説明

車両の物体検出装置

【課題】物体の検出精度の低下や誤検出が少なく、認識精度を向上できる車両の物体検出装置を提供する。
【解決手段】ミリ波レーダセンサ4は、車両1の前方の物体2を検知し、送信波と受信波とのビート信号からピーク周波数を検出する。他車情報演算処理部11は、車車間通信又は路車間通信によって取得した他車両3の位置及び速度と、自車位置センサ5及び自車速センサ6によって取得した車両1の位置及び速度とから他車両3と車両1との参照距離及び参照相対速度を求める。判定処理部12は、ミリ波レーダセンサ4が検出したピーク周波数から、参照距離と参照相対速度とに相当するピーク周波数を探索し、探索できた場合は物体2を他車両3と判定する。物体情報演算処理部13は、他車両3と判定した物体2のピーク周波数を除いたピーク周波数から、他車両3と判定した物体2を除く物体2と車両1との距離及び相対速度を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追突事故などを防止するために車両の制御を行う運転支援装置に用いる物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平5−142337号公報には、3角波変調の連続の送信信号と、目標で反射された受信信号とのビート信号から目標に対する距離及び速度を求めるミリ波レーダ距離速度測定装置が記載されている。3角波変調の上昇側のビート信号の周波数と下降側のビート信号の周波数とが近いものを組み合わせることによって、目標までの距離と相対速度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−142337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衝突事故の防止のために車両の制御を行う運転支援装置においては、車両の接近情報等を検知するためにレーダセンサなどの自律の物体検出装置が使用されている。しかし、特開平5−142337号公報に記載のミリ波レーダ距離速度測定装置においては、検出範囲に路側壁などの構造物がある場合などでは多くの連続したピーク周波数が出現し、近接するピークの組み合わせに困難を伴う。ピーク周波数の組み合わせを間違えると正確な距離と速度が得られず、検出精度が低下し、目標(物体)を誤検出する可能性がある。また、検出した物体が車両か否かの特定が困難で認識精度が低い。
【0005】
そこで、本発明では、物体の検出精度の低下や誤検出が少なく、また物体の認識精度を向上できる車両の物体検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の車両の物体検出装置は、物体検出手段と、物体情報演算手段と、他車情報取得手段と、他車情報演算手段と、判定手段と、を備える。物体検出手段は、自車両の進行方向の前方に存在する複数の物体を検知し、検知した複数の物体と自車両との距離情報を検出する。物体情報演算手段は、複数の物体と自車両との距離を、物体検出手段が検出した距離情報からそれぞれ演算する。他車情報取得手段は、他車両の位置を特定する他車位置情報を、外部との通信によって取得する。自車位置取得手段は、自車両の位置を特定する自車位置情報を、外部との通信によって取得する。他車情報演算手段は、他車情報取得手段が取得した他車位置情報と自車位置取得手段が取得した自車位置情報とから、他車両と自車両との距離を参照距離として演算する。判定手段は、参照距離と物体検出手段が検出した距離情報とを比較することによって、物体検出手段が他車両を物体として検知したか否かを判定する。物体情報演算手段は、物体検出手段が他車両を物体として検知したと判定手段が判定した場合、前記複数の物体のうち前記他車両を除く他の物体と前記自車両との距離を、前記参照距離を利用して演算する。
上記構成では、物体検出手段により得られた複数の物体と自車両との距離情報と、他車情報演算手段により得られた他車位置情報に基づく他車両と自車両との参照距離とを比較して、物体検出手段が他車両を物体として検知したか否かを判定する。従って、検知された物体が他車両であることを確実に認識することができ、検出物体の認識精度が向上する。また、複数の物体のうち他車両を除いた他の物体と自車両との距離を、参照距離を利用して演算するので、誤演算等による誤検出の低減や検出精度の向上を図ることができる。
【0007】
