説明

車両側部構造

【課題】荷重が入力した場合に車室内側への車体変形を抑制する車両側部構造を提供することを課題とする。
【解決手段】ドアインパクトビーム30を備える車体側部構造2であって、車室内側の側面に車両上下方向に傾斜30cを有するドアインパクトビーム30と、ドアインパクトビーム30の傾斜30cに沿った傾斜32aを有し、当該傾斜32aがドアインパクトビーム30の傾斜30cに相対した状態でドアインパクトビーム30とサイドシル35との間に配置される荷重伝達部材32とを備えることを特徴とし、フロアクロスメンバ41を車両前後方向において荷重伝達部材32と重なる位置に配置し、ドアインパクトビーム30の傾斜30cの位置を車両上下方向においてフロアクロスメンバ41の延長線EL上に配置すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア内部にドアインパクトビームを備える車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
側面衝突時には、その衝突による荷重によってドア等が車室側に変形する場合がある。このような側面衝突によるドア等の変形を抑制するために、様々な車両側部構造が開発されている。例えば、特許文献1には、サイドシルに略平行に車両前後方向に延び、矩形断面形状を有するドアインパクトビームを備える車体側部構造が開示されている。ドアインパクトビームは、ドア内部に配置され、両端部等が支持されている。
【特許文献1】特許第2810123号公報
【特許文献2】特開2000−318451号公報
【特許文献3】特開2005−96600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
側面衝突によってドアに荷重が入力されると、その荷重をドアインパクトビームで受ける。しかし、従来のドアインパクトビームは支持剛性が低いため、ドア等の車室内側への変形量が大きくなる。つまり、ドアインパクトビームで受けた荷重をピラーやサイドシル等に十分に伝達できないので、ピラーやサイドシル等で十分な反力を発生できない。特に、その入力荷重によってピラーやサイドシルに回転モーメントが作用すると、車室内側への回転変位が大きくなり、サイドシルやピラーの車室内側への倒れ込みが増大する。
【0004】
そこで、本発明は、荷重が入力した場合に車室内側への車体変形を抑制する車両側部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両側部構造は、車室内側の側面に車両上下方向に傾斜を有するドアインパクトビームと、ドアインパクトビームの傾斜に沿った傾斜を有し、当該傾斜がドアインパクトビームの傾斜に相対した状態でドアインパクトビームとサイドシルとの間に配置される荷重伝達部材とを備えることを特徴とする。
【0006】
この車両側部構造では、ドアインパクトビームの車室内側の側面が車両上下方向に傾斜を有しており、荷重伝達部材もそのドアインパクトビームの傾斜に合わせた傾斜を有している。そして、車両側部構造では、ドアインパクトビームの傾斜と荷重伝達部材の傾斜とが相対するようにドアインパクトビームと荷重伝達部材とが配置され、その荷重伝達部材を挟んだ状態で車室内側にサイドシルが配置されている。側面衝突等によってドアに荷重が入力された場合、その荷重をドアインパクトビームで受ける。その受けた荷重は、その傾斜構造によって車両上下方向に分散され、そのドアインパクトビームの傾斜から荷重伝達部材の傾斜に効率良く伝達される。さらに、その伝達された荷重は、荷重伝達部材を介して、サイドシル全域に効率良く伝達される。その結果、サイドシルでは、入力荷重に対して十分な反力を迅速に発生する。このように、車両側部構造では、ドアインパクトビームと荷重伝達部材との傾斜構造によってサイドシルに早期かつ効率良く荷重を伝達でき、ドアやサイドシル等の車体変形を抑制することができる。
【0007】
本発明の上記車両側部構造では、フロアクロスメンバを車両前後方向において荷重伝達部材と重なる位置に配置し、ドアインパクトビームの傾斜の位置を車両上下方向においてフロアクロスメンバの延長線上に配置すると好適である。
【0008】
