説明

車両の駆動制御装置

【課題】望ましくない始動不良を起こすようなシチュエーションで内燃機関を始動する機会を減らすこと、問題のないレベルの範囲で始動しつつ内燃機関の停止させている無使用時間を長く確保する。
【解決手段】内燃機関と駆動モータを搭載し、内燃機関と駆動モータを制御する駆動制御手段を備え、少なくとも内燃機関を停止したまま走行可能な車両の駆動制御装置において、駆動制御手段は、所定の始動条件が成立した場合に始動指令を出力して内燃機関を始動する機能を有する一方、内燃機関の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数を求め、内燃機関の始動不良によるインパクトに相当する第二の関数を求め、第一の関数と第二の関数に基づいて内燃機関の始動不良リスクに相当する始動要因値を算出し、この始動要因値に対する判断に基づいて内燃機関の強制始動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の駆動制御装置に係り、特に、内燃機関を停止したまま走行することができる車両の、内燃機関始動不良に伴う不安定挙動を防止することができる車両の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関と駆動モータを搭載し、少なくとも内燃機関を停止したまま走行可能な車両には、レンジ・エクステンダー型電気自動車やプラグインハイブリッド車(PHEV)などがある。これらの車両の駆動制御装置は、内燃機関と駆動モータを制御する駆動制御手段を備え、内燃機関を停止したままでの走行中に駆動用バッテリの電力貯蓄状態であるSOC(State Of Charge)が低くなると、内燃機関を始動するよう制御する。
特開2011−121482号公報には、内燃機関の停止時間に応じて始動のきっかけとなる車速を変更する技術が開示されている。
特許第321450号公報には、駆動モータ単独の駆動力で走行可能なパラレル型ハイブリッド車において、内燃機関の始動性悪化を防ぐため制動力を利用して内燃機関を動作させる技術が開示されている。
特開2010−174840号公報には、キャニスタのパージ必要量に応じて、内燃機関の始動SOC閾値を調整することにより、内燃機関の始動頻度を変える技術が開示されている。
特開2010−158927号公報には、休止時にキャニスタに回収した蒸発燃料ガスを、プラグインハイブリッド車のバッテリ残量に関わらず燃費悪化を最小限に内燃機関を運転しパージする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−121482号公報
【特許文献2】特許第321450号公報
【特許文献3】特開2010−174840号公報
【特許文献4】特開2010−158927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レンジ・エクステンダー型電気自動車やプラグインハイブリッド車では、車両ユーザ(使用者、運転者)の使用方法によっては長期間内燃機関をかけないままで使用されるシチュエーション(状況)が存在する。従来の内燃機関の駆動力で走行する自動車も、長期放置すれば内燃機関をかけないままであるが、次回内燃機関を始動するシチュエーションがレンジ・エクステンダー型電気自動車などと大きく異なる。
後者(内燃機関の駆動力で走行する自動車)は車両停止状態で内燃機関を始動するが、前者(レンジ・エクステンダー型電気自動車など)は走行中に内燃機関を始動することもあり得る。走行中に内燃機関を始動する時に始動不良が起こると、レンジ・エクステンダー型電気自動車やプラグインハイブリッド車は走行中に出力低下(駆動力低下)することとなり、スムーズな走行に影響を与える不都合がある。
【0005】
一般的に、内燃機関は以下のようなシチュエーションで始動不良を起こす可能性が高いと考えられる。
・長期間内燃機関の始動が行われなかった場合
・低温環境下
・長期間オイル交換が為されていなかった場合
いくつかの条件が重なっても、大半のシチュエーションでは問題とならないが、一部のシチュエーションでの内燃機関の始動は極力避けたく、そのようなシチュエーションに近づいたら始動するようにしたい。
【0006】
