説明

車両の駆動装置

【課題】動力源からの動力を遊星歯車装置を介して出力側へ伝達する車両の駆動装置であって、オイルポンプを小型化することで、駆動装置を小型化および軽量化することができる車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】一方向クラッチOWCがリングギヤR1の内周側に配置され、オイルポンプ30がオイルポンプシャフト32を介して一方向クラッチOWCと動力伝達可能に連結されることで、オイルポンプ32と一方向クラッチOWCとが軸方向に異なる位置に配置され、オイルポンプ30の内径が、一方向クラッチOWCの外径よりも小さく設定される。このように構成されると、オイルポンプ30の内径が一方向クラッチOWCの外径よりも小さくすることが可能となる。そして、上記のように設定されることで、オイルポンプ30を径方向に小さくすることができる。また、オイルポンプ30を軸方向にも短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動装置に係り、特に、駆動装置の小型化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力源からの動力を遊星歯車装置を介して出力側へ伝達する車両の駆動装置が良く知られてる。例えば特許文献1のハイブリッド車両用駆動装置や特許文献2のハイブリッド車両用駆動装置もその一例である。図6に、従来の車両の駆動装置200(以下、駆動装置200)の概略構成図を一例として示す。駆動装置200は、遊星歯車装置202、カウンタギヤ対204、ファイナルギヤ対206、差動歯車装置208(終減速機)を主体として構成されている。そして、駆動装置200は、電動モータ210の動力を遊星歯車装置202、カウンタギヤ対204、ファイナルギヤ対206、差動歯車装置208等を順次介して一対の駆動輪212側へ伝達する電気自動車用の駆動装置である。
【0003】
遊星歯車装置202は、サンギヤSと、そのサンギヤSに対して同心円上に配置されたリングギヤRと、これらサンギヤSおよびリングギヤRに噛み合うピニオンギヤPを自転可能かつ公転可能に支持するキャリヤCAとの、3つの回転要素を備えた公知の差動作用を生じるシングルピニオン型の遊星歯車装置である。
【0004】
遊星歯車装置202のサンギヤSには電動モータ210が連結され、キャリヤCAは非回転部材であるケース214に固定され、リングギヤRにはカウンタギヤ対204の一方の歯車が連結されると共に、オイルポンプシャフト215および一方向クラッチ216を介してオイルポンプ218が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3593992号公報
【特許文献2】特許第3384341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記駆動装置200においては、オイルポンプ218の内周側に、そのオイルポンプ218の逆転を防止するための一方向クラッチ216が配置されている。上記は特許文献1も同様であり、オイルポンプ15の内周側に逆転防止一方向クラッチ15aが配置されている(特許文献1において図6に対応)。また、特許文献2においても、オイルポンプ16の内周側に一方向クラッチ17が配置されている(特許文献2において図12に対応)。このように、オイルポンプの内周側に一方向クラッチが配置されるのが一般的である。図6において、オイルポンプ218の内周側に一方向クラッチ216が配置されると、オイルポンプ218のドライブギヤ径が増加する。また、オイルポンプ218のトルク容量に応じて一方向クラッチ216の幅径(軸長)も長くなることから、オイルポンプ218のドライブギヤの幅径(軸長)も同様に長くなる。したがって、オイルポンプ218が径方向および軸方向にも長くなるので、オイルポンプ218が大型化し、これに伴いオイルポンプ218を格納するケース等も同様に大型化するため、結果として駆動装置200の大型化(軸長増加)および重量増加が生じる問題があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、動力源からの動力を遊星歯車装置を介して出力側へ伝達する車両の駆動装置であって、オイルポンプを小型化することで、駆動装置を小型化および軽量化することができる車両の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)動力源からの動力を遊星歯車装置を介して出力側へ伝達する車両の駆動装置であって、(b)前記遊星歯車装置は、(c)サンギヤが前記動力源に連結され、(d)キャリヤが回転不能に固定され、(e)リングギヤが出力回転部材に連結されると共に、一方向クラッチを介してオイルポンプに連結され、(f)前記一方向クラッチが前記リングギヤの内周側に配置され、前記オイルポンプがオイルポンプシャフトを介してその一方向クラッチと動力伝達可能に連結されることで、そのオイルポンプと一方向クラッチとが軸方向に異なる位置に配置され、(g)そのオイルポンプの内径が、一方向クラッチの外径よりも小さく設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明の車両の駆動装置によれば、前記一方向クラッチが前記リングギヤの内周側に配置され、前記オイルポンプがオイルポンプシャフトを介して一方向クラッチと動力伝達可能に連結されることで、オイルポンプと一方向クラッチとが軸方向に異なる位置に配置され、オイルポンプの内径が、一方向クラッチの外径よりも小さく設定される。