説明

車両の発電制御装置

【課題】補機ベルトを強化することなく発電機の回生発電量を大きくすることが可能で、車両の燃費を向上させる車両の発電制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、エンジンの動力の一部で駆動される発電機と、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出部と、前記ブレーキ操作量によって、車両の加速が予測されるときは、前記発電機の発電量を下げて設定する発電量設定部を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の発電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の車両はエンジンの動力により発電機が駆動されている。また車両が減速しているときは、燃料供給が停止していても、エンジンは、車両の慣性力によりタイヤ、駆動系を介して回転している。そこで車両が減速しているときに発電機で発電させて、捨てられる運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回生発電が行われている。回生発電は燃料を消費することなく発電できるので、車両の燃費を向上させる。
【0003】
そして、燃費を向上させるため、従来に比べてさらに大容量の発電機を搭載して発電量を上げると、発電機の駆動トルクが大きくなり、エンジンへの負荷が高くなる。そしてエンジンプーリーと発電機のプーリーとの間に架け渡される補機ベルトに、滑りや鳴きの不具合、さらには破断の危険性が生じる。
【0004】
ところで特許文献1では、発電量の増加などで駆動トルクが増大しても車両の加速性能を維持するために、車両が加速状態のときにエンジン補機の作動を停止又は低下させている。また車両の変速動作によって加速状態が一時的に中断される場合もエンジン補機の作動の停止又は低下を継続させることにより、駆動トルクが短時間に急変動するのを防止して、補機ベルトへの不具合の発生を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−170238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述した従来制御では、車両の加速状態を加速度センサーの値又は車速の変化量から判断して、車両が実際に加速状態であるときに補機の作動を制御する。これでは大容量発電機で回生発電しているときに起こりうる急なトルク変動に対応できない。大容量の発電機で回生発電するのに必要な駆動トルクは大きい。車両が減速して回生発電しているときに急にアクセルペダルが踏まれると、補機ベルトには発電機の駆動負荷と急な加速による負荷との重ね合わせで大きな負荷が掛かってしまう虞がある。しかし安易に補機ベルトを強化すると、回生発電時以外の走行において車両の燃費が悪化する。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、補機ベルトを強化することなく発電機の回生発電量を大きくすることが可能で、車両の燃費を向上させる車両の発電制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0009】
本発明は、エンジンの動力の一部で駆動される発電機と、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出部と、前記ブレーキ操作量によって、車両の加速が予測されるときは、前記発電機の発電量を下げて設定する発電量設定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンが高負荷になることが予測されるときに発電機の発電量を下げるので、補機ベルトへの全体負荷を減らして滑りや鳴きといった不具合を防止することができる。またブレーキ操作量から車両の加速を予測して発電機の発電量を下げるので、実際に車両が加速する前に発電機の発電量を制御できる。これにより大容量発電による負荷と車両の加速による負荷とが重なり合うことがない。よって本発明は補機ベルトに生じる不具合を防止しつつ、大容量の発電を可能とするので、車両の燃費を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による車両の発電制御装置を適用するエンジン及び補機の係合関係を示す図である。
【図2】本発明による車両の発電制御装置を適用する全体システムの一例である。
【図3】第1、2実施形態の車両の発電制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】第1実施形態における発電調整量Wbの算出処理の動作を説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態におけるブレーキ液圧と許容発電量との関係を示す図である。
【図6】第1実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における発電調整量Wbの算出処理の動作を説明するフローチャートである。
【図8】ブレーキ液圧変化速度と発電調整量との関係を示す図である。
【図9】第2実施形態におけるブレーキ液圧と許容発電量との関係を示す図である。
【図10】第2実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【図11】第3実施形態の車両の発電制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図12】エアコントルクとエアコンによる発電調整量との関係を示す図である。
【図13】第3実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明による車両の発電制御装置を適用するエンジン及び補機の配置関係を示す模式図である。
【0014】
エンジンプーリー1は、オルタネータープーリー2と、エアコンプーリー3と、アイドラプーリー5と、に補機ベルト4を架け渡して、図示しないエンジンのクランクシャフトの回転運動を伝達する。エンジンプーリー1は、クランクシャフト端部に設けられる。エンジンプーリー1の外周には補機ベルト4と噛み合う溝が形成されている。
【0015】
オルタネータープーリー2は、図示しないオルタネーターの回転軸に設けられる。オルタネータープーリー2の外周には補機ベルト4と噛み合う溝が形成されている。オルタネータープーリー2は、エンジンの回転をオルタネーターの回転軸に伝達する。そして磁化されたローターコイルを備えるオルタネーターの回転軸が回転して、ステーターコイルに起電力を生じて発電する。
