説明

車両カウルパネルの衝撃吸収構造

【課題】部品点数の増加ヤデザインへの制約を招くことなく、最も衝撃が高くなる方向からの衝突に対しても衝撃を効果的に吸収することができる車両パネル部の衝撃吸収構造を提供すること。
【解決手段】車両前部のフロントフード2を開閉可能に軸支するフードヒンジ19を覆うカウル部3の衝撃吸収構造として、前記カウル部3の意匠面を構成する金属製カウルパネル7の車幅方向両端をこれに固着されたカウルブラケット15を介してフェンダパネル4に固定するとともに、前記カウルブラケット15に前記フードヒンジ19の回動中心軸に平行な面を備えたフランジ15cを設け、該フランジ15cを前記フードヒンジ19の直上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部のフロントフードを開閉可能に軸支するフードヒンジを覆うカウル部の衝撃吸収構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントガラス下端からフロントフードの後端までの間にはカウル部が配置されており、該カウル部の意匠面を構成するカウルパネルには、歩行者が衝突したときの衝撃を吸収して歩行者を保護するために高い衝撃吸収能力が求められる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、フロントフード開閉用のフードヒンジに可撓部を設けるとともに、フードヒンジのカシメ部をフェンダ内に配置することによって、衝撃テストの条件下において有効な衝撃吸収能を発揮させるようにした構造が提案されている。
【特許文献1】特開2001−354164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において提案された構造では、所定の衝撃テストの条件下においては良好な結果が得られるものの、条件から外れた位置に衝撃が加わった場合には、衝撃を効果的に吸収することができないという問題があった。
【0005】
従来、フロントフードの開き角度の確保やフロントフードとカウルパネルの見切りデザイン位置の自由度を考慮すると、ヒフードンジを車両内側の前側にレイアウトしておきたいが、歩行者保護機能を確保する必要がある昨今、フードヒンジはできるだけ車両後方の外側にレイアウトされており、そのためにデザインが制限されている。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数の増加やデザインへの制約を招くことなく、最も衝撃が高くなる方向からの衝突に対しても衝撃を効果的に吸収することができる車両パネル部の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両前部のフロントフードを開閉可能に軸支するフードヒンジを覆うカウル部の衝撃吸収構造として、前記カウル部の意匠面を構成するカウルパネルの車幅方向両端をこれに固着されたカウルブラケットを介してフェンダパネルに固定するとともに、前記カウルブラケットに前記フードヒンジの回動中心軸に平行な面を備えたフランジを設け、該フランジを前記フードヒンジの直上に配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記カウルブラケットは、前記カウルパネルを前記フェンダパネルに対して車幅方向と上下方向及び車両前後方向に位置規制して固定するための固定部を備え、該固定部を設けた面に連続して前記フランジが形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記カウルパネルと前記カウルブラケットを金属製としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、カウルパネルの幅方向両端に固着されたカウルブラケットにフランジを設け、このフランジをフードヒンジの直上に配置したため、最も衝撃が高くなるフードヒンジの真上からの衝突に対してはカウルブラケットのフランジがフードヒンジの剛性の高いカシメ部に接触して変形するため、このフランジの変形によって衝撃エネルギーが吸収され、衝撃値が下げられて歩行者の頭部等が衝撃から有効に保護される。
【0011】
又、カウルブラケットにフランジを設けることによって、カウルブラケットの1部品にカウルパネルの固定と衝撃吸収機能を兼備させることができ、部品点数の削減や組み付けの容易化を図ることができる。
【0012】