この発明は、望ましくない始動不良を起こすようなシチュエーションで内燃機関を始動する機会を減らすこと、問題のないレベルの範囲で始動しつつ内燃機関の停止させている無使用時間を長く確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、内燃機関と駆動モータを搭載し、前記内燃機関と駆動モータを制御する駆動制御手段を備え、少なくとも内燃機関を停止したまま走行可能な車両の駆動制御装置において、前記駆動制御手段は、所定の始動条件が成立した場合に始動指令を出力して前記内燃機関を始動する機能を有する一方、前記内燃機関の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数を求め、前記内燃機関の始動不良によるインパクトに相当する第二の関数を求め、前記第一の関数と前記第二の関数に基づいて前記内燃機関の始動不良リスクに相当する始動要因値を算出し、この始動要因値に対する判断に基づいて前記内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、始動不良の発生可能性に相当する関数と始動不良によるインパクトに相当する関数との2つの関数によって、始動不良リスクを考慮して強制始動を行うようにしたので、始動不良の中でも望まないレベルの一部の始動不良を低減できる。
この発明は、始動不良リスクを判断して強制始動するので、内燃機関の不使用時間をある程度確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両の駆動制御装置のシステム図である。(実施例)
【図2】図2は車両の駆動制御装置のフローチャートである。(実施例)
【図3】図3は第一の関数の設定例を示す表である。(実施例)
【図4】図4は第一の関数の設定例を示すグラフである。(実施例)
【図5】図5は第二の関数の設定例を示す表である。(実施例)
【図6】図6は第二の関数の設定例を示すグラフである。(実施例)
【図7】図7は始動要因値判断用の設定値の設定例を示すグラフである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両、2は駆動制御装置である。車両1は、少なくとも内燃機関3を停止したまま走行可能な、レンジ・エクステンダー型電気自動車などである。この車両1の駆動制御装置2は、内燃機関3によって駆動される発電機4と、駆動用バッテリ5と、駆動モータ6とを高電圧ケーブル(HV+/HV−)7によって接続している。内燃機関3は、図示しないが燃料噴射制御や空燃比制御を行う制御装置、およびその入出力側に設けられる一般的に知られた検出手段および補機類である各種装置を備えている。高電圧ケーブル7には、その他電気負荷8、充電器9が接続されている。その他電気負荷8は、A/Cコンプレッサや空調用ヒータ等の高電圧駆動される電気負荷である。また、充電器9は、外部充電器10に接続することで、駆動用バッテリ5を充電する。
前記駆動用バッテリ5は、発電機4により発電された電力や充電器9により供給される外部電力を貯蓄可能であるとともに、電力貯蓄状態であるSOC(State Of Charge)を出力可能である。前記駆動モータ6は、発電機4により発電された電力、または駆動用バッテリ5に貯蓄された電力を使って駆動され、駆動軸11を介して駆動輪12を駆動することで車両1を推進可能である。これより、車両1は、内燃機関3と駆動モータ6を搭載し、少なくとも内燃機関3を停止したまま駆動モータ6で走行可能である。
前記内燃機関3と発電機4と駆動用バッテリ5と駆動モータ6とは、駆動制御装置2の駆動制御手段13に接続されている。駆動制御手段13には、アクセル開度を検出するアクセルセンサ14と、車速を検出する車速センサ15とを接続している。駆動制御手段13は、内燃機関3から内燃機関回転数情報を入力し、駆動用バッテリ5から電力貯蓄状態情報(SOC)を入力し、アクセルセンサ14からアクセル開度信号を入力し、車速センサ15から車速信号を入力する。
駆動制御手段13は、内燃機関3の駆動/停止についての内燃機関制御指令、内燃機関3に連結された発電機4ヘの発電トルク指令、高電圧の駆動用バッテリ5のSOCの管理、車両1を推進させる駆動モータ6ヘの駆動トルク指令などを行って、車両1に搭載されたシステムを統合的に制御する。
【0012】
車両1の駆動制御装置2は、駆動制御手段13により駆動用バッテリ5のSOCの管理を行い、SOCがある閾値を下回ると内燃機関3を始動させる。もし、車両ユーザが頻繁に外部充電器10で駆動用バッテリ5の充電を行うと、駆動用バッテリ5のSOCが比較的高い状態のまま維持され、長期間内燃機関3が始動されないシチュエーションが存在する。このように長期間内燃機関3が始動されないシチュエーションが存在すると、次回の始動時に始動不良を起こすことがある。
