説明

車両の制御装置

【課題】発進前において流体伝動装置のオイル抜けを適切に解消することで、車両の発進応答性を向上させることが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、回転電機と、回転電機の駆動力が伝達されて回転する入力側回転体、及び、入力側回転体の回転がオイルを介して伝達されることで回転する出力側回転体を有する流体伝動装置と、流体伝動装置の入力側回転体の回転により駆動され、少なくとも流体伝動装置にオイルを供給するオイルポンプと、少なくとも回転電機を駆動する制御を行う制御手段と、を備え、制御手段は、当該制御手段が起動されてから車両が発進するまでの間に、回転電機を駆動する。これにより、車両の発進前に流体伝動装置のオイル抜けを適切に解消しておくことができ、車両の発進応答性を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータなどの流体伝動装置を備える車両に対して制御を行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、モータに接続されロックアップ機能を内蔵したトルクコンバータを有する電気自動車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−221806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された技術では、トルクコンバータなどにオイルを供給するオイルポンプは、モータによって駆動される。そのため、例えば車両の停止時には、モータが停止することでオイルポンプも停止する。これにより、例えば停止後の発進時において、トルクコンバータ内のオイルが抜けていることで、車両の発進応答性が低下してしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、発進前において流体伝動装置のオイル抜けを適切に解消することで、車両の発進応答性を向上させることが可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、車両の制御装置は、回転電機と、前記回転電機の駆動力が伝達されて回転する入力側回転体、及び、前記入力側回転体の回転がオイルを介して伝達されることで回転する出力側回転体を有する流体伝動装置と、前記流体伝動装置の前記入力側回転体の回転により駆動され、少なくとも前記流体伝動装置にオイルを供給するオイルポンプと、少なくとも前記回転電機を駆動する制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間に、前記回転電機を駆動する。
【0007】
上記の車両の制御装置は、回転電機と、オイルを介して回転電機の駆動力を伝達する流体伝動装置と、少なくとも流体伝動装置にオイルを供給するオイルポンプと、少なくとも回転電機を駆動する制御を行う制御手段と、を有する。流体伝動装置は、回転電機の駆動力が伝達されて回転する入力側回転体と、入力側回転体の回転がオイルを介して伝達されることで回転する出力側回転体とを有する。流体伝動装置は、例えばトルクコンバータや流体継手である。オイルポンプは、流体伝動装置の入力側回転体の回転により駆動される、つまり回転電機の駆動力によって駆動される。制御手段は、当該制御手段が起動されてから車両が発進するまでの間に、回転電機を駆動する。つまり、制御手段は、起動後における車両の停止時において(即ち発車前の段階で)、回転電機を回転させる制御を行うことでオイルポンプを駆動する。
【0008】
これにより、オイルポンプの駆動によって、流体伝動装置にオイルを適切に充填することができる。したがって、車両の発進前の段階で流体伝動装置のオイル抜けを解消しておくことができ、車両の発進応答性を向上させることが可能となる。例えば、オイルポンプの駆動専用の回転電機などを新たに追加することなく、車両の発進前に流体伝動装置のオイル抜けを適切に解消することができる。
【0009】
上記の車両の制御装置の一態様では、前記流体伝動装置における油量又は油圧を取得する取得手段を更に備え、前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間において、前記取得手段が取得した前記油量が所定量以上である場合、若しくは前記取得手段が取得した前記油圧が所定圧力以上である場合、前記回転電機の駆動を停止する。
【0010】
この態様では、取得手段は、流体伝動装置における油量又は油圧を取得する。ここで、取得手段が取得する油量又は油圧は、センサによって検出された値だけでなく、所定のパラメータに基づいて推定された値も含むものとする。一方で、制御手段は、当該制御手段が起動されてから車両が発進するまでの間において、流体伝動装置内の油量が所定量以上である場合、若しくは流体伝動装置内の油圧が所定圧力以上である場合、回転電機の駆動を停止する。つまり、制御手段は、油量が所定量未満である場合にのみ、若しくは油圧が所定圧力未満である場合にのみ、回転電機を駆動する制御を行う。この場合、制御手段は、油量が所定量に達するまで、若しくは油圧が所定圧力に達するまで、回転電機を駆動する制御を行う。