更に、カウルブラケットのフランジをフードヒンジの直上に配置することによって、フードヒンジをできるだけ車両前側の内側且つ上方にレイアウトすることができるため、デザインへの制約を伴うことなく、歩行者保護機能を満足させることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、カウルブラケットはフェンダパネルに固定され、このフェンダパネルに見切り幅を合わせるために高い位置精度で配置されているフロントフードにフードヒンジが固定されているため、互いの位置精度が高められ、カウルブラケットのフランジをフードヒンジの回動中心軸(カシメ部)の直上に高精度に配置することができ、フードヒンジの真上からの衝突に対してフランジがフードヒンジのカシメ部に確実に接触して変形し、このフランジの変形によって衝撃エネルギーが吸収されて歩行者が保護される。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、カウルパネルとカウルブラケットを金属製としたため、これらを適度な抵抗を与えながら変形させることにより、衝撃吸収効果が高められる。又、レトロ調の外観が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は車両カウル部の部分斜視図、図2は図1のA−A線拡大断面図、図3はカウル部の樹脂製ガーニッシュ部分の斜視図、図4は樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図、図5は同樹脂製カウルカバーの右半分を示す部分斜視図、図6は金属製カウルカバー左端部のフェンダパネルへの固定構造を示す部分斜視図、図7は図6のB−B線拡大断面図、図8は図6のC−C線拡大断面図、図9及び図10は図6のD−D線断面図、図11はカウルブラケットのフェンダパネルへの固定構造を示す分解斜視図、図12はカウル部の組付構造を示す分解斜視図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、車両前部のフロントガラス1の下端とその前方に位置するフロントフード2の後端との間にはカウル部3が車幅方向に沿って設けられている。そして、カウル部3の左右両端部には金属製のフェンダパネル4が隣接しており、該フェンダパネル4とカウル部3との見切り線に沿った車両後方には左右一対のフロントピラー5を含むサイドボディ6が繋がっている。
【0018】
ところで、本実施の形態においては、図2に示すように、カウル部3は、フロントフード2に連続する意匠面を構成する金属製カウルパネル7とその下方に配された樹脂製カウルカバー8とで2層構造として構成されている。ここで、金属製カウルパネル7は、フロントフード2と同じ質感を有する金属で構成されており、鋼板をプレス成形することによって得られ、これには車体色と同色の塗装が施されている。
【0019】
又、図3及び図12に示すように、金属製カウルパネル7の前縁の幅方向中央には横方向に細長い切欠き7aが形成されており、この切欠き7aには樹脂製ガーニッシュ9が取り付けられている。この樹脂製ガーニッシュ9は樹脂にて一体成形されており、図3に詳細に示すように、これには横方向に長いスリット状の複数の外気導入口9aが形成されている。
【0020】
他方、前記樹脂製カウルカバー8は、樹脂の一体成形品であって、その長手方向(横方向)の長さは金属製カウルパネル7のそれよりも若干短く、幅方向(前後方向)の長さ(幅寸法)は金属製カウルパネル7のそれよりも若干長く(幅広に)設定されている。そして、この樹脂製カウルカバー8の幅方向片側半分(左半分)には、図4に示すように、前後方向に長いスリット状の複数の外気導入口8aが形成される一方、該外気導入口8aが形成されていない図5に示す他側の片側半分(右半分)は、不図示のワイパーモジュールを上方から覆っている。尚、図2において、10はウォッシャノズルに洗浄液を供給するためのウォッシャホースである。
【0021】
又、図2に示すように、樹脂製カウルカバー8の前端部上にはリブ状の突起8bが全幅に亘って斜め上方に一体に突設されており、この突起8bにはゴム等の弾性材から成るシール部材11が被着されており、このシール部材11が前記フロントフード2の後端裏面に当接してエンジンルーム12をシールしている。ここで、樹脂製カウルカバー8の突起8bの基端部には、肉厚が部分的に薄い脆弱部8cが形成されており、この脆弱部8cが当該樹脂製カウルカバー8の割れの起点となる。
【0022】
次に、カウル部3を構成する前記金属製カウルパネル7と樹脂製カウルカバー8及び樹脂製ガーニッシュ9の組付構造を図12に基づいて説明する。
【0023】
先ず、樹脂製カウルカバー8の複数箇所(本実施の形態では4箇所)を車体側のカウルフロントパネル13にクリップ14によって取り付け、又、樹脂製カウルカバー8に部組みされたクリップ(本実施の形態では3箇所)を車体側のカウルトップパネル23に取り付け、その上に金属製カウルパネル7を取り付け、この金属製カウルパネル7に樹脂製ガーニッシュ9を取り付ける。
【0024】
ここで、上記金属製カウルパネル7の左右両端下面には別体のカウルブラケット15がそれぞれ固着されており、金属製カウルパネル7は、その左右両端の計4箇所が図6〜図8及び図11に示すフェンダパネル4内側の1段下がった受け面4aに2種類のクリップ16,17によって取り付けられ、他の2箇所が樹脂製カウルカバー8にクリップ14によって取り付けられ、更に別の2箇所がスクリュー18による締め付けによって樹脂製カウルカバー8に取り付けられる。
【0025】