また、物体検出手段は、周波数変調した電磁波を送信波として出射し、出射した送信波の反射波を受信することによって物体を検知し、送信波と受信波とのビート信号を生成し、生成したビート信号を周波数解析することによって、ビート信号のピーク周波数を距離情報として検出し、前記判定手段は、検出されたピーク周波数の中に参照距離に相当するピーク周波数が存在する場合、物体検出手段が他車両を物体として検知したと判定し、物体情報演算手段は、物体検出手段が他車両を物体として検知したと判定手段が判定した場合、他の物体と自車両との距離を、検出されたピーク周波数から参照距離に相当するピーク周波数を除いたピーク周波数を用いて演算してもよい。
【0008】
上記構成では、判定手段が他車両を物体として検知したと判定した場合に、物体情報演算手段は、検出されたピーク周波数から参照距離に相当するピーク周波数を除いたピーク周波数を用いて、他の物体と自車両との距離を演算する。従って、演算対象となるピーク周波数の数が削減されて演算の確度が向上し、誤ったピーク周波数を用いて生じる検出精度の低下が防止され、誤検出が減少する。
【0009】
また、上記車両の物体検出装置は、自車両の速度を検出する自車速検出手段を備え、他車情報取得手段は、他車両の速度を外部との通信によって取得し、他車情報演算手段は、他車情報取得手段が取得した他車両の速度と自車速検出手段が検出した自車両の速度とから、他車両と自車両との参照相対速度を演算し、判定手段は、参照距離及び参照相対速度に相当する参照ピーク周波数を求め、検出されたピーク周波数と参照ピーク周波数とを比較し、検出されたピーク周波数の中に参照ピーク周波数に相当するピーク周波数が存在する場合、物体検出手段が他車両を物体として検知したと判定してもよい。
【0010】
上記構成では、判定手段は、参照距離及び参照相対速度に相当する参照ピーク周波数を求め、検出されたピーク周波数と、参照ピーク周波数とを直接的に比較する。従って、参照ピーク周波数に相当するピーク周波数の探索が容易となり、物体検出装置の演算負荷が低減する。
【0011】
また、物体情報演算手段は、物体検出手段が他車両を物体として検知したと判定手段が判定した場合、他の物体と自車両との距離を、参照距離を用いて補正してもよい。
【0012】
上記構成では、比較的高精度の他車両及び自車両の位置情報を使って演算した参照距離を用いて、他の物体と自車両との距離が補正される。従って、他の物体と自車両との距離の検出精度が向上する。
【0013】
また、他車情報取得手段は、他車両の位置を車車間通信又は路車間通信の少なくとも一方によって取得してもよい。
【0014】
上記構成では、他車情報取得手段は、他車両の位置を、車車間通信や路車間通信の規格化された通信手段によって取得する。従って、規格に沿った装置の設計が可能となり開発コストの低減や開発期間の短縮が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車両の物体検出装置の検出精度の低下を防止し、誤検出を減少させることができ、物体の認識精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の物体検出装置を用いた運転支援装置を搭載した車両の要部を示すブロック図である。
【図2】図1のミリ波レーダセンサの物体検知状況を示す模式図である。
【図3】ミリ波レーダセンサの送信波及び反射波の波形図である。
【図4】1つの物体を検知した場合の周波数解析の結果を表す図である。
【図5】複数の物体を検知した場合の周波数解析の結果を表す図である。
【図6】参照距離と参照周波数とを用いてピーク周波数を探索する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の物体検出装置を使った運転支援装置を搭載した車両の要部を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係わる車両1は、ミリ波レーダセンサ(物体検出手段)4と、自車位置センサ(自車位置検出手段)5と、自車速センサ(自車速検出手段)6と、通信装置(他車情報取得手段)7と、警報装置8と、ブレーキアクチュエータ9と、CPU10とを備える。
【0018】
ミリ波レーダセンサ4は、3角波の周波数変調を施したミリ波帯域の連続した電磁波(FM−CW)である送信波を、車両1の前端部から進行方向の所定角度の範囲内に向けて一定時間ごとに発射し、車両1の前方に存在する物体2からの反射波である受信波を受信し物体2を検知する(図2参照)。続いて、送信波と受信波とをミキシングすることによってビート信号を生成し、生成したビート信号を高速フーリエ変換(FFT)によって周波数解析する。
