説明

車両周囲監視装置

【課題】車両周囲監視装置において、夜間等における被視認性の向上を図りつつ、それ自体が主体的に動かない障害物に対しても、乗員に適切な注意を喚起させる。
【解決手段】CCD撮像部10と、CMOS撮像部20と、車両の周囲の被写体領域Oに対して、近赤外線領域の照明光Iを照射する補助光照射手段40と、被写体領域Oの像を担持した光Pのうち可視光領域の第一の光P1と近赤外線領域の第二の光P2とに分割し、第一の光P1をCCD撮像部10に、第二の光P2をCMOS撮像部20に、それぞれ投影させる光学系30と、被写体領域Oの各部分までの距離に関する情報S3を取得する距離情報算出部50と、第一の光P1の像信号S1と第二の光P2の像信号S2とを合成して合成像信号S4を求め、距離に関する情報S3を第一の像信号S1に重畳して重畳像信号S5を求める信号合成処理部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周囲監視装置に関し、詳細には、詳細には、車両に搭載されて車両の周辺を撮影するカメラから得る情報に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラおよびモニタを車両に搭載し、カメラで撮影して得られた画像情報を可視像としてモニタに表示させ、車両乗員の運転操作を助ける車載カメラシステムが普及している。
【0003】
例えば、車両の後方や側方等の車両周囲(車両の一部を含む場合も含む)を撮影し、この撮影された画像や映像を車載モニタに表示して、後退操作や幅寄せ操作等の労力を軽減する車両周囲監視装置(駐車支援システムや側方モニタシステムなど)がある。
【0004】
また、夜間等可視光による照明を得るのが難しい状況下でも、像を表示できるように、可視光領域の光像に代えて近赤外線領域や赤外線領域の光像を得るようにしたものもある。
【0005】
しかし、これら近赤外線領域や赤外線領域(以下、近赤外線領域等という。)の光像は、昼間においては可視光領域の光像よりも視認性が劣るため、可視光領域の光像と近赤外線領域や赤外線領域の光像とをそれぞれ別異に撮像する2つのカメラを備えた車載監視カメラ装置が提案されている。
【0006】
2つのカメラを備えた監視カメラ装置は、例えば、昼間は一方のカメラで撮像された可視光領域の光像を表示させ、夜間は他方のカメラで撮像された近赤外線領域等の光像を表示させるように構成されたものであり、この監視カメラ装置では、両光像の位置関係の対応容易化のために、各カメラに光像を導く光学系を、2つのカメラで兼用した構成が採用されている(特許文献1)。
【0007】
また、一方のカメラで撮像された可視光領域の光像を表示することを基本としつつ、目視で認知しにくい夜間における生物や動きのある物体を、近赤外線領域等の光像を得る他方のカメラで撮像し、この他方のカメラで撮像された生物等の位置に対応する、可視光領域の光像における部分を、強調して表示するものもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−094050号公報
【特許文献2】特開2005−184523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2の技術は、生物等を検知しやすくするものであるが、実際の運転操作では、生物等以外の動かない物体であっても障害物となり得るため、それ自体が主体的に動かない障害物に対しても、乗員に適切な注意を喚起させる必要がある。
【0009】
また、乗員の視認性を確保すべく、夜間等における被視認性の向上を図る必要がある点については、特許文献1,2と同様にである。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、夜間等における被視認性の向上を図りつつ、それ自体が主体的に動かない障害物に対しても、乗員に適切な注意を喚起させることができる車両周囲監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る車両周囲監視装置は、第二の撮像手段により、近赤外線領域等の光像を撮像するだけでなく、近赤外線領域等を含む照明光の照射との関係に基づいて、被写体までの距離を検出し、主に夜間は、第一の撮像手段で得られた可視光領域の光像と第二の撮像手段で得られた近赤外線領域等の光像とを、例えば近赤外線領域等の光像に重み付けするか、あるいは第二の撮像手段として近赤外線領域等の光に対する感度の高いものを用いるか等して、両光像を合成表示可能とすることで、被視認性の向上を図り、主に夜間以外は、被写体までの距離を文字(数値等)や色などの情報にして、第一の撮像手段で得られた可視光領域の光像に重畳表示可能とし、動かない障害物に対しても、乗員が適切に注意喚起できるようにしたものