説明

車両シート用のロータリダンパ

【課題】背もたれ部の回転を快適に行わせることができる車両シート用のロータリダンパを提供すること。
【解決手段】車両シート用のロータリダンパ1は、粘性流体3を収容する収容体7と、収容体7の内部2に配されていると共に背もたれ部6に固定されるようになった回転体8と、一端部13で座部5に連結される一方、他端部14で背もたれ部6に連結される弾性手段15と、一端部16で座部5に連結される一方、他端部17で背もたれ部6に連結される弾性手段18と、R1方向の収容体3に対する回転体8の相対的回転では、大きな流動抵抗を、R2方向の収容体3に対する回転体8の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々粘性流体3に生じさせるベーン手段20とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を収容する収容体の内部にベーンを有した回転体を回転自在に収容して、粘性流体により回転体の回転に対して制動を与え、これにより座部に回転自在に連結されて折り畳み自在とされた背もたれに適度な回転制動を与える車両シート用のロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
隙間を通過する粘性流体により、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を与える一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を与えるようにしたこの種の一方向ロータリダンパは、特許文献1等によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−188636号公報
【特許文献2】特開平9−42350号公報
【特許文献3】特開平9−329173号公報
【特許文献4】特開平8−109940号公報
【特許文献5】特開平8−296687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車用等の車両シートでは、背もたれ部を初期回転位置から折畳み回転位置に、またその逆に回転させる場合に、背もたれ部の回転位置に応じた背もたれ部の自重による回転力(回転モーメント)が生じることになり、特に、背もたれ部を折畳み回転位置から初期回転位置に向かって回転させる際には、大きな手動力を必要とする。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、背もたれ部の回転を快適に行わせることができる車両シート用のロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両シート用のロータリダンパは、粘性流体を内部に収容すると共に車両用シートの座部及び当該座部に初期回転位置と折畳み回転位置との間で回転できるように回転自在に連結された背もたれ部のうちの一方に固定される収容体と、この収容体との間で粘性流体を収容する空間を形成するように収容体の内部に回転自在に配されていると共に車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固定される回転体と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の第一の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する第一の弾性手段と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置と折畳み回転位置との間の第二の所定回転位置から折畳み回転位置まで背もたれ部に初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する第二の弾性手段と、背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々粘性流体に生じさせるべく、収容体と回転体との間の粘性流体を収容する空間に配されたベーン手段とを具備している。
【0007】
本発明による車両シート用のロータリダンパによれば、第一の弾性手段が収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の第一の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与するようになっており、第二の弾性手段が収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置と折畳み回転位置との間の第二の所定回転位置から折畳み回転位置まで背もたれ部に初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与するようになっており、ベーン手段が背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるようになっているために、背もたれ部を初期回転位置から第一の所定回転位置まで回転させる際には、第一及び第二の弾性手段の補助により背もたれ部を容易に回転さることができ、背もたれ部を第二の所定回転位置から折畳み回転位置まで回転させる際には、背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かうに連れて漸次増加する回転力による急激な背もたれ部の回転を第二の弾性手段により防止できると共に、背もたれ部を初期回転位置から折畳み回転位置まで回転させる際には、ベーン手段により粘性流体に大きな流動抵抗を生じさせることができる結果、背もたれ部の折畳み回転位置に向かう方向の回転に適度の抵抗を与えることができて折畳み回転位置での背もたれ部の激突を避けることができる一方、背もたれ部を手動により折畳み回転位置から初期回転位置まで回転させる際には、第二の弾性手段による補助に加えて、ベーン手段により生じる粘性流体の流動抵抗を低下させることができる結果、背もたれ部を手動により折畳み回転位置から初期回転位置まで容易に回転させることができる。
【0008】
第一の弾性手段は、好ましい例では、背もたれ部の座部に対する初期回転位置から第一の所定回転位置までの折畳み回転位置に向かう方向の回転では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を背もたれ部に付与して粘性流体の流動抵抗に抗して座部に対して背もたれ部を回転させるようになっている一方、第一の所定回転位置と折畳み回転位置との間の背もたれ部の座部に対する回転位置では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の背もたれ部への付与を解除するようになっている。
【0009】
収容体は、当該収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する第一の所定回転位置から背もたれ部の座部に対する折畳み回転位置までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所を有しており、回転体は、車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固着された回転軸を有しており、第一の弾性手段は、収容体のスリット又は凹所に配されて収容体に係合する一端部と、回転体の回転軸に嵌合されて係合する他端部とを有しているとよい。
