説明

車両の車体上部構造

【課題】車両の車体上部構造の各構成部品の組み付け作業が容易にできるようにする。
【解決手段】レールインナパネル30とルーフ12の側部とに架設されるガセットパネル39に第1貫通孔41を形成する。第1貫通孔41に挿通される溶接ガン45により、レールインナ、レールアウタパネル30,31の各上縁部とルーフ12の側縁部との互いのスポット溶接S8を可能にする。ルーフサイドレール11の内部に配置されるレール補強パネル33を設ける。レールインナパネル30に、車体2の幅方向で第1貫通孔41と互いに連通する第2貫通孔42を形成する。第1、第2貫通孔41,42に順次挿通される溶接ガン44により、レール補強パネル33とピラー補強パネル22との互いのスポット溶接S7を可能にする。車体2の前後方向でピラー補強パネル22の中途部と同位置のレールインナパネル30の部分に第2貫通孔42を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタピラー、ルーフサイドレール、およびルーフなどの構成部品がスポット溶接により互いに結合されて形成される車両の車体上部構造に関し、より詳しくは、この車体上部の剛性の向上が合理的に達成されるようにするためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体上部構造には、従来、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら各公報のものによれば、車体上部は、車体の幅方向で互いに対面するピラーインナ、ピラーアウタパネルをそれぞれ有する左右センタピラーと、これら各センタピラーの内部に配置され、車体の平面断面視で上記ピラーインナパネル側に向かって開口するハット形状とされて、その前、後端縁部が上記ピラーインナパネルに結合されるピラー補強パネルと、車体の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネルを有して上記各センタピラーの上端部にそれぞれ支持されるルーフサイドレールと、これら各ルーフサイドレールに架設されるルーフと、上記レールインナパネルと上記ルーフの側部とに架設されるガセットパネルとを備えている。
【0003】
そして、上記レールインナ、レールアウタパネルの各上縁部とルーフの側縁部とはスポット溶接により互いに結合されており、このような各構成部品の互いの結合により、上記車体上部に所定の剛性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−76938号公報
【特許文献2】特開平9−175429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1では、上記ガセットパネルは上記レールインナパネルとルーフの側部とに対しそれぞれ締結具により取り付けられている。このため、上記した車体上部の各構成部品の互いの組み付け作業において、上記スポット溶接は、上記ガセットパネルの取り付け以前にすることができ、よって、上記スポット溶接のための溶接ガンの動作は上記ガセットパネルに邪魔されないで、できることとされている。
【0006】
しかし、上記スポット溶接後の上記ガセットパネルの取り付けは、上記したように締結具によるものであって、これは煩雑なものであるとことから、上記組み付け作業を、より容易にする点で改善の余地が残されている。
【0007】
一方、上記特許文献2では、上記ガセットパネルは上記レールインナパネルとルーフの側部とに対しそれぞれ他のスポット溶接により結合されている。このため、上記特許文献1のようなガセットパネルの取り付け用締結具は不要であり、よって、その分、上記組み付け作業は、より容易にできることと考えられる。
【0008】
しかし、前記スポット溶接をした後、上記のようにガセットパネルを上記レールインナパネルなどに対し上記他のスポット溶接により取り付けようとすると、上記ピラー補強パネルなどが溶接ガンの動作の邪魔になって、上記他のスポット溶接はし難くなる。また、これとは逆に、前記スポット溶接をする以前に、上記レールインナパネルなどに対し上記他のスポット溶接によりガセットパネルを取り付けると、前記スポット溶接は、このガセットパネルが溶接ガンの動作の邪魔になってし難くなる。
【0009】
そこで、従来、予め上記ガセットパネルに貫通孔を形成し、前記スポット溶接をする以前に、上記ガセットパネルを上記レールインナパネルなどに対し上記他のスポット溶接により取り付け、その後、上記貫通孔に溶接ガンを挿通することにより、前記スポット溶接を可能にすることが提案されている。
