説明

車両座席

【課題】 車両座席を提供する。
【解決手段】 本発明は、座面を形成する座席要素と、背もたれ(10)またはバックレストとを有する車両座席であって、背もたれ(10)が、フレーム(14)と、エアバッグ(19)とを有し、エアバッグ(19)が、気体収容要素(20)と、気体収容要素(20)用の膨張デバイス(21)とを備える車両座席に関する。本発明によれば、気体収容要素(20)は、一方の側で、フレーム(14)の一部分(15)によって画定され、他方の側で、範囲設定要素(22)によって画定され、範囲設定要素(22)は、フレーム(14)に固定され、エアバッグ(19)が膨張するときに移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載の車両座席に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車体構造と、車体構造に固定された車両座席とを有する自動車が開示されている。この文献に開示された車両座席は、座面を形成する座席要素と、背もたれとを有し、背もたれはほぼ垂直に延びており、その傾斜を調節可能である。特許文献1から知られている車両座席の背もたれの背側部に、胸部保護を提供するエアバッグ・モジュールが統合される。
【0003】
胸部保護を提供し、背もたれまたはバックレストに統合されるエアバッグ・モジュールを有するさらなる車両座席が、特許文献2から知られている。この従来技術によれば、エアバッグ・モジュールは、具体的にはエアバッグ・モジュールの膨張デバイスによって、背もたれまたはバックレストのフレームに固定される。
【0004】
上記の従来技術から知られている車両座席はそれぞれ、別個のモジュールとして形成されたエアバッグ、いわゆるエアバッグ・モジュールを車両座席に統合しており、そのようなエアバッグ・モジュールは、気体袋体として形成された気体収容要素と、気体発生器として設計された膨張デバイスとを有する。エアバッグ・モジュールは、完全に独立したモジュールとして部品製造業者によって供給され、機能的および構造的に別個のモジュールとして車両座席に統合される。これにより、車両座席の重量が比較的重くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 426 244 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2005 033 677 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のことを踏まえて、本発明の目的は、比較的軽量であり、比較的低コストで製造することができる新規の車両座席を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の車両座席によって実現される。本発明によれば、気体収容要素は、一方の側で、フレームの一部分によって画定または範囲設定され、他方の側で、範囲設定要素によって画定または範囲設定され、範囲設定要素は、フレームに固定され、エアバッグが膨張するときに移動または変形させることができる。
【0008】
本発明による車両座席では、エアバッグは、別個のエアバッグ・モジュールによっては形成されない。実際、エアバッグの気体収容要素は、一方の側で、背もたれのフレームの一部分によって画定され、他方の側で、範囲設定要素によって画定され、範囲設定要素は、フレームに固定され、エアバッグが膨張するときに移動させることができる。したがって、別個のモジュールとして形成されるエアバッグの機能は、本発明によれば、車両座席内に、具体的には背もたれ内に再配置され、したがって車両座席のアセンブリによって実施され、その結果、車両座席の重量およびコストを削減することができる。本発明による車両座席では、背もたれとエアバッグとが、統合構造を形成する。
【0009】
本発明の好ましい改良形態は、従属請求項および以下の説明から把握することができる。本発明の例示的実施形態を図面に基づいてより詳細に説明するが、本発明はそれらの実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による車両座席の背もたれまたはバックレストを通る非常に概略的な断面図である。
【図2】エアバッグが膨張された状態での、図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2は、本発明による車両座席の背もたれ10(バックレストとも呼ばれる)を通る非常に概略的な断面図を示す。前記タイプの背もたれ10は、実質的に垂直方向に延びており、座面を提供する座席要素(図1には図示せず)に対して、その傾斜を調節可能である。
【0012】
図1および図2に示される背もたれ10を通る断面図の断面方向は水平方向であり、本発明による車両座席が内部で好適に使用される自動車の車体構造のドアライニング12が、背もたれ10に、具体的には前方に延在する背もたれ10の背側部11に隣接して図示されている。また、図1および図2は、車両座席に座った車両乗員13を非常に概略的に示す。ここで、背側部11は、車両乗員13に隣接して側方に広がっている。
【0013】
本発明による車両座席の背もたれ10はフレーム14を備え、図1および図2には、背側部11の領域内に延在するフレーム14の部分15のみが示される(図1および図2で見ることができる)。背もたれ10のフレーム14は、好ましくは鋳造部品として形成され、特にアルミニウム合金またはマグネシウム合金から製造される。ここで、フレーム14は、コールドチャンバダイカスト・プロセスまたはホットチャンバダイカスト・プロセス、あるいはチクソモールディング・プロセスによって製造することができる。
