説明

車両用エンジン制御装置

【課題】エンジンが作動している間に通信器が持ち出された状況で、エンジンを停止する操作がなされた場合であっても車両を走行させることができ、エンジンを停止する操作が行われてからエンジンが停止するまでの時間が短い車両用エンジン制御装置の提供。
【解決手段】制御部10は、送信部15及び受信部16によって通信器2a,2b,2c夫々と通信することによって、通信器2a,2b,2c夫々が車両内に在るか否かを随時検知する。制御部10は、検知する都度、検知結果を記憶部17に記憶させる。制御部10は、記憶部17が通信器2a,2b,2c全てが車両内にない旨の検知結果を記憶している場合、エンジンの停止を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型の通信器が記憶している識別情報と自身が記憶している識別情報とを照合することによってエンジンの始動を許可する車両用エンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に対応する識別情報を記憶している携帯型の通信器が車両内に在るか否かを検知し、通信器が車両内に在る場合にエンジンの始動を許可するシステム、所謂スマートキーシステムが実用化されている。これにより、運転者は、通信器を所持しているだけでエンジンを始動することができ、機械キーをキーシリンダに挿入する必要がない。
【0003】
しかしながら、運転者がエンジンを始動して車両を運転している間に通信器が車両外に他人によって持ち出され、運転者が通信器の持ち出しに気付かずにエンジンを停止した場合、運転者はエンジンを再び始動することができない。これにより、運転者は車両を走行させることができなくなる。また、車両が停止した場所によっては、他の車両の走行を妨害することになる。
【0004】
このように、エンジンが作動している間に通信器が車両外に持ち出された状況でエンジンを停止するための操作が行われた場合であっても、車両を走行させることができる車載装置が特許文献1及び2に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載されている車載装置では、ドアをロックする操作がなされた際に、この車載装置が予め記憶している識別情報と通信器の識別情報とが通信によって照合され、識別情報が一致した場合、ドアがロックされる。特許文献1に記載されている車載装置は、ドアがロックされない限り、エンジンの始動を許可する。
【0006】
これにより、エンジンが作動している間に通信器が車両外に持ち出された状況で、エンジンを停止するための操作が行われてエンジンが停止した場合、ドアはロックされないので、運転者はエンジンを再始動することができ、車両を走行させることができる。
【0007】
特許文献2に記載されている車載装置では、エンジンを停止する操作を受け付けた場合に、この車載装置が記憶している識別情報と通信器の識別情報とが通信によって照合され、識別情報が一致した場合にはエンジンが停止され、その他の場合にはエンジンの停止が禁止される。
【0008】
従って、エンジンが作動している間に通信器が車両外に持ち出された状況で、エンジンを停止するための操作が行われた場合、特許文献2に記載されている装置は、通信器の識別情報と自身が記憶している識別情報とを照合することができないため、エンジンを停止しない。これにより、運転者は、エンジンが作動している間に通信器が車両外に持ち出された状況でエンジンを停止する操作を行った場合であっても、エンジンは停止しないため、車両を走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−206199号公報
【特許文献2】特開2006−315582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されている装置では、エンジンが作動している間に通信器が持ち出された状況でエンジンが停止された場合、通信器を持たない者であってもエンジンを始動することができる。このため、ドアがロックされていないことに気付かずに運転者が車両から離れた場合、車両が盗まれる虞がある。
【0011】
特許文献2に記載されている装置では、エンジンが作動している間に通信器が持ち出された状況でエンジンを停止する操作がなされた場合、エンジンは停止しないので、運転者は通信器の持ち出しに気付く。従って、前述したような車両の盗難の虞はない。しかしながら、特許文献2に記載されている装置は、エンジンを停止する操作がなされる都度、通信器の識別情報を照合するために通信器と通信するので、エンジンを停止する操作を行ってからエンジンが停止するまでの時間が長く、運転者を不快にさせる虞がある。