説明

車両の後部車体構造

【課題】 タイヤパンの下方に配設されたサイレンサからの放射熱や振動音の影響を十分に抑制すべく、タイヤパンとサイレンサとの間に断熱部材を取り付けることができる後部車体構造を提供する。
【解決手段】 車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造において、後部荷室の床面をなすフロアパネルに、上記スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部を形成するとともに、該タイヤ受け部の下面に沿って、エンジンの排気系に連通する管状部材を配設し、また、タイヤ受け部の下面側には、少なくとも該タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位からスペアタイヤの後端部までの範囲に対応して車両の前後方向に延びる補強部材を取り付ける。補強部材は、車幅方向に所定の幅を有する略扁平な断面形状をなし、断熱性を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、後部荷室においてスペアタイヤが収納されるように構成された車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部荷室においては、フロアパネルにスペアタイヤを収納するタイヤパンが形成された車体構造が一般的に知られている。近年では、車両の軽量化を図り、フロアパネルの薄肉化が推進されているが、これに伴い、タイヤパンの剛性低下に起因する問題を回避するとともに、エンジンの排気系側に取り付けられフロアパネルの下方に沿って延設される排気管又は消音器(サイレンサ)等の管状部材からの振動音や放射熱によるタイヤパン又はそこに収納されたスペアタイヤへの影響を回避する手段の必要性が高まっている。
【0003】
タイヤパンの剛性低下に起因する問題として、例えば後突時にタイヤパンが大きく変形する結果、タイヤパンに固定されるスペアタイヤが離脱することがあるが、これを回避する技術として、例えば特開平11−011359号公報に、タイヤパンの下面側に車両前後方向に延びる荷重伝達部材が取り付けられる後部車体構造が開示されている。かかる荷重伝達部材を設けることにより、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、タイヤパン内のスペアタイヤの挙動が常に一定になり、スペアタイヤを介した車両の前方への荷重の伝達が回避される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−011359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1で開示される後部車体構造では、スペアタイヤの離脱を抑制することができるものの、排気管又はサイレンサ等の管状部材からの振動音や放射熱を遮断する手段が設けられておらず、それらがタイヤパン又はスペアタイヤへ影響するおそれがある。これを抑制する方法としては、単に、タイヤパンと管状部材との間に断熱部材を介在させることが考えられるが、上記特許文献1のようにタイヤパンの下面に補強部材が取り付けられた形態において断熱部材を採用する場合には、タイヤパンの下方に、補強部材,断熱部材及び管状部材が配設されることとなり、これらが下方に突出して、管状部材の地上からの高さ(以下、地上高という)を十分に確保し得なくなることが懸念される。また、例えば断熱部材をタイヤパンに取り付けた場合には、断熱効果はあるものの、十分な剛性をもたないタイヤパンとともに断熱部材が安定して固定されず、場合によっては、管状部材の振動音が断熱部材に伝わり、その振動音がフロアパネルに伝わるおそれがある。
【0006】
なお、参考までに、上記管状部材からの振動音や放射熱の影響を回避するために、従来では、車体パネルの一部を凹設して、管状部材を受容する排気管受容部を形成し、該排気管受容部において、車体パネルと管状部材との間に空隙をもって車体パネルに固着された補強パネルを介在させることが提案されているが(例えば特開2001−18850号公報)、この場合には、管状部材が、フロアパネルの下面側でタイヤパンに対応する下方への凸部に隣接して配設されるため、エンジンに連通し車両前方から延びてきた管状部材について、タイヤパンを迂回させる必要があり、また、タイヤパンに隣接して管状部材に対応するスペースを確保する必要がある。
