説明

車両の制御装置

【課題】車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、エンジン停止から再始動までの時間を、より適切に設定することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車室内の湿度を検出する湿度センサ30と、停止条件が成立してエンジン制御手段44によりエンジン2が停止されたときに、エンジン2の停止中における湿度上昇率Rhを湿度センサ30による検出湿度に基づいて算出する湿度上昇率算出手段46と、湿度上昇率算出手段46により算出された湿度上昇率Rhに基づいて、エンジン停止時間Tsを決定するエンジン停止時間決定手段43とを備え、エンジン制御手段44は、停止条件が成立してエンジンを停止した後、エンジン停止時間Tsが経過した時に、エンジン2を始動すると共に除湿機Aを起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの運転中に停止条件が成立したときにエンジンを停止し、エンジンの停止中に始動条件が成立したときにエンジンを始動する車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の停止中にエンジンを一時的に停止することによって、停車中のアイドル運転により燃料が消費されることを抑制するようにした車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された車両の制御装置においては、車速がゼロになって車両が停止し、且つクラッチスイッチがOFFとなったとき(停止条件が成立したとき)にエンジンを停止し、エンジン停止から所定時間(S2)が経過したとき(始動条件が成立したとき)に、エンジンを再始動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−358729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載され車両の制御装置においては、エンジンの始動条件である所定時間(エンジン停止から再始動までの経過時間)を、どのように設定するかについての記載はない。
【0006】
そして、この所定時間を一定とした場合には、走行により車室内の自然換気が行われていた車両が停止してエンジンを停止したときや、エンジンが停止するまでエンジンの駆動力によって除湿機が作動していて、エンジンの停止と共に除湿機の作動も停止したときに、外気や車室内の状況によっては、エンジンが始動するまでに車室内の湿度の上昇により窓ガラスが曇ってしまう場合がある。そして、このように窓ガラスが曇ってしまうと、次に車両を発進させる際に、運転者は窓ガラスの曇りを取り除かなければならないという不都合がある。
【0007】
また、その一方で、窓ガラスが曇らないようにエンジンの停止から始動までの時間を短く設定すると、車両の停止中にエンジンを停止して燃料消費を抑制するという効果が不十分になるという不都合がある。
【0008】
そこで、本発明は、車両の停止中にエンジンを一時的に停止する制御を行う際に、エンジン停止から再始動までの時間を、より適切に設定することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、エンジンと該エンジンの駆動力により作動して車室内を除湿する除湿機とを備えた車両に対して、所定のエンジン停止条件が成立したときに前記エンジンを停止し、その後、所定のエンジン停止時間が経過した時に、前記エンジンを始動すると共に前記除湿機を起動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置であって、前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、前記停止条件が成立して前記エンジン制御手段により前記エンジンが停止されたときに、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を、前記湿度検出手段による検出湿度に基づいて算出する湿度上昇率算出手段と、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、前記エンジン停止条件が成立して前記エンジン制御手段によりエンジンが停止されたときに、前記湿度上昇率算出手段により算出される前記湿度上昇率が高いほど、前記車両の窓ガラスが曇り易くなる。そこで、前記エンジン停止時間決定時間により、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を設定することにより、前記エンジン停止時間を前記車両の窓ガラスの曇り易さに応じた時間に設定することができる。そのため、前記車両の窓ガラスが曇ることを防止しつつ、前記エンジンの停止時間を極力長く設定することができる。
【0011】
