車両の前部車体
【課題】アウトリガー前部からカラーナットをさらに脱落しやすくすることを可能にする。
【解決手段】左右のフロントサイドフレーム16,16からアウトリガー25を介して車体後方に延ばされる左右のサイドシル14と、フロントサイドフレーム16,16に吊り下げられるフロントサブフレーム23と、を備えた車両の前部車体において、アウトリガー25に、側面視でダッシュボードロアパネル19に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、を有し、アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112が配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐された。
【解決手段】左右のフロントサイドフレーム16,16からアウトリガー25を介して車体後方に延ばされる左右のサイドシル14と、フロントサイドフレーム16,16に吊り下げられるフロントサブフレーム23と、を備えた車両の前部車体において、アウトリガー25に、側面視でダッシュボードロアパネル19に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、を有し、アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112が配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、を備えた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体は、フロントサイドメンバ(フロントサイドフレーム)側に支持される第1連結部材(カラーナット)と、第1連結部材にクロスメンバを取付ける第2連結部材(ボルト)と、第1連結部材をフロントサイドメンバに支持するとともに、車体前後方向に沿ってクロスメンバに所定の衝撃力が入力されたときに、フロントサイドメンバからクロスメンバとともに第1連結部材を脱落させる第1支持手段(ブラケット)及び第2支持手段(サポート部材)と、フロントサイドメンバに設けられ、第1連結部材が支持される位置よりも衝撃力の作用方向直後の位置を補強する補強部材と、を備えた。
【0003】
この車両の前部車体によれば、車体に前突荷重の入力があったときに、クロスメンバをフロントサイドメンバから脱落させることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4325351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両の前部車体では、第1連結部材(カラーナット)の円筒部分が傾斜した第2支持手段(サポート部材)で支持されている。
例えば、車体上下方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの上下の振れは大きい。また、車体前後方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの前後の振れも大きい。すなわち、サポート部材が傾斜した状態でカラーナットを支持しているので、カラーナットに取付けられるクロスメンバ(若しくはフロントサブフレーム)の支持剛性が低い。
【0006】
先に述べたように、車体前後方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの前後の振れは大きい。従って、前方衝突(前突)が発生した場合にカラーナットに応力が集中しにくい。すなわち、サポート部材に破断が起きにくい。
そこで、カラーナットに応力を集中させてサポート部材を破断させるために、補強部材が別途必要である。これでは、車体の軽量化を図ることはできない。
【0007】
本発明は、アウトリガー前部からカラーナットを脱落しやすくし、フロントサブフレームをフロントサイドフレームから脱落させ、フロントサイドフレームを十分に座屈させることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備えた車両の前部車体において、アウトリガーに、側面視でダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有し、アウトリガー前部は、フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、アウトリガーが、アウトリガー前部の前端からアウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、アウトリガーがハット断面であり、アウトリガー前部に、アウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、アウトリガー前部のハット断面の底に、カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、カラーナットの下部を支持するブラケットと、カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられ、ブラケットに、カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、サポート部材に、カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備え、カラーナットが、前後方向に平行なブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、アウトリガー開口を貫通するように配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、アウトリガー前部に、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両の前部車体に、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備える。
アウトリガーに、側面視でダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有する。
アウトリガー前部は、フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたので、前方衝突(前突)が発生したときに、荷重はアウトリガー前部からアウトリガー後部を経由してサイドシルと、アウトリガー前部からトンネルフレームに分岐される。従って、アウトリガー前部に配置されたカラーナットに、応力を集中させることができる。これにより、アウトリガー前部からカラーナットを脱落しやすくでき、フロントサブフレームをフロントサイドフレームから脱落させ、フロントサイドフレームを十分に座屈させることができる。この結果、車両の前部車体の衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、アウトリガーが、アウトリガー前部の前端からアウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されたので、カラーナット後方のアウトリガーは前方より断面積が大きい。従って、前突時にカラーナットに応力を集中させやすくすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、アウトリガーがハット断面であり、アウトリガー前部にアウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたので、前突時のハット断面の横開きを防止することができる。この結果、フロントサブフレームの支持剛性を高めることができ、フロントサイドフレームの座屈も容易となる。
【0016】
請求項4に係る発明では、アウトリガー前部のハット断面の底に、カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、カラーナットの下部を支持するブラケットと、カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられる。
また、ブラケットに、カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、サポート部材に、カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備える。
カラーナットが、前後方向に平行なブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、アウトリガー開口を貫通するように配置されたので、さらに、フロントサブフレームの支持剛性を高めることができ、前突時にカラーナットによるサポート部材の変形が容易となり、カラーナットの破断脱落を容易にした。
【0017】
請求項5に係る発明では、アウトリガー前部に、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたので、サポート部材に応力を集中させることができ、サポート部材を容易に破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1に示された車両の前部車体の分解斜視図である。
【図3】図1に示された車両の前部車体の要部を示す斜視図である。
【図4】図1に示された車両の前部車体の分解した状態を示す平面図である。
【図5】図1に示された車両の前部車体の平面図である。
【図6】図1に示された車両の前部車体のジョイントカバー廻りの斜視図である。