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る車両周囲監視装置は、第一の撮像手段と、第二の撮像手段と、車両の周囲の被写体に対して、少なくとも近赤外線領域または赤外線領域を含む照明光を照射する補助光照射手段と、前記車両の周囲の被写体の像を担持した光が入射し、この入射した光のうち少なくとも可視光領域を含む第一の光と少なくとも近赤外線領域または赤外線領域を含む第二の光とにその進行する光路を分割し、前記第一の光を前記第一の撮像手段に投影させ、前記第二の光を前記第二の撮像手段に投影させる光学系と、前記補助光照射手段および前記第二の撮像手段により得られた情報に基づいて、前記被写体までの距離に関する情報を取得する距離情報算出手段と、前記第一の撮像手段に前記第一の光が投影して得られた第一の光像と前記第二の撮像手段に前記第二の光が投影して得られた第二の光像とを、これら両像の位置関係を対応させて合成して合成像信号を求めるとともに、前記距離情報算出手段により取得された前記距離に関する情報を、前記第一の光像を表す像信号に重畳して重畳像信号を求める信号合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
ここで、第一の撮像手段と第二の撮像手段とは、互いに同一である二つの撮像手段であってもよいが、第二の撮像手段の方が第一の撮像手段よりも、第二の光に対する感度が相対的に高い特性を有するものであることが好ましい。
【0014】
例えば、CMOS撮像手段はCCD撮像手段よりも、第二の光に対する感度が相対的に高いため、第一の撮像手段としてCCD撮像手段を適用し、第二の撮像手段としてCMOS撮像手段を適用することにより、好ましい構成を実現することができる。
【0015】
また、第一の撮像手段としてCMOS撮像手段を適用し、第二の撮像手段として、第一の撮像手段としてのCMOS撮像手段よりも、第二の光に対する感度が一層高いCMOS撮像手段を適用することによっても、好ましい構成を実現することができる。
【0016】
同一の二つの撮像手段とする構成においては、信号合成手段が、第一の光像を表す第一の像信号と第二の光像を表す第二の像信号とを合成して合成像信号を生成する際に、第一の像信号よりも第二の像信号に相対的に加重する重み付けを行うなど、合成像信号は、光路分割前の元の被写体の像よりも、第二の光像が相対的に強調された像を再生しうる像信号であることが必要である。
【0017】
一方、第二の撮像手段の方が第一の撮像手段よりも、第二の光に対する感度が相対的に高い特性を有するものである構成によれば、第二の撮像手段は、近赤外線領域や赤外線領域の周波数帯域の光に対する受光感度が第一撮像手段よりも高くなり、第一の撮像手段に投影される光と第二の撮像手段に投影される光とが全く同一であっても、第二の撮像手段の方が、第一の撮像手段よりも高感度に、その光の中に含まれる近赤外線領域や赤外線領域の光像等を撮影することができる。
【0018】
したがって、信号合成手段が、第一の像信号よりも第二の像信号に相対的に加重する重み付けを行わない場合であっても、合成像信号は、光路分割前の元の被写体の像よりも、第二の光像が相対的に強調された像を再生しうる合成像信号となる。
【0019】
なお、第二の撮像手段の方が第一の撮像手段よりも、第二の光に対する感度が相対的に高い特性を有するものである構成によれば、上記光学系のうち光路を分割する手段としてプリズムやビームスプリッタなど周波数帯域に応じて光路を分ける手段を適用する必要はなく、ハーフミラーなど周波数帯域に拘わらず単純に光路を2つに分割する手段を適用することもできる。
【0020】
距離情報算出手段が、補助光照射手段および第二の撮像手段により得られた情報に基づいて被写体までの距離に関する情報を取得する処理の一例としては、補助光照射手段からパルス状の近赤外光(近赤外線領域の光)を被写体領域に出射し、第二の撮像手段を構成する各受光素子が、被写体領域の各部分で反射した近赤外光を受光するまでの時間間隔を測定することにより、第二の撮像手段を構成する各受光素子の配置位置に対応した被写体領域の各部分ごとの、第二の撮像手段との離間距離を算出することができる。
【0021】
なお、本発明に係る車両周囲監視装置における距離情報算出手段による距離の求め方としては、上述の例示した方法のみに限定されるものではなく、公知の種々の方法を採用することができる。
【0022】
重畳像信号は、距離に関する情報を文字化して第一の光像を表す像信号に重畳したものであってもよいし、距離に関する情報に応じた彩色像を生成して、この彩色像を第一の光像を表す像信号に重畳したものであってもよいし、距離に関する情報をその他の形式に変換した上で、その変換された情報を第一の光像を表す像信号に重畳したものであってもよい。
【0023】