【0010】
他の好ましい例では、第一の弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されているコイルばねを具備しており、第二の弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されている渦巻きばねを具備している。
【0011】
第二の弾性手段は、背もたれ部の座部に対する第二の所定回転位置から折畳み回転位置までにおいて、背もたれ部の自重に起因する第二の所定回転位置から折畳み回転位置に向かうに連れて変化する折畳み回転位置に向かう方向の回転力に抗する弾性的回転力を背もたれ部の座部に対する回転に付与するようになっていてもよい。
【0012】
本発明による車両シート用のロータリダンパにおいて、ベーン手段は、好ましくは、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間を二室に区画すると共に回転体の外周面に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーンと、この一対の弾性的可撓ベーンにより区画された二室のうちの少なくとも一方の室を更に二室に区画すると共に収容体の内周面に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとを有している。
【0013】
本ベーン手段において、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、一端部では回転体の外周面に連接すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と反対方向に向かって凸となった湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体の外周面に連接すると共に凸面に沿って延びている湾曲状の凹面とを具備しており、凸面は、その他端部側で、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面となっており、この円弧状凸面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、一対の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、初期回転位置から第一及び第二の所定回転位置を介する折畳み回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において他方の室から一方の室に狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置から第一及び第二の所定回転位置を介する初期回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において一方の室から他方の室に広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっていてもよい。
【0014】
斯かる一対の弾性的可撓ベーンを有したベーン手段であると、背もたれ部が第一の弾性手段の弾性的回転力により初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向に回転されて、一方の室を拡大すると共に他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性的可撓ベーンの凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体の内周面に近づいて一対の楔空間を縮小するように弾性的可撓ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は縮小された一対の楔空間を通って他方の室から一方の室に流れて、この縮小された一対の楔空間を通過する粘性流体の流動抵抗による大きな制動が回転体の回転に与えられて、背もたれ部は同方向に緩慢に第一及び第二の所定回転位置を介して折畳み回転位置まで回転される一方、背もたれ部が手動及び第二の弾性手段の弾性的回転力により折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向に回転されて、一方の室を縮小すると共に他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される際には、弾性的可撓ベーンの湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体の内周面から離れて一対の楔空間を広げるように弾性的可撓ベーンが弾性変形される結果、粘性流体は広げられた一対の楔空間を通って一方の室から他方の室に流れて、この広げられた一対の楔空間を通過する粘性流体の比較的小さな流動抵抗による小さな制動が回転体の回転に与えられるために、背もたれ部は、小さな手動力により第二の所定回転位置を介して第一の所定回転位置まで回転され、第一の所定回転位置から初期回転位置までは第一及び第二の弾性手段による徐々に増大する弾性的制動を手動力による回転に受けるようになる。
【0015】
そして、ベーン手段により一方向ダンパとして機能する本発明によるロータリダンパによれば、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体が回転体の回転において一対の楔空間を通過するために、例えば、低温下で常温(20℃)時よりも粘度が増加した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力増大により弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体の内周面から離れるように弾性的可撓ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が広げられる結果、粘性流体自体の粘度増加と一対の楔空間の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時よりも粘度が低下した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力減少により弾性的可撓ベーンの他端部側が収容体の内周面に近づくように弾性的可撓ベーンが弾性変形されて一対の楔空間が狭められる結果、粘性流体自体の粘度低下と一対の楔空間の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる。
【0016】
好ましい例では、凹面は、凸面の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びていており、円弧状凸面は、収容体の円筒状の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
【0017】
