説明

車両用オットマン構造

【課題】 部品点数の増加を抑制しつつ、収納状態で乗員との接触を確実に回避可能な車両用オットマン構造を提供する。
【解決手段】 車体前後方向に延びるフロア部2と、このフロア部2上に配設された後部シート4と、このシートに着座する乗員の脚部を載置させるオットマン部5とを備える。シートの前方のフロア部2にはフロア収納部10が設けられるとともに、このフロア収納部10の開口部11にはシート側の縁部を中心に回動させることにより開口部11を開閉し、かつ、裏面がオットマン部5として構成された蓋体12が設けられる。この蓋体12は、閉状態でオットマン部5をフロア収納部10内に収納させるとともに、開状態でオットマン部5を収納状態から露出させて乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに着座する乗員の脚部を載置させるオットマンの構造に関し、詳しくはこのオットマンを不使用時に収納可能に構成された車両用オットマン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗員の快適性を向上するために、種々のアメニティー装備が車両に搭載されつつある。このアメニティー装備の一つとして、シートに着座する乗員の脚部を載置するオットマンが見受けられるようになってきている。このオットマンは、不使用時には所定のスペースに収納されており、乗員の要求に応じて使用可能な位置にセットし得るように構成されているものが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、シートクッションの前部に回動可能に支持されたオットマンと、このオットマンを回動駆動する電動駆動機構とを備え、この電動駆動機構によって上記オットマンを、シートクッションの前端面に沿うように垂下させた状態で支持する収納姿勢と、この収納姿勢にあるオットマンの下端が前方に回動してせり上がって上記シートクッションの座面に対して所定の角度をもって配置された足載せ姿勢とに切換可能に構成された車両用オットマン構造が開示されている。
【特許文献1】特開平11−253272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載のオットマン構造のようにオットマンを別個に設ける構成では部品点数が増加するという不都合がある。しかも、この構造では、シートクッションの座面に対する角度を変更することにより、オットマンを収納姿勢と足載せ姿勢とに切り換えるので、収納姿勢においてもオットマンが露出しているばかりでなく、この収納姿勢ではシートクッションの前端部からオットマンが垂下した状態となっているため、乗員においてオットマンの使用を希望していないにも拘わらず、座り方次第でオットマンに太股やふくらはぎ等の脚部が接触して違和感を生じるなどの不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情のもとになされたものであり、部品点数の増加を抑制しつつ、収納状態で乗員との接触を確実に回避可能な車両用オットマン構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明に係る車両用オットマン構造は、車体前後方向に延びるフロア部と、このフロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の脚部を載置させるオットマン部とを備える車両用オットマン構造において、上記シート前方のフロア部には車室内に開口して内部に被収納物を収納するフロア収納部が設けられるとともに、このフロア収納部の開口部には上記シート側の縁部を中心に回動させることにより上記開口部を開閉し、かつ、裏面が上記オットマン部として構成された蓋体が設けられ、この蓋体は、閉状態で上記オットマン部をフロア収納部内に収納させるとともに、開状態で上記オットマン部を収納状態から露出させて上記乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換えることを特徴とするものである。
【0007】
なお、オットマン部とは、足を載せるための台などの車載部材をいい、専ら足の付け根からかかとまでの脚部の所定部分が載置可能に構成されている部材をいうものとする。
【0008】