なお、信号合成手段が求めた合成像信号および重畳像信号を両方とも出力してもよいが、単一の表示手段(車両周囲監視装置自体が備えるものではなく外部の表示手段であっても、車両周囲監視装置自体が付加的に備えるものであってもよい。)に表示されるのは通常は一つの画像に過ぎないため、合成像信号および重畳像信号のうちいずれか一方を選択して出力するようにしてもよい。
【0024】
この場合、合成像信号および重畳像信号のうちいずれか一方を選択する選択手段を新たに設け、信号合成手段は、この選択手段に入力された選択の指示に応じて、合成像信号または重畳像信号を出力するものとすればよい。
【0025】
選択手段は、乗員の任意の選択指示を手動で入力することができる選択スイッチや選択ボタン等のようなものであってもよいし、太陽光による日射程度を検出する日射センサ等既存の車載機器からの情報に基づいて、自動的に選択を行うコントローラのようなものであってもよい。
【0026】
選択手段に対する選択の視覚的なインターフェイスとしては、「昼のマーク」等または「夜のマーク」等に直接対応させてもよく、信号合成手段は、「昼」が選択されたときは重畳像信号を出力し、「夜」が指定されたときは合成像信号を出力することで、乗員に、理解し易いインターフェイスを提供することができる。
【0027】
もちろん、信号合成手段が求めた合成像信号および重畳像信号を両方とも出力して同時に表示させるようにしてもよい。すなわち、表示手段の表示領域を区割りして、合成像信号に対応した像を区割りしたうちの一つの表示領域に表示させ、重畳像信号に対応した像を他の一つの表示領域に表示させてもよい。
【0028】
本発明に係る車両周囲監視装置によれば、光学系に入射した車両周囲の被写体(路面や景色等)の像を担持した光は、光学系の光路分割手段によって、少なくとも可視光領域を含む第一の光と、少なくとも近赤外線領域または赤外線領域を含む第二の光とに、その進行する光路が分割され、第一の光は第一の光像として第一の撮像手段に投影され、第二の光は第二の光像として第二の撮像手段に投影される。
【0029】
これにより、第一の撮像手段には、被写体の、主として可視光領域の光の像(第一の光像)が投影され、第一の撮像手段からは、この第一の光像を表す画像信号(第一の像信号)を得ることができる。
【0030】
一方、第二の撮像手段には、被写体の、主として近赤外線領域または赤外線領域の光の像(第二の光像)が投影され、第二の撮像手段からは、この第二の光像を表す画像信号(第二の像信号)を得ることができる。
【0031】
ここで一般に、太陽光の照射により得られる通常の可視像は、被視認性に優れた画像であるが、第二の撮像手段に入射する前の段階で、第二の光が光路分割によって分離除去された第一の光像には、可視像の視認性の低下を招く第二の光が含まれないため、第二の光が分離除去されていない通常の可視像よりも、被視認性が高められている。
【0032】
一方、太陽光の照射がない夜間等の可視像は、明度、コントラスト、彩度がいずれも低く、被視認性が悪い。
【0033】
これに対して、太陽光の照射により得られる昼間の近赤外線領域または赤外線領域の光像は、第一の光像よりも被視認性に劣る画像である。
【0034】
一方、太陽光の照射がない夜間等の第二の光像は、第一の光像よりも、明度やコントラストを高くすることができ、第一の光像よりも被視認性を優れたものとすることができる。
【0035】
以上より、昼間の被視認性は、
第一の光像>通常の可視像>第二の光像
という序列となり、左側のものほど被視認性が高い。
【0036】
これに対して、夜間の被視認性は、
第二の光像>第一の光像
という序列となり、第二の光像が第一の光像よりも被視認性が高い。ただし、夜間の被視認性に関しては、完全に真っ暗である場合以外は、可視光領域の光像との対応位置関係を認識できる方が、現実感を把握するうえで好ましい。
【0037】
したがって、夜間等においては、信号合成手段により、第一の光像と第二の光像とを位置関係を対応させて合成された合成像信号を、画像表示に供することで、夜間の被視認性を向上させることができる。
【0038】
一方、昼間においては、信号合成手段によって、距離情報算出手段により取得された距離に関する情報を第一の光像を表す像信号に重畳した重畳像信号を、画像表示に供することで、被写体までの距離に対する注意を喚起することができる。
【0039】
このように、本発明に係る車両周囲監視装置は、夜間等における被視認性の向上を図りつつ、それ自体が主体的に動かない障害物に対しても、乗員に適切な注意を喚起させる。
【0040】
また、本発明に係る車両周囲監視装置は、第一の撮像手段と第二の撮像手段とに共用される光学系を備えているため、第一の撮像手段と第二の撮像手段とに対して独立した光学系をそれぞれ備えた車両周囲監視装置に比べて、構成部品点数の増加を抑制することができ、構成部品点数の増加に伴う装置サイズの大型化や装置製造のコストの上昇を抑えることができる。