【0014】
車両座席の背もたれ10のフレーム14の前側または内側は、ライニング17によって覆われたクッション16と隣接する。パネル18が、フレーム14の後側または外側に隣接する。
【0015】
本発明による車両座席はエアバッグ19を有し、エアバッグ19は、気体収容要素20と、気体収容要素20用の膨張デバイス21とによって形成される。気体収容要素20は気体袋体または空気袋体と呼ばれることもあり、膨張デバイス21は気体発生器と呼ばれることもある。
【0016】
本発明の文脈では、気体収容要素20は、一方の側で、本発明による車両座席の背もたれ10の背側部11内に延在するフレーム14の部分15によって画定または範囲設定され、他方の側で、範囲設定要素22によって画定または範囲設定され、範囲設定要素22は、フレーム14の一部分15に固定され、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができる。
【0017】
したがって、本発明による車両座席のエアバッグ19の気体収容要素20は、別個のエアバッグ・モジュールの構成部品ではない。実際、気体収容要素20は、背もたれ10のフレーム14の一部分15によって、一部で、または部分的に範囲設定される。膨張時に移動させることができる範囲設定要素22は、具体的には図1の例示的実施形態では固定要素23によってフレーム14の一部分15に固定接続され、それにより、範囲設定要素22はフレーム14に、具体的には背側部11内に延在するフレーム14の部分15に直接固定される。フレーム14の一部分15への範囲設定要素22のこの固定は、クリップ、リベット、クリンチ、ねじ、接着剤などによって行われることがある。
【0018】
上述したように、エアバッグ19の気体収容要素20を一部で範囲設定するフレーム14の部分15は、背もたれ10の背側部11に統合され、または背側部11内に突出し、図示の例示的実施形態では、エアバッグ19の気体収容要素20を一部で画定するフレーム14の部分15は、断面がU字形である。したがって、気体収容要素20を一部で範囲設定するフレーム14の部分15は、実質的に前方に延在する外側突出部24と、同様に実質的に前方に延在する内側突出部25とを有し、外側突出部24は、内側突出部25よりもさらに前方に延在する。膨張時に移動させることができ、フレーム14の一部分15と共にエアバッグ19の気体収容要素20を範囲設定する範囲設定要素22は、部分15の突出部24および25に係合し、かつ突出部24および25に固定される。
【0019】
膨張時に移動または変形させることができる範囲設定要素22は、好ましくは、一部片または複数の部片で形成されることがある織物要素である。
【0020】
図示の例示的実施形態では、衝突の際、エアバッグ19の気体収容要素20は、図1に示される矢印26の方向に、すなわちクッション16と部分15の突出部24との間で、ライニング17の予め定められた破断点27を通って展開する。図2は、展開状態での気体収容要素20を示す。
【0021】
図2はまた、本発明の変形形態を示す。例えば、図2では、エアバッグ19が膨張するときに移動させることができる範囲設定要素22は、フレーム14の一部分15に直接的には固定されず、取付要素28によって間接的に固定される。取付要素28は、好ましくは取付フレームとして設計され、それにより、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができる範囲設定要素22はフレーム14に固定される。
【0022】
図1および図2では、膨張デバイス21もフレーム14の一部分15に固定され、具体的には、図1および図2では、膨張デバイス21は、フレーム14の一部分15と範囲設定要素22とによって画定される気体収容要素20の内部に位置決めされるように、フレーム14の一部分15に固定される。
【0023】
これに関する変形形態が図2に破線で示され、その変形形態では、膨張デバイス21’は、フレーム14の一部分15と範囲設定要素22とによって画定される気体収容要素20の外部に位置決めされるようにフレーム14の一部分15に固定され、この場合、膨張デバイス21’は、エアバッグ19を展開するための気体または空気を、部分15に形成された開口または穴を通して気体収容要素20内に注入する。
【0024】
膨張デバイス21、21’は、直接的に、または減衰要素を間に挟んで間接的に、フレーム14の一部分15に係合し得る。そのような減衰要素(図1および図2には図示せず)は、例えば振動吸収材料から製造されることがある。
【0025】
したがって、本発明は、背もたれ10のフレーム14、具体的には背もたれ10の背側部11内に突出するフレーム14の部分15が、エアバッグ19の気体収容要素20の部分的な範囲設定部分を形成する、車両座席に関する。フレーム14の一部分15が範囲設定要素22に係合され、範囲設定要素22は、好ましくは織物要素として形成され、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができ、フレーム14の一部分15の前面凹部または開口を閉じる。範囲設定要素22と共にエアバッグ19の気体収容要素20を範囲設定するフレーム14の部分15は、膨張時に移動または変形させることができない。
【0026】
