説明

車両搭載用発電装置

【課題】エンジンによってジェネレータを駆動して発電を行う車両搭載用発電装置におけるエネルギー損失を抑制することを目的とする。
【解決手段】車両搭載用発電装置は、エンジン10、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG1の交流発電電力を直流電力に変換する整流回路14、整流回路14と車両駆動回路26との間の電力経路に、二次電池18の出力電圧を昇圧した昇圧を出力するDC/DCコンバータ回路20、および、コントロールユニット30を備える。コントロールユニット30は、エンジン10、モータジェネレータMG1、二次電池18、モータジェネレータMG2の各エネルギー損失等に基づいて、モータジェネレータMG1の回転数対トルク特性上に、エンジン10およびモータジェネレータMG1の目標動作点を設定する。そして、エンジン10およびモータジェネレータMG1の動作点を目標動作点に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用発電装置に関し、特に、エンジンによってジェネレータを駆動して発電を行う装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シリーズハイブリッド自動車につき広く研究開発が行われている。シリーズハイブリッド自動車は、エンジンによってジェネレータを駆動して発電を行い、発電電力によって走行用モータを駆動して車両を走行させる。ジェネレータによる発電電力のうち車両の走行に用いられない電力、および走行用モータによる回生電力は、繰り返して充放電が可能な二次電池に供給される。二次電池に充電された電力は、走行制御に応じて走行用モータに供給され、走行電力として用いられる。シリーズハイブリッド自動車によれば、エンジンによる発電電力および回生電力を走行電力として用いることができる。
【0003】
図16には、シリーズハイブリッド自動車に搭載される車両駆動システムが示されている。このシリーズハイブリッド車両駆動システムは、二次電池18、DC/DCコンバータ回路20、車両駆動回路26、走行用モータM、エンジン10、ジェネレータG、整流回路14およびコントロールユニット30を備える。
【0004】
エンジン10は、ジェネレータGにトルクを与え、ジェネレータGはそのトルクによって発電を行う。整流回路14は、ジェネレータGの交流発電電力を直流電力に変換し、車両駆動回路26に至る電力経路にその直流電力を出力する。DC/DCコンバータ回路20は、二次電池18の出力電圧を昇圧し、整流回路14と車両駆動回路26との間の電力経路に昇圧後の電圧Vhを出力する。コントロールユニット30は、エンジン10、車両駆動回路26およびDC/DCコンバータ回路20を制御する。
【0005】
特許文献1には、シリーズハイブリッド自動車について記載されている。このシリーズハイブリッド自動車においては、ジェネレータが出力する交流発電電圧を整流する整流器が設けられている。整流器が出力する直流電圧は、昇圧チョッパ回路によって電圧値が調整された後、二次電池(バッテリ)に印加される。特許文献1には、さらに、昇圧チョッパ回路の制御によりバッテリの電圧制御を行う旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−245322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16に示されるシリーズハイブリッド車両駆動システムには、コントロールユニット30が、次のような制御を実行するものがある。すなわち、コントロールユニット30は、ジェネレータGに対する発電電力要求値に基づいて、DC/DCコンバータ回路20から出力される昇圧電圧Vhに対する仮の目標値として第1電圧目標値を求める。さらに、走行用モータMの制御に応じて、DC/DCコンバータ回路20から出力される昇圧電圧に対する仮の目標値として第2電圧目標値を求める。そして、第2電圧目標値が第1電圧目標値より大きいときは、ユーザの運転操作に応じた走行制御を確保するため、コントロールユニット30は、昇圧電圧Vhが第2電圧目標値となるようDC/DCコンバータ回路20を制御する。他方、第2電圧目標値が第1電圧目標値以下であるときは、整流回路14に流れる電流を抑制するため、コントロールユニット30は、昇圧電圧Vhが第1電圧目標値となるようDC/DCコンバータ回路20を制御する。
【0008】
しかし、エンジン10、ジェネレータG、二次電池18、走行用モータM等におけるエネルギー損失を考慮することなく、DC/DCコンバータ回路20の昇圧電圧Vhを第1電圧目標値または第2電圧目標値のいずれか一方に設定した場合、シリーズハイブリッド車両駆動システム全体のエネルギー損失を抑制することが困難となる場合があった。
【0009】
本発明は、エンジンによってジェネレータを駆動して発電を行う車両搭載用発電装置におけるエネルギー損失を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エンジンと、前記エンジンに対する燃料供給量を変化させる燃料制御部と、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータの交流発電電力を直流電力に変換し、車両を電力駆動する車両駆動部に至る電力経路にその直流電力を出力する整流回路と、前記整流回路と前記車両駆動部との間の電力経路に、二次電池の出力電圧を調整した制御用電圧を出力するコンバータ回路と、前記コンバータ回路を制御し、前記制御用電圧を変化させる電圧制御部と、を備える車両搭載用発電装置において、前記電圧制御部は、前記車両駆動部の制御に応じて、前記電力経路に出力される電圧の目標値を決定する目標値決定手段を備え、前記制御用電圧を前記目標値に調整し、前記燃料制御部は、前記制御用電圧が前記目標値に調整された状態で、前記車両搭載用発電装置におけるエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、望ましくは、前記燃料制御部は、前記制御用電圧が前記目標値に調整された状態で前記エンジンが最適燃費状態となるよう前記燃料供給量を調整する。
【0012】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記燃料制御部は、前記制御用電圧が前記目標値に調整されている状態における、前記エンジン、前記ジェネレータ、および前記二次電池のうち少なくともいずれかにおけるエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する。
【0013】
また、本発明は、エンジンと、前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、前記ジェネレータの交流発電電力を直流電力に変換し、車両を電力駆動する車両駆動部に至る電力経路にその直流電力を出力する整流回路と、前記整流回路と前記車両駆動部との間の電力経路に、二次電池の出力電圧を調整した制御用電圧を出力するコンバータ回路と、前記コンバータ回路を制御し、前記制御用電圧を変化させる電圧制御部と、を備え、前記電圧制御部は、前記車両駆動部の制御に応じて、前記電力経路に出力される電圧に対する電圧上限値および電圧下限値を決定する上下限値決定手段を備え、前記電圧下限値および前記電圧上限値によって規定される範囲で前記制御用電圧を調整する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記エンジンに対する燃料供給量を変化させる燃料制御部と、前記二次電池の充電状態に応じて、前記ジェネレータの発電電力下限値を決定する発電電力下限値決定部と、を備え、前記燃料制御部は、前記発電電力下限値と、前記エンジンの回転数対トルク特性における最適燃費線とによって規定される範囲で前記燃料供給量を調整する。