また、前記エンジン停止時間決定時間は、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が所定の基準上昇率よりも高いときは、所定の初期設定時間を短縮して前記エンジン停止時間を決定し、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低いときには、前記初期設定時間を延長して前記エンジン停止時間を決定することを特徴とする。
【0012】
かかる本発明によれば、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも高いときは、前記車両の窓ガラスが曇り易い状況にあると想定される。そのため、この場合は、前記エンジン停止時間決定時間により、前記初期設定時間を短縮して前記エンジン停止時間を設定することによって、前記車両の窓ガラスの曇り易さに応じた前記エンジン停止時間を設定することができる。それに対して、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低いときには、前記車両の窓ガラスが曇り難い状況にあると想定される。そのため、この場合には、前記エンジン停止時間決定時間により、前記初期設定時間を延長して前記エンジン停止時間を設定することによって、前記車両の窓ガラスの曇り難さに応じた前記エンジン停止時間を設定することができる。
【0013】
また、前記エンジン停止時間決定時間は、前記エンジンが停止する際の前記湿度検出手段の検出湿度と、所定の基準車室内湿度との湿度差を算出し、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも高いときは、該湿度差が大きいほど前記基準エンジン停止を決定するときの前記短縮の程度を小さくし、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低いときには、該湿度差が大きいほど前記エンジン停止時間を決定するときの前記延長の程度を大きくすることを特徴とする。
【0014】
かかる本発明によれば、前記エンジンが停止する際の前記湿度検出手段の検出湿度と、前記基準車室内湿度との湿度差が大きいほど、前記エンジンを停止したときに前記車両の窓ガラスが曇り易い状況となる。そこで、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも高く、前記車両の窓ガラスが曇り易い状況にあるときは、前記エンジン停止時間決定時間により、前記湿度差が大きいほど前記初期設定時間を短縮する程度を大きくして、前記エンジン停止時間を設定することによって、より適切な前記エンジン停止時間を設定することができる。また、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低く、前記車両の窓ガラスが曇り難い状況にあるときには、前記エンジン停止時間決定時間により、前記湿度差小さいほど前記初期設定時間を延長する程度を大きくすることによって、より適切な前記エンジン停止時間を設定することができる。なお、前記エンジンが停止する際とは、前記エンジンが停止した時点における前記車両の車室内の湿度と同一視できるレベルの湿度が検出できるタイミングを意味しており、例えば、前記エンジンが停止する直前や直後が相当する。
【0015】
また、前記エンジン制御手段は、前記エンジン停止時間決定時間により設定された前記エンジン停止時間を、次に前記エンジン停止条件の成立により前記エンジンを停止してから、前記エンジンを再始動するまでのエンジン停止時間として用いることを特徴とする。
【0016】
かかる本発明によれば、前記湿度上昇率算出手段は、最長でエンジンが停止している間における湿度の上昇率を算出することができるため、湿度上昇率の算出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図。
【図2】窓ガラスの曇りを防止して、エンジンを一時的に停止する処理の第1実施形態のフローチャート。
【図3】エンジン停止時間の設定処理のフローチャート。
【図4】曇り安さ,曇り難さを判断するためのマップ、及び基準上昇率用の時間設定マップの説明図。
【図5】低上昇率用の時間設定マップ、及び高上昇率用の時間設定マップの説明図。
【図6】窓ガラスの曇りを防止して、エンジンを一時的に停止する処理の第2実施形態のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の車両の制御装置が搭載された車両の構成図である。本実施形態の車両は、エンジン2及びモータ・ジェネレータGを駆動源とするハイブリッド車であり、排気ガスの排出量を低減すると共に燃料消費を抑制するために、車両が信号待ちで停止したときや渋滞中に停止したとき等に、停止条件の成立によりエンジン2を停止し、始動条件の成立によりエンジン2を再始動するエンジン停止・再始動機能(自動アイドルストップ機能)を備えている。
【0020】
また、本実施形態の車両は、車室内の暖房及び冷房を行う空調装置1を備えており、空調装置1は、冷凍サイクル装置A(本発明の除湿機の機能を含む)による冷房機能及び除湿機能と、エンジン2の冷却液の循環通路Bに設けたヒータコアHによる暖房機能とを有している。