一般的に、内燃機関3は以下のようなシチュエーションで始動不良を起こす可能性が高いと考えられる。
・長期間内燃機関の始動が行われなかった場合
・低温環境下
・長期間オイル交換が為されていなかった場合
内燃機関3の始動不良は、インパクト(衝撃)を生じる。内燃機関3の始動不良によるインパクトは、車両1にかかる物理的な衝撃、あるいは、それに相当するエネルギ損失のことである。内燃機関3の始動不良によるインパクトが大きいのは、以下のようなシチュエーションである。
・高速走行時(駆動用バッテリ5のSOCが下がりすぎてしまうことにより、駆動モータ6の急激な出力低下)
・低温環境下(暖房用の電力が確保できないことによる、車室内温度の低下)
・高温環境下(冷房用の電力が確保できないことによる、車室内温度の上昇)
このようなシチュエーションとなる前に、内燃機関3の始動不良の発生可能性を車両ユーザに伝える必要がある。また、内燃機関3の始動不良そのものを防ぐ必要がある。
【0013】
この車両1の駆動制御装置2は、以上のような観点から、駆動用バッテリ5のSOC低下だけではなく、内燃機関3の始動不良の発生可能性、及び始動不良によるインパクトが大きい時には内燃機関3を強制的に始動させることとし、また、始動不良の発生可能性を車両ユーザに知らせることとする。
駆動制御装置2は、駆動制御手段13に、車両1の外気温度を検出する外気温度センサ16と、内燃機関3の無使用時間を計時する計時手段17と、車両ユーザにメッセージを通知する通知手段18とを接続している。駆動制御手段13は、外気温度センサ16から外気温度信号を入力し、計時手段17から内燃機関3の無使用時間情報を入力し、通知手段18に車両ユーザに内燃機関3の始動不良の発生可能性について通知するためのメッセージ出力を行う。
前記駆動制御手段13は、所定の始動条件が成立した場合に始動指令を出力して内燃機関3を始動する機能を有する。駆動制御手段13は、始動要因値Pが予め設定した設定値Aを超えない場合には、すなわち通常の使用では、所定の始動条件として、検知された駆動用バッテリ5のSOCの低下に基づいて、この駆動用バッテリ5のSOCを所定の範囲に収めるために内燃機関3を始動する。駆動制御手段13は、内燃機関3を始動することで発電機4により発電して、駆動用バッテリ5を充電する。発電した電力の一部は、車両1の駆動に用いるように配分することもできる。
一方、駆動制御手段13は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数を求め、内燃機関3の始動不良によるインパクトに相当する第二の関数を求め、第一の関数と第二の関数に基づいて内燃機関3の始動不良リスクに相当する始動要因値を算出し、この始動要因値に対する判断に基づいて内燃機関3の強制始動を行う。
実施例において、駆動制御手段13は、第一の関数は内燃機関3の無使用時間tと外気温度Tに基づいて内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する数値X=f(t,T)を設定し、第二の関数Yは車速vと外気温度Tに基づいて内燃機関3の始動不良によるインパクトに相当する数値Y=g(v,T)を設定し、始動要因値Pを第一の関数の数値Xと第二の関数の数値Yとを乗算(P=X*Y)することによって算出し、この始動要因値Pが予め設定した設定値Aを超える場合(P≧A)に内燃機関3を強制始動する。
さらに、前記駆動制御手段13は、駆動用バッテリ5のSOCを検知する機能を有し、始動要因値Pが予め設定した設定値Aを超えない場合(P<A)には、所定の始動条件として検知された駆動用バッテリ5のSOCに基づいて、この駆動用バッテリ5のSOCを所定の範囲に収めるために内燃機関3を始動する。
【0014】
ここで、前記始動不良の発生可能性の値X、始動不良によるインパクトの値Y、設定値Aについて説明する。
すなわち、始動不良の発生可能性の値をX(0≦X≦1)、始動不良によるインパクトの値をY(0≦Y≦1)とし、これらを掛け合わせたものを内燃機関3の始動要因値をP(0≦P≦1)とする。
P=X*Y (1)
このPを用いて、以下のような関係が成立する時に内燃機関3を強制始動させることとする。
P≧A (2)
【0015】