このように構成されると、オイルポンプの内周側に一方向クラッチが配置されないため、オイルポンプの内径が一方向クラッチの外径よりも小さくすることが可能となる。そして、上記のように設定されることで、オイルポンプを径方向に小さくすることができる。また、従来では、オイルポンプの内周側に配置される一方向クラッチの幅径(軸長)に基づいてオイルポンプの幅径(軸長)も長くなっていたが、一方向クラッチの幅径(軸長)を考慮する必要がないので、オイルポンプを軸方向にも短くすることができる。したがって、オイルポンプを小型化することができるに伴い、駆動装置全体としても小型化および軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明が適用された車両の駆動装置を説明する概略構成図である。
【図2】図1において、一方向クラッチを潤滑するオイルの流れを説明する図である。
【図3】図1の車両の駆動装置において、他の態様を説明する図である。
【図4】図1のオイルポンプのドライブギヤと従来のドライブギヤとを比較する図である。
【図5】図1の車両の駆動装置の構成を他の駆動装置に流用した一例を示す図である。
【図6】従来の車両の駆動装置を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、好適には、リングギヤの内周側に配置される一方向クラッチと、オイルポンプとの間に、遊星歯車装置および電動モータが軸方向に介装されており、前記一方向クラッチとオイルポンプとは、遊星歯車装置および電動モータの内周部に配設されるオイルポンプシャフトを介して動力伝達可能に連結されるものである。このようにすれば、車両後退時には、オイルポンプが駆動しないため、オイルポンプシャフトの支持部は無潤滑状態となるが、一方向クラッチによってオイルポンプシャフトが回転しないので、オイルポンプシャフトの支持部の焼き付きが防止される。
【0012】
また、好適には、前記遊星歯車装置を軸心から潤滑すると共に電動モータを軸心から冷却するために、オイルをその遊星歯車装置および電動モータの回転中心部から放出するための潤滑・冷却用油路が前記オイルポンプシャフトに形成されるものである。このようにすれば、遊星歯車装置の軸心側からオイルが遠心力によって放出されるため、遊星歯車装置を潤滑することができる。また、電動モータの軸心側から冷却用のオイルを放出することができるため、電動モータを効果的に冷却することができる。
【0013】
また、好適には、前記オイルポンプシャフトに形成されている潤滑・冷却用油路がキャッチタンクに接続されるものであっても構わない。このようにすれば、前進走行中にオイルポンプによって汲み上げられたオイルがキャッチタンクに貯留され、後退走行時において、その貯留されたオイルによって一方向クラッチやオイルポンプシャフトの支持部、遊星歯車装置等が潤滑されることで、焼き付きを防止することができる。
【0014】
また、好適には、本発明の駆動装置は、前記動力源が電動モータで構成された電気自動車用の駆動装置である。このようにすれば、電動モータを駆動源とする電気自動車が好適に構成される。
【0015】
また、好適には、前記車両の駆動装置の利用形態として、例えば駆動装置を単独で用いた前輪乃至後輪駆動装置(2WD)、フロント側の駆動装置とは別に、この駆動装置をリヤ側の駆動装置として用いた四輪駆動車(4WD)などが想定される。
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明が適用された車両の駆動装置10(以下、駆動装置10という)を説明する概略構成図である。図1において、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース40(以下、ケース40という)内には、遊星歯車装置12、走行用の動力源としての駆動用モータである電動モータ20(動力源)、オイルポンプ30等が備えられている。
【0018】
駆動装置10は、遊星歯車装置12、カウンタギヤ対14、減速機構として機能するファイナルギヤ対16、差動歯車装置(終減速機)18を主体として構成されている。そして、駆動装置10は、電動モータ20からの動力を遊星歯車装置12、カウンタギヤ対14、ファイナルギヤ対16、差動歯車装置(終減速機)18等を順次介して駆動輪50側(出力側)へ伝達する電気自動車用の駆動装置である。
【0019】