【0007】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、スペアタイヤの離脱を抑制するとともに、エンジン排気系に連通しタイヤパンの下方に配設される管状部材の地上高を十分に確保しつつ、管状部材からの放射熱や振動音の影響を抑制し得る後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造において、上記後部荷室の床面をなすフロアパネルに、上記スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部が形成されるとともに、該タイヤ受け部の下面に沿って、エンジンの排気系に連通する管状部材が配設されており、上記タイヤ受け部の下面側には、少なくとも該タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位からスペアタイヤの後端部までの範囲に対応して車両の前後方向に延びる補強部材が取り付けられ、該補強部材は、車幅方向に所定の幅を有する略扁平な断面形状をなし、断熱性を有するものであることを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材は、車幅方向に所定の幅を有する略扁平な下面を備え、該下面と上記フロアパネルの下面との間に車幅方向に略扁平な間隙を形成するものであることを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記補強部材と上記管状部材との間に、板状の断熱部材が配設されていることを特徴としたものである。
【0011】
また、更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、上記断熱部材が、上記管状部材の頂部を跨ぐように位置決めされた取付け箇所で、上記補強部材に対して固定されていることを特徴としたものである。
【0012】
また、更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項1〜4に係る発明のいずれか一において、上記管状部材は、断面略円形状をなす部材からなることを特徴としたものである。
【0013】
また、更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る発明のいずれか一において、上記タイヤ受け部及びその下面側に取り付けられた上記補強部材は、車両前後方向において、水平に対し前方上向きに傾斜していることを特徴としたものである。
【0014】
また、更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項1〜6に係る発明のいずれか一において、上記管状部材は、車両前後方向にて、上記タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位よりも後方に配設されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本願の請求項1に係る発明によれば、補強部材が取り付けられた範囲で、タイヤパンの剛性が十分に確保されるため、タイヤパンに対するスペアタイヤの連結強度を向上させることができるとともに、補強部材自体が断熱性を有するため、排気系に連通する管状部材から放出される熱や振動音の影響を回避することができる。また、タイヤパンの下方では、断熱性を有する補強部材に対して、管状部材を近接して配設することができ、管状部材の地上高を確保することができる。更に、補強部材は車幅方向に略扁平な断面形状をなし、車両下方への突出が抑制されるため、管状部材の地上高をより大きく確保することができる。
【0016】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、フロアパネル及び補強部材の両下面の間に略扁平な間隙が形成されるため、車両の上下方向のスぺースを抑制しつつ効果的に断熱し、排気系に連通する管状部材から放出される熱や振動音の影響を回避することができる。
【0017】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、補強部材及び断熱部材の相乗効果により断熱性を一層向上させることにより、管状部材を補強部材及び断熱部材により近接して配設し、管状部材の地上高を大きく確保することができる。
【0018】
また、更に、本願の請求項4に係る発明によれば、取付け箇所と管状部材との干渉を防止して、管状部材を補強部材及び断熱部材により近接して配設し、管状部材の地上高をより大きく確保することができる。
【0019】
また、更に、本願の請求項5に係る発明によれば、フロアパネルに対向して扁平な面を有する管状部材(例えば断面略矩形状の管状部材等)に比べて、安価で製造可能であるとともに、振動音をより良好に抑制することができる。
【0020】
また、更に、本願の請求項6に係る発明によれば、上記タイヤ受け部及び補強部材を水平に対して前方上向きに予め傾斜させることで、車両後方から大きな荷重が加わった場合に、その前端部が持ち上がる方向へのスペアタイヤの回転及び傾斜を助長し、後部荷室側で衝撃吸収ストロークをより容易に確保することができる。
【0021】
また、更に、本願の請求項7に係る発明によれば、タイヤパンと管状部材との間には、断熱部材とともに、補強部材が介在させられることとなり、これにより、一層良好な遮音効果及び断熱効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
実施形態1.