【図7】図1に示された車両の前部車体のジョイントカバー廻りの室内側から見た斜視図である。
【図8】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す平面図である。
【図9】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す斜視図である。
【図10】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す側面図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】図1に示された車両の前部車体のスチフナの斜視図である。
【図13】図1に示された車両の前部車体の水平連結部材の斜視図である。
【図14】図1に示された車両の前部車体のブラケットの斜視図である。
【図15】図1に示された車両の前部車体のサポート部材の斜視図である。
【図16】図15の16−16線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0020】
図1〜図3に示されたように、車両10は、車体11に、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム16,16と、左右のフロントサイドフレーム16,16の車体後方に設けられる左右のサイドシル14,14(一方不図示)と、車幅方向に延ばされ、エンジンルーム13と車室12とを仕切るダッシュボードロアパネル19と、ダッシュボードロアパネル19の後部から延ばされるフロアパネル17と、このフロアパネル17の中央に車体前後方向に延ばされるセンタトンネル(トンネル部)18と、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側に設けられ、ステアリング軸21を挿入する開口74(図6参照)を有するカップ状のジョイントカバー22と、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側に設けられ、左右のフロントサイドフレーム16,16に渡されるクロスメンバ24と、左右のフロントサイドフレーム16,16の後方に設けられる傾斜部32,32からサイドシル14,14(一方不図示)へ結合する左右のアウトリガー25,25(一方不図示)と、左右のフロントサイドフレーム16,16の傾斜部32,32(一方不図示)から車体後方に延ばした左右のフロアフレーム26,26と、左右のフロントサイドフレーム16,16の傾斜部32,32から車体内方に湾曲させて車体後方に延ばした左右のトンネルフレーム(センタフレーム)27,27と、左右のフロントサイドフレーム16,16に支持される(吊り下げられる)フロントサブフレーム23と、を備える。
【0021】
ステアリング軸21の下端には車輪を転舵するギヤボックス28が設けられている。
ダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24は、フロントサイドフレーム16の水平部31の後端近傍に配置される。
【0022】
フロントサイドフレーム16は、エンジンルーム13内に略水平に延ばされる水平部31と、この水平部31から車体後方に向けて下向きに傾斜され、アウトリガー25を介してサイドシル14へ結合する傾斜部32と、を備える。なお、アウトリガー25は、傾斜部32からサイドシル14に向けて広がった末広がり形状を呈する。
【0023】
水平部31は、断面視ハット形状の本体34に、この本体34に断面視略平坦な蓋部材36が結合されて形成された閉断面のフレームである。すなわち、断面視ハット形状の本体34は、上面34a、下面34b、側面34c、上フランジ34d及び下フランジ(不図示)を備え、蓋部材36が上フランジ34d及び下フランジ(不図示)に接合される。
【0024】
傾斜部32は、上方が開放した略コ字状のフレームである。なお、フロントサイドフレーム16の後端である傾斜部32は、車体後方に向けて下向きに傾斜され、末広がり形状のアウトリガー25を介してサイドシル14へ結合している。
【0025】
すなわち、図1に示されたように、一方のフロントサイドフレーム16へ前突荷重が矢印a1の如く作用する場合に、一方のアウトリガー25を介して矢印a2の如く前突荷重を一方のサイドシル14へも分散することができるとともに、クロスメンバ24を介して矢印a3の如く他方のアウトリガー25に荷重伝達され、アウトリガー25から矢印a4の如く前突荷重を他方のサイドシル14へも分散することができる。
【0026】
図2、図3に示されたように、フロントサイドフレーム16の水平部31内には、フロントサイドフレーム16を補強するフレーム側スチフナ41と、エンジンマウント(不図示)を取付けるための前後のフレーム側ブラケット42,43とが設けられる。
【0027】
水平部31の前部下方には、フロントサブフレーム23を支持する前部マウント部45が設けられ、水平部31の後部下方には、フロントサブフレーム23を支持する中間マウント部46が設けられ、傾斜部32の下方に接続されるアウトリガー前部101には、フロントサブフレーム23を支持する後部マウント部47が設けられている。
【0028】
さらに、フロントサイドフレーム16は、水平部31の車幅外方に且つフレーム側スチフナ41とクロスメンバエクステンション51との間に、フロントサイドフレーム16に衝突荷重が作用したときに、所定の位置で折り曲がる折れ点53が設定される。
なお、左のフロントサイドフレーム16は、右のフロントサイドフレーム16に略左右対称の部材である。
【0029】
図6、図7に示されたように、ダッシュボードロアパネル19は、下部中央にセンタトンネル(不図示)に連続的に接続されるダッシュボード側トンネル部54と、ステアリング軸21が挿入されるダッシュボード側開口55と、左のクロスメンバ65と左のクロスメンバエクステンション51とを溶接するための左の溶接用開口56と、右のクロスメンバ66と右のクロスメンバエクステンション51とを溶接するための右の溶接用開口57と、が形成される。
【0030】
すなわち、左右のクロスメンバエクステンション51,51と左右のクロスメンバ65,66とは、それぞれダッシュボードロアパネル19に設けられる左右の溶接用開口56,57を介してスポット溶接される。これにより、スポット溶接箇所を増加し、結合強度を向上できる。
【0031】
ダッシュボードロアパネル19は、車室12側の車幅側方にガセット61,61が設けられ、車室12側の車幅中央に縦補強部材62が結合されている。
ガセット61は、断面視凹状の部材である。ガセット61の前端61aは、ダッシュボードロアパネル19を介して(挟んで)クロスメンバエクステンション51に結合され、ガセット61の後端61bは、フロントピラー(不図示)に結合されている。
【0032】
縦補強部材62は、断面視ハット形状の部材である。縦補強部材62の上端62aは、ダッシュボードアッパ(不図示)に結合され、縦補強部材62の下端62bは、右のクロスメンバ66に結合される。すなわち、縦補強部材62は、クロスメンバ24に交差させてダッシュボードロアパネル19を補強する。
【0033】
例えば、車室12側の縦補強部材62の下端62bを、クロスメンバ24を越えてダッシュボード側トンネル部54、さらにはトンネルフレーム(センタフレーム)27,27まで延長すると、一層、前突荷重の支持強度の向上を図ることができる。
【0034】
なお、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側には、クロスメンバ24(左右のクロスメンバ65,66)と、カップ状のジョイントカバー22と、左右のクロスメンバエクステンション51,51と、が設けられている。
【0035】
図1、図6に示されたように、クロスメンバ24は、左のクロスメンバ65と右のクロスメンバ66とに分割される。
左のクロスメンバ65は、断面視ハット形状の部材である。右のクロスメンバ66に比べて短い。クロスメンバ24を、左右のフロントサイドフレーム16,16に配置することで、衝突時の荷重伝達をダッシュボードロアパネル19の左右に円滑(スムーズ)に分配する。
【0036】
右のクロスメンバ66は、断面視ハット形状の部材である。すなわち、上面66a、下面66b、前面66c、上フランジ66d及び下フランジ66eを備える。
右のクロスメンバ66の車幅内方の端部(右のクロスメンバ端部)71は、カップ状のジョイントカバー22の右の平坦面79に接続される。車幅外方の端部72(図1参照)は、ダッシュボードロアパネル19及び右のフロントサイドフレーム16に結合される右のクロスメンバエクステンション(連結部材)51が接続される。
【0037】
左のクロスメンバ65は、断面視ハット形状の部材である。すなわち、上面65a、下面65b、前面65c、上フランジ65d及び下フランジ65eを備える。
【0038】
左のクロスメンバ65の車幅内方の端部(左のクロスメンバ端部)68は、カップ状のジョイントカバー22の左の平坦面78に接続される。車幅外方の端部69は、ダッシュボードロアパネル19及び左のフロントサイドフレーム16に結合される左のクロスメンバエクステンション(連結部材)51が接続される。
【0039】
カップ状のジョイントカバー22は、開口74が形成される底面75と、この底面75からダッシュボードロアパネル19側に延ばされる周壁76と、この周壁76の先端に形成される環状フランジ77と、周壁76の一部が平坦に形成された左右の平坦面78,79と、を備える。
【0040】
