車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置
【課題】 不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置を提供すること。
【解決手段】 車両変速操作装置1は、車両が後進するように車両のトランスミッション2に変速ギヤの変更を行なわせる後進指令操作機能を備え、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部30と、当該回転操作スイッチ部30に電気的に接続され、車両を後進させるための回転操作スイッチ部30への捻り回転操作に従って、変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号をトランスミッション2へ出力する電子制御ユニット20と、を有する。
【解決手段】 車両変速操作装置1は、車両が後進するように車両のトランスミッション2に変速ギヤの変更を行なわせる後進指令操作機能を備え、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部30と、当該回転操作スイッチ部30に電気的に接続され、車両を後進させるための回転操作スイッチ部30への捻り回転操作に従って、変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号をトランスミッション2へ出力する電子制御ユニット20と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置に関し、より詳細には、車両のトランスミッションの変速ギヤを車両を後進させる状態する車両後進指令操作装置、および車両のトランスミッションの変速ギヤをシフトアップしたり、該変速ギヤをシフトダウンしたり、該変速ギヤをニュートラル状態にしたり、或いは、該変速ギヤを車両を後進させる状態にしたりする車両変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際にステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作されるパドル形状のシフトスイッチは、車両変速操作装置として製品化されている。このシフトスイッチによれば、シフトアップ、シフトダウンおよびニュートラルといった位置に変速ギヤを変更することができる。
【0003】
また、ステアリングハンドルの握り部よりも車両前方側の位置において左右両端部が上下方向に揺動可能に配置されたシフト指令レバーと、このシフト指令レバーの左端部に車両の前後進方向に揺動可能に装着された前後進段指令レバーと、を備え、変速機に対する前後段指令操作およびシフト指令操作を実質的に1本のレバー上において可能にした車両変速操作装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−2081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシフトスイッチには、車両を後進させるギヤ位置(以下、リバース位置とも記す。)に変速ギヤを切り替える操作は割り当てられておらず、リバース位置へのギヤ変更は押圧式スイッチにより行なわれる。しかし、この押圧式スイッチは単に押圧操作されることによりリバース位置へのギヤ変更が行なわれてしまうため、例えば信号待ちの停車中等に運転者がこの押圧式スイッチに不用意に触れてしまい、不必要に車両が後進してしまう虞がある。
【0005】
一方、特許文献1で開示されている車両変速操作装置は、ステアリングハンドルから手を離さずに上記各種の操作を一本のレバーによって行なうことができるため、極めて操作性がよいといえる。しかしながら、運転中に急なギヤ変更を必要とする場合や運転に不慣れであったような場合には、リバース位置へのギヤ変更を意図していないのに誤ってリバース位置へのギヤ変更操作を行なってしまう可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両後進指令操作装置は、下記(1)を特徴としている。
(1) 車両が後進するように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせるための車両後進指令操作装置であって、
捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部と、
前記回転操作スイッチ部に電気的に接続され、前記車両を後進させるための前記回転操作スイッチ部への捻り回転操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えていること。
【0008】
上記(1)の構成の車両後進指令操作装置によれば、回転操作スイッチ部を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意にリバース位置へギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る車両変速操作装置は、下記(2)および(3)を特徴としている。
(2) 車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つ前記ステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、シフトアップ、シフトダウンまたはニュートラル状態となるように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に前記ステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作される変速指令用操作部と、
前記車両が後進するように前記トランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に操作される後進指令用操作部と、
前記変速指令用操作部および前記後進指令用操作部に電気的に接続され、前記変速指令用操作部または前記後進指令用操作部への操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えた車両変速操作装置であって、
前記変速指令用操作部が、前記ステアリングハンドルを把持した一方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第1操作スイッチ部と、前記ステアリングハンドルを把持した他方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第2操作スイッチ部と、を有し、
前記後進指令用操作部が、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部を有し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトアップされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトダウンされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがニュートラル状態にされ、そして、
前記回転スイッチ部が捻り回転操作されることにより、前記変速ギヤが前記車両を後進させる状態にされること。
(3) 上記(1)の構成の車両変速操作装置の前記制御部が、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトアップ指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトダウン指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してニュートラル指令信号を出力し、そして、
前記回転スイッチ部への捻り回転操作に応答して後進ギヤ位置指令信号を出力すること。
【0010】
上記(2)の構成の車両変速操作装置によれば、回転操作スイッチ部を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意にリバース位置へギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができる。また、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更は、第1操作スイッチ部および/または第2操作スイッチ部を所定位置からステアリングハンドルに近づく方向に操作することによって行なわれ、このように人間行動学的に原始行動である「手を握る」という行為により行なわれるようになっている。従って、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更時の操作は、ステアリングハンドルから手を離さずに行なうことが可能であり、非常に良好なものとなる。
上記(3)の構成の車両変速操作装置によれば、制御部が、シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、或いは、後進ギヤ位置指令信号をトランスミッションに伝送するように構成されているので、操作意図に応じた変速ギヤの変更を確実に行なうことができる。
【0011】
尚、上記したステアリングハンドルとしては、円形の輪郭を有する一般的なステアリングホイールに限らず、その他、例えば、円形の輪郭の上部および下部の少なくとも一方を平らにしたステアリングホイール、円形の輪郭の上部および下部の少なくとも一方を中心に向けて凹ませたステアリングホイール、等が挙げられるが、どのような形状のステアリングハンドルに対しても、本発明に係る車両変速操作装置を適用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態である後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置1およびこの車両変速操作装置1からの信号に従って作動するトランスミッション2およびシフトポジションインジケータ3を示すシステムブロック図である。
【0016】
図1に示すように、車両変速操作装置1は、シフトアップしたり、シフトダウンしたり、或いは、ニュートラル状態になるように車両のトランスミッション2の変速ギヤ(不図示)を変更する際に運転者により操作されるシフト操作部10と、車両が後進するようにトランスミッション2にギヤ変更を行なわせる際に運転者により捻り回転操作される後進指令用の回転操作スイッチ部30と、シフト操作部10および回転操作スイッチ部30に電気的に接続され、運転者によるシフト操作部10または回転操作スイッチ部30への操作に従って、変速ギヤの変更をトランスミッション2に行なわせるための指令信号(シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、およびリバース位置指令信号)をトランスミッション2に出力する電子制御ユニット(以下、ECUとも記す。)20と、を備えている。これらシフト操作部10、回転操作スイッチ部30およびECU20の詳細は後述する。トランスミッション2は、変速ギヤおよびこの変速ギヤを駆動する駆動部を有し、車両変速操作装置1のECU20からの指令信号に基づいて駆動部が変速ギヤを駆動し、指令されたシフトポジションへのギヤ変更を行なう。シフトポジションインジケータ3は、運転者にシフトポジションが視覚的に認識されるように、車両変速操作装置1のECU20からの変速ギア位置に関するシフトポジション情報に従って、シフトポジションを表示する液晶表示装置、LED(Light Emitting Diode)表示装置、等といった表示装置である。
【0017】
図2(a)、図2(b)および図2(c)は、順に、車両変速操作装置1のシフト操作部10、回転操作スイッチ部30、およびその周辺のステアリング部の概略左側面図、概略正面図、そして概略右側面図である。
【0018】
図2(a)〜(c)に示すように、シフト操作部10は、ステアリングハンドル4が固定された一端部を有するステアリングシャフト5の周りに設けられたステアリングコラム6の近傍に配置されるとともにステアリングハンドル4と一体に設けられ且つ、ステアリングコラム6からステアリングハンドル4の径方向外方へ左右に延在された、ワイパー等の機能を操作するためのワイパー系操作レバースイッチ7およびヘッドライト、ウインカー、等の機能を操作するための灯火系操作レバースイッチ7と、車両(不図示)を直進させる際の位置にあるステアリングハンドル4との間に位置する。回転操作スイッチ部30は、図2(b)に示すように、インストルメントパネル9の右側の下方位置に設けられ、好ましくは、ステアリングハンドル4を把持していた右手をステアリングハンドル4から離して容易に操作できる位置に配置される。