【0021】
そして、マイクロコンピュータ等により構成される電子ユニットである制御装置4(本発明の車両の制御装置に相当する)により、エンジン2、モータ・ジェネレータG、空調装置1の作動が制御される。制御装置4は、所定のプログラムを実行することにより、車両状況検出手段41、曇り判定湿度推定手段42、エンジン停止時間決定手段43、エンジン制御手段44、空調制御手段45、及び湿度上昇率算出手段46として機能する。
【0022】
制御装置4には、車室内の湿度を検出する湿度センサ30(本発明の湿度検出手段に相当する)、車室内の温度を検出する車室内センサ31、車外の気温を検出する外気温センサ32、日射量を検出する日射センサ33、車速を検出する車速センサ34、及び後述する蒸発器12の下流側の付近の温度を検出する蒸発器温度センサ122による検出信号が入力される。また、制御装置4には、車室内への空調方向を設定する風向スイッチ35と、空調条件(温度、風量等)を設定する空調スイッチ36の操作信号が入力される。
【0023】
また、制御装置4から出力される制御信号によって、エンジン2、モータ・ジェネレータG,空調装置1等の作動が制御される。
【0024】
空調装置1は、冷凍サイクル装置Aの構成として、エンジン2により駆動される圧縮機6、凝縮器9、受液器10、膨張弁11、及び蒸発器12を備えている。また、暖房用の構成として、エンジン2の冷却液循環路Bを構成する、ヒータコアH、エンジン2により駆動されるウォータポンプP、サーモスタットTh、及びラジエータRを備えている。
【0025】
エンジン2とモータ・ジェネレータGは回転軸21により直結され、この構成により、エンジン2とモータ・ジェネレータGによる駆動力の発生と、減速時におけるモータ・ジェネレータGによる回生電力の発生を可能としている。エンジン2及びモータ・ジェネレータGの回転は、変速機Trを介して車輪Wに伝達される。
【0026】
また、モータ・ジェネレータGは、エンジン2を始動させるためのスタータモータの機能を有し、さらに、モータ・ジェネレータGの回生電力により、蓄電装置17のバッテリ18が充電される。
【0027】
次に、冷凍サイクル装置Aは、圧縮機6と、凝縮器9と、受液器10と、膨張弁11と、蒸発器12を、圧縮機6を上流側とし、蒸発器12を下流側として、これらを順次冷媒循環路3に接続して構成されている。冷凍サイクルは、冷媒(フロンや二酸化炭素等からなる)を蒸発、圧縮、凝縮、膨張させるものである。
【0028】
制御装置4の空調制御手段45は、空調スイッチ36により設定された温度と、外気温度、湿度、日射量等に基いて目標蒸発器温度を算出し、該目標蒸発器温度と蒸発器温度センサ122の検出温度との差を減少させるように、圧縮機6を制御する。圧縮機6はエンジン2の駆動力により作動し、エンジン2の回転軸81の先端に設けられたプーリ82と、圧縮機6の駆動軸84に設けられたプーリ85と、プーリ82,85を連動させるベルト83とにより、エンジン2の駆動力が圧縮機6に伝達される。
【0029】
また、圧縮機6の駆動軸84に電磁クラッチ86が設けられ、空調制御手段45は、電磁クラッチ86により、エンジン2の駆動力の圧縮機6への伝達と遮断を切換える。
【0030】
凝縮器9は、圧縮機6により圧縮されて高温・高圧になった冷媒を熱交換により冷却し、液化する。受液器10は、凝縮器9により液化された冷媒を一時的に蓄えるボンベであり、図示しないドライヤを介して膨張弁11に接続されている。そして、該ドライヤにより水分が除去された冷媒が膨張弁11に供給される。
【0031】
膨張弁11は、蒸発器12の入口側に取り付けられ、高温高圧の液化された冷媒が通過する際に、冷媒を液体から霧状の気体に変化させて噴射する。膨張弁11には絞り弁(図示しない)が内設され、空調制御手段45は、該絞り弁の開度を制御して蒸発器12に噴射する冷媒の流量(冷媒能力)を調節している。
【0032】
蒸発器12は、冷媒の気化により車室内の空気の熱を奪って冷却する熱交換器であり、空調ケース14に収容されている。蒸発器12の上流側にはブロワファン121が設けられ、ブロワファン121の回転数が空調制御手段45により制御される。ブロワファン121の回転により、蒸発器12で除湿・冷却された空気や、ヒータコアHで加熱された空気が車室内に吹出されると共に、車室内の空気又は外気が空調ケース14に吸入される。車室内への空気の送出は、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145を介して行なわれる。
【0033】
次に、暖房側の構成について説明する。エンジン2の冷却液は、エンジン2の駆動力で作動する機械式のウォーターポンプPにより、サーモスタットThからラジエータRに供給されると共に、エンジン2のウォータジャケット内を循環する。また、エンジン2の冷却液は、車室内を暖房するための熱源として利用されるために分流され、ウォータポンプPからヒータコアHを経てウォータポンプPに戻る循環通路Bを流通する。
【0034】