【0019】
ここで、物体2からの受信波は、送信波に対して、物体2と車両1との距離Lを往復することによる時間遅延があるので(図3参照)、ビート信号を周波数解析することによって、3角波による周波数変調の上昇区間(アップ側)及び下降区間(ダウン側)のビート信号には、距離Lに対応するビート周波数Flにピークをもつピーク周波数Fu(アップ側)、Fd(ダウン側)がそれぞれ生じる。
【0020】
Fu=Fd=Fl ・・・(1)
Fl=k1・L (k1:定数) ・・・ (2)
【0021】
また、物体2と車両1との間に相対速度Vがある場合には、ドップラー効果による周波数シフト(ドップラシフト)が反射波に発生するため(図3参照)、アップ側のビート信号のピーク周波数Fuは、相対速度がゼロの場合のビート周波数Flから、相対速度Vに対応したビート周波数Fvだけ周波数が減少する。ダウン側のビート信号のピーク周波数Fdは、相対速度がゼロの場合のビート周波数Flから、相対速度Vに対応したビート周波数Fvだけ周波数が増加する(図4参照)。すなわち、
Fu=Fl−Fv ・・・ (3)
Fd=Fl+Fv ・・・ (4)
Fv=k2・V (k2:定数) ・・・ (5)
【0022】
検知された物体2が複数である場合は、アップ側及びダウン側のビート信号には、物体2の数に対応した複数のピーク周波数Fu、Fdがそれぞれ発生する。図5には、3個の物体2が検知された場合を示す。アップ側及びダウン側のビート信号には、それぞれFu1〜Fu3、Fd1〜Fd3のピーク周波数が発生している。
ミリ波レーダセンサ4は、これら複数のアップ側のピーク周波数Fu及びダウン側のピーク周波数Fdを検出し、CPU10へ出力する。
【0023】
自車位置センサは、GPS(Global Positioning System)を利用して車両1の位置を所定時間毎に取得し、CPU10へ出力する。
【0024】
自車速センサ6は、車両1の車速を所定時間毎に検出し、CPU10へ出力する。
【0025】
通信装置7は、車車間通信又は路車間通信の少なくとも一方の通信方法によって、他車両3が発信する他車両3の位置及び車速を所定時間毎に取得し、CPU10へ出力する。
【0026】
図1のブロック図に示すように、CPU10には、他車情報演算処理部(他車情報演算手段)11と、判定処理部(判定手段)12、物体情報演算処理部(物体情報演算手段)13と、衝突防止制御部14とが設けられる。CPU10は、運転支援装置のスイッチ(図示せず)がオンになると、所定の時間毎にこれらの処理を実行する。
【0027】
他車情報演算処理部11は、通信装置7から入力された他車両3の位置及び速度と、自車位置センサ5から入力された車両1の位置及び自車速センサ6から入力された車両1の速度とを取得して、他車両3と車両1との距離である参照距離Lrと、他車両3と車両1との相対距離である参照相対速度Vrとを演算する。
【0028】
判定処理部12は、他車情報演算処理部11によって車両1との参照距離Lr及び参照相対速度Vrが演算された他車両3を、ミリ波レーダセンサ4が検知したか否かを判定する。すなわち、判定処理部12は、まず、他車情報演算処理部11によって演算された参照距離Lr及び参照相対速度Vrを式(2)、式(5)に代入し、式(3)、式(4)を使って、参照距離Lr及び参照相対速度Vrに相当する参照ピーク周波数であるアップ側のビート信号のピーク周波数Fur及びダウン側のビート信号のピーク周波数Fdrを算出する。
【0029】
Fur=k1・Lr−k2・Vr ・・・ (6)
Fdr=k1・Lr+k2・Vr ・・・ (7)
【0030】
次に判定処理部12は、図6に示すように、ミリ波レーダセンサ4によって検出された複数の物体2についてのアップ側の複数のピーク周波数の中に、Furとの差が所定範囲内にある物体2のピーク周波数Fuの有無を探索する。同様にダウン側のピーク周波数の中にFdrとの差が所定範囲内にあるピーク周波数Fdの有無を探索する。図6に示す例では、検知された3個の物体2のピーク周波数Fu1〜Fu3,Fd1〜Fd3のうち、Fu2とFd2のピーク周波数のペアが参照ピーク周波数Fur及びFdrに相当するピーク周波数として探索される。ピーク周波数Fu及びFdのペアを探索できた場合には、判定処理部12は、ピーク周波数FuとFdとに対応する物体2が、他車両3であると判定する。ピーク周波数の中に、Fur及びFdrとの差が所定範囲内にあるピーク周波数のペアを探索できなかった場合は、ミリ波レーダセンサ4が、参照距離Lr及び参照相対速度Vrを有する他車両3を検知できなかったことが考えられる。例えば、大型車両の前方を小型車両が走行していてミリ波レーダセンサ4からの送信波が届きにくい場合などが考えられる。