環状フランジ77は、ダッシュボードロアパネル19に結合される。先にも説明したように、左右の平坦面78,79には、左右のクロスメンバ端部(左のクロスメンバ65の車幅内方の端部、右のクロスメンバ66の車幅内方の端部)68,71がそれぞれに結合されている。
【0041】
また、図2に示されたように、カップ状のジョイントカバー22は、左右のクロスメンバ65,66より前方へ突出させている。
さらに、カップ状のジョイントカバー22は、変形を容易にするために、左右のクロスメンバ65,66より引張強度が小さい素材が採用される。さらに、エネルギー吸収の向上を図るために、左右のクロスメンバ65,66より板厚の厚い素材が採用される。例えば、カップ状のジョイントカバー22は、普通鋼板(引張強度270MPa相当、板厚t1.8)にて形成される。左右のクロスメンバ65,66は、高張力鋼板(引張強度440MPa相当、板厚t1.4)にて形成される。
【0042】
図1〜図3に示されたように、クロスメンバエクステンション51は、フロントサイドフレーム16からダッシュボードロアパネル19及び右のクロスメンバ66へ結合する部材であり、オフセット衝突時に安定的にフロントサイドフレーム16の折れを促す作用をなす。
【0043】
また、クロスメンバエクステンション51は、折れ点53の後方に配置されたものといえる。すなわち、折れ点53の前後をフレーム側スチフナ41とクロスメンバエクステンション51とにより強化することで、折れ点53の後方のクロスメンバエクステンション51(フロントサイドフレーム16の上面34aからダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24にかけて結合している部材)が変形しない。
【0044】
これにより、折れ点53に応力を集中させることができる。この結果、折れ点53の設定位置で確実に衝突モードのコントロールをする。さらに、折れ点53の後方の断面潰れを防止する。
【0045】
さらに、クロスメンバエクステンション51は、ダッシュボードロアパネル19に接合されたクロスメンバ24(左右のクロスメンバ65,66)及びガセット61,61で支持されるものともいえる。
【0046】
なお、クロスメンバ24は、左右のクロスメンバ65,66でカップ状のジョイントカバー22を挟み込んだものであり、クロスメンバ24は、左右のクロスメンバ65,66と、カップ状のジョイントカバー22とから構成されたものとみることもできる。
【0047】
右のクロスメンバエクステンション51は、詳細には、上部を構成する本体部81と、本体部81の後部内方が右のクロスメンバ66へ向け上方へ湾曲して延長される湾曲部82と、本体部81の車幅外方から上方に曲げ形成された外接合部83(図1参照)と、本体部81の車幅内方から下方に曲げ形成された内接合部84と、湾曲部82及び内接合部84の車幅内方に形成されたクロスメンバ接合部85と、本体部81及び湾曲部82から曲げ形成された後接合部86と、からなる。例えば、右のクロスメンバエクステンション51は、高張力鋼板(引張強度590MPa相当、板厚t1.4)にて形成される。
【0048】
本体部81の前部は、水平部31の上面に接合される。外接合部83は、水平部31の上フランジに接合される。内接合部84は、水平部31の側面34cに接合される。クロスメンバ接合部85は、右のクロスメンバ66の上面及び横面に接合される。後接合部86は、ダッシュボードロアパネル19及び右のクロスメンバ66の上フランジ66dに接合される。
【0049】
車体11では、フロントサイドフレーム16からダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24への結合にクロスメンバエクステンション51を採用することで、オフセット衝突時に安定的な折れモードをコントロールする。
【0050】
また、クロスメンバエクステンション51を交換することで、異なる車体に対してフロントサイドフレーム16を使用することができ、フロントサイドフレーム16の共用化が可能となる。さらに、フロントサイドフレーム16の形状を簡素化することもでき、フロントサイドフレーム16のプレス加工における生産性の向上を図ることができる。
【0051】
なお、左のクロスメンバエクステンション51は、右のクロスメンバエクステンション51に左右略対称の部材である。
左右のクロスメンバエクステンション51,51は、本体部81の後部内方が左右のクロスメンバ65,66へ向け上方へ湾曲して延長される湾曲部82,82が設けることで、左右のフロントサイドフレーム16,16から伝達される衝突荷重をクロスメンバ24に伝達しやすくする。
【0052】
図4、図5に示されたように、フロントサイドフレーム16の傾斜部32、アウトリガー25、フロアフレーム26、トンネルフレーム(センタフレーム)27を含み車室12の下方に配置される部材をキャビンスペース部材91と定義する。
フロントサイドフレーム16の水平部31を含みエンジンルーム13内に配置される部材をエンジンルーム部材92と定義する。
【0053】
左右のクロスメンバ65,66、カップ状のジョイントカバー22、ガセット61,61、縦補強部材62を含み側面視でクロスメンバ24に略重なる位置にある部材をクロスメンバ部材93と定義する。
【0054】
車体11では、キャビンスペース部材91とエンジンルーム部材92を、クロスメンバ部材93にて仕切るようにした(パーテーションする)。
【0055】
キャビンスペース部材91とエンジンルーム部材92を、クロスメンバ部材93にて仕切るようにする(パーテーションする)ことで、エンジンルーム部材92を共用化して
キャビンスペース部材91を異なるキャビンスペース部材に変更することが可能になる。 これにより、車体11の種類を増やすことが可能となり、車体11の汎用性を広げることが可能となる。
【0056】
図8〜図11に示されたように、アウトリガー25は、上方が開口されたハット断面であり、側面視でダッシュボードロアパネル19(図1参照)に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、からなる。
さらに、アウトリガー25は、アウトリガー前部101の前端101aからアウトリガー後部102の後端102bまで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加される。
【0057】
アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112と、アウトリガー前部101に、アウトリガー前部101の左右の側壁104,105同士を連結するための水平連結部材(アウトリガーバルクヘッド)113と、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103に設けられ、カラーナット112が貫通するアウトリガー開口106と、カラーナット112の下部112bを支持するブラケット114と、カラーナット112の上部112aを支持するサポート部材115と、ハット断面のアウトリガー前部101の開口部107を補強するスチフナ(アウトリガースチフナ)116と、が設けられる。
【0058】
すなわち、フロントサブフレーム23の後部が支持される後部マウント部47(図2参照)は、カラーナット112、水平連結部材113、アウトリガー開口106、ブラケット114、サポート部材115、及びスチフナ116で構成されている。
さらに、アウトリガー前部101は、後方内側に向け傾斜し、センタトンネル(トンネル部)18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐さている。
【0059】
また、アウトリガー前部101のカラーナット112の設定位置は、フロントサイドフレーム16から、アウトリガー後部102、トンネルフレーム27及びフロアフレーム26が分岐される分岐部(分岐点)に相当する位置である。すなわち、カラーナット112の設定位置は、前突荷重が集中する位置であるといえる。
【0060】
図9及び図13に示されたように、水平連結部材113は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101に略平行に溶接される部材である。水平連結部材113は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101に略平行に設けられる連結本体部117と、この連結本体部117の左右に設けられ、アウトリガー前部101のハット断面の側壁104,105に溶接される左右の連結部材側フランジ118,119と、からなる。
【0061】
図9、図10及び図14に示されたように、ブラケット114は、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103に溶接される前端部121と、この前端部121から下方に膨出させた前膨出部122と、この前膨出部122を後方に向けて延ばした後膨出部123と、この後膨出部123の後方に設けられ、サポート部材115のサポート側後端部133に溶接される後端部124と、を備える。
【0062】
前膨出部122及び後膨出部123の左右には、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の外側に溶接される左右のフランジ125,126が連続的に設けられている。
後膨出部123には、側面視でカラーナット112の下部(下端フランジ)112bを支持する前後方向に平行なブラケット側水平部127が形成される。ブラケット側水平部127には、カラーナット112の雌ねじ112cを臨ます孔128が形成され、カラーナット112の下部(下端フランジ)112bが溶接される。