遊星歯車装置12は、サンギヤS1と、そのサンギヤS1に対して同心円上に配置されたリングギヤR1と、これらサンギヤS1及びリングギヤR1に噛み合うピニオンギヤP1を自転かつ公転自在に支持するキャリヤCA1とを、三つの回転要素として備え、公知の差動作用を生じるシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0020】
遊星歯車装置12のサンギヤS1は電動モータ20(動力源)に連結され、キャリヤCA1は回転不能にケース40に固定され、リングギヤR1にはカウンタギヤ対14の一方を構成する出力歯車13が連結されていると共に、オイルポンプ30が一方向クラッチOWCおよび後述するオイルポンプシャフト32を介して連結されている。尚、リングギヤR1と出力歯車13とは、リングギヤR1の外周部に出力歯車13が一体的に設けられた一体回転部材11で構成されている。つまり、この一体回転部材11は、カウンタ軸17のドリブンギヤ15と噛み合うことによって動力を駆動輪50へ出力する為の外周歯(すなわち出力歯車13)を備えた円筒状部材であって、出力回転部材として機能するものである。このように遊星歯車装置12が構成される場合、電動モータ20の回転が変速比に応じて減速されてリングギヤR1へ出力される。また、一方向クラッチOWCは、オイルポンプ30の逆回転を防止するために設けられるものであり、車両前進時のみリングギヤR1からオイルポンプシャフト32を介してオイルポンプ30へ回転を伝達し、車両後退時は空転させられるので、オイルポンプシャフト32が回転停止されてオイルポンプ32の逆回転が防止される。
【0021】
電動モータ20は、例えば同期電動機であって、少なくとも駆動トルクを発生させる電動機としての機能を有しており、遊星歯車装置12と同じ軸心C上に配置されている。この電動モータ20は、例えば不図示のインバータを介してバッテリー、コンデンサなどの蓄電装置に接続され、不図示のマイクロコンピュータを主体とするモータ制御用の電子制御装置によってそのインバータが制御されることにより、出力トルクが調節或いは設定される。尚、発電機としての機能を生じるように構成することも可能であり、この場合には上記マイクロコンピュータによって回生トルクが調節或いは設定される。
【0022】
オイルポンプ30は、ポンプケース内においてドライブギヤとドリブンギヤとが互いに噛み合う公知である歯車式のギヤポンプから構成されている。オイルポンプ30は、リングギヤR1に一方向クラッチOWCを介して連結されているが、オイルポンプ30と一方向クラッチOWCとは、オイルポンプシャフト32によって、軸方向において異なる位置に配置されている。具体的に説明すると、一方向クラッチOWCは、軸方向に長く形成されているリングギヤR1の内周側に配置されており、軸心C上に配置されて遊星歯車装置12の一部および電動モータ20の内周側を通るオイルポンプシャフト32を介してオイルポンプ30に動力伝達可能に連結されている。言い換えれば、オイルポンプ30と一方向クラッチOWCとの間には、軸方向において、遊星歯車装置12の一部および電動モータ20が介装されるように配置されており、オイルポンプシャフト32を介して互いに動力伝達可能に連結されている。そして、オイルポンプ30は、電動モータ20により遊星歯車装置12およびオイルポンプシャフト32を介してリングギヤR1と共に回転駆動させられる。これに伴い、オイルポンプ30は、潤滑油(オイル)を不図示のオイル溜まりから汲み上げ、オイルポンプシャフト32に形成されている潤滑・冷却用油路34へ吐出する。そして、吐出されたオイルは、潤滑・冷却用油路34と通り、その潤滑・冷却用油路34に形成されている放出孔から矢印で示すように放出される。したがって、オイルが、電動モータ20のロータ20aおよび遊星歯車装置12にそれぞれ内周側から供給されることで、電動モータ(ロータ20a)および遊星歯車装置12が効果的に冷却(潤滑)される。
【0023】
また、一方向クラッチOWCにおいては、図2の破線にに示すように、例えばリングギヤR1や出力歯車13等の回転部材によって掻き上げられたオイルが、ケース40を介して遊星歯車装置12を伝って一方向クラッチOWCに到達することで潤滑される。
【0024】
また、車両後進時には、一方向クラッチOWCが空転させられることで、オイルポンプ30が駆動しないため、オイルポンプシャフト32の支持部33においては無潤滑状態となるが、車両後進時では一方向クラッチOWCの空転によってオイルポンプシャフト32も同様に回転しないため、無潤滑による焼き付きは防止される。したがって、オイルポンプシャフト32の焼き付き性が向上するに伴い、オイルポンプシャフト32の支持部33を簡素化することも可能となる。例えば、従来ではニードルベアリングによって支持されていたものを、ニードルベアリングよりも安価なブッシュ等に変更することが可能となる。
【0025】
