説明

車両前部構造

【課題】ラジエータホースの配管を容易にする。
【解決手段】車両前部構造が適用された車両10では、ラジエータダクト60にパイプ部62が設けられている。パイプ部62はラジエータ34のロアタンク42と接続されて、ラジエータ34により冷却された冷却水がパイプ部62の冷却溶媒流路64内に流入される。これにより、パイプ部62とパワーユニットとを流入側ラジエータホースが連結することで、冷却水をパワーユニットへ流入できる。したがって、ラジエータダクト60がパワーユニットとラジエータ34との間に配置され、流入側ラジエータホースがラジエータダクト60とパワーユニットとの間に延設されるため、流入側ラジエータホースの長さを短くできる。また、流入側ラジエータホースをラジエータ34の車両前方に配管する必要がないため、流入側ラジエータホースの取り回しを良好にできる。以上により、流入側ラジエータホースの配管を容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットに対して車両後方に配置された冷却ユニットを備えた車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部構造では、パワーユニットに対して車両後方でかつダッシュパネルに対して車両前方に冷却ユニットを配置した構造が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この冷却ユニットは、熱交換器を備えており、熱交換器は、パワーユニットを冷却するためのラジエータを含んで構成されている。
【0003】
ここで、ラジエータとパワーユニットとの間にパワーユニットを冷却させるための冷却水(冷却溶媒)の循環経路を形成するために、ラジエータとパワーユニットとが、ラジエータホースによって連結されている。つまり、ラジエータのアッパタンクとパワーユニットとの間をラジエータホースが連結して、パワーユニットからラジエータに高温の冷却水が流出される。また、ラジエータのロアタンクとパワーユニットとの間をラジエータホースが連結して、冷却された冷却水がパワーユニットに流入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/097890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の車両前部構造では、ラジエータの車両前方にパワーユニットが配置されているため、ロアタンクとパワーユニットとの間を連結するラジエータホースがラジエータの車両前方に配管される。このため、当該ラジエータホースの長さが長くなると共に、ラジエータに導入される走行風(冷却風)を遮らないように当該ラジエータホースを配管する必要がある。これにより、ラジエータホースの取回しが悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、ラジエータホースの配管を容易にできる車両前部構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の車両前部構造は、少なくとも車両の前輪を駆動するパワーユニットに対して車両後方に設けられ、前記パワーユニットを冷却するための冷却ユニットと、前記冷却ユニットの車両前方に設けられ、前記冷却ユニットへ冷却風を導くように形成された冷却風導入ダクトと、前記冷却風導入ダクトに設けられ、前記冷却ユニットと接続されると共に、前記冷却ユニットにより冷却された冷却溶媒が流通される冷却溶媒流路と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の車両前部構造では、パワーユニットを冷却するための冷却ユニットが、パワーユニットに対して車両後方に設けられている。また、冷却ユニットの車両前方には、冷却風導入ダクトが設けられており、これにより、パワーユニットと冷却ユニットとの間に冷却風導入ダクトが配置されて、この冷却風導入ダクトによって冷却風が冷却ユニットへ導かれる。
【0009】
ここで、冷却風導入ダクトには、冷却溶媒流路が設けられている。この冷却溶媒流路は冷却ユニットと接続されており、冷却ユニットにより冷却された冷却溶媒が冷却溶媒流路内を流通する。これにより、冷却溶媒流路と冷却ユニットとの間をラジエータホースで連結することで、冷却ユニットにより冷却された冷却溶媒がパワーユニットに供給(流入)される。したがって、冷却風導入ダクトがパワーユニットと冷却ユニットとの間に配置されて、ラジエータホースが冷却風導入ダクトとパワーユニットとの間に延設されるため、ラジエータホースの長さを短くできる。