【0016】
エアコンプーリー3は、図示しないエアコンコンプレッサーの回転軸に設けられる。エアコンプーリー3の外周には補機ベルト4と噛み合う溝が形成されている。エアコンプーリー3は、エンジンの回転をエアコンコンプレッサーの回転軸に伝達する。そしてエアコンコンプレッサーの回転軸が回転して冷媒ガスを圧縮することで、冷房制御する。
【0017】
補機ベルト4は、エンジンの動力の一部によって駆動される補機プーリー(ここではオルタネータープーリー2及びエアコンプーリー3)と、エンジンプーリー1と、アイドラプーリー5と、に架け渡される。補機ベルト4は、エンジンの回転を補機に伝達する。
【0018】
アイドラプーリー5は、エンジンに設けられて空転する。アイドラプーリー5は、オルタネータープーリー2とエアコンプーリー3との間の補機ベルト4に架かって設けられる。アイドラプーリー5は、補機ベルト4の補機への巻き付き角度を大きくしたり、補機ベルト4の方向を変えて障害物を迂回したりするために設けられる。
【0019】
図2は、本発明による車両の発電制御装置を適用する全体システムの一例である。
【0020】
車両の発電制御装置100は、エンジンコントローラー10と、発電機コントローラー20と、エアコンコントローラー30と、ブレーキコントローラー40と、複数のマイクロコンピューターを含む。これらのマイクロコンピューターは、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備える。
【0021】
エンジンコントローラー10は、エアコンコントローラー30から送信されるエアコントルクの値を受信する。またブレーキコントローラー40から送信されるブレーキ液圧の情報を受信する。そしてエンジンコントローラー10は、受信した情報をもとにオルタネーターで発電する発電量をオルタネーターコントローラー20に指令する。またエンジンコントローラー10は、エアコンコントローラー30にエアコンクラッチ32のON/OFF指令を出す。またエアコンコンプレッサー31のエアコントルク値を受信して、フィードバック制御する。
【0022】
オルタネーターコントローラー20は、エンジンコントローラー10から指令された発電量になるようにオルタネーター21を制御する。オルタネーター21は、電動パワーステアリング51に電力を供給する。
【0023】
エアコンコントローラー30は、エンジンコントローラー10にエアコントルクの値を送信する。またエアコンコントローラー30は、エンジンコントローラー10からの指令によってエアコンクラッチ32をON/OFFする。そして設定したエアコントルクの値となるようにエアコンコンプレッサー31を駆動する。
【0024】
ブレーキコントローラー40は、ドライバーがブレーキペダル41を踏んだときのブレーキ液圧の情報をエンジンコントローラー10に送信する。
【0025】
以下では第1実施形態における車両の発電制御装置100の具体的な制御ロジックについてフローチャートに沿って説明する。図3は、本実施形態の車両の発電制御装置の動作を説明するフローチャートである。なお車両の発電制御装置100はこの処理を微少時間(たとえば10ミリ秒)サイクルで繰り返し実行する。
【0026】
ステップS1において、車両の発電制御装置100は、アクセルペダルが踏まれているか否かを判定する。アクセルペダルが踏まれていない場合は、車両の発電制御装置100はステップS2に処理を移行する。アクセルペダルが踏まれている場合は、車両の発電制御装置100はステップS7に処理を移行する。
【0027】
ステップS2において、車両の発電制御装置100は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを判定する。ブレーキペダルが踏まれている場合は、車両の発電制御装置100はステップS3に処理を移行する。ブレーキペダルが踏まれていない場合は、車両の発電制御装置100はステップS7に処理を移行する。
【0028】
ステップS3において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧を検出する。
【0029】
ステップS4において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧が所定値X以上であるか否かを判定する。ブレーキ液圧が所定値X以上である場合は、車両の発電制御装置100はステップS5に処理を移行する。ブレーキ液圧が所定値Xに満たない場合は、車両の発電制御装置100はステップS7に処理を移行する。
【0030】
ここで所定値Xは、ドライバーが車両を減速させる意図があると判定するブレーキ液圧の閾値である。ブレーキペダルが踏まれていていても、その踏込み量が少なければ、すぐにアクセルペダルが踏まれる心配がある。そこでブレーキ液圧が所定値X以上となったら、車両はしばらく減速する状態であると予測する。ブレーキ液圧が所定値Xに満たなければ、車両はいつでも加速できる、いつ加速するかわからない状態であると予測する。
【0031】
ステップS5において、車両の発電制御装置100は、オルタネーター21の発電調整量Wbを算出する。詳細は後述する。
【0032】
ステップS6において、車両の発電制御装置100は、発電量Woに発電調整量Wbを加算した値をオルタネーター21の許容発電量Wとする。
【0033】
ステップS7において、車両の発電制御装置100は、発電量Woをオルタネーター21の許容発電量Wとする。
【0034】
ここで発電量Woは、車両の加速性能を妨げることのない加速時許容発電量である。
【0035】
次に図4を参照して、ステップS5の発電調整量Wb算出処理について説明する。図4は、本実施形態における発電調整量Wbの算出処理の動作を説明するフローチャートである。
【0036】
ステップS51において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧が所定値Y以上であるか否かを判定する。ブレーキ液圧が所定値Yに満たない場合は、車両の発電制御装置100はステップS52に処理を移行する。ブレーキ液圧が所定値Y以上である場合は、車両の発電制御装置100はステップS53に処理を移行する。
【0037】
ここで所定値Yは所定値Xよりも大きい値で、オルタネーター21による発電が最大可能発電量Wmaxとなるブレーキ液圧の最小値である。ブレーキ液圧が所定値Y以上であれば発電量Wmaxである。
【0038】