この発明によれば、シート前方のフロア部に設けられたフロア収納部の蓋体の裏面がオットマン部として構成されているので、オットマン部を車載部材と共用させることにより部品点数の増加を効果的に抑制することができる。しかも、蓋体は、閉状態で上記オットマン部をフロア収納部内に収納させるとともに、開状態で上記オットマン部を収納状態から露出させて上記乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換えるので、オットマン部の不使用時にはオットマン部がフロア収納部に隠蔽状態に収納され、乗員との接触を確実に回避することができる。
【0009】
ここで、日頃、土足で踏み入れられることが多いフロア部におけるフロア収納部の蓋体を、乗員の脚部を載置させるオットマン部と共用させることにすると、オットマン部の清潔性の確保が問題となるが、本発明では、蓋体の裏面がオットマン部として構成され、この蓋体は、閉状態で上記オットマン部をフロア収納部内に収納させるとともに、開状態で上記オットマン部を収納状態から露出させて上記乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換えるように構成されているので、オットマン部をフロア収納部の蓋体と共用させるものであっても、不使用時にはオットマン部を隠蔽することにより確実にオットマン部の清潔性を確保することができる。
【0010】
上記蓋体、詳しくは閉状態における蓋体の上面は、フロア部の上面に対して盛り上がっていたり、凹入していたりするものであってもよいが、閉状態で上記フロア部の上面と面一になるように構成されているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成すれば、車室内空間に影響を与えることなくフロア部にフロア収納部を設けることができ、また見栄えも向上させることができる。
【0012】
上記オットマン部の具体的構成は特に限定されるものではないが、例えば軟質合成樹脂フォーム(例えばポリウレタンフォーム)、ゴム、綿、エラストマー、コルクなどの弾性芯材をそのまま用いるものであってもよいし、これらの弾性芯材をその表面を皮革、ビニールシート、ファブリック(織物、編み物などの繊維シート)などのオットマントリムによって被覆したものであってもよい。特に、上記オットマン部は、柔軟な弾性芯材と、この弾性芯材の表面を被覆するファブリック製のオットマントリムとを備えて構成されるのが好ましい(請求項3)。
【0013】
このように構成すれば、弾性芯材がファブリック製のトリムによって被覆されるので、低コストで質感を向上させることができる。しかも、被覆材としてファブリックを用いた場合には、特に清潔性を確保することが困難であるが、この発明によれば、オットマン部は不使用時にはフロア収納部に収納されているので、確実に清潔性を確保することができる。
【0014】
この場合、オットマン部の収納状態で、その下面はフロア収納部の底面に当接しているものであってもよいが、上記オットマン部の収納状態で、このオットマン部の下面は上記フロア収納部の底面から離間してその間に収納空間が形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成すれば、フロア収納部に被収納物を効率的に収納することができる。また、フロア収納部の底面は比較的埃等が溜まり易いが、上記のように構成すれば、この埃等が溜まり易いフロア収納部の底面からオットマン部の下面が離間した状態で収納されているので、この収納状態でもオットマン部の清潔性を確実に確保することができる。さらに、フロア収納部に収納させることを想定している被収納物に合わせて、この離間距離を当該被収納物の厚みより短く設定することにより、弾性を有するオットマン部によって被収納物をフロア収納部の底面に弾性的に押し付けて固定できるので、被収納物の移動を効果的に防止することができる。
【0016】
この発明において、上記蓋体を開状態で支持するために、この蓋体を支持する支持部や支持機構等を別個に設けるものであってもよいが、例えば上記フロア部は車体後方側が段上げされたキックアップ部を有し、このフロア部の上段に上記シートが配設されているとともに、フロア部の下段に上記フロア収納部が設けられ、上記蓋体は、開状態でこのキックアップ部に支持され、上記オットマン部に上記シートに着座する乗員の脚部を載置可能に構成されているのが好ましい(請求項5)。
【0017】