本発明において、他の弾性的可撓ベーンは、収容体の内周面に一体的に形成された弾性的に可撓な基部と、この基部に一体的に形成されていると共に回転体の外周面に対面した円弧状面を有した弾性的に可撓性な舌部とを有していてもよい。
【0018】
本発明に係る粘性流体としては、シリコーンオイルを好ましい例として挙げることができるが、その他の粘性流体であってもよく、また、収容体は、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、回転体もまた、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、各弾性的可撓ベーンは、回転体又は収容体とは別体にして回転体又は収容体に溶接、嵌着、接着等により固着してもよいが、好ましくは回転体又は収容体と一体形成されており、回転体又は収容体と弾性的可撓ベーンとが一体形成される場合には、回転体又は収容体は、弾性的可撓ベーンに適度な弾性が付与される合成樹脂素材が用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、背もたれ部の回転を快適に行わせることができる車両シート用のロータリダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい一例の図2のI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図1に示す例の図4のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図1に示す例の図4のIII−III線矢視断面説明図である。
【図4】図1に示す例の正面図である。
【図5】図1に示す例の背面図である。
【図6】図1に示す例の斜視図である。
【図7】図1に示す例の一部拡大説明図である。
【図8】図1に示す例に回転軸を装着した説明図である。
【図9】図8に示す回転軸の斜視図である。
【図10】図1に示す例を車両シートに装着した例の説明図である。
【図11】図1に示す例の動作説明図である。
【図12】図1に示す例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0022】
図1から図10において、本例の車両シート用のロータリダンパ1は、内部2にシリコーンオイル等からなって温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体3を収容すると共に車両用シート4の座部5及び座部5に初期回転位置P0と折畳み回転位置P3との間で回転できるように回転軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転自在に連結された背もたれ部6のうちの一方、本例では座部5に固定されるようになった合成樹脂製の収容体7と、収容体7の内部2にR1及びR2方向に回転自在に配されていると共に車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの他方、本例では背もたれ部6に固定されるようになった合成樹脂製の回転体8と、一端部13で車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの一方、本例では座部5に連結される一方、他端部14で車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの他方、本例では背もたれ部6に連結されると共に収容体3に対する回転体8の回転軸心Oを中心とした背もたれ部6の座部5に対する初期回転位置P0から所定回転位置P2まで背もたれ部6に折畳み回転位置P3に向かう方向であるR1方向の弾性的回転力を付与する弾性手段15と、一端部16で車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの一方である座部5に連結される一方、他端部17で車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの他方である背もたれ部6に連結されると共に収容体7に対する回転体8の回転軸心Oを中心とした背もたれ部6の座部5に対する初期回転位置P0と折畳み回転位置P3との間の所定回転位置P1から折畳み回転位置P3まで背もたれ部6に初期回転位置P0に向かう方向であるR2方向の弾性的回転力を付与する弾性手段18と、背もたれ部6の初期回転位置P0から折畳み回転位置P3に向かう方向であるR1方向の収容体3に対する回転体8の相対的回転では、大きな流動抵抗を、背もたれ部6の折畳み回転位置P3から初期回転位置P0に向かう方向であるR2方向の収容体3に対する回転体8の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々粘性流体3に生じさせるべく、収容体3と回転体8との間の円環状の空間19に配されたベーン手段20とを具備している。
【0023】
半円筒状の内周面25及び26を含む円筒状の内周面27を有している収容体7は、筒体28と、筒体28の軸心方向であるA方向の一方の環状の端部29に径方向内方に向かって一体的に形成されていると共に貫通孔30を規定した内周面31を有した鍔部32と、筒体28のA方向の他方の環状の端部33に複数のねじ34により固着された蓋体35とを具備している。
【0024】
鍔部32は、A方向の一方の側面40で内部2のA方向の一方を規定しており、蓋体35は、中央に貫通孔41を有していると共にA方向の一方の側面42で内部2のA方向の他方を規定した楕円形の板体からなる蓋体本体43と、蓋体本体43の側面42に一体的にA方向に突出して形成された円環状の小径の突起44と、側面42に一体的にA方向に突出して且つ突起44と同心に形成されていると共に突起44よりも大径の突起45とを具備しており、蓋体本体43は、収容体7に対する回転体8の回転軸心Oを中心とした背もたれ部6の座部5に対する所定回転位置P2から背もたれ部6の座部5に対する折畳み回転位置P3までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所、本例では回転軸心Oを中心として円弧状に伸びたスリット46を有していると共に貫通孔47を通ったねじ48により座部5に固定されており、収容体7は、斯かる蓋体本体43を介して座部5に固定されている。
【0025】
収容体7との間で粘性流体3を収容する空間19を形成すると共に円筒状の外周面51及び円筒状の内周面52を有する中空の回転体8は、A方向の円環状の各端部53及び54で収容体7の鍔部32の内周面31と突起44の外周面とにR1及びR2方向に回転自在となるように支持されており、回転体8の中空部55を規定する内周面52は、中空部55のA方向の一方の開口端側に凹凸(セレーション)56を有しており、回転体8の凹凸56には回転軸61の一端部62側の凹凸(セレーション)63が嵌合しており、回転軸61は、その他端部側で車両用シートの座部5及び背もたれ部6のうちの他方、本例では背もたれ部6に固着されており、回転軸61を介して、より詳細には、凹凸56及び凹凸56に嵌合する回転軸61の凹凸63を介して背もたれ部6に連結されている回転体8は、回転軸61のR1及びR2方向の回転、延いては背もたれ部6のR1及びR2方向の回転で同方向に回転されるようになって、こうして、回転体8は、背もたれ部6に固定されている。