【0063】
図9、図15及び図16に示されたように、サポート部材115は、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103からに溶接されるサポート側前端部131と、このサポート側前端部131からハット断面の傾斜した底103に沿わせて延ばされる中間部132と、この中間部132からハット断面の傾斜した底103に沿わせて延ばされるサポート側後端部133と、中間部132に上方に向かって膨出され(絞られ)、カラーナット112の上部112a支持する前後方向に平行なサポート側水平部134と、を備える。サポート側水平部134には、カラーナット112を臨ます貫通孔137が形成され、貫通孔137にカラーナット112の上部(筒部)112aが溶接される。
【0064】
サポート側前端部131及び中間部132の左右には、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の内側に溶接される左右のサポート側フランジ135,136が連続的に設けられている。
【0065】
図9及び図12に示されたように、スチフナ116は、ハット断面のアウトリガー前部101に溶接される部材である。スチフナ116は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101の底103に溶接されるスチフナ本体141と、このスチフナ本体141の左右に設けられ、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の内側に溶接される左右のスチフナ側フランジ142,143と、からなる。スチフナ本体141には、カラーナット112を貫通させるスチフナ開口144が設けられる。
【0066】
図1、図8〜図10に示されたように、車両の前部車体では、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム16,16と、車幅方向に延ばされ、エンジンルーム13と車室12とを仕切るダッシュボードロアパネル19と、左右のフロントサイドフレーム16,16からアウトリガー25を介して車体後方に延ばされる左右のサイドシル14と、左右のフロントサイドフレーム16,16に吊り下げられ、エンジン(不図示)廻りを支持するフロントサブフレーム23と、ダッシュボードロアパネル19から後方に延ばされるフロアパネル17と、このフロアパネル17の中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部18と、を備える。
【0067】
アウトリガー25に、側面視でダッシュボードロアパネル19に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、を有する。
【0068】
アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112が配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐されたので、前方衝突(前突)が発生したときに、荷重はアウトリガー前部101からアウトリガー後部102を経由してサイドシル14と、アウトリガー前部101からトンネルフレーム27に分岐される。従って、アウトリガー前部101に配置されたカラーナット112に、応力を集中させることができる。これにより、アウトリガー前部101からカラーナット112を脱落しやすくでき、フロントサブフレーム23をフロントサイドフレーム23から脱落させ、フロントサイドフレーム23を十分に座屈させることができる。この結果、車両の前部車体の衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0069】
図9及び図10に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー25が、アウトリガー前部101の前端101aからアウトリガー後部102の後端102bまで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されたので、カラーナット112後方のアウトリガー25は前方より断面積が大きい。従って、前突時にカラーナット112に応力を集中させやすくすることができる。
【0070】
車両の前部車体では、アウトリガー25がハット断面であり、アウトリガー前部101に、アウトリガー前部101の左右の側壁104,105同士を連結するための水平連結部材113が設けられたので、前突時のハット断面の横開きを防止することができる。この結果、フロントサブフレーム23の支持剛性を高めることができ、フロントサイドフレーム16の座屈も容易となる。
【0071】
図9及び図10に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー前部101のハット断面の底103に、カラーナット112が貫通するアウトリガー開口106と、カラーナット112の下部112bを支持するブラケット114と、カラーナット112の上部112aを支持するサポート部材115と、が設けられる。
【0072】
また、ブラケット114に、カラーナット112の下部112bを支持する前後方向に平行なブラケット側水平部127を備え、サポート部材115に、カラーナット112の上部112a支持する前後方向に平行なサポート側水平部134を備える。
【0073】
カラーナット112が、前後方向に平行なブラケット側水平部127及びサポート側水平部134間に直交して支持され、アウトリガー開口106を貫通するように配置されたので、さらに、フロントサブフレーム23の支持剛性を高めることができ、前突時にカラーナット112によるサポート部材115の変形が容易となり、カラーナット112の破断脱落を容易にした。
【0074】
図9及び図11に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー前部101に、ハット断面の開口部107を補強するスチフナ116が設けられたので、サポート部材115に応力を集中させることができ、サポート部材115を容易に破断することができる。
【0075】
尚、本発明に係る車両の前部車体は、図1に示すように、ステアリング軸21は車体幅方向に関して左に設けられたが、これに限るものではなく、ステアリング軸21を車体幅方向に関して右に設けるものであってもよい。
【0076】
本発明に係る車両の前部車体は、図15に示すように、サポート側水平部134には、カラーナット112を臨ます貫通孔137が形成されたが、これに限るものではなく、溶接代を確保するために孔の周りにフランジを形成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る車両の前部車体は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0078】
12…車室、13…エンジンルーム、14…サイドシル、16…フロントサイドフレーム、17…フロアパネル、18…トンネル部(センタトンネル)、19…ダッシュボードロアパネル、23…フロントサブフレーム、25…アウトリガー、27…トンネルフレーム、101…アウトリガー前部、102…アウトリガー後部、106…アウトリガー開口、107…開口部、111…ボルト、112…カラーナット、113…水平連結部材、114…ブラケット、115…サポート部材、116…スチフナ、127…ブラケット側水平部、134…サポート側水平部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、を備えた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体は、フロントサイドメンバ(フロントサイドフレーム)側に支持される第1連結部材(カラーナット)と、第1連結部材にクロスメンバを取付ける第2連結部材(ボルト)と、第1連結部材をフロントサイドメンバに支持するとともに、車体前後方向に沿ってクロスメンバに所定の衝撃力が入力されたときに、フロントサイドメンバからクロスメンバとともに第1連結部材を脱落させる第1支持手段(ブラケット)及び第2支持手段(サポート部材)と、フロントサイドメンバに設けられ、第1連結部材が支持される位置よりも衝撃力の作用方向直後の位置を補強する補強部材と、を備えた。
【0003】
この車両の前部車体によれば、車体に前突荷重の入力があったときに、クロスメンバをフロントサイドメンバから脱落させることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4325351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の車両の前部車体では、第1連結部材(カラーナット)の円筒部分が傾斜した第2支持手段(サポート部材)で支持されている。
例えば、車体上下方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの上下の振れは大きい。また、車体前後方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの前後の振れも大きい。すなわち、サポート部材が傾斜した状態でカラーナットを支持しているので、カラーナットに取付けられるクロスメンバ(若しくはフロントサブフレーム)の支持剛性が低い。
【0006】
先に述べたように、車体前後方向に荷重が作用するときに、カラーナットの円筒部分が垂直に支持された場合に比べ、カラーナットの前後の振れは大きい。従って、前方衝突(前突)が発生した場合にカラーナットに応力が集中しにくい。すなわち、サポート部材に破断が起きにくい。