【0019】
図3〜図5は後進指令用の回転操作スイッチ部30の構造を示す図である。図3(a)および図3(b)は、順に、回転操作スイッチ部30の上面図、および回転操作スイッチ部30の側面図である。図4は回転操作スイッチ部30の断面図であり、図4(a)は図3(a)のB−B矢視断面図、そして図4(b)は図4(a)のC−C矢視断面図である。また、図5は回転操作スイッチ部30を分解して示す分解斜視図である。
【0020】
回転操作スイッチ部30は、被回転操作部材31、この被回転操作部材31の上端面に接着剤等により固着される表示板32、被回転操作部材31の下部が挿入され且つ回転可能に収容される円筒部材33、円筒部材33が固着され且つ被回転操作部材31を回転自在に支持する保持部材34、および互いに接離可能に配置される接触片39aと接触片39bとを含むスイッチ部39を有している。尚、回転操作スイッチ部30としては、捻り回転操作によりスイッチ部39の接触片39aと接触片39bとが接離(On/Off)される回転操作スイッチであれば何でもよい。
【0021】
被回転操作部材31は、横長の矩形を有し且つ右手でつまんで回転操作するのに十分な高さ寸法を持つ操作つまみ部31a、および図4(a)に示すように円筒部材33の内径寸法より僅かに小さな外径寸法を有する円柱部31bを有する。円柱部31bの内部には二つの円弧深溝31cが形成されている。これら円弧深溝31cは、図4(b)に示されるように、円柱部31bの外周面に沿ってそれぞれ略半周にわたる円弧形を有して形成され、且つ深さ寸法L1を有している。また、円柱部31bの下端の中央部には、下方に突出した円柱形状の回転軸部31dが形成されており、この回転軸部31dには螺子穴31eが形成されている。
【0022】
表示板32の上面には、リバース状態へのギヤ変更用の操作部であることを示すR表示部32aおよび回転操作の方向を指示する回転方向指示部32bが設けられている。尚、R表示部32aや回転方向指示部32bは、表示板32の上面に刻印されているものであってもよいし、或いは、表示板32として透明部材を用い、R表示部32aや回転方向指示部32bの部分以外を黒塗りにし、被回転操作部材31の内部に発光ダイオード等の光源を配置し、この光源により上記R表示部32aや回転方向指示部32bを照明により目立たせる等してもよい。
【0023】
円筒部材33は被回転操作部材31の円柱部31bの外装部材となるもので、この円筒部材33内で被回転操作部材31の円柱部31bが回転できるように、円筒部材33の内径寸法は円柱部31bの外径寸法よりも僅かに大きい。円筒部材33の上端の全周にわたって外側にはり出した鍔部33aは、回転操作スイッチ部30がインストルメントパネル9の取付穴に装着される際の装着方向の最終位置を規定するストッパーの役割を持つ。
【0024】
保持部材34は、径方向の肉厚が下段から上段に向かうにつれて小さくなるように三つの円筒部が積み重ねられたような形を有しており、中央部には被回転操作部材31の回転軸部31dが回転可能に嵌合する貫通孔34aを有する。この貫通孔34aに嵌合した回転軸部31dの下端面には、貫通孔34aの径よりも大きな径を持ち、回転軸部31dの貫通孔34aからの抜け止め機能を有する円盤部材35が、螺子孔34eに螺合される螺子36により固定されている。尚、回転軸部31dが貫通孔34a内で回転可能なように、貫通孔34aの長さよりも回転軸部31dの軸方向長さが僅かに長くなっている。保持部材34の段差部34bに円筒部材33が回転不能に嵌め込まれる。また、保持部材34の上面には被回転操作部材31の円弧深溝31cにそれぞれ挿入される二つの円弧壁34cが形成されており、これら円弧壁34cは、図5に示すように、高さ寸法が徐々に変化した傾斜面34dを有する。傾斜面34dの最長高さ寸法L2は、円弧深溝31cの深さ寸法L1(図4(a)参照)よりも小さい。
【0025】
上記保持部材34に被回転操作部材31を組み付ける際、まず、ボール(玉)38がそれぞれ一端に取り付けられたコイルバネ37がそれらの他端側から被回転操作部材31の円弧深溝31c内にそれぞれ挿入され且つ保持される。そして被回転操作部材31の円弧深溝31cに保持部材34の円弧壁34cをそれぞれ挿入するとともに被回転操作部材31の回転軸部31dを保持部材34の貫通孔34aに挿入後、螺子36により回転軸部31dの下端面に円盤部材35を固定する。その際、コイルバネ37は圧縮された状態、より詳細には、コイルバネ37の弾性反発力によりボール38が円弧壁34c上部の傾斜面34dに付勢されて傾斜面34dを押圧している状態となっている。従って、被回転操作部材31は、非操作時にボール38が傾斜面34d上で最も高さ寸法の小さい位置に自動配置され、この位置が被回転操作部材31の回転初期位置となる。
【0026】
図4(b)に示すように、上記被回転操作部材31の各円弧深溝31cの周方向の長さL4は、円弧深溝31cに挿入される保持部材34の各円弧壁34cの周方向の長さL3よりも長い。よって、被回転操作部材31は、回転操作指示部32bが示す反時計周りに略「L4−L3」の長さ分だけ回転可能である。また、図4(b)に示されるように、円弧壁34cの長手方向の一端面34c1には接触片39aが配置され、そして当該円弧壁34cの一方が挿入される円弧深溝31cの長手方向の一端面31c1には接触片39bが配置され、これらにより回転操作スイッチ部30のスイッチ部39が形成される。当該スイッチ部39の接触片39aおよび接触片39bは、回転操作スイッチ部30の外面に露出する二つのスイッチ状態検出端子(不図示)とそれぞれ電気的に導通し、一方がグランド(アース)に電気的に接続され、そして他方がECU20により所定の電圧を印加されている。そして接触片39aおよび接触片39bのうち一方の電位をECU20は監視する。
【0027】
被回転操作部材31が回転操作されていない非操作時には接触片39aと接触片39bは非導通(OFF)状態であり、接触片39aおよび接触片39bのうち一方の電位はHiとなっており、リバース状態へのギヤ変更のために被回転操作部材31が上記略「L4−L3」の長さ分だけ回転操作されると、接触片39aと接触片39bとが導通(ON)状態となって接触片39aおよび接触片39bの電位がHiからLowに変化する。ECU20は、スイッチ部39のスイッチ状態検出端子(不図示)の電位がLowである場合、リバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、この場合は更に、車速が0km/hであるか否か、且つブレーキ信号が入力されている(即ち、ブレーキが踏まれている)か否かを判定し、車速が0km/hであり且つブレーキ信号が入力されていればトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。
【0028】
図6(a)および図6(b)は、図1および図2に示されるシフト操作部10の構成要素を示す図であり、図6(a)はシフト操作部10の一構成要素であるパドル機構部11の正面図、そして図6(b)はシフト操作部10の一構成要素であるスイッチ部12の回路図である。
【0029】
パドル機構部11は、図6(a)に示すように、やや横長の矩形枠状に形成され且つステアリングハンドル2に固定される枠部材11aと、この枠部材11aに、図2(a)および図2(c)に示される矢印A方向に(即ち、ステアリングシャフト2の軸方向と略平行な方向に沿って)変位するよう揺動自在に取り付けられ且つステアリングハンドル2の径方向外方へ左右に延在された二つの腕部11bと、左側の腕部11bの先端部に固着されたパドル形状の左被操作部11Lと、右側の腕部11bの先端部に固着されたパドル形状の右被操作部11Rと、を有する。尚、左被操作部11Lの上端部にはシフトダウンする際に操作される部分であることを意味する「−」の表示が施され、そして右被操作部11Rの上端部にはシフトアップする際に操作される部分であることを意味する「+」の表示が施されている。
【0030】
左被操作部11Lは、ステアリングハンドル1を把持した運転者の左手(より詳細には、左手の指先)により該ステアリングハンドル1に近づく矢印A方向(即ち、左手を握って手前に引く方向)に操作可能な位置に配置されている。同様に、右被操作部11Rは、ステアリングハンドル1を把持した運転者の右手(より詳細には、右手の指先)により該ステアリングハンドル1に近づく矢印A方向(即ち、右手を握って手前に引く方向)に操作可能な位置に配置されている。
【0031】
シフト操作部10のスイッチ部12は、二つの腕部11bをそれぞれ揺動自在にするようにパドル機構部11の枠部材11aと二つの腕部11bとの間にそれぞれ設けられた連結機構に一体に組み込まれ、図6(b)に示すように、左被操作部11Lへの操作に応じた接点のショート/オープン動作を行なう左スイッチ部12Lと、右被操作部11Rへの操作に応じた接点のショート/オープン動作を行なう右スイッチ部12Rと、を備える。左スイッチ部12Lは、左被操作部11Lの操作に連動する接触片12c、この接触片12cにより導通される一対の接点12d、およびスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLを有し、そして右スイッチ部12Rは、右被操作部11Rの操作に連動する接触片12a、この接触片12aにより導通される一対の接点12b、およびスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLを有する。
【0032】
従って、左被操作部11Lと、左側の腕部11bと、この左側の腕部11bと枠部材11aとの間に設けられた左スイッチ部12Lとにより左側の操作スイッチ部が形成され、そして右被操作部11Rと、右側の腕部11bと、この右側の腕部11bと枠部材11aとの間に設けられた右スイッチ部12Rとにより右側の操作スイッチ部が形成される。
【0033】
尚、図示は省略されているが、枠部材11aと二つの腕部11bとの間にそれぞれ設けられたスイッチ部12を含む連結機構の構造は例えば、車両に一般的に装備され且つパッシングおよびハイビームといった機能を操作する際に用いられる灯火系操作レバースイッチ7の構造、即ち、パッシングまたはハイビームといった機能の操作が解除されると自動的に所定の初期位置へ復帰する構造と同様である。つまり、運転者により操作が行なわれていない非操作時、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rはそれぞれ図2(a)および図2(c)に実線で示される初期位置にあり、例えば、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rが矢印A方向に所定量(即ち、図2(a)および図2(c)のステアリングハンドル1に近い方の点線位置まで)引かれる操作が行なわれ、その後その方向の操作が解除されると、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rが初期位置に自動復帰するようになっている。
【0034】
ここで、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rに矢印A方向に引かれる操作が行なわれた場合に、左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位および右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位がどのように変化するかについて説明する。
【0035】
左被操作部11Lが操作されておらず、この左被操作部11Lが図2(a)に実線で示される初期位置にある場合、左スイッチ部12Lの接触片12cは図6(b)において左スイッチ部12L内に実線で示される初期位置にあり、スイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDLの電位はHiとなっている。左被操作部11Lが矢印A方向に引かれる操作が行なわれると、これに連動して接触片12cが図6(b)において接触片12cの初期位置を示す実線の左側に点線で示される位置まで移動して接点12dをショートして導通させ、これによりスイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDLの電位がHiからLowに変化する。
【0036】
右被操作部11Rが操作されておらず、この右被操作部11Rが図2(c)に実線で示される初期位置にある場合、右スイッチ部12Rの接触片12aは図6(b)において右スイッチ部12R内に実線で示される初期位置にあり、スイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位はHiとなっている。右被操作部11Rが矢印A方向に引かれる操作が行なわれると、これに連動して接触片12aが図6(b)において接触片12aの初期位置を示す実線の右側に点線で示される位置まで移動して接点12bをショートして導通させ、これによりスイッチ状態検出端子OUTRIGHT -PDLの電位がHiからLowに変化する。