エンジン2の回転軸81に設けられたプーリ90と、ウォータポンプPの駆動軸94に設けられたプーリ92と、プーリ90,92を連動させるベルト91とにより、エンジンの駆動力がウォータポンプPに伝達される。
【0035】
ヒータコアHは、ラジエータRにおいてエンジン2により加温された冷却液の熱で、周囲の空気を加熱する熱交換を行なうものである。ヒータコアHの上流側には、蒸発器12を通過した空気をヒータコアH側に導いたり、迂回させたりするためのエアミックスドア142が設置されている。
【0036】
エアミックスドア142は、例えば、ヒータコアHの空気の入口を開閉する回動式の板ドアからなり、回転中心側に設置されたエアミックスサーボモータ(図示しない)によって開閉される。エアミックスドア142は、閉塞ポジションaにあるときに空調ケース14内の空気がヒータコアHに流れることを阻止し、中間ポジションbにあるときに空調ケース14内の空気の半分がヒータコアHに流れるようにし、解放ポジションcにあるときに空調ケース14内の空気が全部ヒータコアHに流れるようにする。空調制御手段45は、エアミックスサーボモータ(図示しない)を作動させて、エアミックスドア142の位置を変更することにより、車室内への空気の吹出し温度を制御する。
【0037】
空調ケース14は、上流側に内気導入口と外気導入口との切替えを行なうインテークドア141が設置され、下流側に蒸発器12により除湿・冷却された空気、又はヒータコアHにより加温された空気をデフロスタに吐出させるためのデフドア143、ベンチレータに吐出させるためのベントドア144、及び足元に吐出させるためのフロアドア145が、それぞれ設置されている。インテークドア141、デフドア143、ベントドア144、フロアドア145は、サーボモータにより電動的に回動させてもよく、手動により回動させるようにしてもよい。
【0038】
次に、図2,図3に示したフローチャートに従って、エンジン制御手段44によるエンジン2の停止・再始動処理の第1実施形態について説明する。
【0039】
[第1実施形態]
エンジン制御手段44は、図2に示したフローチャートを繰り返し実行して、エンジン2の停止・再始動処理を実行する。エンジン制御手段44は、STEP1で、エンジン停止条件が成立しているか否かを判断する。
【0040】
ここで、エンジン停止条件として、「湿度センサ30により検出された車室内の湿度Hsが、曇り判定湿度推定手段42により推定された曇り判定湿度Hdよりも低いこと」が設定されている。
【0041】
曇り判定湿度推定手段42は、車内温センサ31により検出した車室内の温度、外気温センサ32により検出した外気温、日射センサ33により検出した日射量、車速センサ34により検出した車両が停止する直前の車速、風向スイッチ35により設定されたブロワファン121による車室内への送風方向、空調スイッチ36により設定された空調条件等に基いて、車両が置かれた状況を検出する。
【0042】
なお、車両が置かれた状況の検出は、必ずしもこれら全ての要素に基いて行なう必要はなく、例えば外気温のみに基いて行なうようにしてもよい。また、車両の窓の開閉度合い等、さらに他の要素と組み合わせて、車両が置かれた状況を検出するようにしてもよい。
【0043】
そして、曇り判定湿度推定手段42は、検出した車両が置かれた状況を、予め設定された車両が置かれた状況と曇り判定湿度Hdとの相関関係を示すマップに適用して、曇り判定湿度Hd(本発明の基準車室内湿度に相当する)を推定する。なお、このマップは実験やコンピュータシミュレーション等により決定され、該マップのデータは予めメモリ(図示しない)に記憶されている。また、マップではなく、車両が置かれた状況と曇り判定湿度Hdとの相関式により、曇り判定湿度Hdを推定するようにしてもよい。
【0044】
STEP1でエンジン停止条件が成立したとき(車室内の検出湿度Hs<曇り判定湿度Hd)はSTEP2に進む。STEP2はエンジン停止時間決定時間43による処理であり、エンジン停止時間決定時間43は、続くSTEP3でエンジン2が停止される直前の湿度センサ30の検出湿度Hsと曇り判定湿度Hdとの湿度差ΔH(=検出湿度Hs−曇り判定湿度Hd)を算出する。
【0045】
次のSTEP3で、エンジン制御手段44は、エンジン2を停止する。続くSTEP4,STEP5は、エンジン停止時間決定時間43による処理である。エンジン停止時間決定時間43は、STEP4で、エンジン2を停止した直後の湿度センサ30の検出湿度Hs1をメモリ(図示しない)に保持する。
【0046】
また、STEP5で、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン始動タイマのタイマ時間を、初期設定時間Tbに設定する。なお、次回以降でエンジン2が停止したときには、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン始動タイマのタイマ時間を、前回のエンジン停止時に後述するSTEP9で設定されたエンジン停止時間Tsに設定する。
【0047】