図1は、スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両後方から見た図である。この車両1では、後部シート2の後側に、車両後方に向かって開口する後部荷室4が規定されている。後部荷室4の開口3は、伸縮可能なダンパー29を含む各種の部材を介して該開口3の縁部近傍に取り付けられたリフトゲート(不図示)により、開閉自在に覆われる。開口3の下方には、リヤバンパー14が、車両1の最も後方側に位置しつつ、車幅方向に延びるように設けられている。また、後部荷室4は、その下側で、取外し可能なフロアボード7により仕切られ、該フロアボード7の下方側には、スペアタイヤ5用の収納スペース6(図2及び3参照)が構成されている。
【0023】
図2は、フロアボード7が取り外され、スペアタイヤ5が収納された状態にある収納スペース6、図3は、更に、スペアタイヤ5が取り外された状態にある収納スペース6を車両側方から見た図である。収納スペース6は、車両1の後方側において、後部荷室4の開口3の周縁部をなすリヤエンドパネル12(図5参照)の内壁部12Aにより規定され、車両1の前方側において、車幅方向に延びるクロスメンバ18により規定されている。フロアボード7が取り外された状態では、後部車室4を含む車室の床面をなすフロアパネル10がその後端側で露出する。このフロアパネル10には、スペアタイヤ5を受け入れる凹状のスペアタイヤパン(以下、タイヤパンという)9が形成され、そのタイヤパン9の中央には、スペアタイヤ5を締結固定するためのブラケット11が溶接により取り付けられている。このブラケット11は、車両前後方向における断面が縁付き帽子状をなすもので、その上段部分及び下段部分には、それぞれ、ボルトを挿通させるボルト挿通孔11a及び11bが形成されている。そして、上段部分の下面側には、ボルト挿通孔11aに対応して、ナット32(図5参照)が溶接されている。
【0024】
また、本実施形態1では、フロアパネル10の下面側に、タイヤパン9に対応して、車両1の前後方向に延びる補強部材(以下、レインフォースメントという)20が取り付けられている。このレインフォースメント20は、その前端側で、タイヤパン9に対するスペアタイヤ5の固定部位、すなわちブラケット11が設けられる部位に対応して位置する一方、その後端側で、フロアパネル10の後方に構成されるリヤエンドパネル12(図5参照)から所定間隔離間して位置するように取り付けられている。レインフォースメント20がフロアパネル10に対して取り付けられる態様については、図5を参照して詳細に説明する。
【0025】
図4は、レインフォースメント20の斜視図である。このレインフォースメント20は、車両1の前後方向に沿って、図中左下の端部が前方に向く一方、図中右上の端部が後方に向くように取り付けられるもので、車幅方向に扁平な断面形状をなすように形成された本体21と、該本体21の上端部から車幅方向外方に延びるフランジ23と、を有している。本体21には、一対のボルト挿通孔21aが車両前後方向において隔てられ形成されている。フランジ23は、フロアパネル10の下面に対向する部分で、フロアパネル10に対して溶接され、これにより、レインフォースメント20がフロアパネル10に取り付けられる。なお、本実施形態において、レインフォースメント20は金属プレート材から製作され、本体21の車幅方向及び上下方向における寸法は、それぞれ、90ミリメートル及び12ミリメートルに設定されている。また、本体21及びフランジ23の肉厚は、約1.0〜1.4ミリメートルである。
【0026】
図5は、レインフォースメント20がフロアパネル10に取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。図中の左側が車両前側に対応し、右側が車両後側に対応する。図5に示す状態では、後部荷室4の床面をなすフロアボード7の下側に形成された収納スペース6において、ホイール5Aとタイヤ5Bとからなるスペアタイヤ5が、タイヤパン9内に位置決めされ、ボルト30がホイール5A及び押さえ板34(図5参照)を介しつつブラケット11の上段部下面側に溶接されたナット32に螺合させられることで、フロアパネル10に対して締め付けられるように固定されている。
【0027】
また、図5を参照すれば分かるように、本実施形態では、フロアパネル10が、車両前後方向において、前方上向きに傾斜するように構成されており、そのフロアパネル10の下面側に取り付けられたレインフォースメント20は、同様に、前方上向きに傾斜している。図5中の符号Sを付した破線は、水平線をあらわす。そして、レインフォースメント20の後端部は、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置している。
【0028】
