上記運転者Dにより左足Flの足先Ptが乗せられる足先載せ部とされている。
【0042】
上記フロアカーペット13において、アクセルペダル22の後方近傍部分は右足Fr用の踵載せ部25となっている。この踵載せ部25は、右足Frの足先Ptをアクセルペダル22の上に載せた運転者Dが踵Phを載せる箇所である。同様に、フロアカーペット13において、フットレスト24の後方近傍部分は左足Fl用の踵載せ部26となっている(図5参照)。この踵載せ部26は、左足Flの足先Ptをフットレスト24の上に載せた運転者Dが踵Phを載せる箇所である。
【0043】
なお、車室11内には、運転席14に着座した運転者Dを拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
車両には、前面衝突時に、前方から衝撃が加わってトーボード21及び上記足先載せ部(アクセルペダル22及びフットレスト24)が車両後方側へ移動した場合に、運転者Dの足首Paを背屈及び捩れから保護する乗員保護装置が装備されている。
【0044】
乗員保護装置は、膨張流体発生源としてのインフレータ30と、そのインフレータ30で発生される膨張流体としての膨張用ガスG(図6参照)が供給されて膨張するエアバッグ40とを備えている。これらのインフレータ30及びエアバッグ40は、車両フロアのうち運転席14よりも前側の箇所(以下「運転席用フロア41」という)上であって、その上のフロアカーペット13との間に配置されている。
【0045】
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、上記インフレータ30は長尺状をなしており、その軸線を車幅方向(図2の上下方向)に合致させた状態で、運転席用フロア41の後端部、より詳しくは運転席14(シートクッション15)の前端下方に配置されている。この箇所をインフレータ30の配置箇所としているのは、(i)インフレータ30が運転者Dの乗り降りや運転操作(特にペダル操作)の妨げになりにくい、(ii)見栄えを極力損なわない、といった条件を満たしているからである。インフレータ30にはブラケット31が設けられており、このブラケット31において、インフレータ30が図示しないボルト及びナットにより運転席用フロア41に固定されている。
【0046】
インフレータ30には、膨張用ガスGの生成態様の違いから複数のタイプがあるが、ここでは、パイロタイプと呼ばれるインフレータ30が用いられている。このタイプのインフレータ30の内部には、膨張用ガスGを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ30の車内側の箇所には、上記ガス発生剤にて発生された膨張用ガスGを噴出する複数のガス噴出孔32が設けられている。
【0047】
なお、インフレータ30として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧の膨張用ガスGの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0048】
一方、エアバッグ40は、図2及び図3の少なくとも一方に示すように、互いに上下に重ね合わされた一対の基布(ここでは、後述するテザー用の基布と区別するために外基布42A,42Bという)を備えている。図2では、下側の外基布42Bの図示のために、上側の外基布42Aの一部が破断された状態で図示されている。各外基布42A,42Bは、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に変形することのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布等によって形成されている。上下の両外基布42A,42Bは、運転席用フロア41(図1参照)の上面の略全体を覆う大きさ・形状を有している。
【0049】
なお、エアバッグ40は、上記のように2枚の外基布42A,42Bによって構成されるもののほか、1枚の外基布によって構成されるものであってもよい。この場合、所定形状をなす外基布が中央部分で二つに折られる。
【0050】
上記両外基布42A,42Bは、それらの周縁部等に設けられた周縁結合部43において気密状態で結合されている。第1実施形態では、周縁結合部43は、両外基布42A,42Bの主として周縁部を縫糸で縫合することにより構成されている。図2及び図3では、周縁結合部43は太い破線で示されている。ただし、図2中、上側の外基布42Aの一部を破断して図示した箇所では、周縁結合部43は二点鎖線で示されている。周縁結合部43は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって構成されてもよい。エアバッグ40内において上記周縁結合部43により囲まれた空間(図3において点の集まりで示した領域)が膨張用ガスGによって膨張されられる。従って、エアバッグ40が膨張したときの外形形状は概ね上記周縁結合部43によって決定される。
【0051】
図2及び図5の少なくとも一方に示すように、エアバッグ40においてアクセルペダル22の下方、ブレーキペダル23の下方、及びフットレスト24の下方となる箇所には、膨張用ガスGにより膨張しない非膨張部44〜46が設けられている。これらの非膨張部44〜46は、上記周縁結合部43の一部、すなわちアクセルペダル22、ブレーキペダル23及びフットレスト24に対応する箇所を、上下の両外基布42A,42Bの周縁部よりも内方(後方)へ入り込ませることによって形成されている。
【0052】
なお、非膨張部44〜46として、上下の両外基布42A,42Bにおいて足先載せ部に対応する箇所に切欠きを設けてもよい。この場合には、周縁結合部43に沿って切欠きを設ける。
【0053】
また、上述した「太い破線、二点鎖線を用いた周縁結合部43の図示」、及び「縫合に代えて接着剤を用いた接合」は、後述する内結合部67及び周縁結合部71についても同様である。
【0054】
図7(A),(B)及び図8(A),(B)の少なくとも1つに示すように、エアバッグ40内であって、上記右側の踵載せ部25よりも下方の空間Sは、車両の前面衝突に際し、踵載せ部25を押し上げる押上げ部となっている。より詳しくは、同空間Sは、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部47となっている。第1実施形態では、傾斜押上げ部47は、ブレーキペダル23を基準とし、これから車幅方向外側へ遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げるよう設定されている(図8(B)参照)。
【0055】
そのために、図4及び図8(A),(B)の少なくとも1つに示すように、上記空間Sには、それぞれ平面矩形状をなす上下一対の内基布48A,48Bが配置されている。内基布48A,48Bは、上記外基布42A,42Bと同様の素材によって形成されている。上側の内基布48Aはエアバッグ40の上側の外基布42Aに対し縫糸によって縫着されている。下側の内基布48Bは、エアバッグ40の下側の外基布42Bに対し縫糸によって縫着されている。これらの縫糸による上下の両縫着部49は、いずれも平面長円形をなしている(図4参照)。
【0056】
上下の両内基布48A,48Bは、上記縫着部49よりも車幅方向外側において縫糸によって互いに縫合されている。この縫糸による縫合部51は、車両前後方向に沿って延びる直線状をなしている。また、上下の両内基布48A,48Bは、上記縫着部49よりも車幅方向内側において縫糸によって互いに縫合されている。この縫糸による縫合部52は、車両前後方向に沿って延びる直線状をなしている。上下の両内基布48A,48Bにおいて、縫着部49と車幅方向内側の縫合部52とによって挟まれた部分は、傾斜押上げ部47の膨張高さを規制するテザー53となっている。同様に、上下の両内基布48A,48Bにおいて、縫着部49と車幅方向外側の縫合部51とによって挟まれた部分は、傾斜押上げ部47の膨張高さを規制するテザー54となっている。
【0057】
図8(A),(B)の少なくとも一方に示すように、非膨張状態のエアバッグ40において、縫着部49と車幅方向内側の縫合部52との間隔をD1とし、縫着部49と車幅方向外側の縫合部51との間隔をD2とすると、第1実施形態ではD1>D2となるように、両テザー53,54における各縫合部51,52の車幅方向の位置が設定されている。このように設定された両テザー53,54により、テザー53から車幅方向外側へ離れるほど低くなるように傾斜押上げ部47の膨張が規制される。テザー53により、傾斜押上げ部47の車幅方向内側部の高さは、「D1×2」に規制される。また、テザー54により、傾斜押上げ部47の車幅方向外側部の高さは、「D2×2」に規制される。
【0058】
エアバッグ40において、上記傾斜押上げ部47に対し車幅方向外側近傍となる箇所40Aは、足受け止め部55の一部を構成している。足受け止め部55の残部は、フロアカーペット13においてエアバッグ40の上記箇所40Aに接する箇所27によって構成されている。この箇所27の表面27Aは、足受け止め部55の運転者D側の表面を構成しており、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続している。このように、箇所27の表面27Aと、踵載せ部25の表面25Aとが連続していることから、両表面27A,25A間には隙間が生じていない。
【0059】
足受け止め部55の果たす機能は、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての一方(外側方)から受け止めることである。この機能実現のために、足受け止め部55は、車両の前面衝突に際し、傾斜状態の踵載せ部25における最下部56の近傍から上方へ、より詳しくは、傾斜押上げ部47によって押し上げられる踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。そして、エアバッグ40の非膨張時における足受け止め部55の車幅方向についての幅が充分広く設定されている(図4参照)。
【0060】
また、図2〜図4の少なくとも1つに示すように、エアバッグ40内において、上記車幅方向内側(左側)の踵載せ部26よりも下方の空間は、車両の前面衝突に際し、踵載せ部26を押し上げる押上げ部となっている。より詳しくは、同空間は、踵Phから車幅方向のいずれか一方側(第1実施形態では車幅方向内側)へ離れるほど低くなるように踵載せ部26を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部57となっている。第1実施形態では、傾斜押上げ部57は、ブレーキペダル23(図5参照)を基準とし、これから車幅方向内側へ遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げるよう設定されている。この傾斜状態は、ブレーキペダル23を挟んで上記傾斜押上げ部47による傾斜状態とは逆の関係となる。また、エアバッグ40において、上記傾斜押上げ部57に対し車幅方向内側近傍となる箇所40Bと、フロアカーペット13において上記箇所40Bに接する箇所(図示略)とによって、足受け止め部58が構成されている。
【0061】
フロアカーペット13における上記箇所の表面が、足受け止め部58の運転者D側の表面を構成し、踵載せ部26の運転者D側の表面に連続している点は、上述した足受け止め部55の表面27Aが踵載せ部25の表面25Aに連続している点と同様である。
【0062】
さらに、エアバッグ40の後部であって車幅方向中央部分には管状のガス供給部61が設けられている。このガス供給部61には、ガス噴出孔32を含むインフレータ30の一部(車内側の部分)が挿入されている。ガス供給部61は、その外側に配置された締結バンド等の締結具73によってインフレータ30に気密状態で締め付け固定されている。なお、インフレータ30は、その全体がエアバッグ40内に配置されてもよい。
【0063】
エアバッグ40において、上記ガス供給部61よりも前側には、膨張用ガスGの流入を遮断する一対のガス流入阻止部62,63が車幅方向に並べられた状態で設けられている。エアバッグ40内においてガス流入阻止部62よりも車幅方向外側の空間と、両ガス流入阻止部62,63間の空間とは、インフレータ30からの膨張用ガスGを主として傾斜押上げ部47及び足受け止め部55に導くためのガス流路64,65となっている。また、エアバッグ40内においてガス流入阻止部63よりも車幅方向内側の空間は、インフレータ30からの膨張用ガスGを主として傾斜押上げ部57及び足受け止め部58に導くためのガス流路66となっている。第1実施形態では、上記両外基布42A,42Bは、上記周縁結合部43よりも内側に設けられた無端状をなす一対の内結合部67により気密状態で結合されており、これらの内結合部67により各ガス流入阻止部62,63が構成されている。各内結合部67は、両外基布42A,42Bを縫糸で縫合することにより構成されている。なお、両外基布42A,42Bにおいて内結合部67により囲まれた箇所には開口が設けられてもよい。
【0064】
さらに、図6に示すように、上記ガス供給部61を含むエアバッグ40の後部内には、インナチューブ68が配置されている。インナチューブ68は、インフレータ30のガス噴出孔32から噴出された膨張用ガスGを各ガス流路64〜66に分配するガス分配部として機能する部材である。インナチューブ68は、上記エアバッグ40と同様、織布等からなる1枚又は2枚の基布を縫製することによって形成されている。図6では、1枚の基布69が中央部分で二つ折りされ、それらの周縁部に設けられた周縁結合部71によって袋状に結合されている。インナチューブ68において各ガス流路64〜66に対向する箇所には、導出口72が開口されている。そして、インナチューブ68は、上記締結具73によってガス供給部61とともにインフレータ30に気密状態で締め付け固定されている。
【0065】
なお、図2〜図4に示すように、エアバッグ40において膨張に関与しない複数箇所、例えば非膨張部44〜46、ガス流入阻止部62,63等には、同エアバッグ40を運転席用フロア41に固定する際に使用される取付孔74があけられている。各取付孔74にボルトが挿通され、そのボルトにナットが締め付けられることにより、エアバッグ40が運転席用フロア41に固定されている。
【0066】
乗員保護装置は、さらに衝撃センサ75及び制御装置76を備えている。衝撃センサ75は加速度センサ等からなり、車両に前方から加わる衝撃を検出する。制御装置76は、衝撃センサ75からの検出信号に基づきインフレータ30の作動を制御する。
【0067】
上記のようにして第1実施形態の乗員保護装置が構成されている。次に、この乗員保護装置の作用について説明する。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、傾斜押上げ部47、足受け止め部55等により右足Frを保護する作用についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、傾斜押上げ部57、足受け止め部58等により左足Flを保護する作用についても同様である。
【0068】
車両の走行時には、制御装置76からインフレータ30に対しては、これを作動させるための指令信号が出力されない。そのため、インフレータ30からは膨張用ガスGが噴出されず、エアバッグ40は膨張せず扁平な状態を維持する。このとき、運転者Dは、図5及び図7(A)の少なくとも一方に示すように、右足Frの足先Ptを足先載せ部(アクセルペダル22)に載せ、かつ踵Phをフロアカーペット13の踵載せ部25に載せている。