【0010】
一方、上記車体上部の剛性をより向上させるため、上記ルーフサイドレールを補強させようとして、その内部にレール補強パネルを設け、上記ピラー補強パネルの外側部を構成する外側パネルと上記レール補強パネルとの「2部材」を第1スポット溶接により互いに結合すると共に、上記ピラー補強パネルと、上記ガセットパネルと、上記レールインナパネルとの「3部材」を、上記ピラー補強パネルの外側パネルを挟む前、後それぞれの部分で第2スポット溶接により互いに結合することが考えられる。この場合、車体上部の組み付け作業において、まず、上記「2部材」を第1スポット溶接により互いに結合したとすると、次に、上記「3部材」を前、後それぞれで第2スポット溶接しようとするとき、上記レール補強パネルが溶接ガンの動作の邪魔になる。
【0011】
そこで、上記レール補強パネルに予め前、後貫通孔を形成し、これら各貫通孔に溶接ガンを挿通することにより、上記各第2スポット溶接を可能にすることが考えられる。
【0012】
しかし、上記した前、後複数の貫通孔を形成することは煩雑であることから、上記構成では、その組み付け作業が煩雑になるおそれがある。また、上記したように、ルーフサイドレールを補強させようとして、その内部にレール補強パネルを設けたとしても、上記したように別途に複数の貫通孔を形成した場合には、これら貫通孔を形成したことによる剛性低下により、上記補強が阻害される結果となり、このため、上記車体上部の剛性の向上を十分には達成できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の車体上部構造の各構成部品の組み付け作業が容易にできるようにし、かつ、上記車体上部の剛性の向上が達成できるようにすることである。
【0014】
請求項1の発明は、車体2の幅方向で互いに対面するピラーインナ、ピラーアウタパネル20,21をそれぞれ有する左右センタピラー9と、これら各センタピラー9の内部に配置され、車体2の平面断面視(図3)で上記ピラーインナパネル20側に向かって開口するハット形状とされて、その前、後端縁部が上記ピラーインナパネル20に結合(S1〜S4,S9)されるピラー補強パネル22と、車体2の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネル30,31を有して上記各センタピラー9の上端部にそれぞれ支持されるルーフサイドレール11と、これら各ルーフサイドレール11に架設されるルーフ12と、上記レールインナパネル30と上記ルーフ12の側部とに架設されるガセットパネル39とを備え、このガセットパネル39に第1貫通孔41を形成し、この第1貫通孔41に挿通される溶接ガン45により、上記レールインナ、レールアウタパネル30,31の各上縁部とルーフ12の側縁部との互いのスポット溶接S8を可能にした車両の車体上部構造において、
上記ルーフサイドレール11の内部に配置されるレール補強パネル33を設け、上記レールインナパネル30に、車体2の幅方向で上記第1貫通孔41と互いに連通する第2貫通孔42を形成し、上記第1、第2貫通孔41,42に順次挿通される溶接ガン44により、上記レール補強パネル33とピラー補強パネル22との互いのスポット溶接S7を可能にし、
車体の前後方向で上記ピラー補強パネルの中途部と同位置の上記レールインナパネルの部分に上記第2貫通孔を形成したことを特徴とする車両の車体上部構造である。
【0015】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明による効果は、次の如くである。
【0017】
請求項1の発明は、車体の幅方向で互いに対面するピラーインナ、ピラーアウタパネルをそれぞれ有する左右センタピラーと、これら各センタピラーの内部に配置され、車体の平面断面視で上記ピラーインナパネル側に向かって開口するハット形状とされて、その前、後端縁部が上記ピラーインナパネルに結合されるピラー補強パネルと、車体の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネルを有して上記各センタピラーの上端部にそれぞれ支持されるルーフサイドレールと、これら各ルーフサイドレールに架設されるルーフと、上記レールインナパネルと上記ルーフの側部とに架設されるガセットパネルとを備え、このガセットパネルに第1貫通孔を形成し、この第1貫通孔に挿通される溶接ガンにより、上記レールインナ、レールアウタパネルの各上縁部とルーフの側縁部との互いのスポット溶接を可能にした車両の車体上部構造において、