ところで、前述のように金属製カウルパネル7に車体色と同色の塗装を施すと、該金属製カウルパネル7に隣接するフロントフード2との隙間が目立ち易い。特に、金属製カウルパネル7の左右両端部はフロントフード2とフェンダパネル4及びフロントピラー5の3部品によって囲まれた3方向に見切りが生じるため、これら全ての見切りを一定幅に保つことが要求され、一層厳しい見切り幅の規制が必要となる。
【0026】
そこで、本実施の形態では、前述のように金属製カウルパネル7の車幅方向両端(左右端)に別体のカウルブラケット15を固着し、該カウルブラケット15を介して金属製カウルパネル7の左右両端をフェンダパネル4の受け面4aに対して車両前後方向と左右方向及び上下方向に位置規制した状態で嵌合固定するようにしている。以下に金属製カウルブラケット7の左右両端の固定構造の詳細を図6〜図8及び図11に基づいて説明する。尚、図6〜図8及び図11には金属製カウルパネル7の幅方向一端(左端)の取付構造のみを示すが、他端(右端)の取付構造も同様であるため、これについての図示は省略する。
【0027】
本実施の形態においては、フェンダパネル4に形成された前記受け面4aのフロントフード2に近い側(車両前方側)に金属製カウルパネル7の車幅方向と上下方向の位置規制が可能な固定部を設け、フロントピラー5に近い側(車両後方側)に金属製カウルパネル7の車両前後方向と上下方向の位置規制が可能な固定部を設けている。
【0028】
具体的には、図11に示すように、左右一対のフェンダパネル4の受け面4aのフロントフード2に近い側(車両前方側)には車両前後方向に長い矩形の嵌合孔4bが形成され、その後方のフロントピラー5に近い側には円孔4cがそれぞれ形成されている。
【0029】
又、左右一対の前記カウルブラケット15は、板金のプレス成形品であって、フロントフード2に近い側(車両前方側)には矩形の嵌合孔を備えた片状に成形された係止片15aが上下方向に垂直に形成され、その後方の水平に折り曲げられた部分にはU字状に切り欠かれた嵌合溝15bと矩形状のフランジ15cが形成されている。
【0030】
ここで、前側の前記クリップ16は、図7及び図11に示すように、長手方向がフェンダパネル4と金属製カウルパネル7との見切り方向(車両前後方向)に沿った長方形の筒状形状に成形されており、これはフェンダパネル4の受け面4aに形成された前記嵌合孔4bに上方から垂直に差し込まれて嵌合される。
【0031】
而して、金属製カウルブパネル7は、図7及び図11に示すように、これの左右両端に固着されたカウルブラケット15に形成された前記係止片15aをクリップ16の長方形の溝16aに上方から垂直に差し込み、クリップ16の爪とカウルブラケット15の矩形孔が嵌合することによって、車幅方向と上下方向が位置規制された状態でフェンダパネル4の受け面4aに固定される。そして、図7に示すように係止片15aをクリップ16の一番奥まで差し込めば、金属製カウルカバー7の左右両端が浮き上がることなく確実に固定される。
【0032】
以上のように、カウルブラケット15の係止片15aをクリップ16の溝16aに垂直に差し込むことによって、金属製カウルパネル7が車幅方向と上下方向の位置が規制されながらフェンダパネル4の受け面4aに固定されるため、該金属製カウルパネル7とフェンダパネル4の見切り精度が高められ、両者間の見切り幅が一定に保たれるとともに、組み付け時の金属製カウルパネル7のフェンダパネル4との干渉が防がれ、組付作業性が高められるとともに、フェンダパネル4の傷付きが防がれる。
【0033】
又、金属製カウルパネル7を固定する前にクリップ16がフェンダパネル4側に取り付けられているため、金属製カウルパネル7がフェンダパネル4の動きに合わせて車幅方向と上下方向に動き、フェンダパネル4の調整に合わせて金属製カウルパネル7とフェンダパネル4の見切りが自動的に決まる。このような嵌合構造をフェンダパネル4と板金製カウルパネル7との見切り上の車両前後方向における前方側(フロントフード2側)に設けることによって、フロントフード2とフェンダパネル4の比較的長い範囲に亘って見切りが延在する箇所において高い見切り幅精度を確保することができる。
【0034】
他方、前記クリップ17は、差込みピンタイプのクリップのものであって、図8に示すように、フェンダパネル4の受け面4aに形成された円孔4cに上方から差し込まれる差込み部17aと、円孔4cよりも大径の頭部17bとを備えている。
【0035】
而して、金属製カウルパネル7の左右両端の車両後方側のフェンダパネル4への固定に際しては、カウルブラケット15に形成された嵌合溝15bにクリップ17の頭部17bを差し込んで該クリップ17をカウルブラケット15側に予め取り付けておく。そして、このクリップ17の差込み部17aをフェンダパネル4の受け面4aに形成された円孔4cに上方から垂直に差し込むことによって、金属製カウルパネル7の左右両端の車両後方側がフェンダパネル4に固定される。
【0036】