【0010】
また、冷却風導入ダクトが冷却ユニットの車両前方に配置されているため、冷却溶媒流路とパワーユニットとの間を連結するラジエータホースを冷却ユニットの車両前方に配管することなく、冷却ユニットとパワーユニットとの間をラジエータホースが連結できる。これにより、ラジエータホースの取り回しを良好にできる。
【0011】
請求項2に記載の車両前部構造は、請求項1に記載の車両前部構造において、パイプ構造を成して内部に前記冷却溶媒流路が形成され、前記冷却風導入ダクトの骨格を構成する骨格部を備えている。
【0012】
請求項2に記載の車両前部構造では、冷却風導入ダクトの骨格を成す骨格部がパイプ構造を成しており、この骨格部の内部に冷却溶媒流路が形成されている。このため、冷却風導入ダクトの骨格部材を利用して、冷却溶媒流路を形成できる。
【0013】
請求項3に記載の車両前部構造は、請求項2に記載の車両前部構造において、前記冷却風導入ダクトは、周縁を前記骨格部により構成された開口部を有し、前記開口部が前記冷却ユニットと対向して配置されている。
【0014】
請求項3に記載の車両前部構造では、冷却風導入ダクトが開口部を有している。この開口部の周縁は、骨格部により構成されており、開口部は冷却ユニットと対向して配置されている。このため、冷却風導入ダクトから冷却ユニットへ導かれる冷却風が、骨格部によって囲まれた開口部内を通過して冷却ユニットに導入される。このため、冷却ユニットへ導入される冷却風を効率よく冷却できる。
【0015】
請求項4に記載の車両前部構造は、請求項2又は請求項3に記載の車両前部構造において、前記冷却風導入ダクトは、一対の側壁と前記側壁の上端に掛け渡された上壁とを含んで構成され、前記上壁の周縁部に結合された前記骨格部に設けられ、冷却溶媒が流出される流出部を備えている。
【0016】
請求項4に記載の車両前部構造では、冷却風導入ダクトが一対の側壁と上壁とを含んで構成されており、上壁は一対の側壁の上端に掛け渡されている。ここで、上壁の周縁部に結合された骨格部には流出部が設けられており、流出部から冷却溶媒流路内の冷却溶媒が流出される。このため、冷却風導入ダクトの上部において、パワーユニットから延設されるラジエータホースを流出部に接続できる。これにより、冷却風導入ダクトに対するラジエータホースの組付け性を向上できる。
【0017】
請求項5に記載の車両前部構造は、請求項4に記載の車両前部構造において、前記流出部が前記骨格部から前記パワーユニット側へ突出されている。
【0018】
請求項5に記載の車両前部構造では、流出部が骨格部からパワーユニット側へ突出されているため、ラジエータホースを流出部に一層容易に組付けできる。
【0019】
請求項6に記載の車両前部構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両前部構造において、前記冷却ユニットと前記冷却風導入ダクトとがアッセンブリー化されている。
【0020】
請求項6に記載の車両前部構造では、冷却ユニットと冷却風導入ダクトとがアッセンブリー化されているため、車両への冷却ユニット及び冷却風導入ダクトの組付性を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の車両前部構造によれば、ラジエータホースの配管を容易にできる。
【0022】
請求項2に記載の車両前部構造によれば、冷却溶媒流路を効率よく設けることができる。
【0023】
請求項3に記載の車両前部構造によれば、冷却ユニットへ導入される冷却風を効率よく冷却できる。
【0024】
請求項4に記載の車両前部構造によれば、ラジエータホースの組付け性を向上できる。
【0025】
請求項5に記載の車両前部構造によれば、ラジエータホースを流出部に一層容易に組付けできる。
【0026】
請求項6に記載の車両前部構造によれば、車両への冷却ユニット及び冷却風導入ダクトの組付け性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る車両前部構造が適用された車両の前部を示す側断面図である。
【図2】図1に示される車両に用いられるラジエータ及びラジエータホースを示す斜視図である。
【図3】本発明のラジエータダクトが省略された比較例の車両の前部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両前部構造Sが適用された車両10の車両前方部が側断面図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印RHは車両右方(車幅方向一側)を示している。