上記ルーフサイドレールの内部に配置されるレール補強パネルを設け、上記レールインナパネルに、車体の幅方向で上記第1貫通孔と互いに連通する第2貫通孔を形成し、上記第1、第2貫通孔に順次挿通される溶接ガンにより、上記レール補強パネルとピラー補強パネルとの互いのスポット溶接を可能にしている。
【0018】
このため、車体上部の各構成部品同士の組み付け作業において、上記ルーフサイドレールを補強しようとして、このルーフサイドレールの内部にレール補強パネルを設ける場合には、まず、上記ピラー補強パネルの前、後端縁部と、上記ガセットパネルの前、後部と、上記レールインナパネルとを前、後それぞれでスポット溶接により互いに結合すればよく、このスポット溶接のための溶接ガンの動作は、何らかの部材に邪魔されることなく容易にできる。次に、上記ピラー補強パネルの外側部を構成する外側パネルと上記レール補強パネルとをスポット溶接により互いに結合するが、このスポット溶接は、上記したように第1、第2貫通孔に溶接ガンを挿通させることにより達成される。このため、上記スポット溶接をする場合、ガセットパネルやレールインナパネルが邪魔にならないことから、上記スポット溶接が容易にできる。よって、上記組み付け作業が容易にできる。
【0019】
そして、上記組み付け作業では、上記レールインナ、レールアウタパネルの各上縁部とルーフの側縁部との互いのスポット溶接を可能にするための溶接ガン挿通用の第1貫通孔が利用されたのであり、このため、上記ピラー補強パネルとレール補強パネルとのスポット溶接のための溶接ガン挿通用として、上記レール補強パネルなどに別途に複数の貫通孔を形成することは不要にできる。
【0020】
よって、第1に、別途に複数の貫通孔を形成しないで足りる分、上記組み付け作業が更に容易にできる。また、第2に、仮に、上記のように別途に複数の貫通孔を形成したとすれば、これら貫通孔により車体上部の剛性が無用に低下するおそれを生じるが、上記発明によれば、上記ガセットパネルに形成した第1貫通孔を上記各スポット溶接のそれぞれ溶接ガン挿通用として利用したことにより、貫通孔の形成を必要最少限にとどめた分、上記のような剛性の無用な低下は防止される。つまり、上記したように車体上部の組み付け作業が容易にできるものでありながら、上記車体上部の剛性の向上が達成される。
【0021】
また、車体の前後方向で上記ピラー補強パネルの中途部と同位置の上記レールインナパネルの部分に上記第2貫通孔を形成している。
【0022】
このため、上記レールインナパネルにおける第2貫通孔の形成部分には上記ピラー補強パネルが跨るよう設けられることから、上記第2貫通孔の形成部分は十分に補強される。よって、前記のようにレールインナパネルに第2貫通孔を形成した場合、この第2貫通孔の形成部分の剛性は低下しがちとなるが、このレールインナパネルにおける第2貫通孔の形成部分の剛性は、上記ピラー補強パネルによって、より確実に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2のI−I線矢視断面図である。
【図2】車両の車体の簡略側面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1で示したものの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両の車体上部構造に関し、車両の車体上部構造の各構成部品の組み付け作業が容易にできるようにし、かつ、上記車体上部の剛性の向上が達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0025】
即ち、車両の車体上部構造は、車体の幅方向で互いに対面する左右ピラーインナ、ピラーアウタパネルをそれぞれ有するセンタピラーと、これら各センタピラーの内部に配置され、車体の平面断面視で上記ピラーインナパネル側に向かって開口するハット形状とされて、その前、後端縁部が上記ピラーインナパネルに結合されるピラー補強パネルと、車体の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネルを有して上記各センタピラーの各上端部にそれぞれ支持されるルーフサイドレールと、これら各ルーフサイドレールに架設されるルーフと、上記レールインナパネルと上記ルーフの側部とに架設されるガセットパネルとを備えている。このガセットパネルに第1貫通孔が形成され、この第1貫通孔に挿通される溶接ガンにより、上記レールインナ、レールアウタパネルの各上縁部とルーフの側縁部との互いのスポット溶接が可能とされている。
