車両検知警報装置及び車両検知警報方法
【課題】簡便な構成の装置で車両の検知を迅速に行う。
【解決手段】車両検知警報装置は、車両12が通過する路面14を含む背景を格子状の画素単位で撮像するCMOSカメラ16と、得られた撮像画像70に基づいて車両12の検知を行うコントローラ18とを有する。コントローラ18は、撮像画像70における路面14の像上の複数の略水平な検知ラインL1、L2及びL3を特定し、撮像画像70における各検知ラインL1、L2及びL3上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶し、各検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度をCMOSカメラ16から1画素毎に順次読み込み検査輝度として記憶する。次に、検査輝度と同一画素の基準輝度との差の絶対値を順次求め、検知ライン毎に絶対値の総和を求め、この総和値に基づいて車両12が走行していること及びその走行方向を検知する。
【解決手段】車両検知警報装置は、車両12が通過する路面14を含む背景を格子状の画素単位で撮像するCMOSカメラ16と、得られた撮像画像70に基づいて車両12の検知を行うコントローラ18とを有する。コントローラ18は、撮像画像70における路面14の像上の複数の略水平な検知ラインL1、L2及びL3を特定し、撮像画像70における各検知ラインL1、L2及びL3上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶し、各検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度をCMOSカメラ16から1画素毎に順次読み込み検査輝度として記憶する。次に、検査輝度と同一画素の基準輝度との差の絶対値を順次求め、検知ライン毎に絶対値の総和を求め、この総和値に基づいて車両12が走行していること及びその走行方向を検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、得られた撮像画像に基づいて車両検知を行う画像処理手段とを用いて、路面上を走行する車両を検知したときに所定の警報を発する車両検知警報装置及び車両検知警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、駐車場及び料金所等において車両が通過することを検知して警報を発し、又は車両が接近したときにナンバープレートを読み取り発券処理を行う装置が知られている。
【0003】
車両を検知する方法としては、道路を撮像した撮像画像の輝度を水平方向に加算した一次元加算投影値を求め、該一次元加算投影値を微分した変化量に基づいて車両を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2862605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来技術では、撮像画像全体について処理を行うため、撮像画像の大きさに応じた大容量メモリが必要である。また、撮像画像の全画素について処理を行うことから処理時間が長く、しかも消費電力が大きい。また、車両の検出を迅速に行うためには高速な処理部と大容量メモリが必要であってコストの高騰を招く。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡便な構成の装置で車両の検知を迅速に行うことのできる車両検知警報装置及び車両検知警報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両検知警報装置は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、前記撮像手段により得られた撮像画像に基づいて前記車両の検知を行う画像処理手段と、前記画像処理手段によって前記車両を検知したときに警報を発する警報手段と、を有し、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定する検知ライン設定部と、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を記憶する背景画像輝度記憶部と、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、前記撮像手段から1画素毎に順次読み込み記憶する最新画像輝度記憶部と、前記最新画像輝度記憶部が記憶する輝度と前記背景画像輝度記憶部における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶する演算結果記憶部と、前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して、前記警報手段に警報信号を供給する車両移動判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、背景画像輝度記憶部、最新画像輝度記憶部及び演算結果記憶部は小容量で足り、簡便な構成とすることができる。また、画像全体に対して演算を行う必要がなく、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。さらに、検知ラインは複数設けられていることから、検知ラインに差し掛かる順序に基づいて車両の進行方向を検知することができる。
【0009】
車両検知警報装置は、省電力化が図られることから、発電量の小さい太陽電池と補助的なバッテリがあれば駆動可能である。
【0010】
また、本発明に係る車両検知警報方法は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像される撮像画像に基づき、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定するステップと、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶するステップと、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、1画素毎に順次調べて検査輝度として記憶するステップと、前記検査輝度と同一画素の前記基準輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶するステップと、前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して警報を発するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
このように、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法によれば、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、背景画像輝度記憶部、最新画像輝度記憶部及び演算結果記憶部は小容量で足り、簡便な構成とすることができる。また、画像全体に対して演算を行う必要がなく、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。さらに、検知ラインは複数設けられていることから、検知ラインに差し掛かる順序に基づいて車両の進行方向を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両検知警報装置10は、車両12(オートバイ等を含む)が通過する路面14を含む背景を格子状(例えば、640×480画素)の画素単位で所定時間毎、又は適当なタイミングで撮像するCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラ(撮像手段)16と、該CMOSカメラ16により得られた撮像画像に基づいて車両12の検知を行うコントローラ(画像処理手段)18と、該コントローラ18処理結果に基づいて警報を発する警告表示板(警報手段)20とを有する。警告表示板20には多数のLED(Light Emitting Diode)が格子状に配列されている。警告表示板20に用いられる表示手段はLEDに限らず、例えば、EL(Electro Luminescent)等でもよい。
【0015】
また、車両検知警報装置10は、電源供給部として太陽電池22及びバッテリ24を有する。太陽電池22は、カーブミラー26に設置可能な小面積型であって、発電量は比較的小さい。バッテリ24は、鉛蓄電式又はリチウムイオン式等の2次電池であり、太陽電池22で発電した電力を充電するとともにコントローラ18等に対して電力を供給することができる。車両検知警報装置10は、カーブミラー26の支柱部に一体的に設けられており、CMOSカメラ16は路面14の一方を撮像可能なように指向しており、警告表示板20は路面14の他方を指向している。路面14は、例えば、見通しの悪いカーブであって、路面の一方から進入する車両12を検出して、他方から進入する他の車両12の運転者に対して警告表示板20の表示によって警報を発することができる。
【0016】
図2に示すように、CMOSカメラ16は、レンズ30と、該レンズ30により集光された像の輝度を格子状の画素毎に電荷として蓄えるイメージャ32と、各画素の輝度を読み出す際の画素の指定に用いられる垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36とを備える。
【0017】
コントローラ18は、主処理部としてのマイクロプロセッサ40と、イメージャ32の画素から輝度を読み込む際に垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36に対して画素の指定を行うための第1出力インターフェース42と、指定した画素から輝度を読み出してデジタル化する画像A/D変換器44と、マイクロプロセッサ40の処理結果に基づいて警告表示板20に警報信号を供給する第2出力インターフェース46と、太陽電池22及びバッテリ24に制御信号を供給する第3出力インターフェース48とを有する。画像A/D変換器44はイメージャ32上の各画素の輝度を256階調の1バイトのデータに変換する。
【0018】