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンが作動している間に通信器が持ち出された状況で、エンジンを停止する操作がなされた場合であっても車両を走行させることができ、エンジンを停止する操作が行われてからエンジンが停止するまでの時間が短い車両用エンジン制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、車両に対応する識別情報を記憶している携帯型の通信器と通信することによって車両内における前記通信器の存否を検知する検知手段と、エンジンを停止するための操作を受け付けた際に、前記検知手段が検知した結果が前記通信器の不在である場合に前記エンジンの停止を禁止する禁止手段とを備える車両用エンジン制御装置において、前記検知手段が検知した結果を記憶する記憶手段を備え、前記禁止手段は、前記記憶手段が前記通信器の不在を記憶している場合に前記停止を禁止するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、検知手段は、エンジンを停止する操作がなされる前に、車両内における通信器の存否を随時検知する。記憶手段は検知手段が検知する都度、検知した結果を記憶する。禁止手段は、記憶手段が通信器の在を記憶している場合にエンジンの停止を許可し、通信器の不在を記憶している場合にエンジンの停止を禁止する。
【0015】
従って、エンジンが作動している間に通信器が車両外に持ち出された状況でエンジンを停止する操作がなされた場合であっても、エンジンが停止しないので、運転者は車両を走行させることが可能となる。また、禁止手段は記憶手段が記憶した結果を参照することによってエンジンの停止を禁止するか否かを判断するため、エンジンを停止する操作がなされる都度、識別情報を照合するために通信器と通信する必要がない。このため、エンジンを停止する操作が行われてからエンジンが停止するまでの時間は短い。
【0016】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、前記禁止手段が前記停止を禁止する場合に前記記憶手段が記憶している結果を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、エンジンの停止が禁止された場合に記憶手段が記憶している結果が表示されるため、運転者は通信器が車両外に持ち出されたことが原因でエンジンが停止できないことに気付く。
【0018】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、前記車両又は通信器に関する情報を取得する取得手段を備え、前記記憶手段は、記憶している結果が前記通信器の在から不在に変更する場合に、前記取得手段が取得した情報を記憶し、前記表示手段は前記記憶手段が記憶している情報を表示するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、記憶手段は、記憶している結果が通信器の在から不在に変更された場合に取得手段が取得した車両又は通信器に関する情報を記憶する。禁止手段がエンジンの停止を禁止した場合に記憶手段が記憶した情報が表示手段によって表示されるので、運転者は表示された情報に基づいて通信器の場所を推測することが可能となる。
【0020】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、前記取得手段が取得する情報は、日時又は前記車両の位置を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、運転者は、日時又は車両の位置の情報に基づいて通信器の位置を推測することが可能となる。
【0022】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、前記通信器は電池から給電されるように構成され、前記電池の残量を示す情報を受信する受信手段と、該受信手段が受信した情報を用いて前記残量が所定値以下であるか否かを判定する判定手段とを備え、前記表示手段は、前記禁止手段が前記停止を禁止し、かつ、前記判定手段が所定値以下であると判定した場合に前記残量がなくなっている可能性がある旨を表示するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、判定手段は通信器に給電している電池の残量が所定値以下であるか否かを判定し、表示手段は禁止手段がエンジンの停止を禁止し、判定手段が所定値以下であると判定した場合に電池の残量がなくなっている可能性がある旨を表示する。これにより、運転者は、エンジンの停止が禁止された場合に、電池の残量がなくなったことによって、通信器が検知されなかった可能性を知ることができる。
【0024】
本発明に係る車両用エンジン制御装置は、前記エンジンを強制的に停止させるための操作を受け付ける受付手段と、該受付手段が操作を受け付けた場合に前記エンジンを強制的に停止する停止手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、エンジンの停止が禁止されている場合であっても強制的にエンジンを停止することが可能である。このため、運転者は、エンジンの停止が禁止されていることに気付いた後、駐車場又は車両の通行の邪魔にならない路肩等の適切な場所に車両を移動させてエンジンを停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、車両内における通信器の存否を随時検知して、検知した結果を記憶しており、エンジンを停止する操作がなされた際に、通信器の不在が記憶されている場合にエンジンの停止を禁止するため、エンジンが作動している間に通信器が持ち出された状況でエンジンを停止する操作がなされた場合であっても車両を走行させることができ、エンジンを停止する操作が行われてからエンジンが停止するまでの時間が短い車両用エンジン制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両用エンジン制御装置及び通信器の構成を示すブロック図である。