【0041】
さらに、光路を分割する以前に対応する光学系の部分は、第一の撮像手段と第二の撮像手段とで共用されているため、第一の光像と第二の光像とで、対応する部位同士の位置合わせを容易にすることもできる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る車両周囲監視装置によれば、夜間等における被視認性の向上を図りつつ、それ自体が主体的に動かない障害物に対しても、乗員に適切な注意を喚起させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明に係る車両周囲監視装置の最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本発明の一実施例である車両周囲監視装置100の構成を示すブロック図である。図示の車両周囲監視装置100は、車両に搭載されており、CCDカメラ11およびCCD信号処理部12からなるCCD撮像部10(第一の撮像手段)と、CMOSカメラ21およびCMOS信号処理部22からなるCMOS撮像部20(第二の撮像手段)と、車両の周囲であって例えば車両後方の主として下方の被写体領域O(被写体)に対して、近赤外線領域の照明光Iを照射する補助光照射手段40と、被写体領域Oの像を担持した光Pが入射し、この入射した光Pのうち可視光領域の第一の光P1と、近赤外線領域の第二の光P2とに、その進行する光路を分割し、第一の光P1をCCDカメラ11に投影させ、第二の光P2をCMOSカメラ21に投影させる光学系30と、補助光照射手段40およびCMOS撮像部20により得られた情報に基づいて、被写体領域Oを構成する各部分までの距離に関する情報S3を取得する距離情報算出部50(距離情報算出手段)と、CCD撮像部10に第一の光P1が投影して得られた第一の光像(P1)とCMOS撮像部20に第二の光P2が投影して得られた第二の光像(P2)とを、これら両像P1,P2の位置関係を完全に一致させて、両像P1,P2の各像信号S1,S2を合成して合成像信号S4を求めるとともに、距離情報算出部50により取得された距離に関する情報S3を、第一の光像P1を表す像信号S1に重畳して重畳像信号S5を求める信号合成処理部60(信号合成手段)とを備えた構成である。
【0045】
ここで、CCDカメラ11はCCD本体であり、CCD信号処理部12はCCDカメラ11から出力された像信号S1に対して所定の信号処理を施したり、CCDカメラ11から像信号S1を出力させるための転送パルスをCCDカメラ11に与えている。
【0046】
CMOSカメラ21はCMOS本体であり、CMOS信号処理部22はCMOSカメラ21から出力された像信号S2に対して所定の信号処理を施したり、CMOSカメラ21から像信号S2を出力させるための転送パルスをCMOSカメラ21に与えている。
【0047】
光学系30は、最も被写体領域Oに近い側に設けられた対物レンズ31と、被写体領域Oの像を担持した光Pのうち可視光領域の第一の光P1と、近赤外線領域の第二の光P2とに、その進行する光路を分割するビームスプリッタ32とを備えている。
【0048】
なお、CCDカメラ11とCMOSカメラ21とには、互いに同一の大きさで、光P1,P2の光像P1,P2が結像するように、光学系30とCCDカメラ11,CMOSカメラ21とが配置されている。
【0049】
補助光照射手段40は、近赤外線領域の照明光Iを出射する出射部41と、出射部41から出射される照明光Iが、所定のパルス状の光となるように、この出射部41の駆動を制御する近赤外線駆動部42とからなる。
【0050】
ここで、車両周囲監視装置100が搭載された当該車両には、カーナビゲーションシステムが装備されており、本実施形態の車両周囲監視装置100の信号合成処理部60から、このカーナビゲーションシステムの一部として既に備えられているモニタに、合成像信号S4または重畳像信号S5という出力信号S6が送出されて、当該モニタに、合成像信号S4に対応した合成像または重畳像信号S5に対応した重畳像が表示される。
【0051】
なお、上述したカーナビゲーションシステムのようなモニタを含むシステムが備えられていない車両に搭載する車両周囲監視装置100にあっては、信号合成処理部60から出力される出力信号S6に応じた像を可視的に表示するモニタ(表示手段)をさらに備えた構成とすればよい。
【0052】
次に本実施形態の車両周囲監視装置100の作用について説明する。
【0053】
まず、近赤外線駆動部42が出射部41を駆動制御して、出射部41から近赤外線領域のパルス状の照明光Iを、被写体領域Oに向けて出射する。また、近赤外線駆動部42は、出射部41からの照明光Iの出射タイミングに対応した制御信号を、距離情報算出部50に入力する。
【0054】