【0011】
上記の態様によれば、油量が所定量以上である場合若しくは油圧が所定圧力以上である場合に回転電機の駆動を停止することで、回転電機の無駄な駆動を抑制することができ、電費の悪化を抑制することが可能となる。言い換えると、油量が所定量に達するまで若しくは油圧が所定圧力に達するまで回転電機を駆動することで、流体伝動装置のオイル充填に必要十分なだけ回転電機を駆動することができ、電費の悪化を抑制することが可能となる。
【0012】
上記の車両の制御装置において好適には、前記流体伝動装置には、係合と解放とが切り替え可能に構成されており、係合することにより、前記入力側回転体に連結された入力軸と前記出力側回転体に連結された出力軸とを機械的に結合するロックアップ機構が設けられており、前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間において、前記回転電機を駆動する場合に、前記ロックアップ機構を解放する制御を更に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係るEV車両の概略構成を示す図である。
【図2】EV車両におけるオイル経路を概略的に示す図である。
【図3】第1実施例に係る制御を示すフローチャートである。
【図4】第2実施例に係る制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明を電気自動車(以下、適宜「EV車両」と表記する。)に適用した例を示す。
[装置構成]
図1は、本実施形態に係るEV車両100の概略構成を示す図である。図1では、破線矢印で、信号の入出力を示している。
【0015】
図1に示すように、EV車両100は、主に、モータジェネレータMGと、入力軸1と、トルクコンバータ2と、ロックアップクラッチ3と、オイルポンプ4と、出力軸5と、減速部7と、出力部8と、ECU(Electronic Control Unit)50と、を備える。なお、図1において、トルクコンバータ2、ロックアップクラッチ3、減速部7、出力部8などは、EV車両100における変速機(言い換えると減速機)として機能する。
【0016】
モータジェネレータMGは、主に、EV車両100の主たる推進力を出力する動力源として機能する。また、モータジェネレータMGは、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生機能を有しており、EV車両100の制動時において回生運転を行うことで発電する。例えば、モータジェネレータMGは、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。モータジェネレータMGが出力した駆動力は、入力軸1に伝達される。また、モータジェネレータMGは、ECU50から供給される制御信号S1によって制御される。なお、モータジェネレータMGは、本発明に係る「回転電機」の一例である。
【0017】
トルクコンバータ2は、主に、ポンプインペラ、タービンランナ、及びステータを備えて構成されている。基本的には、トルクコンバータ2は、入力軸1を介してモータジェネレータMGの駆動力が入力されて、当該駆動力を内部に充填されたオイルを介して出力軸5に出力するように動作する。具体的には、トルクコンバータ2内のポンプインペラは、入力軸1に連結されており、当該入力軸1を介してモータジェネレータMGの駆動力が伝達されることで回転する。この場合、ポンプインペラは、入力軸1からの駆動力をオイルの流れに変える。タービンランナは、そのようなオイルの流れを受け止めて回転することで、駆動力を出力軸5に伝達する。ステータは、タービンランナからの排出流(戻り)を整流し、ポンプインペラに還元することでトルク増幅機能を発揮する。
【0018】
また、トルクコンバータ2には、トルクコンバータ2内の油圧(以下、適宜「トルコン油圧」と表記する。)を検出可能に構成された油圧センサ12が付設されている。油圧センサ12は、検出したトルコン油圧に対応する検出信号S12をECU50に供給する。
【0019】
なお、トルクコンバータ2は、本発明に係る「流体伝動装置」の一例であり、ポンプインペラは、本発明に係る「入力側回転体」の一例であり、タービンランナは、本発明に係る「出力側回転体」の一例である。
【0020】