【0037】
制御部として働くECU20は、図1に示されるように、スイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDL、OUTRIGHT-PDLと電気的に接続されており、スイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDL、OUTRIGHT-PDLの電位の変化を検知する。ECU20は、スイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに変化した場合、シフト操作部10により変速ギヤをシフトアップさせるための操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にシフトアップ指令信号を出力し、スイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに変化した場合、シフト操作部10により変速ギヤをシフトダウンさせるための操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にシフトダウン指令信号を出力し、そしてスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLおよびスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの両方の電位がLowである場合、シフト操作部10によりニュートラル状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にニュートラル指令信号を出力する。
【0038】
尚、上記操作後、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rの矢印A方向への操作が解除され、自動的に初期位置に復帰しても、新たなギヤ変更操作が行なわれない限り、ECU20がトランスミッション2への指令信号の内容を変更することはない。
【0039】
また、ECU20は、シフト操作部10に対して変速ギヤをシフトアップさせる操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にシフトアップ情報を出力し、シフト操作部10に対して変速ギヤをシフトダウンさせる操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にシフトダウン情報を出力し、そしてシフト操作部10に対してニュートラル状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にニュートラル情報を出力する。
【0040】
ECU20は、回転操作スイッチ部30のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位がLowである場合、回転操作スイッチ部30によりリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、この場合は更に、車速が0km/hであるか否か、且つブレーキ信号が入力されている(即ち、ブレーキが踏まれている)か否かを判定し、車速が0km/hであり且つブレーキ信号が入力されていればトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。更に、ECU20は、回転操作スイッチ部30に対してリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にリバース情報を出力する。
【0041】
図7には、上述した左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rに対する操作に伴う左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位の状態および右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位の状態、上述した回転操作スイッチ部30の被回転操作部材31に対する操作に伴うスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位の状態、更にはECU20による変速制御(トランスミッション制御)の関係が纏めて示されている。
【0042】
ここで、図4、図5および図8を参照して、リバース位置へのギヤ変更を行なう際の車両変速操作装置1の回転操作スイッチ部30の操作の仕方、その際のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位状態およびECU20による変速制御について説明する。図8はECU20により実行されるリバース変速処理を示すフローチャートである。
【0043】
リバース状態へ変速ギヤを変更する場合、運転者はインストルメントパネル9に配置された回転操作スイッチ部30(図2参照)の被回転操作部材31の回転つまみ部31aを回転方向指示部32bが指し示す方向(反時計回り)にコイルバネ37の弾性反発力(換言すれば、ボール38への付勢力)に抗して、被回転操作部材31の円弧深溝31c内の接触片39bに保持部材34の円弧壁34c上の接触片39aが突き当たるまで捻り回転操作する。これにより、コイルバネ37の下端にあるボール38が保持部材34の傾斜面34dの高さ寸法の最も低い位置から最も高い位置へ摺動していき、この際コイルバネ37の弾性反発力(換言すれば、ボール38への付勢力)が高まっていく。上記のように接触片39aと接触片39bとが互いに突き当たり電気的に導通状態になると、スイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位がLowになる。
【0044】
尚、リバース状態へ変速ギヤを変更する操作が終了し、運転者が回転つまみ部31aの回転操作を解除すると、被回転操作部材31はコイルバネ38の弾性復元力によって時計周りに自動的に回転し、図4の初期位置に戻るが、接触片39aと接触片39bとが非接触状態になっても、ECU20は、何らかの新たな変速ギヤの変更操作が行なわれない限り、トランスミッション2への指令信号の内容を変更することはない。
【0045】
ECU20は、回転操作スイッチ部30のスイッチ状態検出端子の電位がHiからLowに変化する場合、図8のフローチャートに示すようなリバース変速処理を実行する。以下、このリバース変速処理を図8のフローチャートに従って説明する。
【0046】
ECU20は、ステップS1にて、回転操作スイッチ部30のスイッチ状態検出端子の電位がLowであることを検知すると、回転操作スイッチ部30によりリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、直ちにトランスミッション2へリバース位置指令信号を送出せず、ステップS2へ進み、ここで車速センサ(不図示)から入力される車速信号を読み取り、現在の車速が0km/hであるか否かの判定を行なう。この結果、ECU20は、車速が0km/hであれば処理をステップS3へ進め、今度は足踏みブレーキ(不図示)が踏まれてブレーキ信号(ON信号)が入力されているか否かを判定する。そしてブレーキ信号が入力されていればステップS4へ進み、ここで初めてトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、「リバース」状態へのギヤ変更を行なう。その後ステップS5へ進み、ECU20は、シフトポジションインジケータ3にリバース位置にギヤ変更された旨を示すシフトポジション情報を出力する。これにより、シフトポジションインジケータ3が「リバース」状態であることを表示し、運転者はこの表示でリバース状態へのギヤ変更がなされたことを知ることができる。以上で、ECU20はリバース変速処理を終了する。
【0047】
一方、上記ステップS2にて、現在の車速が0km/hでないと判定した場合や、上記ステップS3にて、ブレーキ信号が入力されていないと判定した場合、ECU20は、処理をステップS6へ進め、リバース状態への変速処理は行なわない。このように、ECU20が、車速が0km/hでない場合にリバース状態への変速処理を行なわないのは、車両が動いている際にリバース状態へのギヤ変更を行なうことは危険であり、また変速ギヤが破損等する虞もあるからである。また、ECU20が、ブレーキ信号が入力されていない場合にリバース位置への変速処理を行なわないのは、車速が0km/hであっても、運転の安全性をより高めるためである。
【0048】
さて、図9〜図11は、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンさせたり、ニュートラルの状態へギヤ変更をさせたりする際の、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rの操作の仕方およびその際のスイッチ部12のスイッチ状態検出端子の電位の状態を説明するための図である。
【0049】
変速ギヤをシフトアップさせる場合、図9(b)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した右手8Rで右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行なう。ここで、前進方向へ切り替え可能なシフトポジションとして、「1(1速)」、「2(2速)」、および「D(ドライブ)」を有する車両を例にし、現在のシフトポジションが「1」であるとする。この状態から「2」にシフトアップさせる場合、運転者は右被操作部11Rのみを矢印A方向に1回引く操作を行なう。すると、図9(a)に示すようにこれに連動して接触片12aが接点12bを導通状態にし、これにより右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに変化するので、ECU20は、トランスミッション2に対してシフトアップ指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「2」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「1」を「2」にシフトアップさせる。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「2」である旨の表示を行なう。尚、ECU20で実行されるシフトアップ時の変速処理は容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0050】
また、更にもう1段、シフトアップさせるために運転者が右被操作部11Rのみを矢印A方向にもう1回引く操作を行なうと、これに連動して右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに再び変化するので、ECU20が、トランスミッション2に対してシフトアップ指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「D」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「2」を「D」にシフトアップさせ、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「D」である旨の表示を行なう。
【0051】
変速ギヤをシフトダウンさせる場合、図10(a)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した左手8Lで左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なう。上記のように切り替え可能なシフトポジションとして、「1」、「2」、および「D」を有する車両を例にとると、現在のシフトポジションが「D」である場合に、運転者が左被操作部11Lを矢印A方向に1回引く操作を行なうと、図10(b)に示すようにこれに連動して接触片12cが接点12dを導通状態にし、これによりスイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに変化する。よって、ECU20が、トランスミッション2に対してシフトダウン指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「2」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「D」を「2」にシフトダウンさせる。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「2」である旨の表示を行なう。尚、このシフトダウン時にECU20にて実行される変速処理については容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0052】