また、コントローラ18は、データ及びプログラムの記憶部としてのROM(Read Only Memory)50、RAM(Random Access Memory)52及びフラッシュメモリ53を有する。これらのコントローラ18内の各要素はバス60で接続されており、マイクロプロセッサ40の作用下に種々データの授受が可能である。
【0019】
RAM52は小容量の記憶部であって、背景画像輝度記憶部54、最新画像輝度記憶部56、演算結果記憶部58及びタイマ部59が含まれる。これらの記憶部の一部(又は全部)は、マイクロプロセッサ40と別体のRAM52上に設けられている必要はなく、例えばマイクロプロセッサ40の内部レジスタを用いてもよい。
【0020】
背景画像輝度記憶部54は、後述する検知ラインL1、L2及びL3(図3参照)上の画素毎の輝度が記録される。背景画像輝度記憶部54は、検知ラインL1、L2及びL3がそれぞれN個の画素からなるとき、N×3バイトの記憶領域として設定され、マイクロプロセッサ40から2次元配列形式の指定が可能であって、L(a、b)(図6参照)と表される。ここでパラメータaは1〜3をとり、順に検知ラインL1、L2及びL3に対応する。また、パラメータbは、b=1〜Nであり、N個の画素に対応する。
【0021】
最新画像輝度記憶部56は、検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度が順次記録される1バイトの記憶領域であり、マイクロプロセッサ40ではパラメータMとして表される。演算結果記憶部58は、背景画像輝度記憶部54のうちの1バイトのデータと最新画像輝度記憶部56のデータとの差の絶対値の総和が記録される記憶部である。演算結果記憶部58における各検知ラインL1、L2及びL3に対応した絶対値の総和は、配列パラメータSUM(a)(a=1〜3)として表される。
【0022】
タイマ部59は、Timer(K)(K=0〜4)として表される4つの減算タイマであり、後述するステップS23で用いられる車両接近判定処理において、検知ラインL1、L2及びL3に対応して車両12が通過した時点からの経過時間を調べるために用いられる。Timer(1)、Timer(2)及びTimer(3)はシステムの起動時に0に初期化されている。また、Timer(0)は、検知ラインL1よりも遠方の仮想的な仮検知ラインL0に対応した模擬タイマであり、その値は1に固定されている(図8参照)。RAM52には、これ以外にカウンタや所定のパラメータの記憶部が設けられている。
【0023】
マイクロプロセッサ40は検知ライン設定部62と、輝度差算出部64と、車両移動判定部66とを有する。実際上これらの検知ライン設定部62、輝度差算出部64及び車両移動判定部66はマイクロプロセッサ40がROM50からプログラムを読み込み実行することにより実現されるソフトウェア上の機能部である。
【0024】
輝度差算出部64は、最新画像輝度記憶部56が記憶する輝度と背景画像輝度記憶部54における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求めて演算結果記憶部58に記録する。車両移動判定部66は、演算結果記憶部58の値に基づいて車両12が走行していること及びその走行方向を検知して、第2出力インターフェース46に警報信号を供給する。
【0025】
検知ライン設定部62は、図3に示すように、撮像画像70における路面像14a上の3本の水平な検知ラインL1、L2及びL3を示す座標データを設定し、撮像画像70上におけるこれらの検知ラインL1、L2及びL3を示す座標値をフラッシュメモリ53に記録する。各検知ラインL1、L2及びL3はそれぞれ水平に配列されたN個の画素から構成され、実際の路面14上の画像上、右側(右側走行の国では左側)の走行車線における遠い位置から各検知ラインL1、L2及びL3の順に設定されている。
【0026】
具体的には、検知ラインL1は座標データ(X1s、Y1)−(X1e、Y1)、検知ラインL2は座標データ(X2s、Y2)−(X2e、Y2)、検知ラインL3は座標データ(X3s、Y3)−(X3e、Y3)として表され、これらの座標値がフラッシュメモリ53に記録される。各検知ラインL1、L2及びL3は、縦のY方向の幅が1画素で、横のX方向の幅がN画素のラインである。各検知ラインL1、L2及びL3を構成する画素のY方向の幅は1画素に限らず、必要に応じて複数画素の列としてもよく、また、図3上の二点差線で示すように、X方向の幅は各検知ラインL1、L2及びL3毎に変えてもよく、さらに、各検知ラインL1、L2及びL3は、撮像画像70上で必ずしも水平に設定されている必要はなく、例えば、カーブである路面14の曲がり具合に応じて放射状に設定されていてもよい。各検知ラインL1、L2及びL3は、撮像画像70における路面像14a上の車両12の進行方向に略直交する向きに設定するとよく、例えば、路面像14aが撮像画像70において左右方向に延在している場合には、検知ラインL1、L2及びL3を上下方向に設定してもよい。
【0027】
各検知ラインL1、L2及びL3を実際の路面上に表した場合の検知ラインL1と検知ラインL2との間隔、及び検知ラインL2と検知ラインL3との間隔は、一般的な車両12の全長より長い間隔(例えば、10[m])に設定される。
【0028】
なお、撮像画像70はイメージャ32(図2参照)上に形成される画像であるが、このうち検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度のみがコントローラ18の背景画像輝度記憶部54に読み込まれ、基本的には撮像画像70自体はコントローラ18にロードされることはなく、RAM52は小容量のもので足りる。
【0029】
図2に戻り、第2出力インターフェース46から出力される警報信号はドライバ回路72を介して警告表示板20に供給され、警告表示板20のLEDを所定のパターンで点灯し又は点滅させる。第3出力インターフェース48から出力された制御信号は充電制御回路74により処理されて太陽電池22の発電制御を行うとともに、バッテリ24の充放電制御を行う。バッテリ24は定電圧化された電力をコントローラ18に供給する。
【0030】
次に、このように構成される車両検知警報装置10を用いて車両12の検知を行う車両検知警報方法について説明する。以下の説明では、断りのない限り表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。また、CMOSカメラ16は、所定の微小時間毎にその時点における背景を撮像画像70として撮像し、イメージャ32上に保持しているものとする。
【0031】
先ず、図4のステップS1において、検知ライン設定部62の作用下に検知ラインL1、L2及びL3を、それぞれ両端を示す座標データ(X1s、Y1)−(X1e、Y1)、(X2s、Y2)−(X2e、Y2)、及び(X3s、Y3)−(X3e、Y3)として設定し、これらのデータをフラッシュメモリ53に記録する。なお、このステップS1の処理は、所定の初期設定時のみに必要な処理であり、システムの2回目以降の起動時には省略可能であって、初回時にフラッシュメモリ53に記録したデータを読み込んで利用すればよい。また、このステップS1の処理は、撮像画像70を保持可能な大容量の記憶部を有する所定の検知ライン設定補機をコントローラ18の通信部(図示せず)に接続した状態で、検知ライン設定補機の表示部に撮像画像70を表示しながら、オペレータが路面14を表示部上で確認しながら行ってもよい。
【0032】
ステップS2において、所定のカウンタIを1に初期化し、ステップS3において、所定のカウンタJを0に初期化する。
【0033】
ステップS4において、カウンタI及びJに基づき、検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度データを読み込む。具体的には、カウンタIが示す数値1、2又は3に応じて検知ラインL1、L2又はL3が選択され、選択された検知ラインL1、L2又はL3に応じてY座標データとしてY1、Y2又はY3が垂直選択レジスタ34に対して指定される。水平のX座標データとしては、検知ラインL1が選択されているときには、X1s+J−1が水平選択レジスタ36に指定される。同様に、検知ラインL2又はL3が選択されているときには、X2s+J−1、又はX3s+J−1が水平選択レジスタ36に指定される。このように垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36により指定された1つの画素の輝度データがA/D変換器44を介してコントローラ18に読み込まれる。
【0034】
ステップS5において、前記ステップS4で読み込まれた輝度データを背景画像輝度記憶部54のうち、L(I、J)に記録する。
【0035】
ステップS6において、カウンタJの値を調べ、J<Nであれば、J←J+1とインクリメントして(ステップS7)、ステップS4へ戻る。J=NであればステップS8へ移る。
【0036】
ステップS8において、カウンタIの値を調べ、I<3であれば、I←I+1とインクリメントして(ステップS9)、ステップS3へ戻る。
【0037】
このようにしてステップS2〜S9の処理を行うことにより、背景画像輝度記憶部54に検知ラインL1、L2及びL3の各画素毎の輝度データが順に記録される。
【0038】
ステップS10において、背景画像輝度記憶部54に記録された輝度データに基づいて2つの閾値Pt1及び閾値Pt2を設定する。これらの閾値Pt1及びPt2は、後述するステップS26において背景の明るさの経時的な変化を調べるために用いられるパラメータであり、ノイズレベルを考慮して設定され、背景の明るさが確実に変化したことを検知する。閾値Pt1及び閾値Pt2は、例えば、ステップS25で求められる背景画像輝度記憶部54の合計値Paに対してPt1←Pa×1.2、及びPt2←Pa/1.2として設定される。
【0039】
図5のステップS11において、カウンタIを1に初期化し、配列パラメータSUM(a)を0に初期化する。前記のとおりパラメータaは1〜3の値をとり、順に検知ラインL1、L2及びL3に対応しており、SUM(a)は各検知ラインL1、L2及びL3上に車両12が存在するか否かの判定に用いられる。
【0040】
ステップS12において、カウンタJを0に初期化する。
【0041】
ステップS13において、前記ステップS4と同様に、撮像画像70上のカウンタI及びJに応じた画素の輝度データを読み込む。