前記設定値Aは、定数である。また、始動不良の発生可能性の値Xは、内燃機関3の無使用時間tと外気温Tの関数である。始動不良によるインパクトの値Yは、車速vと外気温Tの関数である。
X=f(t,T) (3)
Y=g(v,T) (4)
【0016】
第一の関数による値Xの設定例を、図3・図4に示す。第一の関数の値Xは、内燃機関3の無使用時間tが長くなればなるほど、外気温度Tが低くなればなるほど、値が大となるように設定することが推奨される。
次に、第二の関数による値Yの設定例を、図5・図6に示す。第二の関数の値Yは、車速vが高くなればなるほど、外気温度Tが低くなればなるほど、値が大となるように設定することが推奨される。
ただし、車速v=0の時にY=0とするべきではない。これは、第一の関数の値Xが非常に大きい時には、v=0においても積極的に内燃機関3を始動させるためである(走り出す前に内燃機関3の異常が分かれば、車両ユーザの被害は最小限に抑えられるため)。ここで、例として外気温度T=25℃における始動要因値P(=X*Y)を図7に示す。設定値A=0.18とすると、始動要因値Pが平面Sより上の領域で内燃機関3を強制的に始動させる。
なお、センシングが難しいため、オイル交換の要素は敢えて含めていないが、もし可能な場合は第一の関数の値Xの要素として含めることが望まれる(オイル交換日数やオイル性状等)
【0017】
この車両1の駆動制御装置2は、所定の始動条件が成立した場合に内燃機関3を始動する一方、第一の関数の値Xと第二の関数の値Yに基づいて内燃機関3の始動不良リスクに相当する始動要因値Pを算出し、この始動要因値Pに対する判断に基づいて内燃機関3の強制始動を行う。
車両1の駆動制御装置2は、図2に示すように、制御がスタートすると(101)、各種パラメータ(無使用時間t、外気温T、車速v)を入力し(102)、第一の関数の値Xを求め(103)、第二の関数の値Yを求め(104)、第一の関数の値Xと第二の関数の値Yから始動要因値Pを求め(105)、始動要因値Pが設定値A(0≦A≦1)を超えているかを判断する(106)。
この判断(106)がYESの場合は、内燃機関3を強制始動を行い(107)、制御をエンドにする(108)。この判断(106)がNOの場合は、内燃機関3を通常始動(駆動用バッテリ5のSOCによる始動条件成立時などの任意のタイミングでの始動)を行い(109)、制御をエンドにする(108)。
【0018】
このように、車両1の駆動制御装置2は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数と、内燃機関3の始動不良によるインパクトに相当する第二の関数に基づいて内燃機関3の始動不良リスクに相当する始動要因値を算出し、この始動要因値に対する判断に基づいて内燃機関3の強制始動を行う。
これにより、駆動制御装置2は、2つの関数によって、始動不良リスクを考慮して強制始動を行うようにしたので、始動不良の中でも望まないレベルの一部の始動不良を低減できる。また、駆動制御装置2は、始動不良リスクを判断して強制始動するので、内燃機関3の不使用時間をある程度確保することができる。
また、駆動制御装置2は、第一の関数は内燃機関3の無使用時間tと外気温度Tに基づいて内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する数値Xを設定し、第二の関数は車速vと外気温度Tに基づいて内燃機関3の始動不良によるインパクトに相当する数値Yを設定し、第一の関数の数値Xと第二の関数の数値Yとを乗算して始動要因値Pを算出し、始動要因値Pが予め設定した設定値Aを超える場合に内燃機関3を強制始動する。
これにより、駆動制御装置2は、車両1の走行状態を示す車速だけでなく、内燃機関3の状態に関わる外気温度T、無使用時間tを考慮して判断しているので、始動不良リスクの高低判断を精度良く行うことができる。また、駆動制御装置2は、始動不良リスクの高低判断を所望に設定できるので、車両毎の各内燃機関の固有の特性に応じて不使用時間を確保しながら最適な強制始動タイミングを設定できる。
設定値Aを許容できるレベルに設定するので、「始動要因値Pが設定値Aを超える場合に強制始動する」との判断によって、実際には、通常の車両使用状況では設定値A未満であり、設定値A未満から設定値Aに達する境界では強制始動されることになり、完全に設定値Aを超越した望ましくない状況で初めて始動する状況がなくなるため、望ましくない始動が行わないようにできる。