そこで、カラーナットに応力を集中させてサポート部材を破断させるために、補強部材が別途必要である。これでは、車体の軽量化を図ることはできない。
【0007】
本発明は、アウトリガー前部からカラーナットを脱落しやすくし、フロントサブフレームをフロントサイドフレームから脱落させ、フロントサイドフレームを十分に座屈させることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備えた車両の前部車体において、アウトリガーに、側面視でダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有し、アウトリガー前部は、フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、アウトリガーが、アウトリガー前部の前端からアウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、アウトリガーがハット断面であり、アウトリガー前部に、アウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、アウトリガー前部のハット断面の底に、カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、カラーナットの下部を支持するブラケットと、カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられ、ブラケットに、カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、サポート部材に、カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備え、カラーナットが、前後方向に平行なブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、アウトリガー開口を貫通するように配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、アウトリガー前部に、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両の前部車体に、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備える。
アウトリガーに、側面視でダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有する。
アウトリガー前部は、フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたので、前方衝突(前突)が発生したときに、荷重はアウトリガー前部からアウトリガー後部を経由してサイドシルと、アウトリガー前部からトンネルフレームに分岐される。従って、アウトリガー前部に配置されたカラーナットに、応力を集中させることができる。これにより、アウトリガー前部からカラーナットを脱落しやすくでき、フロントサブフレームをフロントサイドフレームから脱落させ、フロントサイドフレームを十分に座屈させることができる。この結果、車両の前部車体の衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、アウトリガーが、アウトリガー前部の前端からアウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されたので、カラーナット後方のアウトリガーは前方より断面積が大きい。従って、前突時にカラーナットに応力を集中させやすくすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、アウトリガーがハット断面であり、アウトリガー前部にアウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたので、前突時のハット断面の横開きを防止することができる。この結果、フロントサブフレームの支持剛性を高めることができ、フロントサイドフレームの座屈も容易となる。
【0016】
請求項4に係る発明では、アウトリガー前部のハット断面の底に、カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、カラーナットの下部を支持するブラケットと、カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられる。
また、ブラケットに、カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、サポート部材に、カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備える。
カラーナットが、前後方向に平行なブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、アウトリガー開口を貫通するように配置されたので、さらに、フロントサブフレームの支持剛性を高めることができ、前突時にカラーナットによるサポート部材の変形が容易となり、カラーナットの破断脱落を容易にした。
【0017】
請求項5に係る発明では、アウトリガー前部に、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたので、サポート部材に応力を集中させることができ、サポート部材を容易に破断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1に示された車両の前部車体の分解斜視図である。
【図3】図1に示された車両の前部車体の要部を示す斜視図である。
【図4】図1に示された車両の前部車体の分解した状態を示す平面図である。
【図5】図1に示された車両の前部車体の平面図である。
【図6】図1に示された車両の前部車体のジョイントカバー廻りの斜視図である。
【図7】図1に示された車両の前部車体のジョイントカバー廻りの室内側から見た斜視図である。
【図8】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す平面図である。
【図9】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す斜視図である。
【図10】図1に示された車両の前部車体のアウトリガーを示す側面図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】図1に示された車両の前部車体のスチフナの斜視図である。
【図13】図1に示された車両の前部車体の水平連結部材の斜視図である。
【図14】図1に示された車両の前部車体のブラケットの斜視図である。
【図15】図1に示された車両の前部車体のサポート部材の斜視図である。
【図16】図15の16−16線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0020】
図1〜図3に示されたように、車両10は、車体11に、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム16,16と、左右のフロントサイドフレーム16,16の車体後方に設けられる左右のサイドシル14,14(一方不図示)と、車幅方向に延ばされ、エンジンルーム13と車室12とを仕切るダッシュボードロアパネル19と、ダッシュボードロアパネル19の後部から延ばされるフロアパネル17と、このフロアパネル17の中央に車体前後方向に延ばされるセンタトンネル(トンネル部)18と、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側に設けられ、ステアリング軸21を挿入する開口74(図6参照)を有するカップ状のジョイントカバー22と、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側に設けられ、左右のフロントサイドフレーム16,16に渡されるクロスメンバ24と、左右のフロントサイドフレーム16,16の後方に設けられる傾斜部32,32からサイドシル14,14(一方不図示)へ結合する左右のアウトリガー25,25(一方不図示)と、左右のフロントサイドフレーム16,16の傾斜部32,32(一方不図示)から車体後方に延ばした左右のフロアフレーム26,26と、左右のフロントサイドフレーム16,16の傾斜部32,32から車体内方に湾曲させて車体後方に延ばした左右のトンネルフレーム(センタフレーム)27,27と、左右のフロントサイドフレーム16,16に支持される(吊り下げられる)フロントサブフレーム23と、を備える。
【0021】
ステアリング軸21の下端には車輪を転舵するギヤボックス28が設けられている。
ダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24は、フロントサイドフレーム16の水平部31の後端近傍に配置される。
【0022】
フロントサイドフレーム16は、エンジンルーム13内に略水平に延ばされる水平部31と、この水平部31から車体後方に向けて下向きに傾斜され、アウトリガー25を介してサイドシル14へ結合する傾斜部32と、を備える。なお、アウトリガー25は、傾斜部32からサイドシル14に向けて広がった末広がり形状を呈する。
【0023】