【0026】
上記ルーフサイドレールの内部に配置されるレール補強パネルが設けられる。上記レールインナパネルに、車体の幅方向で上記第1貫通孔と互いに連通する第2貫通孔が形成され、上記第1、第2貫通孔に順次挿通される溶接ガンにより、上記レール補強パネルとピラー補強パネルとの互いのスポット溶接が可能とされる。また、車体の前後方向で上記ピラー補強パネルの中途部と同位置の上記レールインナパネルの部分に上記第2貫通孔が形成されている。
【実施例】
【0027】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0028】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、車両1の正面視での車体2の幅方向をいうものとする。
【0029】
上記車両1は板金製の上記車体2と、この車体2を路面3上に支持する前、後車輪4とを備えている。上記車体2は、この車体2の左右各側部を構成し、車体下部7の左右各側部から上方に向かって突出すると共に、車体2の前後方向に並設されるフロントピラー8、センタピラー9、およびリヤピラー10と、車体2の左右各上側部を構成し、車体2の前後方向に延びて上記各ピラー8〜10の各上端部に支持されるルーフサイドレール11と、車体2の上面を形成するよう水平方向に延び、上記各ルーフサイドレール11に架設されるルーフ12とを備えている。この場合、上記車体2の各構成部品7〜12の外側面は、一体的な形成品であるサイドアウタパネル13により形成されている。
【0030】
上記車体下部7、左右各ピラー8〜10、左右各ルーフサイドレール11、およびルーフ12で囲まれた空間が車室15とされている。車体2の各側部において、上記車体下部7、各ピラー8〜10、およびルーフサイドレール11で囲まれた空間が上記車室15の内外を連通する前、後ドア開口16,16とされ、これら各ドア開口16を開閉可能にするサイドドア17が設けられる。
【0031】
上記センタピラー9は、車体2の幅方向で互いに対面して、その各前、後端縁部同士が互いに結合されるピラーインナ、ピラーアウタパネル20,21を有し、その長手方向の各部断面が閉断面とされている。上記センタピラー9の内部には、このセンタピラー9を補強するピラー補強パネル22が設けられている。
【0032】
上記ピラー補強パネル22は、車体2の平面断面視(図3)で上記ピラーインナパネル20側に向かって開口するハット形状とされ車体2の前後方向で互いに対面する前、後パネル24,25と、これら前、後パネル24,25の車体2の外側方側の各一端縁同士を一体的に結合して上記ピラー補強パネル22の外側部を構成する外側パネル26と、上記前、後パネル24,25の各他端縁に形成され、上記ピラー補強パネル22の前、後端縁部を構成する前、後外向きフランジ27,27とを備えている。
【0033】
上記ルーフサイドレール11は、車体2の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネル30,31を有している。上記センタピラー9のピラーアウタパネル21と上記ルーフサイドレール11のレールアウタパネル31とは互いに一体的に形成され、これら21,31は前記サイドアウタパネル13の一部を構成している。上記ルーフサイドレール11の内部に配置され、その長手方向の各部断面が上下方向に延び、このルーフサイドレール11を補強するレール補強パネル33が設けられている。このレール補強パネル33の長手方向の中途部の下端部に切り欠き34が形成され、この切り欠き34に上記ピラー補強パネル22の上端部が嵌入されている。
【0034】
上記ルーフ12は、上記車室15の上面を全体的に形成するルーフパネル36と、車体2の幅方向に延びて上記左右各ルーフサイドレール11に架設され、上記ルーフパネル36をその下面側から支持するルーフ補強パネル37とを備えている。このルーフ補強パネル37は、上記各センタピラー9の上端部と車体2の前後方向で同じところに位置している。
【0035】
上記レールインナパネル30と、上記ルーフ12のルーフ補強パネル37の側部とに架設されるガセットパネル39が設けられる。このガセットパネル39の車体2の幅方向における中途部は、車体2の外側方に向かうに従い下方に延びるよう傾斜している。
【0036】