ステップS52において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbを次の式(1)から算出する。ここでステップS3において検出したブレーキ液圧値をBとする。
【0039】
【数1】

【0040】
ステップS53において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbを次の式(2)から算出する。このとき発電調整量Wbは最大発電調整量wbmaxである。
【0041】
【数2】

【0042】
図5は、本実施形態におけるブレーキ液圧と許容発電量との関係を示す図である。図5は横軸をブレーキ液圧として、縦軸を許容発電量とする。本実施形態においては、ステップS3で検出されたブレーキ液圧を図5の関係図に当てはめて許容発電量を求めることができる。言い換えると、上記式(1)及び(2)は図5から求められる。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。
【0043】
ブレーキ液圧が所定値Xに満たないときは、許容発電量を加速時許容発電量Woに設定する(S4でNo→S7)。
【0044】
ブレーキ液圧が所定値X以上で所定値Y未満であるときは、図中に示すようにブレーキ液圧に応じた許容発電量を設定する(S4でYes→S51でNo→S52→S6)。このときブレーキ液圧が大きいほど、許容発電量も大きい。
【0045】
ブレーキ液圧が所定値Y以上であるときは、許容発電量を発電量Wmaxに設定する(S4でYes→S51でYes→S53→S6)。
【0046】
続いて図6を参照して本実施形態の動作について説明する。図6は、本実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【0047】
時刻t0から時刻t1までアクセル開度がMからNになるまでアクセルペダルが踏み込まれる(図6(A))。よって車両は加速している状態である。このときのオルタネーター21の許容発電量は発電量Woで一定である(図6(C))。またアクセルペダルが踏まれているのでブレーキペダルは踏まれておらず、このときのブレーキ液圧はゼロである(図6(B))。この間、車両の発電制御装置100はS1→S7の処理を繰り返す。
【0048】
時刻t1から時刻t2までアクセル開度がNで一定となる(図6(A))。車両は一定速度で走行している状態である。このときのオルタネーター21の許容発電量は発電量Woで一定である(図6(C))。またアクセルペダルが踏まれているのでブレーキペダル41は踏まれておらず、このときのブレーキ液圧はゼロである(図6(B))。この間、車両の発電制御装置100はS1→S7の処理を繰り返す。
【0049】
時刻t2から時刻t3までアクセルペダルの踏み込みが徐々に緩んで、時刻t3でアクセル開度がゼロとなる(図6(A))。時刻t2から時刻t3まで車両は徐々に減速しているが、アクセルペダルが踏まれているので、いつでも加速が予測される状態である。このときブレーキ液圧はゼロである(図6(B))。そしてオルタネーター21の許容発電量は発電量Woで一定である(図6(C))。この間、車両の発電制御装置100はS1→S7の処理を繰り返す。
【0050】
時刻t3から時刻t4までアクセルペダルもブレーキペダル41も踏まれていない状態である。アクセル開度及びブレーキ液圧はともにゼロである(図6(A)(B))。車両は徐々に減速しているが、ブレーキペダル41が踏まれていないので、いつでも加速が予測される状態である。そしてオルタネーター21の許容発電量は発電量Woで一定である(図6(C))。この間、車両の発電制御装置100はS1→S2→S7の処理を繰り返す。
【0051】
時刻t4でブレーキペダル41が踏まれ、徐々に踏み込まれる(図6(B))。アクセルペダルは踏まれておらずアクセル開度はゼロである(図6(A))。車両はブレーキも加わって減速が速まるが、まだブレーキが小さいのでドライバーに減速を継続する意図があるのかが判断できない。いつでも車両の加速が予測される状態である。このためオルタネーター21の許容発電量は発電量Woで一定である(図6(C))。このとき車両の発電制御装置100はS1→S2→S3→S4→S7の処理を繰り返す。
【0052】
時刻t5でブレーキ液圧が所定値Xに達して、増加を続ける(図6(B))。アクセル開度はゼロである(図6(A))。車両は減速がさらに速まる。ブレーキペダル41がある程度踏まれているので、ドライバーに減速を継続する意図があると判断できる。よってブレーキ液圧に応じてオルタネーター21の許容発電量を上げる(図6(C))。それまでの発電量Woに上乗せする発電調整量Wbは、上述した数式(1)、(2)から算出される。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S52→S6の処理を繰り返す。
【0053】
時刻t6でブレーキ液圧が所定値Yに達して、その後一定となる(図6(B))。アクセル開度はゼロである(図6(A))。車両は減速し続けている。このときのオルタネーター21の許容発電量は最大発電量Wmaxである(図6(C))。ブレーキ液圧が所定値Yでオルタネーター21の発電量は最大になり、ブレーキ液圧がそれ以上増えても発電量は変わらない。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S3→S4→S51→S53→S6の処理を繰り返す。
【0054】
本実施形態によれば、ブレーキ液圧が所定値X未満のときは車両が加速される可能性が高いと予測されるので、オルタネーター21の許容発電量を加速時許容発電量Woに設定する。そしてブレーキ液圧が所定値X以上のときは車両が減速することが予測されるので、オルタネーター21の許容発電量を、加速時許容発電量Woとブレーキ液圧に応じた発電調整量Wbとを足し合わせて設定する。車両の加速が予測されるときは許容発電量を下げてオルタネーター21の負荷を小さくするので、従来の補機ベルト強度を上げることなくオルタネーター21の容量を大きくすることができる。そして車両の減速が予測されるときはブレーキ液圧に応じた許容発電量を設定するので、車両の状態に適した回生発電が可能となる。
【0055】
また補機ベルトは通常エンジン及び補機の負荷が共に最大のときを想定して設計される。そして車両が加速されるときはエンジンの負荷が大きくなる。本実施形態では、車両の加速が予測されるときの許容発電量を抑えるので、加速時の補機ベルトの滑りや鳴きを防止することができ、車両の燃費が向上する。さらに補機ベルトの張力を下げることも可能であるため補機ベルトのコストダウンができる。
【0056】