さらに、図3に示すように、例えば潤滑・冷却用油路34がキャッチタンク36と接続されるように構成されると、前進走行時においてオイルポンプ30によって汲み上げられたオイルがキャッチタンク36へ貯留され、後退走行時において、その貯留されたオイルによって、一方向クラッチOWCやオイルポンプシャフト32の支持部33、遊星歯車装置12等が潤滑されることで、焼き付き性を向上させることもできる。また、上記オイル溜まりの潤滑油がリングギヤR1やカウンタギヤ対14等によって掻き上げられる場合に、攪拌による損失を低減して効率を上げる為、オイルポンプ30によりキャッチタンク36へオイルを上げてオイル溜まりのオイルレベルを下げることもできる。
【0026】
図4に、オイルポンプ30のオイルポンプシャフト32によって駆動されるドライブギヤ30aと、比較対象としての従来のオイルポンプのドライブギヤ220との寸法関係を示す。なお、図4に示す従来のドライブギヤ220の内周側に配置される一方向クラッチOWCが、本実施例の駆動装置10においても使用されるものとする。すなわち、図1の一方向クラッチOWCおよび図4に記載の一方向クラッチOWCの大きさが等しいものとする。図4に示すように、ドライブギヤ30aでは、内周側に一方向クラッチOWCが配置されていないので、ドライブギヤ30a(オイルポンプ30)の内径aが従来のドライブギヤ220の内径bすなわち一方向クラッチOWCの外径bよりも小さく設定される(a<b)。したがって、駆動装置10において、オイルポンプ30の径方向寸法と一方向クラッチOWCの径方向寸法とが、一部重複(アンダーラップ)することで、ドライブギヤ30a(オイルポンプ30)が従来(ドライブギヤ220)よりも径方向に小さくなる。具体的には、図4において、従来のドライブギヤ220の外径dに比べて、ドライブギヤ30aの外径cが小さくなる(c<d)に伴い、オイルポンプギヤ30が径方向に小さくなる。
【0027】
また、一方向クラッチOWCは、オイルポンプのポンプ容量等に応じてその外径および幅径(軸長)が決定される。具体的には、ポンプ容量が大きくなるに従って、一方向クラッチOWCの外径および幅径(軸長)が大きくなる。したがって、ドライブギヤの内周側に一方向クラッチOWCが配置される場合、一方向クラッチOWCの幅径に応じたドライブギヤの幅径に決定される。これに対して、本実施例のドライブギヤ30aでは、一方向クラッチOWCの幅径を考慮する必要がないので、ドライブギヤ30aの幅径が小さくなる。具体的には、従来のドライブギヤ220の幅径eに比べて、ドライブギヤ30aの幅径fは小さくなる(f<e)。
【0028】
したがって、オイルポンプ30は、従来に比べて径方向にも軸方向にも小型化が可能となる。また、オイルポンプ30が小型化されるに伴い、オイルポンプ30を格納するケース等も小型化することが可能となるので、駆動装置10全体としても小型化および軽量化が可能となる。
【0029】
図5は、本発明の構成を適用可能な従来のハイブリッド車両の駆動装置100の概略構成図である。図5において、駆動装置100は、走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン112を備え、その動力がダンパ114を介して出力されるように構成されている。そして、駆動装置100は、エンジン112の動力および電動モータ20の動力によって駆動されるハイブリッド形式の駆動装置として機能するものである。
【0030】
ここで、駆動装置100において、実線で示す構成は、図1の駆動装置10と共通する部材である。具体的に説明すると、カウンタギヤ対14、ファイナルギヤ対16、差動歯車装置18、電動モータ20、遊星歯車装置12、オイルポンプ30等が共通する。したがって、実線に示す構成を両装置で互いに流用(共通化)できることがわかる。一方、図5の一点鎖線内において破線に示す構成は、図1の駆動装置10と異なり、遊星歯車装置や電動モータが配置されている。これに対して、一点鎖線で示す領域(リングギヤR1の内周側)に一方向クラッチOWCを配置すると共に、その一方向クラッチOWCとオイルポンプ30とをオイルポンプシャフト32を介して連結させることで、駆動装置10と同様の構成となる。したがって、駆動装置10と駆動装置100とでそれぞれコスト的に安価な部品を利用することができ、例えばパワートレーンユニット全体のコストを低減することができる。
【0031】
上述のように、本実施例によれば、一方向クラッチOWCがリングギヤR1の内周側に配置され、オイルポンプ30がオイルポンプシャフト32を介して一方向クラッチOWCと動力伝達可能に連結されることで、オイルポンプ32と一方向クラッチOWCとが軸方向に異なる位置に配置され、オイルポンプ30の内径が、一方向クラッチOWCの外径よりも小さく設定される。このように構成されると、オイルポンプ30の内周側に一方向クラッチOWCが配置されないため、オイルポンプ30の内径が一方向クラッチOWCの外径よりも小さくすることが可能となる。そして、上記のように設定されることで、オイルポンプ30を径方向に小さくすることができる。また、従来では、オイルポンプ30の内周側に配置される一方向クラッチOWCの幅径(軸長)に基づいてオイルポンプ30の幅径(軸長)も長くなっていたが、一方向クラッチOWCの幅径(軸長)を考慮する必要がないので、オイルポンプ30を軸方向にも短くすることができる。したがって、オイルポンプ30を小型化することができるに伴い、駆動装置全体としても小型化および軽量化が可能となる。