ここで、エンジン停止時間決定時間43は、初期設定時間Tbを、図4(a)に示した「基準上昇率用の時間設定マップ」を用いて決定する。図4(a)に示した「基準上昇率Rb用の時間設定マップ」は、エンジン2を停止したときの車室内の湿度の上昇率が、予め想定された基準上昇率Rbであるときの、エンジン2の停止直前における湿度センサ30の検出湿度と曇り判定湿度Hdとの湿度差ΔHと初期設定時間Tbとの対応関係を、縦軸を初期設定時間Tbとし、横軸を湿度差ΔHとして設定したものである。
【0048】
エンジン停止時間決定時間43は、STEP2で算出した湿度差ΔHを「基準上昇率用の時間設定マップ」に適用して、対応する初期設定時間Tbを求める。例えば、湿度差ΔHがΔH_1であったときには、初期設定時間TbとしてがTb_1が求められる。
【0049】
次のSTEP6で、エンジン制御手段44は、エンジン始動タイマをスタートし、STEP7でエンジン始動タイマがタイムアップするのを待つ。続くSTEP8〜STEP9は、エンジン停止時間決定時間43による処理である。
【0050】
エンジン停止時間決定時間43は、STEP8でエンジン2が再始動される直前の湿度センサ30の検出湿度Hs2をメモリに保持する。そして、次のSTEP9で、エンジン停止時間決定時間43は、図3に示したフローチャートに従ってエンジン停止時間Tsを決定する。
【0051】
図3のSTEP20は湿度上昇率算出手段46による処理であり、湿度上昇率算出手段46は、図2のSTEP4でメモリに保持されたエンジン2が停した直後の車室内の湿度Hs1と、STEP8でメモリに保持されたエンジン2が再始動される直前の車室内の湿度Hs2を用いて、以下の式により湿度上昇率Rhを算出する。
【0052】
Rh=(Hs2−Hs1)/Tm ・・・・・ (1)
但し、Tm:エンジン始動タイマのタイマ時間(エンジン2が停止していた時間)。
【0053】
続くSTEP21で、エンジン停止時間決定時間43は、湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも低いか否かを判断する。そして、湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも低くなかったときには、STEP30に分岐して、湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも高いか否かを判断する。
【0054】
ここで、図4(b)は、縦軸を湿度(H)、横軸を時間(t)に設定して、エンジン2の停止中における基準上昇率Rbのラインを示したものである。湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも高いとき、すなわち、湿度上昇率Rhのラインの傾きが基準上昇率Rbのラインよりも大きいときには、車両の窓が曇り易いと想定することができる。
【0055】
また、湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも低いとき、すなわち、湿度上昇率Rhのラインの傾きが基準上昇率Rbのラインよりも小さいときには、車両の窓が曇り難いと想定することができる。
【0056】
そこで、エンジン停止時間決定時間43は、STEP21で湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも低いときにはSTEP22に進み、初期設定時間Tbを延長する処理を行って、次のエンジン停止時におけるエンジン停止時間Tsを決定する。
【0057】
具体的には、エンジン停止時間決定時間43は、図2のSTEP2で算出された湿度差ΔHを、図5(a)に示した「低上昇率用の時間設定マップ」に適用して、対応する延長時間Tuを求める。
【0058】
図5(a)に示した「低上昇率用の時間設定マップ」は、初期設定時間Tbの延長時間Tuと湿度差ΔHとの対応関係を、縦軸を延長時間(Tu)とし、横軸を時間(t)として設定したものである。
【0059】
ここで、エンジン2を停止したときの湿度差ΔHが大きいほど、エンジン2が停止しているときに車両の窓ガラスが曇り難くなる。そこで、図5(a)に示した「低上昇率用の時間設定マップ」は、湿度差ΔHが大きいほど延長時間Tuが長くなる設定とされている。例えば、湿度差ΔHがΔH_2であるときには、ΔH_2に対応するTu_1が延長時間Tuとして求められる。
【0060】
エンジン停止時間決定時間43は、以下の式(2)により、初期設定時間Tbを延長したエンジン停止時間Tsを算出し、次のエンジン2の停止時におけるエンジン停止時間Tsとして設定する。そして、STEP23に進み、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン停止時間Tsの決定処理を終了する。
【0061】
Ts=Tb+Tu ・・・・・ (2)
但し、Ts:エンジン停止時間、Tb:初期設定時間、Tu:延長時間。
【0062】
また、エンジン停止時間決定時間43は、STEP30で湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbよりも高いときにはSTEP31に進み、初期設定時間Tbを短縮する処理を行って、次のエンジン停止時におけるエンジン停止時間Tsを設定する。