照明光Iが照射された被写体領域Oからは、この照明光Iによる被写体領域Oからの反射光(近紫外線領域)と、太陽光等可視光の照明による被写体領域Oからの反射光(可視光領域)とが合成された状態の、被写体領域Oの像を担持した光Pが出射され、この光Pが光学系30の対物レンズ31に入力される。
【0055】
対物レンズ31に入射された光Pはビームスプリッタ32に入射し、光Pのうち可視光領域の第一の光P1だけがビームスプリッタ32を透過して、CCDカメラ11の受光面上に、その第一の光P1が担持する光像P1として結像される。
【0056】
一方、ビームスプリッタ32に入射した光Pのうち近赤外線領域の第二の光P2はビームスプリッタ32で反射され、CMOSカメラ21の受光面上に、その第二の光P2が担持する光像P2として結像される。
【0057】
CCDカメラ11に結像された第一の光像P1は、この第一の光像P1を表す第一の像信号S1に変換され、CCD信号処理部12において所定の信号処理が施されて、信号合成処理部60に入力される。
【0058】
一方、CMOSカメラ21に結像された第二の光像P2は、この第二の光像P2を表す第二の像信号S2に変換され、CMOS信号処理部22において所定の信号処理が施されて、信号合成処理部60に入力される。
【0059】
CMOS信号処理部22は、さらに、CMOSカメラ21の各受光素子が第二の光像P2を受光したタイミングを、距離情報算出部50に入力する。
【0060】
これにより、距離情報算出部50には、照明光Iが被写体領域Oに向けて出射されたタイミング(近赤外線駆動部42からの入力)と、CMOSカメラ21の各受光素子が、照明光Iの被写体領域Oによる反射光である第二の光P2を受光したタイミング(CMOS信号処理部22からの入力)とが入力され、距離情報算出部50は、これらのタイミングに基づいて、被写体領域Oの各部分とCMOSカメラ21との離間距離を、当該各部分ごとに算出する。
【0061】
ここで、CMOSカメラ21を構成する各受光素子の配置位置と、第二の光像P2の各部分の位置とは対応関係にあり、かつ、第二の光像P2の各部分の位置と被写体領域Oにおける各部分の位置とは対応関係にあるため、CMOSカメラ21の受光素子間での受光タイミングのずれは、被写体領域Oの各部分とCMOSカメラ21との離間距離の差異を表す。
【0062】
したがって、距離情報算出部50は、上述したように、近赤外線駆動部42から制御信号が入力されたタイミングとCMOS信号処理部22からCMOSカメラ21の各受光素子が第二の光P2を受光したタイミングとに基づいて、被写体領域Oの各部分とCMOSカメラ21との離間距離を、当該各部分ごとに算出することができる。
【0063】
この距離情報算出部50により求められた被写体領域Oの各部分ごとの離間距離に関する情報S3も、信号合成処理部60に入力される。
【0064】
信号合成処理部60は、CCD信号処理部12から入力された第一の光像P1を表す第一の像信号S1と、CMOS信号処理部22から入力された第二の光像P2を表す第二の像信号S2とを、両光像P1,P2の位置関係を完全に一致させて、両像信号S1,S2を合成して合成像信号S4を求める。
【0065】
この合成像信号S4は、両像信号S1,S2の単純な加算平均(S4=(S1+S2)/2)であってもよいし、いずれか一方に重みを付けた加重平均(S4=(m・S1+n・S2)/(m+n))であってもよい。
【0066】
夜間の場合は、第一の光像P1に対応した像信号S1が極めて小さい値となるため、単純な加算平均よりも、第二の光像P2の像信号S2に対して相対的に重みをつけた加重平均(m<n)を適用するのが好ましい。
【0067】
さらに、信号合成処理部60は、距離情報算出部50により求められた距離に関する情報S3を、第一の光像P1を表す像信号S1に重畳して重畳像信号S5を求める。
【0068】
この重畳像信号S5としては、距離に関する情報S3を、その距離に対応した数値等の文字情報に変換し、この文字情報を、第一の光像P1の像信号S1に重畳したものであってもよいし、距離に関する情報S3の当該距離に応じた彩色像をまず生成し、この彩色像を第一の光像P1の像信号S1に、位置関係を対応させて重畳したものであってもよい。
【0069】
距離に関する情報S3を文字情報として、第一の光像P1の像信号S1に重畳した重畳像信号S5をモニタに表示するときは、第一の光像P1に、被写体領域Oとの距離が文字化されて重畳表示されるため、文字の大きさや太さ、色等に差異を与えたり、点滅させる等して、表示内容にインパクトを与えることができ、乗員に対して注意を喚起させる性能をより高めることができる。
【0070】
一方、距離に関する情報S3を彩色像化して、第一の光像P1の像信号S1に重畳した重畳像信号S5をモニタに表示するときは、第一の光像P1に、被写体領域Oとの距離に応じて色彩の差異が設定された彩色像が、位置関係が対応して重畳表示されるため、像としての表示内容にインパクトを与えることができ、乗員に対して注意を喚起させる性能をより高めることができる。