この車両側部構造では、車両前後方向で荷重伝達部材と重なる位置にフロアサイドメンバが配置され、車両前後方向で重なる位置に車両外側からドアインパクトビーム、荷重伝達部材、サイドシル、フロアサイドメンバが配置される。さらに、車両側部構造では、車両上下方向でドアインパクトビームの傾斜部分及び荷重伝達部材の傾斜部分の位置がフロアクロスメンバの延長線上に配置される。このような配置にすることによって、側面衝突等によってドアに荷重が入力された場合、上記したようにサイドシルに効率良く伝達された荷重は、フロアクロスメンバへの効率良く伝達され、入力荷重に対してフロアクロスメンバでも大きな反力を発生する。特に、ドアインパクトビームで受けた入力荷重の方向とフロアクロスメンバでの反力方向とが一致するので、サイドシル(ひいては、ピラー)へ作用する回転モーメントを抑制でき、サイドシル(ひいては、ピラー)の回転変位を抑制できる。その結果、ドアやサイドシル等の車体変形をより抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ドアインパクトビームと荷重伝達部材との傾斜構造によってサイドシルに効率良く荷重を伝達でき、ドアやサイドシル等の車体変形を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両側部構造の実施の形態を説明する。
【0011】
本実施の形態では、本発明に係る車両側部構造を、ドアインパクトビームを備える車両の各ドアのドア構造に適用する。本実施の形態に係るドア構造は、ドアインパクトビームの前端を第1荷重伝達部材で支持し、後端を第2荷重伝達部材で支持する。本実施の形態には、第2荷重伝達部材での支持構造の異なる2つの形態があり、第1の実施の形態が第2荷重伝達部材に嵌合部を設ける形態であり、第2の実施の形態が第2荷重伝達部材にドアインパクトビームの傾斜に沿った傾斜を設ける形態である。なお、本実施の形態では、車両の各ドアの中で助手席のドアに適用したドア構造について説明するが、他のドアにも同様のドア構造が適用可能である。
【0012】
図1〜図6を参照して、第1の実施の形態に係るドア構造1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るドア構造(ドアのアウタパネル及びインナパネルを組み付けていない状態)の斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図3は、図1のIV−IV線に沿った断面図である。図4は、図1の第2荷重伝達部材の拡大斜視図である。図5は、図1のV−V線に沿った断面図である。図6は、図1のIV−IV線に沿った断面図であり、(a)が側面衝突前であり、(b)が側面衝突後である。
【0013】
ドア構造1は、側面衝突等による荷重入力時の車室内側への車体変形を抑制する構造である。そのために、ドア構造1は、入力荷重をピラーやサイドシルに迅速かつ効率良く伝達可能であり、入力荷重に対して早期に十分な反力を発生させることができる。そのために、ドア構造1は、ドアインパクトビーム10の前端部を第1荷重伝達部材11で支持するとともに後端部を第2荷重伝達部材12で支持し、2つの荷重伝達部材11,12を介してドアインパクトビーム10で受けた荷重を伝達する構造である。
【0014】
ドアインパクトビーム10は、ドア13内部(アウタパネル13a側)に配置され、側面衝突等によって入力される荷重を伝達や吸収する補強部材である。ドアインパクトビーム10は、ドア13を構成するアウタパネル13aとインナパネル13bとの間に、車両上下方向に傾斜した状態(前端側がドア13の上側に配置され、後端側が下側に配置される)で車両前後方向に延設される。ドアインパクトビーム10は、アウタパネル13a側に配置されるアウタ部材10aとインナパネル13b側に配置されるインナ部材10bの2つの部材からなる。アウタ部材10aは、開断面形状であり、断面視して2つの山部と2つの山部間の谷部及び各山部の外側に形成されるフランジ部からなる波状形状である。インナ部材10bは、開断面形状であり、断面視して2つの山部(アウタ部材10aより高い山部)と2つの山部間の谷部(アウタ部材10aよりも深い谷部)及び各山部の外側に形成されるフランジ部からなる波状形状である。ドアインパクトビーム10は、アウタ部材10aとインナ部材10bとが谷部とフランジ部で溶接等で接合されて、断面視して2つの孔を有する閉断面形状である。
【0015】