ロックアップクラッチ3は、入力軸1及び出力軸5に接続されており、係合と解放とが切り替え可能に構成されたクラッチである。ロックアップクラッチ3は、係合することで、入力軸1と出力軸5とを機械的に結合する。この場合には、モータジェネレータMGの駆動力が入力軸1から出力軸5へ直接伝達される、つまり機械的に伝達される。これに対して、ロックアップクラッチ3が解放している場合には、モータジェネレータMGの駆動力が、トルクコンバータ2内のオイルを介して、入力軸1から出力軸5へ伝達される、つまり流体伝達される。
【0021】
ロックアップクラッチ3の係合と解放との切り替えは、ロックアップクラッチ3へ供給される油圧により制御される。この場合、ロックアップクラッチ3へ供給される油圧は油圧制御装置14によって制御され、油圧制御装置14はECU50によって制御される。したがって、ロックアップクラッチ3の係合と解放との切り替えは、油圧制御装置14を介してECU50によって制御される。なお、ロックアップクラッチ3は、本発明に係る「ロックアップ機構」の一例である。
【0022】
オイルポンプ4は、トルクコンバータ2内のポンプインペラの回転によって駆動されることで油圧を発生する。つまり、オイルポンプ4は、所謂メカポンプであり、モータジェネレータMGの駆動力によって駆動される。例えば、オイルポンプ4は、連結部材を介してポンプインペラに接続され、トロコイド型の外歯を有するインナロータと、該外歯と係合する内歯を有するアウタロータとを備えるトロコイド式に構成される。そして、トルクコンバータ2のポンプインペラの回転に伴ってインナロータが回転駆動されると、内歯と外歯とが係合しているので、アウタロータも回転し、両ロータの回転に起因して油圧が発生される。このようにオイルポンプ4で発生された油圧は、油圧の制御を行う油圧制御装置14などに供給される。
【0023】
減速部7は、出力軸5から駆動力が伝達される。減速部7には、モータジェネレータMGの回転を所定の減速比で減速できるように複数のギアを含んだギア列が設けられている。出力部8は、減速部7から出力された駆動力が伝達され、当該駆動力を差動装置9によって左右の駆動輪(不図示)に分配する。
【0024】
ECU50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、EV車両100内の各構成要素に対して制御を行う。具体的には、ECU50は、モータジェネレータMGに対して制御信号S1を供給することでモータジェネレータMGを制御する。また、ECU50は、油圧制御装置14に対して制御信号S14を供給することで、ロックアップクラッチ3の係合と解放とを切り替える制御などを行う。本実施形態においてECU50が行う制御の詳細は後述するが、ECU50は、本発明に係る「制御手段」の一例に相当する。なお、ECU50はEV車両100内の各構成要素に対して種々の制御を行うが、本実施形態と関係のない制御については、その説明を省略するものとする。
【0025】
次に、図2を参照して、上記したEV車両100におけるオイル経路について説明する。図2では、オイル経路に関わるEV車両100の構成要素のみについて図示している。
【0026】
オイルポンプ4は、矢印A1で示すようにオイルを圧送する。オイルポンプ4から圧送されたオイルは、バルブボディ15を介して各構成要素に供給される。具体的には、オイルは、矢印A2に示すようにトルクコンバータ2に供給されたり、矢印A3に示すようにロックアップクラッチ3に供給されたり、矢印A4に示すようにモータジェネレータMGに供給されたり、矢印A5に示すようにその他の各潤滑部に供給される。このようにオイルポンプ4によって圧送されるオイルは、EV車両100内の構成要素の冷却や潤滑に供される他、構成要素の作動のために供される。例えば、オイルの油圧は、ロックアップクラッチ3の作動のために用いられる。
[制御方法]
次に、本実施形態においてECU50が行う制御方法について説明する。本実施形態では、ECU50は、ECU50が起動されてからEV車両100が発進するまでの間に、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う。つまり、ECU50は、ECU起動後におけるEV車両100の停止時において(即ち発車前の段階で)、モータジェネレータMGを回転させる制御を行うことでオイルポンプ4を駆動する。
【0027】
このような制御を行う理由は以下の通りである。上記したようにトルクコンバータ2などにオイルを供給するオイルポンプ4は、モータジェネレータMGによって駆動される。そのため、例えばEV車両100の停止時(つまりイグニッションがオフである際)には、モータジェネレータMGが停止することでオイルポンプ4も停止する。これにより、EV車両100の停止後における発進時に、ロックアップクラッチ3における油圧が不十分でロックアップクラッチ3を適切に係合できなかったり、トルクコンバータ2内のオイル抜けにより発進応答性が低下してしまったりする可能性がある。
【0028】