このように構成すれば、既存の車載部位を利用して蓋体を開状態で支持することができ、しかもこの支持部が車体の高剛性部材であることから、脚部の載置に伴って蓋体が沈み込んだりすることがなく、品質及び使用感を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の発明によれば、オットマン部を車載部材と共用させることにより部品点数の増加を効果的に抑制することができるとともに、オットマン部の不使用時にはオットマン部がフロア収納部に隠蔽状態に収納され、乗員との接触を確実に回避することができるという利点がある。この場合、オットマン部の清潔性の確保が問題となるが、本発明では、蓋体の裏面がオットマン部として構成され、この蓋体は、閉状態で上記オットマン部をフロア収納部内に収納させるとともに、開状態で上記オットマン部を収納状態から露出させて上記乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換えるように構成されているので、オットマン部をフロア収納部の蓋体と共用させるものであっても、不使用時にはオットマン部を隠蔽することにより、土足で踏み入れられるなどの事態を確実に回避してオットマン部の清潔性を確実に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は当実施形態に係る車両用オットマン構造の概略側面図であり、図2は同オットマン構造を一部切り欠いた状態で示す分解斜視図である。図3は同オットマン構造の断面図である。なお、当実施形態では、前後2列シートを有する車両Sにおいて、後部シートの少なくとも一のシートにオットマン構造を適用した場合について説明するが、本発明の車両用オットマン構造は、1列シート(2シータ)や3列以上のシートを有する車両についても適用が可能であり、運転席や助手席を含めたいずれのシートについても適用可能である。ただし、運転席については、その性質上オットマン構造を設けることへの要求が少ない。
【0020】
当実施形態の車両用オットマン構造は、図1に示すように、車体前後方向に延びるフロア部2と、このフロア部2の上面に配設された前後2列のシート3,4と、このシート3,4のうち後部シート4に着座する乗員の脚部を載置させるオットマン部5とを備える。
【0021】
フロア部2は、車体の前後方向に延びるフロアパネル21と、このフロアパネル21上に積層されフロア上面位置を所定領域で底上げする底上げ部22と、これらのフロアパネル21及び底上げ部22上に積層されたフロアトリム23とを備え、車室Aの底面部を構成している。このフロア部2は、後部が前部に対して段上げされてキックアップ部が形成されている。
【0022】
具体的には、フロアパネル21は、鋼板からなり車幅方向両端部がサイドシル6に接合されている(図2参照)とともに、その両端部下面が車体前後方向に延設されたサイドフレーム(図示せず)に接合されている。フロアパネル21は、車体前部に配設されたフロントパネル211と、このフロントパネル211の後端縁から後方に若干傾倒した状態で立ち上がるキックアップ部212と、このキックアップ部212の上端縁から後方に延びるリヤパネル213とを備える。
【0023】
そして、上記フロントパネル211上には、図2に示すように、車幅方向に沿って1本ないし複数本の断面視逆ハット状のクロスメンバ7が接合されるとともに、その後部所定位置に車幅方向に沿って後述する支持アーム部材13を取り付けるための断面視逆ハット状の取付用クロスメンバ8が接合されている。また、フロントパネル211は、図1に示すように、その前端縁が車室Aとエンジンルームとを仕切るダッシュパネル9に連設されるとともに、その前後方向略中央部の上方に前部シート3が配設されている。リヤパネル213の上方には、後部シート4が配設されている。具体的には、リヤパネル213の前端縁から若干後方に変位した位置に後部シート4が配設されている。
【0024】
ここで、各シート3,4について簡単に説明すると、各シート3,4は、シートクッション31,41とシートバック32,42とを有する公知のシートであり、当実施形態では前後部いずれのシートであってもリクライニング機構が取り付けられている。特に、後部シート4のシートクッション41は前部に向かうに従って上方に傾斜して形成され、その前端面が下方に向かうに従って後方に退入するように形成されている。
【0025】
上記フロアパネル21のうちフロントパネル211の上面には、その略全面にわたって底上げ部22が積層されている。この底上げ部22は、フロア部2内に後述するフロア収納部10を形成するために設けられたものであり、従って、上記収納空間の高さを考慮して適宜その高さが設定されている。また、この底上げ部22の材質は特に限定されるものではないが、硬質樹脂フォームなど比較的軽量で丈夫なものが好ましく用いられ、当実施形態ではポリウレタン樹脂フォームが用いられている。