【0015】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記燃料制御部は、前記ジェネレータの発電電力が前記発電電力下限値以上となり、かつ、前記エンジンのトルクが、その回転数対トルク特性における最適燃費線によって示されるトルク以下となる範囲で前記燃料供給量を調整し、前記電圧制御部および前記燃料制御部は、前記車両搭載用発電装置または前記車両駆動部のエネルギー損失に基づいて、それぞれ、前記制御用電圧および前記燃料供給量を調整する。
【0016】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記電圧制御部および前記燃料制御部は、前記ジェネレータの発電電力を一定としたときにおける、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて、それぞれ、前記制御用電圧および前記燃料供給量を調整する。
【0017】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記回転数対トルク特性における最適燃費線、前記電圧上限値に対応する特性曲線、前記電圧下限値に対応する特性曲線、および前記発電電力下限値を示す等電力線によって囲まれた制御領域に設定された複数の目標動作点から、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて1つの目標動作点を選択する目標動作点選択部を備え、前記燃料制御部は、選択された目標動作点に応じて前記燃料供給量を調整し、前記電圧制御部は、選択された目標動作点に応じて前記制御用電圧を調整する。
【0018】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記電圧制御部は、前記ジェネレータの発電電力を前記発電電力下限値としたときのエネルギー損失評価値であって、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかに基づくエネルギー損失評価値が所定条件を満たす所定電圧値に、前記制御用電圧を調整し、前記燃料制御部は、前記制御用電圧が前記所定電圧値に調整されている状態における、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する。
【0019】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記燃料制御部は、前記制御用電圧を前記電圧上限値としたときのエネルギー損失評価値であって、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかに基づくエネルギー損失評価値が所定条件を満たすときの前記ジェネレータの発電電力を求め、前記電圧制御部は、前記ジェネレータの発電電力が当該求められた発電電力に維持されるときにおける、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて前記制御用電圧を調整する。
【0020】
また、本発明に係る車両搭載用発電装置は、前記電圧制御部は、前記エンジンまたは前記ジェネレータから発せられる振動または騒音に応じて前記制御用電圧を調整し、前記燃料制御部は、前記エンジンまたは前記ジェネレータから発せられる振動または騒音に応じて前記燃料供給量を調整する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エンジンによってジェネレータを駆動して発電を行う車両搭載用発電装置におけるエネルギー損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【図2】シリーズハイブリッド車両駆動システムの回路構成例を示す図である。
【図3】最適燃費制御におけるフローチャートである。
【図4】最適燃費制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図5】昇圧電圧一定・低損失制御におけるフローチャートである。
【図6】昇圧電圧一定・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図7】発電電力一定・低損失制御におけるフローチャートである。
【図8】発電電力一定・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図9】最適低損失制御におけるフローチャートである。
【図10】最適低損失制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図11】第1探索型・低損失制御におけるフローチャートである。
【図12】第1探索型・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図13】第2探索型・低損失制御におけるフローチャートである。
【図14】第2探索型・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図である。
【図15】NV制御におけるフローチャートである。
【図16】シリーズハイブリッド車両駆動システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.シリーズハイブリッド車両駆動システムについての概要
図1には本発明の実施形態に係るシリーズハイブリッド車両駆動システムの構成が示されている。このシステムは、モータジェネレータMG2を走行用のモータジェネレータとし、モータジェネレータMG1を発電用のモータジェネレータとするものである。シリーズハイブリッド車両駆動システムが備える構成要素のうち、エンジン10、モータジェネレータMG1、整流回路14、DC/DCコンバータ回路20およびコントロールユニット30は、車両搭載用の発電装置としての機能を有する。
【0024】
モータジェネレータMG1による発電電力は、二次電池18またはモータジェネレータMG2に供給される。モータジェネレータMG2は、二次電池18に充電された電力またはモータジェネレータMG1の発電電力によって車両を駆動する。
【0025】
エンジン10は、モータジェネレータMG1にトルクを与える。モータジェネレータMG1は、エンジン10からトルクを与えられることで発電を行う。整流回路14は、モータジェネレータMG1が発電した交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をDC/DCコンバータ回路20または車両駆動回路26に出力する。
【0026】
DC/DCコンバータ回路20は、二次電池18の出力電圧を昇圧し、昇圧して得られた昇圧電圧Vhを整流回路14および車両駆動回路26に出力する。DC/DCコンバータ回路20が昇圧電圧Vhを変化させることで、整流回路14から二次電池18に供給される電力、整流回路14から車両駆動回路26に供給される電力、および二次電池18と車両駆動回路26との間で授受される電力が調整され得る。すなわち、昇圧電圧Vhは、これらの電力を調整するための制御用電圧となり得る。