【0071】
以上のようにして、信号合成処理部60によって求められた合成像信号S4および重畳像信号S5のうち、いずれか一方の信号S4またはS5が信号合成処理部60により選択されて、外部のモニタ等に出力される。
【0072】
この出力信号S6として、合成像信号S4を選択するか、重畳像信号S5を選択するかは、太陽光による日射程度を検出する日射センサ等既存の車載機器からの情報に基づいて自動的に選択を行うものであってもよいし、手動で選択する選択手段を新たに設けて、信号合成処理部60は、この選択手段に入力された選択の指示に応じて、合成像信号S4または重畳像信号S5を出力するものとすればよい。
【0073】
選択手段は、乗員の任意の選択指示を入力することができる選択スイッチのようなものであってもよい。
【0074】
選択手段に対する選択の入力方法としては、「昼」または「夜」に直接対応させてもよく、信号合成手段は、「昼」が選択されたときは重畳像信号S5を出力し、「夜」が指定されたときは合成像信号S4を出力することで、理解し易いインターフェイスを乗員に提供することができる。
【0075】
もちろん、信号合成処理部60が、求めた合成像信号S4および重畳像信号S5を両方とも出力して、これら2つの像信号S4,S5に対応したつの像を、モニタに同時に表示させるようにしてもよい。すなわち、モニタの表示領域を区割りして、合成像信号S4に対応した像を区割りしたうちの一つの表示領域に表示させ、重畳像信号S5に対応した像を他の一つの表示領域に表示させてもよい。
【0076】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る車両周囲監視装置100によれば、夜間等においては、信号合成処理部60により、可視光領域の光像である第一の光像P1と近赤外線領域の光像である第二の光像P2とをこれら両者の位置関係を対応して合成された合成像信号S4を、モニタへの表示用の出力信号S6として出力することで、夜間の被視認性を向上させることができる。
【0077】
一方、昼間においては、信号合成処理部60により、距離情報算出部50により求められた距離に関する情報S3を可視光領域の光像である第一の光像P1を表す像信号S1に重畳した重畳像信号S5を、モニタへの表示用の出力信号S6として出力することで、モニタに、単なる可視像を表示する場合よりも、移動体であるか静止物であるかに拘わらず被写体までの距離に対する乗員の注意力を喚起させることができる。
【0078】
なお、光学系30の画角が小さいと、その光学系30により光像が投影されたCCDカメラからは、太陽光の高照度を受けると、一般的にはスミアや白飛びが生じた像信号が出力されるが、本実施形態におけるCCD撮像部10には、ビームスプリッタ32により、近赤外線領域の光(第二の光)P2が入射しないため、IRカットフィルタと同様の効果を得ることができ、第一の光像P1の色再現性を向上させることができる。
【0079】
本実施形態に係る車両周囲監視装置100は、CCD撮像部10とCMOS撮像部20とに共用される光学系30を備えているため、CCD撮像部10とCMOS撮像部20とに対して独立した光学系をそれぞれ備える構成の車両周囲監視装置に比べて、構成部品点数の増加を抑制することができ、構成部品点数の増加に伴う装置サイズの大型化や装置製造のコストの上昇を抑えることができる。
【0080】
さらに、光路を分割する以前に対応する光学系30の要素(例えば、対物レンズ31)は、CCD撮像部10とCMOS撮像部20とで共用されているため、第一の光像P1と第二の光像P2とで、対応する部位同士の位置合わせを容易にすることもできる。
【0081】
本実施形態に係る車両周囲監視装置100においては、信号合成処理部60が、合成像信号S4または重畳像信号S5を、これら合成像信号S4または重畳像信号S5に基づく像の表示用として出力する出力信号S6のうち、表示のブランキング期間に対応した部分に、距離に関する情報S3を付加するのが好ましい。
【0082】
すなわち、例えば、合成像信号S4を出力する場合には、信号合成処理部60は図2に示すように、出力信号S6のうちフレームごとの合成像信号S4(画素ごとのRGBデータの集まり;RGB Data 1,RGB Data 2,…,RGB Data N)の他に、表示の垂直ブランキング期間に対応する部分すなわちフレーム間に設けられたコントロールデータ領域(DE信号;CNTL Data 1,CNTL Data 2,…,CNTL Data N)に、距離に関する情報S3を埋め込めばよい。
【0083】
なお、垂直ブランキング期間に対応する部分に埋め込むか、水平ブランキング期間に対応する部分に埋め込むかは、距離に関する情報S3の要求度合い(頻度等)に応じて選択すればよい。