更に、収納スペース6の後方には、後部荷室4の開口3の周縁部をなしつつ該収納スペース6を規定する内壁部12Aと、該内壁部12Aと一体的に成形され、該内壁部12Aの後方側に位置する縦壁部12Bとからなるリヤエンドパネル12が構成されている。リヤエンドパネル12の内壁部12Aは、タイヤパン9の上端部近傍まで下方に延び、他方、縦壁部12Bは、内壁部12Aより後方にて、内壁部12Aに対向し、更に、タイヤパン9やレインフォースメント20が存在する領域に対応するように下方へ延びている。また、リヤエンドパネル12の後方側には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント13が取り付けられている。更に、車幅方向に延び、バンパーレインフォースメント13をその後方から取り囲むリヤバンパー14が車両1の最も後方側に位置するように取り付けられている。
【0029】
また、更に、収納スペース6を構成するフロアパネル10の下方には、エンジン排気系の排気管(不図示)に連通し振動音を抑制するためのサイレンサ16が車幅方向に延びるように配設されている。本実施形態では、このサイレンサ16として、車両前後方向にて断面略円形状をなす管状部材が用いられる。かかる管状部材は、フロアパネル10に対向して扁平な面を有する管状部材(例えば断面略矩形状の管状部材等)に比べて、安価で製造可能であり、また、振動音が少ない(放射音特性が良い)部材として知られている。エンジン駆動時、エンジン排気系の排気管を通じて流れてくる高温の排気ガスがサイレンサ16に通過することに伴い、サイレンサ16から外部へ熱が放出されるが、かかる熱のタイヤパン9及びスペアタイヤ5への影響を抑制する手段として、本実施形態では、レインフォースメント20の下面側に、サイレンサ16をその上方側で囲うような形状をなす板状部材からなるインシュレータ15が取り付けられている。このインシュレータ15は、図3に示すように、タイヤパン9の下方において、車幅方向に沿って延びるサイレンサ16に対応する広範囲に広がるように設けられ、タイヤパン9及びレインフォースメント20の下面側に、ボルト等の取付け部材により固定されている。
【0030】
図6は、レインフォースメント20に対するインシュレータ15の取付け構造を拡大して示す図である。なお、この図6では、スペアタイヤ5をタイヤパン9に設けられたブラケット11に対して締結固定するボルト30を省略する。この図からよく分かるように、インシュレータ15は、車両前後方向において、前方におけるボルト36及びナット38の対による第1の取付け箇所と、後方におけるボルト37及び39の対による第2の取付け箇所とからなる2箇所で、ボルト36及び37がそれぞれナット38及び39に対して螺合させられることにより、レインフォースメント20の下面側に取り付けられ固定されている。
【0031】
まず、第1の取付け箇所にて、ボルト36がフロアパネル10を貫通しつつ、ブラケット11の下段部分上に位置決めされたナット38に螺合させられることにより、インシュレータ15がレインフォースメント20に対して固定されている。また、本実施形態では、これにより、ブラケット11とレインフォースメント20とが、フロアパネル10を介して連結されるようになっている。図7は、ブラケット11とレインフォースメント20との連結部分を示す、図6中のX−X線に沿った(ボルト36を通過しつつ車幅方向に広がる平面で切断された)縦断面説明図である。この図から分かるように、ボルト36が、互いに位置合わせされたブラケット11におけるボルト挿通孔11b,フロアパネル10におけるボルト挿通孔10a,レインフォースメント20におけるボルト挿通孔21a,インシュレータ15におけるボルト挿通孔15aに対して、フロアパネル10の下面側から挿通させられた上で、ブラケット11の下段部分上面側に位置するナット38に螺合させられ、これにより、インシュレータ15がレインフォースメント20の下面側に固定され、更に、ブラケット11とレインフォースメント20とがフロアパネル10を介して互いに連結されることとなる。他方、第2の取付け箇所にて、ボルト37が、フロアパネル10を貫通しつつ、レインフォースメント20のボルト挿通孔21aに対応して本体上面側に配置されたナット39に対して螺合させられることにより、インシュレータ15がレインフォースメント20の下面側に固定されている。
【0032】
本実施形態では、車両前後方向において、前方における第1の取付け箇所と、後方における第2の取付け箇所とが、サイレンサ16の頂部を跨ぐように隔てられている。図6中の符号Cであらわす一点鎖線は、その頂部を通過するサイレンサ16の中心線である。また、中心線Cが、タイヤパン9におけるブラケット11よりも後方に位置していることから分かるように、本実施形態では、サイレンサ16が、タイヤパン9におけるスペアタイヤ5の固定部位に対して後方に偏心して配設され、レインフォースメント20に対して車両前後方向におけるほぼ全ての範囲で重なるようになっている。
【0033】