【0027】
車両駆動回路26は、車両を加速するときは、整流回路14から出力される直流電力、またはDC/DCコンバータ回路20から出力される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力をモータジェネレータMG2に供給する。そして、車両を回生制動するときは、モータジェネレータMG2の交流発電電力を直流電力に変換し、その直流電力をDC/DCコンバータ回路20に出力する。DC/DCコンバータ回路20は、車両駆動回路26から出力された電力によって二次電池18を充電する。
【0028】
コントロールユニット30は、アクセルペダル、ブレーキペダル、運転席の操作パネル等を含む運転操作部44における操作に基づいて、エンジン10、DC/DCコンバータ回路20、および車両駆動回路26を制御する。
【0029】
2.シリーズハイブリッド車両駆動システムの構成および動作
シリーズハイブリッド車両駆動システムの具体的な構成および動作について説明する。エンジン10は、燃料の供給量を調整するスロットル12を備える。スロットル12はエンジン10に燃料を供給する管に弁が設けられたものである。スロットル12は、弁の開き具合、すなわち、スロットル開度を調整することで燃料の供給量を調整する。スロットル開度が大きい程、エンジン10の出力パワー(トルクと回転数との積に比例する量)は増加し、スロットル開度が小さい程、エンジン10の出力パワーは減少する。コントロールユニット30は、スロットル12を制御する燃料制御部34を備え、スロットル12を制御する。
【0030】
モータジェネレータMG1のシャフトは、エンジン10のシャフトに取り付けられている。エンジン10およびモータジェネレータMG1は互いにトルクを作用し合う。すなわち、エンジン10は出力パワーに応じた駆動トルクをモータジェネレータMG1に与え、モータジェネレータMG1は、発電電力に応じた反作用トルクをエンジン10に与える。
【0031】
モータジェネレータMG1の電力伝送線U1、V1およびW1は、整流回路14に接続されている。整流回路14は、整流素子として6個のダイオード16を備える。整流回路14には、上下のダイオード16の組が、電力伝送線U1,V1およびW1に対応して設けられている。上下のダイオード16の組においては、上側のダイオード16のアノード端子が下側のダイオード16のカソード端子に接続されている。また、各組の上側のダイオード16のカソード端子は、DC/DCコンバータ回路20と車両駆動回路26とを接続する正極伝送線22に接続され、各組の下側のダイオード16のアノード端子はDC/DCコンバータ回路20と車両駆動回路26とを接続する負極伝送線24に接続されている。
【0032】
各ダイオード16は、アノード端子の電位がカソード端子の電位よりも高いときに導通する。これによって、整流回路14は、3相交流電力を直流電力に変換する。すなわち、整流回路14は、各ダイオード16の整流作用により、電力伝送線U1、V1およびW1の相互間の交流電圧を直流電圧に変換し、正極伝送線22および負極伝送線24に出力する。
【0033】
DC/DCコンバータ回路20には二次電池18の正極および負極が接続されている。DC/DCコンバータ回路20は、二次電池18の出力電圧を昇圧し、昇圧電圧Vhを正極伝送線22および負極伝送線24との間に出力する。コントロールユニット30は、DC/DCコンバータ回路20を制御して昇圧電圧Vhを変化させる電圧制御部32を備え、DC/DCコンバータ回路20を制御する。
【0034】
正極伝送線22および負極伝送線24には車両駆動回路26が接続されている。また、車両駆動回路26には、モータジェネレータMG2の電力伝送線U2、V2およびW2が接続されている。車両駆動回路26は、正極伝送線22および負極伝送線24から与えられる直流電力を3相交流電力に変換し、その3相交流電力をモータジェネレータMG2に出力する。また、車両駆動回路26は、モータジェネレータMG2から与えられる3相交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を正極伝送線22および負極伝送線24に出力する。車両駆動回路26が正極伝送線22および負極伝送線24側からモータジェネレータMG2に電力を供給するか、モータジェネレータMG2から正極伝送線22および負極伝送線24側に電力を供給するかは、正極伝送線22および負極伝送線24の線間電圧、モータジェネレータMG2の回転状態、DC/DCコンバータ回路20の動作状態、車両駆動回路26の動作状態等によって決定される。
【0035】
モータジェネレータMG2のシャフトには、車輪にトルクを伝達するトルク伝達機構28が取り付けられている。車両を加速するときは、車両駆動回路26からモータジェネレータMG2に電力が供給される。これによって、モータジェネレータMG2は加速トルクを発生し、車両を加速する。また、車両を回生制動するときは、モータジェネレータMG2から車両駆動回路26に発電電力が供給される。これによって、モータジェネレータMG2は制動トルクを発生し、車両を制動する。
【0036】
コントロールユニット30は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバ38から、モータジェネレータMG1の回転数の検出値を読み込む。また、コントロールユニット30は、モータジェネレータMG1の電力伝送線V1およびW1の各電流を検出する電流センサ40から、電力伝送線V1およびW1の各電流検出値を読み込み、さらに、昇圧電圧Vhを検出する電圧計42から検出値を読み込む。そして、回転数の検出値、電力伝送線V1およびW1の電流検出値、ならびに昇圧電圧Vhの検出値に基づいてモータジェネレータMG1のトルクを求める。また、コントロールユニット30は、電力伝送線V1およびW1の電流検出値と、昇圧電圧Vhの検出値とに基づいてモータジェネレータMG1の発電電力を求める。コントロールユニット30は、回転数の検出値、求められたモータジェネレータMG1のトルクおよび発電電力を、モータジェネレータMG1の発電制御に用いる。
【0037】
図2には、シリーズハイブリッド車両駆動システムの回路構成例が示されている。図1に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。DC/DCコンバータ回路20は、インダクタ48、第1IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)50、第2IGBT52、ダイオード54、および出力コンデンサ56を備える。ここで、IGBTの代わりに、サイリスタ、トライアック、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等のその他の半導体素子を用いてもよい。
【0038】
インダクタ48の一端は二次電池18の正極に接続されている。インダクタ48の他端は、第1IGBT50のエミッタ端子、および第2IGBT52のコレクタ端子に接続されている。第1IGBT50のコレクタ端子は正極伝送線22に接続され、第2IGBT52のエミッタ端子は負極伝送線24に接続されている。第1IGBT50および第2IGBT52のそれぞれのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側がアノード端子となるようダイオード54が接続されている。正極伝送線22と負極伝送線24との間には出力コンデンサ56が接続されている。