第1荷重伝達部材11は、ドア13内部(ドアインパクトビーム10より車室内側)でドアインパクトビーム10の前端部に配置され、ドアインパクトビーム10で受けた荷重をフロントピラー14等に伝達する部材である。第1荷重伝達部材11は、車両前後方向においてフロントピラー14の後部と重なる位置かつ車両上下方向においてフロントピラー14に沿って配置される。さらに、第1荷重伝達部材11は、図2に示すように、車両前後方向においてピラーブレーキ18やインパネリーンフォースメント19等の車体部材に重なる位置に配置される。そして、第1荷重伝達部材11は、図2に示すように、ドア13とフロントピラー14との間に設けられる上下2つの各ドアヒンジ17,17と共にボルト17aとナット17bによるボルト締結によってインナパネル13bの内側に取り付けられ、上下のドアヒンジ17,17間を結合する。
【0016】
第1荷重伝達部材11は、断面視して両端にフランジ部を有する凹形状である。第1荷重伝達部材11は、フロントピラー14に荷重を効率良く伝達するために、ドアインパクトビーム10とインナパネル13bとの間で車幅方向の左右幅一杯になるように極力幅広に形成される。また、第1荷重伝達部材11には、車両上下方向の略中央部で車両外側に、車両内側に窪ませた繋止部11aが形成されている。繋止部11aには、図5に示すように、ドアインパクトビーム10の前端部が配置され、インナ部材10bの2つの各山部の頂上面がボルト11bとナット11cによるボルト締結によって取り付けられる。
【0017】
第2荷重伝達部材12は、サイドメンバアウタパネル(外板)20の車室内側でドアインパクトビーム10の後端部に配置され、ドアインパクトビーム10で受けた荷重をサイドシル15やセンタピラー16等に伝達する部材である。第2荷重伝達部材12は、サイドシル15とセンタピラー16との結合部に配置され、サイドシル15(アウタパネル15a)の上面及び外側面とセンタピラー16の前側面を覆うように取り付けられる。また、第2荷重伝達部材12は、図3に示すように、車両前後方向において、サイドシル15を支持するフロアクロスメンバ21等の車体部材に重なる位置に配置される。このフロアクロスメンバ21は、サイドシル15のインナパネル15bの上部を車室内側から支持し、上方に湾曲した湾曲部21aが形成されている。
【0018】
第2荷重伝達部材12は、各端部にフランジ部を有し、サイドシル15やセンタピラー16と同程度の幅(車幅方向)を有する略四半円形状である。第2荷重伝達部材12は、略中央部で車両外側に、ドアインパクトビーム10の配置方向に沿ってかつドアインパクトビーム10の後端部を十分に収納可能な大きさで車両内側に窪ませた嵌合部12aが形成されている。さらに、図3に示すように、ドア13のインナパネル13bやサイドメンバアウタパネル20にも、嵌合部12aと同様に、車両内側に窪ませた部分が形成される。そして、嵌合部12a等には、ドアインパクトビーム10の後端部が配置され、その後端部が嵌合された状態で支持される。
【0019】
このように構成されたドア構造1では、側面衝突等によってドア13に荷重が入力された場合、その荷重がドアインパクトビーム10に伝達され、ドアインパクトビーム10において大きな反力が発生する。また、ドアインパクトビーム10の前端側では、第1荷重伝達部材11との繋止構造とボルト締結構造によって、その入力荷重が第1荷重伝達部材11に瞬時にかつ確実に伝達され、この荷重伝達が持続される。さらに、第1荷重伝達部材11の幅広形状によって、その伝達された荷重が第1荷重伝達部材11の全域で瞬時にフロントピラー14に伝達される。この際、第1荷重伝達部材11やフロントピラー14は、ピラーブレース18やインパネリーンフォースメント19によって強固に支持されている。そのため、フロントピラー14、ピラーブレース18及びインパネリーンフォースメント19では、瞬時に十分な大きさの荷重反力が発生する。これによって、フロントピラー14を回転させるモーメントが低減され、フロントピラー14が車室内側への倒れ込みが抑えられる。そして、フロントピラー14等が全体で押し潰されて変形し、全体で車室内側へ略平行移動するが(移動しない場合もある)、車室内側への変形が抑制される。
【0020】