またブレーキ液圧の大小からアクセルペダルが踏まれる可能性を判断して、車両の状態が加速となりうるか、減速となるかを予測する。これにより実際に車両が加速される前に、オルタネーター21の許容発電量を、車両の加速性能を妨げない値に設定することができる。そして車両減速中の急な加速によって、オルタネーター21の回生発電による高負荷とエンジンの加速による高負荷とが重なって、補機ベルト4に滑りが発生するのを防止することができる。
【0057】
またブレーキ液圧が所定値X以上のときに、ブレーキ液圧に応じて設定される許容発電量は、ブレーキ液圧が大きいほど上げられ、ブレーキ液圧が小さいほど下げられる。車両が減速状態である場合に、ブレーキ液圧が大きいほどドライバーは減速を望んでいて加速する意思がないと判断して許容発電量を上げる。車両が加速されなければエンジンは高負荷にならないので、オルタネーター21の発電量を上げても補機ベルト4に負担がかからない。このように補機ベルト4に滑りや鳴きが生じるのを防止しつつ、効率のよい大量の回生発電が可能となり、車両の燃費が向上する。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態と発電調整量Wbの算出処理方法(S5)が異なる。第1実施形態ではブレーキ液圧の値に応じてオルタネーター21の許容発電量を設定したが、第2実施形態では、さらにブレーキ液圧の変化速度を考慮してオルタネーター21の許容発電量を設定する。
【0059】
図7は、第2実施形態における発電調整量Wbの算出処理の動作を説明するフローチャートである。
【0060】
ステップS51において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧が所定値Y以上であるか否かを判定する。ブレーキ液圧が所定値Yに満たない場合は、車両の発電制御装置100はステップS52に処理を移行する。ブレーキ液圧が所定値Y以上である場合は、車両の発電制御装置100はステップS53に処理を移行する。
【0061】
ステップS52において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧の値に応じた基本発電調整量Wboを算出する。ここで基本発電調整量の算出式は第1実施形態で説明した式(1)と同様である。
【0062】
ステップS53において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧の値に応じた基本発電調整量Wboを算出する。ここで基本発電調整量の算出式は第1実施形態で説明した式(2)と同様である。
【0063】
ステップS54において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧変化速度の正負が変更になったか否を判定する。ブレーキ液圧変化速度の正負が変更になっていない場合は、車両の発電制御装置100はステップS55に処理を移行する。ブレーキ液圧変化速度の正負が変更になった場合は、車両の発電制御装置100はステップS56に処理を移行する。
【0064】
ステップS55において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧変化速度に応じた発電調整量Wvを次の式(3)から算出する。今回の発電調整量Wv(n)は、前回の発電調整量Wv(n−1)に今回のブレーキ液圧変化速度に応じた発電調整量ΔWvを足した値となる。ここで発電調整量ΔWvはブレーキ液圧変化速度vと係数kとから次の式(4)から算出される。本実施形態ではブレーキ液圧変化速度の正負によって係数kの値を変える。詳細は後述する。
【0065】
【数3】

【0066】
【数4】

【0067】
ステップS56において、車両の発電制御装置100は、ブレーキ液圧変化速度に応じた発電調整量Wvを次の式(5)から算出する。発電調整量ΔWvは上記式(4)から算出される。
【0068】
【数5】

【0069】
ステップS57において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbを次の式(6)から算出する。
【0070】
【数6】

【0071】
ステップS58において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbが最大発電調整量Wbmax以上であるか否かを判定する。発電調整量Wbが最大発電調整量よりも小さい場合は、車両の発電制御装置100はステップS59に処理を移行する。発電調整量Wbが最大発電調整量以上である場合は、車両の発電制御装置100はステップS62に処理を移行する。
【0072】
ステップS59において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbがゼロ以下であるか否かを判定する。発電調整量Wbがゼロ以下である場合は、車両の発電制御装置100はステップS60に処理を移行する。発電調整量Wbが正である場合は、車両の発電制御装置100はステップS61に処理を移行する。
【0073】
ステップS60において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbをゼロとする。
【0074】
ステップS61において、車両の発電制御装置100は、発電調整量WbをステップS57で算出した値とする。
【0075】
ステップS62において、車両の発電制御装置100は、発電調整量Wbを最大発電調整量Wbmaxとする。
【0076】
ここで図8を参照してブレーキ液圧変化速度に応じた発電調整量ΔWvについて説明する。図8は、ブレーキ液圧変化速度と発電調整量との関係を示す図である。ステップS55又はステップS56におけるブレーキ液圧変化速度による発電調整量ΔWvは図8から求めることもできる。
【0077】