上記ガセットパネル39の車体2の幅方向における中途部には円形の第1貫通孔41が形成されている。また、上記レールインナパネル30には円形の第2貫通孔42が形成されている。この第2貫通孔42は、車体2の前後方向で上記ピラー補強パネル22の中途部と同位置の上記レールインナパネル30の部分、具体的には、上記ピラー補強パネル22の前、後パネル24,25の間における上記レールインナパネル30の部分に形成され、かつ、車体2の幅方向で上記第1貫通孔41と互いに対向し、互いに連通している。
【0037】
上記車体2の上部構造における上記した各構成部品は、スポット溶接Sにより順次互いに結合されることにより組み付けられる。そこで、この組み付け作業につき説明する。
【0038】
まず、上記ピラー補強パネル22の前、後端縁部である前、後外向きフランジ27,27とレールインナパネル30とがスポット溶接S1される。また、上記ピラー補強パネル22の前、後外向きフランジ27,27と、レールインナパネル30と、ガセットパネル39の車体2の幅方向での外側下縁部とがスポット溶接S2される。次に、上記ピラーインナパネル20とピラー補強パネル22の前、後外向きフランジ27,27とがスポット溶接S3される。また、上記ピラーインナパネル20の上縁部と、ピラー補強パネル22の前、後外向きフランジ27,27と、レールインナパネル30の下縁部と、レール補強パネル33の下縁部とがスポット溶接S4される。
【0039】
また、上記レールインナパネル30とレール補強パネル33との各上縁部がスポット溶接S5される。また、上記第1、第2貫通孔41,42に順次連通される溶接ガン44により上記ピラー補強パネル22の上端部の外側パネル26と、上記レール補強パネル33における上記切り欠き34の上方部分とがスポット溶接S6される。この場合、上記スポット溶接S5とスポット溶接S6との溶接順序はいずれが先であってもよく、同時でもよい。
【0040】
そして、上記したスポット溶接S1〜S6による結合により、上記ピラーインナパネル20、ピラー補強パネル22、レールインナパネル30、レール補強パネル33、およびガセットパネル39による組立体(20,22,30,33,39)が形成される。
【0041】
次に、上記組立体における上記ガセットパネル39の車体2の幅方向での内側上縁部に対し上記ルーフ補強パネル37がスポット溶接S7される。次に、上記組立体に対し上記サイドアウタパネル13のレールアウタパネル31の上縁部とルーフ12の側縁部とがスポット溶接S8される。具体的には、前記したレールインナパネル30およびレール補強パネル33の各上縁部同士のスポット溶接S5による結合部に対し、上記第1貫通孔41に挿通される他の溶接ガン45により、上記サイドアウタパネル13のレールアウタパネル31の上縁部と、上記ルーフ12の上記ルーフパネル36およびルーフ補強パネル37の各側縁部とがスポット溶接S8される。
【0042】
また、上記組立体に対し上記サイドアウタパネル13のピラーアウタパネル21の前、後縁部がスポット溶接S9される。具体的には、前記したピラーインナパネル20の前、後縁部と、ピラー補強パネル22の前、後外向きフランジ27,27とのスポット溶接S3による結合部に対し、上記サイドアウタパネル13のピラーアウタパネル21の前、後縁部がスポット溶接S9される。
【0043】
そして、上記スポット溶接S1〜S9により、上記車体2上部構造の各構成部品の組み付け作業が終わる。
【0044】
上記構成によれば、車体2上部の各構成部品同士の組み付け作業において、上記ルーフサイドレール11を補強しようとして、このルーフサイドレール11の内部にレール補強パネル33を設ける場合には、まず、上記ピラー補強パネル22の前、後外向きフランジ27,27と、上記ガセットパネル39の前、後部と、上記レールインナパネル30とを前、後それぞれでスポット溶接S2により互いに結合すればよく、このスポット溶接S2のための溶接ガンの動作は、何らかの部材に邪魔されることなく容易にできる。次に、上記ピラー補強パネル22の外側パネル26と上記レール補強パネル33とをスポット溶接S7により互いに結合するが、このスポット溶接S7は、上記したように第1、第2貫通孔41,42に溶接ガン44を挿通させることにより達成される。このため、上記スポット溶接S7をする場合、ガセットパネル39やレールインナパネル30が邪魔にならないことから、上記スポット溶接S7が容易にできる。よって、上記組み付け作業が容易にできる。
【0045】
そして、上記組み付け作業では、上記レールインナ、レールアウタパネル30,31の各上縁部とルーフ12の側縁部との互いのスポット溶接S8を可能にするための溶接ガン45挿通用の第1貫通孔41が利用されたのであり、このため、上記ピラー補強パネル22とレール補強パネル33とのスポット溶接S7のための溶接ガン44挿通用として、上記レール補強パネル33などに別途に複数の貫通孔を形成することは不要にできる。