一方、ドアインパクトビーム10の後端側では、第2荷重伝達部材12との嵌合構造によって、ドアインパクトビーム10の入力荷重が第2荷重伝達部材12に瞬時にかつ確実に伝達され、この荷重伝達が持続される。さらに、サイドシル15とセンタピラー16との結合部を覆う第2荷重伝達部材12の形状によって、その伝達された荷重が第2荷重伝達部材12の全域で瞬時にサイドシル15及びセンタピラー16に伝達される。この際、サイドシル15は、フロアクロスメンバ21や車体フロア22によって支持されている。そのため、サイドシル15、センタピラー16、フロアクロスメンバ21及び車体フロア22では、入力荷重に対して瞬時に十分な大きさの反力が発生する。また、図6(b)に示すように、フロアクロスメンバ21は上方への湾曲部21aを有しているので、フロアクロスメンバ21が上方に凸変形する。そのため、サイドシル15を回転させるモーメントが低減され、さらに、センタピラー16を回転させるモーメントが低減される。その結果、サイドシル15やセンタピラー16の回転変位が抑制され、サイドシル15やセンタピラー16の車室内側への倒れ込みが抑えられる。最終的に、サイドシル15やセンタピラー16等が全体に押し潰されて変形し、全体で車室内側へ略平行移動するが(移動しない場合もある)、車室内側への変形が抑制される。
【0021】
このドア構造1によれば、ドアインパクトビーム10の両端部を第1荷重伝達部材11と第2荷重伝達部材12で支持することにより、入力荷重をフロントピラー14、サイドシル15、センタピラー16等に瞬時に効率良く伝達することができる。その結果、衝突早期に十分に大きな反力を発生させることができ、車室内側への変形を極力抑制することができる。
【0022】
さらに、ドア構造1では、第1荷重伝達部材11やフロントピラー14をピラーブレース18等の車体部材で支持可能な配置とするとともに第2荷重伝達部材12やサイドシル15をフロアクロスメンバ21等の車体部材で支持可能な配置とすることにより、フロントピラー14やサイドシル15でより大きな反力を発生させることができ、車室内側への変形をより抑制することができる。
【0023】
また、ドア構造1では、第1荷重伝達部材11での繋止構造や第2荷重伝達部材12での嵌合構造により、入力荷重をフロントピラー14、サイドシル15、センタピラー16等により確実にかつ持続して伝達することができる。
【0024】
図7〜図9を参照して、第2の実施の形態に係るドア構造2について説明する。図7は、第2の実施の形態に係るドア構造における第2荷重伝達部材周辺の断面図である。図8は、図7の第2荷重伝達部材の拡大斜視図である。図9は、図7の断面図であり、(a)が側面衝突前であり、(b)が側面衝突後である。
【0025】
ドア構造2は、第1の実施の形態に係るドア構造1と同様に、荷重入力時の車室内側への車体変形を抑制する構造であり、入力荷重に対して早期に十分な反力を発生させることができる。ドア構造2も、ドア構造1と同様に、ドアインパクトビーム30の各端部を第1荷重伝達部材(図示せず)と第2荷重伝達部材32で支持し、2つの荷重伝達部材を介してドアインパクトビーム30で受けた荷重を伝達する構造である。特に、ドア構造2は、ドアインパクトビーム30の後端側での回転モーメントを抑制して車体変形をより抑制する構造である。なお、ドア構造2では第1荷重伝達部材を用いたドアインパクトビーム30の前端部側の構造についてはドア構造1と同様の構造なでので、ドアインパクトビーム30の後端部側の構造についてのみ説明する。
【0026】
第2荷重伝達部材32は、第1の実施の形態に係る第2荷重伝達部材12と同様の機能を有する部材であり、第2荷重伝達部材12と同様の位置に配置される。第2荷重伝達部材32は、第2荷重伝達部材12と同様に、各端部にフランジ部を有し、所定の幅を有する略四半円形状である。しかし、第2荷重伝達部材32は、ドアインパクトビーム30を支持するために、嵌合部を有しておらず、車両外側の縦面(側面)に車両上下方向に傾斜する傾斜部32aが形成されている。傾斜部32aは、図8に示すように、第2荷重伝達部材32の車両外側の縦面に形成され、車幅方向の幅を上方ほど狭く、下方がサイドシル35と同程度の幅となるように形成される。したがって、傾斜部32aは、図7に示すように、断面視して上方から下方にかけて車両内側から外側に傾斜させた面である。さらに、図7に示すように、ドア33のインナパネル33bやサイドメンバアウタパネル40にも、傾斜部32aと同様に、傾斜部が形成される。そして、傾斜部32a等には、ドアインパクトビーム30の後端部(傾斜部30c)が配置され、その後端部が支持される。
【0027】