【0029】
この図に示されるように、車両10の車両前方部には、パワーユニット室12(エンジンルーム)が設けられている。パワーユニット室12内には、パワーユニット14が配設されている。このパワーユニット14は、内燃機関であるエンジンと電動モータとを含んで構成されており、エンジン及び電動モータは、「前輪」としてのフロントホイールWf及び図示しないリヤホイールの少なくとも一方を駆動するための駆動源とされている。したがって、本実施形態に係る車両10は、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。
【0030】
パワーユニット室12の車両後方の端部には、ダッシュパネル16が設けられている。ダッシュパネル16は、車両前後方向に対して直交する方向に沿って配置されて、パワーユニット室12と車室Rとの間を仕切っている。また、ダッシュパネル16の車両下方の端部は、フロアパネル18の車両前方の端部に接合されている。このフロアパネル18における車幅方向の中央部には、フロアトンネル20が形成されている。フロアトンネル20は、車両前方から見て断面略逆U字形状に形成されて、下方へ開放されると共に、車両前後方向に沿って延在されている。これにより、フロアトンネル20の車両前方における開口端がパワーユニット14に対して車両後方に配置されている。
【0031】
パワーユニット室12の車両下方の端部には、パワーユニット14の下方において、アンダカバー22が設けられており、アンダカバー22はパワーユニット室12を下方から覆っている。アンダカバー22には、パワーユニット14の車両後方の位置において、外気導入ダクト部24が一体に設けられている。外気導入ダクト部24は、車両後方から見て断面略逆U字形状に形成されて、下方へ開放されており、外気導入ダクト部24の上壁24Aが車両後方へ向かうに従い上方へ傾斜して配置されている。また、外気導入ダクト部24は、排出口26を有しており、排出口26は外気導入ダクト部24内とパワーユニット室12内との間を連通している。これにより、車両10のフロア下を流れる走行風(冷却風)が排出口26からパワーユニット室12内へ導かれるように構成されている(図1の矢印A参照)。
【0032】
また、パワーユニット室12の車両前方の端部には、グリル開口部28が設けられており、車両前方からの走行風(冷却風)がグリル開口部28からパワーユニット室12内へ導入されるように構成されている。さらに、走行風(冷却風)は、パワーユニット14の下方を通過して、外気導入ダクト部24の上方に導かれるように構成されている(図1の矢印B参照)。
【0033】
次に、本発明の要部である「冷却風導入ダクト」としてのラジエータダクト60及び冷却ユニット30について説明する。
【0034】
冷却ユニット30は、フロアトンネル20の車両前方における開口端を塞ぐように設けられている。これにより、冷却ユニット30がパワーユニット14に対して車両後方にかつダッシュパネル16に対して車両前方に配置されている。冷却ユニット30は、熱交換器32と、熱交換器32に冷却風を導くためのファン46と、を含んで構成されており、熱交換器32は、パワーユニット14の冷却用のラジエータ34を含んで構成されている。なお、熱交換器32が、車両用エアコン装置(図示省略)の冷凍サイクルを構成するコンデンサ(凝縮器)とラジエータ34とを含んで構成にされてもよい。
【0035】
ラジエータ34は、空冷式の熱交換器として構成されている。そして、後述する流出側ラジエータホース50と流入側ラジエータホース52とラジエータダクト60とによって、ラジエータ34とパワーユニット14との間に冷却水(冷却溶媒)が循環される循環経路が形成されて、ラジエータ34がパワーユニット14からラジエータ34へ流出された冷却水を冷却するようになっている。また、ラジエータ34によって冷却された冷却水をパワーユニット14へ流入させることで、パワーユニット14が冷却されるようになっている。
【0036】
ラジエータ34は、略直方体状に形成されており、側面視において、車両上方へ向かうに従い車両前方へ傾斜して配置されている。ラジエータ34は、ラジエータ34の上部を構成するアッパタンク36と、ラジエータ34の下部を構成するロアタンク42と、アッパタンク36とロアタンク42との間に配置されたコア部40と、を含んで構成されている。
【0037】