したがって、本実施形態では、ECU50が起動されてからEV車両100が発進するまでの間に、モータジェネレータMGを回転させてオイルポンプ4を駆動することで、トルクコンバータ2にオイルを充填しておく。これにより、EV車両100の発進前の段階で、トルクコンバータ2のオイル抜けを解消しておくことができ、EV車両100の発進応答遅れを適切に抑制することが可能となる。例えば、オイルポンプ4の駆動専用のモータなどを別途追加することなく、EV車両100の発進前に、トルクコンバータ2のオイル抜けを適切に解消することができる。
【0029】
なお、基本的には、イグニッション(以下、適宜「IG」と表記する。)がオンにされた際にECU50が起動されるため、上記したモータジェネレータMGに対する制御は、IGがオンにされた際に開始される。つまり、上記の「ECU50が起動されてから」とは、例えばIGがオンにされた時点以降を意味する。
【0030】
なお、本実施形態に係る制御方法は、電動式のオイルポンプを有しない構成に対して好適に適用されるが、電動式のオイルポンプを有する構成に対しても適用できることは言うまでもない。
【0031】
以下で、ECU50が行う制御方法の具体的な実施例(第1及び第2実施例)について説明する。
【0032】
(第1実施例)
第1実施例では、ECU50は、IGがオンにされてから所定時間が経過するまでの間に、ロックアップクラッチ3を解放状態(以下、適宜「ロックアップ解放状態」と呼ぶ。)に設定し、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う。つまり、ECU50は、IGがオンにされると同時に、トルクコンバータ2にオイルが充填されるようにオイルポンプ4を駆動するべく、モータジェネレータMGを回転させる制御を開始する。
【0033】
なお、モータジェネレータMGの制御を行う際にロックアップ解放状態に設定しているのは、ロックアップクラッチ3が係合されていると、基本的にはモータジェネレータMGの回転によってトルクコンバータ2内のポンプインペラは回転しないため、オイルポンプ4が適切に駆動されないからである。
【0034】
図3を参照して、第1実施例においてECU50が行う制御方法を具体的に説明する。図3は、第1実施例に係る制御を示すフローチャートである。なお、当該フローは、IGがオンとなった際に開始されるものとする。つまり、IGがオンとなりECU50が起動されることで、ECU50によって当該フローが開始される。例えば、運転者がイグニッションスイッチをオンに操作した際に開始される。
【0035】
まず、ステップS101では、ECU50は、ロックアップ解放状態で、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う。具体的には、ECU50は以下のような制御を行う。ECU50は、ロックアップクラッチ3が係合状態にある場合には、ロックアップクラッチ3が解放されるように、油圧制御装置14に対する制御を行う。つまり、ECU50は、ロックアップクラッチ3が解放状態となるような油圧に設定されるように、油圧制御装置14に対する制御を行う。一方で、ロックアップクラッチ3が既に解放状態にある場合には、ECU50は、油圧制御装置14に対して特に制御を行わない。
【0036】
また、ECU50は、オイルポンプ4が駆動されるように、モータジェネレータMGを回転させる制御を行う。具体的には、ECU50は、少なくともトルクコンバータ2に適切にオイルが充填されるようにオイルポンプ4が駆動されるように、モータジェネレータMGに対する制御を行う。例えば、モータジェネレータMGに設定すべき駆動力や回転数を予め決めておき、ECU50は、当該駆動力や当該回転数が得られるようにモータジェネレータMGに対する制御を行う。以上のステップS101の後、処理はステップS102に進む。
【0037】
ステップS102では、ECU50は、IGがオンとなった後に所定時間が経過したか否かを判定する。つまり、ECU50は、上記したモータジェネレータMGに対する制御の開始後、所定時間が経過したか否かを判定する。例えば、所定時間は、トルクコンバータ2内のオイルが完全に抜けている状態から、トルクコンバータ2内のオイルが所定量に達するまでに要する時間が用いられる。このような所定時間は、例えば予め設定された時間が用いられる。
【0038】
所定時間が経過している場合(ステップS102;Yes)、処理は終了する。この場合には、ECU50は、モータジェネレータMGに対する制御を終了する。例えば、ECU50は、EV車両100が発進するまで、モータジェネレータMGを停止させておく。
【0039】
これに対して、所定時間が経過していない場合(ステップS102;No)、処理はステップS101に戻る。この場合には、ECU50は、トルクコンバータ2にオイルが充填されるようにオイルポンプ4を駆動するべく、モータジェネレータMGに対する制御を継続する。このようにステップS101及びS102の処理を繰り返し行うことで、所定時間が経過するまで、モータジェネレータMGを駆動する制御が継続される。