ドアインパクトビーム30は、第1の実施の形態に係るドアインパクトビーム10と同様の機能を有する部材であり、ドアインパクトビーム10と同様の位置に配置される。ドアインパクトビーム30は、ドアインパクトビーム10と同様にアウタ部材30aとインナ部材30bの2つの部材からなるが、インナ部材30bの後部の形状が異なっている。インナ部材30bは、第1の実施の形態に係るインナ部材10bと同様に断面視して2つの山部と2つの山部間の谷部及び各山部の外側に形成されるフランジ部からなる波状形状であるが、後部において車室内側の縦面(側面)に車両上下方向に傾斜する傾斜部30cを有している。傾斜部30cは、図7に示すように、第2荷重伝達部材32の傾斜部32aに沿った傾斜部である。そのために、インナ部材30bは、断面視して、上側の山部が下側の山部より高く、各山部の頂上面が上方から下方にかけて車両内側から外側に傾斜させた面である。したがって、ドアインパクトビーム30がドア33内に配置されると、傾斜部30cと第2荷重伝達部材32の傾斜部32aとがインナパネル33bやサイドメンバアウタパネル40の傾斜部を挟んだ状態で相対し、傾斜部30cと傾斜部32aとが平行状態となる。
【0028】
フロアクロスメンバ41は、断面視して、その上面41aの延長線EL上にドアインパクトビーム30の傾斜部30c及び第2荷重伝達部材32の傾斜部32aが位置するように、上面41aが車両外側ほど高くなる傾斜部となっている。フロアクロスメンバ41は、断面視して略三角形状であり、縦面41bがサイドシル35のインナパネル35bに接する面であり、下面41cが車体フロア42に接する面である。
【0029】
このように構成されたドア構造2では、側面衝突等によってドア33に荷重が入力された場合、第1の実施の形態に係るドア構造1と同様に、その荷重がドアインパクトビーム30に伝達され、ドアインパクトビーム30において大きな反力が発生する。そして、ドアインパクトビーム30の前端側では、第1の実施の形態で説明した作用と同様に作用する。
【0030】
一方、ドアインパクトビーム30の後端側では、第2荷重伝達部材32との傾斜構造によって、その傾斜構造で車両上下方向に荷重が分散され、ドアインパクトビーム30の入力荷重が第2荷重伝達部材32に瞬時にかつ確実に伝達され、この荷重伝達が持続される。さらに、サイドシル35とセンタピラー36との結合部を覆う第2荷重伝達部材32の形状によって、その伝達された荷重が第2荷重伝達部材32の全域で瞬時にサイドシル35及びセンタピラー36に伝達される。この際、サイドシル35は、フロアクロスメンバ41や車体フロア42によって支持されている。そのため、サイドシル35、センタピラー36、フロアクロスメンバ41及び車体フロア42では、入力荷重に対して瞬時に十分な大きさの反力が発生する。
【0031】
特に、図9(a)に示すように、フロアクロスメンバ41の上面41aの延長線上に各傾斜部30c,32aが位置しているので、ドアインパクトビーム30からの荷重の入力方向IFとフロアクロスメンバ41で発生する反力の方向OPとが一致する。そのため、サイドシル35を回転させるモーメントがより低減され、さらに、センタピラー36を回転させるモーメントも低減される。その結果、サイドシル35やセンタピラー36の回転変位が更に抑制され、サイドシル35やセンタピラー36の車室内側への倒れ込みが抑えられる。最終的に、図9(b)に示すように、サイドシル35やセンタピラー36等が全体に押し潰されて変形し、全体で車室内側へ略平行移動するが(移動しない場合もある)、車室内側への変形が抑制される。
【0032】
このドア構造2によれば、第1の実施の形態に係るドア構造1と同様の効果を有する上に、下記の効果も有する。ドア構造2では、ドアインパクトビーム30と第2荷重伝達部材32での傾斜構造とすることにより、入力荷重をサイドシル35等に効率良く伝達できる。さらに、ドア構造2では、その傾斜部分をフロアクロスメンバ41の上面41aの延長線上に配置することにより、入力荷重によるサイドシル35(ひいては、センタピラー36)への回転モーメントを更に低減できる。その結果、車室内側への変形をより抑制することができる。
【0033】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0034】