【0039】
第1IGBT50および第2IGBT52に対しては、コントロールユニット30によって、電圧目標値に応じたデューティ比を以て交互にスイッチングが行われる。これによって、インダクタ48にはデューティ比に応じた誘導起電力が発生する。そして、二次電池18の出力電圧に誘導起電力を加えた電圧が昇圧電圧Vhとして出力コンデンサ56に充電され、正極伝送線22および負極伝送線24に昇圧電圧が出力される。
【0040】
車両駆動回路26は、インバータ回路58によって構成されている。インバータ回路58は、それぞれが上側IGBT60および下側IGBT62を含む3組のIGBT組58u、58vおよび58wを備える。各IGBT組における上側IGBT60のエミッタ端子は同じ組の下側IGBT62のコレクタ端子に接続されている。また、各IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子側がアノード端子となるようダイオード64が接続されている。
【0041】
各IGBT組の上側IGBT60のコレクタ端子は共通に接続され正極伝送線22に接続されている。また、各IGBT組の下側IGBT62のエミッタ端子は共通に接続され負極伝送線24に接続されている。
【0042】
IGBT組58uの上側IGBT60と下側IGBT62の接続節点には、モータジェネレータMG2の電力伝送線U2が接続されている。また、IGBT組58vの上側IGBT60と下側IGBT62の接続節点には、モータジェネレータMG2の電力伝送線V2が接続され、IGBT組58wの上側IGBT60と下側IGBT62の接続節点には、MG2の電力伝送線W2が接続されている。
【0043】
ここでは、インバータ回路58のスイッチング素子としてIGBTを用いた例を示しているが、スイッチング素子としては、サイリスタ、トライアック、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等のその他の半導体素子を用いてもよい。
【0044】
コントロールユニット30は、各IGBT組が備える上側IGBT60および下側IGBT62に対しスイッチング制御を行う。インバータ回路58は、このスイッチング制御によって、DC/DCコンバータ回路20および整流回路14と、モータジェネレータMG2との間で直流交流変換を行うと共に、モータジェネレータMG2との間で授受される電力を調整する。
【0045】
3.シリーズハイブリッド車両駆動システムにおける発電制御
次に、モータジェネレータMG1の発電制御について説明する。発電制御には、シリーズハイブリッド車両駆動システムにおけるエネルギー損失等の観点から、以下に説明するように複数種の制御がある。
【0046】
(1)最適燃費制御
最適燃費制御は、エンジン10を最適燃費状態で動作させることを目的とした制御である。この制御においては、モータジェネレータMG1に対する発電電力要求値に基づいて、昇圧電圧Vhに対する仮の目標値として第1電圧目標値V1が求められる。他方、モータジェネレータMG2の制御に基づいて、昇圧電圧Vhに対する仮の目標値として第2電圧目標値V2が求められる。そして、第1電圧目標値V1および第2電圧目標値V2に応じて、昇圧電圧Vhおよびスロットル開度が調整される。
【0047】
図3には、最適燃費制御におけるフローチャートが示されている。コントロールユニット30は、運転操作部44における操作、走行状態、二次電池18の充電状態等に関する車両動作情報に基づいてモータジェネレータMG1の発電電力要求値を求める(S101)。そして、記憶部36に予め記憶されているエンジン10の最適燃費条件に関する情報を取得する(S102)。コントロールユニット30は、エンジン10について最適燃費条件が満たされるという条件の下、発電電力要求値に基づいて第1電圧目標値V1を求める(S103)。具体的には、コントロールユニット30は、モータジェネレータMG1の回転数対トルク特性に基づいて、次のように第1電圧目標値V1を決定する。
【0048】
図4には、モータジェネレータMG1の回転数対トルク特性が示されている。この回転数対トルク特性は、予め記憶部36に記憶され、モータジェネレータMG1の制御においてコントロールユニット30によって参照される。横軸は回転数Nを示し、縦軸はモータジェネレータMG1からエンジン10に与えられるトルクTを示す。図4には、昇圧電圧をVh1、Vhm、およびVh2で一定にした場合のそれぞれにつき、回転数NとトルクTとの関係がNT特性曲線Vh1、Vhm、およびVh2として示されている。ここで、昇圧電圧Vh1、Vhm、およびVh2には、Vh1<Vhm<Vh2の関係がある。また、図4には、エンジン10の最適燃費条件が成立するトルクTおよび回転数Nを示す曲線が、最適燃費線OPTとして示されている。さらに、図4には、発電電力がP0であることを示す等電力線P0が示されている。発電電力要求値をP0とした場合、最適燃費線OPTと等電力線P0との交点A1を通るNT特性曲線Vh1に対応する昇圧電圧Vh1が、第1電圧目標値V1として求められる。
【0049】
次に、コントロールユニット30は、運転操作部44における操作、走行状態等に基づいてモータジェネレータMG2のトルク要求値を求める(S104)。そして、トルク要求値に基づいて、昇圧電圧Vhに対する仮の目標値として、第2電圧目標値V2を求める(S105)。
【0050】
コントロールユニット30は、第2電圧目標値V2が第1電圧目標値V1より大きいか否かを判定する(S106)。そして、第2電圧目標値V2が第1電圧目標値V1以下であるときは、昇圧電圧Vhを第1電圧目標値V1に一致させる(S107)。ここで、本願明細書における「一致」とは、2つの値の差異が所定の誤差範囲内であることをいうものとする。これによって、図4におけるNT平面上の動作点は点A1となる。エンジン10は、最適燃費条件が成立する状態でモータジェネレータMG1にトルクを与え、モータジェネレータMG1は発電電力要求値P0の電力を発電する。
【0051】
コントロールユニット30は、第2電圧目標値V2が第1電圧目標値V1より大きいときは、昇圧電圧Vhを第2電圧目標値V2に一致させる(S108)。そして、昇圧電圧Vhを第2電圧目標値V2に一致させた状態で、エンジン10について最適燃費条件が成立するようスロットル開度を調整する(S109)。これによって、図4におけるNT平面上の動作点は点A1から、等電力線P0とNT特性曲線Vh2との交点A2に至り、さらに、NT特性曲線Vh2と最適燃費線OPTとの交点A3に至る。エンジン10は、最適燃費条件が成立する状態でモータジェネレータMG1にトルクを与え、モータジェネレータMG1は発電電力要求値P0を超える電力を発電する。
【0052】
このような制御によれば、第2電圧目標値が第1電圧目標値以下であるときは、昇圧電圧Vhを第1電圧目標値と一致させる制御が実行され、第2電圧目標値が第1電圧目標値よりも大きいときは、昇圧電圧Vhを第2電圧目標値と一致させる制御が実行される。これによって、モータジェネレータMG1による発電電力を確保すると共に、ユーザの運転操作に応じた走行制御を確保することができる。また、第1電圧目標値V1び第2電圧目標値V2の大小関係に関わらず、エンジン10を最適燃費状態で動作させることができる。
【0053】
(2)昇圧電圧一定・低損失制御