【0084】
ここで、図2に示した出力信号S6は、シリアルLVDS(Low Voltage Differential Signaling;低電圧差動伝送または小振幅差動信号)により規定されたものである。
【0085】
LVDSにより規定された出力信号S6は、外部から与えられる雑音に対する耐性を十分に確保(雑音による影響を受けにくい)しつつ、その伝送速度を高速化することができる。
【0086】
例えば図2に示したLVDSの出力信号S6は、1フレーム分の合成像信号S4(重畳像信号S5であっても同様)の各画素ごとデータRGB Data 1,RGB Data 2,…,RGB Data N(R,G,Bの各色についてそれぞれ6bit、合計18bit)に、コントロールデータ領域の各DE信号CNTL Data 1,CNTL Data 2,…が続いており、各DE信号CNTL Data 1,…は、それぞれ9bitのデータ長を有し、垂直同期信号V、水平同期信号HおよびRGB同期信号Eによって3bit分(C0,C1,C2)は既に使用されている。
【0087】
そこで、距離に関する情報S3は、各DE信号CNTL Data 1,…の空いているデータ領域C3,C4,…,C8の6bit分に割り当てられる。
【0088】
そして、コントロールデータ(CNTL Data)端子のC3〜C8の6bit分の中に、距離に関する情報S3が埋め込まれた出力信号S6は、図3に示すように、外部のコントローラ(ECU)等に、LVDSリンク(LVDS Link)で伝送され、ECUが、出力信号S6に埋め込まれた距離に関する情報S3を読み出し(デコードし)、読み出された距離に関する情報S3が表す距離値に応じた報知や警報を発するのに用いられる。
【0089】
出力信号S6には、信号合成処理部60によって、距離情報算出部50により取得された距離に関する情報S3が付加されているため、合成像信号S4または重畳像信号S5をモニタに供する際に、外部に別途設けた報知手段や警報手段が、出力信号S6からこの距離に関する情報S6を読み出し、この読み出された距離に関する情報S3に応じて、音やその他の知覚形式で、被写体領域Oにおける障害物等への接近状況を、報知または警報することもでき、乗員に対して一層の注意喚起を実現することができる。
【0090】
また、距離情報算出部50によって取得された距離に関する情報S3は、合成像信号S4または重畳像信号S5に基づく像の表示用として出力する出力信号S6のうち、表示のブランキング期間に対応した部分に埋め込まれるため、この埋め込まれた距離に関する情報S3が、合成像信号S4または重畳像信号S5に基づく像の表示内容に影響を及ぼすことがなく、しかも、出力信号S6のデータ量が増加することもない。
【0091】
もちろん、この距離に関する情報S3のみを信号合成処理部60から出力するための専用線を別途設ける必要もない。
【0092】
なお、上述した実施形態は、第一の撮像手段としてCCD撮像部10を適用し、第二の撮像手段として、CCD撮像部10よりも本質的に第二の光P2に対する感度が高いCMOS撮像部20を適用した構成であるが、第一の撮像手段としてCMOSカメラとCMOS信号処理部とからなる構成を適用するとともに、第二の撮像手段としてもCMOSカメラとCMOS信号処理部とからなる構成を適用することもできる。
【0093】
この場合、各撮像手段としてのCMOSカメラ同士は、互いに同一の感度特性を有するものであってもよいし、上記実施形態におけるCCDカメラ11とCMOSカメラ21との感度特性の関係と同様に、第二の撮像手段を構成するCMOSカメラの方が第一の撮像手段を構成するCMOSカメラよりも、第二の光P2に対する感度が相対的に高い特性を有するものであってもよい。
【0094】
同一の感度特性を有する二つのCMOSカメラを適用する構成においては、信号合成処理部60が、第一の光像P1を表す第一の像信号S1と第二の光像P2を表す第二の像信号S2とを合成して合成像信号S4を生成する際に、第一の像信号S1よりも第二の像信号S2に相対的に加重する重み付けを行うなど、合成像信号S4が、光路分割前の元の被写体領域Oの光像Pよりも、第二の光像P2が相対的に強調された像を再生しうる像信号とすればよい。
【0095】
一方、第二の撮像手段を構成するCMOSカメラの方が第一の撮像手段を構成するCMOSカメラよりも、第二の光P2に対する感度が相対的に高い感度特性を有するものである構成においては、第一の撮像手段としてのCMOSカメラ(対応する符号として11)に投影される光と、第二の撮像手段としてのCMOSカメラ(対応する符号として21)に投影される光とが全く同一であっても、第二の撮像手段としてのCMOSカメラの方が、第一の撮像手段としてのCMOSカメラよりも高感度に、その光Pの中に含まれる近赤外線領域や赤外線領域の光像(第二の光像P2)を撮影することができる。