水平部31は、断面視ハット形状の本体34に、この本体34に断面視略平坦な蓋部材36が結合されて形成された閉断面のフレームである。すなわち、断面視ハット形状の本体34は、上面34a、下面34b、側面34c、上フランジ34d及び下フランジ(不図示)を備え、蓋部材36が上フランジ34d及び下フランジ(不図示)に接合される。
【0024】
傾斜部32は、上方が開放した略コ字状のフレームである。なお、フロントサイドフレーム16の後端である傾斜部32は、車体後方に向けて下向きに傾斜され、末広がり形状のアウトリガー25を介してサイドシル14へ結合している。
【0025】
すなわち、図1に示されたように、一方のフロントサイドフレーム16へ前突荷重が矢印a1の如く作用する場合に、一方のアウトリガー25を介して矢印a2の如く前突荷重を一方のサイドシル14へも分散することができるとともに、クロスメンバ24を介して矢印a3の如く他方のアウトリガー25に荷重伝達され、アウトリガー25から矢印a4の如く前突荷重を他方のサイドシル14へも分散することができる。
【0026】
図2、図3に示されたように、フロントサイドフレーム16の水平部31内には、フロントサイドフレーム16を補強するフレーム側スチフナ41と、エンジンマウント(不図示)を取付けるための前後のフレーム側ブラケット42,43とが設けられる。
【0027】
水平部31の前部下方には、フロントサブフレーム23を支持する前部マウント部45が設けられ、水平部31の後部下方には、フロントサブフレーム23を支持する中間マウント部46が設けられ、傾斜部32の下方に接続されるアウトリガー前部101には、フロントサブフレーム23を支持する後部マウント部47が設けられている。
【0028】
さらに、フロントサイドフレーム16は、水平部31の車幅外方に且つフレーム側スチフナ41とクロスメンバエクステンション51との間に、フロントサイドフレーム16に衝突荷重が作用したときに、所定の位置で折り曲がる折れ点53が設定される。
なお、左のフロントサイドフレーム16は、右のフロントサイドフレーム16に略左右対称の部材である。
【0029】
図6、図7に示されたように、ダッシュボードロアパネル19は、下部中央にセンタトンネル(不図示)に連続的に接続されるダッシュボード側トンネル部54と、ステアリング軸21が挿入されるダッシュボード側開口55と、左のクロスメンバ65と左のクロスメンバエクステンション51とを溶接するための左の溶接用開口56と、右のクロスメンバ66と右のクロスメンバエクステンション51とを溶接するための右の溶接用開口57と、が形成される。
【0030】
すなわち、左右のクロスメンバエクステンション51,51と左右のクロスメンバ65,66とは、それぞれダッシュボードロアパネル19に設けられる左右の溶接用開口56,57を介してスポット溶接される。これにより、スポット溶接箇所を増加し、結合強度を向上できる。
【0031】
ダッシュボードロアパネル19は、車室12側の車幅側方にガセット61,61が設けられ、車室12側の車幅中央に縦補強部材62が結合されている。
ガセット61は、断面視凹状の部材である。ガセット61の前端61aは、ダッシュボードロアパネル19を介して(挟んで)クロスメンバエクステンション51に結合され、ガセット61の後端61bは、フロントピラー(不図示)に結合されている。
【0032】
縦補強部材62は、断面視ハット形状の部材である。縦補強部材62の上端62aは、ダッシュボードアッパ(不図示)に結合され、縦補強部材62の下端62bは、右のクロスメンバ66に結合される。すなわち、縦補強部材62は、クロスメンバ24に交差させてダッシュボードロアパネル19を補強する。
【0033】
例えば、車室12側の縦補強部材62の下端62bを、クロスメンバ24を越えてダッシュボード側トンネル部54、さらにはトンネルフレーム(センタフレーム)27,27まで延長すると、一層、前突荷重の支持強度の向上を図ることができる。
【0034】
なお、ダッシュボードロアパネル19のエンジンルーム13側には、クロスメンバ24(左右のクロスメンバ65,66)と、カップ状のジョイントカバー22と、左右のクロスメンバエクステンション51,51と、が設けられている。
【0035】
図1、図6に示されたように、クロスメンバ24は、左のクロスメンバ65と右のクロスメンバ66とに分割される。
左のクロスメンバ65は、断面視ハット形状の部材である。右のクロスメンバ66に比べて短い。クロスメンバ24を、左右のフロントサイドフレーム16,16に配置することで、衝突時の荷重伝達をダッシュボードロアパネル19の左右に円滑(スムーズ)に分配する。
【0036】
右のクロスメンバ66は、断面視ハット形状の部材である。すなわち、上面66a、下面66b、前面66c、上フランジ66d及び下フランジ66eを備える。
右のクロスメンバ66の車幅内方の端部(右のクロスメンバ端部)71は、カップ状のジョイントカバー22の右の平坦面79に接続される。車幅外方の端部72(図1参照)は、ダッシュボードロアパネル19及び右のフロントサイドフレーム16に結合される右のクロスメンバエクステンション(連結部材)51が接続される。
【0037】
左のクロスメンバ65は、断面視ハット形状の部材である。すなわち、上面65a、下面65b、前面65c、上フランジ65d及び下フランジ65eを備える。
【0038】
左のクロスメンバ65の車幅内方の端部(左のクロスメンバ端部)68は、カップ状のジョイントカバー22の左の平坦面78に接続される。車幅外方の端部69は、ダッシュボードロアパネル19及び左のフロントサイドフレーム16に結合される左のクロスメンバエクステンション(連結部材)51が接続される。
【0039】
カップ状のジョイントカバー22は、開口74が形成される底面75と、この底面75からダッシュボードロアパネル19側に延ばされる周壁76と、この周壁76の先端に形成される環状フランジ77と、周壁76の一部が平坦に形成された左右の平坦面78,79と、を備える。
【0040】
環状フランジ77は、ダッシュボードロアパネル19に結合される。先にも説明したように、左右の平坦面78,79には、左右のクロスメンバ端部(左のクロスメンバ65の車幅内方の端部、右のクロスメンバ66の車幅内方の端部)68,71がそれぞれに結合されている。
【0041】
また、図2に示されたように、カップ状のジョイントカバー22は、左右のクロスメンバ65,66より前方へ突出させている。
さらに、カップ状のジョイントカバー22は、変形を容易にするために、左右のクロスメンバ65,66より引張強度が小さい素材が採用される。さらに、エネルギー吸収の向上を図るために、左右のクロスメンバ65,66より板厚の厚い素材が採用される。例えば、カップ状のジョイントカバー22は、普通鋼板(引張強度270MPa相当、板厚t1.8)にて形成される。左右のクロスメンバ65,66は、高張力鋼板(引張強度440MPa相当、板厚t1.4)にて形成される。
【0042】
図1〜図3に示されたように、クロスメンバエクステンション51は、フロントサイドフレーム16からダッシュボードロアパネル19及び右のクロスメンバ66へ結合する部材であり、オフセット衝突時に安定的にフロントサイドフレーム16の折れを促す作用をなす。
【0043】
また、クロスメンバエクステンション51は、折れ点53の後方に配置されたものといえる。すなわち、折れ点53の前後をフレーム側スチフナ41とクロスメンバエクステンション51とにより強化することで、折れ点53の後方のクロスメンバエクステンション51(フロントサイドフレーム16の上面34aからダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24にかけて結合している部材)が変形しない。
【0044】
これにより、折れ点53に応力を集中させることができる。この結果、折れ点53の設定位置で確実に衝突モードのコントロールをする。さらに、折れ点53の後方の断面潰れを防止する。
【0045】
さらに、クロスメンバエクステンション51は、ダッシュボードロアパネル19に接合されたクロスメンバ24(左右のクロスメンバ65,66)及びガセット61,61で支持されるものともいえる。
【0046】
なお、クロスメンバ24は、左右のクロスメンバ65,66でカップ状のジョイントカバー22を挟み込んだものであり、クロスメンバ24は、左右のクロスメンバ65,66と、カップ状のジョイントカバー22とから構成されたものとみることもできる。
【0047】
右のクロスメンバエクステンション51は、詳細には、上部を構成する本体部81と、本体部81の後部内方が右のクロスメンバ66へ向け上方へ湾曲して延長される湾曲部82と、本体部81の車幅外方から上方に曲げ形成された外接合部83(図1参照)と、本体部81の車幅内方から下方に曲げ形成された内接合部84と、湾曲部82及び内接合部84の車幅内方に形成されたクロスメンバ接合部85と、本体部81及び湾曲部82から曲げ形成された後接合部86と、からなる。例えば、右のクロスメンバエクステンション51は、高張力鋼板(引張強度590MPa相当、板厚t1.4)にて形成される。
【0048】
本体部81の前部は、水平部31の上面に接合される。外接合部83は、水平部31の上フランジに接合される。内接合部84は、水平部31の側面34cに接合される。クロスメンバ接合部85は、右のクロスメンバ66の上面及び横面に接合される。後接合部86は、ダッシュボードロアパネル19及び右のクロスメンバ66の上フランジ66dに接合される。
【0049】
車体11では、フロントサイドフレーム16からダッシュボードロアパネル19及びクロスメンバ24への結合にクロスメンバエクステンション51を採用することで、オフセット衝突時に安定的な折れモードをコントロールする。