【0069】
車両の走行中に前面衝突が発生すると、図7(B)において実線で示すように、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動する場合がある。なお、同7(B)中の二点鎖線は、前面衝突が発生する前の各部の状態を示している。これらの移動に伴い、右足Frに対し、踵Phを支点とする前後方向のモーメント、及び車幅方向のモーメントが作用する場合がある。これらのモーメントは、右足Frの足首Paに背屈や捩れを引き起こす原因となる。
【0070】
一方、上記前面衝突により、車両に対し前方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ75によって検出されると、乗員保護装置では、その検出信号に基づき制御装置76からインフレータ30に対しこれを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ30ではガス発生剤により膨張用ガスGが生成される。この膨張用ガスGは、図6に示すように、ガス噴出孔32からインナチューブ68内へ噴出され、同インナチューブ68内を流れた後、各導出口72から出て3つのガス流路64〜66に分配される。
【0071】
各ガス流路64〜66を流れた膨張用ガスGの一部は、傾斜押上げ部47及び足受け止め部55に流入する。この膨張用ガスGにより、図7(B)及び図8(B)の少なくとも一方に示すように傾斜押上げ部47が膨張し、それに伴ってフロアカーペット13の踵載せ部25及びその上の右足Frの踵Phが迅速に押し上げられる。ただし、踵載せ部25の前側近傍に設けられた非膨張部44には膨張用ガスGが供給されず、同非膨張部44が膨張することはない。右足Frには、踵Ph又はその近傍部分に対してのみ上記傾斜押上げ部47の膨張による押し上げ力が踵載せ部25を通じて作用する。そのため、右足Frの足首Paが足首角度αを維持したまま押し上げられる。運転者Dの右足Frにおいて、踵Ph以外の箇所が直接押し上げられる現象は起こりにくい。従って、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動して、右足Frに対し踵Phを支点とする前後方向のモーメントが作用しても、上記足首角度αが狭くなる現象(足首Paの背屈)が起こりにくい。
【0072】
また、上記膨張用ガスGの流入による傾斜押上げ部47の膨張は、車幅方向についての複数箇所に設けられたテザー53,54によって、踵Phから車幅方向の一方側(外側)へ離れるほど高さが低くなるように規制される。この膨張の規制された傾斜押上げ部47により、踵載せ部25は、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向の上記一方側へ離れるほど低くなるように傾斜させられる。この踵載せ部25の傾斜により、その上の右足Frには、踵Phを支点として踵載せ部25の低い側へ向かうモーメントが作用する。このように右足Frに対しては、車幅方向の特定の一方向にのみ向かうモーメントが作用する。このモーメントにより右足Frは、踵Phを支点として踵載せ部25の低い側(車幅方向外側)へ強制的に傾かせられる。この右足Frの傾かせられる側は足受け止め部55に近づく側であり、右足Frが反対側(足受け止め部55から遠ざかる側)へ傾かせられることはない。
【0073】
一方、上記膨張用ガスGの流入により足受け止め部55が、上記傾斜状態の踵載せ部25における最下部56近傍から膨張して上方へ突出する。この突出は、足受け止め部55が、傾斜押上げ部47にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。この足受け止め部55は、上記のように踵載せ部25とともに押し上げられて傾かせられる踵載せ部25上の右足Frの少なくとも踵Phを、その傾かせられた側から受け止める。ここで、踵Phは、車幅方向のモーメントが作用して右足Frが捩れる際の支点となる箇所である。少なくともこの踵Phにおいて車幅方向のモーメントが受け止められることで、単に足先Ptのみにおいて受け止める場合よりもモーメントが効率よく受け止められる。さらに、足受け止め部55は、傾斜状態の踵載せ部25の最下部56近傍とそれよりも高い位置(ここでは踵Phよりも高い位置)との間に位置し、踵Phのみを受け止める場合や足先Ptのみを受け止める場合よりも、右足Frの広い領域を側方から受け止める。
【0074】
さらに、足受け止め部55の運転者D側の表面27Aが、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続して形成されていることから、両表面27A,25A間に隙間が生じない。そのため、特許文献3とは異なり、右足Frの外縁部分が隙間に入り込む現象が起こらない。
【0075】
ここで、エアバッグ40の膨張に際しては、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させることも考えられるが、実現困難である。これは、踵載せ部25の最下部56近傍に設けられる足受け止め部55がブレーキペダル23と干渉するおそれがあるからである。
【0076】
一方、踵載せ部25を挟んでブレーキペダル23とは反対側、すなわち、踵載せ部25に対し、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかる側には、通常、足受け止め部55と干渉するような部材は設けられていない。そのため、傾斜押上げ部47により、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させる第1実施形態では、足受け止め部55がブレーキペダル23を含む他の部材と干渉しない。
【0077】
なお、上述したエアバッグ40の膨張時には、同エアバッグ40は運転席用フロア41から浮き上がろうとする。しかし、エアバッグ40は、その複数箇所に設けられた取付孔74において運転席用フロア41に固定されている。そのため、これらの固定によりエアバッグ40の運転席用フロア41からの上記浮き上がりが抑制される。
【0078】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)乗員保護装置として、車両の前面衝突に際し踵載せ部25,26を押し上げる押上げ部(傾斜押上げ部47,57)と、その押し上げられた踵載せ部25,26よりも高い位置まで突出する足受け止め部55,58とを備えるものを用いている。そして、踵載せ部25,26とともに押し上げられる右足Fr及び左足Flの少なくとも踵Phを、足受け止め部55,58によって車幅方向についての一方側から受け止めるようにしている。さらに、足受け止め部55,58の運転者D側の表面27Aを、踵載せ部25,26の運転者D側の表面25Aに連続させている。そのため、特許文献1〜特許文献3にそれぞれ記載された乗員保護装置よりも、また、特許文献1又は特許文献2に特許文献3を組み合わせた乗員保護装置よりも、足首Paの背屈及び捩れを確実に抑制することができる。
【0079】
(2)押上げ部を傾斜押上げ部47,57によって構成し、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように、踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしている。そのため、運転者Dの右足Fr及び左足Flを傾斜押上げ部47,57により足受け止め部55,58側へ強制的に傾かせることができる。
【0080】
また、車両の前面衝突に際し、傾斜状態の踵載せ部25,26における最下部56の近傍から足受け止め部55,58を上方へ突出させている。そして、踵載せ部25,26とともに押し上げられて傾斜させられる上記右足Fr及び左足Flの少なくとも各踵Phを足受け止め部55,58によって受け止めるようにしている。そのため、強制的に傾かせられた右足Fr及び左足Flの足首Paが捩れるのを抑制することができる。
【0081】
このように車両の前面衝突時には、運転者Dの右足Fr及び左足Fl足を例外なく足受け止め部55,58によって受け止めることができ、足首Paの捩れを抑制する効果をより一層確実なものとすることができる。
【0082】
(3)膨張用ガスGにより膨張させられるエアバッグ40内の踵載せ部25,26よりも下方の空間Sにより、上記傾斜押上げ部47,57を構成している。上記空間Sの車幅方向についての複数箇所に、踵Phから車幅方向の一方側へ離れるほど高さが低くなるように傾斜押上げ部47,57の膨張を規制するテザー53,54を設けている。そして、これらのテザー53,54により膨張の規制された上記傾斜押上げ部47,57によって踵載せ部25,26を傾斜させるようにしている。
【0083】
このように、(i)膨張用ガスGによって膨張するエアバッグ40を用い、その一部(内部の空間S)を傾斜押上げ部47,57とする、(ii)複数のテザー53,54によって傾斜押上げ部47,57の膨張を規制する、といった簡単な構成でありながら、踵載せ部25,26を迅速に傾斜状態にすることができる。
【0084】
(4)車両の前面衝突に際し、膨張用ガスGにより膨張させられるエアバッグ40の一部(箇所40A)と、フロアカーペット13において上記一部(箇所40A)に接する箇所27とにより足受け止め部55,58を構成している。このような簡単な構成でありながら、足受け止め部55,58を、傾斜状態の踵載せ部25,26における最下部56近傍から膨張により上方へ迅速に突出させることができ、傾斜状態の踵載せ部25,26上の右足Fr及び左足Flの少なくとも各踵Phを足受け止め部55,58によって迅速に受け止めることができる。
【0085】
(5)ブレーキペダル23を基準として車幅方向両側に配設されたアクセルペダル22及びフットレスト24を足先載せ部としている。そして、傾斜押上げ部47,57により、車両の前面衝突に際し、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるようにしている。そのため、踵載せ部25,26の最下部56近傍に設けられる足受け止め部55,58を、ブレーキペダル23を含む他の部材との干渉を招くことなく作動(膨張)させることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。
第2実施形態の第1実施形態との大きな相違点は、足受け止め部55を、上下方向に並設された一対の膨張部81,82によって構成し、車両の前面衝突に際しこれらの膨張部81,82を膨張用ガスGによって膨張させるようにしている点である。
【0087】
この際、単一のインフレータ30からの膨張用ガスGによって両膨張部81,82を膨張させる場合には、両膨張部81,82を相互に連通させる。例えば図10に示すように、各膨張部81,82の車両前端部に連通箇所84を設定してもよい。また、この場合には、上下に隣り合う膨張部81,82を縫着等の手段によって連結する。図9中の符号83は、縫糸による縫着部を示している。
【0088】
このようにすれば、車両の前面衝突に際し、エアバッグ40に膨張用ガスGが供給されて、上下方向に並設された一対の膨張部81,82がそれぞれ膨張する。足受け止め部55の運転席用フロア41からの概略高さは、膨張部82の高さに膨張部81の高さを加えたものとなり、第1実施形態よりも高くなる。
【0089】
なお、図示はしないが、足受け止め部58についても上記と同様の変更が可能である。
従って、第2実施形態によれば上述した(1)〜(5)と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
【0090】
(6)上下方向に並設され、かつ膨張用ガスGによりそれぞれ膨張させられる一対の膨張部81,82によって足受け止め部55,58の少なくとも一部を構成している。このため、各膨張部81,82の膨張時の高さが僅かでも足受け止め部55,58全体の高さを高くでき、運転者Dの右足Fr及び左足Flのより広い領域を車幅方向についての一方から足受け止め部55,58によって受け止めることができる。
【0091】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図12及び図13を参照し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。図12及び図13(A)は乗員保護装置の非作動時の状態を示し、図13(B)は作動時の状態を示している。
【0092】
運転席用フロア41とフロアカーペット13との間には、主エアバッグ85が配置されている。主エアバッグ85は、第1及び第2実施形態のエアバッグ40に相当するものであり、上側の基布86Aと、下側の基布86Bとを重ね合わせ、それらの周縁部を周縁結合部43によって結合させることで形成されている。主エアバッグ85は、インフレータ30から噴出された膨張用ガスGが供給されることで膨張させられる(図13(B)参照)。主エアバッグ85内であって、上記踵載せ部25よりも下方の空間は、車両の前面衝突に際し膨張用ガスGによって膨張させられることで、フロアカーペット13の踵載せ部25を略水平状態で押し上げる押上げ部87となっている。
【0093】
主エアバッグ85の上側の基布86Aにおいて、踵載せ部25の車幅方向外側近傍となる箇所には、膨張用ガスGを同主エアバッグ85の外部へ流出するための流出口88が設けられている。第3実施形態では、上記箇所に前後方向に延びるスリットが入れられており、このスリットによって流出口88が構成されている。
【0094】
フロアカーペット13と主エアバッグ85との間において踵載せ部25の車幅方向外側近傍となる箇所には、膨張用ガスGの流入口90を下端に有する補助エアバッグ89が収容されている。この収容に際し、補助エアバッグ89は、自身の流入口90を下側に位置させた状態で配置されている(図13(A)参照)。補助エアバッグ89における流入口90の周縁部は、主エアバッグ85の上側の基布86Aに対し、上記流出口88の周りで結合されている。ここでは、補助エアバッグ89の周縁部が主エアバッグ85に対し縫糸により縫着されている。図12及び図13中の符号89Aは、補助エアバッグ89の主エアバッグ85に対する縫着部を示している。補助エアバッグ89は、流入口90から流入する膨張用ガスGにより膨張する(図13(B)参照)。膨張状態の補助エアバッグ89は車幅方向に薄く、前後方向及び上下方向に細長い形状となる。なお、補助エアバッグ89は、膨張前には折り畳まれた状態で収容されてもよいし、折り畳まれない状態で収容されてもよい。
【0095】
そして、上記膨張状態の補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接する箇所91とによって足受け止め部92が構成されている。この足受け止め部92は、車両の前面衝突に際し、押上げ部87にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出して、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての外側方から受け止める。
【0096】