図8は、横軸をブレーキ液圧変化速度として、縦軸を発電調整量とする。ブレーキ液圧変化速度と発電調整量とは比例する。ブレーキ液圧変化速度が正のとき、すなわちブレーキペダル41が踏み増し側のときは、発電調整量は正となる。そしてブレーキ液圧変化速度が大きいほど、すなわちブレーキペダル41が踏み増されるほど発電調整量は大きい。逆にブレーキ液圧変化速度が負のとき、すなわちブレーキペダル41が緩み側のときは、発電調整量は負となる。そしてブレーキ液圧変化速度が小さいほど、すなわちブレーキペダル41の戻りが速いほど発電調整量の絶対値は大きい。ブレーキ液圧変化速度がゼロのとき、すなわちブレーキペダル41の踏み込み量が一定で保持されているときは、発電調整量はゼロとなる。さらに本実施形態では、ブレーキ液圧変化速度が負のときの傾きk2が正のときの傾きk1よりも大きい。このためブレーキ液圧変化速度が負のときの発電調整量の絶対値|ΔWv(−v)|は、ブレーキ液圧変化速度が正のときの発電調整量の絶対値|ΔWv(+v)|よりも大きい。すなわち、ブレーキ操作量の変化速度の絶対量が等しい条件で比較すると、前記ブレーキ操作量の増加速度に応じて前記発電機の発電量を上げる量よりも、前記ブレーキ操作量の減少速度に応じて前記発電機の発電量を下げる量の方が大きい。このようにブレーキ液圧変化速度と発電調整量とを関係づけるので、ブレーキ液圧が同じ値でも、ブレーキ液圧が増加傾向であるか、減少傾向であるか、一定であるかによって許容発電量が異なる。ブレーキ液圧が同じ値の場合、ブレーキ液圧が減少中のときの許容発電量は、ブレーキ液圧が一定又は増加中のときの許容発電量よりも小さい。
【0078】
また図9は、本実施形態におけるブレーキ液圧と許容発電量との関係を示す図である。ブレーキ液圧が所定値Xに達するまでは許容発電量は加速時許容発電量Woで一定である(矢印1)。ブレーキ液圧が所定値Xを超えて一定加速度で増加するにつれて許容発電量もブレーキ液圧に比例して増加する。そしてブレーキ液圧が所定値Yのときに許容発電量は最大発電量Wmaxとなる(矢印2)。このときブレーキ液圧変化速度は正であって、発電調整量を算出する式(4)の傾きk、すなわち図8の傾きk1はゼロである。その後ブレーキ液圧が一定減速度で減少するにつれて許容発電量も比例して減少する。このときブレーキ液圧変化速度は負であって、発電調整量を算出する式(4)の傾きk、すなわち図8の傾きk2はゼロではなく正の値である。このためブレーキ液圧が減少する場合、ブレーキ液圧が所定値Xに達する前に許容発電量は加速時許容発電量Woに達する(矢印3)。そしてそれ以降の許容発電量は、ブレーキ液圧の減少が続く限りブレーキ液圧が所定値X以上であっても加速時許容発電量Woのままである(矢印4)。
【0079】
このようにブレーキ液圧が減少するときは、ドライバーが車両を加速させるかもしれないと予測して、同じ変化率のときのブレーキ液圧の増加に対する許容発電量の増加割合よりも大きい減少割合で許容発電量を減らす。ブレーキ液圧が同じであっても減少傾向であるときは増加傾向にあるときよりも許容発電量が小さい。ブレーキ液圧が減少傾向にあるときは早めに許容発電量を減らすことで、車両の加速に備える。
【0080】
続いて図10を参照して本実施形態の動作について説明する。図10は、本実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【0081】
時刻t0から時刻t1まで、アクセル開度及びブレーキ液圧ともにゼロである(図10(A)(B))。アクセル開度は時刻t11までゼロを保つ。オルタネーター21の許容発電量は発電量Woである(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100はS1→S2→S7の処理を繰り返す。
【0082】
時刻t1でブレーキペダル41が踏まれてブレーキ液圧が一定速度で増える(図10(B))。ブレーキ液圧が所定値X未満であるうちは、ドライバーに減速を継続する意図があるのか判断できず、いつでも車両の加速が予測される状態なので、許容発電量は発電量Woで一定である(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S7の処理を繰り返す。
【0083】
時刻t2でブレーキ液圧が所定値Xに達する(図10(B))。ブレーキ液圧が一定速度で増えるので、許容発電量も一定割合で増加する(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S52→S54→S55→S57→S58→S59→S61→S6の処理を繰り返す。
【0084】
時刻t3でブレーキ液圧が所定値Yに達して、さらに一定速度で増え続ける(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が所定値Y以上で増加傾向にあるので、発電量Wmaxで一定である(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S53→S54→S55→S57→S58→S62→S6の処理を繰り返す。
【0085】
時刻t4でブレーキ液圧が一定となる(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が所定値Y以上で一定を保っているので、発電量Wmaxのまま一定である(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S53→S54→S55→S57→S58→S62→S6の処理を繰り返す。
【0086】
時刻t5でブレーキ液圧が一定速度で減少する(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が所定値Y以上であっても減少傾向にあるので、ブレーキ液圧変化速度に応じて一定割合で減少する(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S53→S54→S56→S57→S58→S59→S61→S6の処理を繰り返す。
【0087】
時刻t6でブレーキ液圧は所定値Yまで減少して、再び一定速度で増加する(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が増加傾向かつ所定値Y以上なので、発電量Wmaxに戻って一定を保つ(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S53→S54→S56→S57→S58→S62→S6の処理を繰り返す。
【0088】
時刻t7でブレーキ液圧は急速に減少し始める(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が所定値Y以上であっても一定速度で減少しているので、ブレーキ液圧変化速度に応じて一定割合で減少する。ブレーキ液圧の減少速度が大きいので、許容発電量も急速に減少する(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S53→S54→S56→S57→S58→S59→S61→S6の処理を繰り返す。
【0089】
時刻t8でブレーキ液圧が所定値Yとなって、さらに一定速度で減少する(図10(B))。許容発電量は、時刻t8で発電量Woに達して、それ以降はブレーキ液圧が所定値X以上であっても減少傾向にあるので発電量Woを保つ(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S51→S52→S54→S55→S57→S58→S59→S60→S6の処理を繰り返す。