ここで、カウルブラケット15の嵌合溝15bは車幅方向に形成されているため、金属製カウルパネル7を車両前後方向に高い精度で規制してフェンダパネル4に固定することができる。この結果、金属製カウルパネル7をフェンダパネル4に合わせて位置決めすることができるとともに、フロントピラー5(サイドボディ6)と金属製カウルパネル7との見切りもフェンダパネル4と一致させることができる。特に、この範囲は短い距離ではあるが、形状の変化が激しい複雑な部分であるため、金属製カウルパネル7の左右両端のクリップ17による1点での固定は有効である。尚、カウルブラケット15に形成された嵌合溝15bは車幅方向に形成されているため、金属製カウルパネル7左右両端は、その車両後方側が車幅方向には規制されないが、前側のクリップ16によって車両前後方向の比較的長い範囲で車幅方向の規制がなされるため、該金属製カウルパネル7の車幅方向の位置ズレは発生しない。
【0037】
以上のようにして金属製カウルパネル7の左右両端の計4箇所がフェンダパネル4内側の1段下がった受け面4aに2種類のクリップ16,17によって取り付けられ、他の2箇所が樹脂製カウルカバー8にクリップ14によって取り付けられ、更に別の2箇所がスクリュー18による締め付けによって樹脂製カウルカバー8に取り付けられると、最後に樹脂製ガーニッシュ9の2箇所を不図示のクリップによって金属製カウルパネル7に取り付ければ、カウル部3の組み付けが完了する。
【0038】
次に、本発明の要旨を構成するカウル部3の衝撃吸収構造を図6、図9及び図10に基づいて説明する。
【0039】
前記フロントフード2は、その後端部の左右が左右一対のフードヒンジ19によって上下に開閉可能に軸支されている。ここで、各フードヒンジ19は、金属製カウルパネル7の左右両端下面に固着された前記カウルブラケット15の下方に配置されており(図には一方のみ図示)、車体20側に固定されたメール部19Aとフロントフード2に固定されたヒメール部19Bとをピン21のカシメによって枢着することによって構成されている。
【0040】
而して、フロントフード2は、フードヒンジ19のヒメール19Bと共にピン21の回動中心軸を中心として上下に回動して開閉されるが、ピン21は、その中心軸が車幅方向に向くよう配置されている。尚、図9に示すように、フードヒンジ19のヒメール19B側の下方は樹脂製のヒンジカバー22によって覆われている。
【0041】
他方、左右一対の各カウルブラケット15には、前述のようにフランジ15cが形成されているが、このフランジ15cは、フードヒンジの回動中心軸(ピン21の中心軸)に平行な面を備えており、フードヒンジ19のカシメ部の直上に配置されている。又、カウルブラケット15には、前述のように2種類のクリップ16,17の差し込みによって金属製カウルパネル7を車幅方向と上下方向及び車両前後方向に位置規制してフェンダパネル4に固定するための固定部が設けられているが、フランジ15cは、カウルブラケット15の固定部を設けた面に連続して形成されている。
【0042】
以上の衝撃吸収構造において、例えば歩行者の衝突によって金属製カウルパネル7にフードヒンジ19に対して斜め方向から衝撃が加わった場合には、フードヒンジ19が左右何れかの方向に倒れるために衝撃が吸収されるが、図10に示すように、衝撃がフードヒンジ19のカシメ部に真上から加わった場合には衝撃が最も高く、フードヒンジ19が倒れることがないため、従来の構造では高い衝撃を吸収することができなかった。
【0043】
然るに、本実施の形態では、カウルブラケット15に形成されたフランジ15cをフードヒンジ19の直上に配置したため、最も衝撃が高くなるフードヒンジ19の真上からの衝突に対しては、図10に示すように、フランジ15cがフードヒンジ19の剛性の高いカシメ部に接触して押し上げられながら折り畳まれるように変形するため、このフランジ15cの変形によって衝撃エネルギーが吸収され、衝撃値が下げられて歩行者の頭部等が衝撃から有効に保護される。特に、本実施の形態では、カウルブラケット15を金属製としたため、衝撃吸収効果が高められる。
【0044】
又、本実施の形態では、上述のようにカウルブラケット15にフランジ15cを一体に設けることによって、カウルブラケット15の1部品に金属製カウルパネル7の固定と衝撃吸収機能を兼備させることができるため、部品点数の削減や組み付けの容易化を図ることができる。
【0045】
更に、カウルブラケット15のフランジ15cをフードヒンジ19の直上に配置することによって、フードヒンジ19をできるだけ車両前側の内側且つ上方にレイアウトすることができるため、デザインへの制約を伴うことなく、歩行者保護機能を満足させることができる。
【0046】
又、本実施の形態では、カウルブラケット15はフェンダパネル4に固定され、このフェンダパネル4に見切り幅を合わせるために高い位置精度で配置されているフロントフード2にフードヒンジ19が固定されているため、互いの位置精度が高められ、カウルブラケット15のフランジ15cをフードヒンジ19の回動中心軸(カシメ部)の直上に高精度に配置することができ、フードヒンジ19の真上からの衝突に対してフランジ15cがフードヒンジ19のカシメ部に確実に接触して変形し、このフランジ15cの変形によって衝撃エネルギーが吸収されて歩行者が保護される。
【0047】