【0042】
ステップS14において、前記ステップS13で読み込んだ輝度データを最新画像輝度記憶部56であるパラメータMに記録する。例えば、I=2、J=30である場合には、図6に示すように、Y座標値がY2、X座標値がX2s+29の画素の輝度値Aが読み込まれてパラメータMに記録される。
【0043】
ステップS15において、背景画像輝度記憶部54のうちL(I、J)とパラメータMとの差の絶対値を求め、配列パラメータSUM(I)に加算する。つまり、SUM(I)←|L(I、J)−M|+SUM(I)とする。このように、L(I、J)に記録された輝度は、車両12が各検知ラインL1、L2及びL3上に存在するか否かの検査の基準となる基準輝度ともいうことができ、一方、パラメータMに記録された輝度は検査対象となるものであって検査輝度ともいうことができる。
【0044】
図6に示す例においては、B=L(I、J)、C=|L(I、J)−M|であって、その時点のSUM(2)の値D2に対してD2←D2+Cとして加算する。また、この時点ではSUM(1)の値D1は計算済みであり、SUM(3)については計算が開始されてなく0である。
【0045】
ステップS16において、カウンタJの値を調べ、J<Nであれば、J←J+1とインクリメントして(ステップS17)、ステップS13へ戻る。J=NであればステップS18へ移る。
【0046】
ステップS18において、SUM(I)を移動平均基礎データであるパラメータP(I、o)(o=1〜10)に記録する。ここで、カウンタoはシステムの起動時に0に初期化されるパラメータである。
【0047】
ステップS19において、カウンタIの値を調べ、I<3であれば、I←I+1とインクリメントして(ステップS20)、ステップS12へ戻る。I=4であればステップS21へ移る。
【0048】
ステップS21において、カウンタoを更新する。具体的には、o←o+1とインクリメントするとともに、インクリメントした結果、o=10となるときにはo←0と再度初期化する。
【0049】
このようなステップS11〜S21の繰り返し処理により、最新画像輝度記憶部56が記憶する輝度と背景画像輝度記憶部54における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、検知ラインL1、L2及びL3毎に絶対値の総和を求めることができる。
【0050】
ステップS22において、3つの減算タイマをTimer(K)(K=1〜3)の値を調べ、該値が1以上であるときにはそれぞれ1ずつ減算する。Timer(K)の値が0であるときには減算は行わない。
【0051】
ステップS23において、3つの配列パラメータSUM(I)(I=1〜3)の値を調べ、車両検知閾値Thを超えている場合にはカウンタI毎に車両検知フラグFlgON(I)を1に設定し、車両検知閾値Th未満である場合にはカウンタI毎に車両検知フラグFlgON(I)を0に設定する。車両検知フラグFlgON(I)は各検知ラインL1、L2及びL3毎に車両12が存在するか否かを示すものであり、ステップS24の車両接近判定処理で用いられる。車両検知フラグFlgON(I)が1つでも1である場合にはステップS24へ移り、全て0である場合にはステップS25へ移る。
【0052】
なお、配列パラメータSUM(I)は、基準輝度と検査輝度との絶対値に基づき、基準輝度と検査輝度のいずれが明るい場合であっても増加するように更新設定さており、車両12本体でなくともその照明範囲が移動することにより、その照明を検知して間接的に車両12を検出することができ、例えば、夜間における車両12の検知にも有効である。
【0053】
ステップS24では、サブルーチン形式の車両接近判定処理(図7参照)を行い、この後ステップS11へ戻る。車両接近判定処理の内容については後述する。
【0054】
ステップS25において、パラメータP(I、o)について、I=1〜3、o=1〜10の計30(=3×10)個のデータの合計値Paを求める。合計値Paは実質的に10回分の移動平均値を示すものであり、30個のデータをステップS25において毎回加算するのではなく、10回前のSUM(a)を合計値Paから減算するとともに今回のSUM(a)を加算する方式(つまり、FIFO(First In First Out)方式)により求めてもよい。
【0055】
ステップS26において、合計値Paの値を調べ、閾値Pt1を超え又は閾値Pt2を下回っている場合には、背景の明るさが変化していると判断されることからステップS2へ戻り、背景画像輝度記憶部54を更新する。合計値Paが閾値Pt1未満且つ閾値Pt2以上である場合には、ステップS9へ戻り検知ラインL1、L2及びL3上の輝度の調査を続行する。
【0056】
このように、ステップS26においては、移動平均を示す合計値Paに基づいて背景の明るさの判断を行うため、車両12が通過した場合等の短時間の変化による誤判断を防止できる。
【0057】
なお、実際上、図5に示す処理はタイマ割り込みによって規定の微小時間毎に実行されるように設定されている。
【0058】
次に、前記ステップS24における車両接近判定処理について説明する。車両判定処理では、図7に示すサブルーチン処理が実行される。
【0059】
図7のステップS101において、前記Timer(K)のパラメータであるカウンタKを1に初期化する。
【0060】
ステップS102において、前記ステップS23で設定した車両検知フラグFlgON(K)を参照し、車両検知フラグFlgON(K)が1である場合にはステップS103へ移り、0である場合にステップS106へ移る。
【0061】
ステップS103において、カウンタKより1小さい値に対応するTimer(K−1)の値を調べ、該Timer(K−1)≧1である場合にはステップS104へ移り、Timer(K−1)=0である場合にはステップS106へ移る。例えば、その時点のカウンタKが3であるときには、対応する検知ラインL3よりも1本前の検知ラインL2に対応するTimer(2)の値を確認することになり、その時点のカウンタKが1であるときには、対応する検知ラインL1よりも1本前の仮想的な仮検知ラインL0に対応するTimer(0)の値を確認することになる。前記のとおりTimer(0)は常に1に設定されていることから、K=1であるときには常にステップS104へ分岐することとなる。このようなTimer(0)を設けることにより、K=1〜3までの処理パターンを一本化することができる。もちろん、カウンタKの値を判定し、K=1であるときにはTimer(0)を参照することなく無条件にステップS104へ分岐するようにしてもよい。
【0062】
ステップS104において、Timer(K)にカウンタKに応じたタイマ基準値OnTime(K)を代入する。これにより、Timer(K)が0となるまで前記ステップS22における減算処理が開始される。基準値OnTime(K)は固定値であって、プログラムの実行速度と、各検知ラインL1、L2及びL3の間隔に応じて設定されている。本実施例では、OnTime(K)=20として設定されており、例えば、車両12が検知ラインL1上に差し掛かった際には、図8に示すように、Timer(1)に20が設定される。また、車両12が検知ラインL1を通過して検知ラインL2上に差し掛かった際には、図9に示すように、Timer(2)に20が設定され、このときのTimer(1)は前記ステップS22の実行回数に応じて減算されており、例えば、15となっている。この際、車両12はTimer(1)の値が大きいほど高速で、値が小さいほど低速で走行していることになる。
【0063】
ステップS105において、カウンタKに応じた警報信号を第2出力インターフェース46を介してドライバ回路72(図2参照)に供給し、警告表示板20の表示制御を行う。例えば、カウンタKがK=1であるときには、LEDを全消灯又は10秒間全点灯させる信号を供給し、K=2であるときには、他方から進入する他の車両12の運転者が気づく程度の遅い周期でLEDをで10秒間点滅させる信号を供給する。また、K=3であるときには、より速い周期でLEDを10秒間点滅させる信号を供給し、運転者に対して強く注意喚起する。LEDの表示パターンは、これ以外にも、カウンタKに応じて複数のLEDを個別に点灯及び消灯させて、文字列又は絵文字を表示させるようにしてもよい。
【0064】
ドライバ回路72は最後に受けた警報信号に基づいて警告表示板20の表示制御を行い、それ以前に指定された警報信号はキャンセルされる。
【0065】
ステップS106において、カウンタKの値を確認し、K<3である場合ににはK←K+1とインクリメントして(ステップS107)、ステップS102へ戻る。K=3である場合には車両接近判定処理を終了して、前記ステップS11(図5参照)に戻る。
【0066】
このような車両接近判定処理では、ステップS103において、その時点のカウンタKに対して1つ前であるK−1番目に対応するTimer(K−1)の値に基づいて分岐処理を行っている。これにより、1つ前の検知ラインを車両12が通過してからの経過時間を反映することができ、Timer(K−1)が0である場合には該経過時間が不自然に長いと判断することができる。この場合、例えば、車両12以外のものを検知し、又は検知ラインL1を通過した車両12が検知ラインL2の手前でUターンした等の状況が考えられるため、ステップS104及びS105を実行することなく警告表示板20の表示制御を中断できる。また、ステップS103の処理によれば、車両12が逆方向に走行する場合には条件不成立でステップS106へ移ることとなり、反対車線を通過している車両12が、障害物を避けるなどの理由で画像上右側の車線にはみ出て走行する場合には警告表示板20による警告表示をすることがない。
【0067】
さらに、この車両接近判定処理では、Timer(K−1)の値に基づいて車両12の走行速度を検知することができるため、該走行速度に応じて警告表示板20の警告表示を行ってもよい。
【0068】
上述したように、本実施の形態に係る車両検知警報装置10及び車両検知警報方法によれば、撮像画像70の大きさに応じた大容量メモリが不要であり、車両12を認識するために必要な記憶容量は、実質上、3×Nバイトの背景画像輝度記憶部54、1バイトの最新画像輝度記憶部56及び3ワードの演算結果記憶部58で足りるため小容量のRAM52が利用可能であって、車両検知警報装置10を廉価に構成できしかも省電力化が図られる。従って、車両検知警報装置10の消費電力は小さく、発電量の小さい太陽電池22と補助的なバッテリ24があれば駆動可能である。