例えば、本実施の形態ではドアインパクトビームを2つの山部を有する波状形状としたが、他の形状のドアインパクトビームも適用可能である。ただし、第2の実施の形態の場合には、ドアインパクトビームの車室内側に傾斜を有することが条件となる。
【0035】
また、本実施の形態ではドアインパクトビームを車両上下方向に傾斜させて配置させる構成としたが、傾斜させないでもよいし、あるいは、逆方向で傾斜させてもよい。このドア構造を後部座席側のドアに適用する場合、ドアインパクトビームを逆方向で傾斜させ(前端側がドアの下側に配置され、後端側が上側に配置される)、センタピラーとサイドシルとの結合部に第2荷重伝達部材に相当する荷重伝達部材を配置させ、リアピラー側に第1荷重伝達部材に相当する荷重伝達部材を配置させるとよい。
【0036】
また、本実施の形態ではドアインパクトビームの一端を第1荷重伝達部材で支持する構成としたが、第1荷重伝達部材を用いないで支持する構成としてもよい。また、第1荷重伝達部材を用いる場合でも、他の形状の第1荷重伝達部材も適用可能である。
【0037】
また、第2の実施の形態ではドアインパクトビームの傾斜部や第2荷重伝達部材の傾斜部がフロアクロスメンバの上面の延長線上になるように配置する構成としたが、延長線上に配置しない構成としてもよいし(例えば、フロアクロスメンバが他の形状の場合)、あるいは、フロアクロスメンバを車両前後方向において第2荷重伝達部材やドアインパクトビームからずれた位置に配置させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施の形態に係るドア構造(ドアのアウタパネル及びインナパネルを組み付けていない状態)の斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図4】図1の第2荷重伝達部材の拡大斜視図である。
【図5】図1のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図1のIV−IV線に沿った断面図であり、(a)が側面衝突前であり、(b)が側面衝突後である。
【図7】第2の実施の形態に係るドア構造における第2荷重伝達部材周辺の断面図である。
【図8】図7の第2荷重伝達部材の拡大斜視図である。
【図9】図7の断面図であり、(a)が側面衝突前であり、(b)が側面衝突後である。
【符号の説明】
【0039】
1,2…ドア構造、10,30…ドアインパクトビーム、10a,30a…アウタ部材、10b,30b…インナ部材、30c…傾斜部、11…第1荷重伝達部材、11a…繋止部、11b…ボルト、11c…ナット、12,32…第2荷重伝達部材、12a…嵌合部、32a…傾斜部、13,33…ドア、13a,33a…アウタパネル、13b,33b…インナパネル、14…フロントピラー、15,35…サイドシル、15a,35a…アウタパネル、15b,35b…インナパネル、16,36…センタピラー、17…ドアヒンジ、17a…ボルト、17b…ナット、18…ピラーブレース、19…インパネリーンフォースメント、20,40…サイドメンバアウタパネル、21,41…フロアクロスメンバ、21a…湾曲部、41a…上面、41b…縦面、41c…下面、22,42…車体フロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側の側面に車両上下方向に傾斜を有するドアインパクトビームと、
前記ドアインパクトビームの傾斜に沿った傾斜を有し、当該傾斜が前記ドアインパクトビームの傾斜に相対した状態で前記ドアインパクトビームとサイドシルとの間に配置される荷重伝達部材と
を備えることを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
フロアクロスメンバを車両前後方向において前記荷重伝達部材と重なる位置に配置し、
前記ドアインパクトビームの傾斜の位置を車両上下方向において前記フロアクロスメンバの延長線上に配置することを特徴とする請求項1に記載する車両側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−307994(P2008−307994A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156763(P2007−156763)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】