上記箇所91の表面91Aは、足受け止め部92の運転者D側の表面を構成しており、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続している。この連続形成により、両表面91A,表面25A間には隙間が生じていない。
【0097】
上記押上げ部87及び足受け止め部55に対し、非膨張部45を挟んで略線対称の関係となる箇所には、左足Flの背屈及び外反を抑制するための押上げ部93及び足受け止め部94が設けられている。これらの左足Fl用の押上げ部93及び足受け止め部94は、上述した右足Fr用の押上げ部87及び足受け止め部92と同様の構造を有している。足受け止め部94は、上記補助エアバッグ89と同様の補助エアバッグ95と、フロアカーペット13においてこの補助エアバッグ95に接する箇所とによって構成されている。
【0098】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の箇所、部材等には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
次に、上記の構成を有する乗員保護装置の作用について説明する。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、押上げ部87、足受け止め部92等により右足Frを保護する作用についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、押上げ部93、足受け止め部94等により左足Flを保護する作用についても同様である。
【0099】
車両の走行時には、図12及び図13(A)に示すように、制御装置76からインフレータ30に対しては、これを作動させるための指令信号が出力されない。そのため、インフレータ30から主エアバッグ85へは膨張用ガスGが供給されず、従って主エアバッグ85は膨張せず扁平な状態を維持する。これに伴い、補助エアバッグ89へも膨張用ガスGが供給されず、同補助エアバッグ89は主エアバッグ85上で略扁平な収容状態を維持する。このため、フロアカーペット13は運転席用フロア41の上方近傍に位置している。このとき、運転者Dは、右足Frの足先Ptを足先載せ部(アクセルペダル22)に載せ、踵Phをフロアカーペット13の踵載せ部25に載せている。
【0100】
車両の走行中に前面衝突が発生すると、図7(B)において実線で示すように、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動する場合がある。
【0101】
一方、上記前面衝突により、車両に対し前方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ75によって検出されると、乗員保護装置では、その検出信号に基づき制御装置76からインフレータ30に対しこれを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ30から主エアバッグ85内へ膨張用ガスGが供給される。
【0102】
この供給された膨張用ガスGにより、主エアバッグ85では、少なくとも押上げ部87と、その押上げ部87の車幅方向についての外側方となる箇所の近傍部分とが膨張する。これに伴い、フロアカーペット13において、主エアバッグ85の膨張部分(押上げ部87及びその側方近傍部分)に接する箇所が、略水平状に押し上げられる。上記箇所には踵載せ部25が含まれていることから、その踵載せ部25上の右足Frも押し上げられる。
【0103】
右足Frには、踵Ph又はその近傍部分に対してのみ上記押上げ部87の膨張による押し上げ力が踵載せ部25を通じて作用する。そのため、右足Frの足首Paが足首角度αを維持したまま押し上げられる(図7(B)参照)。運転者Dの右足Frにおいて、踵Ph以外の箇所が直接押し上げられる現象は起こりにくい。従って、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動して、右足Frに対し前後方向のモーメントが作用しても、上記足首角度αが狭くなる現象(足首Paの背屈)が起こりにくい。
【0104】
また、主エアバッグ85に供給された膨張用ガスGの一部は、同主エアバッグ85の上側の基布86Aにおいて踵載せ部25の車幅方向外側方近傍に設けられた流出口88を通じて主エアバッグ85の外部へ流出する。この膨張用ガスGは、主エアバッグ85とフロアカーペット13との間に収容された補助エアバッグ89内に流入し、同補助エアバッグ89を膨張させる。この膨張により、補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接する箇所91とからなる足受け止め部92は、押上げ部87にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。
【0105】
ここで、補助エアバッグ89は、膨張用ガスGによる膨張前の段階から主エアバッグ85の外部(上側)に位置している。そのため、補助エアバッグ89は自身の膨張の過程で、流出口88を通って主エアバッグ85の外部へ飛び出す必要がなく、その分、補助エアバッグ89は早期に膨張する。
【0106】
そして、上記足受け止め部92により、踵載せ部25とともに押し上げられた右足Frの少なくとも踵Phが車幅方向についての一方(外側方)から受け止められる。この際、足受け止め部92は、踵載せ部25とそれよりも高い位置(踵Phよりも高い位置)との間に位置し、足先Ptのみを受け止める場合よりも、右足Frの広い領域を受け止める。そのため、足首Paの捩れが効率よく抑制される。
【0107】
さらに、足受け止め部92の運転者D側の表面91Aが、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続して形成されていることから、両表面91A,25A間に隙間が形成されることがなく、右足Frの外縁部分が隙間に入り込んで足首Paが捩れる現象が起こらない。
【0108】
従って、第3実施形態によると、上述した(1)に加え、次の効果が得られる。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、押上げ部87、足受け止め部92等による効果についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、押上げ部93、足受け止め部94等による効果についても同様である。
【0109】
(7)膨張状態の主エアバッグ85のうち、踵載せ部25よりも下方に位置する部分によって押上げ部87を構成している。また、主エアバッグ85において踵載せ部25の車幅方向近傍に、膨張用ガスGを主エアバッグ85の外部へ流出するための流出口88を設けるとともに、その膨張用ガスGにより膨張させられる補助エアバッグ89を設けている。そして、この補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接触する箇所91とによって足受け止め部92を構成している(図13(B)参照)。このため、押上げ部87及び足受け止め部92を成立させ、また、足受け止め部92の運転者D側の表面91Aを、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続させることができ、足首Paの背屈及び捩れを確実に抑制する上記(1)の効果を奏することができる。
【0110】
(8)補助エアバッグ89を、膨張用ガスGによる膨張前には主エアバッグ85の外部(上側)に収容している(図13(A)参照)。そのため、車両の前面衝突に際し、補助エアバッグ89を早期に膨張させて足受け止め部92を形成し、右足Frが捩られるのを確実に抑制することができる。
【0111】
(9)補助エアバッグ89を折り畳まれた状態にするにせよ、折り畳まれていない状態にするにせよ、その作業は主エアバッグ85の外部で行なうこととなる。広い空間での作業となるため、作業がしやすい。
【0112】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<第2実施形態に関する事項>
・膨張部が上下方向に並設され、かつ膨張用ガスGによりそれぞれ膨張させられることを条件に、同膨張部を3つ以上設けてもよい。
【0113】
・複数のインフレータを用い、各膨張部81,82に対し、異なるインフレータから膨張用ガスGを供給するようにしてもよい。この場合、インフレータの数を膨張部と同数又はそれ以下とする。同数の場合には、インフレータと膨張部とを1対1で対応付け、各インフレータから対応する膨張部に膨張用ガスGを供給する。
【0114】
<第3実施形態に関する事項>
・膨張用ガスGによる膨張前における補助エアバッグ89を第3実施形態とは異なる箇所に収容してもよい。例えば、図14(A)に示すように、主エアバッグ85の内部空間の一部を補助エアバッグ89の配置のためのスペースとして利用し、補助エアバッグ89を主エアバッグ85の内部に収容してもよい。
【0115】
このようにすると、車両の非前面衝突時には、主エアバッグ85及び補助エアバッグ89の設置スペースが小さくてすみ、これらの主エアバッグ85や補助エアバッグ89は足先載せ部(アクセルペダル22、フットレスト24等)やそれらの足先載せ部に載せた足先Ptの邪魔となりにくい。
【0116】
また、車両の前面衝突時には、膨張用ガスGによって主エアバッグ85が膨張させられる過程で、その膨張用ガスGの圧力が補助エアバッグ89に加わる。この圧力により、図14(B)に示すように、補助エアバッグ89が流出口88を通じて主エアバッグ85の外部へ押し出される。さらに、主エアバッグ85内の膨張用ガスGの一部が流出口88から流出して補助エアバッグ89内に流入する。この流入する膨張用ガスGによって補助エアバッグ89が膨張する。補助エアバッグ89が膨張した状態では、その裏表の関係が、同補助エアバッグ89が主エアバッグ85内に収容されているときとは逆になる。ここで、流出口88として、幅の狭いスリット状をなすものを採用すれば、流出口88及びその近傍での補助エアバッグ89の膨張厚みが流出口88によって規制される。従って、狭い空間でも補助エアバッグ89を膨張させることができる。
【0117】
・右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させてもよいし、これに加え又は代えて、左足Flの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させてもよい。図15及び図16は、右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させる例を示している。このように右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させると、右足Frが車幅方向のいずれの方向にも動きにくくなるため、背屈抑制効果を確保しつつ同右足Frの捩れをより一層確実に抑制することができる。
【0118】
・第3実施形態においてもまた、第1及び第2実施形態におけるのと同様に、押上げ部として傾斜押上げ部47,57を設ける。そして、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしてもよい。
【0119】
<第1及び第2実施形態に関して共通する事項>
・車両が、足受け止め部55,58のブレーキペダル23との干渉が問題とならない、又は干渉を別の手段で回避できるものである場合には、傾斜押上げ部47,57によって、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるようにしてもよい。
【0120】
これに関連して、傾斜押上げ部47,57の一方については、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるように、他方については車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしてもよい。
【0121】
・エアバッグ40とは異なる手段によって傾斜押上げ部47,57を構成してもよい。例えば、押上げ板及びアクチュエータの組み合わせを傾斜押上げ部とし、これを踵載せ部25,26の下側に配置する。そして、車両の前面衝突時には、アクチュエータを動作させて押上げ板を上昇させて踵載せ部25,26を傾斜状態で押し上げるようにしてもよい。
【0122】
・空間Sの車幅方向について3つ以上の箇所にテザーを設けてもよい。ただし、この場合には、踵Phから車幅方向の一方側へ離れるほど傾斜押上げ部47,57の高さが低くなるようにテザーの膨張規制に係る長さ(高さ)を設定する。
【0123】
<第1〜第3実施形態に関して共通する事項>
・クラッチペダルを装備した車両では、クラッチペダルを足先載せ部としてもよい。
・足先載せ部は前席の乗員が車両走行時に足先Ptを載せる箇所である。従って、運転席に限らず助手席にこういった箇所がある車両では、この箇所を足先載せ部とし、本発明の乗員保護装置を適用してもよい。この場合、例えば、トーボード21を足先載せ部としてもよい。
【0124】
・前記フロアカーペット13に代え、エアバッグ40(上側の外基布42A)の一部を踵載せ部25,26としてもよい。
・本発明の乗員保護装置は、フロアカーペットに代えて樹脂製等のシートが床に敷設された車両や、何ら床に敷設されない車両にも適用可能である。後者の場合、乗員保護装置は露出した状態で使用されてもよいし、またフロアマット等によって隠された状態で使用されてもよい。
【0125】
・エアバッグ40、主エアバッグ85、補助エアバッグ89,95は、上記膨張用ガスとは異なる種類の膨張流体によって膨張させられるものであってもよい。この場合には、膨張流体をエアバッグ40等に供給する膨張流体発生源として、上記インフレータ30とは異なるものを用いることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における車両の乗員保護装置について、その一部を破断して示す概略側面図。
【図2】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの一部を破断して示す平面図。
【図3】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの膨張領域を示す平面図。
【図4】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの上側の外基布を取り除いた状態を示す平面図。
【図5】第1実施形態におけるエアバッグの前部を示す部分平面図。
【図6】第1実施形態における乗員保護装置の後部を示す部分平面図。
【図7】第1実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時におけるアクセルペダルと右足との関係を示す側断面図、(B)は乗員保護装置の作動時におけるアクセルペダルと右足との関係を示す側断面図。
【図8】第1実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図9】本発明を具体化した第2実施形態において、上下一対の膨張部により足受け止め部を構成した乗員保護装置の部分平面図。
【図10】第2実施形態において、乗員保護装置の非作動時における足受け止め部の状態を示す図であり、図9のX−X線に沿った断面構造を示す断面図。