【0063】
具体的には、エンジン停止時間決定時間43は、図2のSTEP2で算出された湿度差ΔHを、図5(b)に示した「高上昇率用の時間設定マップ」に適用して、対応する短縮時間Tdを求める。
【0064】
図5(b)に示した「高上昇率用の時間設定マップ」は、初期設定時間Tbの短縮時間Tdと湿度差ΔHとの対応関係を、縦軸を短縮時間(Td)とし、横軸を時間(t)として設定したものである。
【0065】
そして、エンジン2を停止したときの湿度差ΔHが小さいほど、エンジン2が停止しているときに車両の窓ガラスが曇り易くなる。そこで、図5(b)に示した「高上昇率用の時間設定マップ」は、湿度差ΔHが小さいほど短縮時間Tdが長くなる設定とされている。例えば、湿度差ΔHがΔH_3であるときには、ΔH_2に対応するTd_1が短縮時間Tdとして求められる。
【0066】
エンジン停止時間決定時間43は、以下の式(3)により、初期設定時間Tbを短縮したエンジン停止時間Tsを算出し、次のエンジン2の停止時におけるエンジン停止時間Tsとして決定する。そして、STEP23に進み、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン停止時間Tsの決定処理を終了する。
【0067】
Ts=Tb−Td ・・・・・ (3)
但し、Ts:エンジン停止時間、Tb:初期設定時間、Td:短縮時間。
【0068】
このように、エンジン停止時間決定時間43により、エンジン2の停止中における湿度上昇率Rhと、エンジン2を停止する直前における湿度差ΔHという、車両の窓ガラスの曇り易さに影響する要素を用いることで、エンジン停止時間Tsを、車両の窓ガラスの曇りが生じない範囲でより長い時間に設定することができる。そのため、エンジン2の停止による燃焼消費の低減効果を高めることができる。
【0069】
また、エンジン停止時間決定時間43は、湿度上昇率Rhが基準上昇率Rbと等しいときには、STEP40で、初期設定時間Tbを次のエンジン2の停止時におけるエンジン停止時間として決定する。そして、STEP23に進み、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン停止時間の設定処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、図2のSTEP9でエンジン停止時間Tsが設定されると、エンジン制御手段44は、次のSTEP10でエンジン2を始動し、STEP11で空調制御手段45を介して冷凍サイクル装置Aを起動すると共に、ブロワファン121を起動して、STEP1に戻る。冷凍サイクル装置Aとブロワファン121の起動により、車室内の除湿が開始されるため、車両の窓ガラスが曇ることを防止することができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、図6に示したフローチャートに従って、エンジン制御手段44によるエンジン2の停止・再始動処理の第2実施形態について説明する。エンジン制御手段44は、図6に示したフローチャートを繰り返し実行して、エンジン2の停止・再始動処理を実行する。
【0072】
エンジン制御手段44は、STEP50でエンジン停止条件が成立しているか否かを判断する。STEP50のエンジン停止条件は、上述した図2のSTEP1と同様である。STEP50でエンジン停止条件が成立するとSTEP51に進み、エンジン停止時間手段43が、STEP52でエンジン2が停止される直前の湿度センサ30の検出湿度Hsと曇り判定湿度Hdとの湿度差ΔH(=検出湿度Hs−曇り判定湿度Hd)を算出する。
【0073】
次のSTEP52で、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン始動タイマのタイマ時間を、初期設定時間Tbに設定する。初期設定時間Tbの設定処理は、上述した図2のSTEP5と同様である。続くSTEP54で、エンジン制御手段44は、エンジン始動タイマをスタートさせる。
【0074】
次のSTEP55で、エンジン停止時間決定時間43は、初期設定時間Tbを延長若しくは短縮してエンジン停止時間Tsを決定するか、或いは初期設定時間Tbをそのままエンジン停止時間Tsとして決定する処理を行う。この処理は、上述した図3と同様であるが、図3のSTEP20における湿度上昇率Rhとして、湿度上昇率算出手段46は、STEP52でエンジン2が停止された後、初期設定時間Tbからエンジン停止時間決定手段43による最大の短縮時間を減じた時間よりも、短い期間における湿度上昇率Rhを算出する。
【0075】
そして、エンジン停止時間決定時間43は、このようにして算出された湿度上昇率Rhと湿度差ΔHとを用いて、上述した図3のフローチャートによる処理を行ってエンジン停止時間Tsを決定する。そして、次のSTEP56で、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン始動タイマのタイマ時間をエンジン停止時間Tsに変更する。