【図2】通信器の制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
【図3】エンジンが作動している間に車両用エンジン制御装置の制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】記憶部が記憶している内容を示す説明図である。
【図5】受付部がエンジンを停止するための操作を受け付けた場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係る車両用エンジン制御装置及び通信器の構成を示すブロック図である。車両用エンジン制御装置1は、車両内における携帯型の通信器2a,2b,2c夫々の存否を検知し、検知した結果に基づいてエンジンを制御する。通信器2a,2b,2c夫々は、図示しない電池から給電されるように構成されている。
【0029】
車両用エンジン制御装置1は、制御部10、受付部11、エンジン制御部12、時計部13、測位部14、送信部15、受信部16、記憶部17及び表示部18を備える。制御部10はバス19を介して受付部11、エンジン制御部12、時計部13、測位部14、送信部15、受信部16、記憶部17及び表示部18に接続されている。
【0030】
制御部10は、受付部11、時計部13、測位部14及び受信部16から情報を取得し、取得した情報に基づいてエンジン制御部12、送信部15、記憶部17及び表示部18を制御する。これにより、制御部10は、通信によって通信器2a,2b,2c夫々が車両内にあるか否かを定期的に検知し、その都度、検知結果を記憶する。そして、制御部10は、エンジンを停止する操作を受け付けた際、記憶している検知結果が通信器2a,2b,2c全てが車両内にないことを示す場合にエンジンの停止を禁止し、適宜日時及び車両の位置等の情報を表示する。
【0031】
受付部11は、スイッチを有し、スイッチをオン/オフされることによってエンジンの始動及び停止を行うための操作を受け付け、その旨を制御部10に通知する。また、受付部11は、例えば、スイッチが数秒間押されてオンし続けることによって、エンジンを強制的に停止させるための操作を受け付ける。
エンジン制御部12は、制御部10の指示に従って、エンジンの始動及び停止を行う。
【0032】
時計部13は、日時を計時しており、制御部10の指示に従って、計時した日時を制御部10に通知する。
測位部14は、例えば、GPS(Global Positioning System)を有し、複数のGPS衛星からの電波を受け取り、車両の位置を測位し、予め記憶している地図情報を用いて車両の位置を示す情報を取得している。測位部14は、制御部10の指示に従って、取得した車両の位置を示す情報を制御部10に通知する。ここで、車両の位置を示す情報は住所である。
なお、車両の位置を示す情報は住所に限定されず、車両の位置を示した地図であってもよい。
【0033】
送信部15は、制御部10の指示に従って、応答を要求する要求信号を通信器2a,2b,2c夫々に送信する。要求信号には、通信器2a,2b,2cいずれかの識別情報(以下、IDと記載する。)が含まれる。なお、車両には車両内に無線信号を出力する車両内用アンテナと、車両外に無線信号を出力する車両外用アンテナとが設けられている。送信部15は、車両内用アンテナを用いるため、車両内に在る通信器2a,2b,2cにのみ要求信号が送信される。
【0034】
受信部16は、通信器2a,2b,2cから通信器2a,2b,2c夫々のID及び電池の残量の情報を含む応答信号を受信する。なお、要求信号は送信部15によって車両内に在る通信器2a,2b,2cにのみに送信されているため、受信部16が応答信号を受信した場合、応答信号に含まれるIDと同じIDを記憶している通信器2a,2b,2cは車両内に在ると検知することができる。
【0035】
記憶部17は、通信器2a,2b,2c夫々のIDと、通信器2a,2b,2c夫々が車両内に在るか否かを定期的に検知することによって得られた検知結果の中の最近の検知結果と、その一つ前の検知結果と、日時及び車両の位置を示す情報と、通信器2a,2b,2c夫々の電池の残量に関する情報とを記憶している。記憶部17は、制御部10の指示に従って、記憶している内容を更新する。
表示部18は、表示パネルを有し、制御部10の指示に従って、記憶部17が記憶している内容を表示する。
【0036】
次に通信器2aの構成を説明する。通信器2b,2cの構成は通信器2aの構成と同じであるので、説明を省略する。