【図11】第2実施形態において、乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図12】本発明を具体化した第3実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの一部を破断して示す平面図。
【図13】第3実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図14】補助エアバッグを主エアバッグの内部に収容した別の実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図15】右足の車幅方向両側で補助エアバッグを膨張させるようにした別の実施形態を示す乗員保護装置の部分平面図。
【図16】図15の乗員保護装置が作動したときの状態を右足とともに示す概略断面図。
【符号の説明】
【0127】
13…フロアカーペット、14…運転席(前席)、22…アクセルペダル(足先載せ部)、23…ブレーキペダル、24…フットレスト(足先載せ部)、25,26…踵載せ部、25A,27A,91A…表面、40…エアバッグ、47,57…傾斜押上げ部(押上げ部)、53,54…テザー、55,58,92,94…足受け止め部、56…最下部、81,82…膨張部、85…主エアバッグ、87,93…押上げ部、88…流出口、89,95…補助エアバッグ、D…運転者(乗員)、Fr…右足(足)、Fl…左足(足)、G…膨張用ガス(膨張流体)、Ph…踵、Pt…足先、S…空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前面衝突時に前席の乗員の足首を背屈や捩れから保護する車両の乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前席(運転席)の前方にはトーボードが設けられるとともに、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等の各種操作ペダル、さらにはフットレストが配置されている。そして、車両の走行時には乗員(運転者、助手席の乗員等)は、上記各種ペダル、フットレスト及びトーボードの少なくとも1つを足先載せ部とし、ここに足先を載せている。また、乗員は足の踵を、前席前方の車両フロア上のフロアカーペットに載せている。この状態で車両が前面衝突し、その衝撃により上記足先載せ部が車両後方側へ移動した場合、乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメントが作用して、足首に背屈(足首の角度が狭くなる現象)を生じさせることがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1及び特許文献2には、車両フロア及びフロアカーペット間にエアバッグを配設し、車両の前面衝突に際し、エアバッグを膨張用ガスによって膨張させるようにした乗員保護装置が記載されている。この乗員保護装置では、エアバッグによって乗員の踵を押上げて上記前後方向のモーメントを低減し、足首の背屈を抑制するようにしている。
【特許文献1】特開2000−289562号公報
【特許文献2】特表2003−526565号公報
【特許文献3】特開2006−248358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前面衝突時の衝撃により足先載せ部が車両後方側へ移動した場合には、足に対し、踵を支点とする上記前後方向のモーメントのほかに車幅方向のモーメントが作用することがある。後者のモーメントは、足首が車幅方向に捩れる現象(他方の足に近づく側へ捩れる現象は「内反」と呼ばれ、他方の足から遠ざかる側へ捩れる現象は「外反」と呼ばれる)を引き起こす一因となる。
【0005】
この点、上記特許文献1及び特許文献2に記載された乗員保護装置では、フロアカーペットにおいて踵が載せられた箇所を車両フロアに対し略平行に押し上げているにすぎず、上記車幅方向のモーメントについての対策は何ら講じられていない。そのため、上記乗員保護装置では、足首の背屈を抑制できるものの、内反、外反等の捩れを抑制することができない。
【0006】
なお、特許文献3には、操作ペダルの前方近傍に脚部保護構造体を設けた乗員保護装置が記載されている。脚部保護構造体には、ペダルアームと当接したときに足先を側方から支持する支持部が設けられている。この乗員保護装置によれば、足先載せ部の車両後方側への移動に伴い足首が車幅方向へ捩れようとしたとき、足先が支持部によって側方から支持される。その結果、足首の過度の捩れが抑制され、もって足首への衝撃が低減される。
【0007】
そのため、この特許文献3の技術を上記特許文献1又は特許文献2に適用することで、足首の背屈及び捩れの抑制を図ることも考えられる。しかしながら、この組み合わせの技術では、前面衝突前には操作ペダルから前方へ大きく離れている支持部が、前面衝突時の衝撃により操作ペダルに近づくにすぎない。支持部は操作ペダルに最も近づいたときでも、その操作ペダルの側方近傍に位置するにとどまる。そのため、上記組み合わせの技術は、支持部が足の外縁部分のみと接触することをもって、車幅方向のモーメントを受け止めることとなり、これでは足首の捩れを十分抑制することが難しい。特に、特許文献3における第3実施形態では、前面衝突時に操作ペダルと支持部との間に比較的大きな隙間が生ずる。そのため、足の外縁部分がこの隙間に入り込んで足首が捩れる現象が起こりやすい。
【0008】
さらに、足首の捩れは、踵から足先までの領域において生ずるものであるが、上記支持部は、足先を車幅方向についての一方から支持するにとどまり、踵を支持するものではない。そのため、足のうち足先においてのみ車幅方向のモーメントを受け止めることとなるため、同モーメントを充分受け止めることができず、足首の捩れを意図するほど抑制できないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れを確実に抑制することのできる車両の乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、乗員の足の踵が載せられる踵載せ部と、同足の足先が載せられる足先載せ部とが前席の前方に設けられた車両に適用されるものであり、前記車両の前面衝突に際し、前記踵載せ部を押し上げる押上げ部と、前記車両の前面衝突に際し、前記押上げ部にて押し上げられた前記踵載せ部よりも高い位置まで突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられた前記足の少なくとも踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部とを備え、前記足受け止め部の前記乗員側の表面が、前記踵載せ部の前記乗員側の表面に連続して形成されていることを要旨とする。
【0011】
ここで、足先載せ部は前席の乗員、例えば運転席に着座した運転者等が足先を載せる箇所である。この足先載せ部の対象となる部材には、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル等、乗員(運転者)が車両の運転に際し足で操作する操作ペダル類が含まれるほか、フットレスト、さらにはトーボードも含まれる。
【0012】
車両の前面衝突時には、その衝撃により、前席の前方の足先載せ部が車両後方へ移動し、踵載せ部に踵を載せ、かつ足先載せ部に足先を載せた乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメント、及び車幅方向のモーメントが作用する場合がある。これらのモーメントは、乗員の足首に背屈や捩れを引き起こす原因となる。
【0013】
しかし、請求項1に記載の発明では、車両の前面衝突時には、押上げ部により、踵載せ部とその上の足の踵とが押し上げられる。そのため、上記のように足先載せ部が車両後方へ移動して乗員の足に対し踵を支点とする前後方向のモーメントが作用しても、足首の角度が狭くなる現象(背屈)が生じにくい。
【0014】
一方、車両の前面衝突時には、足受け止め部が、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部よりも高い位置まで突出する。この足受け止め部は、踵載せ部とともに押し上げられた足の少なくとも踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める。ここで、踵は、車幅方向のモーメントが作用して足首が捩れる際の支点となる箇所である。少なくともこの踵において車幅方向のモーメントが受け止められることで、単に足先のみにおいて受け止める場合よりもモーメントが効率よく受け止められる。そのため、足に対し、踵を支点とする車幅方向のモーメントが作用しても、足首の捩れを抑制する効果が充分得られる。
【0015】
また、足受け止め部の乗員側の表面が、踵載せ部の乗員側の表面に連続して形成されていることから、両表面間に隙間が生じない。そのため、足の外縁部分が隙間に入り込んで足首が捩れる現象が起こらない。
【0016】
このように、請求項1に記載の発明によれば、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れが確実に抑制される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、前記踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように前記踵載せ部を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部からなり、前記足受け止め部は、前記車両の前面衝突に際し、傾斜状態の前記踵載せ部における最下部近傍から上方へ突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられる前記足の少なくとも前記踵を受け止めるものであることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、傾斜押上げ部により踵載せ部が傾斜状態で押し上げられる。これに伴い、踵載せ部上の乗員の踵も押し上げられる。そのため、足先載せ部が車両後方へ移動して乗員の足に対し、踵を支点とする前後方向のモーメントが作用しても、足首に背屈が生じにくい。
【0018】
また、上記傾斜状態では、踵載せ部は、踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くされる。この踵載せ部の押上げに伴う傾斜により、同踵載せ部上の足には、踵を支点として踵載せ部の低い側へ向かうモーメントが作用する。このように、足に対しては、車幅方向の特定の一方向にのみ向かうモーメントが作用する。このモーメントにより足は、踵を支点として踵載せ部の低い側へ強制的に傾かせられる。足が踵を支点として上記とは逆方向(足受け止め部から遠ざかる側)へ傾くことはない。
【0019】
一方、車両の前面衝突時には、上記傾斜状態の踵載せ部における最下部近傍から足受け止め部が上方へ突出する。この足受け止め部が、上記のように押し上げられて傾かせられる踵載せ部上の足の少なくとも踵を、その傾かせられた側から受け止める。その結果、足首の捩れを抑制する効果が確実に得られる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられるエアバッグ内であって前記踵載せ部よりも下方の空間により構成されており、前記空間の車幅方向についての複数箇所には、前記踵から前記一方側へ離れるほど高さが低くなるように前記傾斜押上げ部の膨張を規制するテザーが設けられており、前記踵載せ部は、前記膨張の規制された前記傾斜押上げ部により傾斜させられることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によってエアバッグが膨張させられる。これに伴い、エアバッグ内であって踵載せ部よりも下方の空間によって構成される傾斜押上げ部も膨張し、踵載せ部が迅速に押し上げられる。この際、傾斜押上げ部の膨張がテザーによって、踵から車幅方向の一方側へ離れるほど高さが低くなるように規制される。この膨張の規制された傾斜押上げ部により、踵載せ部は車両の前面衝突に際し、踵から車幅方向の一方側へ離れるほど低くなるように傾斜させられる。このように、(i)膨張流体によって膨張するエアバッグ内の空間によって傾斜押上げ部を構成し、(ii)複数のテザーによって傾斜押上げ部の膨張を規制する、といった簡単な構成でありながら、踵載せ部を迅速に傾斜状態にすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記車両の前面衝突に際し、膨張流体により膨張させられるエアバッグにより構成されていることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によってエアバッグが膨張させられる。これに伴い、少なくとも一部がエアバッグにより構成される足受け止め部は、傾斜状態の踵載せ部における最下部近傍から上方へ迅速に突出して、傾斜状態の踵載せ部上の足の少なくとも踵を受け止める。このように、エアバッグを足受け止め部の少なくとも一部とするといった簡単な構成でありながら、傾斜状態の踵載せ部上の足の少なくとも踵を足受け止め部によって迅速に受け止めることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記足受け止め部は、上下方向に並設され、かつ前記膨張流体によりそれぞれ膨張させられる複数の膨張部を含むことを要旨とする。
【0025】
上記の構成によれば、車両の前面衝突に際し、エアバッグに膨張流体が供給されて、上下方向に並設された複数の膨張部がそれぞれ膨張する。全部の膨張部が膨張することで、各膨張部の膨張時の高さが僅かでも足受け止め部は全体として高くなり、乗員の足のより広い領域を足受け止め部によって受け止めることができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記足先載せ部は、ブレーキペダルを基準として車幅方向の一方側に配設されており、前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、車幅方向について前記ブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させた状態で押上げることを要旨とする。
【0027】
車両においては、通常、ブレーキペダルの車幅方向の一方側にアクセルペダルが配置される。これに加え、車幅方向の他方側にフットレストやクラッチペダルが配置される車両もある。これらのアクセルペダル、フットレスト、クラッチペダル等が足先載せ部とされた場合には、車幅方向についてブレーキペダルに近づくほど低くなるように踵載せ部を傾斜させることが難しい。踵載せ部の最下部近傍に設けられる足受け止め部がブレーキペダルと干渉するおそれがあるからである。
【0028】
一方、踵載せ部を挟んでブレーキペダルとは反対側、すなわち、踵載せ部に対し、車幅方向についてブレーキペダルから遠ざかる側には、通常、足受け止め部と干渉するものは設けられていない。そのため、請求項6に記載の発明によるように、傾斜押上げ部により、車幅方向についてブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させることで、踵載せ部の最下部近傍に設けられる足受け止め部を、ブレーキペダルを含む他の部材との干渉を招くことなく作動させることができる。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられた状態の主エアバッグであって前記踵載せ部よりも下方の部分により構成されており、前記主エアバッグにおいて前記踵載せ部の車幅方向近傍には、前記膨張流体を同主エアバッグの外部へ流出するための流出口が設けられており、前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記流出口から流出する前記膨張流体により膨張させられる補助エアバッグにより構成されていることを要旨とする。