最適燃費制御によれば、エンジン10の燃費が最適化される。しかし、シリーズハイブリッド駆動システムでは、エンジン10の燃費の他、モータジェネレータMG1、二次電池18、モータジェネレータMG2等におけるエネルギー損失を抑制することで、システム全体におけるエネルギー損失が更に抑制されることがある。そこで、以下に述べる昇圧電圧一定・低損失制御では、図4におけるNT平面上の動作点が点A1から点A2に至った後、点A2および点A3との間のNT特性曲線Vh2上の点に動作点が設定される。この動作点は、エンジン10、モータジェネレータMG1、二次電池18、および、モータジェネレータMG2の各エネルギー損失を考慮して設定される。
【0054】
図5には、昇圧電圧一定・低損失制御のフローチャートが示されている。また、図6には、昇圧電圧一定・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図が示されている。図3および図4に示される符号と同一の符号は、同一の事項を示す。
【0055】
NT特性曲線Vh2上の点A2と点A3との間には、n個の候補動作点a1〜anが定められている。コントロールユニット30は、第2電圧目標値V2が第1電圧目標値V1より大きいと判定したときは(S106)、昇圧電圧一定・低損失制御用アルゴリズムを実行し、候補動作点a1〜anのそれぞれについて、エンジン10のエネルギー損失LE、モータジェネレータMG1のエネルギー損失LG、二次電池18のエネルギー損失LB、および、モータジェネレータMG2のエネルギー損失LMを求める(S201)。ここで、エネルギー損失の単位は、例えば、単位時間当たりのエネルギー、すなわち、仕事率(J/s)である。エネルギー損失LGは、整流回路14のエネルギー損失を含めたものであってもよい。二次電池18のエネルギー損失LBは、DC/DCコンバータ回路20のエネルギー損失を含めたものであってもよい。また、エネルギー損失LMは、車両駆動回路26のエネルギー損失を含めたものであってもよい。
【0056】
昇圧電圧一定・低損失制御用アルゴリズムは、運転操作部44における操作、走行状態、二次電池18の充電状態等についての車両動作情報が与えられている場合において、候補動作点a1〜anのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求めるアルゴリズムである。
【0057】
記憶部36には、候補動作点a1〜anのそれぞれについて、車両動作情報と、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LBおよびエネルギー損失LMとが対応付けられた損失参照テーブルが記憶されている。コントロールユニット30は、現時点の車両動作情報に基づいてこの損失参照テーブルを参照し、候補動作点a1〜anのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求める。
【0058】
コントロールユニット30は、候補動作点a1〜anのそれぞれについて、これらのエネルギー損失を重み付け加算合計した総合損失L1を求める。すなわち、L1=w1・LE+w2・LG+w3・LB+w4・LMである(S202)。総合損失L1は、下記の処理においてエネルギー損失を評価するためのエネルギー損失評価値としての意義を有する。w1〜w4は重み付け係数であり、各エネルギー損失の重要度に応じて定められる。例えば、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、およびエネルギー損失LBの重要度が同一であれば、w1=w2=w3=w4=1とすればよい。また、これらのエネルギー損失のうち、考慮する必要がないものがあれば、対応する重み付け係数を0とすればよい。例えば、昇圧電圧Vhが一定の場合、モータジェネレータMG2のエネルギー損失LMは一定であることが多い。この場合、w4=0とすればよい。
【0059】
コントロールユニット30は、候補動作点a1〜anのうち、総合損失L1が最も小さくなる候補動作点を目標動作点として選択する(S203)。そして、昇圧電圧Vhを第2電圧目標値V2に一致させた状態でスロットル開度を調整し、動作点を目標動作点に一致させる(S204)。
【0060】
これによって、図6におけるNT平面上の動作点は点A1から、等電力線P0とNT特性曲線Vh2との交点A2に至り、さらに、NT特性曲線Vh2上に設定された目標動作点に至る。
【0061】
このような制御によれば、昇圧電圧Vhを第2電圧目標値V2に維持した上で、総合損失L1が極小となるよう動作点が設定される。これによって、運転操作部44における操作、走行状態等に基づくモータジェネレータMG2の制御を優先させながら、エネルギー損失を抑制することができる。
【0062】
(3)発電電力一定・低損失制御
上述の最適燃費制御および昇圧電圧一定・低損失制御では、第1電圧目標値V1および第2電圧目標値V2の大小関係に応じて、昇圧電圧Vhが第1電圧目標値V1または第2電圧目標値V2のいずれか一方に設定される。このように昇圧電圧Vhを設定する他、第1電圧目標値V1と第2電圧目標値V2との間の値に昇圧電圧Vhを設定することで、シリーズハイブリッド車両駆動システム全体におけるエネルギー損失が更に抑制されることがある。そこで、以下に述べる発電電力一定・低損失制御では、昇圧電圧Vhに対し、電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbが求められる。そして、電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbによって規定される昇圧電圧Vhの範囲において、モータジェネレータMG1による発電電力が一定であるという条件の下、シリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失が極小となるよう、動作点が設定される。
【0063】
図7には、発電電力一定・低損失制御のフローチャートが示されている。また、図8には、発電電力一定・低損失制御において動作点を設定する処理の概念図が示されている。図3〜図6に示される符号と同一の符号は、同一の事項を示す。
【0064】
コントロールユニット30は、車両動作情報を取得し(S108)、車両動作情報に基づいて発電電力目標値P0を求める(S109)。また、コントロールユニット30は、車両動作情報を取得し(S110)、車両動作情報に基づいて、昇圧電圧Vhに対する電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbを求める(S111)。ここで、電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbは、モータジェネレータMG2で発生すべきトルク、車両駆動回路26に用いられている素子の定格電圧または定格電流等に基づいて求められる。
【0065】
図8には、モータジェネレータMG1の発電電力を発電電力要求値P0とした場合の等電力線P0、昇圧電圧Vhを電圧下限値Vaに一致させた場合のNT特性曲線Vha、および昇圧電圧Vhを電圧上限値Vbに一致させた場合のNT特性曲線Vhbが示されている。図8において点A4は、NT特性曲線Vhaと等電力線P0との交点を示し、点A5は、NT特性曲線Vhbと等電力線P0との交点を示す。
【0066】
等電力線P0上には点A4と点A5との間にm個の候補動作点b1〜bmが定められている。コントロールユニット30は、発電電力一定・低損失制御用アルゴリズムを実行し、候補動作点b1〜bmのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求める(S301)。