図2に示すように、アッパタンク36には、車両右方の部分において、入口配管部38が設けられている。入口配管部38は、円筒状に形成されて、アッパタンク36から車両前方へ突出されており、入口配管部38内とアッパタンク36内とが連通されている。入口配管部38には、流出側ラジエータホース50(広義には、「ラジエータホース」として把握される要素である)の一端部が接続されており、流出側ラジエータホース50の他端部がパワーユニット14に接続されている(図1参照)。これにより、パワーユニット14から流出された高温の冷却水が、アッパタンク36内に流入されるように構成されている(図2に矢印C方向参照)。
【0038】
コア部40は、アッパタンク36とロアタンク42との間を連結しており、アッパタンク36内の冷却水がコア部40を介してロアタンク42へ流出されるように構成されている。コア部40は、例えば、複数の冷却水チューブ(図示省略)と放熱フィン(図示省略)とで構成されており、冷却水チューブがアッパタンク36及びロアタンク42に連通されている。また、放熱フィンは、各冷却水チューブの間に配置されており、冷却水チューブ及び放熱フィンの外周部を冷却風が通過することで、冷却水チューブ内の冷却水が冷却されて、この冷却水がロアタンク42に流出されるように構成されている。
【0039】
ロアタンク42には、車両左方の部分において、出口配管部44が設けられている。出口配管部44は、円筒状に形成されて、ロアタンク42から車両前方へ突出されており、出口配管部44内とロアタンク42内とが連通されている。出口配管部44は、後述するラジエータダクト60のパイプ部62と接続されており、これにより、ラジエータ34で冷却された冷却水が後述するパイプ部62の冷却溶媒流路64へ流入されるように構成されている。
【0040】
図1に示すように、ファン46は、ラジエータ34に対して車両後方に配置されている。このファン46は、図示しない車両制御部と電気的に接続されており、車両制御部の制御によって作動されるように構成されている。これにより、ファン46が作動されることで、ラジエータ34の車両前方から冷却風がラジエータ34に導入される。
【0041】
一方、ラジエータダクト60は、ラジエータ34に対して車両前方でかつパワーユニット14に対して車両後方に配置されている。図2に示すように、ラジエータダクト60は、「骨格部」としてのパイプ部62と上壁74と一対の側壁76とを含んで構成されている。
【0042】
パイプ部62は、ラジエータダクト60の骨格を構成すると共に、パイプ構造を成しており、パイプ部62の内部が冷却溶媒流路64とされている。このパイプ部62は、リヤパイプ部66とアッパパイプ部70と一対のロアパイプ部72とを含んで構成されている。リヤパイプ部66は、パイプ部62の車両後方の部分を構成すると共に、ラジエータ34の傾斜方向から見て矩形枠状に形成されている。そして、リヤパイプ部66はラジエータ34の車両前方面と対向して配置されており、これにより、リヤパイプ部66は、側面視において、車両上方に向かうに従い車両前方へ傾斜して配置されている。また、リヤパイプ部66の内周側の部分が開口部68とされており、開口部68はラジエータ34のコア部40と対向する位置に配置されている。
【0043】
アッパパイプ部70は、パイプ部62の車両上方の部分を構成すると共に、リヤパイプ部66の車両前方の位置に配置されている。アッパパイプ部70は、車両上方から見てリヤパイプ部66側へ開放された略U字形状に形成されており、アッパパイプ部70の開放端部がリヤパイプ部66の上部の角部に連結されている。また、アッパパイプ部70は、リヤパイプ部66の傾斜方向に沿ってリヤパイプ部66から突出されており、リヤパイプ部66内とアッパパイプ部70内とが連通されている。
【0044】
一対のロアパイプ部72は、リヤパイプ部66の下部の角部に連結されて、リヤパイプ部66から車両前方へ突出されている。また、ロアパイプ部72内とリヤパイプ部66内とは連通されており、リヤパイプ部66の車両前方端部は、閉塞されている。
【0045】
上壁74は、ラジエータダクト60の上部に設けられている。上壁74は、矩形板状に形成されて、リヤパイプ部66の上辺とアッパパイプ部70とに結合されている。これにより、上壁74は、側面視において車両前方に向かうに従い車両前方へ傾斜して配置されている。
【0046】