以上説明したような後部車体構造によれば、タイヤパン9の剛性を確保すべく、タイヤパン9の下面側に、スペアタイヤ5の固定部位から後端部にかけて、レインフォースメント20が取り付けられるため、車両後方から荷重が加わり、バンパー14,バンパーレインフォースメント13及びリヤエンドパネル12が前方へ大きく変形するに伴い、タイヤパン9が車両前方へ付勢され変形する場合にも、タイヤパン9の剛性が、レインフォースメント20が取り付けられた範囲で十分に確保されるため、タイヤパン9の変形に伴うスペアタイヤ5の離脱を防止することができる。更に、本実施形態では、スペアタイヤ5とレインフォースメント20とが、ブラケット11及びボルト30,36により、フロアパネル10に対して固定されつつ、フロアパネル10を介して連結されるため、スペアタイヤ5の離脱を一層確実に防止することができる。
【0034】
また、レインフォースメント20は、車幅方向に所定の幅を有する扁平な下面を備え、該下面とフロアパネルの下面との間に車幅方向に扁平な間隙を形成することで、断熱性を有するため、サイレンサ16から放出される排気熱や振動音の影響を回避することができる。また、タイヤパン9の下方では、断熱性を有するレインフォースメント20に対して、サイレンサ16を近接して配設することができ、サイレンサ16の地上高を確保することができる。更に、レインフォースメント20は車幅方向に略扁平な断面形状をなし、車両下方への突出が抑制されるため、サイレンサ16の地上高をより大きく確保することができる。
【0035】
更に、本実施形態では、かかるレインフォースメント20をインシュレータ15と併用することで、これらの相乗効果により断熱性を一層向上させ、サイレンサ16をレインフォースメント20及びインシュレータ15に近接して配設し、サイレンサ16の地上高を大きく確保することができる。
【0036】
また、インシュレータ15は、レインフォースメント20に対して取り付けられるため、レインフォースメント20の下面側で安定して固定される。これにより、インシュレータ15は、サイレンサ16の放射熱を遮蔽するとともに、振動音に対しても共振することなく、それがタイヤパン9側に伝わることを抑制することができる。
【0037】
更に、その上、レインフォースメント20が、フロアパネル10に対して、前方上向きに傾斜するように、また、その後端側で、フロアパネル10の後方に構成されるリヤエンドパネル12の縦壁部12Bから所定間隔離間して位置するように取り付けられているため、車両後方から荷重が加わるに伴い、リヤエンドパネル12の縦壁部12Bが、レインフォースメント20の後端側に付勢されると、レインフォースメント20には、その傾斜によって、該レインフォースメント20の前端部が上方へ移動させられるような回転モーメントがもたらされることとなる。そして、レインフォースメント20が取り付けられたフロアパネル10にも同様の回転モーメントがもたらされ、かかる回転モーメントにより、レインフォースメント20及びタイヤパン9が回転させられる。これにより、タイヤパン9内に固定されたスペアタイヤ5がその前端部が上方へ移動させられるように回転させられ、その結果、スペアタイヤ5は、後部シート2が配置されたエリアに進入することなく、後部荷室4内で効率的に回転し傾斜することができる。
【0038】
また、更に、インシュレータ15のレインフォースメント20に対する取付け箇所に関し、車両前方における第1の取付け箇所と、後方における第2の取付け箇所とが、サイレンサ16の頂部を跨ぐように隔てられることで、取付け箇所とサイレンサ16との干渉を防止して、サイレンサ16をレインフォースメント20及びインシュレータ15に近接して配設し、サイレンサ16の地上高をより大きく確保することができる。更に、インシュレータ15をバランス良く一層安定して固定することができ、また、例えば組立作業においてインシュレータ15及びサイレンサ16の位置合わせを効率的に行うことができる。
【0039】
また、更に、サイレンサ16が、レインフォースメント20に対して車両前後方向におけるほぼ全ての範囲で重なるため、タイヤパン9とサイレンサ16との間には、インシュレータ15とともに、レインフォースメント20が介在させられることとなり、これにより、一層良好な遮音効果及び断熱効果を実現することができる。
【0040】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
前述した実施形態では、スペアタイヤ5とレインフォースメント20とをフロアパネル10に対して固定しつつ、フロアパネル10を介して互いに連結するために、ブラケット11,ボルト30,36及びナット32,38が用いられたが、これに限定されることなく、スペアタイヤ5とレインフォースメント20とをフロアパネル10を介して互いに連結し得るものであれば、ブラケット11又はスペアタイヤ5とレインフォースメント20とを車両上下方向において挟み込む部材若しくはリベットやフック等、いかなる手段を用いてもよい。
【0041】