【0076】
続くSTEP57でエンジン始動タイマがタイムアップしたときにSTEP58に進み、エンジン制御手段44は、エンジン2を始動する。また、STEP59で、エンジン制御手段44は、空調制御手段45を介して冷凍サイクル装置Aを起動すると共に、ブロワファン121を起動して、STEP50に戻る。冷凍サイクル装置Aとブロワファン121の起動により、車室内の除湿が開始されるため、車両の窓ガラスが曇ることを防止することができる。
【0077】
なお、上記実施の形態では、エンジン停止時間決定時間43は、エンジン2の停止中における湿度上昇率Rhとエンジン2を停止する直前の湿度差ΔHとを用いて、エンジン停止時間Tsを決定したが、湿度上昇率Rhのみを用いて、湿度上昇率Rhが高いほど、エンジン停止時間Tsを短い時間に設定するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態においては、本発明をハイブリッド車に適用した例を示したが、自動的にエンジンを停止し、再始動する自動アイドルストップ機能を備えた車両であれば、エンジンのみを駆動源とする車両に対しても本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…空調装置、2…エンジン、4…制御装置(車両の制御装置)、6…圧縮機、9…凝縮器、12…蒸発器、30…湿度センサ、31…車内温センサ、32…外気温センサ、33…日射センサ、34…車速センサ、35…風向スイッチ、36…空調スイッチ、41…車両状況検出装置、42…曇り判定湿度推定手段、43…エンジン停止時間決定手段、44…エンジン制御手段、45…空調制御手段、46…湿度上昇率算出手段、121…ブロワファン、A…冷凍サイクル装置、G…モータ・ジェネレータ、H…ヒータコア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと該エンジンの駆動力により作動して車室内を除湿する除湿機とを備えた車両に対して、所定のエンジン停止条件が成立したときに前記エンジンを停止し、その後、所定のエンジン停止時間が経過した時に、前記エンジンを始動すると共に前記除湿機を起動するエンジン制御手段を備えた車両の制御装置であって、
前記車両の車室内の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記停止条件が成立して前記エンジン制御手段により前記エンジンが停止されたときに、前記エンジンの停止中における前記車両の車室内の湿度上昇率を、前記湿度検出手段による検出湿度に基づいて算出する湿度上昇率算出手段と、
前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率に基づいて、前記エンジン停止時間を決定するエンジン停止時間決定手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の制御装置において、
前記エンジン停止時間決定時間は、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が所定の基準上昇率よりも高いときは、所定の初期設定時間を短縮して前記エンジン停止時間を決定し、前記湿度上昇率算出手段により算出された前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低いときには、前記初期設定時間を延長して前記エンジン停止時間を決定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の制御装置において、
前記エンジン停止時間決定時間は、前記エンジンが停止する際の前記湿度検出手段の検出湿度と、所定の基準車室内湿度との湿度差を算出し、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも高いときは、該湿度差が大きいほど前記基準エンジン停止を決定するときの前記短縮の程度を小さくし、前記湿度上昇率が前記基準上昇率よりも低いときには、該湿度差が大きいほど前記エンジン停止時間を決定するときの前記延長の程度を大きくすることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項記載の車両の制御装置において、
前記エンジン制御手段は、前記エンジン停止時間決定時間により決定された前記エンジン停止時間を、次に前記エンジン停止条件の成立により前記エンジンを停止してから、前記エンジンを再始動するまでのエンジン停止時間として用いることを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281304(P2010−281304A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137377(P2009−137377)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】