側壁76は、ラジエータダクト60の車幅方向両側部にそれぞれ設けられており、側壁76の上端部が上壁74の車幅方向両端部に結合されている。側壁76は、略台形板状に形成されると共に、リヤパイプ部66の側辺、アッパパイプ部70の側辺、及びロアパイプ部72に結合されて、車幅方向に対して直交する方向に沿って配置されている。また、図1に示すように、側壁76の車両前方端部は、外気導入ダクト部24における上壁24Aの車両後方端部に対して車両後方に配置されている。これにより、ラジエータダクト60内と外気導入ダクト部24内とが排出口26を介して連通されると共に、ラジエータダクト60内と上壁24Aの上方の空間とが連通されている。したがって、車両10の走行時やファン46が作動された際には、グリル開口部28から導入された走行風(冷却風)が外気導入ダクト部24内へ導入されると共に、外気導入ダクト部24から導入された走行風(冷却風)が外気導入ダクト部24内へ導入されるように構成されている。
【0047】
さらに、図2に示すように、リヤパイプ部66の下部には、入口側連結部78(広義には、「流入部」として把握される要素である)が設けられている。入口側連結部78は円筒状に形成されており、入口側連結部78内と冷却溶媒流路64とが連通されている。また、入口側連結部78は、リヤパイプ部66からラジエータ34側(車両後方)へ突出されると共に、ラジエータ34の出口配管部44と同軸上に配置されており、入口側連結部78内に出口配管部44が嵌入されて、ラジエータダクト60とラジエータ34とがアッセンブリー化されている。これにより、ラジエータ34のロアタンク42内とラジエータダクト60の冷却溶媒流路64とが、出口配管部44及び入口側連結部78を介して、連通されている。また、リヤパイプ部66とラジエータ34との間に隙間が生じない状態で、ラジエータダクト60が配置されている。
【0048】
またさらに、アッパパイプ部70の車両右方かつ車両前方の角部には、「流出部」としての出口側連結部80が設けられている。出口側連結部80は、円筒状に形成されて、出口側連結部80内と冷却溶媒流路64とが連通されている。この出口側連結部80は、上壁24Aに対して直交する方向かつ上方へアッパパイプ部70から突出されて上壁74を貫通している。つまり、出口側連結部80は、側面視において車両上方へ向かうに従い車両前方へ向けて傾斜されると共に、パワーユニット14へ向けてパイプ部62から突出されている(図1参照)。
【0049】
出口側連結部80には、流入側ラジエータホース52(広義には、「ラジエータホース」として把握される要素である)の一端部が接続されており、これにより、流入側ラジエータホース52とラジエータ34のロアタンク42とが、ラジエータダクト60のパイプ部62を介して、連結されている(図1参照)。この流入側ラジエータホース52の他端部は、パワーユニット14に接続されている。これにより、ラジエータ34とパワーユニット14の間に冷却水の循環経路が形成されて、ラジエータ34で冷却された冷却水が、出口側連結部80から図2に示す矢印D方向へ流出されて、流入側ラジエータホース52を介してパワーユニット14へ流入されるように構成されている。
【0050】
次に、本実施形態に係る車両前部構造Sが適用された車両10の作用及び効果について説明する。
【0051】
上記構成の車両前部構造Sが適用された車両10では、車両10の走行時又は走行可能状態の際に、パワーユニット14とラジエータ34との間を冷却水が循環して、冷却水によってパワーユニット14が冷却される。
【0052】
具体的には、パワーユニット14から流出側ラジエータホース50へ流出された高温の冷却水が、ラジエータ34の入口配管部38を介して、アッパタンク36内に流入される。アッパタンク36内の冷却水は、アッパタンク36から冷却水用チューブ内を通過してロアタンク42内へ流入される。この際には、グリル開口部28及び外気導入ダクト部24からラジエータダクト60へ導入された走行風(冷却風)が、ラジエータダクト60内を通過してラジエータ34に導かれる。これにより、この走行風(冷却風)がラジエータ34のコア部40内を通過することで、冷却水用チューブ内の冷却水と空気との間で熱交換されて当該冷却水が冷却される。そして、冷却された(低温の)冷却水がロアタンク42内へ流入される。
【0053】
ロアタンク42内の冷却水は、ラジエータ34の出口配管部44及びラジエータダクト60の入口側連結部78から流出されて、ラジエータダクト60の冷却溶媒流路64内へ流入される。ラジエータダクト60の冷却溶媒流路64内へ流入された冷却水は、ラジエータダクト60の出口側連結部80から流入側ラジエータホース52へ流出されて、流入側ラジエータホース52を介してパワーユニット14内へ流入される。これにより、パワーユニット14とラジエータ34との間で冷却水が循環される。