【0067】
発電電力一定・低損失制御用アルゴリズムは、車両動作情報が与えられている場合において、候補動作点b1〜bmのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求めるアルゴリズムである。
【0068】
記憶部36には、候補動作点b1〜bmのそれぞれについて、車両動作情報と、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LBおよびエネルギー損失LMとが対応付けられた損失参照テーブルが記憶されている。昇圧電圧一定・低損失制御用アルゴリズムと同様、発電電力一定・低損失制御用アルゴリズムにおいては、この損失参照テーブルが参照される。
【0069】
コントロールユニット30は、候補動作点b1〜bmのそれぞれについて、これらのエネルギー損失を重み付け加算合計した総合損失L2を求める(S302)。
【0070】
コントロールユニット30は、候補動作点b1〜bmのうち、総合損失L2が最も小さくなる候補動作点を目標動作点として選択する(S303)。そして、昇圧電圧Vhおよびスロットル開度を調整し、動作点を目標動作点に一致させる(S304)。これによって、図8におけるNT平面上の動作点は等電力線P0上に目標動作点に設定される。したがって、モータジェネレータMG1による発電電力を確保しつつ、シリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失を抑制することができる。
【0071】
(4)最適低損失制御
上述の昇圧電圧一定・低損失制御では、1つのTN特性曲線上にシリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失が極小となる動作点が設定される。また、発電電力一定・低損失制御では、1つの等電力線上にシリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失が極小となる動作点が設定される。しかし、動作点を1つのTN特性曲線上の点から外れた点、または、1つの等電力線上の点から外れた点に設定することで、エネルギー損失が更に抑制されることがある。そこで、以下に述べる最適低損失制御では、NT平面上において、電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbのそれぞれに対応する2つのNT特性曲線、エンジン10の最適燃費線OPT、および等電力線P0に囲まれる制御領域において、シリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失が極小となるよう動作点が設定される。
【0072】
図9には、最適低損失制御のフローチャートが示されている。また、図10には、最適低損失制御において動作点を設定する処理の概念図が示されている。図3〜図8に示される符号と同一の符号は、同一の事項を示す。
【0073】
コントロールユニット30は、ステップS108〜S111に従い、発電電力目標値P0、電圧下限値Vaおよび電圧上限値Vbを求める。図10には、昇圧電圧Vhを電圧下限値Vaに一致させた場合のNT特性曲線Vha、昇圧電圧Vhを電圧上限値Vbに一致させた場合のNT特性曲線Vhb、モータジェネレータMG1の発電電力を発電電力要求値P0とした場合の等電力線P0、および、エンジン10の最適燃費線OPTが示されている。発電電力要求値P0はトルクの下限値を示し、最適燃費線OPTはトルクの上限値を示す。また、等電力線P0は、発電電力の下限値を示す。
【0074】
図10において点A6は、NT特性曲線Vhaと最適燃費線OPTとの交点を示し、点A7は、NT特性曲線Vhbと最適燃費線OPTとの交点を示す。また、制御領域Rは、NT特性曲線Vha、NT特性曲線Vhb、エンジン10の最適燃費線OPT、および等電力線P0に囲まれた領域である。
【0075】
制御領域R上には、p個の候補動作点c1〜cpが定められている。図10中の符号cjはc1〜cpのうちの1つの点を示す。コントロールユニット30は、最適低損失制御用アルゴリズムを実行し、候補動作点c1〜cpのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求める(S401)。
【0076】
最適低損失制御用アルゴリズムは、車両動作情報が与えられている場合において、候補動作点c1〜cpのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求めるアルゴリズムである。
【0077】
記憶部36には、候補動作点c1〜cpのそれぞれについて、車両動作情報と、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LBおよびエネルギー損失LMとが対応付けられた損失参照テーブルが記憶されている。昇圧電圧一定・低損失制御用アルゴリズムと同様、最適低損失制御用アルゴリズムにおいては、この損失参照テーブルが参照される。
【0078】
コントロールユニット30は、候補動作点c1〜cpのそれぞれについて、これらのエネルギー損失を重み付け加算合計した総合損失L3を求める(S402)。
【0079】
コントロールユニット30は、候補動作点c1〜cpのうち、総合損失L3が最も小さくなる候補動作点を目標動作点として選択する(S403)。そして、昇圧電圧Vhおよびスロットル開度を調整し、動作点を目標動作点に一致させる(S404)。これによって、図10におけるNT平面上の動作点は制御領域R上の目標動作点に設定される。
【0080】
このような制御によれば、制御領域R上において、総合損失L3が極小となるよう動作点が設定される。このように動作点が設定されることで、発電電力は、発電電力要求値P0以上となり、昇圧電圧Vhは、電圧下限値Va以上、電圧上限値Vb以下の範囲に限られる。これによって、モータジェネレータMG2の制御、および、モータジェネレータMG1による発電制御に大きな影響を与えることなく、シリーズハイブリッド車両駆動システムでのエネルギー損失を抑制することができる。
【0081】
(5)探索型・最適低損失制御
上述の最適低損失制御では、制御領域R上に定められたp個の候補動作点のそれぞれについて総合損失L3が求められ、総合損失L3が極小となる候補動作点が目標動作点として選択される。このように目標動作点を設定する変わりに、次に説明する第1探索型・最適低損失制御を実行してもよい。
【0082】
(5−1)第1探索型・最適低損失制御
第1探索型・最適損失制御では、先に発電電力一定・低損失制御と同様の処理が実行され、第1の目標動作点が設定される。続いて、昇圧電圧一定・低損失制御と同様の処理が実行され、第1の目標動作点に対応するNT特性曲線上において第2の目標動作点が設定される。そして、動作点が第2の目標動作点に一致するよう昇圧電圧Vhおよびスロットル開度が調整される。
【0083】
図11には、第1探索型・最適低損失制御のフローチャートが示されている。また、図12には、第1探索型・最適低損失制御において動作点を設定する処理の概念図が示されている。図3〜図10に示される符号と同一の符号は、同一の事項を示す。
【0084】