【0090】
時刻t9でブレーキ液圧は所定値Xとなって、さらに一定速度で減少する(図10(B))。許容発電量は、ブレーキ液圧が所定値X未満となるので、発電量Woで一定である(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S3→S4→S7の処理を繰り返す。
【0091】
時刻t10でブレーキ液圧はゼロとなる(図10(B))。許容発電量は、発電量Woで一定である(図10(C))。そしてアクセル開度もゼロである(図10(A))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S2→S7の処理を繰り返す。
【0092】
時刻t11でアクセル開度が大きくなる(図10(A))。アクセルペダル41が踏まれて車両が加速している状態である。ブレーキ液圧はゼロで一定である(図10(B))。許容発電量は、発電量Woで一定である(図10(C))。このとき車両の発電制御装置100は、S1→S7の処理を繰り返す。
【0093】
本実施形態によれば、ブレーキ液圧が所定値X以上である場合に、ブレーキ液圧の増加速度が速いほど許容発電量を上げて、ブレーキ液圧の減少速度が速いほど許容発電量を下げる。車両が減速していて、さらにブレーキ液圧の増加速度が速いときは、車両が加速される可能性はないと判断できる。このときはブレーキ液圧の値が大きくなるまで待たずに発電量を上げてやれば多くの回生発電が可能となる。そして車両が減速していても、ブレーキ液圧の減少速度が速いときは、車両が加速される可能性があると判断できる。このときはブレーキ液圧の値が小さくなるまで待たずにブレーキ液圧の減少速度が速いほど発電量を下げてやれば、ブレーキペダルを離した後にアクセルペダルを急に踏むようなドライバーの運転に対しても、補機ベルト4の不具合発生を防止することができる。
【0094】
また、ブレーキ液圧変化速度の絶対値が同じであるとき、ブレーキ液圧の増加速度に対する発電調整量の増加量よりも、ブレーキ液圧の減少速度に対する発電調整量の減少量の方が大きい。またブレーキ液圧変化率がゼロのとき、発電調整量はゼロである。よって同じブレーキ液圧であっても、減少傾向にあるときは増加傾向にあるとき又は一定で保持されるときよりも許容発電量が小さい。このためブレーキ液圧が減少し始めてから直ぐに車両が加速されるような場合であっても、オルタネーター21の発電量は十分に下がっているので補機ベルト4に滑りや鳴きなどの不具合が生じるのを防止することができる。
【0095】
また車両の発電制御装置100において、エンジンコントローラー10が許容発電量を制限する指令を出してから、実際にオルタネーター21が指令の許容発電量で発電するまでには時間がかかる。このような場合においてもブレーキ液圧の減少速度に対する発電調整量の減少量を大きくすることで、余裕をもって許容発電量を下げることができる。これによりエンジンコントローラー10からの指令に基づいて許容発電量が下がる前にアクセルペダルが踏まれてしまっても、それまでに許容発電量は十分に下げられているので、補機ベルト4への負荷が過大になることがない。よって補機ベルト4に滑りや鳴きなどの不具合が生じるのを防止することができる。
【0096】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態に対してさらにオルタネーター21の他にエアコンコンプレッサー31及び電動パワーステアリング(以下、EPS)51の作動を考慮する。
【0097】
図11は、第3実施形態の車両の発電制御装置の動作を説明するフローチャートである。本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態における車両の発電制御装置の動作を説明するフローチャートのステップS1の前に、新たなステップS100〜104の制御が追加される。なお以下では前述した内容と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0098】
ステップS100において、車両の発電制御装置100は、エアコンがオフであるか否かを判定する。エアコンがオフである場合は、車両の発電制御装置100はステップS1に処理を移行する。エアコンがオフでない、すなわちオンである場合は、車両の発電制御装置100はステップS101に処理を移行する。
【0099】
ステップS101において、車両の発電制御装置100は、EPS消費電流が所定値C以上であるか否かを判定する。EPS消費電流が所定値C未満である場合は、車両の発電制御装置100はステップS102に処理を移行する。EPS消費電流が所定値C以上である場合は、車両の発電制御装置100はステップS103に処理を移行する。
【0100】
ステップS102において、車両の発電制御装置100は、オルタネーター21の所定許容発電量の最大値を変更する。これまでブレーキ液圧が所定値X未満のときの許容発電量は加速時許容発電量Woであったが、上限値からエアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値を新たな加速時許容発電量Woとする。そしてブレーキ液圧が所定値X以上のときの最大許容発電量Wmaxはオルタネーター21の最大可能発電量でもあったが、エアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値を新たな最大許容発電量Wmaxとする。発電調整量Waについては後述する。
【0101】
ステップS103において、車両の発電制御装置100は、エアコンクラッチ32をオフする。これによりエアコンコンプレッサー31が停止する。
【0102】
ステップS104において、車両の発電制御装置100は、ステップS102で変更したオルタネーター21の最大許容発電量Wmax及び加速時許容発電量Woを上限値に戻す。
【0103】
ここで図12を参照して発電調整量Waについて説明する。図12は、エアコントルクとエアコンによる発電調整量との関係を示す図である。
【0104】
図12は、横軸をエアコントルクとして、縦軸をエアコントルクによる発電調整量とする。エアコントルクと発電調整量とは比例する。エアコントルクがゼロのとき発電調整量もゼロである。エアコントルクが大きいほど、発電調整量も大きい。
【0105】