【0054】
ここで、上述したように、ラジエータダクト60には、パイプ部62が設けられている。そして、パイプ部62は、入口側連結部78においてラジエータ34(冷却ユニット30)のロアタンク42と接続されており、ラジエータ34により冷却された冷却水(冷却溶媒)がパイプ部62の冷却溶媒流路64内に流入される。これにより、パイプ部62とパワーユニット14との間を流入側ラジエータホース52が連結することで、ラジエータ34により冷却された冷却水をパワーユニット14へ供給(流入)できる。したがって、ラジエータダクト60がパワーユニット14とラジエータ34との間に配置されて、流入側ラジエータホース52がラジエータダクト60とパワーユニット14との間に延設されるため、図3に示されるラジエータダクト60が省略された比較例の車両10’と比較して、流入側ラジエータホース52の長さを短くできる。
【0055】
また、ラジエータダクト60がラジエータ34の車両前方に配置されているため、流入側ラジエータホース52をラジエータ34の車両前方に配管することなく、流入側ラジエータホース52がラジエータ34とパワーユニット14との間を連結できる。これにより、ラジエータ34の車両前方において、ラジエータ34へ導入される走行風(冷却風)を遮らないように流入側ラジエータホース52を配管する必要がなくなり、流入側ラジエータホース52の取り回しを良好にできる。
【0056】
以上により、流入側ラジエータホース52の配管を容易にできる。
【0057】
しかも、ラジエータダクト60のパイプ部62には、ラジエータ34によって冷却された冷却水が流通する冷却溶媒流路64が設けられているため、ラジエータダクト60内を通過する冷却風も冷却溶媒流路64内の冷却水によって冷却できる。これにより、冷却された冷却風をラジエータ34へ導入できるため、冷却水に対するラジエータ34の冷却効率も向上できる。
【0058】
特に、パワーユニット14に対して車両後方にラジエータ34が配置されている形態では、グリル開口部28からパワーユニット室12内に導入された冷却風がパワーユニット14の下方を通過する際に、当該冷却風がパワーユニット14によって暖められる。このため、この暖められた冷却風をラジエータダクト60によって冷却させてからラジエータ34へ導くことができる。
【0059】
また、パイプ部62は、パイプ構造を成してラジエータダクト60の骨格を構成しており、パイプ部62の内部に、冷却水が流通する冷却溶媒流路64が形成されている。このため、ラジエータダクト60の骨格部材を利用して、冷却水の通路を形成できる。これにより、冷却水の通路を効率よく設けることができる。
【0060】
さらに、ラジエータダクト60は開口部68を有しており、開口部68の周縁は、リヤパイプ部66により構成されている。また、開口部68はラジエータ34と対向して配置されている。このため、ラジエータダクト60からラジエータ34へ導かれる冷却風が、リヤパイプ部66によって囲まれた開口部68内を通過して、ラジエータ34に導入される。このため、当該冷却風を一層効率よく冷却できる。
【0061】
また、出口側連結部80がラジエータダクト60のアッパパイプ部70に設けられており、出口側連結部80と流入側ラジエータホース52とが接続されている。さらに、ラジエータ34の入口配管部38は、ラジエータ34の上部に配置されている。このため、ラジエータダクト60の上方において、流入側ラジエータホース52を出口側連結部80に接続でき、流出側ラジエータホース50を入口配管部38に接続できる。これにより、流入側ラジエータホース52及び流出側ラジエータホース50の組付け性を向上できる。
【0062】
さらに、出口側連結部80がアッパパイプ部70からパワーユニット14側へ突出されている。このため、パワーユニット14から延設された流入側ラジエータホース52を出口側連結部80へ一層容易に組付けできる。
【0063】
また、冷却ユニット30とラジエータダクト60とがアッセンブリー化されている。このため、パワーユニット室12内への冷却ユニット30(ラジエータ34)及びラジエータダクト60の組付性を向上できる。
【0064】
さらに、ラジエータ34は、側面視において車両上方へ向かうに従い車両前方へ傾斜して配置されている。このため、パワーユニット室12内における冷却ユニット30の設置スペースを小さくできる。
【0065】