【0026】
なお、当実施形態では、底上げ部22がフロントパネル211の略全面にわたって配設されているが、この底上げ部22の配設領域は、少なくともフロア収納部10が形成される領域周辺に配設されていれば特に限定されるものではない。従って、当実施形態のように、後部シート4の前方にフロア収納部10が設けられているような場合には、例えば底上げ部がフロントパネル211の後端縁から前部シート3の下方辺りにまでで途切れているようなものであってもよい。
【0027】
フロアトリム23は、見栄えを向上させることを主たる目的の一つとするものであり、当実施形態ではフロアカーペットが用いられている。そして、このフロアトリム23が底上げ部22及びこの底上げ部22が配設されていないフロアパネル21上に積層されて接着により接合されている。
【0028】
なお、このフロアトリム23は、フロアカーペットだけでなく、ラバーマットや塩化ビニールマットなどのフロアマットを用いるものであってもよく、また、フェルトなどのパッド材や制振材などを積層させた複合構造とするものであってもよい。
【0029】
後部シート4の前方のフロア部2、詳しくはフロントパネル211の後端部に対応するフロア部2には、車室A内に開口するフロア収納部10が凹設されている。このフロア収納部10は、開口部11を通じて内部にボトル缶や雑巾などの被収納物が収納されるものである。このフロア収納部10の開口部11には、回動することにより当該開口部11を開閉する蓋体12が設けられている。そして、この蓋体12の裏面が上記オットマン部5として構成されている。
【0030】
具体的には、フロア収納部10は、左右の後部シート4のうち少なくとも一方のシート4の前方におけるフロア部2(特に底上げ部22)が凹陥することにより形成されている。このフロア収納部10の開口部は、平面視において車幅方向に長い矩形状を呈しているとともに、その幅が対応する後部シート4の幅よりも若干狭く、かつ、奥行き(車体前後方向の長さ)がフロントパネル211に対応するフロア部2の上面からリヤパネル213に対応するフロア部2の上面までの高さよりも長く形成されるとともに、フロントパネル211に対応するフロア部2の上面から後部シート4、詳しくはシートクッションの座面までの高さよりも短く形成されている。また、このフロア収納部10の深さは、少なくともオットマン部5を収容可能な深さに設定されれば特に限定されるものではなく、当実施形態では、蓋体12が閉塞された状態で、この蓋体12に設けられたオットマン部5がフロア収納部10の底面と接触しない程度の深さであって、この収納部10に飲料用の缶ボトルが収納された場合にこの缶ボトルとオットマン部5の下面とが接触可能な深さに設定されている。
【0031】
そして、フロア収納部10における後部シート4側の縁部を除く開口縁部には、段差載置部101が内方に向かって突設され、その上面に蓋体12の周縁部が係合し得るように構成されている。
【0032】
なお、このフロア収納部10には、その内面形状に沿った内箱を嵌挿するようにしてもよく、この内箱によって上記段差載置部101が形成されるようにしてもよい。また、この内箱に背の低い仕切壁を設けることにより内部の収納空間を区分けするようにしたり、内箱の上方を閉塞する内蓋を設けるようにしてもよい。
【0033】
このフロア収納部10内の後端部(後部シート4側の縁部)には、蓋体12を回動自在に支持する支持アーム部材13がボルト等の締結具によって取り付けられている。具体的には、この支持アーム部材13は、上下方向に延びかつ上端部に軸受孔131が穿設された左右一対のアーム本体132と、このアーム本体132の下端縁同士を接続する取付プレート133とを備え、この取付プレート133に穿設された複数個の取付け孔134にボルト等の締結具が挿通され、この締結具によってフロア収納部10の底面における後端部、詳しくはこの後端部の下方に配設された取付用クロスメンバ8に対して強固に取り付けられている。このアーム本体132の高さは、フロア収納部10の底面から段差載置部101までの高さと同等ないしは若干低く形成されている。
【0034】
一方、蓋体12は、硬質合成樹脂からなる蓋板121と、蓋板121の表面(閉状態にある蓋体12の上面)に接着された蓋トリム122と、蓋板121の裏面(閉状態にある蓋体12の下面)に接合されたオットマン部5とを備える。
【0035】