通信器2aは、制御部20a、受信部21a、送信部22a、記憶部23a及び検出部24aを備える。制御部20aはバス25aを介して受信部21a、送信部22a、記憶部23a及び検出部24aに接続されている。
【0037】
制御部20aは、受信部21a及び検出部24aから情報を取得し、送信部22a及び記憶部23aを制御する。これにより、制御部20aは要求信号を受信し、要求信号に含まれるIDが記憶しているIDと一致する場合に通信器2aに給電する電池の残量を検出して、記憶しているIDと検出した電池の残量とを含む応答信号を送信する。
【0038】
受信部21aは送信部15から要求信号を受信する。
送信部22aは、制御部20aの指示に従って、記憶部23aから読み出されたID及び検出部24aが検出した電池の残量の情報を含む応答信号を受信部16に送信する。
【0039】
記憶部23aは、通信器2aのIDを記憶しており、制御部20aによってIDが読み出される。
検出部24aは、制御部20aの指示に従って、通信器2aの電池の残量を検出する。
【0040】
通信器2bは、制御部20bと、バス25bによって制御部20bに接続された受信部21b、送信部22b、記憶部23b及び検出部24bとを備えている。同様に通信器2cは、制御部20cと、バス25cによって制御部20cに接続された受信部21c、送信部22c、記憶部23c及び検出部24cとを備えている。通信器2a,2b,2c夫々は、電子キー等の通信器である。
【0041】
次に、通信器2aの制御部20aが実行する動作の手順を説明する。制御部20b,20cが実行する動作の手順は、制御部20aが実行する動作の手順と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
図2は、通信器2aの制御部20aが実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部20aは、受信部21aが送信部15から通信器2a,2b,2cいずれかのIDを含む要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS21)。制御部20aは、受信部21aが要求信号を受信しなかったと判定した場合(ステップS21:NO)、ステップS21に戻り、受信部21aが要求信号を受信するまで判定を繰り返す。
【0043】
制御部20aは、受信部21aが要求信号を受信したと判定した場合(ステップS21:YES)、記憶部23aから通信器2aのIDを読み出し、読み出したIDを要求信号に含まれるIDと照合する(ステップS22)。
【0044】
次に、制御部20aは、記憶部23aから読み出したIDと要求信号に含まれるIDとが一致するか否かを判定する(ステップS23)。制御部20aは、IDが一致しないと判定した場合(ステップS23:NO)、動作を終了する。
【0045】
制御部20aは、IDが一致すると判定した場合(ステップS23:YES)、検出部24aに通信器2aの電池の残量を検出させる(ステップS24)。
【0046】
次に、制御部20aは、記憶部23aから読み出したID及び検出部24aが検出した電池の残量の情報を含む応答信号を受信部16に送信する(ステップS25)。
制御部20aは、ステップS25の後、動作を終了する。
【0047】
なお、通信器2a,2b,2c夫々は、図2のフローチャートによって示された動作を実現することができればよいため、携帯電話機等の通信器であってもよい。
【0048】
次に、車両用エンジン制御装置1の制御部10が、エンジンが作動している間に実行する動作の手順を説明する。以下に説明する動作の手順は、通信器2a,2b,2c夫々に対して実行される。以下、通信器2aに対して制御部10が実行する動作の手順を説明する。通信器2b,2c夫々に対して実行される動作の手順は、通信器2aに対して実行される動作の手順と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
図3は、エンジンが作動している間に車両用エンジン制御装置1の制御部10が実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部10は、まず、記憶部17から通信器2aのIDを読み出し、通信器2aのIDを含む要求信号を送信する(ステップS31)。
【0050】
次に、制御部10は所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS32)。制御部10は、所定の時間が経過していないと判定した場合(ステップS32:NO)、受信部16が応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS33)。制御部10は受信部16が応答信号を受信していないと判定した場合(ステップS33:NO)、ステップS32に戻る。
【0051】
制御部10は、受信部16が応答信号を受信したと判定した場合(ステップS33:YES)、応答信号に含まれるIDと記憶部17が記憶している通信器2aのIDとが一致するか否かを判定する(ステップS34)。これにより、受信部16が受信した応答信号は通信器2aの送信部22aが送信した応答信号であることを確認する。