さらに、駆動制御装置2は、始動要因値Pが予め設定した設定値Aを超えない場合(P<A)には、所定の始動条件として検知された駆動用バッテリ5のSOCに基づいて、この駆動用バッテリ5のSOCを所定の範囲に収めるために内燃機関3を始動する。
これにより、駆動制御装置2は、始動不良リスクの比較的低い通常の使用では、駆動用バッテリ5のSOCに応じて随時始動するため、車両ユーザの使用状態に応じて始動を行っている。駆動制御装置2は、これに併せて、内燃機関3を強制始動することにより、内燃機関3の不使用時間を確保しながら、始動不良リスクの低い状態を保つことができる。
なお、この実施例では、始動要因値Pを第一の関数の値Xと第二の関数の値Yの掛け合わせ(乗算)により求める態様としたが、内燃機関3の仕様、特性によっては、始動要因値Pを第一の関数の値Xと第二の関数の値Yの足し合わせ(加算)により求める態様とすることも可能と考えられる。
また、この実施例においては、レンジ・エクステンダー型電気自動車についての適用方法を述べたが、トルクスプリット型電気自動車(HEV)、内燃機関切り難し可能なパラレル型ハイブリッド車(HEV)にも応用可能である。
【0019】
さらに、この車両1の駆動制御装置2は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に関する通知を車両ユーザへ行う。この通知は、車両ユーザが車両1から離れている時に行う、または車両ユーザが車両1に乗車した時に行うこととする。これは、上述の制御により内燃機関3を始動した場合の、車両ユーザに与える不安を防ぐためである。例えば、ガレージで車両1を長期間放置した後充電を行い、内燃機関3がかからないという認識の下に車両1を起動した結果、ガレージ内で内燃機関3を運転してしまうような状況が考えられる。
そこで、駆動制御手段13は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数の数値Xが予め設定した設定値B、Cを超える場合に、通知手段18により車両ユーザに対してメッセージを出力する。
まず、車両1から離れている車両ユーザには、携帯電話等の無線通信可能な通信手段、または充電ケーブルを使用したPLC通信等の有線通信可能な通信手段によって通知を行う外部充電器10を使う。この通信手段により恒常的にオイル交換次期・内燃機関3の無使用時間等の情報を車両ユーザが確認でき、また、内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数の値Xがある設定値B(0≦B≦1)を超えた時には車両ユーザに注意を通知するものとする。
次に、車両1に乗車した車両ユーザには、車両1のインタフェースを介して通知手段(ディスプレイ・音声等)により通知を行う。この通知手段は、始動不良の発生可能性Xがある設定値C(0≦C≦1)を超えた時に、車両ユーザに警報を通知するものである(内燃機関3を始動する車速等を通知してもよい)。
【0020】
このため、前記通知手段18は、図1に示すように、車両外部の機器(外部充電器10、無線通信局)を介在して車両ユーザに間接的に通知するために、メッセージ出力を通信信号出力によって行う第一通知機能手段181と、車両ユーザに直接通知するために、メッセージ出力を音響出力又は表示出力によって行う第二通知機能手段182とによって構成する。
前記第一通知機能手段181は、有線あるいは無線により車両外部に信号を出力する送受信装置19を備えている。第一通知機能手段181は、始動不良の発生可能性に相当する第一の関数の数値Xが予め設定した設定値Bを超える場合に、車両ユーザに対するメッセージを通信信号出力で出力する。メッセージは、車両外部の外部充電器10の送受信装置20や無線通信局を介して車両ユーザが所持する携帯端末などに音響出力又は表示出力で出力する。
前記第二通知機能手段182は、有線により車両内部に搭載された機器21を備えている。第二通知機能手段182は、始動不良の発生可能性に相当する第一の関数の数値Xが予め設定した設定値Cを超える場合に、車両ユーザに対するメッセージを機器21から音響出力又は表示出力で出力する。
【0021】
このように、車両1の駆動制御装置2は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数の数値Xが予め設定した設定値B、Cを超える場合(X>B、X>C)に、通知手段18により車両ユーザに対してメッセージを出力する。