その他、本実施の形態では、カウル部3の意匠面を金属製カウルパネル7で構成したため、車両の前部から側部にかけて、フロントガラス1を除く殆どの意匠面が塗装を施した金属パネルで構成されることとなり、樹脂の成形技術が未だ余り進歩していなかった時代の車と同様な質感を得て車両にレトロな雰囲気の外観を与えることができる。
【0048】
又、金属製カウルパネル7を車体色と同色とすることによって、該金属製カウルパネル7の塗装を車体の塗装と同時に行うことができるため、塗装コストが大幅に削減されるとともに、金属製カウルパネル7と車体との色合わせが完全に一致するために車両に高い外観性が得られる。
【0049】
更に又、本実施の形態では、図4に示すように樹脂製カウルカバー8の幅方向片側半分(左半分)に外気導入口8aを形成し、図5に示すように樹脂製カウルカバー8の外気導入口8aが形成されていない片側半分(右半分)で不図示のワイパーモジュールを覆うようにしたため、外気導入口8aによって必要な外気導入量を確保しつつ、ワイパーモジュールの被水を防ぐことができる。そして、樹脂製カウルカバー8が意匠面を構成する金属製カウルパネル7の下側に配置されるため、該樹脂製カウルカバー8に外気導入口8aを意匠に影響を与えることなく比較的自由に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】車両カウル部の部分斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】カウル部の樹脂製ガーニッシュ部分の斜視図である。
【図4】樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図である。
【図5】樹脂製カウルカバーの右半分を示す部分斜視図である。
【図6】樹脂製カウルカバーの左半分を示す部分斜視図である。
【図7】図6のB−B線拡大断面図である。
【図8】図6のC−C線拡大断面図である。
【図9】図6のD−D線断面図である。
【図10】図6のD−D線断面図(衝突時の状態を示す図)である。
【図11】カウルブラケットのフェンダパネルへの固定構造を示す分解斜視図である。
【図12】カウル部の組付構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 フロントガラス
2 フロントフード
3 カウル部
4 フェンダパネル
4a フェンダパネルの受け面
4b フェンダパネルの嵌合孔
4c フェンダパネルの円孔
5 フロントピラー
6 サイドボディ
7 金属製カウルパネル
7a 金属製カウルパネルの切欠き
8 樹脂製カウルカバー
8a 樹脂製カウルカバーの外気導入口
8b 樹脂製カウルカバーの突起
8c 樹脂製カウルカバーの脆弱部
9 樹脂製ガーニッシュ
9a 樹脂製ガーニッシュの外気導入口
10 ウォッシャホース
11 シール部材
12 エンジンルーム
13 車体側カウルフロントパネル
14 クリップ
15 カウルブラケット
15a カウルブラケットの係止片
15b カウルブラケットの嵌合溝
15c カウルブラケットのフランジ
16 クリップ
16a クリップの溝
17 クリップ
17a クリップの差込み部
17b クリップの頭部
18 スクリュー
19 フードヒンジ
19A フードヒンジのメール部
19B フードヒンジのヒメール部
20 車体
21 ピン
22 ヒンジカバー
23 車体側カウルトップパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のフロントフードを開閉可能に軸支するフードヒンジを覆うカウル部の衝撃吸収構造であって、
前記カウル部の意匠面を構成するカウルパネルの車幅方向両端をこれに固着されたカウルブラケットを介してフェンダパネルに固定するとともに、前記カウルブラケットに前記フードヒンジの回動中心軸に平行な面を備えたフランジを設け、該フランジを前記フードヒンジの直上に配置したことを特徴とする車両カウル部の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記カウルブラケットは、前記カウルパネルを前記フェンダパネルに対して車幅方向と上下方向及び車両前後方向に位置規制して固定するための固定部を備え、該固定部を設けた面に連続して前記フランジが形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両カウル部の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記カウルパネルと前記カウルブラケットを金属製としたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両カウル部の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−255798(P2009−255798A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108565(P2008−108565)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】