コントロールユニット30は、図7に示される発電電力一定・低損失制御のステップS108〜S111およびステップS301〜S303を実行して第1の目標動作点を設定する(S501)。図12において、点A8は、等電力線P0上における点4および点A5の間に設定された第1の目標動作点を示す。また、NT特性曲線Vhcは、第1の目標動作点に対応するNT特性曲線である。点A9は、NT特性曲線Vhcとエンジン10の最適燃費線OPTとの交点を示す。
【0085】
NT特性曲線Vhc上の点A8と点A9との間には、q個の候補動作点d1〜dqが定められている。コントロールユニット30は、昇圧電圧一定・低損失制御用アルゴリズムを実行し、候補動作点d1〜dqのぞれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求める(S502)。そして、候補動作点d1〜dqのそれぞれについて、これらのエネルギー損失を重み付け加算合計した総合損失L4を求める(S503)。
【0086】
コントロールユニット30は、候補動作点d1〜dqのうち、総合損失L4が最も小さくなる候補動作点を第2の目標動作点として選択する(S504)。そして、昇圧電圧VhをVhcに一致させた状態でスロットル開度を調整し、動作点を第2の目標動作点に一致させる(S505)。これによって、図12におけるNT平面上の動作点は制御領域R上の第2の目標動作点に設定される。
【0087】
コントロールユニット30は、このように目標動作点を設定する変わりに、次に説明する第2探索型・最適低損失制御を実行してもよい。
【0088】
(5−2)第2探索型・最適低損失制御
第2探索型・最適損失制御では、先に昇圧電圧一定・低損失制御の処理と同様の処理が実行され、第1の目標動作点が設定される。続いて、発電電力一定・低損失制御の処理と同様の処理が実行され、第1の目標動作点に対応する等電力線上において第2の目標動作点が設定される。そして、動作点が第2の目標動作点に一致するよう昇圧電圧Vhおよびスロットル開度が調整される。
【0089】
図13には、第2探索型・最適低損失制御のフローチャートが示されている。また、図14には、第2探索型・最適低損失制御において動作点を設定する処理の概念図が示されている。図3〜図12に示される符号と同一の符号は、同一の事項を示す。
【0090】
コントロールユニット30は、図5に示される昇圧電圧一定・低損失制御のステップS101〜S105およびS201〜S203を実行して第1の目標動作点を設定する(S601)。ただし、ステップS106はスキップするものとする。図14において、点A10は、NT特性曲線Vhb上における点A5および点A7の間に設定された第1の目標動作点を示す。また、等電力線P1は、第1の目標動作点に対応する等電力線である。点A11は、等電力線P1とNT特性曲線Vhaとの交点を示す。
【0091】
等電力線P1上の点A10と点A11との間には、r個の候補動作点e1〜erが定められている。コントロールユニット30は、発電電力一定・低損失制御用アルゴリズムを実行し、候補動作点e1〜erのそれぞれについて、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMを求める(S602)。そして、候補動作点e1〜erのそれぞれについて、これらのエネルギー損失を重み付け加算合計した総合損失L5を求める(S603)。
【0092】
コントロールユニット30は、候補動作点e1〜erのうち、総合損失L5が最も小さくなる候補動作点を第2の目標動作点として選択する(S604)。そして、昇圧電圧Vhおよびスロットル開度を調整し、動作点を第2の目標動作点に一致させる(S605)。
【0093】
このような処理によれば、制御領域Rの全域に亘って定められた候補動作点について、総合損失を求める必要がない。これによって、制御における処理量を低減することができる。
【0094】
(6)NV制御
上述の昇圧電圧一定・低損失制御のステップS203、発電電力一定・低損失制御のステップS303、最適低損失制御のステップS403、第1探索型・最適低損失制御のステップS504、および第2探索型・最適低損失制御のステップS604においては、複数の候補動作点のうち、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMの重み付け加算合計値が最も小さくなるものが目標動作点として選択される。
【0095】
ここで、エンジン10およびモータジェネレータMG1の回転数は、目標動作点として選択される候補動作点によって異なる。そのため、エンジン10およびモータジェネレータMG1から発せられる騒音および振動は、目標動作点として選択される候補動作点によって異なる。
【0096】
そこで、以下に説明するNV制御(Noise Vibration Control)においては、複数の候補動作点から目標動作点を選択する際に、エンジン10およびモータジェネレータMG1から発せられる騒音のレベルおよび振動のレベルが所定値未満であるというNV条件が課せられる。
【0097】
図15には、NV制御における処理を示すフローチャートが示されている。このフローチャートが示す処理は、上述の昇圧電圧一定・低損失制御のステップS203、発電電力一定・低損失制御のステップS303、最適低損失制御のステップS403、第1探索型・最適低損失制御のステップS504、および第2探索型・最適低損失制御のステップS604に代えて実行される。ここで、「候補動作点」は、上記の候補動作点a1〜an、候補動作点b1〜bm、候補動作点c1〜cp、候補動作点d1〜dq、または候補動作点e1〜erに対応する。また、総合損失は、上記の総合損失L1〜L5に対応する。
【0098】
コントロールユニット30は、各候補動作点について、騒音レベルおよび雑音レベルを求める(S701)。この処理は、記憶部36に記憶されたテーブルを参照することで実行してもよい。例えば、記憶部36に、各候補動作点について、車両動作情報と、騒音レベルおよび雑音レベルとが対応付けられたNV参照テーブルが記憶されているものとする。この場合、コントロールユニット30は、現時点の車両動作情報に基づいてNV参照テーブルを参照し、各候補動作点について、騒音レベルおよび雑音レベルを求める。
【0099】
コントロールユニット30は、運転操作部44における操作、走行状態等に基づいて、騒音レベルおよび雑音レベルの各判定閾値を求める(S702)。そして、複数の候補動作点のうち、騒音レベルおよび雑音レベルのいずれについても判定閾値未満である候補動作点を抽出する(S703)。
【0100】
コントロールユニット30は、抽出された候補動作点のうち、エネルギー損失LE、エネルギー損失LG、エネルギー損失LB、およびエネルギー損失LMの重み付け加算合計値、すなわち、総合損失L=w1・LE+w2・LG+w3・LB+w4・LMが最小のものを目標動作点として決定する(S704)。
【0101】