また、更にもう1段、シフトダウンさせるために運転者が左被操作部11Lのみを矢印A方向にもう1回引く操作を行なうと、これに連動して左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに再び変化するので、ECU20は、トランスミッション2に対してシフトダウン指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「1」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「2」を「1」にシフトダウンさせ、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「1」である旨の表示を行なう。
【0053】
ニュートラルの位置にギヤ変更する場合、図11(a)および図11(c)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した左手8Lで左被操作部11Lを、同じくステアリングハンドル1を把持した右手8Rで右被操作部11Rを、それぞれ矢印A方向に引く操作をする。すると、図11(b)に示すようにこれに連動して接触片12c、12aが接点12d、12bを導通状態にし、これによりスイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位およびスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位がHiからLowに変化する。よって、ECU20が、トランスミッション2に対してニュートラル指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「ニュートラル」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、シフトポジションを「ニュートラル」の状態とする。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「ニュートラル」状態である旨の表示を行なう。尚、このニュートラル状態への変更時にECU20にて実行される変速処理については容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0054】
上述した車両変速操作装置1によれば、回転操作スイッチ部30を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。
【0055】
また、上述した車両変速操作装置1によれば、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更は、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rを所定位置からステアリングハンドル4に近づく方向に操作することによって行なわれ、このように人間行動学的に原始行動である「手を握る」という行為により行なわれるようになっている。従って、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更時の操作は、ステアリングハンドル4から手を離さずに行なうことが可能であり、非常に良好なものとなる。
【0056】
また、上述した車両変速操作装置1によれば、制御部であるECU20が、左被操作部11L、右被操作部11R、および回転つまみ部31aへの操作をスイッチ部12およびスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位から判定し、シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、或いは、後進ギヤ位置指令信号をトランスミッションに伝送するように構成されているので、操作意図に応じた変速ギヤの変更を確実に行なうことができる。
【0057】
尚、上記実施形態では、後進指令操作機能(リバース状態へ変速ギヤを変更させる機能)を備えた車両変速操作装置を例にしているが、回転操作スイッチ部30と、この回転操作スイッチ部30のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子(接触片)の電位の状態に基づいて図8のようなリバース変速処理を行なうECU20と、を備える車両後進指令操作装置としても、上記と同様に「不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。」といった優れた効果を奏することは言うまでもない。
【0058】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の形状、寸法、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、変速ギヤをシフトアップさせる場合、右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行ない、そして変速ギヤをシフトダウンさせる場合、左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なったが、これに限定されず、左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なうことにより変速ギヤがシフトアップされ、そして右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行なうことにより変速ギヤがシフトダウンされるようにしてもよい。
【0060】
また、シフトポジションとして「パーキング」を上述した実施形態に加えることも可能である。これは、例えば、左被操作部11Lと右被操作部11Rをある一定時間以上「握る」等した際に「パーキング」状態となるようにすることで対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態である車両変速操作装置およびこの車両変速操作装置からの信号に従って作動するトランスミッションおよびシフトポジションインジケータを示すシステムブロック図である。
【図2】(a)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略左側面図、(b)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略正面図、そして(c)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略右側面図である。
【図3】(a)は車両変速操作装置に具備される回転操作スイッチ部の上面図、そして(b)は回転操作スイッチ部の側面図である。
【図4】(a)は図3(a)のB−B矢視断面図、そして(b)は図4(a)のC−C矢視断面図である。
【図5】車両変速操作装置に具備される回転操作スイッチ部を一部分解して示す分解斜視図である。
【図6】(a)は図2(a)〜(c)に示されるシフト操作部の一構成要素であるパドル機構部の正面図、そして(b)は図2(a)〜(c)に示されるシフト操作部の一構成要素であるスイッチ部の回路図である。
【図7】左被操作部および/または右被操作部に対する操作に伴う左スイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態および右スイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態、回転操作スイッチ部の被回転操作部材に対する操作に伴うスイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態、更にはECUによる変速制御(トランスミッション制御)の関係が纏めて示される表である。
【図8】ECUにより実行されるリバース変速処理を示すフローチャートである。
【図9】シフトアップ操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)はスイッチ部の回路図、そして(b)は概略右側面図である。
【図10】シフトダウン操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)は概略左側面図、そして(b)はスイッチ部の回路図である。
【図11】ニュートラル位置へのギヤ変更操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)は概略左側面図、(b)はスイッチ部の回路図、そして(c)は右側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両変速操作装置
2 トランスミッション
3 シフトポジションインジケータ
4 ステアリングハンドル
5 ステアリングシャフト
6 ステアリングコラム
7 操作レバースイッチ
10 シフト操作部(変速指令用操作部)
11 パドル機構部
11b 左側の腕部(左側の操作スイッチ部)
11b 右側の腕部(右側の操作スイッチ部)
11L 左被操作部(左側の操作スイッチ部)
11R 右被操作部(右側の操作スイッチ部)
12 スイッチ部
12L 左スイッチ部(左側の操作スイッチ部)
12R 右スイッチ部(右側の操作スイッチ部)
20 ECU(制御部)
30 回転操作スイッチ部(後進指令用操作部)
31 被回転操作部材
39 スイッチ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置に関し、より詳細には、車両のトランスミッションの変速ギヤを車両を後進させる状態する車両後進指令操作装置、および車両のトランスミッションの変速ギヤをシフトアップしたり、該変速ギヤをシフトダウンしたり、該変速ギヤをニュートラル状態にしたり、或いは、該変速ギヤを車両を後進させる状態にしたりする車両変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際にステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作されるパドル形状のシフトスイッチは、車両変速操作装置として製品化されている。このシフトスイッチによれば、シフトアップ、シフトダウンおよびニュートラルといった位置に変速ギヤを変更することができる。
【0003】
また、ステアリングハンドルの握り部よりも車両前方側の位置において左右両端部が上下方向に揺動可能に配置されたシフト指令レバーと、このシフト指令レバーの左端部に車両の前後進方向に揺動可能に装着された前後進段指令レバーと、を備え、変速機に対する前後段指令操作およびシフト指令操作を実質的に1本のレバー上において可能にした車両変速操作装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−2081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシフトスイッチには、車両を後進させるギヤ位置(以下、リバース位置とも記す。)に変速ギヤを切り替える操作は割り当てられておらず、リバース位置へのギヤ変更は押圧式スイッチにより行なわれる。しかし、この押圧式スイッチは単に押圧操作されることによりリバース位置へのギヤ変更が行なわれてしまうため、例えば信号待ちの停車中等に運転者がこの押圧式スイッチに不用意に触れてしまい、不必要に車両が後進してしまう虞がある。
【0005】
一方、特許文献1で開示されている車両変速操作装置は、ステアリングハンドルから手を離さずに上記各種の操作を一本のレバーによって行なうことができるため、極めて操作性がよいといえる。しかしながら、運転中に急なギヤ変更を必要とする場合や運転に不慣れであったような場合には、リバース位置へのギヤ変更を意図していないのに誤ってリバース位置へのギヤ変更操作を行なってしまう可能性が高い。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる車両後進指令操作装置および後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両後進指令操作装置は、下記(1)を特徴としている。