【0096】
したがって、信号合成処理部60が、第一の像信号S1よりも第二の像信号S2に相対的に加重する重み付けを行わない場合であっても、合成像信号S4は、光路分割前の元の被写体の光像Pよりも、第二の光像P2が相対的に強調された像を再生しうる合成像信号S4となる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施例である車両周囲監視装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】シリアルLVDSにより規定された出力信号の構造の一例を示す図である。
【図3】LVDSリンク(LVDS Link)による、外部のコントローラ(ECU)との接続を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
10 CCD撮像部(第一の撮像手段)
20 CMOS撮像部(第二の撮像手段)
30 切替回路(入力情報切替手段)
40 補助光照射手段
50 距離情報算出部(距離情報算出手段)
60 信号合成処理部(信号合成手段)
100 車両周囲監視装置
O 被写体領域(被写体)
P 被写体領域の像を担持した光
P1 可視光領域の第一の光,第一の光像
P2 近赤外線領域の第二の光,第二の光像
S1 第一の像信号
S2 第二の像信号
S3 距離に関する情報
S4 合成像信号
S5 重畳像信号
S6 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の撮像手段と、
第二の撮像手段と、
車両の周囲の被写体に対して、少なくとも近赤外線領域または赤外線領域を含む照明光を照射する補助光照射手段と、
前記車両の周囲の被写体の像を担持した光が入射し、この入射した光のうち少なくとも可視光領域を含む第一の光と、少なくとも近赤外線領域または赤外線領域を含む第二の光とに、その進行する光路を分割し、前記第一の光を前記第一の撮像手段に投影させ、前記第二の光を前記第二の撮像手段に投影させる光学系と、
前記補助光照射手段および前記第二の撮像手段により得られた情報に基づいて、前記被写体までの距離に関する情報を取得する距離情報算出手段と、
前記第一の撮像手段に前記第一の光が投影して得られた第一の光像と前記第二の撮像手段に前記第二の光が投影して得られた第二の光像とを、これら両像の位置関係を対応させて合成して合成像信号を求めるとともに、前記距離情報算出手段により取得された前記距離に関する情報を、前記第一の光像を表す像信号に重畳して重畳像信号を求める信号合成手段とを備えたことを特徴とする車両周囲監視装置。
【請求項2】
前記第二の撮像手段は、前記第二の光に対する感度が、前記第一の撮像手段よりも相対的に高い特性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の車両周囲監視装置。
【請求項3】
前記信号合成手段は、前記距離に関する情報を文字化して、前記第一の光像を表す像信号に重畳することにより、前記重畳像信号を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の車両周囲監視装置。
【請求項4】
前記信号合成手段は、前記距離に関する情報に応じた彩色像を、前記第一の光像を表す像信号に重畳することにより、前記重畳像信号を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の車両周囲監視装置。
【請求項5】
前記信号合成手段は、前記合成像信号または前記重畳像信号を、これら前記合成像信号または前記重畳像信号に基づく像の表示用として出力する出力信号のうち、表示のブランキング期間に対応した部分に、前記距離に関する情報を付加することを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項に記載の車両周囲監視装置。
【請求項6】
前記距離に関する情報が付加された前記出力信号は、LVDSにより規定されたものであることを特徴とする請求項5に記載の車両周囲監視装置。
【請求項7】
前記信号合成手段から出力された出力信号に基づいて前記合成像信号または前記重畳像信号が表す像を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載の車両周囲監視装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−228208(P2007−228208A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46207(P2006−46207)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】