【0046】
よって、第1に、別途に複数の貫通孔を形成しないで足りる分、上記組み付け作業が更に容易にできる。また、第2に、仮に、上記のように別途に複数の貫通孔を形成したとすれば、これら貫通孔により車体2上部の剛性が無用に低下するおそれを生じるが、上記構成によれば、上記ガセットパネル39に形成した第1貫通孔41を上記各スポット溶接S7,S8のそれぞれ溶接ガン挿通用として利用したことにより、貫通孔の形成を必要最少限にとどめた分、上記のような剛性の無用な低下は防止される。つまり、上記したように車体2上部の組み付け作業が容易にできるものでありながら、上記車体2上部の剛性の向上が達成される。
【0047】
また、前記したように、車体2の前後方向で上記ピラー補強パネル22の中途部と同位置の上記レールインナパネル30の部分に上記第2貫通孔42を形成している。
【0048】
このため、上記レールインナパネル30における第2貫通孔42の形成部分には上記ピラー補強パネル22が跨るよう設けられることから、上記第2貫通孔42の形成部分は十分に補強される。よって、前記のようにレールインナパネル30に第2貫通孔42を形成した場合、この第2貫通孔42の形成部分の剛性は低下しがちとなるが、このレールインナパネル30における第2貫通孔42の形成部分の剛性は、上記ピラー補強パネル22によって、より確実に確保される。
【0049】
なお、以上は図示の例によるが、上記組立体のスポット溶接S4による結合部に対しピラーアウタパネル21とルーフパネル36とをスポット溶接S8により結合する場合、このスポット溶接S8による結合は、上記スポット溶接S4による結合部での前記レールインナパネル30の上縁部と、レール補強パネル33の上縁部と、ルーフ補強パネル37の側縁部とのうち、いずれか一枚のパネル、もしくは2枚のパネルに対するものであってもよい。また、上記第2貫通孔42は、前後方向に長い長方形状など、矩形であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
2 車体
9 センタピラー
11 ルーフサイドレール
12 ルーフ
13 サイドアウタパネル
15 車室
20 ピラーインナパネル
21 ピラーアウタパネル
22 ピラー補強パネル
24 前パネル
25 後パネル
26 外側パネル
27 外向きフランジ
30 レールインナパネル
31 レールアウタパネル
33 レール補強パネル
34 切り欠き
36 ルーフパネル
37 ルーフ補強パネル
39 ガセットパネル
41 第1貫通孔
42 第2貫通孔
43 溶接ガン
45 溶接ガン
S スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向で互いに対面するピラーインナ、ピラーアウタパネルをそれぞれ有する左右センタピラーと、これら各センタピラーの内部に配置され、車体の平面断面視で上記ピラーインナパネル側に向かって開口するハット形状とされて、その前、後端縁部が上記ピラーインナパネルに結合されるピラー補強パネルと、車体の幅方向で互いに対面するレールインナ、レールアウタパネルを有して上記各センタピラーの上端部にそれぞれ支持されるルーフサイドレールと、これら各ルーフサイドレールに架設されるルーフと、上記レールインナパネルと上記ルーフの側部とに架設されるガセットパネルとを備え、このガセットパネルに第1貫通孔を形成し、この第1貫通孔に挿通される溶接ガンにより、上記レールインナ、レールアウタパネルの各上縁部とルーフの側縁部との互いのスポット溶接を可能にした車両の車体上部構造において、
上記ルーフサイドレールの内部に配置されるレール補強パネルを設け、上記レールインナパネルに、車体の幅方向で上記第1貫通孔と互いに連通する第2貫通孔を形成し、上記第1、第2貫通孔に順次挿通される溶接ガンにより、上記レール補強パネルとピラー補強パネルとの互いのスポット溶接を可能にし、
車体の前後方向で上記ピラー補強パネルの中途部と同位置の上記レールインナパネルの部分に上記第2貫通孔を形成したことを特徴とする車両の車体上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−68285(P2011−68285A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222364(P2009−222364)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】