(1) 車両が後進するように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせるための車両後進指令操作装置であって、
捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部と、
前記回転操作スイッチ部に電気的に接続され、前記車両を後進させるための前記回転操作スイッチ部への捻り回転操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えていること。
【0008】
上記(1)の構成の車両後進指令操作装置によれば、回転操作スイッチ部を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意にリバース位置へギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る車両変速操作装置は、下記(2)および(3)を特徴としている。
(2) 車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つ前記ステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、シフトアップ、シフトダウンまたはニュートラル状態となるように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に前記ステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作される変速指令用操作部と、
前記車両が後進するように前記トランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に操作される後進指令用操作部と、
前記変速指令用操作部および前記後進指令用操作部に電気的に接続され、前記変速指令用操作部または前記後進指令用操作部への操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えた車両変速操作装置であって、
前記変速指令用操作部が、前記ステアリングハンドルを把持した一方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第1操作スイッチ部と、前記ステアリングハンドルを把持した他方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第2操作スイッチ部と、を有し、
前記後進指令用操作部が、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部を有し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトアップされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトダウンされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがニュートラル状態にされ、そして、
前記回転スイッチ部が捻り回転操作されることにより、前記変速ギヤが前記車両を後進させる状態にされること。
(3) 上記(1)の構成の車両変速操作装置の前記制御部が、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトアップ指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトダウン指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してニュートラル指令信号を出力し、そして、
前記回転スイッチ部への捻り回転操作に応答して後進ギヤ位置指令信号を出力すること。
【0010】
上記(2)の構成の車両変速操作装置によれば、回転操作スイッチ部を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意にリバース位置へギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができる。また、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更は、第1操作スイッチ部および/または第2操作スイッチ部を所定位置からステアリングハンドルに近づく方向に操作することによって行なわれ、このように人間行動学的に原始行動である「手を握る」という行為により行なわれるようになっている。従って、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更時の操作は、ステアリングハンドルから手を離さずに行なうことが可能であり、非常に良好なものとなる。
上記(3)の構成の車両変速操作装置によれば、制御部が、シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、或いは、後進ギヤ位置指令信号をトランスミッションに伝送するように構成されているので、操作意図に応じた変速ギヤの変更を確実に行なうことができる。
【0011】
尚、上記したステアリングハンドルとしては、円形の輪郭を有する一般的なステアリングホイールに限らず、その他、例えば、円形の輪郭の上部および下部の少なくとも一方を平らにしたステアリングホイール、円形の輪郭の上部および下部の少なくとも一方を中心に向けて凹ませたステアリングホイール、等が挙げられるが、どのような形状のステアリングハンドルに対しても、本発明に係る車両変速操作装置を適用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態である後進指令操作機能を備えた車両変速操作装置1およびこの車両変速操作装置1からの信号に従って作動するトランスミッション2およびシフトポジションインジケータ3を示すシステムブロック図である。
【0016】
図1に示すように、車両変速操作装置1は、シフトアップしたり、シフトダウンしたり、或いは、ニュートラル状態になるように車両のトランスミッション2の変速ギヤ(不図示)を変更する際に運転者により操作されるシフト操作部10と、車両が後進するようにトランスミッション2にギヤ変更を行なわせる際に運転者により捻り回転操作される後進指令用の回転操作スイッチ部30と、シフト操作部10および回転操作スイッチ部30に電気的に接続され、運転者によるシフト操作部10または回転操作スイッチ部30への操作に従って、変速ギヤの変更をトランスミッション2に行なわせるための指令信号(シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、およびリバース位置指令信号)をトランスミッション2に出力する電子制御ユニット(以下、ECUとも記す。)20と、を備えている。これらシフト操作部10、回転操作スイッチ部30およびECU20の詳細は後述する。トランスミッション2は、変速ギヤおよびこの変速ギヤを駆動する駆動部を有し、車両変速操作装置1のECU20からの指令信号に基づいて駆動部が変速ギヤを駆動し、指令されたシフトポジションへのギヤ変更を行なう。シフトポジションインジケータ3は、運転者にシフトポジションが視覚的に認識されるように、車両変速操作装置1のECU20からの変速ギア位置に関するシフトポジション情報に従って、シフトポジションを表示する液晶表示装置、LED(Light Emitting Diode)表示装置、等といった表示装置である。
【0017】
図2(a)、図2(b)および図2(c)は、順に、車両変速操作装置1のシフト操作部10、回転操作スイッチ部30、およびその周辺のステアリング部の概略左側面図、概略正面図、そして概略右側面図である。
【0018】
図2(a)〜(c)に示すように、シフト操作部10は、ステアリングハンドル4が固定された一端部を有するステアリングシャフト5の周りに設けられたステアリングコラム6の近傍に配置されるとともにステアリングハンドル4と一体に設けられ且つ、ステアリングコラム6からステアリングハンドル4の径方向外方へ左右に延在された、ワイパー等の機能を操作するためのワイパー系操作レバースイッチ7およびヘッドライト、ウインカー、等の機能を操作するための灯火系操作レバースイッチ7と、車両(不図示)を直進させる際の位置にあるステアリングハンドル4との間に位置する。回転操作スイッチ部30は、図2(b)に示すように、インストルメントパネル9の右側の下方位置に設けられ、好ましくは、ステアリングハンドル4を把持していた右手をステアリングハンドル4から離して容易に操作できる位置に配置される。
【0019】
図3〜図5は後進指令用の回転操作スイッチ部30の構造を示す図である。図3(a)および図3(b)は、順に、回転操作スイッチ部30の上面図、および回転操作スイッチ部30の側面図である。図4は回転操作スイッチ部30の断面図であり、図4(a)は図3(a)のB−B矢視断面図、そして図4(b)は図4(a)のC−C矢視断面図である。また、図5は回転操作スイッチ部30を分解して示す分解斜視図である。
【0020】
回転操作スイッチ部30は、被回転操作部材31、この被回転操作部材31の上端面に接着剤等により固着される表示板32、被回転操作部材31の下部が挿入され且つ回転可能に収容される円筒部材33、円筒部材33が固着され且つ被回転操作部材31を回転自在に支持する保持部材34、および互いに接離可能に配置される接触片39aと接触片39bとを含むスイッチ部39を有している。尚、回転操作スイッチ部30としては、捻り回転操作によりスイッチ部39の接触片39aと接触片39bとが接離(On/Off)される回転操作スイッチであれば何でもよい。
【0021】
被回転操作部材31は、横長の矩形を有し且つ右手でつまんで回転操作するのに十分な高さ寸法を持つ操作つまみ部31a、および図4(a)に示すように円筒部材33の内径寸法より僅かに小さな外径寸法を有する円柱部31bを有する。円柱部31bの内部には二つの円弧深溝31cが形成されている。これら円弧深溝31cは、図4(b)に示されるように、円柱部31bの外周面に沿ってそれぞれ略半周にわたる円弧形を有して形成され、且つ深さ寸法L1を有している。また、円柱部31bの下端の中央部には、下方に突出した円柱形状の回転軸部31dが形成されており、この回転軸部31dには螺子穴31eが形成されている。
【0022】
表示板32の上面には、リバース状態へのギヤ変更用の操作部であることを示すR表示部32aおよび回転操作の方向を指示する回転方向指示部32bが設けられている。尚、R表示部32aや回転方向指示部32bは、表示板32の上面に刻印されているものであってもよいし、或いは、表示板32として透明部材を用い、R表示部32aや回転方向指示部32bの部分以外を黒塗りにし、被回転操作部材31の内部に発光ダイオード等の光源を配置し、この光源により上記R表示部32aや回転方向指示部32bを照明により目立たせる等してもよい。
【0023】
円筒部材33は被回転操作部材31の円柱部31bの外装部材となるもので、この円筒部材33内で被回転操作部材31の円柱部31bが回転できるように、円筒部材33の内径寸法は円柱部31bの外径寸法よりも僅かに大きい。円筒部材33の上端の全周にわたって外側にはり出した鍔部33aは、回転操作スイッチ部30がインストルメントパネル9の取付穴に装着される際の装着方向の最終位置を規定するストッパーの役割を持つ。
【0024】
保持部材34は、径方向の肉厚が下段から上段に向かうにつれて小さくなるように三つの円筒部が積み重ねられたような形を有しており、中央部には被回転操作部材31の回転軸部31dが回転可能に嵌合する貫通孔34aを有する。この貫通孔34aに嵌合した回転軸部31dの下端面には、貫通孔34aの径よりも大きな径を持ち、回転軸部31dの貫通孔34aからの抜け止め機能を有する円盤部材35が、螺子孔34eに螺合される螺子36により固定されている。尚、回転軸部31dが貫通孔34a内で回転可能なように、貫通孔34aの長さよりも回転軸部31dの軸方向長さが僅かに長くなっている。保持部材34の段差部34bに円筒部材33が回転不能に嵌め込まれる。また、保持部材34の上面には被回転操作部材31の円弧深溝31cにそれぞれ挿入される二つの円弧壁34cが形成されており、これら円弧壁34cは、図5に示すように、高さ寸法が徐々に変化した傾斜面34dを有する。傾斜面34dの最長高さ寸法L2は、円弧深溝31cの深さ寸法L1(図4(a)参照)よりも小さい。
【0025】