【0032】
また、本実施例によれば、リングギヤR1の内周側に配置される一方向クラッチOWCと、オイルポンプ30との間に、遊星歯車装置12および電動モータ20が軸方向に介装されており、一方向クラッチOWCとオイルポンプ30とは、遊星歯車装置12および電動モータ20の内周部に配設されるオイルポンプシャフト32を介して動力伝達可能に連結されるものである。このようにすれば、車両後退時には、オイルポンプ30が駆動しないため、オイルポンプシャフト支持部33は無潤滑状態となるが、一方向クラッチOWCによってオイルポンプシャフト32が回転しないので、オイルポンプ支持部33の焼き付きが防止される。
【0033】
また、本実施例によれば、遊星歯車装置12を軸心から潤滑すると共に電動モータ20を軸心から冷却するために、オイルをその遊星歯車装置12および電動モータ20の回転中心部から放出するための潤滑・冷却用油路34がオイルポンプシャフト32に形成されるものである。このようにすれば、遊星歯車装置12の軸心側からオイルが遠心力によって放出されるため、遊星歯車装置12を潤滑することができる。また、電動モータ20の軸心側から冷却用のオイルを放出することができるため、電動モータ20を効果的に冷却することができる。
【0034】
また、本実施例によれば、オイルポンプシャフト32に形成されている潤滑・冷却用油路34がキャッチタンク36に接続されるものであっても構わない。このようにすれば、前進走行中にオイルポンプ30によって汲み上げられたオイルがキャッチタンク36に貯留され、後退走行時において、その貯留されたオイルによって一方向クラッチOWCやオイルポンプシャフト32の支持部33、遊星歯車装置12等が潤滑されることで、焼き付き性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施例によれば、駆動装置10は、動力源が電動モータ20で構成された電気自動車用の駆動装置10である。このようにすれば、電動モー20タを動力源とする電気自動車が好適に構成される。
【0036】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0038】
例えば、前述の実施例では、駆動源として電動モータ20が用いられているが、電動モータ20以外にも例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関であっても構わない。
【0039】
また、前述の実施例では、遊星歯車装置12は、シングルピニオン型の遊星歯車で構成されるが、ダブルピニオン型の遊星歯車で構成されるものであっても構わない。なお、ダブルピニオン型の遊星歯車であっても、サンギヤに動力源が連結され、リングギヤにオイルポンプがオイルポンプシャフトを介して連結され、キャリヤが固定される構成となる。
【0040】
また、前述の実施例では、キャッチタンク36には、オイルポンプ30から吐出されるオイルが貯留されるとしたが、キャッチタンク36は、さらに例えばリングギヤR1からカウンタギヤ対14等から掻き上げられたオイルを貯留するために使用されても構わない。
【0041】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
10、100:車両の駆動装置(駆動装置)
11:一体回転部材(出力回転部材)
12:遊星歯車装置
20:電動モータ(動力源)
30:オイルポンプ
32:オイルポンプシャフト
OWC:一方向クラッチ
S1:サンギヤ
CA1:キャリヤ
R1:リングギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの動力を遊星歯車装置を介して出力側へ伝達する車両の駆動装置であって、
前記遊星歯車装置は、
サンギヤが前記動力源に連結され、
キャリヤが回転不能に固定され、
リングギヤが出力回転部材に連結されると共に、一方向クラッチを介してオイルポンプに連結され、
前記一方向クラッチが前記リングギヤの内周側に配置され、前記オイルポンプがオイルポンプシャフトを介して該一方向クラッチと動力伝達可能に連結されることで、該オイルポンプと該一方向クラッチとが軸方向に異なる位置に配置され、
該オイルポンプの内径が、該一方向クラッチの外径よりも小さく設定されることを特徴とする車両の駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−270789(P2010−270789A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121150(P2009−121150)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】