【0030】
上記の構成によれば、車両の前面衝突時には、膨張流体によって主エアバッグが膨張させられる。主エアバッグにおいて踵載せ部よりも下方に位置する部分である押上げ部も膨張し、踵載せ部が迅速に押し上げられる。これに伴い、踵載せ部上の乗員の足の踵も押し上げられる。
【0031】
また、主エアバッグに供給された膨張流体の一部は、同主エアバッグにおいて踵載せ部の車幅方向近傍に設けられた流出口を通じて主エアバッグの外部へ流出する。この流出した膨張流体により補助エアバッグが膨張させられ、少なくとも一部が補助エアバッグによって構成された足受け止め部が、押上げ部にて押し上げられた踵載せ部よりも高い位置まで突出する。踵載せ部とともに押し上げられた踵がこの足受け止め部により受け止められる。
【0032】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグの外部に収容されていることを要旨とする。
【0033】
上記の構成によれば、補助エアバッグは、膨張流体による膨張前の段階から主エアバッグの外部に位置している。そのため、補助エアバッグは自身の膨張の過程で、流出口を通って主エアバッグの外部へ飛び出す必要がなく、その分、補助エアバッグの早期の膨張が可能となる。
【0034】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグ内に収容されており、前記車両の前面衝突に際し、前記膨張流体により前記流出口を通じて前記主エアバッグから飛び出して膨張するものであることを要旨とする。
【0035】
上記の構成によれば、車両の非前面衝突時には、主エアバッグの内部空間の一部が補助エアバッグの配置のためのスペースとして利用され、補助エアバッグが主エアバッグの内部に収容されている。そのため、主エアバッグ及び補助エアバッグの両者の占める空間が小さくてすみ、非前面衝突時には、これらの主エアバッグや補助エアバッグは足先載せ部や同足先載せ部に載せた足先の邪魔となりにくい。
【0036】
車両の前面衝突時には、膨張流体によって主エアバッグが膨張させられる過程で、その膨張流体の圧力が補助エアバッグに加わる。この圧力により補助エアバッグが流出口を通じて主エアバッグの外部へ押し出される。さらに、主エアバッグ内の膨張流体の一部が流出口から流出して補助エアバッグ内に流入する。この流入する膨張流体によって補助エアバッグが膨張する。ここで、流出口として、幅の狭いスリット状をなすものを採用すれば、流出口及びその近傍での補助エアバッグの膨張厚みが流出口によって規制される。従って、狭い空間でも補助エアバッグの膨張が可能となる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の車両の乗員保護装置によれば、車両の前面衝突に際し、前席の乗員の足首の背屈及び捩れを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方(車両前方)として説明し、車両の後進方向を後方(車両後方)として説明する。また、以下の記載における左右方向は、車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
【0039】
図1及び図5の少なくとも一方に示すように、車両のボディのうち、車室11の底部を構成する車両フロア上には、その車両フロアの上面形状に合わせて成形されたフロアカーペット13が敷設されている。なお、図5ではフロアカーペット13の図示が省略されている。また、車両フロア上の前部には、前席として運転席14及び助手席(図示略)が車幅方向に並設されている。運転席14は、運転者D(乗員)の下半身を下側から支えるシートクッション(座部)15と、シートクッション15の後端部に配置されて運転者Dの上半身を後ろ側から支えるシートバック(背もたれ部)16と、シートバック16上に配置されて運転者Dの頭部を後ろ側から支えるヘッドレスト17とを備えて構成されている。
【0040】
車室11内の前部には、メーター類やスイッチ類が組み込まれたインストルメントパネル18が設けられている。また、車室11内の運転席14の前方近傍には、車両の進行方向を任意に変えるための操舵装置が設けられている。操舵装置の一部は、運転者Dによる操作が行われる箇所であるステアリングホイール19によって構成されている。
【0041】
エンジンルーム(図示略)と車室11とは隔壁によって仕切られている。この隔壁のうち、インストルメントパネル18の下方に相当する箇所はトーボード21を構成している。インストルメントパネル18の下方であってトーボード21の後方近傍には、アクセルペダル22、ブレーキペダル23等の各種操作ペダルや、フットレスト24が配置されている(図5参照)。これらの部材の位置関係は次のようになっている。ブレーキペダル23を基準とし、アクセルペダル22が車幅方向外側(車外側)に位置し、フットレスト24が車幅方向内側(車内側)に位置している。このような配置のもと、第1実施形態では、アクセルペダル22は、運転席14に着座した運転者D(図1参照)により右足Frの足先Ptが乗せられる足先載せ部とされている。また、フットレスト24は、上記運転者Dにより左足Flの足先Ptが乗せられる足先載せ部とされている。
【0042】
上記フロアカーペット13において、アクセルペダル22の後方近傍部分は右足Fr用の踵載せ部25となっている。この踵載せ部25は、右足Frの足先Ptをアクセルペダル22の上に載せた運転者Dが踵Phを載せる箇所である。同様に、フロアカーペット13において、フットレスト24の後方近傍部分は左足Fl用の踵載せ部26となっている(図5参照)。この踵載せ部26は、左足Flの足先Ptをフットレスト24の上に載せた運転者Dが踵Phを載せる箇所である。
【0043】
なお、車室11内には、運転席14に着座した運転者Dを拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
車両には、前面衝突時に、前方から衝撃が加わってトーボード21及び上記足先載せ部(アクセルペダル22及びフットレスト24)が車両後方側へ移動した場合に、運転者Dの足首Paを背屈及び捩れから保護する乗員保護装置が装備されている。
【0044】
乗員保護装置は、膨張流体発生源としてのインフレータ30と、そのインフレータ30で発生される膨張流体としての膨張用ガスG(図6参照)が供給されて膨張するエアバッグ40とを備えている。これらのインフレータ30及びエアバッグ40は、車両フロアのうち運転席14よりも前側の箇所(以下「運転席用フロア41」という)上であって、その上のフロアカーペット13との間に配置されている。
【0045】
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、上記インフレータ30は長尺状をなしており、その軸線を車幅方向(図2の上下方向)に合致させた状態で、運転席用フロア41の後端部、より詳しくは運転席14(シートクッション15)の前端下方に配置されている。この箇所をインフレータ30の配置箇所としているのは、(i)インフレータ30が運転者Dの乗り降りや運転操作(特にペダル操作)の妨げになりにくい、(ii)見栄えを極力損なわない、といった条件を満たしているからである。インフレータ30にはブラケット31が設けられており、このブラケット31において、インフレータ30が図示しないボルト及びナットにより運転席用フロア41に固定されている。
【0046】
インフレータ30には、膨張用ガスGの生成態様の違いから複数のタイプがあるが、ここでは、パイロタイプと呼ばれるインフレータ30が用いられている。このタイプのインフレータ30の内部には、膨張用ガスGを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ30の車内側の箇所には、上記ガス発生剤にて発生された膨張用ガスGを噴出する複数のガス噴出孔32が設けられている。
【0047】
なお、インフレータ30として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧の膨張用ガスGの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0048】
一方、エアバッグ40は、図2及び図3の少なくとも一方に示すように、互いに上下に重ね合わされた一対の基布(ここでは、後述するテザー用の基布と区別するために外基布42A,42Bという)を備えている。図2では、下側の外基布42Bの図示のために、上側の外基布42Aの一部が破断された状態で図示されている。各外基布42A,42Bは、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に変形することのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布等によって形成されている。上下の両外基布42A,42Bは、運転席用フロア41(図1参照)の上面の略全体を覆う大きさ・形状を有している。
【0049】
なお、エアバッグ40は、上記のように2枚の外基布42A,42Bによって構成されるもののほか、1枚の外基布によって構成されるものであってもよい。この場合、所定形状をなす外基布が中央部分で二つに折られる。
【0050】
上記両外基布42A,42Bは、それらの周縁部等に設けられた周縁結合部43において気密状態で結合されている。第1実施形態では、周縁結合部43は、両外基布42A,42Bの主として周縁部を縫糸で縫合することにより構成されている。図2及び図3では、周縁結合部43は太い破線で示されている。ただし、図2中、上側の外基布42Aの一部を破断して図示した箇所では、周縁結合部43は二点鎖線で示されている。周縁結合部43は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって構成されてもよい。エアバッグ40内において上記周縁結合部43により囲まれた空間(図3において点の集まりで示した領域)が膨張用ガスGによって膨張されられる。従って、エアバッグ40が膨張したときの外形形状は概ね上記周縁結合部43によって決定される。
【0051】
図2及び図5の少なくとも一方に示すように、エアバッグ40においてアクセルペダル22の下方、ブレーキペダル23の下方、及びフットレスト24の下方となる箇所には、膨張用ガスGにより膨張しない非膨張部44〜46が設けられている。これらの非膨張部44〜46は、上記周縁結合部43の一部、すなわちアクセルペダル22、ブレーキペダル23及びフットレスト24に対応する箇所を、上下の両外基布42A,42Bの周縁部よりも内方(後方)へ入り込ませることによって形成されている。
【0052】
なお、非膨張部44〜46として、上下の両外基布42A,42Bにおいて足先載せ部に対応する箇所に切欠きを設けてもよい。この場合には、周縁結合部43に沿って切欠きを設ける。
【0053】
また、上述した「太い破線、二点鎖線を用いた周縁結合部43の図示」、及び「縫合に代えて接着剤を用いた接合」は、後述する内結合部67及び周縁結合部71についても同様である。
【0054】
図7(A),(B)及び図8(A),(B)の少なくとも1つに示すように、エアバッグ40内であって、上記右側の踵載せ部25よりも下方の空間Sは、車両の前面衝突に際し、踵載せ部25を押し上げる押上げ部となっている。より詳しくは、同空間Sは、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部47となっている。第1実施形態では、傾斜押上げ部47は、ブレーキペダル23を基準とし、これから車幅方向外側へ遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げるよう設定されている(図8(B)参照)。
【0055】
そのために、図4及び図8(A),(B)の少なくとも1つに示すように、上記空間Sには、それぞれ平面矩形状をなす上下一対の内基布48A,48Bが配置されている。内基布48A,48Bは、上記外基布42A,42Bと同様の素材によって形成されている。上側の内基布48Aはエアバッグ40の上側の外基布42Aに対し縫糸によって縫着されている。下側の内基布48Bは、エアバッグ40の下側の外基布42Bに対し縫糸によって縫着されている。これらの縫糸による上下の両縫着部49は、いずれも平面長円形をなしている(図4参照)。
【0056】
上下の両内基布48A,48Bは、上記縫着部49よりも車幅方向外側において縫糸によって互いに縫合されている。この縫糸による縫合部51は、車両前後方向に沿って延びる直線状をなしている。また、上下の両内基布48A,48Bは、上記縫着部49よりも車幅方向内側において縫糸によって互いに縫合されている。この縫糸による縫合部52は、車両前後方向に沿って延びる直線状をなしている。上下の両内基布48A,48Bにおいて、縫着部49と車幅方向内側の縫合部52とによって挟まれた部分は、傾斜押上げ部47の膨張高さを規制するテザー53となっている。同様に、上下の両内基布48A,48Bにおいて、縫着部49と車幅方向外側の縫合部51とによって挟まれた部分は、傾斜押上げ部47の膨張高さを規制するテザー54となっている。
【0057】
図8(A),(B)の少なくとも一方に示すように、非膨張状態のエアバッグ40において、縫着部49と車幅方向内側の縫合部52との間隔をD1とし、縫着部49と車幅方向外側の縫合部51との間隔をD2とすると、第1実施形態ではD1>D2となるように、両テザー53,54における各縫合部51,52の車幅方向の位置が設定されている。このように設定された両テザー53,54により、テザー53から車幅方向外側へ離れるほど低くなるように傾斜押上げ部47の膨張が規制される。テザー53により、傾斜押上げ部47の車幅方向内側部の高さは、「D1×2」に規制される。また、テザー54により、傾斜押上げ部47の車幅方向外側部の高さは、「D2×2」に規制される。
【0058】
エアバッグ40において、上記傾斜押上げ部47に対し車幅方向外側近傍となる箇所40Aは、足受け止め部55の一部を構成している。足受け止め部55の残部は、フロアカーペット13においてエアバッグ40の上記箇所40Aに接する箇所27によって構成されている。この箇所27の表面27Aは、足受け止め部55の運転者D側の表面を構成しており、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続している。このように、箇所27の表面27Aと、踵載せ部25の表面25Aとが連続していることから、両表面27A,25A間には隙間が生じていない。
【0059】
足受け止め部55の果たす機能は、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての一方(外側方)から受け止めることである。この機能実現のために、足受け止め部55は、車両の前面衝突に際し、傾斜状態の踵載せ部25における最下部56の近傍から上方へ、より詳しくは、傾斜押上げ部47によって押し上げられる踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。そして、エアバッグ40の非膨張時における足受け止め部55の車幅方向についての幅が充分広く設定されている(図4参照)。