上記保持部材34に被回転操作部材31を組み付ける際、まず、ボール(玉)38がそれぞれ一端に取り付けられたコイルバネ37がそれらの他端側から被回転操作部材31の円弧深溝31c内にそれぞれ挿入され且つ保持される。そして被回転操作部材31の円弧深溝31cに保持部材34の円弧壁34cをそれぞれ挿入するとともに被回転操作部材31の回転軸部31dを保持部材34の貫通孔34aに挿入後、螺子36により回転軸部31dの下端面に円盤部材35を固定する。その際、コイルバネ37は圧縮された状態、より詳細には、コイルバネ37の弾性反発力によりボール38が円弧壁34c上部の傾斜面34dに付勢されて傾斜面34dを押圧している状態となっている。従って、被回転操作部材31は、非操作時にボール38が傾斜面34d上で最も高さ寸法の小さい位置に自動配置され、この位置が被回転操作部材31の回転初期位置となる。
【0026】
図4(b)に示すように、上記被回転操作部材31の各円弧深溝31cの周方向の長さL4は、円弧深溝31cに挿入される保持部材34の各円弧壁34cの周方向の長さL3よりも長い。よって、被回転操作部材31は、回転操作指示部32bが示す反時計周りに略「L4−L3」の長さ分だけ回転可能である。また、図4(b)に示されるように、円弧壁34cの長手方向の一端面34c1には接触片39aが配置され、そして当該円弧壁34cの一方が挿入される円弧深溝31cの長手方向の一端面31c1には接触片39bが配置され、これらにより回転操作スイッチ部30のスイッチ部39が形成される。当該スイッチ部39の接触片39aおよび接触片39bは、回転操作スイッチ部30の外面に露出する二つのスイッチ状態検出端子(不図示)とそれぞれ電気的に導通し、一方がグランド(アース)に電気的に接続され、そして他方がECU20により所定の電圧を印加されている。そして接触片39aおよび接触片39bのうち一方の電位をECU20は監視する。
【0027】
被回転操作部材31が回転操作されていない非操作時には接触片39aと接触片39bは非導通(OFF)状態であり、接触片39aおよび接触片39bのうち一方の電位はHiとなっており、リバース状態へのギヤ変更のために被回転操作部材31が上記略「L4−L3」の長さ分だけ回転操作されると、接触片39aと接触片39bとが導通(ON)状態となって接触片39aおよび接触片39bの電位がHiからLowに変化する。ECU20は、スイッチ部39のスイッチ状態検出端子(不図示)の電位がLowである場合、リバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、この場合は更に、車速が0km/hであるか否か、且つブレーキ信号が入力されている(即ち、ブレーキが踏まれている)か否かを判定し、車速が0km/hであり且つブレーキ信号が入力されていればトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。
【0028】
図6(a)および図6(b)は、図1および図2に示されるシフト操作部10の構成要素を示す図であり、図6(a)はシフト操作部10の一構成要素であるパドル機構部11の正面図、そして図6(b)はシフト操作部10の一構成要素であるスイッチ部12の回路図である。
【0029】
パドル機構部11は、図6(a)に示すように、やや横長の矩形枠状に形成され且つステアリングハンドル2に固定される枠部材11aと、この枠部材11aに、図2(a)および図2(c)に示される矢印A方向に(即ち、ステアリングシャフト2の軸方向と略平行な方向に沿って)変位するよう揺動自在に取り付けられ且つステアリングハンドル2の径方向外方へ左右に延在された二つの腕部11bと、左側の腕部11bの先端部に固着されたパドル形状の左被操作部11Lと、右側の腕部11bの先端部に固着されたパドル形状の右被操作部11Rと、を有する。尚、左被操作部11Lの上端部にはシフトダウンする際に操作される部分であることを意味する「−」の表示が施され、そして右被操作部11Rの上端部にはシフトアップする際に操作される部分であることを意味する「+」の表示が施されている。
【0030】
左被操作部11Lは、ステアリングハンドル1を把持した運転者の左手(より詳細には、左手の指先)により該ステアリングハンドル1に近づく矢印A方向(即ち、左手を握って手前に引く方向)に操作可能な位置に配置されている。同様に、右被操作部11Rは、ステアリングハンドル1を把持した運転者の右手(より詳細には、右手の指先)により該ステアリングハンドル1に近づく矢印A方向(即ち、右手を握って手前に引く方向)に操作可能な位置に配置されている。
【0031】
シフト操作部10のスイッチ部12は、二つの腕部11bをそれぞれ揺動自在にするようにパドル機構部11の枠部材11aと二つの腕部11bとの間にそれぞれ設けられた連結機構に一体に組み込まれ、図6(b)に示すように、左被操作部11Lへの操作に応じた接点のショート/オープン動作を行なう左スイッチ部12Lと、右被操作部11Rへの操作に応じた接点のショート/オープン動作を行なう右スイッチ部12Rと、を備える。左スイッチ部12Lは、左被操作部11Lの操作に連動する接触片12c、この接触片12cにより導通される一対の接点12d、およびスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLを有し、そして右スイッチ部12Rは、右被操作部11Rの操作に連動する接触片12a、この接触片12aにより導通される一対の接点12b、およびスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLを有する。
【0032】
従って、左被操作部11Lと、左側の腕部11bと、この左側の腕部11bと枠部材11aとの間に設けられた左スイッチ部12Lとにより左側の操作スイッチ部が形成され、そして右被操作部11Rと、右側の腕部11bと、この右側の腕部11bと枠部材11aとの間に設けられた右スイッチ部12Rとにより右側の操作スイッチ部が形成される。
【0033】
尚、図示は省略されているが、枠部材11aと二つの腕部11bとの間にそれぞれ設けられたスイッチ部12を含む連結機構の構造は例えば、車両に一般的に装備され且つパッシングおよびハイビームといった機能を操作する際に用いられる灯火系操作レバースイッチ7の構造、即ち、パッシングまたはハイビームといった機能の操作が解除されると自動的に所定の初期位置へ復帰する構造と同様である。つまり、運転者により操作が行なわれていない非操作時、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rはそれぞれ図2(a)および図2(c)に実線で示される初期位置にあり、例えば、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rが矢印A方向に所定量(即ち、図2(a)および図2(c)のステアリングハンドル1に近い方の点線位置まで)引かれる操作が行なわれ、その後その方向の操作が解除されると、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rが初期位置に自動復帰するようになっている。
【0034】
ここで、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rに矢印A方向に引かれる操作が行なわれた場合に、左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位および右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位がどのように変化するかについて説明する。
【0035】
左被操作部11Lが操作されておらず、この左被操作部11Lが図2(a)に実線で示される初期位置にある場合、左スイッチ部12Lの接触片12cは図6(b)において左スイッチ部12L内に実線で示される初期位置にあり、スイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDLの電位はHiとなっている。左被操作部11Lが矢印A方向に引かれる操作が行なわれると、これに連動して接触片12cが図6(b)において接触片12cの初期位置を示す実線の左側に点線で示される位置まで移動して接点12dをショートして導通させ、これによりスイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDLの電位がHiからLowに変化する。
【0036】
右被操作部11Rが操作されておらず、この右被操作部11Rが図2(c)に実線で示される初期位置にある場合、右スイッチ部12Rの接触片12aは図6(b)において右スイッチ部12R内に実線で示される初期位置にあり、スイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位はHiとなっている。右被操作部11Rが矢印A方向に引かれる操作が行なわれると、これに連動して接触片12aが図6(b)において接触片12aの初期位置を示す実線の右側に点線で示される位置まで移動して接点12bをショートして導通させ、これによりスイッチ状態検出端子OUTRIGHT -PDLの電位がHiからLowに変化する。
【0037】
制御部として働くECU20は、図1に示されるように、スイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDL、OUTRIGHT-PDLと電気的に接続されており、スイッチ状態検出端子OUTLEFT -PDL、OUTRIGHT-PDLの電位の変化を検知する。ECU20は、スイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに変化した場合、シフト操作部10により変速ギヤをシフトアップさせるための操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にシフトアップ指令信号を出力し、スイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに変化した場合、シフト操作部10により変速ギヤをシフトダウンさせるための操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にシフトダウン指令信号を出力し、そしてスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLおよびスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの両方の電位がLowである場合、シフト操作部10によりニュートラル状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定してトランスミッション2にニュートラル指令信号を出力する。
【0038】
尚、上記操作後、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rの矢印A方向への操作が解除され、自動的に初期位置に復帰しても、新たなギヤ変更操作が行なわれない限り、ECU20がトランスミッション2への指令信号の内容を変更することはない。
【0039】
また、ECU20は、シフト操作部10に対して変速ギヤをシフトアップさせる操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にシフトアップ情報を出力し、シフト操作部10に対して変速ギヤをシフトダウンさせる操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にシフトダウン情報を出力し、そしてシフト操作部10に対してニュートラル状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にニュートラル情報を出力する。
【0040】
ECU20は、回転操作スイッチ部30のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位がLowである場合、回転操作スイッチ部30によりリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、この場合は更に、車速が0km/hであるか否か、且つブレーキ信号が入力されている(即ち、ブレーキが踏まれている)か否かを判定し、車速が0km/hであり且つブレーキ信号が入力されていればトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。更に、ECU20は、回転操作スイッチ部30に対してリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定した場合は、シフトポジションインジケータ3にリバース情報を出力する。
【0041】