【0026】
回転軸61は、凹凸63を外周面に有した一端部62側の大径部66と、凹凸63の部位で大径部66に形成された切り欠きとしての半円筒状の溝67と、大径部66と一体な一端部62側の小径部68と、小径部68に形成されたスリット69とを具備しており、スリット69により小径部68の先端部70は、二股状になっている。
【0027】
弾性手段15は、一端部13がスリット46に配されて収容体7の蓋体本体43に係合すると共に他端部14が回転軸61の一端部62に形成された溝67に挿入されて当該回転軸61の一端部に嵌合されて係合する一方、一端部13及び他端部14間で回転軸61の小径部68を囲繞して中空部55に配されたコイルばね75を具備しており、こうして、弾性手段15は、収容体7のスリット46に配されて収容体7に係合する一端部13と、車両用シート4の座部5及び背もたれ部6のうちの他方である背もたれ部6に固着された回転軸61に嵌合されて係合する他端部14とを有しており、コイルばね75は、一端部13で収容体7及び回転体8のうちの一方である収容体7に連結されていると共に他端部14で収容体7及び回転体8うちの他方である回転体8に回転軸61を介して連結されている。
【0028】
コイルばね75は、背もたれ部6が初期回転位置P0に回転される場合には、一端部13がスリット46の一端部76において底部77に接触して一端部13のR2方向の回転が阻止されて背もたれ部6をR1方向に回転させる最大の弾性的回転力としての捻り弾性力を蓄えるようになっており、背もたれ部6が所定回転位置P2に回転される場合には、背もたれ部6をR1方向に回転させる捻り弾性力を生じないようになり、背もたれ部6が所定回転位置P2から折畳み回転位置P3まで回転される場合には、一端部13が背もたれ部6の回転と共にスリット46の一端部76から他端部78までスリット46に案内されて移動されるようになっている。
【0029】
而して、コイルばね75は、背もたれ部6の座部5に対する初期回転位置P0から所定回転位置P2までの折畳み回転位置P3に向かうR1方向の回転では、一端部13がスリット46の一端部76の底部77に接触して蓄えられた捻り弾性力を他端部14及び回転軸61を介して背もたれ部6に付与して後述する一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する粘性流体3の流動抵抗に抗して座部5に対して背もたれ部6をR1方向に回転させると共に背もたれ部6の所定回転位置P2への回転で蓄えられた捻り弾性力を全て消費する一方、背もたれ部6の座部5に対する所定回転位置P2から折畳み回転位置P3までの折畳み回転位置P3に向かうR1方向の回転では、一端部13がスリット46の一端部76から離れてスリット46の他端部78に向かってR1方向に移動して捻り弾性力の背もたれ部6への付与及び捻り弾性力の蓄えを行わないようになっており、背もたれ部6の座部5に対する折畳み回転位置P3から所定回転位置P2までの初期回転位置P0に向かうR2方向の回転では、一端部13がスリット46の他端部78から離れてスリット46の一端部76に向かってR2方向に移動して捻り弾性力の背もたれ部6への付与及び捻り弾性力の蓄えを行わないようになっており、背もたれ部6の座部5に対する所定回転位置P2から初期回転位置P0までの初期回転位置P0に向かうR2方向の回転では、一端部13がスリット46の一端部76において底部77に接触して一端部13と他端部14との間で捻られて捻り弾性力を蓄えるようになっている。
【0030】
弾性手段18は、その一端部16がねじ48に巻き付けられて係止されており、その他端部17がスリット69に嵌め込まれて、蓋体本体43の他方の側面85に沿って巻かれた渦巻きばね86を具備しており、こうして、渦巻きばね86は、収容体7及び回転体8の一方である収容体7の蓋体本体43にねじ48を介して連結されていると共に他端部17で収容体7及び回転体8の他方である回転体8に回転軸61を介して連結されており、背もたれ部6が所定回転位置P1から所定回転位置P2を通過して折畳み回転位置P3にR1方向に回転されて回転軸61も同方向に回転される場合には、縮径方向に巻かれてR1方向の回転に抗する漸次増大する弾性力を発生する一方、背もたれ部6が折畳み回転位置P3から所定回転位置P2を通過して所定回転位置P1に回転されて回転軸61も同方向に回転される場合には、拡径方向に巻き戻されてR1方向の回転に抗する弾性力を漸次減少するようになっており、更に、背もたれ部6が所定回転位置P1から初期回転位置P0にR2方向に回転されて回転軸61も同方向に回転される場合には、拡径方向に巻き戻されてR2方向の回転に抗する漸次増大する弾性力を発生する一方、背もたれ部6が初期回転位置P0から所定回転位置P1にR1方向に回転されて回転軸61も同方向に回転される場合には、縮径方向に巻かれてR2方向の回転に抗する弾性力を漸次減少するようになっており、而して、所定回転位置P1では弾性力を発生しない渦巻きばね86は、背もたれ部6の座部5に対する所定回転位置P1から折畳み回転位置P3までにおいて、背もたれ部6の自重に起因する所定回転位置P1から折畳み回転位置P3に向かうに連れて漸次増大するように変化する折畳み回転位置P3に向かう方向の回転力に抗する弾性的回転力を背もたれ部6の座部5に対する回転に付与するようになっている。
【0031】
ベーン手段20は、収容体7の円筒状の内周面27と回転体8の円筒状の外周面51との間の粘性流体3を収容する空間19を二室87及び88に区画すると共に回転体8の外周面51に一体的に形成された一対の弾性的に可撓な弾性的可撓ベーン95及び96と、一対の弾性的可撓ベーン95及び96により区画された二室87及び88のうちの少なくとも一方の室、本例では二室87及び88を更に室91及び室92の二室と室93及び室94の二室とに区画すると共に収容体7の内周面27に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーン97及び98とを有している。
【0032】
弾性的可撓ベーン95及び96並びに97及び98において、弾性的可撓ベーン95と弾性的可撓ベーン96と、そして、弾性的可撓ベーン97と弾性的可撓ベーン98とは、回転軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に形成されているので、以下、弾性的可撓ベーン95及び弾性的可撓ベーン97を詳細に説明し、弾性的可撓ベーン96及び弾性的可撓ベーン98については、弾性的可撓ベーン95及び弾性的可撓ベーン97の符号と同一の符号をもって説明、図示する。
【0033】
R1及びR2方向であって円周方向であるR方向において室92と室93とを区画する弾性的可撓ベーン95は、一端部では回転体8の外周面51に連接する一方、他端部では収容体7の内周面25に対面すると共に収容体7に対する回転体8のR1方向の相対的回転と反対方向のR2方向に向かって凸となった湾曲状の凸面101と、凸面101に対応して一端部では回転体8の外周面51に連接すると共に凸面101に沿って延びている湾曲状の凹面102とを具備して、外周面51から内周面25に向かって漸次R方向の厚みが減少して円弧状に形成されている。