【0060】
また、図2〜図4の少なくとも1つに示すように、エアバッグ40内において、上記車幅方向内側(左側)の踵載せ部26よりも下方の空間は、車両の前面衝突に際し、踵載せ部26を押し上げる押上げ部となっている。より詳しくは、同空間は、踵Phから車幅方向のいずれか一方側(第1実施形態では車幅方向内側)へ離れるほど低くなるように踵載せ部26を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部57となっている。第1実施形態では、傾斜押上げ部57は、ブレーキペダル23(図5参照)を基準とし、これから車幅方向内側へ遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させた状態で押し上げるよう設定されている。この傾斜状態は、ブレーキペダル23を挟んで上記傾斜押上げ部47による傾斜状態とは逆の関係となる。また、エアバッグ40において、上記傾斜押上げ部57に対し車幅方向内側近傍となる箇所40Bと、フロアカーペット13において上記箇所40Bに接する箇所(図示略)とによって、足受け止め部58が構成されている。
【0061】
フロアカーペット13における上記箇所の表面が、足受け止め部58の運転者D側の表面を構成し、踵載せ部26の運転者D側の表面に連続している点は、上述した足受け止め部55の表面27Aが踵載せ部25の表面25Aに連続している点と同様である。
【0062】
さらに、エアバッグ40の後部であって車幅方向中央部分には管状のガス供給部61が設けられている。このガス供給部61には、ガス噴出孔32を含むインフレータ30の一部(車内側の部分)が挿入されている。ガス供給部61は、その外側に配置された締結バンド等の締結具73によってインフレータ30に気密状態で締め付け固定されている。なお、インフレータ30は、その全体がエアバッグ40内に配置されてもよい。
【0063】
エアバッグ40において、上記ガス供給部61よりも前側には、膨張用ガスGの流入を遮断する一対のガス流入阻止部62,63が車幅方向に並べられた状態で設けられている。エアバッグ40内においてガス流入阻止部62よりも車幅方向外側の空間と、両ガス流入阻止部62,63間の空間とは、インフレータ30からの膨張用ガスGを主として傾斜押上げ部47及び足受け止め部55に導くためのガス流路64,65となっている。また、エアバッグ40内においてガス流入阻止部63よりも車幅方向内側の空間は、インフレータ30からの膨張用ガスGを主として傾斜押上げ部57及び足受け止め部58に導くためのガス流路66となっている。第1実施形態では、上記両外基布42A,42Bは、上記周縁結合部43よりも内側に設けられた無端状をなす一対の内結合部67により気密状態で結合されており、これらの内結合部67により各ガス流入阻止部62,63が構成されている。各内結合部67は、両外基布42A,42Bを縫糸で縫合することにより構成されている。なお、両外基布42A,42Bにおいて内結合部67により囲まれた箇所には開口が設けられてもよい。
【0064】
さらに、図6に示すように、上記ガス供給部61を含むエアバッグ40の後部内には、インナチューブ68が配置されている。インナチューブ68は、インフレータ30のガス噴出孔32から噴出された膨張用ガスGを各ガス流路64〜66に分配するガス分配部として機能する部材である。インナチューブ68は、上記エアバッグ40と同様、織布等からなる1枚又は2枚の基布を縫製することによって形成されている。図6では、1枚の基布69が中央部分で二つ折りされ、それらの周縁部に設けられた周縁結合部71によって袋状に結合されている。インナチューブ68において各ガス流路64〜66に対向する箇所には、導出口72が開口されている。そして、インナチューブ68は、上記締結具73によってガス供給部61とともにインフレータ30に気密状態で締め付け固定されている。
【0065】
なお、図2〜図4に示すように、エアバッグ40において膨張に関与しない複数箇所、例えば非膨張部44〜46、ガス流入阻止部62,63等には、同エアバッグ40を運転席用フロア41に固定する際に使用される取付孔74があけられている。各取付孔74にボルトが挿通され、そのボルトにナットが締め付けられることにより、エアバッグ40が運転席用フロア41に固定されている。
【0066】
乗員保護装置は、さらに衝撃センサ75及び制御装置76を備えている。衝撃センサ75は加速度センサ等からなり、車両に前方から加わる衝撃を検出する。制御装置76は、衝撃センサ75からの検出信号に基づきインフレータ30の作動を制御する。
【0067】
上記のようにして第1実施形態の乗員保護装置が構成されている。次に、この乗員保護装置の作用について説明する。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、傾斜押上げ部47、足受け止め部55等により右足Frを保護する作用についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、傾斜押上げ部57、足受け止め部58等により左足Flを保護する作用についても同様である。
【0068】
車両の走行時には、制御装置76からインフレータ30に対しては、これを作動させるための指令信号が出力されない。そのため、インフレータ30からは膨張用ガスGが噴出されず、エアバッグ40は膨張せず扁平な状態を維持する。このとき、運転者Dは、図5及び図7(A)の少なくとも一方に示すように、右足Frの足先Ptを足先載せ部(アクセルペダル22)に載せ、かつ踵Phをフロアカーペット13の踵載せ部25に載せている。
【0069】
車両の走行中に前面衝突が発生すると、図7(B)において実線で示すように、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動する場合がある。なお、同7(B)中の二点鎖線は、前面衝突が発生する前の各部の状態を示している。これらの移動に伴い、右足Frに対し、踵Phを支点とする前後方向のモーメント、及び車幅方向のモーメントが作用する場合がある。これらのモーメントは、右足Frの足首Paに背屈や捩れを引き起こす原因となる。
【0070】
一方、上記前面衝突により、車両に対し前方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ75によって検出されると、乗員保護装置では、その検出信号に基づき制御装置76からインフレータ30に対しこれを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ30ではガス発生剤により膨張用ガスGが生成される。この膨張用ガスGは、図6に示すように、ガス噴出孔32からインナチューブ68内へ噴出され、同インナチューブ68内を流れた後、各導出口72から出て3つのガス流路64〜66に分配される。
【0071】
各ガス流路64〜66を流れた膨張用ガスGの一部は、傾斜押上げ部47及び足受け止め部55に流入する。この膨張用ガスGにより、図7(B)及び図8(B)の少なくとも一方に示すように傾斜押上げ部47が膨張し、それに伴ってフロアカーペット13の踵載せ部25及びその上の右足Frの踵Phが迅速に押し上げられる。ただし、踵載せ部25の前側近傍に設けられた非膨張部44には膨張用ガスGが供給されず、同非膨張部44が膨張することはない。右足Frには、踵Ph又はその近傍部分に対してのみ上記傾斜押上げ部47の膨張による押し上げ力が踵載せ部25を通じて作用する。そのため、右足Frの足首Paが足首角度αを維持したまま押し上げられる。運転者Dの右足Frにおいて、踵Ph以外の箇所が直接押し上げられる現象は起こりにくい。従って、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動して、右足Frに対し踵Phを支点とする前後方向のモーメントが作用しても、上記足首角度αが狭くなる現象(足首Paの背屈)が起こりにくい。
【0072】
また、上記膨張用ガスGの流入による傾斜押上げ部47の膨張は、車幅方向についての複数箇所に設けられたテザー53,54によって、踵Phから車幅方向の一方側(外側)へ離れるほど高さが低くなるように規制される。この膨張の規制された傾斜押上げ部47により、踵載せ部25は、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向の上記一方側へ離れるほど低くなるように傾斜させられる。この踵載せ部25の傾斜により、その上の右足Frには、踵Phを支点として踵載せ部25の低い側へ向かうモーメントが作用する。このように右足Frに対しては、車幅方向の特定の一方向にのみ向かうモーメントが作用する。このモーメントにより右足Frは、踵Phを支点として踵載せ部25の低い側(車幅方向外側)へ強制的に傾かせられる。この右足Frの傾かせられる側は足受け止め部55に近づく側であり、右足Frが反対側(足受け止め部55から遠ざかる側)へ傾かせられることはない。
【0073】
一方、上記膨張用ガスGの流入により足受け止め部55が、上記傾斜状態の踵載せ部25における最下部56近傍から膨張して上方へ突出する。この突出は、足受け止め部55が、傾斜押上げ部47にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。この足受け止め部55は、上記のように踵載せ部25とともに押し上げられて傾かせられる踵載せ部25上の右足Frの少なくとも踵Phを、その傾かせられた側から受け止める。ここで、踵Phは、車幅方向のモーメントが作用して右足Frが捩れる際の支点となる箇所である。少なくともこの踵Phにおいて車幅方向のモーメントが受け止められることで、単に足先Ptのみにおいて受け止める場合よりもモーメントが効率よく受け止められる。さらに、足受け止め部55は、傾斜状態の踵載せ部25の最下部56近傍とそれよりも高い位置(ここでは踵Phよりも高い位置)との間に位置し、踵Phのみを受け止める場合や足先Ptのみを受け止める場合よりも、右足Frの広い領域を側方から受け止める。
【0074】
さらに、足受け止め部55の運転者D側の表面27Aが、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続して形成されていることから、両表面27A,25A間に隙間が生じない。そのため、特許文献3とは異なり、右足Frの外縁部分が隙間に入り込む現象が起こらない。
【0075】
ここで、エアバッグ40の膨張に際しては、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させることも考えられるが、実現困難である。これは、踵載せ部25の最下部56近傍に設けられる足受け止め部55がブレーキペダル23と干渉するおそれがあるからである。
【0076】
一方、踵載せ部25を挟んでブレーキペダル23とは反対側、すなわち、踵載せ部25に対し、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかる側には、通常、足受け止め部55と干渉するような部材は設けられていない。そのため、傾斜押上げ部47により、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25を傾斜させる第1実施形態では、足受け止め部55がブレーキペダル23を含む他の部材と干渉しない。
【0077】
なお、上述したエアバッグ40の膨張時には、同エアバッグ40は運転席用フロア41から浮き上がろうとする。しかし、エアバッグ40は、その複数箇所に設けられた取付孔74において運転席用フロア41に固定されている。そのため、これらの固定によりエアバッグ40の運転席用フロア41からの上記浮き上がりが抑制される。
【0078】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)乗員保護装置として、車両の前面衝突に際し踵載せ部25,26を押し上げる押上げ部(傾斜押上げ部47,57)と、その押し上げられた踵載せ部25,26よりも高い位置まで突出する足受け止め部55,58とを備えるものを用いている。そして、踵載せ部25,26とともに押し上げられる右足Fr及び左足Flの少なくとも踵Phを、足受け止め部55,58によって車幅方向についての一方側から受け止めるようにしている。さらに、足受け止め部55,58の運転者D側の表面27Aを、踵載せ部25,26の運転者D側の表面25Aに連続させている。そのため、特許文献1〜特許文献3にそれぞれ記載された乗員保護装置よりも、また、特許文献1又は特許文献2に特許文献3を組み合わせた乗員保護装置よりも、足首Paの背屈及び捩れを確実に抑制することができる。
【0079】
(2)押上げ部を傾斜押上げ部47,57によって構成し、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように、踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしている。そのため、運転者Dの右足Fr及び左足Flを傾斜押上げ部47,57により足受け止め部55,58側へ強制的に傾かせることができる。
【0080】
また、車両の前面衝突に際し、傾斜状態の踵載せ部25,26における最下部56の近傍から足受け止め部55,58を上方へ突出させている。そして、踵載せ部25,26とともに押し上げられて傾斜させられる上記右足Fr及び左足Flの少なくとも各踵Phを足受け止め部55,58によって受け止めるようにしている。そのため、強制的に傾かせられた右足Fr及び左足Flの足首Paが捩れるのを抑制することができる。
【0081】
このように車両の前面衝突時には、運転者Dの右足Fr及び左足Fl足を例外なく足受け止め部55,58によって受け止めることができ、足首Paの捩れを抑制する効果をより一層確実なものとすることができる。
【0082】
(3)膨張用ガスGにより膨張させられるエアバッグ40内の踵載せ部25,26よりも下方の空間Sにより、上記傾斜押上げ部47,57を構成している。上記空間Sの車幅方向についての複数箇所に、踵Phから車幅方向の一方側へ離れるほど高さが低くなるように傾斜押上げ部47,57の膨張を規制するテザー53,54を設けている。そして、これらのテザー53,54により膨張の規制された上記傾斜押上げ部47,57によって踵載せ部25,26を傾斜させるようにしている。
【0083】
このように、(i)膨張用ガスGによって膨張するエアバッグ40を用い、その一部(内部の空間S)を傾斜押上げ部47,57とする、(ii)複数のテザー53,54によって傾斜押上げ部47,57の膨張を規制する、といった簡単な構成でありながら、踵載せ部25,26を迅速に傾斜状態にすることができる。
【0084】
(4)車両の前面衝突に際し、膨張用ガスGにより膨張させられるエアバッグ40の一部(箇所40A)と、フロアカーペット13において上記一部(箇所40A)に接する箇所27とにより足受け止め部55,58を構成している。このような簡単な構成でありながら、足受け止め部55,58を、傾斜状態の踵載せ部25,26における最下部56近傍から膨張により上方へ迅速に突出させることができ、傾斜状態の踵載せ部25,26上の右足Fr及び左足Flの少なくとも各踵Phを足受け止め部55,58によって迅速に受け止めることができる。