【0069】
また、撮像画像70の画素全体のうち検知ラインL1、L2及びL3上の画素のみについて処理をすれば足りることから、高速な処理が可能であって、車両12が接近することを迅速に検出することができてリアルタイム性に優れる。
【0070】
さらに、車両12が接近するとき以外は警告表示板20は消灯しているため、一層の省電力化が図られる。
【0071】
車両検知警報装置10は、カーブミラー26に一体的に設けられることにより、ミラー26aを見落としがちな運転手に対しても警告表示板20の警告により注意喚起を促すことができ、ミラー26aを改めて確認させるという相乗的な効果が期待される。
【0072】
なお、上記の説明における輝度とは、光度を面積で除した狭義の輝度[cd/m2]ではなく、明るさの程度を示す広義の意味であることはもちろんであり、イメージャ32上においては照度[lux]とみなすことができる。
【0073】
次に、図1に示したようなカーブの端部に車両検知警報装置10を設ける場合以外の利用例として、車両検知警報装置10の第1の利用方法及び第2の利用方法について図10及び図11を参照しながら説明する。なお、図10及び図11における矢印は、警告表示板20の指向方向を示し、点線はCMOSカメラ16の撮像範囲を示す。
【0074】
図10に示すように、車両検知警報装置10の第1の利用方法では、左右方向に延在する幅の広い優先道路80と上下方向に延在する幅の狭い一般道路82との交差点84の左上角部P1に車両検知警報装置10が設置されている。交差点84の右下部には障害物86が存在することにより見通しが悪くなっている。
【0075】
この場合、車両検知警報装置10は、CMOSカメラ16により優先道路80を右方から交差点84に向かって走行してくる車両12bを撮像して検知し、一般道路82を下方から交差点84に向かって走行してくる車両12aに対して警告表示板20の表示により警告を発することができる。これにより、交差点84に接近中の車両12aの運転者は障害物86が存在することによって車両12aを目視できない場合であっても、なんらかの走行体が交差点84に接近していることを認識できる。また、車両12aが停止線88で一時停止する際には、基本的には運転手が目視で左右を確認することが重要であるが、この確認のために警告表示板20の表示を補助的に利用することができる。
【0076】
車両検知警報装置10は優先道路80上を交差点84から右方に向かって遠ざかる車両は除外されて警報を行わないため、車両12aに対して無意味な警報を発することがない。警告表示板20による警告は、例えば、「車両接近中」というような文字列又は同様の意味の絵文字により行ってもよい。
【0077】
また、車両検知警報装置10は、左上角部P1に限らず、右上角部P2、右下角部P3及び左下角部P4に設置されていてもよい。これらの場合、車両12bを撮像可能なようにCMOSカメラ16の向きを設定するとともに、車両12aに対して警告可能なように警告表示板20の向きを設定するとよい。
【0078】
さらに、車両12bは優先道路80を走行しているため一般道路82を走行している車両12aよりも走行上の優先度が高く、交差点84において一時停止する必要がないが、一般道路82のようなわき道からの車両12aの飛び出しに対して注意する必要があることは走行マナー上もちろんである。このような観点から、車両12bに対して注意喚起を促すために、CMOSカメラ16により車両12aを撮像して、該車両12aが交差点84に接近することを検知したときに警告表示板20により車両12aに対して警告を発するようにしてもよい。
【0079】
図11に示すように、車両検知警報装置10の第2の利用方法では、図10に示した第1の利用方法と同様に交差点84において、左上角部P1に車両検知警報装置10が設けられている。この場合、車両検知警報装置10は、一般道路82を下方から交差点84に向かって走行してくる車両12aをCMOSカメラ16により撮像して検知し、該車両12aに対して停止線88で停止するように警告表示板20の表示により警告を発することができる。つまり、交通法規上、車両12aは停止線88で一時停止して左右を確認しなければならないが、夜間や霧中においては停止線88を識別しにくい場合がある。このように視界の悪い場合においても警告表示板20が発光することによって車両12aの運転者は停止線88が設けられていることを認識することができ、予め徐行して停止線88で余裕をもって停止することができる。
【0080】
この場合、警告表示板20を停止線88に埋め込むようにして、該停止線88自体が発光するようにしてもよい。また、車両検知警報装置10を停止線88よりも手前側(図11における下側)に設け、警告表示板20は、「この先停止線あり」というような文字による警告を発するようにしてもよい。さらに、警告表示板20は、「この先ガソリンスタンドあり」というような広告媒体として用いてもよい。車両検知警報装置10を交差点のない長い直線道路に設けるとともに、速度超過の車両を検知することにより、警告表示板20は、「速度落とせ」というような警告を発するようにしてもよい。
【0081】
さらに、CMOSカメラ16並びに警告表示板20は、それぞれ異なる向きとなるように複数配設されていてもよい。これにより1台の車両検知警報装置10により、交差点84において複数の方向から接近する車両12を検知し、接近方向に応じて選択された警告表示板20により警告を発することができるとともに、接近中の車両12a、12bの双方に警告を発することもできる。さらにまた、交差点84に接近中の車両が1台のみであるときには、警告表示板20を消灯させておき、省電力化を図ることができる。
【0082】
また、1つの交差点において車両検知警報装置10を複数台設けて、各方向から接近する車両12を検知し、接近方向に応じて選択された警告表示板20により警告を発してもよい。CMOSカメラ16、コントローラ18、警告表示板20、太陽電池22及びバッテリ24は必要に応じて別体型としてもよい。
【0083】
車両検知警報装置10は、カーブミラー26(又は電信柱、信号機柱等)の支柱部に対するポール一体型に限らず、例えば専用の箱形であってもよい。箱形の場合、太陽電池22は箱上面を覆うように設けるとともに警告表示板20を側面に設けるとよい。検知ラインL1、L2及びL3は、必要に応じて2本または4本以上設定してもよい。
【0084】
本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至ステップをとり得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態に係る車両検知警報装置及び路面の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る車両検知警報装置の構成ブロック図である。
【図3】イメージャ上に保持される撮像画像を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る車両検知警報方法の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本実施の形態に係る車両検知警報方法の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図6】信号処理の流れを模式的に示すブロック図である。
【図7】車両接近判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】検知ラインL1上に車両が差し掛かった際のタイマの値を示す図である。
【図9】検知ラインL2上に車両が差し掛かった際のタイマの値を示す図である。
【図10】第1の利用方法における車両検知警報装置の設置箇所近傍の平面図である。
【図11】第2の利用方法における車両検知警報装置の設置箇所近傍の平面図である。
【符号の説明】
【0086】
10…車両検知警報装置 12、12a、12b…車両
14…路面 16…CMOSカメラ
18…コントローラ 20…警告表示板
22…太陽電池 24…バッテリ
26…カーブミラー 32…イメージャ
52…RAM 54…背景画像輝度記憶部
56…最新画像輝度記憶部 58…演算結果記憶部
62…検知ライン設定部 64…輝度差算出部
66…車両移動判定部 70…撮像画像
L1、L2、L3…検知ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、得られた撮像画像に基づいて車両検知を行う画像処理手段とを用いて、路面上を走行する車両を検知したときに所定の警報を発する車両検知警報装置及び車両検知警報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、駐車場及び料金所等において車両が通過することを検知して警報を発し、又は車両が接近したときにナンバープレートを読み取り発券処理を行う装置が知られている。
【0003】