制御部10は、ステップS31からステップS34を実行することによって車両内における通信器2aの存否を検知する。
【0052】
制御部10は、IDが一致すると判定した場合(ステップS34:YES)、記憶部17に通信器2aが車両内に在る旨の情報を記憶させる(ステップS35)。
【0053】
制御部10は、所定の時間が経過したと判定した場合(ステップS32:YES)又はIDが一致しないと判定した場合(ステップS34:NO)、記憶部17に通信器2aが車両内にない旨の情報を記憶させる(ステップS36)。
【0054】
制御部10は、ステップS35を実行した後、通信器2aのIDと共に応答信号に含まれる電池の残量を示す情報を用いて、通信器2aの電池の残量が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS37)。制御部10は、通信器2aの電池の残量が所定値以下でないと判定した場合(ステップS37:NO)、動作を終了する。
【0055】
制御部10は、通信器2aの電池の残量が所定値以下であると判定した場合(ステップS37:YES)、記憶部17に通信器2aの電池の残量が少ない旨の判定結果を記憶させる(ステップS38)。制御部10は、ステップS38を実行した後、動作を終了する。
【0056】
制御部10は、ステップS36を実行した後、記憶部17から前回の記憶を読み出して、通信器2aについて前回車両内に在る旨の情報を記憶しているか否かを判定する(ステップS39)。制御部10は、前回車両内に在る旨の情報を記憶していないと判定した場合(ステップS39:NO)、動作を終了する。
【0057】
制御部10は、前回車両内に在る旨の情報を記憶していると判定した場合(ステップS39:YES)、時計部13が計時している日時及び測位部14が取得した車両の位置を示す情報を記憶部17に記憶させる(ステップS40)。
【0058】
次に、制御部10は、記憶部17から読み出して、前回、通信器2aの電池の残量が少ない旨の判定結果を記憶しているか否かを判定する(ステップS41)。制御部10は、前回電池の残量が少ない旨の判定結果を記憶していないと判定した場合(ステップS41:NO)、動作を終了する。
【0059】
制御部10は、電池の残量が少ない旨の判定結果を記憶していると判定した場合(ステップS41:YES)、ステップS36にて記憶部17が車両内にない旨の情報を記憶した理由が通信器2aの電池切れである可能性がある旨の情報を記憶部17に記憶させる(ステップS42)。
制御部10は、ステップS42を実行した後、動作を終了する。
【0060】
制御部10は、エンジンが作動している間、図3のフローチャートに示す動作を通信器2b,2cについても順次実行する。そして、制御部10は、通信器2a,2b,2cについて行った一連の動作を定期的に繰り返し実行する。
なお、制御部10が一連の動作を繰り返し実行する間隔は定期的でなくてもよい。
【0061】
次に、記憶部17が記憶している内容の一例を説明する。図4は記憶部17が記憶している内容を示す説明図である。ここで、通信器2a,2b,2cのIDは、夫々ID−A,ID−B,ID−Cである。記憶部17が各IDについて、検知結果と、前回の検知結果と、日時及び車両の位置を示す情報と、電池の残量に関する情報とを記憶している。
【0062】
IDがID−Aである通信器、即ち、通信器2aは、最近の検知結果では車両内に在り、その前の検知結果においても車両内に在る旨の情報が記憶部17に記憶されている。更に、最近の検知結果が車両内に在りと記憶されているため、通信器2aの電池の残量が所定値以下か否かが判定されており、通信器2aの電池の残量が少ない旨の判定結果が記憶されている。
【0063】
IDがID−Bである通信器、即ち、通信器2bは、最近の検知結果では車両内になく、その前の検知結果においては車両内に在った旨の情報が記憶部17に記憶されている。記憶部17が記憶している検知結果が車両内に在る旨の情報から車両内にない旨の情報に変更されているため、車両内にない旨の検知結果を記憶した時の日時及び車両の位置が記憶されている。また、車両内に在る旨の検知結果を記憶した時に電池の残量が少ない旨の判定結果を記憶しているか否かが判定されている。
【0064】
これにより、通信器2bが車両内にない旨の検知結果が記憶された日時が○○日△△時□□分であり、その時の車両の位置が○○市であり、更に電池切れのため、車両内にないと検知された可能性がある旨の情報が記憶さている。
【0065】
IDがID−Cである通信器、即ち、通信器2cは、最近の検知結果及びその前の検知結果において車両内にない旨の情報が記憶部17に記憶されている。
【0066】
なお、図4に示す記憶部17が記憶している内容は一例であって、記憶部17が記憶する内容は図4に示す内容に限定されない。更に、記憶部17が通信器2a,2b,2c夫々のID及び検知結果以外に記憶する内容は、日時及び車両の位置を示す情報と、電池の残量に関する情報とに限定されない。また、記憶部17が検知結果以外に記憶する内容は、日時を示す情報、車両の位置を示す情報及び電池の残量に関する情報の内いずれか1つ又は2つであってもよい。