【0085】
(5)ブレーキペダル23を基準として車幅方向両側に配設されたアクセルペダル22及びフットレスト24を足先載せ部としている。そして、傾斜押上げ部47,57により、車両の前面衝突に際し、車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるようにしている。そのため、踵載せ部25,26の最下部56近傍に設けられる足受け止め部55,58を、ブレーキペダル23を含む他の部材との干渉を招くことなく作動(膨張)させることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。
第2実施形態の第1実施形態との大きな相違点は、足受け止め部55を、上下方向に並設された一対の膨張部81,82によって構成し、車両の前面衝突に際しこれらの膨張部81,82を膨張用ガスGによって膨張させるようにしている点である。
【0087】
この際、単一のインフレータ30からの膨張用ガスGによって両膨張部81,82を膨張させる場合には、両膨張部81,82を相互に連通させる。例えば図10に示すように、各膨張部81,82の車両前端部に連通箇所84を設定してもよい。また、この場合には、上下に隣り合う膨張部81,82を縫着等の手段によって連結する。図9中の符号83は、縫糸による縫着部を示している。
【0088】
このようにすれば、車両の前面衝突に際し、エアバッグ40に膨張用ガスGが供給されて、上下方向に並設された一対の膨張部81,82がそれぞれ膨張する。足受け止め部55の運転席用フロア41からの概略高さは、膨張部82の高さに膨張部81の高さを加えたものとなり、第1実施形態よりも高くなる。
【0089】
なお、図示はしないが、足受け止め部58についても上記と同様の変更が可能である。
従って、第2実施形態によれば上述した(1)〜(5)と同様の効果が得られるほか、次の効果も得られる。
【0090】
(6)上下方向に並設され、かつ膨張用ガスGによりそれぞれ膨張させられる一対の膨張部81,82によって足受け止め部55,58の少なくとも一部を構成している。このため、各膨張部81,82の膨張時の高さが僅かでも足受け止め部55,58全体の高さを高くでき、運転者Dの右足Fr及び左足Flのより広い領域を車幅方向についての一方から足受け止め部55,58によって受け止めることができる。
【0091】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図12及び図13を参照し、第1実施形態との相違点を中心に説明する。図12及び図13(A)は乗員保護装置の非作動時の状態を示し、図13(B)は作動時の状態を示している。
【0092】
運転席用フロア41とフロアカーペット13との間には、主エアバッグ85が配置されている。主エアバッグ85は、第1及び第2実施形態のエアバッグ40に相当するものであり、上側の基布86Aと、下側の基布86Bとを重ね合わせ、それらの周縁部を周縁結合部43によって結合させることで形成されている。主エアバッグ85は、インフレータ30から噴出された膨張用ガスGが供給されることで膨張させられる(図13(B)参照)。主エアバッグ85内であって、上記踵載せ部25よりも下方の空間は、車両の前面衝突に際し膨張用ガスGによって膨張させられることで、フロアカーペット13の踵載せ部25を略水平状態で押し上げる押上げ部87となっている。
【0093】
主エアバッグ85の上側の基布86Aにおいて、踵載せ部25の車幅方向外側近傍となる箇所には、膨張用ガスGを同主エアバッグ85の外部へ流出するための流出口88が設けられている。第3実施形態では、上記箇所に前後方向に延びるスリットが入れられており、このスリットによって流出口88が構成されている。
【0094】
フロアカーペット13と主エアバッグ85との間において踵載せ部25の車幅方向外側近傍となる箇所には、膨張用ガスGの流入口90を下端に有する補助エアバッグ89が収容されている。この収容に際し、補助エアバッグ89は、自身の流入口90を下側に位置させた状態で配置されている(図13(A)参照)。補助エアバッグ89における流入口90の周縁部は、主エアバッグ85の上側の基布86Aに対し、上記流出口88の周りで結合されている。ここでは、補助エアバッグ89の周縁部が主エアバッグ85に対し縫糸により縫着されている。図12及び図13中の符号89Aは、補助エアバッグ89の主エアバッグ85に対する縫着部を示している。補助エアバッグ89は、流入口90から流入する膨張用ガスGにより膨張する(図13(B)参照)。膨張状態の補助エアバッグ89は車幅方向に薄く、前後方向及び上下方向に細長い形状となる。なお、補助エアバッグ89は、膨張前には折り畳まれた状態で収容されてもよいし、折り畳まれない状態で収容されてもよい。
【0095】
そして、上記膨張状態の補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接する箇所91とによって足受け止め部92が構成されている。この足受け止め部92は、車両の前面衝突に際し、押上げ部87にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出して、踵載せ部25とともに押し上げられる右足Frの少なくとも踵Phを車幅方向についての外側方から受け止める。
【0096】
上記箇所91の表面91Aは、足受け止め部92の運転者D側の表面を構成しており、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続している。この連続形成により、両表面91A,表面25A間には隙間が生じていない。
【0097】
上記押上げ部87及び足受け止め部55に対し、非膨張部45を挟んで略線対称の関係となる箇所には、左足Flの背屈及び外反を抑制するための押上げ部93及び足受け止め部94が設けられている。これらの左足Fl用の押上げ部93及び足受け止め部94は、上述した右足Fr用の押上げ部87及び足受け止め部92と同様の構造を有している。足受け止め部94は、上記補助エアバッグ89と同様の補助エアバッグ95と、フロアカーペット13においてこの補助エアバッグ95に接する箇所とによって構成されている。
【0098】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の箇所、部材等には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
次に、上記の構成を有する乗員保護装置の作用について説明する。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、押上げ部87、足受け止め部92等により右足Frを保護する作用についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、押上げ部93、足受け止め部94等により左足Flを保護する作用についても同様である。
【0099】
車両の走行時には、図12及び図13(A)に示すように、制御装置76からインフレータ30に対しては、これを作動させるための指令信号が出力されない。そのため、インフレータ30から主エアバッグ85へは膨張用ガスGが供給されず、従って主エアバッグ85は膨張せず扁平な状態を維持する。これに伴い、補助エアバッグ89へも膨張用ガスGが供給されず、同補助エアバッグ89は主エアバッグ85上で略扁平な収容状態を維持する。このため、フロアカーペット13は運転席用フロア41の上方近傍に位置している。このとき、運転者Dは、右足Frの足先Ptを足先載せ部(アクセルペダル22)に載せ、踵Phをフロアカーペット13の踵載せ部25に載せている。
【0100】
車両の走行中に前面衝突が発生すると、図7(B)において実線で示すように、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動する場合がある。
【0101】
一方、上記前面衝突により、車両に対し前方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ75によって検出されると、乗員保護装置では、その検出信号に基づき制御装置76からインフレータ30に対しこれを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ30から主エアバッグ85内へ膨張用ガスGが供給される。
【0102】
この供給された膨張用ガスGにより、主エアバッグ85では、少なくとも押上げ部87と、その押上げ部87の車幅方向についての外側方となる箇所の近傍部分とが膨張する。これに伴い、フロアカーペット13において、主エアバッグ85の膨張部分(押上げ部87及びその側方近傍部分)に接する箇所が、略水平状に押し上げられる。上記箇所には踵載せ部25が含まれていることから、その踵載せ部25上の右足Frも押し上げられる。
【0103】
右足Frには、踵Ph又はその近傍部分に対してのみ上記押上げ部87の膨張による押し上げ力が踵載せ部25を通じて作用する。そのため、右足Frの足首Paが足首角度αを維持したまま押し上げられる(図7(B)参照)。運転者Dの右足Frにおいて、踵Ph以外の箇所が直接押し上げられる現象は起こりにくい。従って、衝突時の衝撃によりトーボード21、足先載せ部(アクセルペダル22)等が車両後方側へ移動して、右足Frに対し前後方向のモーメントが作用しても、上記足首角度αが狭くなる現象(足首Paの背屈)が起こりにくい。
【0104】
また、主エアバッグ85に供給された膨張用ガスGの一部は、同主エアバッグ85の上側の基布86Aにおいて踵載せ部25の車幅方向外側方近傍に設けられた流出口88を通じて主エアバッグ85の外部へ流出する。この膨張用ガスGは、主エアバッグ85とフロアカーペット13との間に収容された補助エアバッグ89内に流入し、同補助エアバッグ89を膨張させる。この膨張により、補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接する箇所91とからなる足受け止め部92は、押上げ部87にて押し上げられた踵載せ部25よりも高い位置まで突出する。
【0105】
ここで、補助エアバッグ89は、膨張用ガスGによる膨張前の段階から主エアバッグ85の外部(上側)に位置している。そのため、補助エアバッグ89は自身の膨張の過程で、流出口88を通って主エアバッグ85の外部へ飛び出す必要がなく、その分、補助エアバッグ89は早期に膨張する。
【0106】
そして、上記足受け止め部92により、踵載せ部25とともに押し上げられた右足Frの少なくとも踵Phが車幅方向についての一方(外側方)から受け止められる。この際、足受け止め部92は、踵載せ部25とそれよりも高い位置(踵Phよりも高い位置)との間に位置し、足先Ptのみを受け止める場合よりも、右足Frの広い領域を受け止める。そのため、足首Paの捩れが効率よく抑制される。
【0107】
さらに、足受け止め部92の運転者D側の表面91Aが、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続して形成されていることから、両表面91A,25A間に隙間が形成されることがなく、右足Frの外縁部分が隙間に入り込んで足首Paが捩れる現象が起こらない。
【0108】
従って、第3実施形態によると、上述した(1)に加え、次の効果が得られる。ここでは、車幅方向外側の踵載せ部25、押上げ部87、足受け止め部92等による効果についてのみ説明するが、車幅方向内側の踵載せ部26、押上げ部93、足受け止め部94等による効果についても同様である。
【0109】
(7)膨張状態の主エアバッグ85のうち、踵載せ部25よりも下方に位置する部分によって押上げ部87を構成している。また、主エアバッグ85において踵載せ部25の車幅方向近傍に、膨張用ガスGを主エアバッグ85の外部へ流出するための流出口88を設けるとともに、その膨張用ガスGにより膨張させられる補助エアバッグ89を設けている。そして、この補助エアバッグ89と、フロアカーペット13において補助エアバッグ89に接触する箇所91とによって足受け止め部92を構成している(図13(B)参照)。このため、押上げ部87及び足受け止め部92を成立させ、また、足受け止め部92の運転者D側の表面91Aを、踵載せ部25の運転者D側の表面25Aに連続させることができ、足首Paの背屈及び捩れを確実に抑制する上記(1)の効果を奏することができる。
【0110】
(8)補助エアバッグ89を、膨張用ガスGによる膨張前には主エアバッグ85の外部(上側)に収容している(図13(A)参照)。そのため、車両の前面衝突に際し、補助エアバッグ89を早期に膨張させて足受け止め部92を形成し、右足Frが捩られるのを確実に抑制することができる。
【0111】
(9)補助エアバッグ89を折り畳まれた状態にするにせよ、折り畳まれていない状態にするにせよ、その作業は主エアバッグ85の外部で行なうこととなる。広い空間での作業となるため、作業がしやすい。
【0112】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<第2実施形態に関する事項>
・膨張部が上下方向に並設され、かつ膨張用ガスGによりそれぞれ膨張させられることを条件に、同膨張部を3つ以上設けてもよい。
【0113】
・複数のインフレータを用い、各膨張部81,82に対し、異なるインフレータから膨張用ガスGを供給するようにしてもよい。この場合、インフレータの数を膨張部と同数又はそれ以下とする。同数の場合には、インフレータと膨張部とを1対1で対応付け、各インフレータから対応する膨張部に膨張用ガスGを供給する。
【0114】
<第3実施形態に関する事項>
・膨張用ガスGによる膨張前における補助エアバッグ89を第3実施形態とは異なる箇所に収容してもよい。例えば、図14(A)に示すように、主エアバッグ85の内部空間の一部を補助エアバッグ89の配置のためのスペースとして利用し、補助エアバッグ89を主エアバッグ85の内部に収容してもよい。
【0115】
このようにすると、車両の非前面衝突時には、主エアバッグ85及び補助エアバッグ89の設置スペースが小さくてすみ、これらの主エアバッグ85や補助エアバッグ89は足先載せ部(アクセルペダル22、フットレスト24等)やそれらの足先載せ部に載せた足先Ptの邪魔となりにくい。
【0116】
また、車両の前面衝突時には、膨張用ガスGによって主エアバッグ85が膨張させられる過程で、その膨張用ガスGの圧力が補助エアバッグ89に加わる。この圧力により、図14(B)に示すように、補助エアバッグ89が流出口88を通じて主エアバッグ85の外部へ押し出される。さらに、主エアバッグ85内の膨張用ガスGの一部が流出口88から流出して補助エアバッグ89内に流入する。この流入する膨張用ガスGによって補助エアバッグ89が膨張する。補助エアバッグ89が膨張した状態では、その裏表の関係が、同補助エアバッグ89が主エアバッグ85内に収容されているときとは逆になる。ここで、流出口88として、幅の狭いスリット状をなすものを採用すれば、流出口88及びその近傍での補助エアバッグ89の膨張厚みが流出口88によって規制される。従って、狭い空間でも補助エアバッグ89を膨張させることができる。
【0117】