車両を検知する方法としては、道路を撮像した撮像画像の輝度を水平方向に加算した一次元加算投影値を求め、該一次元加算投影値を微分した変化量に基づいて車両を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2862605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来技術では、撮像画像全体について処理を行うため、撮像画像の大きさに応じた大容量メモリが必要である。また、撮像画像の全画素について処理を行うことから処理時間が長く、しかも消費電力が大きい。また、車両の検出を迅速に行うためには高速な処理部と大容量メモリが必要であってコストの高騰を招く。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、簡便な構成の装置で車両の検知を迅速に行うことのできる車両検知警報装置及び車両検知警報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両検知警報装置は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、前記撮像手段により得られた撮像画像に基づいて前記車両の検知を行う画像処理手段と、前記画像処理手段によって前記車両を検知したときに警報を発する警報手段と、を有し、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定する検知ライン設定部と、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を記憶する背景画像輝度記憶部と、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、前記撮像手段から1画素毎に順次読み込み記憶する最新画像輝度記憶部と、前記最新画像輝度記憶部が記憶する輝度と前記背景画像輝度記憶部における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶する演算結果記憶部と、前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して、前記警報手段に警報信号を供給する車両移動判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このように、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、背景画像輝度記憶部、最新画像輝度記憶部及び演算結果記憶部は小容量で足り、簡便な構成とすることができる。また、画像全体に対して演算を行う必要がなく、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。さらに、検知ラインは複数設けられていることから、検知ラインに差し掛かる順序に基づいて車両の進行方向を検知することができる。
【0009】
車両検知警報装置は、省電力化が図られることから、発電量の小さい太陽電池と補助的なバッテリがあれば駆動可能である。
【0010】
また、本発明に係る車両検知警報方法は、車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像される撮像画像に基づき、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定するステップと、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶するステップと、前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、1画素毎に順次調べて検査輝度として記憶するステップと、前記検査輝度と同一画素の前記基準輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶するステップと、前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して警報を発するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
このように、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法によれば、撮像画像のうち検知ライン上の画素の輝度に基づいて車両を検知することにより、背景画像輝度記憶部、最新画像輝度記憶部及び演算結果記憶部は小容量で足り、簡便な構成とすることができる。また、画像全体に対して演算を行う必要がなく、少ない演算量で迅速に車両を検知することができる。さらに、検知ラインは複数設けられていることから、検知ラインに差し掛かる順序に基づいて車両の進行方向を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両検知警報装置10は、車両12(オートバイ等を含む)が通過する路面14を含む背景を格子状(例えば、640×480画素)の画素単位で所定時間毎、又は適当なタイミングで撮像するCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラ(撮像手段)16と、該CMOSカメラ16により得られた撮像画像に基づいて車両12の検知を行うコントローラ(画像処理手段)18と、該コントローラ18処理結果に基づいて警報を発する警告表示板(警報手段)20とを有する。警告表示板20には多数のLED(Light Emitting Diode)が格子状に配列されている。警告表示板20に用いられる表示手段はLEDに限らず、例えば、EL(Electro Luminescent)等でもよい。
【0015】
また、車両検知警報装置10は、電源供給部として太陽電池22及びバッテリ24を有する。太陽電池22は、カーブミラー26に設置可能な小面積型であって、発電量は比較的小さい。バッテリ24は、鉛蓄電式又はリチウムイオン式等の2次電池であり、太陽電池22で発電した電力を充電するとともにコントローラ18等に対して電力を供給することができる。車両検知警報装置10は、カーブミラー26の支柱部に一体的に設けられており、CMOSカメラ16は路面14の一方を撮像可能なように指向しており、警告表示板20は路面14の他方を指向している。路面14は、例えば、見通しの悪いカーブであって、路面の一方から進入する車両12を検出して、他方から進入する他の車両12の運転者に対して警告表示板20の表示によって警報を発することができる。
【0016】
図2に示すように、CMOSカメラ16は、レンズ30と、該レンズ30により集光された像の輝度を格子状の画素毎に電荷として蓄えるイメージャ32と、各画素の輝度を読み出す際の画素の指定に用いられる垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36とを備える。
【0017】
コントローラ18は、主処理部としてのマイクロプロセッサ40と、イメージャ32の画素から輝度を読み込む際に垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36に対して画素の指定を行うための第1出力インターフェース42と、指定した画素から輝度を読み出してデジタル化する画像A/D変換器44と、マイクロプロセッサ40の処理結果に基づいて警告表示板20に警報信号を供給する第2出力インターフェース46と、太陽電池22及びバッテリ24に制御信号を供給する第3出力インターフェース48とを有する。画像A/D変換器44はイメージャ32上の各画素の輝度を256階調の1バイトのデータに変換する。
【0018】
また、コントローラ18は、データ及びプログラムの記憶部としてのROM(Read Only Memory)50、RAM(Random Access Memory)52及びフラッシュメモリ53を有する。これらのコントローラ18内の各要素はバス60で接続されており、マイクロプロセッサ40の作用下に種々データの授受が可能である。
【0019】
RAM52は小容量の記憶部であって、背景画像輝度記憶部54、最新画像輝度記憶部56、演算結果記憶部58及びタイマ部59が含まれる。これらの記憶部の一部(又は全部)は、マイクロプロセッサ40と別体のRAM52上に設けられている必要はなく、例えばマイクロプロセッサ40の内部レジスタを用いてもよい。
【0020】
背景画像輝度記憶部54は、後述する検知ラインL1、L2及びL3(図3参照)上の画素毎の輝度が記録される。背景画像輝度記憶部54は、検知ラインL1、L2及びL3がそれぞれN個の画素からなるとき、N×3バイトの記憶領域として設定され、マイクロプロセッサ40から2次元配列形式の指定が可能であって、L(a、b)(図6参照)と表される。ここでパラメータaは1〜3をとり、順に検知ラインL1、L2及びL3に対応する。また、パラメータbは、b=1〜Nであり、N個の画素に対応する。
【0021】
最新画像輝度記憶部56は、検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度が順次記録される1バイトの記憶領域であり、マイクロプロセッサ40ではパラメータMとして表される。演算結果記憶部58は、背景画像輝度記憶部54のうちの1バイトのデータと最新画像輝度記憶部56のデータとの差の絶対値の総和が記録される記憶部である。演算結果記憶部58における各検知ラインL1、L2及びL3に対応した絶対値の総和は、配列パラメータSUM(a)(a=1〜3)として表される。
【0022】
タイマ部59は、Timer(K)(K=0〜4)として表される4つの減算タイマであり、後述するステップS23で用いられる車両接近判定処理において、検知ラインL1、L2及びL3に対応して車両12が通過した時点からの経過時間を調べるために用いられる。Timer(1)、Timer(2)及びTimer(3)はシステムの起動時に0に初期化されている。また、Timer(0)は、検知ラインL1よりも遠方の仮想的な仮検知ラインL0に対応した模擬タイマであり、その値は1に固定されている(図8参照)。RAM52には、これ以外にカウンタや所定のパラメータの記憶部が設けられている。
【0023】
マイクロプロセッサ40は検知ライン設定部62と、輝度差算出部64と、車両移動判定部66とを有する。実際上これらの検知ライン設定部62、輝度差算出部64及び車両移動判定部66はマイクロプロセッサ40がROM50からプログラムを読み込み実行することにより実現されるソフトウェア上の機能部である。
【0024】
輝度差算出部64は、最新画像輝度記憶部56が記憶する輝度と背景画像輝度記憶部54における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求めて演算結果記憶部58に記録する。車両移動判定部66は、演算結果記憶部58の値に基づいて車両12が走行していること及びその走行方向を検知して、第2出力インターフェース46に警報信号を供給する。
【0025】
検知ライン設定部62は、図3に示すように、撮像画像70における路面像14a上の3本の水平な検知ラインL1、L2及びL3を示す座標データを設定し、撮像画像70上におけるこれらの検知ラインL1、L2及びL3を示す座標値をフラッシュメモリ53に記録する。各検知ラインL1、L2及びL3はそれぞれ水平に配列されたN個の画素から構成され、実際の路面14上の画像上、右側(右側走行の国では左側)の走行車線における遠い位置から各検知ラインL1、L2及びL3の順に設定されている。