【0034】
凸面101は、その他端部側で、収容体7に対する回転体8の相対的回転の回転方向でもあるR方向において対峙した一対の楔空間103及び104を収容体7の円弧状の内周面25との間で形成すると共に内周面25の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している円弧状凸面105となっており、円弧状凸面105は、R方向において当該円弧状凸面105を間にして隣接する二室92及び93のうちの一方の室92に連通する一方の楔空間103の径方向であるB方向の幅がR方向において当該円弧状凸面105を間にして隣接する二室92及び93のうちの他方の室93に連通する他方の楔空間104に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間103の径方向の幅を決定していると共に他方の楔空間104のB方向の幅がR方向において一方の楔空間103に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間104のB方向の幅を決定しており、一対の楔空間103及び104を通過する粘性流体3は、弾性的可撓ベーン95を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間103及び104のB方向の幅を決定するようになっており、而して、一対の楔空間103及び104を通過する粘性流体3は、初期回転位置P0から所定回転位置P1及びP2を介する折畳み回転位置P3への背もたれ部6の座部5に対するR1方向の回転において他方の室93から一方の室92に狭められた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該狭められた一対の楔空間104及び103によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている一方、折畳み回転位置P3から所定回転位置P2及びP1を介する初期回転位置P0への背もたれ部6の座部5に対するR2方向の回転において一方の室92から他方の室93に広げられた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該広げられた一対の楔空間103及び104によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている。
【0035】
凹面102は、凸面101の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面101に近づくように凸面101に沿って延びて凸面101の終端と共に終端しており、これにより、弾性的可撓ベーン95は、回転体8に連接された基部106からその他端部である自由端部107に至るまで徐々に薄くなるように形成されている。
【0036】
而して、弾性的可撓ベーン95は、初期回転位置P0から所定回転位置P1及びP2を介する折畳み回転位置P3への背もたれ部6の座部5に対するR1方向の回転において他方の室93から一方の室92に狭められた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該狭められた一対の楔空間104及び103によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体3に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置P3から所定回転位置P2及びP1を介する初期回転位置P0への背もたれ部6の座部5に対するR2方向の回転において一方の室92から他方の室93に広げられた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該広げられた一対の楔空間104及び103によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体3に発生させるようになっている。
【0037】
R方向において室91と室94とを区画する弾性的可撓ベーン96も弾性的可撓ベーン95と同様に形成されており、弾性的可撓ベーン96における一対の楔空間103及び104を通過する粘性流体3も、弾性的可撓ベーン96を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間103及び104のB方向の幅を決定するようになっており、而して、弾性的可撓ベーン96における一対の楔空間103及び104を通過する粘性流体3は、初期回転位置P0から所定回転位置P1及びP2を介する折畳み回転位置P3への背もたれ部6の座部5に対するR1方向の回転において他方の室91から一方の室94に狭められた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該狭められた一対の楔空間104及び103によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている一方、折畳み回転位置P3から所定回転位置P2及びP1を介する初期回転位置P0への背もたれ部6の座部5に対するR2方向の回転において一方の室94から他方の室91に広げられた一対の楔空間104及び103を通って流れて当該広げられた一対の楔空間103及び104によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている。
【0038】
R方向において室91と室92とを区画すると共に収容体7の内周面27、鍔部32の側面40及び突起44の内周面並びに蓋体本体43の側面42に一体的に形成された弾性的可撓ベーン97は、弾性的可撓ベーン95の凸面101と相補的な円弧状の凹面111を当該弾性的可撓ベーン95の凸面101に対面して有している一方、断面V若しくはU状の凹面112を弾性的可撓ベーン96の凹面102に対面して有している弾性的に可撓な基部113と、基部113に当該基部113の先端部からR2方向に延びて一体的に形成されていると共に円弧状面114で回転体8の外周面51にR方向に摺動自在に接触した弾性的に可撓性な舌部115とを有しており、回転体8の外周面51と外周面51の曲率半径よりも小さい曲率半径を有した舌部115の円弧状面114との間には、一対の楔空間103及び104と同様の楔空間が形成されるようになっており、一対の楔空間103及び104と同様の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン97は、弾性的可撓ベーン95と同様に、背もたれ部6の初期回転位置P0から折畳み回転位置P3に向かうR1方向の収容体7に対する回転体8の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室91から室92への粘性流体3の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、背もたれ部6の折畳み回転位置P3から初期回転位置P0に向かうR2方向の収容体7に対する回転体8の相対的回転では、室92から室91への粘性流体3の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