【0050】
また、クロスメンバエクステンション51を交換することで、異なる車体に対してフロントサイドフレーム16を使用することができ、フロントサイドフレーム16の共用化が可能となる。さらに、フロントサイドフレーム16の形状を簡素化することもでき、フロントサイドフレーム16のプレス加工における生産性の向上を図ることができる。
【0051】
なお、左のクロスメンバエクステンション51は、右のクロスメンバエクステンション51に左右略対称の部材である。
左右のクロスメンバエクステンション51,51は、本体部81の後部内方が左右のクロスメンバ65,66へ向け上方へ湾曲して延長される湾曲部82,82が設けることで、左右のフロントサイドフレーム16,16から伝達される衝突荷重をクロスメンバ24に伝達しやすくする。
【0052】
図4、図5に示されたように、フロントサイドフレーム16の傾斜部32、アウトリガー25、フロアフレーム26、トンネルフレーム(センタフレーム)27を含み車室12の下方に配置される部材をキャビンスペース部材91と定義する。
フロントサイドフレーム16の水平部31を含みエンジンルーム13内に配置される部材をエンジンルーム部材92と定義する。
【0053】
左右のクロスメンバ65,66、カップ状のジョイントカバー22、ガセット61,61、縦補強部材62を含み側面視でクロスメンバ24に略重なる位置にある部材をクロスメンバ部材93と定義する。
【0054】
車体11では、キャビンスペース部材91とエンジンルーム部材92を、クロスメンバ部材93にて仕切るようにした(パーテーションする)。
【0055】
キャビンスペース部材91とエンジンルーム部材92を、クロスメンバ部材93にて仕切るようにする(パーテーションする)ことで、エンジンルーム部材92を共用化して
キャビンスペース部材91を異なるキャビンスペース部材に変更することが可能になる。 これにより、車体11の種類を増やすことが可能となり、車体11の汎用性を広げることが可能となる。
【0056】
図8〜図11に示されたように、アウトリガー25は、上方が開口されたハット断面であり、側面視でダッシュボードロアパネル19(図1参照)に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、からなる。
さらに、アウトリガー25は、アウトリガー前部101の前端101aからアウトリガー後部102の後端102bまで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加される。
【0057】
アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112と、アウトリガー前部101に、アウトリガー前部101の左右の側壁104,105同士を連結するための水平連結部材(アウトリガーバルクヘッド)113と、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103に設けられ、カラーナット112が貫通するアウトリガー開口106と、カラーナット112の下部112bを支持するブラケット114と、カラーナット112の上部112aを支持するサポート部材115と、ハット断面のアウトリガー前部101の開口部107を補強するスチフナ(アウトリガースチフナ)116と、が設けられる。
【0058】
すなわち、フロントサブフレーム23の後部が支持される後部マウント部47(図2参照)は、カラーナット112、水平連結部材113、アウトリガー開口106、ブラケット114、サポート部材115、及びスチフナ116で構成されている。
さらに、アウトリガー前部101は、後方内側に向け傾斜し、センタトンネル(トンネル部)18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐さている。
【0059】
また、アウトリガー前部101のカラーナット112の設定位置は、フロントサイドフレーム16から、アウトリガー後部102、トンネルフレーム27及びフロアフレーム26が分岐される分岐部(分岐点)に相当する位置である。すなわち、カラーナット112の設定位置は、前突荷重が集中する位置であるといえる。
【0060】
図9及び図13に示されたように、水平連結部材113は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101に略平行に溶接される部材である。水平連結部材113は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101に略平行に設けられる連結本体部117と、この連結本体部117の左右に設けられ、アウトリガー前部101のハット断面の側壁104,105に溶接される左右の連結部材側フランジ118,119と、からなる。
【0061】
図9、図10及び図14に示されたように、ブラケット114は、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103に溶接される前端部121と、この前端部121から下方に膨出させた前膨出部122と、この前膨出部122を後方に向けて延ばした後膨出部123と、この後膨出部123の後方に設けられ、サポート部材115のサポート側後端部133に溶接される後端部124と、を備える。
【0062】
前膨出部122及び後膨出部123の左右には、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の外側に溶接される左右のフランジ125,126が連続的に設けられている。
後膨出部123には、側面視でカラーナット112の下部(下端フランジ)112bを支持する前後方向に平行なブラケット側水平部127が形成される。ブラケット側水平部127には、カラーナット112の雌ねじ112cを臨ます孔128が形成され、カラーナット112の下部(下端フランジ)112bが溶接される。
【0063】
図9、図15及び図16に示されたように、サポート部材115は、アウトリガー前部101のハット断面の傾斜した底103からに溶接されるサポート側前端部131と、このサポート側前端部131からハット断面の傾斜した底103に沿わせて延ばされる中間部132と、この中間部132からハット断面の傾斜した底103に沿わせて延ばされるサポート側後端部133と、中間部132に上方に向かって膨出され(絞られ)、カラーナット112の上部112a支持する前後方向に平行なサポート側水平部134と、を備える。サポート側水平部134には、カラーナット112を臨ます貫通孔137が形成され、貫通孔137にカラーナット112の上部(筒部)112aが溶接される。
【0064】
サポート側前端部131及び中間部132の左右には、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の内側に溶接される左右のサポート側フランジ135,136が連続的に設けられている。
【0065】
図9及び図12に示されたように、スチフナ116は、ハット断面のアウトリガー前部101に溶接される部材である。スチフナ116は、傾斜したハット断面のアウトリガー前部101の底103に溶接されるスチフナ本体141と、このスチフナ本体141の左右に設けられ、アウトリガー前部101のハット断面の左右の側壁104,105の内側に溶接される左右のスチフナ側フランジ142,143と、からなる。スチフナ本体141には、カラーナット112を貫通させるスチフナ開口144が設けられる。
【0066】
図1、図8〜図10に示されたように、車両の前部車体では、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム16,16と、車幅方向に延ばされ、エンジンルーム13と車室12とを仕切るダッシュボードロアパネル19と、左右のフロントサイドフレーム16,16からアウトリガー25を介して車体後方に延ばされる左右のサイドシル14と、左右のフロントサイドフレーム16,16に吊り下げられ、エンジン(不図示)廻りを支持するフロントサブフレーム23と、ダッシュボードロアパネル19から後方に延ばされるフロアパネル17と、このフロアパネル17の中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部18と、を備える。
【0067】
アウトリガー25に、側面視でダッシュボードロアパネル19に沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部101と、平面視でアウトリガー前部101の後端101bから外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、サイドシル14に連結するアウトリガー後部102と、を有する。
【0068】
アウトリガー前部101は、フロントサブフレーム23の後部をボルト111で締結するカラーナット112が配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、トンネル部18に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレーム27が分岐されたので、前方衝突(前突)が発生したときに、荷重はアウトリガー前部101からアウトリガー後部102を経由してサイドシル14と、アウトリガー前部101からトンネルフレーム27に分岐される。従って、アウトリガー前部101に配置されたカラーナット112に、応力を集中させることができる。これにより、アウトリガー前部101からカラーナット112を脱落しやすくでき、フロントサブフレーム23をフロントサイドフレーム23から脱落させ、フロントサイドフレーム23を十分に座屈させることができる。この結果、車両の前部車体の衝撃吸収性能の向上を図ることができる。