なお、本実施の形態では、ラジエータ34によって冷却された冷却水がパイプ部62内を流通するように構成されているが、冷却水が流通する構成はこれに限らない。例えば、パイプ部62とは別に、ラジエータ34の出口配管部44と流入側ラジエータホース52の一端部との間を連結する管を設けて、この管を側壁76及び上壁24Aの内周面に沿うよう配置してもよい。また、例えば、パイプ部62を省略すると共に、側壁76及び上壁24Aを一体に設けて、この一体にされた側壁76及び上壁24Aを中空に形成することで、側壁76内及び上壁24A内を冷却水が流通するように構成してもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、ラジエータダクト60における出口側連結部80は、アッパパイプ部70の車両右方かつ車両前方の角部に設けられているが、出口側連結部80は、パイプ部62の任意の位置に配置できる。これにより、パワーユニット14とラジエータ34との位置関係を考慮して、出口側連結部80を最適な位置に配置することで、流入側ラジエータホース52を出口側連結部80に一層容易に接続できる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、ラジエータ34のアッパタンク36がラジエータ34の上部を構成しており、ラジエータ34のロアタンク42がラジエータ34の下部を構成している。これに替えて、アッパタンク36がラジエータ34の車両右側部を構成して、ロアタンク42がラジエータ34の車両左側部を構成するように、アッパタンク36及びロアタンク42を配置してもよい。
【0068】
また、本実施の形態におけるパイプ部62の形状は任意に設定できる。例えば、一対のロアパイプ部72の車両前方端部を連結するパイプ部を追加してもよい。また、アッパパイプ部70の車両前方の一対の角部と一対のロアパイプ部72の車両前方端部とをそれぞれ連結するパイプ部を追加してもよい。
【0069】
さらに、本実施の形態では、パワーユニット14が、エンジンと電動モータとを含んで構成されている。これに替えて、パワーユニット14がエンジンのみで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 車両
14 パワーユニット
30 冷却ユニット
60 ラジエータダクト(冷却風導入ダクト)
62 パイプ部(骨格部)
64 冷却溶媒流路
68 開口部
74 上壁
76 側壁
80 出口側連結部(流出部)
S 車両前部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも車両の前輪を駆動するパワーユニットに対して車両後方に設けられ、前記パワーユニットを冷却するための冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの車両前方に設けられ、前記冷却ユニットへ冷却風を導くように形成された冷却風導入ダクトと、
前記冷却風導入ダクトに設けられ、前記冷却ユニットと接続されると共に、前記冷却ユニットにより冷却された冷却溶媒が流通される冷却溶媒流路と、
を備えた車両前部構造。
【請求項2】
パイプ構造を成して内部に前記冷却溶媒流路が形成され、前記冷却風導入ダクトの骨格を構成する骨格部を備えた請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記冷却風導入ダクトは、周縁を前記骨格部により構成された開口部を有し、
前記開口部が前記冷却ユニットと対向して配置された請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記冷却風導入ダクトは、一対の側壁と前記側壁の上端に掛け渡された上壁とを含んで構成され、
前記上壁の周縁部に結合された前記骨格部に設けられ、冷却溶媒が流出される流出部を備えた請求項2又は請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記流出部が前記骨格部から前記パワーユニット側へ突出された請求項4に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記冷却ユニットと前記冷却風導入ダクトとがアッセンブリー化された請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103536(P2013−103536A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246876(P2011−246876)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】