【0039】
室93と室94とを区画する弾性的可撓ベーン98も弾性的可撓ベーン97と同様に形成されており、回転体8の外周面51と舌部115の円弧状面114との間に一対の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン98は、弾性的可撓ベーン97と同様に、背もたれ部6の初期回転位置P0から折畳み回転位置P3に向かうR1方向の収容体7に対する回転体8の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室93から室94への粘性流体3の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、背もたれ部6の折畳み回転位置P3から初期回転位置P0に向かうR2方向の収容体7に対する回転体8の相対的回転では、室94から室93への粘性流体3の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
【0040】
弾性的可撓ベーン95及び96のA方向の一方の端面は、鍔部32の側面40にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、弾性的可撓ベーン95及び96のA方向の他方の端面も、蓋体35の側面42にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、基部113が筒体28における収容体7の内周面27に一体的に形成された弾性的可撓ベーン97及び98の部位は、A方向の一方の端面で鍔部32の側面40に一体的に形成されており、基部113が突起45における収容体7の内周面27に一体的に形成された弾性的可撓ベーン97及び98の部位は、A方向の一方の端面116で、基部113が筒体28における収容体7の内周面27に一体的に形成された弾性的可撓ベーン97及び98の部位のA方向の他方の端面117にぴったりと液密に接触しており、A方向の他方の端面で蓋体35の側面42に一体的に形成されている。
【0041】
一対の楔空間103及び104を含む一対の楔空間を通過する粘性流体3は、初期回転位置P0から所定回転位置P1及びP2を介する折畳み回転位置P3への背もたれ部6の座部5に対するR1方向の回転において狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている一方、折畳み回転位置P3から所定回転位置P2及びP1を介する初期回転位置P0への背もたれ部6の座部5に対するR2方向の回転において広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する流動抵抗を発生するようになっている。
【0042】
鍔部32の内周面31と回転体8のA方向の端部53との間、筒体28の端部33と端部33に嵌合された突起45との間及び回転体8のA方向の端部54と突起44との間の夫々には、室91及び92並びに室93及び94の相互に対する粘性流体3の漏出と室91及び92並びに室93及び94から収容体7外部への粘性流体3の漏出とを防止するシールリング118が配されている。
【0043】
自動車の車体121に取り付けられた座部5と座部5に回転自在に連結された背もたれ部6とを具備している車両用シート4においては、背もたれ部6は、所定回転位置P1での自動車の前後方向に対して直交する鉛直面に対して所定角度α、例えばα=25°だけ後方に傾いた初期回転位置P0から所定回転位置P1での鉛直面に対して所定角度β、例えばβ=90°だけ前方に傾いた折畳み回転位置P3まで回転軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転自在に座部5に連結されており、初期回転位置P0では、図示しないロック解除自在なロック機構によりR1方向の回転を禁止されるようになっており、ロック機構のロック解除で、初期回転位置P0からα=25°だけR1方向に回転した所定回転位置P1までは、一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体3の流動抵抗に抗してコイルばね75の捻り弾性力及び渦巻きばね86のR1方向の縮径弾性力によりR1方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から所定角度γ、例えばγ=α+10°だけR1方向に回転した所定回転位置P2まで、言い換えると、所定回転位置P1での鉛直面に対して10°前方に傾いた所定回転位置P2までは、一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体3の流動抵抗と、渦巻きばね86のR2方向の拡径弾性力とに抗して、背もたれ部6の自重に基づく漸次増大するR1方向の回転力とコイルばね75の捻り弾性力とによりR1方向に回転されるようになっており、所定回転位置P2から折畳み回転位置P3までは、一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体3の流動抵抗と渦巻きばね86のR2方向の拡径弾性力とに抗して背もたれ部6の自重に基づく漸次増大するR1方向の回転力によりR1方向に回転するようになっている一方、折畳み回転位置P3から所定回転位置P2までは、背もたれ部6の自重に基づく漸次減少するR1方向の回転力に抗する渦巻きばね86のR2方向の漸次減少する拡径弾性力の助力の下で、一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体3の流動抵抗に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっており、所定回転位置P2から所定回転位置P1までは、背もたれ部6の自重に基づく漸次減少するR1方向の回転力に抗する渦巻きばね86のR2方向の漸次減少する拡径弾性力の助力の下で、一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体3の流動抵抗と徐々に増加するコイルばね75のR1方向の捻り弾性力とに抗して手動によりR2方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から初期回転位置P0までは、楔空間103及び104を通過する比較的小さな粘性流体3の流動抵抗と徐々に増加するコイルばね75のR1方向の捻り弾性力及び渦巻きばね86のR1方向の縮径弾性力に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっていると共にコイルばね75に捻り弾性力と渦巻きばね86の縮径弾性力を夫々蓄えさせるようになっている。
【0044】