このようにエアコンが作動しているときに、エアコントルクに応じた発電調整量をオルタネーター21の最大許容発電量から差し引くことで、オルタネーター21とエアコンコンプレッサー31との合計負荷が一定となる。
【0106】
続いて図13を参照して本実施形態の動作について説明する。図13は、本実施形態の車両の発電制御装置の動作について説明するタイムチャートである。
【0107】
時刻t0から時刻t1まで、ブレーキ液圧が所定値Xで一定となる(図13(B))。エアコンが使用されているのでエアコンクラッチ32がONである。エアコントルクは一定である(図13(C)(D))。電動パワステは使用されず、EPS消費電流はゼロである(図13(E))。許容発電量Woは上限値からエアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値となる(図13(F))。時刻t0以降、ブレーキペダル41が常に踏まれた状態であるので、アクセル開度はゼロとなる(図13(A))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0108】
時刻t1で、ブレーキ液圧が徐々に増加し始める(図13(B))。エアコンは使用され続け、エアコントルクは一定である(図13(C)(D))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。許容発電量はブレーキ液圧の増加に応じて上がる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0109】
時刻t2で、ブレーキ液圧が所定値Yに達して、さらに増加を続ける(図13(B))。エアコンは使用され続け、エアコントルクは一定である(図13(C)(D))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。許容発電量はブレーキ液圧が所定値Yに達したので、発電量Wmaxで一定となる。このときの許容発電量Wmaxは上限値からエアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値となる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0110】
時刻t3で、ブレーキ液圧がZに達して一定となる(図13(B))。エアコンは使用され続け、エアコントルクは一定である(図13(C)(D))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。ブレーキ液圧及びエアコントルクが一定なので、許容発電量は発電量Wmaxで一定である(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0111】
時刻t4で、さらなる冷却要求があってエアコントルクが増加する(図13(C)(D))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。エアコントルクの増加に応じて発電調整量Waが大きくなるので、発電量Wmaxは小さくなる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0112】
時刻t5で、エアコントルクが減少し始める(図13(C)(D))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。時刻t5でエアコントルクの減少に応じて発電調整量Waが小さくなるので発電量Wmaxが大きくなる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0113】
時刻t6で、エアコントルクが一定となる(図13(C)(D))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。EPS消費電流はゼロである(図13(E))。許容発電量は発電量Wmaxで一定である(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0114】
時刻t7で、EPS51が作動してEPS消費電流が増加する(図13(E))。エアコンは使用されているが、エアコントルクは一定である(図13(C)(D))。EPS消費電流がまだ小さいので、エアコンによって発電量が制限されていてもEPS51への効きに影響はない。許容発電量Wmaxは、上限値からエアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値である(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0115】
時刻t8で、EPS消費電流が所定値Cを超えて、さらに増加する(図13(E))。EPS消費電流が大きいときはEPS51の効きを最優先にするため、エアコンの使用を停止させる。すなわちエアコンクラッチ32をOFFにする(図13(D))。エアコンクラッチ32がOFFされるので、エアコンコンプレッサー31も停止して、エアコントルクはゼロとなる(図13(C))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。許容発電量Wmaxは上限値、すなわちオルタネーター21の最大可能発電量となる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、時刻t8でS100→S101→S103→S104→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理をしたあと、S100→S1→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0116】
時刻t9で、EPS消費電流は最大となって減少し始める(図13(E))。EPS消費電流が大きいうちは、エアコンクラッチ32はOFFを継続する(図13(D))。エアコントルクはゼロである(図13(C))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。許容発電量Wmaxは、引き続きオルタネーター21の最大可能発電量となる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S1→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0117】