これにより、駆動制御装置2は、望ましくない始動不良の発生未然で事前通知できるので、車両ユーザに与える不快感を抑制できる。また、駆動制御装置2は、車両ユーザにメンテナンスを促すことができ、車両1の耐久性を向上することができる。
通知手段18の設定値Bと設定値Cは、第一の関数の値Xに対する設定であるので、一概に比較できないが、始動要因値P<設定値Aとなる間に、第一の関数の値X>設定値B、第一の関数の値X>設定値Cとなるように、各設定値A、B、Cを設定することが、望ましくない始動不良を発生未然で通知するという点で望ましい。
なお、駆動制御装置2は、内燃機関3の始動不良の発生可能性に関する通知を通知手段18により車両ユーザへ行ったが、内燃機関3の始動を任意に可能とする始動スイッチなどの操作子を設け、内燃機関3の始動要因値Pまたはそれに関連する情報を通知手段18により車両ユーザに知らせた際に、車両ユーザが前記操作子を自ら操作することで、内燃機関3を強制始動するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、走行中に内燃機関を停止することができる車両の内燃機関始動不良に伴う不安定挙動を防止することができるものであり、気動車・バス用電源等、発電機を搭載したシステムに応用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 車両
2 駆動制御装置
3 内燃機関
4 発電機
5 駆動用バッテリ
6 駆動モータ
7 高電圧ケーブル
8 その他電気負荷
9 充電器
10 外部充電器
11 駆動軸
12 駆動輪
13 駆動制御手段
14 アクセルセンサ
15 車速センサ
16 外気温度センサ
17 計時手段
18 通知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と駆動モータを搭載し、前記内燃機関と駆動モータを制御する駆動制御手段を備え、少なくとも内燃機関を停止したまま走行可能な車両の駆動制御装置において、前記駆動制御手段は、所定の始動条件が成立した場合に始動指令を出力して前記内燃機関を始動する機能を有する一方、前記内燃機関の始動不良の発生可能性に相当する第一の関数を求め、前記内燃機関の始動不良によるインパクトに相当する第二の関数を求め、前記第一の関数と前記第二の関数に基づいて前記内燃機関の始動不良リスクに相当する始動要因値を算出し、この始動要因値に対する判断に基づいて前記内燃機関の強制始動を行うことを特徴とする車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記第一の関数は前記内燃機関の無使用時間と外気温度に基づいて前記内燃機関の始動不良の発生可能性に相当する数値を設定し、前記第二の関数は車速と外気温度に基づいて前記内燃機関の始動不良によるインパクトに相当する数値を設定し、前記始動要因値を前記第一の関数の数値と前記第二の関数の数値とを乗算することによって算出し、この始動要因値が予め設定した設定値を超える場合に前記内燃機関を強制始動することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記車両は、駆動用バッテリを搭載し、前記駆動制御手段は、前記駆動用バッテリのSOCを検知する機能を有し、前記始動要因値が予め設定した設定値を超えない場合には、前記所定の始動条件として検知された前記駆動用バッテリのSOCに基づいてこの駆動用バッテリのSOCを所定の範囲に収めるために前記内燃機関を始動することを特徴とする請求項2に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、車両ユーザに通知する通知手段を備え、前記内燃機関の始動不良の発生可能性に相当する前記第一の関数の数値が予め設定した設定値を超える場合に、前記通知手段により車両ユーザに対してメッセージを出力することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75537(P2013−75537A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214917(P2011−214917)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】