一方向ロータリダンパとして機能する以上のロータリダンパ1では、図11に示す回転体8の回転位置(初期回転位置P0に相当)で、ロック機構のロック解除で背もたれ部6がコイルばね75の捻り弾性力及び渦巻きばね86の縮径弾性力によりR1方向に回転されて、室91及び93を縮小する一方、室92及び94を拡大するように収容体7に対して回転体8がR1方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン95及び96の凹面102及び弾性的可撓ベーン97及び98の凹面112に粘性流体3の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン95及び96の他端部である自由端部107側が収容体7の内周面25及び26に、弾性的可撓ベーン97及び98の舌部115側が回転体8の外周面51に夫々近づいて一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を縮小するように弾性的可撓ベーン95及び96並びに弾性的可撓ベーン97及び98が弾性変形される結果、粘性流体3は縮小された一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通って室93及び91の夫々から室92及び94の夫々及び室91及び93の夫々から室92及び94の夫々に流れて、この縮小された楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過する粘性流体3の比較的大きな流動抵抗による大きな制動を回転体8のR1方向の回転に与えて背もたれ部6を同方向にゆっくりと所定回転位置P1及びP2を介して折畳み回転位置P3まで回転させる一方、図12に示す回転体8の回転位置(折畳み回転位置P3に相当)で、背もたれ部6が手動によりR2方向に回転されて、室91及び93を拡大する一方、室92及び94を縮小するように収容体7に対して回転体8がR2方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン95及び96の各湾曲状の凸面101及び弾性的可撓ベーン97及び98の凹面111に粘性流体3の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン95及び96の各自由端部107側が収容体7の内周面25及び26から、弾性的可撓ベーン97及び98の舌部115が回転体8の外周面51から夫々離れて一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を広げるように弾性的可撓ベーン95及び96並びに弾性的可撓ベーン97及び98が弾性変形される結果、粘性流体3は広げられた一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通って室92及び94の夫々から室93及び91の夫々及び室92及び94の夫々から室91及び93の夫々に流れて、この広げられた一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間通過する粘性流体3の比較的小さな流動抵抗による小さな制動が回転体8のR2方向の回転に与えられるために、背もたれ部6は、小さな手動力により所定回転位置P2まで回転させることができ、所定回転位置P2から初期回転位置P0まではコイルばね75に捻り弾性力を蓄えるためにコイルばね75による徐々に増大する弾性的制動を、所定回転位置P1から初期回転位置P0までは渦巻きばね86の徐々に増大する弾性的制動を手動力によるR2方向の回転に受けるようになっている。
【0045】
斯かるロータリダンパ1によれば、背もたれ部6を初期回転位置P0から所定回転位置P1まで回転させる際には、コイルばね75及び渦巻きばね86の補助により背もたれ部6を容易に回転さることができ、背もたれ部6を所定回転位置P1から折畳み回転位置P3まで回転させる際には、背もたれ部6の自重に基づく折畳み回転位置P3に向かうに連れて漸次増加する回転力による急激な背もたれ部6の回転を渦巻きばね86により防止できると共に、背もたれ部6を初期回転位置P0から折畳み回転位置P3まで回転させる際には、ベーン手段20により粘性流体3に大きな流動抵抗を生じさせることができる結果、背もたれ部6の折畳み回転位置P3に向かう方向の回転に適度の抵抗を与えることができて折畳み回転位置P3での背もたれ部6の激突を避けることができる一方、背もたれ部6を手動により折畳み回転位置P3から初期回転位置P0まで回転させる際には、渦巻きばね86による補助に加えて、ベーン手段20により生じる粘性流体の流動抵抗を低下させることができる結果、背もたれ部6を手動により折畳み回転位置P3から初期回転位置P0まで容易に回転させることができる。
【0046】
また、一方向ダンパとして機能するロータリダンパ1では、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体3が回転体8のR1及びR2方向の回転において一対の楔空間103及び104を含む各一対の楔空間を通過するようになっているために、例えば、低温下で常温時より粘度が増加した粘性流体3が楔空間103及び104を通過する場合には、楔空間103及び104での粘性流体3の圧力増大により弾性的可撓ベーン95の自由端部107側が収容体7の内周面25から常温時よりより離れるように弾性的可撓ベーン95が大きく弾性変形されて楔空間103及び104が常温時と比較して大きく広げられる結果、粘性流体3自体の粘度増加による流動抵抗の増大と楔空間103及び104の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時より粘度が低下した粘性流体3が楔空間103及び104を通過する場合には、楔空間103及び104での粘性流体の圧力減少により弾性的可撓ベーン95の自由端部107側が収容体7の内周面25に常温時より近づくように弾性的可撓ベーン95が小さく弾性変形されて楔空間103及び104が狭められる結果、粘性流体3自体の粘度低下による流動抵抗の減少と楔空間103及び104の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる結果、コイルばね75の捻り弾性力により背もたれ部6を折畳み回転位置P3に確実に回転させることができると共に小さな手動力により背もたれ部6を初期回転位置P0に戻し回転させることができる。
【0047】
以上のロータリダンパ1は、二対の弾性的可撓ベーン95及び96並び97及び98を有しているが、本発明は、一対の弾性的可撓ベーン95及び96と弾性的可撓ベーン97又は98を有していてもよく、また、三対以上の弾性的可撓ベーンを有していてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ロータリダンパ
2 内部
3 粘性流体
4 車両用シート
5 座部
6 背もたれ部
7 収容体
8 回転体
13、16 一端部
14、17 他端部
15、18 弾性手段
19 空間