このような制御によれば、複数の候補動作点のうち、騒音レベルおよび振動レベルが判定閾値未満のものが目標動作点とされる。これによって、シリーズハイブリッド車両駆動システムから発せられる騒音レベルおよび振動レベルを抑制することができる。なお、ここでは、騒音レベルおよび雑音レベルの両者が判定閾値未満であることを、目標動作点としての選択の条件としたが、騒音レベルまたは雑音レベルのうちいずれか一方が判定閾値未満であることを目標動作点の選択条件としてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10 エンジン、12 スロットル、14 整流回路、16,54,64 ダイオード、18 二次電池、20 DC/DCコンバータ回路、22 正極伝送線、24 負極伝送線、26 車両駆動回路、28 トルク伝達機構、30 コントロールユニット、32 電圧制御部、34 燃料制御部、36 記憶部、38 レゾルバ、40 電流センサ、42 電圧計、44 運転操作部、48 インダクタ、50 第1IGBT、52 第2IGBT、56 出力コンデンサ、58 インバータ回路、58u,58v,58w IGBT組、60 上側IGBT、62 下側IGBT、G ジェネレータ、M 走行用モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに対する燃料供給量を変化させる燃料制御部と、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータの交流発電電力を直流電力に変換し、車両を電力駆動する車両駆動部に至る電力経路にその直流電力を出力する整流回路と、
前記整流回路と前記車両駆動部との間の電力経路に、二次電池の出力電圧を調整した制御用電圧を出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路を制御し、前記制御用電圧を変化させる電圧制御部と、
を備える車両搭載用発電装置において、
前記電圧制御部は、
前記車両駆動部の制御に応じて、前記電力経路に出力される電圧の目標値を決定する目標値決定手段を備え、前記制御用電圧を前記目標値に調整し、
前記燃料制御部は、
前記制御用電圧が前記目標値に調整された状態で、前記車両搭載用発電装置におけるエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項2】
請求項1に係る車両搭載用発電装置において、
前記燃料制御部は、
前記制御用電圧が前記目標値に調整された状態で前記エンジンが最適燃費状態となるよう前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項3】
請求項1に係る車両搭載用発電装置において、
前記燃料制御部は、
前記制御用電圧が前記目標値に調整されている状態における、前記エンジン、前記ジェネレータ、および前記二次電池のうち少なくともいずれかにおけるエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項4】
エンジンと、
前記エンジンとの間でトルクを作用し合うジェネレータと、
前記ジェネレータの交流発電電力を直流電力に変換し、車両を電力駆動する車両駆動部に至る電力経路にその直流電力を出力する整流回路と、
前記整流回路と前記車両駆動部との間の電力経路に、二次電池の出力電圧を調整した制御用電圧を出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路を制御し、前記制御用電圧を変化させる電圧制御部と、
を備え、
前記電圧制御部は、
前記車両駆動部の制御に応じて、前記電力経路に出力される電圧に対する電圧上限値および電圧下限値を決定する上下限値決定手段を備え、
前記電圧下限値および前記電圧上限値によって規定される範囲で前記制御用電圧を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両搭載用発電装置において、
前記エンジンに対する燃料供給量を変化させる燃料制御部と、
前記二次電池の充電状態に応じて、前記ジェネレータの発電電力下限値を決定する発電電力下限値決定部と、を備え、
前記燃料制御部は、
前記発電電力下限値と、前記エンジンの回転数対トルク特性における最適燃費線とによって規定される範囲で前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両搭載用発電装置において、
前記燃料制御部は、
前記ジェネレータの発電電力が前記発電電力下限値以上となり、かつ、前記エンジンのトルクが、その回転数対トルク特性における最適燃費線によって示されるトルク以下となる範囲で前記燃料供給量を調整し、
前記電圧制御部および前記燃料制御部は、前記車両搭載用発電装置または前記車両駆動部のエネルギー損失に基づいて、それぞれ、前記制御用電圧および前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車両搭載用発電装置において、
前記電圧制御部および前記燃料制御部は、前記ジェネレータの発電電力を一定としたときにおける、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて、それぞれ、前記制御用電圧および前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の車両搭載用発電装置において、
前記回転数対トルク特性における最適燃費線、前記電圧上限値に対応する特性曲線、前記電圧下限値に対応する特性曲線、および前記発電電力下限値を示す等電力線によって囲まれた制御領域に設定された複数の目標動作点から、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて1つの目標動作点を選択する目標動作点選択部を備え、
前記燃料制御部は、選択された目標動作点に応じて前記燃料供給量を調整し、
前記電圧制御部は、選択された目標動作点に応じて前記制御用電圧を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載の車両搭載用発電装置において、
前記電圧制御部は、
前記ジェネレータの発電電力を前記発電電力下限値としたときのエネルギー損失評価値であって、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかに基づくエネルギー損失評価値が所定条件を満たす所定電圧値に、前記制御用電圧を調整し、
前記燃料制御部は、前記制御用電圧が前記所定電圧値に調整されている状態における、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載の車両搭載用発電装置において、
前記燃料制御部は、
前記制御用電圧を前記電圧上限値としたときのエネルギー損失評価値であって、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかに基づくエネルギー損失評価値が所定条件を満たすときの前記ジェネレータの発電電力を求め、
前記電圧制御部は、前記ジェネレータの発電電力が当該求められた発電電力に維持されるときにおける、前記エンジン、前記ジェネレータ、前記車両駆動部、および前記二次電池のうち少なくともいずれかのエネルギー損失に基づいて前記制御用電圧を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の車両搭載用発電装置において、
前記電圧制御部は、前記エンジンまたは前記ジェネレータから発せられる振動または騒音に応じて前記制御用電圧を調整し、
前記燃料制御部は、前記エンジンまたは前記ジェネレータから発せられる振動または騒音に応じて前記燃料供給量を調整する、
ことを特徴とする車両搭載用発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−60073(P2013−60073A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199001(P2011−199001)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】