また、前述した実施形態では、レインフォースメント20が、その前端側で、ブラケット11に対応する部位まで延びるように設けられたが、これに限定されることなく、例えば、車両1の前後方向において、ブラケット11に対応しつつタイヤパン9の直径にわたり延びるように設けられてもよい。
【0042】
更に、前述した実施形態では、レインフォースメント20が前方上向きに傾斜させられていたが、これに限定されることなく、レインフォースメント20が前方下向きに傾斜させられていてもよい。また、前述した実施形態では、レインフォースメント20を前方上向きに傾斜させるために、フロアパネル10が予め傾斜するように構成されたが、これに限定されることなく、例えば、水平に設定されたフロアパネルに、車両の前後方向において厚さの異なる部材を介在させつつレインフォースメントを取り付けることにより、レインフォースメント本体を傾斜させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両後方から見た図である。
【図2】スペアタイヤが収納されるように構成された後部車体構造を車両側方から見た図である。
【図3】スペアタイヤを取り外した状態にある後部車体構造を車両側方から見た図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るレインフォースメントの斜視図である。
【図5】上記レインフォースメントが取り付けられた後部車体構造の車両前後方向における縦断面説明図である。
【図6】上記レインフォースメントに対するインシュレータの取付け構造を拡大して示す図である。
【図7】図6中のX−X線に沿った縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1…車両,4…後部荷室,5…スペアタイヤ,6…収納スペース,9…スペアタイヤパン,10…フロアパネル,10a…ボルト挿通孔,11…ブラケット,11a,11b…ボルト挿通孔,12…リヤエンドパネル,12B…縦壁部,13…バンパーレインフォースメント,15…インシュレータ,15a…ボルト挿通孔,20…レインフォースメント,21…本体,21a…ボルト挿通孔,23…フランジ,30,36…ボルト,32,38,39…ナット,34…押さえプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部荷室にてスペアタイヤをほぼ水平に収納するように構成された車両の後部車体構造において、
上記後部荷室の床面をなすフロアパネルに、上記スペアタイヤを固定して保持するためのタイヤ受け部が形成されるとともに、該タイヤ受け部の下面に沿って、エンジンの排気系に連通する管状部材が配設されており、
上記タイヤ受け部の下面側には、少なくとも該タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位からスペアタイヤの後端部までの範囲に対応して車両の前後方向に延びる補強部材が取り付けられ、該補強部材は、車幅方向に所定の幅を有する略扁平な断面形状をなし、断熱性を有するものであることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記補強部材は、車幅方向に所定の幅を有する略扁平な下面を備え、該下面と上記フロアパネルの下面との間に車幅方向に略扁平な間隙を形成するものであることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記補強部材と上記管状部材との間に、板状の断熱部材が配設されていることを特徴とする請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記断熱部材が、上記管状部材の頂部を跨ぐように位置決めされた取付け箇所で、上記補強部材に対して固定されていることを特徴とする請求項3記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記管状部材は、断面略円形状をなす部材からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記タイヤ受け部及び補強部材は、車両前後方向において、水平に対し前方上向きに傾斜していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
上記管状部材は、車両前後方向にて、上記タイヤ受け部に対するスペアタイヤの固定部位よりも後方に配設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−192936(P2006−192936A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3884(P2005−3884)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】