20 ベーン手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を内部に収容すると共に車両用シートの座部及び当該座部に初期回転位置と折畳み回転位置との間で回転できるように回転自在に連結された背もたれ部のうちの一方に固定される収容体と、この収容体との間で粘性流体を収容する空間を形成するように収容体の内部に回転自在に配されていると共に車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固定される回転体と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の第一の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する第一の弾性手段と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置と折畳み回転位置との間の第二の所定回転位置から折畳み回転位置まで背もたれ部に初期回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する第二の弾性手段と、背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々粘性流体に生じさせるべく、収容体と回転体との間の粘性流体を収容する空間に配されたベーン手段とを具備している車両シート用のロータリダンパ。
【請求項2】
第一の弾性手段は、背もたれ部の座部に対する初期回転位置から第一の所定回転位置までの折畳み回転位置に向かう方向の回転では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を背もたれ部に付与して粘性流体の流動抵抗に抗して座部に対して背もたれ部を回転させるようになっている一方、第一の所定回転位置と折畳み回転位置との間の背もたれ部の座部に対する回転位置では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の背もたれ部への付与を解除するようになっている請求項1に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項3】
収容体は、当該収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する第一の所定回転位置から背もたれ部の座部に対する折畳み回転位置までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所を有しており、回転体は、車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固着された回転軸を有しており、第一の弾性手段は、収容体のスリット又は凹所に配されて収容体に係合する一端部と、回転体の回転軸に嵌合されて係合する他端部とを有している請求項1又は2に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項4】
第一の弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されているコイルばねを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項5】
第二の弾性手段は、背もたれ部の座部に対する第二の所定回転位置から折畳み回転位置までにおいて、背もたれ部の自重に起因する第二の所定回転位置から折畳み回転位置に向かうに連れて変化する折畳み回転位置に向かう方向の回転力に抗する弾性的回転力を背もたれ部の座部に対する回転に付与するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項6】
第二の弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されている渦巻きばねを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項7】
ベーン手段は、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間を二室に区画すると共に回転体の外周面に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーンと、この一対の弾性的可撓ベーンにより区画された二室のうちの少なくとも一方の室を更に二室に区画すると共に収容体の内周面に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとを有している請求項1から6のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項8】
一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、一端部では回転体の外周面に連接すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と反対方向に向かって凸となった湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体の外周面に連接すると共に凸面に沿って延びている湾曲状の凹面とを具備しており、凸面は、その他端部側で、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面となっており、この円弧状凸面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、一対の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、初期回転位置から第一及び第二の所定回転位置を介する折畳み回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において他方の室から一方の室に狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置から第一及び第二の所定回転位置を介する初期回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において一方の室から他方の室に広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている請求項7に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項9】
凹面は、凸面の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びている請求項8に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項10】
円弧状凸面は、収容体の円筒状の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している請求項8又は9に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項11】
他の弾性的可撓ベーンは、収容体の内周面に一体的に形成された弾性的に可撓な基部と、この基部に一体的に形成されていると共に回転体の外周面に対面した円弧状面を有した弾性的に可撓性な舌部とを有している請求項7から10のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−33058(P2011−33058A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177089(P2009−177089)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】