エアバッグ19の気体収容要素20が、車両座席の背もたれ10のフレーム14によって少なくとも部分的に範囲設定されることにより、エアバッグ19は、もはや別個の、機能的および構造的に独立したエアバッグ・モジュール19ではない。実際、エアバッグ19のエアバッグ機能は、車両座席に機能的および構造的に統合され、それにより、背もたれ10のフレーム14が、エアバッグ19、具体的にはエアバッグ19の気体収容要素20の構造上および機能上の構成部品となる。このようにすると、車両座席の重量およびコストを削減することができる。エアバッグ19はサイドエアバッグであり、胸部保護および/または骨盤保護および/または頭部保護を提供することができる。
【0027】
上述したように、衝突の際、膨張時に移動させることができる範囲設定要素22は、矢印26の方向で、クッション16と部分15の突出部24との間で展開する。ここで、ライニング17の予め定められた破断点27が破断される。図1および図2に示されるエアバッグ19の展開方向が好ましいが、本発明を利用するとき、エアバッグ19の何らかの他の展開方向も可能である。
【0028】
やはり上述したが、図1および図2は、背もたれ10を通って水平に広がる断面図を示す。背側部11内に延在する図1および図2でのフレーム14の部分15は、背もたれ10の垂直範囲に沿って、1つまたは複数の前面凹部または開口が形成されていることがあり、これらの前面凹部または開口は、範囲設定要素22によって閉じられ、衝突の際、エアバッグ19が、そこを通って矢印26の方向に、背側部11から実質的に前方に展開する。
【符号の説明】
【0029】
14 フレーム
15 フレームの一部分
19 エアバッグ
20 気体収容要素
22 範囲設定要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を形成する座席要素と、背もたれまたはバックレストとを有する車両座席であって、前記背もたれが、フレームと、エアバッグとを有し、前記エアバッグが、気体収容要素と、前記気体収容要素用の膨張デバイスとを備える車両座席において、
前記気体収容要素(20)が、一方の側で、前記フレーム(14)の一部分(15)によって画定され、他方の側で、範囲設定要素(22)によって画定され、前記範囲設定要素(22)は、前記フレーム(14)に固定され、前記エアバッグ(19)が膨張するときに移動させることができることを特徴とする車両座席。
【請求項2】
前記気体収容要素(20)を一部で範囲設定する前記フレーム(14)の部分(15)が、前記背もたれ(10)の背側部(11)に統合される、または背側部(11)内に突出することを特徴とする請求項1に記載の車両座席。
【請求項3】
前記気体収容要素(20)を一部で範囲設定する前記フレーム(14)の部分(15)が、U字形またはL字形の断面形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両座席。
【請求項4】
前記気体収容要素(20)を一部で範囲設定する前記フレーム(14)の部分(15)が、実質的に前方に延在する外側突出部(24)と、同様に実質的に前方に延在する内側突出部(25)とを有し、前記外側突出部(24)が、前記内側突出部(25)よりもさらに前方に延在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両座席。
【請求項5】
前記フレーム(14)に固定され、前記エアバッグ(19)が膨張するときに移動させることができ、前記気体収容要素(20)を一部で範囲設定する前記範囲設定要素(22)が、変形可能な織物要素として形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両座席。
【請求項6】
前記フレーム(14)に固定され、前記エアバッグ(19)が膨張するときに移動させることができる前記範囲設定要素(22)が、前記フレーム(14)に直接固定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両座席。
【請求項7】
前記フレーム(14)に固定され、前記エアバッグ(19)が膨張するときに移動させることができる前記範囲設定要素(22)が、取付要素(28)によって、前記フレーム(14)に間接的に固定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両座席。
【請求項8】
前記膨張デバイス(21、21’)が、前記フレーム(14)に、または、前記気体収容要素(20)を一部で範囲設定する前記フレーム(14)の部分(15)に固定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両座席。
【請求項9】
前記膨張デバイス(21)が、前記気体収容要素(20)の内部に位置決めされるように前記フレーム(14)に固定されることを特徴とする請求項8に記載の車両座席。
【請求項10】
前記膨張デバイス(21’)が、前記気体収容要素(20)の外部に位置決めされるように前記フレーム(14)に固定されることを特徴とする請求項8に記載の車両座席。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241410(P2010−241410A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−28359(P2010−28359)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】