【0040】
以上説明した第1実施例によれば、EV車両100の発進前の段階で、トルクコンバータ2のオイル抜けを適切に解消しておくことができ、EV車両100の発進応答遅れを抑制することが可能となる。
【0041】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明する。第2実施例でも、第1実施例と同様に、基本的には、IGがオンにされた際に、ロックアップ解放状態でモータジェネレータMGを駆動する制御を行う。しかしながら、第2実施例では、トルコン油圧が所定圧力以上である場合には、このようなモータジェネレータMGを駆動する制御を行わない点で、第1実施例と異なる。つまり、第2実施例では、ECU50は、トルコン油圧が所定圧力以上である場合には、モータジェネレータMGの駆動を停止する。言い換えると、ECU50は、トルコン油圧が所定圧力未満である場合にのみ、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う。この場合、ECU50は、トルコン油圧が所定圧力に達するまで、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う。
【0042】
このような制御を行うのは、トルコン油圧が所定圧力以上である場合には、トルクコンバータ2のオイル抜けがほとんど生じていないと言えるため、オイルが充填されるようにオイルポンプ4を駆動する必要がないと考えられるからである。したがって、第2実施例では、トルコン油圧が所定圧力以上である場合には、モータジェネレータMGの無駄な駆動を抑制するべく、モータジェネレータMGの駆動を停止する。
【0043】
図4を参照して、第2実施例においてECU50が行う制御方法を具体的に説明する。図4は、第2実施例に係る制御を示すフローチャートである。なお、当該フローは、第1実施例と同様に、IGがオンとなった際に開始されるものとする。
【0044】
まず、ステップS201では、ECU50は、トルコン油圧が所定圧力以上であるか否かを判定する。ここでは、ECU50は、トルコン油圧に基づいて、トルクコンバータ2においてオイル抜けが生じている状態でないか否かの判定を行っている。この場合、ECU50は、油圧センサ12が検出した油圧をトルコン油圧として用いる。また、所定圧力は、例えば、EV車両100の発進応答性を適切に確保できる程度にトルクコンバータ2にオイルが充填された状態でのトルコン油圧が用いられる。このような所定圧力は、例えば予め設定された圧力が用いられる。
【0045】
トルコン油圧が所定圧力以上である場合(ステップS201;Yes)、処理は終了する。具体的には、ECU50は、モータジェネレータMGに対する制御を未だ開始していない場合には、モータジェネレータMGの停止状態を維持し、モータジェネレータMGに対する制御を既に行っている場合には、モータジェネレータMGに対する制御を終了する。例えば、ECU50は、EV車両100が発進するまで、モータジェネレータMGを停止させておく。
【0046】
これに対して、トルコン油圧が所定圧力未満である場合(ステップS201;No)、処理はステップS202に進む。ステップS202では、ECU50は、トルクコンバータ2にオイルが充填されるようにオイルポンプ4を駆動するべく、ロックアップ解放状態でモータジェネレータMGを駆動する制御を行う。ステップS202の処理は、上記したステップS101の処理と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。ステップS202の後、処理はステップS201に戻る。このようにステップS201及びS202の処理を繰り返し行うことで、トルコン油圧が所定圧力に達するまで、モータジェネレータMGを駆動する制御が継続される。
【0047】
以上説明した第2実施例によれば、トルコン油圧が所定圧力以上である場合にモータジェネレータMGの駆動を停止することで、モータジェネレータMGの無駄な駆動を抑制することができ、電費の悪化を抑制することが可能となる。言い換えると、第2実施例によれば、トルコン油圧が所定圧力に達するまでモータジェネレータMGを駆動することで、トルクコンバータ2のオイル充填に必要十分なだけモータジェネレータMGを駆動することができ、電費の悪化を抑制することが可能となる。
【0048】
なお、上記では、油圧センサ12が検出した圧力を用いる例を示したが、油圧センサ12が検出した圧力の代わりに、所定のパラメータに基づいて推定した圧力を用いても良い。つまり、トルコン油圧として、センサの検出値を用いることに限定はされず、所定のパラメータから求められた推定値を用いても良い。
【0049】