図7には、上述した左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rに対する操作に伴う左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位の状態および右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位の状態、上述した回転操作スイッチ部30の被回転操作部材31に対する操作に伴うスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位の状態、更にはECU20による変速制御(トランスミッション制御)の関係が纏めて示されている。
【0042】
ここで、図4、図5および図8を参照して、リバース位置へのギヤ変更を行なう際の車両変速操作装置1の回転操作スイッチ部30の操作の仕方、その際のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位状態およびECU20による変速制御について説明する。図8はECU20により実行されるリバース変速処理を示すフローチャートである。
【0043】
リバース状態へ変速ギヤを変更する場合、運転者はインストルメントパネル9に配置された回転操作スイッチ部30(図2参照)の被回転操作部材31の回転つまみ部31aを回転方向指示部32bが指し示す方向(反時計回り)にコイルバネ37の弾性反発力(換言すれば、ボール38への付勢力)に抗して、被回転操作部材31の円弧深溝31c内の接触片39bに保持部材34の円弧壁34c上の接触片39aが突き当たるまで捻り回転操作する。これにより、コイルバネ37の下端にあるボール38が保持部材34の傾斜面34dの高さ寸法の最も低い位置から最も高い位置へ摺動していき、この際コイルバネ37の弾性反発力(換言すれば、ボール38への付勢力)が高まっていく。上記のように接触片39aと接触片39bとが互いに突き当たり電気的に導通状態になると、スイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位がLowになる。
【0044】
尚、リバース状態へ変速ギヤを変更する操作が終了し、運転者が回転つまみ部31aの回転操作を解除すると、被回転操作部材31はコイルバネ38の弾性復元力によって時計周りに自動的に回転し、図4の初期位置に戻るが、接触片39aと接触片39bとが非接触状態になっても、ECU20は、何らかの新たな変速ギヤの変更操作が行なわれない限り、トランスミッション2への指令信号の内容を変更することはない。
【0045】
ECU20は、回転操作スイッチ部30のスイッチ状態検出端子の電位がHiからLowに変化する場合、図8のフローチャートに示すようなリバース変速処理を実行する。以下、このリバース変速処理を図8のフローチャートに従って説明する。
【0046】
ECU20は、ステップS1にて、回転操作スイッチ部30のスイッチ状態検出端子の電位がLowであることを検知すると、回転操作スイッチ部30によりリバース状態へのギヤ変更操作が行なわれたと判定するが、直ちにトランスミッション2へリバース位置指令信号を送出せず、ステップS2へ進み、ここで車速センサ(不図示)から入力される車速信号を読み取り、現在の車速が0km/hであるか否かの判定を行なう。この結果、ECU20は、車速が0km/hであれば処理をステップS3へ進め、今度は足踏みブレーキ(不図示)が踏まれてブレーキ信号(ON信号)が入力されているか否かを判定する。そしてブレーキ信号が入力されていればステップS4へ進み、ここで初めてトランスミッション2へリバース位置指令信号を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、「リバース」状態へのギヤ変更を行なう。その後ステップS5へ進み、ECU20は、シフトポジションインジケータ3にリバース位置にギヤ変更された旨を示すシフトポジション情報を出力する。これにより、シフトポジションインジケータ3が「リバース」状態であることを表示し、運転者はこの表示でリバース状態へのギヤ変更がなされたことを知ることができる。以上で、ECU20はリバース変速処理を終了する。
【0047】
一方、上記ステップS2にて、現在の車速が0km/hでないと判定した場合や、上記ステップS3にて、ブレーキ信号が入力されていないと判定した場合、ECU20は、処理をステップS6へ進め、リバース状態への変速処理は行なわない。このように、ECU20が、車速が0km/hでない場合にリバース状態への変速処理を行なわないのは、車両が動いている際にリバース状態へのギヤ変更を行なうことは危険であり、また変速ギヤが破損等する虞もあるからである。また、ECU20が、ブレーキ信号が入力されていない場合にリバース位置への変速処理を行なわないのは、車速が0km/hであっても、運転の安全性をより高めるためである。
【0048】
さて、図9〜図11は、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンさせたり、ニュートラルの状態へギヤ変更をさせたりする際の、左被操作部11Lおよび右被操作部11Rの操作の仕方およびその際のスイッチ部12のスイッチ状態検出端子の電位の状態を説明するための図である。
【0049】
変速ギヤをシフトアップさせる場合、図9(b)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した右手8Rで右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行なう。ここで、前進方向へ切り替え可能なシフトポジションとして、「1(1速)」、「2(2速)」、および「D(ドライブ)」を有する車両を例にし、現在のシフトポジションが「1」であるとする。この状態から「2」にシフトアップさせる場合、運転者は右被操作部11Rのみを矢印A方向に1回引く操作を行なう。すると、図9(a)に示すようにこれに連動して接触片12aが接点12bを導通状態にし、これにより右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに変化するので、ECU20は、トランスミッション2に対してシフトアップ指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「2」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「1」を「2」にシフトアップさせる。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「2」である旨の表示を行なう。尚、ECU20で実行されるシフトアップ時の変速処理は容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0050】
また、更にもう1段、シフトアップさせるために運転者が右被操作部11Rのみを矢印A方向にもう1回引く操作を行なうと、これに連動して右スイッチ部12Rのスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位のみがHiからLowに再び変化するので、ECU20が、トランスミッション2に対してシフトアップ指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「D」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「2」を「D」にシフトアップさせ、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「D」である旨の表示を行なう。
【0051】
変速ギヤをシフトダウンさせる場合、図10(a)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した左手8Lで左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なう。上記のように切り替え可能なシフトポジションとして、「1」、「2」、および「D」を有する車両を例にとると、現在のシフトポジションが「D」である場合に、運転者が左被操作部11Lを矢印A方向に1回引く操作を行なうと、図10(b)に示すようにこれに連動して接触片12cが接点12dを導通状態にし、これによりスイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに変化する。よって、ECU20が、トランスミッション2に対してシフトダウン指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「2」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「D」を「2」にシフトダウンさせる。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「2」である旨の表示を行なう。尚、このシフトダウン時にECU20にて実行される変速処理については容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0052】
また、更にもう1段、シフトダウンさせるために運転者が左被操作部11Lのみを矢印A方向にもう1回引く操作を行なうと、これに連動して左スイッチ部12Lのスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位のみがHiからLowに再び変化するので、ECU20は、トランスミッション2に対してシフトダウン指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「1」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、現在のシフトポジション「2」を「1」にシフトダウンさせ、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「1」である旨の表示を行なう。
【0053】
ニュートラルの位置にギヤ変更する場合、図11(a)および図11(c)に示すように、ステアリングハンドル1を把持した左手8Lで左被操作部11Lを、同じくステアリングハンドル1を把持した右手8Rで右被操作部11Rを、それぞれ矢印A方向に引く操作をする。すると、図11(b)に示すようにこれに連動して接触片12c、12aが接点12d、12bを導通状態にし、これによりスイッチ部12のスイッチ状態検出端子OUTLEFT-PDLの電位およびスイッチ状態検出端子OUTRIGHT-PDLの電位がHiからLowに変化する。よって、ECU20が、トランスミッション2に対してニュートラル指令信号を出力し、またシフトポジションインジケータ3に対してシフトポジションが「ニュートラル」に変更される旨のシフトポジション情報を出力する。これにより、トランスミッション2が変速ギヤを駆動し、シフトポジションを「ニュートラル」の状態とする。また、シフトポジションインジケータ3がシフトポジション「ニュートラル」状態である旨の表示を行なう。尚、このニュートラル状態への変更時にECU20にて実行される変速処理については容易に類推可能であるので、これ以上の説明は割愛する。
【0054】
上述した車両変速操作装置1によれば、回転操作スイッチ部30を捻り回転操作するといった運転者が意識的に行なう行為により、初めてリバース状態への変速ギヤの変更を可能にしているので、不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。
【0055】
また、上述した車両変速操作装置1によれば、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更は、左被操作部11Lおよび/または右被操作部11Rを所定位置からステアリングハンドル4に近づく方向に操作することによって行なわれ、このように人間行動学的に原始行動である「手を握る」という行為により行なわれるようになっている。従って、変速ギヤをシフトアップ、シフトダウンおよびニュートラル状態にするといった頻繁に行なわれるギヤ変更時の操作は、ステアリングハンドル4から手を離さずに行なうことが可能であり、非常に良好なものとなる。
【0056】
また、上述した車両変速操作装置1によれば、制御部であるECU20が、左被操作部11L、右被操作部11R、および回転つまみ部31aへの操作をスイッチ部12およびスイッチ部39のスイッチ状態検出端子の電位から判定し、シフトアップ指令信号、シフトダウン指令信号、ニュートラル指令信号、或いは、後進ギヤ位置指令信号をトランスミッションに伝送するように構成されているので、操作意図に応じた変速ギヤの変更を確実に行なうことができる。
【0057】