【0026】
具体的には、検知ラインL1は座標データ(X1s、Y1)−(X1e、Y1)、検知ラインL2は座標データ(X2s、Y2)−(X2e、Y2)、検知ラインL3は座標データ(X3s、Y3)−(X3e、Y3)として表され、これらの座標値がフラッシュメモリ53に記録される。各検知ラインL1、L2及びL3は、縦のY方向の幅が1画素で、横のX方向の幅がN画素のラインである。各検知ラインL1、L2及びL3を構成する画素のY方向の幅は1画素に限らず、必要に応じて複数画素の列としてもよく、また、図3上の二点差線で示すように、X方向の幅は各検知ラインL1、L2及びL3毎に変えてもよく、さらに、各検知ラインL1、L2及びL3は、撮像画像70上で必ずしも水平に設定されている必要はなく、例えば、カーブである路面14の曲がり具合に応じて放射状に設定されていてもよい。各検知ラインL1、L2及びL3は、撮像画像70における路面像14a上の車両12の進行方向に略直交する向きに設定するとよく、例えば、路面像14aが撮像画像70において左右方向に延在している場合には、検知ラインL1、L2及びL3を上下方向に設定してもよい。
【0027】
各検知ラインL1、L2及びL3を実際の路面上に表した場合の検知ラインL1と検知ラインL2との間隔、及び検知ラインL2と検知ラインL3との間隔は、一般的な車両12の全長より長い間隔(例えば、10[m])に設定される。
【0028】
なお、撮像画像70はイメージャ32(図2参照)上に形成される画像であるが、このうち検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度のみがコントローラ18の背景画像輝度記憶部54に読み込まれ、基本的には撮像画像70自体はコントローラ18にロードされることはなく、RAM52は小容量のもので足りる。
【0029】
図2に戻り、第2出力インターフェース46から出力される警報信号はドライバ回路72を介して警告表示板20に供給され、警告表示板20のLEDを所定のパターンで点灯し又は点滅させる。第3出力インターフェース48から出力された制御信号は充電制御回路74により処理されて太陽電池22の発電制御を行うとともに、バッテリ24の充放電制御を行う。バッテリ24は定電圧化された電力をコントローラ18に供給する。
【0030】
次に、このように構成される車両検知警報装置10を用いて車両12の検知を行う車両検知警報方法について説明する。以下の説明では、断りのない限り表記したステップ番号順に処理が実行されるものとする。また、CMOSカメラ16は、所定の微小時間毎にその時点における背景を撮像画像70として撮像し、イメージャ32上に保持しているものとする。
【0031】
先ず、図4のステップS1において、検知ライン設定部62の作用下に検知ラインL1、L2及びL3を、それぞれ両端を示す座標データ(X1s、Y1)−(X1e、Y1)、(X2s、Y2)−(X2e、Y2)、及び(X3s、Y3)−(X3e、Y3)として設定し、これらのデータをフラッシュメモリ53に記録する。なお、このステップS1の処理は、所定の初期設定時のみに必要な処理であり、システムの2回目以降の起動時には省略可能であって、初回時にフラッシュメモリ53に記録したデータを読み込んで利用すればよい。また、このステップS1の処理は、撮像画像70を保持可能な大容量の記憶部を有する所定の検知ライン設定補機をコントローラ18の通信部(図示せず)に接続した状態で、検知ライン設定補機の表示部に撮像画像70を表示しながら、オペレータが路面14を表示部上で確認しながら行ってもよい。
【0032】
ステップS2において、所定のカウンタIを1に初期化し、ステップS3において、所定のカウンタJを0に初期化する。
【0033】
ステップS4において、カウンタI及びJに基づき、検知ラインL1、L2及びL3上の画素の輝度データを読み込む。具体的には、カウンタIが示す数値1、2又は3に応じて検知ラインL1、L2又はL3が選択され、選択された検知ラインL1、L2又はL3に応じてY座標データとしてY1、Y2又はY3が垂直選択レジスタ34に対して指定される。水平のX座標データとしては、検知ラインL1が選択されているときには、X1s+J−1が水平選択レジスタ36に指定される。同様に、検知ラインL2又はL3が選択されているときには、X2s+J−1、又はX3s+J−1が水平選択レジスタ36に指定される。このように垂直選択レジスタ34及び水平選択レジスタ36により指定された1つの画素の輝度データがA/D変換器44を介してコントローラ18に読み込まれる。
【0034】
ステップS5において、前記ステップS4で読み込まれた輝度データを背景画像輝度記憶部54のうち、L(I、J)に記録する。
【0035】
ステップS6において、カウンタJの値を調べ、J<Nであれば、J←J+1とインクリメントして(ステップS7)、ステップS4へ戻る。J=NであればステップS8へ移る。
【0036】
ステップS8において、カウンタIの値を調べ、I<3であれば、I←I+1とインクリメントして(ステップS9)、ステップS3へ戻る。
【0037】
このようにしてステップS2〜S9の処理を行うことにより、背景画像輝度記憶部54に検知ラインL1、L2及びL3の各画素毎の輝度データが順に記録される。
【0038】
ステップS10において、背景画像輝度記憶部54に記録された輝度データに基づいて2つの閾値Pt1及び閾値Pt2を設定する。これらの閾値Pt1及びPt2は、後述するステップS26において背景の明るさの経時的な変化を調べるために用いられるパラメータであり、ノイズレベルを考慮して設定され、背景の明るさが確実に変化したことを検知する。閾値Pt1及び閾値Pt2は、例えば、ステップS25で求められる背景画像輝度記憶部54の合計値Paに対してPt1←Pa×1.2、及びPt2←Pa/1.2として設定される。
【0039】
図5のステップS11において、カウンタIを1に初期化し、配列パラメータSUM(a)を0に初期化する。前記のとおりパラメータaは1〜3の値をとり、順に検知ラインL1、L2及びL3に対応しており、SUM(a)は各検知ラインL1、L2及びL3上に車両12が存在するか否かの判定に用いられる。
【0040】
ステップS12において、カウンタJを0に初期化する。
【0041】
ステップS13において、前記ステップS4と同様に、撮像画像70上のカウンタI及びJに応じた画素の輝度データを読み込む。
【0042】
ステップS14において、前記ステップS13で読み込んだ輝度データを最新画像輝度記憶部56であるパラメータMに記録する。例えば、I=2、J=30である場合には、図6に示すように、Y座標値がY2、X座標値がX2s+29の画素の輝度値Aが読み込まれてパラメータMに記録される。
【0043】
ステップS15において、背景画像輝度記憶部54のうちL(I、J)とパラメータMとの差の絶対値を求め、配列パラメータSUM(I)に加算する。つまり、SUM(I)←|L(I、J)−M|+SUM(I)とする。このように、L(I、J)に記録された輝度は、車両12が各検知ラインL1、L2及びL3上に存在するか否かの検査の基準となる基準輝度ともいうことができ、一方、パラメータMに記録された輝度は検査対象となるものであって検査輝度ともいうことができる。
【0044】
図6に示す例においては、B=L(I、J)、C=|L(I、J)−M|であって、その時点のSUM(2)の値D2に対してD2←D2+Cとして加算する。また、この時点ではSUM(1)の値D1は計算済みであり、SUM(3)については計算が開始されてなく0である。
【0045】
ステップS16において、カウンタJの値を調べ、J<Nであれば、J←J+1とインクリメントして(ステップS17)、ステップS13へ戻る。J=NであればステップS18へ移る。
【0046】
ステップS18において、SUM(I)を移動平均基礎データであるパラメータP(I、o)(o=1〜10)に記録する。ここで、カウンタoはシステムの起動時に0に初期化されるパラメータである。
【0047】
ステップS19において、カウンタIの値を調べ、I<3であれば、I←I+1とインクリメントして(ステップS20)、ステップS12へ戻る。I=4であればステップS21へ移る。
【0048】
ステップS21において、カウンタoを更新する。具体的には、o←o+1とインクリメントするとともに、インクリメントした結果、o=10となるときにはo←0と再度初期化する。
【0049】
このようなステップS11〜S21の繰り返し処理により、最新画像輝度記憶部56が記憶する輝度と背景画像輝度記憶部54における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、検知ラインL1、L2及びL3毎に絶対値の総和を求めることができる。
【0050】
ステップS22において、3つの減算タイマをTimer(K)(K=1〜3)の値を調べ、該値が1以上であるときにはそれぞれ1ずつ減算する。Timer(K)の値が0であるときには減算は行わない。
【0051】
ステップS23において、3つの配列パラメータSUM(I)(I=1〜3)の値を調べ、車両検知閾値Thを超えている場合にはカウンタI毎に車両検知フラグFlgON(I)を1に設定し、車両検知閾値Th未満である場合にはカウンタI毎に車両検知フラグFlgON(I)を0に設定する。車両検知フラグFlgON(I)は各検知ラインL1、L2及びL3毎に車両12が存在するか否かを示すものであり、ステップS24の車両接近判定処理で用いられる。車両検知フラグFlgON(I)が1つでも1である場合にはステップS24へ移り、全て0である場合にはステップS25へ移る。
【0052】
なお、配列パラメータSUM(I)は、基準輝度と検査輝度との絶対値に基づき、基準輝度と検査輝度のいずれが明るい場合であっても増加するように更新設定さており、車両12本体でなくともその照明範囲が移動することにより、その照明を検知して間接的に車両12を検出することができ、例えば、夜間における車両12の検知にも有効である。
【0053】
ステップS24では、サブルーチン形式の車両接近判定処理(図7参照)を行い、この後ステップS11へ戻る。車両接近判定処理の内容については後述する。
【0054】