【0069】
図9及び図10に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー25が、アウトリガー前部101の前端101aからアウトリガー後部102の後端102bまで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されたので、カラーナット112後方のアウトリガー25は前方より断面積が大きい。従って、前突時にカラーナット112に応力を集中させやすくすることができる。
【0070】
車両の前部車体では、アウトリガー25がハット断面であり、アウトリガー前部101に、アウトリガー前部101の左右の側壁104,105同士を連結するための水平連結部材113が設けられたので、前突時のハット断面の横開きを防止することができる。この結果、フロントサブフレーム23の支持剛性を高めることができ、フロントサイドフレーム16の座屈も容易となる。
【0071】
図9及び図10に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー前部101のハット断面の底103に、カラーナット112が貫通するアウトリガー開口106と、カラーナット112の下部112bを支持するブラケット114と、カラーナット112の上部112aを支持するサポート部材115と、が設けられる。
【0072】
また、ブラケット114に、カラーナット112の下部112bを支持する前後方向に平行なブラケット側水平部127を備え、サポート部材115に、カラーナット112の上部112a支持する前後方向に平行なサポート側水平部134を備える。
【0073】
カラーナット112が、前後方向に平行なブラケット側水平部127及びサポート側水平部134間に直交して支持され、アウトリガー開口106を貫通するように配置されたので、さらに、フロントサブフレーム23の支持剛性を高めることができ、前突時にカラーナット112によるサポート部材115の変形が容易となり、カラーナット112の破断脱落を容易にした。
【0074】
図9及び図11に示されたように、車両の前部車体では、アウトリガー前部101に、ハット断面の開口部107を補強するスチフナ116が設けられたので、サポート部材115に応力を集中させることができ、サポート部材115を容易に破断することができる。
【0075】
尚、本発明に係る車両の前部車体は、図1に示すように、ステアリング軸21は車体幅方向に関して左に設けられたが、これに限るものではなく、ステアリング軸21を車体幅方向に関して右に設けるものであってもよい。
【0076】
本発明に係る車両の前部車体は、図15に示すように、サポート側水平部134には、カラーナット112を臨ます貫通孔137が形成されたが、これに限るものではなく、溶接代を確保するために孔の周りにフランジを形成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る車両の前部車体は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0078】
12…車室、13…エンジンルーム、14…サイドシル、16…フロントサイドフレーム、17…フロアパネル、18…トンネル部(センタトンネル)、19…ダッシュボードロアパネル、23…フロントサブフレーム、25…アウトリガー、27…トンネルフレーム、101…アウトリガー前部、102…アウトリガー後部、106…アウトリガー開口、107…開口部、111…ボルト、112…カラーナット、113…水平連結部材、114…ブラケット、115…サポート部材、116…スチフナ、127…ブラケット側水平部、134…サポート側水平部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備えた車両の前部車体において、
前記アウトリガーは、側面視で前記ダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、前記サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有し、
前記アウトリガー前部は、前記フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、前記トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記アウトリガーは、前記アウトリガー前部の前端から前記アウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されることを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記アウトリガーはハット断面であり、前記アウトリガー前部に、該アウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記アウトリガー前部は、ハット断面の底に、前記カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、前記カラーナットの下部を支持するブラケットと、前記カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられ、
前記ブラケットは、前記カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、前記サポート部材は、前記カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備え、
前記カラーナットは、前後方向に平行な前記ブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、前記アウトリガー開口を貫通するように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記アウトリガー前部は、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項1】
車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレームと、車幅方向に延ばされ、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードロアパネルと、左右のフロントサイドフレームからアウトリガーを介して車体後方に延ばされる左右のサイドシルと、左右のフロントサイドフレームに吊り下げられ、エンジン廻りを支持するフロントサブフレームと、ダッシュボードロアパネルから後方に延ばされるフロアパネルと、このフロアパネルの中央に形成され、車体前後方向に延ばされるトンネル部と、を備えた車両の前部車体において、
前記アウトリガーは、側面視で前記ダッシュボードロアパネルに沿って後方に向けて下方に傾斜するアウトリガー前部と、平面視でアウトリガー前部の後端から外側に湾曲するとともに側面視で水平に延ばされ、前記サイドシルに連結するアウトリガー後部と、を有し、
前記アウトリガー前部は、前記フロントサブフレームの後部をボルトで締結するカラーナットが配置されるとともに、後方内側に向け傾斜し、前記トンネル部に沿って前後方向に延ばされるトンネルフレームが分岐されたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記アウトリガーは、前記アウトリガー前部の前端から前記アウトリガー後部の後端まで平面視で徐々に幅が拡大され、後方に向かうに連れて断面積が増加されることを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記アウトリガーはハット断面であり、前記アウトリガー前部に、該アウトリガー前部の左右の側壁同士を連結するための水平連結部材が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記アウトリガー前部は、ハット断面の底に、前記カラーナットが貫通するアウトリガー開口と、前記カラーナットの下部を支持するブラケットと、前記カラーナットの上部を支持するサポート部材と、が設けられ、
前記ブラケットは、前記カラーナットの下部を支持する前後方向に平行なブラケット側水平部を備え、前記サポート部材は、前記カラーナットの上部を支持する前後方向に平行なサポート側水平部を備え、
前記カラーナットは、前後方向に平行な前記ブラケット側水平部及びサポート側水平部間に直交して支持され、前記アウトリガー開口を貫通するように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記アウトリガー前部は、ハット断面の開口部を補強するスチフナが設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の前部車体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−111249(P2012−111249A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259120(P2010−259120)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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