【0031】
物体情報演算処理部13は、ミリ波レーダセンサ4によって検出された複数の物体2についてのアップ側のピーク周波数Fuとダウン側のピーク周波数Fdとを組み合わせることによって、それぞれ物体2と車両1との距離L及び相対速度Vを演算する。具体的には、まず、判定処理部12によって、他車両3であると判定された物体2については、参照ピーク周波数Fur及びFdrとの差が所定範囲内にあったピーク周波数FuとFdとを組み合わせる。図6に示す例では、Fu2とFd2とを組み合わせる。他車両3であると判定された物体2が複数存在する場合は、複数のピーク周波数の組み合わせをつくる。次に、他車両3であると判定された物体2を除く物体2(他の物体)については、ピーク周波数の中から、参照ピーク周波数Fur及びFdrとの差が所定範囲内にあったピーク周波数FuとFdとの組み合わせを除いた残りのピーク周波数を使って、物体2と車両1との距離L及び相対速度Vに相当するアップ側のピーク周波数Fuとダウン側のピーク周波数Fdとを組み合わせる。図6に示す例では、Fu2とFd2との組み合わせを除いた、Fu1,Fu3及びFd1,Fd3を使って組み合わせる。続いて、組み合わせたピーク周波数FuとFdとを式(8)及び式(9)に代入し、検知された全ての物体2と車両1との距離L及び相対速度Vを演算する。
【0032】
L=(Fd+Fu)/2k1 ・・・ (8)
V=(Fd−Fu)/2k2 ・・・ (9)
【0033】
また、判定処理部12において、未検知の他車両3があった場合には、未検知の他車両3についての参照距離Lr及び参照相対速度Vrを物体2の演算結果に加える。
【0034】
衝突防止制御部14は、物体情報演算処理部13によって演算された物体2と車両1との距離Lを相対速度Vで除することによって求められる衝突余裕時間TTC(Time to Collision)を演算する。TTCが最も短い物体2について、TTCが第1の所定時間(例えば3秒)以下になった場合は、警報装置8に出力して運転者に注意を喚起する。更にTTCが第2の所定時間(例えば0.8秒)以下になった場合は、ブレーキアクチュエータ9を操作して車両1を減速し物体2との衝突を回避する。
【0035】
本実施形態では、ミリ波レーダセンサ4が検出した複数の物体2のピーク周波数の中から、他車両3と車両1との参照距離Lr及び参照相対速度Vrに相当する参照ピーク周波数Fur及びFdrに相当するピーク周波数を探索できた場合には、ピーク周波数に対応する物体2が他車両3であると判定する。従って、ミリ波レーダセンサ4によって検知された物体2が他車両3であることが確実に認識できる。また、路側などにおける停止車両が存在する場合は、ミリ波レーダセンサ4によって静止している物体2として検知されるが、停止車両が位置情報を発信している場合には、検知された静止物体が、路側の構造物等ではない他車両3であることが認識できる。
【0036】
また、参照ピーク周波数Fur及びFdrに相当するピーク周波数を探索できた場合には、物体情報演算処理部13では、参照ピーク周波数に相当するピーク周波数の組み合わせを除くピーク周波数Fu及びFdから、他車両3と判定された物体2を除く他の物体2の距離L及び相対距離Vを演算する。従って、図6に示す例のように、演算に用いるピーク周波数の数が削減されるので、演算の確度が向上し、誤ったピーク周波数を組み合わせることによる検出精度の低下や、誤検出が防止できる。
【0037】
また、参照距離Lr及び参照相対速度Vrに相当するピーク周波数を探索できない場合、すなわちミリ波レーダセンサ4が他車両3と判定される物体2を検知できなかった場合であっても、他車情報演算処理部11で求めた他車両3と車両1の参照距離Lr及び参照相対速度Vrの情報が取得できるので、他車両3についての未検知が減少する。
【0038】