ステップS25において、パラメータP(I、o)について、I=1〜3、o=1〜10の計30(=3×10)個のデータの合計値Paを求める。合計値Paは実質的に10回分の移動平均値を示すものであり、30個のデータをステップS25において毎回加算するのではなく、10回前のSUM(a)を合計値Paから減算するとともに今回のSUM(a)を加算する方式(つまり、FIFO(First In First Out)方式)により求めてもよい。
【0055】
ステップS26において、合計値Paの値を調べ、閾値Pt1を超え又は閾値Pt2を下回っている場合には、背景の明るさが変化していると判断されることからステップS2へ戻り、背景画像輝度記憶部54を更新する。合計値Paが閾値Pt1未満且つ閾値Pt2以上である場合には、ステップS9へ戻り検知ラインL1、L2及びL3上の輝度の調査を続行する。
【0056】
このように、ステップS26においては、移動平均を示す合計値Paに基づいて背景の明るさの判断を行うため、車両12が通過した場合等の短時間の変化による誤判断を防止できる。
【0057】
なお、実際上、図5に示す処理はタイマ割り込みによって規定の微小時間毎に実行されるように設定されている。
【0058】
次に、前記ステップS24における車両接近判定処理について説明する。車両判定処理では、図7に示すサブルーチン処理が実行される。
【0059】
図7のステップS101において、前記Timer(K)のパラメータであるカウンタKを1に初期化する。
【0060】
ステップS102において、前記ステップS23で設定した車両検知フラグFlgON(K)を参照し、車両検知フラグFlgON(K)が1である場合にはステップS103へ移り、0である場合にステップS106へ移る。
【0061】
ステップS103において、カウンタKより1小さい値に対応するTimer(K−1)の値を調べ、該Timer(K−1)≧1である場合にはステップS104へ移り、Timer(K−1)=0である場合にはステップS106へ移る。例えば、その時点のカウンタKが3であるときには、対応する検知ラインL3よりも1本前の検知ラインL2に対応するTimer(2)の値を確認することになり、その時点のカウンタKが1であるときには、対応する検知ラインL1よりも1本前の仮想的な仮検知ラインL0に対応するTimer(0)の値を確認することになる。前記のとおりTimer(0)は常に1に設定されていることから、K=1であるときには常にステップS104へ分岐することとなる。このようなTimer(0)を設けることにより、K=1〜3までの処理パターンを一本化することができる。もちろん、カウンタKの値を判定し、K=1であるときにはTimer(0)を参照することなく無条件にステップS104へ分岐するようにしてもよい。
【0062】
ステップS104において、Timer(K)にカウンタKに応じたタイマ基準値OnTime(K)を代入する。これにより、Timer(K)が0となるまで前記ステップS22における減算処理が開始される。基準値OnTime(K)は固定値であって、プログラムの実行速度と、各検知ラインL1、L2及びL3の間隔に応じて設定されている。本実施例では、OnTime(K)=20として設定されており、例えば、車両12が検知ラインL1上に差し掛かった際には、図8に示すように、Timer(1)に20が設定される。また、車両12が検知ラインL1を通過して検知ラインL2上に差し掛かった際には、図9に示すように、Timer(2)に20が設定され、このときのTimer(1)は前記ステップS22の実行回数に応じて減算されており、例えば、15となっている。この際、車両12はTimer(1)の値が大きいほど高速で、値が小さいほど低速で走行していることになる。
【0063】
ステップS105において、カウンタKに応じた警報信号を第2出力インターフェース46を介してドライバ回路72(図2参照)に供給し、警告表示板20の表示制御を行う。例えば、カウンタKがK=1であるときには、LEDを全消灯又は10秒間全点灯させる信号を供給し、K=2であるときには、他方から進入する他の車両12の運転者が気づく程度の遅い周期でLEDをで10秒間点滅させる信号を供給する。また、K=3であるときには、より速い周期でLEDを10秒間点滅させる信号を供給し、運転者に対して強く注意喚起する。LEDの表示パターンは、これ以外にも、カウンタKに応じて複数のLEDを個別に点灯及び消灯させて、文字列又は絵文字を表示させるようにしてもよい。
【0064】
ドライバ回路72は最後に受けた警報信号に基づいて警告表示板20の表示制御を行い、それ以前に指定された警報信号はキャンセルされる。
【0065】
ステップS106において、カウンタKの値を確認し、K<3である場合ににはK←K+1とインクリメントして(ステップS107)、ステップS102へ戻る。K=3である場合には車両接近判定処理を終了して、前記ステップS11(図5参照)に戻る。
【0066】
このような車両接近判定処理では、ステップS103において、その時点のカウンタKに対して1つ前であるK−1番目に対応するTimer(K−1)の値に基づいて分岐処理を行っている。これにより、1つ前の検知ラインを車両12が通過してからの経過時間を反映することができ、Timer(K−1)が0である場合には該経過時間が不自然に長いと判断することができる。この場合、例えば、車両12以外のものを検知し、又は検知ラインL1を通過した車両12が検知ラインL2の手前でUターンした等の状況が考えられるため、ステップS104及びS105を実行することなく警告表示板20の表示制御を中断できる。また、ステップS103の処理によれば、車両12が逆方向に走行する場合には条件不成立でステップS106へ移ることとなり、反対車線を通過している車両12が、障害物を避けるなどの理由で画像上右側の車線にはみ出て走行する場合には警告表示板20による警告表示をすることがない。
【0067】
さらに、この車両接近判定処理では、Timer(K−1)の値に基づいて車両12の走行速度を検知することができるため、該走行速度に応じて警告表示板20の警告表示を行ってもよい。
【0068】
上述したように、本実施の形態に係る車両検知警報装置10及び車両検知警報方法によれば、撮像画像70の大きさに応じた大容量メモリが不要であり、車両12を認識するために必要な記憶容量は、実質上、3×Nバイトの背景画像輝度記憶部54、1バイトの最新画像輝度記憶部56及び3ワードの演算結果記憶部58で足りるため小容量のRAM52が利用可能であって、車両検知警報装置10を廉価に構成できしかも省電力化が図られる。従って、車両検知警報装置10の消費電力は小さく、発電量の小さい太陽電池22と補助的なバッテリ24があれば駆動可能である。
【0069】
また、撮像画像70の画素全体のうち検知ラインL1、L2及びL3上の画素のみについて処理をすれば足りることから、高速な処理が可能であって、車両12が接近することを迅速に検出することができてリアルタイム性に優れる。
【0070】
さらに、車両12が接近するとき以外は警告表示板20は消灯しているため、一層の省電力化が図られる。
【0071】
車両検知警報装置10は、カーブミラー26に一体的に設けられることにより、ミラー26aを見落としがちな運転手に対しても警告表示板20の警告により注意喚起を促すことができ、ミラー26aを改めて確認させるという相乗的な効果が期待される。
【0072】
なお、上記の説明における輝度とは、光度を面積で除した狭義の輝度[cd/m2]ではなく、明るさの程度を示す広義の意味であることはもちろんであり、イメージャ32上においては照度[lux]とみなすことができる。
【0073】
次に、図1に示したようなカーブの端部に車両検知警報装置10を設ける場合以外の利用例として、車両検知警報装置10の第1の利用方法及び第2の利用方法について図10及び図11を参照しながら説明する。なお、図10及び図11における矢印は、警告表示板20の指向方向を示し、点線はCMOSカメラ16の撮像範囲を示す。
【0074】
図10に示すように、車両検知警報装置10の第1の利用方法では、左右方向に延在する幅の広い優先道路80と上下方向に延在する幅の狭い一般道路82との交差点84の左上角部P1に車両検知警報装置10が設置されている。交差点84の右下部には障害物86が存在することにより見通しが悪くなっている。
【0075】
この場合、車両検知警報装置10は、CMOSカメラ16により優先道路80を右方から交差点84に向かって走行してくる車両12bを撮像して検知し、一般道路82を下方から交差点84に向かって走行してくる車両12aに対して警告表示板20の表示により警告を発することができる。これにより、交差点84に接近中の車両12aの運転者は障害物86が存在することによって車両12aを目視できない場合であっても、なんらかの走行体が交差点84に接近していることを認識できる。また、車両12aが停止線88で一時停止する際には、基本的には運転手が目視で左右を確認することが重要であるが、この確認のために警告表示板20の表示を補助的に利用することができる。
【0076】
車両検知警報装置10は優先道路80上を交差点84から右方に向かって遠ざかる車両は除外されて警報を行わないため、車両12aに対して無意味な警報を発することがない。警告表示板20による警告は、例えば、「車両接近中」というような文字列又は同様の意味の絵文字により行ってもよい。
【0077】
また、車両検知警報装置10は、左上角部P1に限らず、右上角部P2、右下角部P3及び左下角部P4に設置されていてもよい。これらの場合、車両12bを撮像可能なようにCMOSカメラ16の向きを設定するとともに、車両12aに対して警告可能なように警告表示板20の向きを設定するとよい。
【0078】
さらに、車両12bは優先道路80を走行しているため一般道路82を走行している車両12aよりも走行上の優先度が高く、交差点84において一時停止する必要がないが、一般道路82のようなわき道からの車両12aの飛び出しに対して注意する必要があることは走行マナー上もちろんである。このような観点から、車両12bに対して注意喚起を促すために、CMOSカメラ16により車両12aを撮像して、該車両12aが交差点84に接近することを検知したときに警告表示板20により車両12aに対して警告を発するようにしてもよい。
【0079】