また、上記では、トルコン油圧に応じて、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う例を示したが、トルコン油圧の代わりに、トルクコンバータ2内の油量(以下、適宜「トルコン油量」と表記する。)に応じて、モータジェネレータMGを駆動する制御を行っても良い。具体的には、トルコン油量が所定量未満である場合には、モータジェネレータMGを駆動する制御を行い、トルコン油量が所定量以上である場合には、モータジェネレータMGの駆動を停止することができる。この場合、トルコン油量として、センサの検出値を用いても良いし、所定のパラメータから求められた推定値を用いても良い。
【0050】
更に、上記では、トルコン油圧又はトルコン油量に応じて、モータジェネレータMGを駆動する制御を行う例を示したが、トルコン油圧又はトルコン油量に加えて、若しくはトルコン油圧又はトルコン油量の代わりに、ロックアップクラッチ3の油圧に応じて、モータジェネレータMGを駆動する制御を行っても良い。つまり、ロックアップクラッチ3を適切に作動させることが可能な油圧に設定するといった観点に基づいて、モータジェネレータMGを回転させてオイルポンプ4を駆動するための制御を行っても良い。具体的には、ロックアップクラッチ3の油圧が所定圧力に達するまで、モータジェネレータMGを駆動する制御を行うことができる。このような制御を行うのは、例えば、EV車両100の発進時において、ロックアップクラッチ3における油圧が不十分でロックアップクラッチ3を適切に係合できない可能性があるからである。
[変形例]
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。
【0051】
例えば、上記では、本発明をEV車両に適用する実施形態を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。本発明は、EV車両以外の車両、例えばハイブリッド車両にも適用することができる。
【0052】
また、上記では、本発明をトルクコンバータに適用する実施形態を示したが、つまり「流体伝動装置」の一例としてトルクコンバータを挙げたが、本発明の適用はこれに限定されない。本発明は、トルクコンバータの他に、流体継手(言い換えると流体クラッチ)にも適用することができる。つまり、本発明は、トルクコンバータのようにトルクを増幅する機能を有しない流体継手にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
MG モータジェネレータ
1 入力軸
2 トルクコンバータ
3 ロックアップクラッチ
4 オイルポンプ
5 出力軸
14 油圧制御装置
50 ECU
100 EV車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機の駆動力が伝達されて回転する入力側回転体、及び、前記入力側回転体の回転がオイルを介して伝達されることで回転する出力側回転体を有する流体伝動装置と、
前記流体伝動装置の前記入力側回転体の回転により駆動され、少なくとも前記流体伝動装置にオイルを供給するオイルポンプと、
少なくとも前記回転電機を駆動する制御を行う制御手段と、を備える車両の制御装置であって、
前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間に、前記回転電機を駆動することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記流体伝動装置における油量又は油圧を取得する取得手段を更に備え、
前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間において、前記取得手段が取得した前記油量が所定量以上である場合、若しくは前記取得手段が取得した前記油圧が所定圧力以上である場合、前記回転電機の駆動を停止する請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記流体伝動装置には、係合と解放とが切り替え可能に構成されており、係合することにより、前記入力側回転体に連結された入力軸と前記出力側回転体に連結された出力軸とを機械的に結合するロックアップ機構が設けられており、
前記制御手段は、当該制御手段が起動されてから前記車両が発進するまでの間において、前記回転電機を駆動する場合に、前記ロックアップ機構を解放する制御を更に行う請求項1又は2に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−205831(P2011−205831A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72303(P2010−72303)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】