また、他車情報演算処理部11によって得られる他車両3と車両1との参照距離Lr及び参照相対速度Vrは、GPS測位による位置情報及び車両センサ等の速度情報に基づいているので比較的精度が高い。従って、ミリ波レーダセンサ4によって検出された物体2と車両1との距離L及び相対速度Vを、他車両3と判定された物体2については参照距離Lr及び参照相対速度Vrを測定値として使用し、また、他の物体2についは、参照距離Lr及び参照相対速度Vrを基準値として他の物体2と車両1との距離L及び相対速度Vの演算値を補正して測定値とすることにより、ミリ波レーダセンサ4の測定値の精度を向上させることができる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、ミリ波レーダセンサ4によって検知される物体2の認識精度や測定精度が向上し、誤検出や未検出が減少するので、誤った物体情報によって引き起こされる運転支援装置の誤警報や誤作動を低減することができる。
【0040】
また、判定処理部12は、他車両3と車両1との距離Lr及び参照相対速度Vrに相当する参照ピーク周波数Fur及びFdrを演算し、ミリ波レーダセンサ4によって検出されたピーク周波数Fu及びFdと直接的に比較する。従って、参照ピーク周波数に相当する物体2のピーク周波数の探索が容易となり、物体情報演算処理部13の演算負荷が低減する。
【0041】
また、他車両3の位置及び速度の情報を、車車間通信又は路車間通信の規格化された通信方法によって取得するので、通信装置7を規格に沿って設計することができる。従って、開発コストの低減や開発期間の短縮をすることができる。
【0042】
なお、他車情報演算処理部11は、自車位置センサ5から得られる車両1の位置と、通信装置7から得られる他車両3の位置に基づき、他車両3と車両1との参照距離Lrのみを演算し、判定処理部12は、ミリ波レーダセンサ4が検出したピーク周波数から、参照距離Lrに相当するピーク周波数Furを探索して、検知した物体2が他車両3であるか否かを判定してもよい。この場合は、参照相対速度Vrは未知であるので、式(2)から参照距離Lrに相当するビート周波数Frを演算し、Frを中心にして未知の参照相対速度に相当する周波数Δfだけ増減したFr−ΔfとFr+Δfのピーク周波数の組み合わせを作る。次にΔfをゼロから増加させながら、Fr±Δfに対して所定範囲内に存在するミリ波レーダセンサ4が検出した物体2のピーク周波数の組み合わせを探索する。所定範囲内に物体2のピーク周波数の組み合わせが探索できた場合は、そのピーク周波数に対応する物体2は他車両3であることが判定できる。
【0043】
また、物体情報演算処理部13は、演算した物体2についての距離L及び相対速度Vを時系列データとして記憶し、今回検出した物体2についてのピーク周波数FuとFdとの組み合わせの際に用いてもよい。前回以前の時系列データに記憶されている物体2の距離及び相対速度を使って、今回検出した物体2の距離及び相対速度を推定し、参照することにより、ピーク周波数Fu、Fdのより正確な組み合わせが可能となる。
【0044】
また、物体検出手段は、本実施形態のミリ波レーダに限定されず、例えば、カメラ等によって物体2を撮像し、公知の3角法等によって物体2までの距離を検出する画像センサ等であってもよい。すなわち、判定処理部12は、画像センサによって検出された複数の物体2と車両1との距離L及び相対速度Vの少なくとも一方と、他車情報演算処理部11によって演算された他車両3と車両1との参照距離Lr及び参照相対速度Vrの少なくとも一方とを比較することによって、参照距離Lrに対応する物体2を他車両3であると判定することができる。従って、判定された物体2が他車両3であることを確実に認識することができる。また、参照距離Lrを判定された物体2の距離Lの測定値として使用するとともに、他の物体2の距離Lについては、参照距離Lrを基準値として補正して測定値とすることにより、画像センサの測定値の精度を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、1つのCPU10が物体2の検出と衝突防止制御処理とを実行しているが、物体2の検出を実行する処理装置と衝突防止制御を実行する処理装置とを、異なる別のユニットとして構成してもよい。従って、衝突防止制御処理を実行する装置を備えた既存の車両1に対しては、物体2の検出を実行する装置(ユニット)を追加して設置すればよく、このような既存の車両1に対して、本発明を容易に適用することができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両の運転支援装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 物体
3 他車両
4 ミリ波レーダセンサ
5 自車位置センサ
6 自車速センサ
7 通信装置
10 CPU
11 他車情報演算処理部