【0067】
次に、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けた場合に車両用エンジン制御装置1の制御部10が実行する動作の手順を説明する。なお、エンジンは、受付部11がエンジンを始動する操作を受け付けた後に、エンジン制御部12によって始動される。
【0068】
図5は、受付部11がエンジンを停止するための操作を受け付けた場合に制御部10が実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部10は、まず、受付部11がエンジンを強制的に停止させるための操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS51)。ここで、受付部11は、スイッチが数秒間押されてオンし続けることによって、エンジンの強制的に停止させるための操作を受け付ける場合、スイッチが押されオンしている期間を計測する。受付部11は、計測した時間が数秒間を超えるか否かによって、エンジンを停止する操作又はエンジンを強制的に停止する操作のいずれを受け付けたかを判定し、判定結果を制御部10に通知する。
【0069】
制御部10は、受付部11がエンジンを強制的に停止させるための操作を受け付けなかったと判定した場合(ステップS51:NO)、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS52)。制御部10は、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けなかったと判定した場合(ステップS52:NO)、ステップS51に戻る。
【0070】
制御部10は、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けたと判定した場合(ステップS52:YES)、記憶部17が記憶している通信器2a,2b,2c夫々の最近の検知結果(図4参照)を参照する(ステップS53)。
【0071】
次に、制御部10はステップS53で参照した検知結果に基づいて、通信器2a,2b,2cの内少なくとも1つが車両内に在るか否かを判定する(ステップS54)。
【0072】
制御部10は、受付部11がエンジンを強制的に停止させるための操作を受け付けたと判定した場合(ステップS51:YES)又は通信器2a,2b,2cの内少なくとも1つが車両内に在ると判定した場合(ステップS54:YES)、エンジン制御部12にエンジンを停止させる(ステップS55)。制御部10は、ステップS55を実行した後に動作を終了する。
【0073】
制御部10は、通信器2a,2b,2c全てが車両内にないと判定した場合(ステップS54:NO)、エンジン制御部12にエンジンを停止する指示をせず、エンジンの停止を禁止する(ステップS56)。
【0074】
次に、制御部10は、記憶部17が記憶している内容、例えば図4に示す説明図を表示部18に表示させる(ステップS57)。これにより、運転者は通信器2a,2b,2cが車両外に持ち出されているためにエンジンが停止できないことに気付くことができる。
【0075】
また、運転者は、通信器2a,2b,2cが車両内から無くなった時の日時及び車両の位置を知ることができるため、通信器2a,2b,2cの位置を推測することができる。更に、電池切れの可能性も表示されるので、運転者は、電池切れによって通信器2a,2b,2cが検知されなかった可能性を知ることができる。
制御部10はステップS57を実行した後に動作を終了する。
【0076】
本実施の形態にあっては、エンジンが作動している間に通信器2a,2b,2cのいずれかが車両内に在るか否かが制御部10によって定期的に検知され、検知された結果が記憶部17に記憶されている。エンジンが作動している間に通信器2a,2b,2c全てが持ち出された状況で運転者がエンジンを停止する操作を行った場合、記憶部17は通信器2a,2b,2c全てが車両内にない旨を記憶しているので、エンジンの停止が禁止される。従って、前述の状況でエンジンを停止する操作が行われた後であっても、エンジンが停止しないので、運転者は車両を走行させることができる。
【0077】
また、運転者がエンジンを停止する操作を行った際、制御部10は記憶部17に記憶されている検知結果を参照し、参照した検知結果に基づいてエンジンの停止の許可又は禁止を行う。従って、車両用エンジン制御装置1は、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付ける都度、IDを照合するために通信器2a,2b,2cと通信する必要がない。これにより、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けてからエンジン制御部12がエンジンを停止するまでの時間が短く、運転者を不快にさせない。
【0078】