図11に示すように、車両検知警報装置10の第2の利用方法では、図10に示した第1の利用方法と同様に交差点84において、左上角部P1に車両検知警報装置10が設けられている。この場合、車両検知警報装置10は、一般道路82を下方から交差点84に向かって走行してくる車両12aをCMOSカメラ16により撮像して検知し、該車両12aに対して停止線88で停止するように警告表示板20の表示により警告を発することができる。つまり、交通法規上、車両12aは停止線88で一時停止して左右を確認しなければならないが、夜間や霧中においては停止線88を識別しにくい場合がある。このように視界の悪い場合においても警告表示板20が発光することによって車両12aの運転者は停止線88が設けられていることを認識することができ、予め徐行して停止線88で余裕をもって停止することができる。
【0080】
この場合、警告表示板20を停止線88に埋め込むようにして、該停止線88自体が発光するようにしてもよい。また、車両検知警報装置10を停止線88よりも手前側(図11における下側)に設け、警告表示板20は、「この先停止線あり」というような文字による警告を発するようにしてもよい。さらに、警告表示板20は、「この先ガソリンスタンドあり」というような広告媒体として用いてもよい。車両検知警報装置10を交差点のない長い直線道路に設けるとともに、速度超過の車両を検知することにより、警告表示板20は、「速度落とせ」というような警告を発するようにしてもよい。
【0081】
さらに、CMOSカメラ16並びに警告表示板20は、それぞれ異なる向きとなるように複数配設されていてもよい。これにより1台の車両検知警報装置10により、交差点84において複数の方向から接近する車両12を検知し、接近方向に応じて選択された警告表示板20により警告を発することができるとともに、接近中の車両12a、12bの双方に警告を発することもできる。さらにまた、交差点84に接近中の車両が1台のみであるときには、警告表示板20を消灯させておき、省電力化を図ることができる。
【0082】
また、1つの交差点において車両検知警報装置10を複数台設けて、各方向から接近する車両12を検知し、接近方向に応じて選択された警告表示板20により警告を発してもよい。CMOSカメラ16、コントローラ18、警告表示板20、太陽電池22及びバッテリ24は必要に応じて別体型としてもよい。
【0083】
車両検知警報装置10は、カーブミラー26(又は電信柱、信号機柱等)の支柱部に対するポール一体型に限らず、例えば専用の箱形であってもよい。箱形の場合、太陽電池22は箱上面を覆うように設けるとともに警告表示板20を側面に設けるとよい。検知ラインL1、L2及びL3は、必要に応じて2本または4本以上設定してもよい。
【0084】
本発明に係る車両検知警報装置及び車両検知警報方法、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至ステップをとり得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態に係る車両検知警報装置及び路面の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る車両検知警報装置の構成ブロック図である。
【図3】イメージャ上に保持される撮像画像を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る車両検知警報方法の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図5】本実施の形態に係る車両検知警報方法の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図6】信号処理の流れを模式的に示すブロック図である。
【図7】車両接近判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】検知ラインL1上に車両が差し掛かった際のタイマの値を示す図である。
【図9】検知ラインL2上に車両が差し掛かった際のタイマの値を示す図である。
【図10】第1の利用方法における車両検知警報装置の設置箇所近傍の平面図である。
【図11】第2の利用方法における車両検知警報装置の設置箇所近傍の平面図である。
【符号の説明】
【0086】
10…車両検知警報装置 12、12a、12b…車両
14…路面 16…CMOSカメラ
18…コントローラ 20…警告表示板
22…太陽電池 24…バッテリ
26…カーブミラー 32…イメージャ
52…RAM 54…背景画像輝度記憶部
56…最新画像輝度記憶部 58…演算結果記憶部
62…検知ライン設定部 64…輝度差算出部
66…車両移動判定部 70…撮像画像
L1、L2、L3…検知ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた撮像画像に基づいて前記車両の検知を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段によって前記車両を検知したときに警報を発する警報手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定する検知ライン設定部と、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を記憶する背景画像輝度記憶部と、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、前記撮像手段から1画素毎に順次読み込み記憶する最新画像輝度記憶部と、
前記最新画像輝度記憶部が記憶する輝度と前記背景画像輝度記憶部における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶する演算結果記憶部と、
前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して、前記警報手段に警報信号を供給する車両移動判定部と、
を備えることを特徴とする車両検知警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両検知警報装置において、
電源供給部として太陽電池及び2次電池を有することを特徴とする車両検知警報装置。
【請求項3】
車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像される撮像画像に基づき、
前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定するステップと、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶するステップと、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を1画素毎に順次読み込み、検査輝度として記憶するステップと、
前記検査輝度と同一画素の前記基準輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶するステップと、
前記絶対値の総和に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して警報を発するステップと、
を有することを特徴とする車両検知警報方法。
【請求項1】
車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られた撮像画像に基づいて前記車両の検知を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段によって前記車両を検知したときに警報を発する警報手段と、
を有し、
前記画像処理手段は、前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定する検知ライン設定部と、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を記憶する背景画像輝度記憶部と、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を、前記撮像手段から1画素毎に順次読み込み記憶する最新画像輝度記憶部と、
前記最新画像輝度記憶部が記憶する輝度と前記背景画像輝度記憶部における対応する同一画素の輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶する演算結果記憶部と、
前記演算結果記憶部の値に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して、前記警報手段に警報信号を供給する車両移動判定部と、
を備えることを特徴とする車両検知警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両検知警報装置において、
電源供給部として太陽電池及び2次電池を有することを特徴とする車両検知警報装置。
【請求項3】
車両が通過する路面を含む背景を画素単位で撮像される撮像画像に基づき、
前記撮像画像における前記路面の像上に複数の検知ラインを特定するためのデータを設定するステップと、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素毎の輝度を基準輝度として記憶するステップと、
前記撮像画像における前記各検知ライン上の画素の輝度を1画素毎に順次読み込み、検査輝度として記憶するステップと、
前記検査輝度と同一画素の前記基準輝度との差の絶対値を順次求め、前記検知ライン毎に前記絶対値の総和を求めて記憶するステップと、
前記絶対値の総和に基づいて車両が走行していること及びその走行方向を検知して警報を発するステップと、
を有することを特徴とする車両検知警報方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−40092(P2006−40092A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221233(P2004−221233)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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