12 判定処理部
13 物体情報演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向の前方に存在する複数の物体を検知し、検知した複数の物体と前記自車両との距離情報を検出する物体検出手段と、
前記複数の物体と前記自車両との距離を、前記物体検出手段が検出した距離情報からそれぞれ演算する物体情報演算手段と、
他車両の位置を特定する他車位置情報を、外部との通信によって取得する他車情報取得手段と、
前記自車両の位置を特定する自車位置情報を、外部との通信によって取得する自車位置取得手段と、
前記他車情報取得手段が取得した他車位置情報と前記自車位置取得手段が取得した自車位置情報とから、前記他車両と前記自車両との距離を参照距離として演算する他車情報演算手段と、
前記参照距離と前記物体検出手段が検出した距離情報とを比較することによって、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記物体情報演算手段は、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したと前記判定手段が判定した場合、前記複数の物体のうち前記他車両を除く他の物体と前記自車両との距離を、前記参照距離を利用して演算する
ことを特徴とする車両の物体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の物体検出装置であって、
前記物体検出手段は、周波数変調した電磁波を送信波として出射し、出射した送信波の反射波を受信することによって物体を検知し、前記送信波と前記受信波とのビート信号を生成し、生成したビート信号を周波数解析することによって、前記ビート信号のピーク周波数を前記距離情報として検出し、
前記判定手段は、前記検出されたピーク周波数の中に前記参照距離に相当するピーク周波数が存在する場合、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したと判定し、
前記物体情報演算手段は、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したと前記判定手段が判定した場合、前記他の物体と前記自車両との距離を、前記検出されたピーク周波数から前記参照距離に相当するピーク周波数を除いたピーク周波数を用いて演算する
ことを特徴とする車両の物体検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の物体検出装置であって、
前記自車両の速度を検出する自車速検出手段を備え、
前記他車情報取得手段は、前記他車両の速度を外部との通信によって取得し、
前記他車情報演算手段は、前記他車情報取得手段が取得した前記他車両の速度と前記自車速検出手段が検出した前記自車両の速度とから、前記他車両と前記自車両との参照相対速度を演算し、
前記判定手段は、前記参照距離及び前記参照相対速度に相当する参照ピーク周波数を求め、前記検出されたピーク周波数と前記参照ピーク周波数とを比較し、前記検出されたピーク周波数の中に前記参照ピーク周波数に相当するピーク周波数が存在する場合、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したと判定する
ことを特徴とする車両の物体検出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両の物体検出装置であって、
前記物体情報演算手段は、前記物体検出手段が前記他車両を前記物体として検知したと前記判定手段が判定した場合、前記他の物体と前記自車両との距離を、前記参照距離を用いて補正する
ことを特徴とする車両の物体検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両の物体検出装置であって、
前記他車情報取得手段は、前記他車両の位置を車車間通信又は路車間通信の少なくとも一方によって取得する
ことを特徴とする車両の物体検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−185084(P2012−185084A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49331(P2011−49331)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】