本実施の形態にあっては、表示部18は、通信器2a,2b,2c夫々について、電池の残量が所定値以下であり、電池の残量が少ない旨の判定結果を表示する。このため、運転者に電池の残量が少ないことを知らせることができ、運転者に電池の交換を促すことができ、通信器2a,2b,2cが電池切れによって検知できない状況の発生を防ぐことができる。
【0079】
本実施の形態にあっては、エンジンの停止が禁止されている場合であっても強制的にエンジンを停止することが可能である。このため、運転者は、エンジンの停止が禁止されていることに気付いた後、駐車場又は、車両の通行の邪魔にならない路肩等の適切な場所に車両を移動させてエンジンを停止させることが可能となる。
【0080】
なお、本実施の形態では、図5に示すように、制御部10は、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けた場合に、記憶部17に記憶している検知結果を参照してエンジンの停止を禁止するか否かを判定している。しかしながら、制御部10は、エンジンが作動している間に図3のフローチャートに示す動作の手順を通信器2a,2b,2cについて行う一連の動作を終了する都度、記憶部17に記憶している検知結果を参照してエンジンの停止を許可するか禁止するかを判定してもよい。
【0081】
この場合、制御部10は記憶部17に判定結果を記憶させる。そして制御部10は、受付部11がエンジンを停止する操作を受け付けた際、記憶部17がエンジンの停止を許可する旨の判定結果が記憶されている場合には、エンジンを停止し、記憶部17がエンジンの停止を禁止する旨の判定結果を記憶している場合には、エンジンの停止を禁止する。
【0082】
なお、本実施の形態では、通信器の数は3つに限定されない。通信器の数は1、2又は4つ以上であってもよい。また、通信器2a,2b,2c全てが車両内にないと記憶された場合、エンジンが作動している間に制御部10が通信器2a,2b,2c夫々に対して順次実行する一連の動作を繰り返す周期を長くしてもよい。
【0083】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 車両用エンジン制御装置
10 制御部
11 受付部
12 エンジン制御部
13 時計部
14 測位部
15 送信部
16 受信部
17 記憶部
18 表示部
2a,2b,2c 通信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対応する識別情報を記憶している携帯型の通信器と通信することによって車両内における前記通信器の存否を検知する検知手段と、エンジンを停止するための操作を受け付けた際に、前記検知手段が検知した結果が前記通信器の不在である場合に前記エンジンの停止を禁止する禁止手段とを備える車両用エンジン制御装置において、
前記検知手段が検知した結果を記憶する記憶手段を備え、
前記禁止手段は、前記記憶手段が前記通信器の不在を記憶している場合に前記停止を禁止するように構成されていること
を特徴とする車両用エンジン制御装置。
【請求項2】
前記禁止手段が前記停止を禁止する場合に前記記憶手段が記憶している結果を表示する表示手段を更に備えること
を特徴とする請求項1に記載の車両用エンジン制御装置。
【請求項3】
前記車両又は通信器に関する情報を取得する取得手段を備え、
前記記憶手段は、記憶している結果が前記通信器の在から不在に変更する場合に、前記取得手段が取得した情報を記憶し、
前記表示手段は前記記憶手段が記憶している情報を表示するように構成されていること
を特徴とする請求項2に記載の車両用エンジン制御装置。
【請求項4】
前記取得手段が取得する情報は、日時又は前記車両の位置を含むこと
を特徴とする請求項3に記載の車両用エンジン制御装置。
【請求項5】
前記通信器は電池から給電されるように構成され、
前記電池の残量を示す情報を受信する受信手段と、
該受信手段が受信した情報を用いて前記残量が所定値以下であるか否かを判定する判定手段と
を備え、
前記表示手段は、前記禁止手段が前記停止を禁止し、かつ、前記判定手段が所定値以下であると判定した場合に前記残量がなくなっている可能性がある旨を表示するように構成されていること
を特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の車両用エンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジンを強制的に停止させるための操作を受け付ける受付手段と、
該受付手段が操作を受け付けた場合に前記エンジンを強制的に停止する停止手段と
を備えること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の車両用エンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132357(P2012−132357A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284763(P2010−284763)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】