・右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させてもよいし、これに加え又は代えて、左足Flの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させてもよい。図15及び図16は、右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させる例を示している。このように右足Frの車幅方向についての両側で補助エアバッグ89を膨張させると、右足Frが車幅方向のいずれの方向にも動きにくくなるため、背屈抑制効果を確保しつつ同右足Frの捩れをより一層確実に抑制することができる。
【0118】
・第3実施形態においてもまた、第1及び第2実施形態におけるのと同様に、押上げ部として傾斜押上げ部47,57を設ける。そして、車両の前面衝突に際し、踵Phから車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしてもよい。
【0119】
<第1及び第2実施形態に関して共通する事項>
・車両が、足受け止め部55,58のブレーキペダル23との干渉が問題とならない、又は干渉を別の手段で回避できるものである場合には、傾斜押上げ部47,57によって、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるようにしてもよい。
【0120】
これに関連して、傾斜押上げ部47,57の一方については、車幅方向についてブレーキペダル23に近づくほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押上げるように、他方については車幅方向についてブレーキペダル23から遠ざかるほど低くなるように踵載せ部25,26を傾斜させた状態で押し上げるようにしてもよい。
【0121】
・エアバッグ40とは異なる手段によって傾斜押上げ部47,57を構成してもよい。例えば、押上げ板及びアクチュエータの組み合わせを傾斜押上げ部とし、これを踵載せ部25,26の下側に配置する。そして、車両の前面衝突時には、アクチュエータを動作させて押上げ板を上昇させて踵載せ部25,26を傾斜状態で押し上げるようにしてもよい。
【0122】
・空間Sの車幅方向について3つ以上の箇所にテザーを設けてもよい。ただし、この場合には、踵Phから車幅方向の一方側へ離れるほど傾斜押上げ部47,57の高さが低くなるようにテザーの膨張規制に係る長さ(高さ)を設定する。
【0123】
<第1〜第3実施形態に関して共通する事項>
・クラッチペダルを装備した車両では、クラッチペダルを足先載せ部としてもよい。
・足先載せ部は前席の乗員が車両走行時に足先Ptを載せる箇所である。従って、運転席に限らず助手席にこういった箇所がある車両では、この箇所を足先載せ部とし、本発明の乗員保護装置を適用してもよい。この場合、例えば、トーボード21を足先載せ部としてもよい。
【0124】
・前記フロアカーペット13に代え、エアバッグ40(上側の外基布42A)の一部を踵載せ部25,26としてもよい。
・本発明の乗員保護装置は、フロアカーペットに代えて樹脂製等のシートが床に敷設された車両や、何ら床に敷設されない車両にも適用可能である。後者の場合、乗員保護装置は露出した状態で使用されてもよいし、またフロアマット等によって隠された状態で使用されてもよい。
【0125】
・エアバッグ40、主エアバッグ85、補助エアバッグ89,95は、上記膨張用ガスとは異なる種類の膨張流体によって膨張させられるものであってもよい。この場合には、膨張流体をエアバッグ40等に供給する膨張流体発生源として、上記インフレータ30とは異なるものを用いることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態における車両の乗員保護装置について、その一部を破断して示す概略側面図。
【図2】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの一部を破断して示す平面図。
【図3】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの膨張領域を示す平面図。
【図4】第1実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの上側の外基布を取り除いた状態を示す平面図。
【図5】第1実施形態におけるエアバッグの前部を示す部分平面図。
【図6】第1実施形態における乗員保護装置の後部を示す部分平面図。
【図7】第1実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時におけるアクセルペダルと右足との関係を示す側断面図、(B)は乗員保護装置の作動時におけるアクセルペダルと右足との関係を示す側断面図。
【図8】第1実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図9】本発明を具体化した第2実施形態において、上下一対の膨張部により足受け止め部を構成した乗員保護装置の部分平面図。
【図10】第2実施形態において、乗員保護装置の非作動時における足受け止め部の状態を示す図であり、図9のX−X線に沿った断面構造を示す断面図。
【図11】第2実施形態において、乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図12】本発明を具体化した第3実施形態における乗員保護装置について、エアバッグの一部を破断して示す平面図。
【図13】第3実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図14】補助エアバッグを主エアバッグの内部に収容した別の実施形態を示す図であり、(A)は乗員保護装置の非作動時における状態を右足とともに示す概略断面図、(B)は乗員保護装置の作動時における状態を右足とともに示す概略断面図。
【図15】右足の車幅方向両側で補助エアバッグを膨張させるようにした別の実施形態を示す乗員保護装置の部分平面図。
【図16】図15の乗員保護装置が作動したときの状態を右足とともに示す概略断面図。
【符号の説明】
【0127】
13…フロアカーペット、14…運転席(前席)、22…アクセルペダル(足先載せ部)、23…ブレーキペダル、24…フットレスト(足先載せ部)、25,26…踵載せ部、25A,27A,91A…表面、40…エアバッグ、47,57…傾斜押上げ部(押上げ部)、53,54…テザー、55,58,92,94…足受け止め部、56…最下部、81,82…膨張部、85…主エアバッグ、87,93…押上げ部、88…流出口、89,95…補助エアバッグ、D…運転者(乗員)、Fr…右足(足)、Fl…左足(足)、G…膨張用ガス(膨張流体)、Ph…踵、Pt…足先、S…空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の足の踵が載せられる踵載せ部と、同足の足先が載せられる足先載せ部とが前席の前方に設けられた車両に適用されるものであり、
前記車両の前面衝突に際し、前記踵載せ部を押し上げる押上げ部と、
前記車両の前面衝突に際し、前記押上げ部にて押し上げられた前記踵載せ部よりも高い位置まで突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられた前記足の少なくとも前記踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部と
を備え、
前記足受け止め部の前記乗員側の表面が、前記踵載せ部の前記乗員側の表面に連続して形成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、前記踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように前記踵載せ部を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部からなり、
前記足受け止め部は、前記車両の前面衝突に際し、傾斜状態の前記踵載せ部における最下部近傍から上方へ突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられる前記足の少なくとも前記踵を受け止めるものである請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられるエアバッグ内であって前記踵載せ部よりも下方の空間により構成されており、
前記空間の車幅方向についての複数箇所には、前記踵から前記一方側へ離れるほど高さが低くなるように前記傾斜押上げ部の膨張を規制するテザーが設けられており、
前記踵載せ部は、前記膨張の規制された前記傾斜押上げ部により傾斜させられる請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記車両の前面衝突に際し、膨張流体により膨張させられるエアバッグにより構成されている請求項2又は3に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記足受け止め部は、上下方向に並設され、かつ前記膨張流体によりそれぞれ膨張させられる複数の膨張部を含む請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項6】
前記足先載せ部は、ブレーキペダルを基準として車幅方向の一方側に配設されており、
前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、車幅方向について前記ブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させた状態で押上げる請求項2〜5のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項7】
前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられた状態の主エアバッグであって前記踵載せ部よりも下方の部分により構成されており、
前記主エアバッグにおいて前記踵載せ部の車幅方向近傍には、前記膨張流体を同主エアバッグの外部へ流出するための流出口が設けられており、
前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記流出口から流出する前記膨張流体により膨張させられる補助エアバッグにより構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項8】
前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグの外部に収容されている請求項7に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項9】
前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグ内に収容されており、前記車両の前面衝突に際し、前記膨張流体により前記流出口を通じて前記主エアバッグから飛び出して膨張するものである請求項7に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項1】
乗員の足の踵が載せられる踵載せ部と、同足の足先が載せられる足先載せ部とが前席の前方に設けられた車両に適用されるものであり、
前記車両の前面衝突に際し、前記踵載せ部を押し上げる押上げ部と、
前記車両の前面衝突に際し、前記押上げ部にて押し上げられた前記踵載せ部よりも高い位置まで突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられた前記足の少なくとも前記踵を車幅方向についての少なくとも一方から受け止める足受け止め部と
を備え、
前記足受け止め部の前記乗員側の表面が、前記踵載せ部の前記乗員側の表面に連続して形成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、前記踵から車幅方向のいずれか一方側へ離れるほど低くなるように前記踵載せ部を傾斜させた状態で押し上げる傾斜押上げ部からなり、
前記足受け止め部は、前記車両の前面衝突に際し、傾斜状態の前記踵載せ部における最下部近傍から上方へ突出して、前記踵載せ部とともに押し上げられる前記足の少なくとも前記踵を受け止めるものである請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられるエアバッグ内であって前記踵載せ部よりも下方の空間により構成されており、
前記空間の車幅方向についての複数箇所には、前記踵から前記一方側へ離れるほど高さが低くなるように前記傾斜押上げ部の膨張を規制するテザーが設けられており、
前記踵載せ部は、前記膨張の規制された前記傾斜押上げ部により傾斜させられる請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記車両の前面衝突に際し、膨張流体により膨張させられるエアバッグにより構成されている請求項2又は3に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記足受け止め部は、上下方向に並設され、かつ前記膨張流体によりそれぞれ膨張させられる複数の膨張部を含む請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項6】
前記足先載せ部は、ブレーキペダルを基準として車幅方向の一方側に配設されており、
前記傾斜押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し、車幅方向について前記ブレーキペダルから遠ざかるほど低くなるように踵載せ部を傾斜させた状態で押上げる請求項2〜5のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項7】
前記押上げ部は、前記車両の前面衝突に際し膨張流体により膨張させられた状態の主エアバッグであって前記踵載せ部よりも下方の部分により構成されており、
前記主エアバッグにおいて前記踵載せ部の車幅方向近傍には、前記膨張流体を同主エアバッグの外部へ流出するための流出口が設けられており、
前記足受け止め部の少なくとも一部は、前記流出口から流出する前記膨張流体により膨張させられる補助エアバッグにより構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置。
【請求項8】
前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグの外部に収容されている請求項7に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項9】
前記補助エアバッグは、前記膨張流体による膨張前には前記主エアバッグ内に収容されており、前記車両の前面衝突に際し、前記膨張流体により前記流出口を通じて前記主エアバッグから飛び出して膨張するものである請求項7に記載の車両の乗員保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−208758(P2009−208758A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250930(P2008−250930)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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