尚、上記実施形態では、後進指令操作機能(リバース状態へ変速ギヤを変更させる機能)を備えた車両変速操作装置を例にしているが、回転操作スイッチ部30と、この回転操作スイッチ部30のスイッチ部39のスイッチ状態検出端子(接触片)の電位の状態に基づいて図8のようなリバース変速処理を行なうECU20と、を備える車両後進指令操作装置としても、上記と同様に「不用意に、車両を後進させる状態にギヤ変更が行なわれるといった誤操作を防止することができ、これにより車両運転の安全性を高めることができる。」といった優れた効果を奏することは言うまでもない。
【0058】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の形状、寸法、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、変速ギヤをシフトアップさせる場合、右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行ない、そして変速ギヤをシフトダウンさせる場合、左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なったが、これに限定されず、左被操作部11Lのみを矢印A方向に引く操作を行なうことにより変速ギヤがシフトアップされ、そして右被操作部11Rのみを矢印A方向に引く操作を行なうことにより変速ギヤがシフトダウンされるようにしてもよい。
【0060】
また、シフトポジションとして「パーキング」を上述した実施形態に加えることも可能である。これは、例えば、左被操作部11Lと右被操作部11Rをある一定時間以上「握る」等した際に「パーキング」状態となるようにすることで対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態である車両変速操作装置およびこの車両変速操作装置からの信号に従って作動するトランスミッションおよびシフトポジションインジケータを示すシステムブロック図である。
【図2】(a)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略左側面図、(b)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略正面図、そして(c)は図1の車両変速操作装置およびその周辺のステアリング部の概略右側面図である。
【図3】(a)は車両変速操作装置に具備される回転操作スイッチ部の上面図、そして(b)は回転操作スイッチ部の側面図である。
【図4】(a)は図3(a)のB−B矢視断面図、そして(b)は図4(a)のC−C矢視断面図である。
【図5】車両変速操作装置に具備される回転操作スイッチ部を一部分解して示す分解斜視図である。
【図6】(a)は図2(a)〜(c)に示されるシフト操作部の一構成要素であるパドル機構部の正面図、そして(b)は図2(a)〜(c)に示されるシフト操作部の一構成要素であるスイッチ部の回路図である。
【図7】左被操作部および/または右被操作部に対する操作に伴う左スイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態および右スイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態、回転操作スイッチ部の被回転操作部材に対する操作に伴うスイッチ部のスイッチ状態検出端子の電位の状態、更にはECUによる変速制御(トランスミッション制御)の関係が纏めて示される表である。
【図8】ECUにより実行されるリバース変速処理を示すフローチャートである。
【図9】シフトアップ操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)はスイッチ部の回路図、そして(b)は概略右側面図である。
【図10】シフトダウン操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)は概略左側面図、そして(b)はスイッチ部の回路図である。
【図11】ニュートラル位置へのギヤ変更操作を説明するための車両変速操作装置のシフト操作部およびその周辺のステアリング部を示す図であり、(a)は概略左側面図、(b)はスイッチ部の回路図、そして(c)は右側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両変速操作装置
2 トランスミッション
3 シフトポジションインジケータ
4 ステアリングハンドル
5 ステアリングシャフト
6 ステアリングコラム
7 操作レバースイッチ
10 シフト操作部(変速指令用操作部)
11 パドル機構部
11b 左側の腕部(左側の操作スイッチ部)
11b 右側の腕部(右側の操作スイッチ部)
11L 左被操作部(左側の操作スイッチ部)
11R 右被操作部(右側の操作スイッチ部)
12 スイッチ部
12L 左スイッチ部(左側の操作スイッチ部)
12R 右スイッチ部(右側の操作スイッチ部)
20 ECU(制御部)
30 回転操作スイッチ部(後進指令用操作部)
31 被回転操作部材
39 スイッチ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が後進するように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせるための車両後進指令操作装置であって、
捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部と、
前記回転操作スイッチ部に電気的に接続され、前記車両を後進させるための前記回転操作スイッチ部への捻り回転操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えていることを特徴とする車両後進指令操作装置。
【請求項2】
車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つ前記ステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、シフトアップ、シフトダウンまたはニュートラル状態となるように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に前記ステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作される変速指令用操作部と、
前記車両が後進するように前記トランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に操作される後進指令用操作部と、
前記変速指令用操作部および前記後進指令用操作部に電気的に接続され、前記変速指令用操作部または前記後進指令用操作部への操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えた車両変速操作装置であって、
前記変速指令用操作部が、前記ステアリングハンドルを把持した一方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第1操作スイッチ部と、前記ステアリングハンドルを把持した他方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第2操作スイッチ部と、を有し、
前記後進指令用操作部が、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部を有し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトアップされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトダウンされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがニュートラル状態にされ、そして、
前記回転スイッチ部が捻り回転操作されることにより、前記変速ギヤが前記車両を後進させる状態にされる、
ことを特徴とする車両変速操作装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトアップ指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトダウン指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してニュートラル指令信号を出力し、そして、
前記回転スイッチ部への捻り回転操作に応答して後進ギヤ位置指令信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載した車両変速操作装置。
【請求項1】
車両が後進するように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせるための車両後進指令操作装置であって、
捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部と、
前記回転操作スイッチ部に電気的に接続され、前記車両を後進させるための前記回転操作スイッチ部への捻り回転操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えていることを特徴とする車両後進指令操作装置。
【請求項2】
車両におけるステアリングハンドルが固定されたステアリングシャフト周りのステアリングコラムの近傍に配置され且つ前記ステアリングハンドルの径方向外方へ延在され、シフトアップ、シフトダウンまたはニュートラル状態となるように前記車両のトランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に前記ステアリングシャフトの軸方向と略平行な方向に沿って操作される変速指令用操作部と、
前記車両が後進するように前記トランスミッションに変速ギヤの変更を行なわせる際に操作される後進指令用操作部と、
前記変速指令用操作部および前記後進指令用操作部に電気的に接続され、前記変速指令用操作部または前記後進指令用操作部への操作に従って、前記変速ギヤの変更を行なわせるための指令信号を前記トランスミッションへ出力する制御部と、
を備えた車両変速操作装置であって、
前記変速指令用操作部が、前記ステアリングハンドルを把持した一方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第1操作スイッチ部と、前記ステアリングハンドルを把持した他方の手で該ステアリングハンドルに近づく方向に操作可能且つ該ステアリングハンドルから離れる方向に操作可能な位置に配置される第2操作スイッチ部と、を有し、
前記後進指令用操作部が、捻り回転操作可能な回転操作スイッチ部を有し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトアップされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがシフトダウンされ、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部が前記ステアリングハンドルに近づく方向に操作され、これにより前記変速ギヤがニュートラル状態にされ、そして、
前記回転スイッチ部が捻り回転操作されることにより、前記変速ギヤが前記車両を後進させる状態にされる、
ことを特徴とする車両変速操作装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの一方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトアップ指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部のうちの他方の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してシフトダウン指令信号を出力し、
前記第1操作スイッチ部および前記第2操作スイッチ部の前記ステアリングハンドルに近づく方向への操作に応答してニュートラル指令信号を出力し、そして、
前記回転スイッチ部への捻り回転操作に応答して後進ギヤ位置指令信号を出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載した車両変速操作装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−327323(P2006−327323A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151348(P2005−151348)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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