時刻t10で、EPS消費電流は所定値Cとなり、さらに減少する(図13(E))。EPS消費電流が所定値C以下となれば発電量を制限してもEPS51への効きに影響はない。そこでエアコンの使用を再開する。エアコンクラッチ32をONにしてエアコンコンプレッサー31を駆動させる(図13(C)(D))。ブレーキ液圧は所定値Y以上で一定である(図13(B))。そして許容発電量Wmaxは、上限値からエアコントルクに応じた発電調整量Waを差し引いた値となる(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0118】
時刻t11で、EPS消費電流はゼロで一定となる(図13(E))。エアコントルクやブレーキ液圧に変化はない(図13(B)(C))。よって許容発電量も変更はない(図13(F))。このとき車両の発電制御装置100は、S100→S101→S102→S1→S2→S3→S4→S5→S6の処理を繰り返す。
【0119】
本実施形態によれば、エンジンの動力の一部で駆動される補機としてオルタネーター21の他にエアコンコンプレッサー31の負荷も考慮する。そして補機の合計負荷が増えないように、エアコンコンプレッサー31が駆動しているときには、その駆動トルクに応じてオルタネーター21の許容発電量を下げる。1本の補機ベルト4が複数の補機に架かり渡っている場合に補機の合計負荷を制限することで、補機ベルト4の張力は各補機の最大駆動トルクの合計に耐えうるように設計される必要がない。よって補機ベルト4の張力を減らすことができるので、車両の燃費が向上する。
【0120】
また、オルタネーター21によって駆動されるEPSが消費する電流が所定値C以上になっている間は、エアコンコンプレッサー31を停止させる。これによりエアコントルクに応じて差し引いていた発電調整量Waがゼロとなるので、許容発電量が上がる。EPSを使うときに許容発電量を抑えていては、ドライバーがハンドルをきっても効き感が得られず重たいと感じてしまう虞がある。このためEPSの消費電流が大きいときにエアコンコンプレッサー31を停止させることで、補機の合計負荷を増やすことなくオルタネーター21の許容発電量を上げて、EPSの効き不足を防止することができる。
【0121】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0122】
例えば、実施形態ではブレーキ液圧の値に基づいて制御を実行したが、ブレーキ液圧に代えてブレーキペダルの踏み込み量や踏力にしても同様の効果が得られる。また第2実施形態ではブレーキ液圧の値に応じた発電調整量に、ブレーキ液圧変化速度に応じた発電調整量を加算するようにしたが、ブレーキ液圧変化速度のみから発電調整量を算出してもよい。ブレーキ液圧増加速度が速いほど発電調整量を上げて、ブレーキ液圧減少速度が速いほど発電調整量を下げれば、同様の効果が得られる。またエンジンの補機としてオルタネーターの他にエアコンコンプレッサーを考慮したが、これに限らない。オルタネーターとともにエンジンと1本の補機ベルトで掛かり渡るような補機の負荷を考慮すれば、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0123】
100 車両の発電制御装置
10 エンジンコントローラー
20 オルタネーターコントローラー
21 オルタネーター(発電機)
30 エアコンコントローラー
31 エアコンコンプレッサー
40 ブレーキコントローラー
41 ブレーキペダル
51 電動パワーステアリング
S3 ブレーキ操作量検出部
S1,2,4 車両状態予測部
S5〜7 発電量設定部
S102,104 合計負荷調整部
S103 エアコン一時停止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力の一部で駆動される発電機と、
ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出部と、
前記ブレーキ操作量によって、車両の加速が予測されるときは、前記発電機の発電量を下げて設定する発電量設定部と、
を備える車両の発電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の発電制御装置において、
前記発電量設定部は、
同じブレーキ操作量であっても、前記ブレーキ操作量が減少しているときの前記発電機の発電量は、前記ブレーキ操作量が一定又は増加しているときの前記発電機の発電量よりも小さい、
ことを特徴とする車両の発電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の発電制御装置において、
前記発電量設定部は、
前記ブレーキ操作量の増加速度が速いほど、前記発電機の発電量を上げて、
前記ブレーキ操作量の減少速度が速いほど、前記発電機の発電量を下げる、
ことを特徴とする車両の発電制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の発電制御装置において、
前記発電量設定部は、
前記ブレーキ操作量の増加速度が速いほど、前記発電機の発電量を上げ、
ブレーキ操作量の変化速度の絶対値が等しい条件で比較すると、前記ブレーキ操作量の増加速度に応じて前記発電機の発電量を上げる量よりも、前記ブレーキ操作量の減少速度に応じて前記発電機の発電量を下げる量の方が大きい、
ことを特徴とする車両の発電制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の発電制御装置において、
前記発電機の他にエンジンの動力の一部で駆動される補機と、
前記補機の負荷が増えるほど前記発電機の発電量を下げて、前記発電機及び前記補機の合計負荷が増えないようにする合計負荷調整部と、
を備えることを特徴とする車両の発電制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の発電制御装置において、
前記補機はエアコンコンプレッサーを含み、
前記発電機により駆動される電動パワーステアリングと、
前記電動パワーステアリングが要求する電流値が所定電流値以上であるときに、前記エアコンコンプレッサーを一時停止するエアコン一時停止部と、
を備え、
前記合計負荷調整部は、
前記エアコン一時停止部が実行されるときに、前記発電機の発電量を上げる、
ことを特徴とする車両の発電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−247239(P2011−247239A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124236(P2010−124236)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】