蓋板121は、フロア収納部10の開口部11に対応した大きさに設定され、蓋体12の閉状態でその周縁部がフロア収納部10の段差載置部101に当接し得るように構成されている。蓋板121の後端部における左右両側部は、略方形状に切り欠かれている。この切欠き部123には、この切欠き部123の形状に対応する形状を有する化粧片124が嵌め込まれている。化粧片124は、この切欠き部123を通して段差載置部101に接合され、これにより蓋体12の開閉動作に拘わらず、支持アーム部材13を含めたこの支持機構を隠蔽して見栄えを向上させている。
【0036】
また、図2に示すように、蓋体12の後端部(後部シート4側の縁部)、詳しくは蓋板121の左右切り欠き部123の内側縁には、この蓋体12の回動中心軸である軸部125を取り付けるための軸取付フランジ126が下方に向かって垂設されている。そして左右の軸取付フランジ126によって軸部125が支持され、蓋体12はこの軸部125を中心に回動自在に構成されている。なお、蓋体12には、図示していない公知の蓋体ロック機構が設けられており、この蓋体ロック機構により閉状態でロックし得るように構成されている。
【0037】
蓋トリム122は、上記フロアトリム23と同様に構成されている。そして、蓋体12が閉状態にある場合に、フロアトリム23の表面と蓋トリム122が略面一となるように蓋板121や蓋トリム122の厚み等が適宜設定されている。
【0038】
一方、オットマン部5は、略直方体の形状を呈し、上記したように、蓋板121の裏面に接合されている。具体的には、オットマン部5は、柔軟な弾性芯材51と、この弾性芯材の表面を被覆するオットマントリム52とを有する。このオットマン部5の大きさは、後部シート4に着座する乗員の両脚部が載置可能な大きさ、より詳しくは後部シート4に着座する標準体格で標準体型の乗員のふくらはぎからかかとまでを載置可能な大きさに設定されている。
【0039】
弾性芯材51は、シートクッションに用いられるクッションパッドが用いられており、その柔軟性についても通常のクッションパッドが有する柔軟性と同等に形成されている。この弾性芯材51は、当実施形態では軟質ウレタンフォームが用いられているが、その他の軟質合成樹脂フォーム、ゴム、綿、コルクなどを弾性芯材として用いるものとしてもよい。オットマントリム52は、ファブリック製のものが用いられており、少なくとも蓋板121に接合された状態の弾性芯材51の露出表面を被覆するものとなされている。なお、このオットマントリム52もファブリック製のものだけでなく、弾性芯材51の表面を被覆する皮革や塩化ビニル等のビニルシート、フェルト等を用いるものであってもよい。
【0040】
次に、上記構成のオットマン構造の作用について、図4及び図5を用いて説明する。図4は不使用時におけるオットマン部の収納状態を示す説明図であり、図5はオットマン部の使用状態を示す説明図である。
【0041】
オットマン部5の不使用時には、蓋体12は図4に示すような閉状態となされ、この状態では、蓋板121の後端部(蓋体12の閉状態での後端部)を除く周縁部が段差載置部101に当接係合されるとともに、図示しないロック機構によりこの状態が維持されるようになっている。従って、蓋体12が硬質であることと相俟って蓋体12の上に乗員等がのっても蓋体12の沈み込みを効果的に防止することができるとともに、車体の振動等に応じて蓋体12が開閉するのを確実に防止することができる。
【0042】
この蓋体12の裏面にはオットマン部5が設けられており、従って、オットマン部5を車載部材である蓋体12と共用させることにより部品点数の増加を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、この蓋体12の閉状態では、蓋体12の裏面側に設けられたオットマン部5がフロア収納部10内に収納され、車室A内に露出しないようになっている。従って、この収納状態にあるオットマン部5が後部シート4に着座する乗員Cに接触して乗員Cに対して不快感などの違和感を与えるなどの事態を確実に回避することができるとともに、土足で踏み込まれることが多いこのフロア部2の近傍にオットマン部5を設けているにも拘わらずオットマン部5の清潔性を確実に担保することができる。しかも、この状態ではオットマン部5の下面5aがフロア収納部10の底面10aから離間した状態となっているので、フロア収納部10の底面10aに埃や砂などが薄く堆積しているような場合でも、オットマン部5の表面を清潔に保つことができる。特に、当実施形態のオットマン部5のように表面を覆うオットマントリム52について、埃や砂などが比較的付着し易いファブリック製のものを用いる場合には、上記のようにオットマン部5の下面5aとフロア収納部10の底面10aとを離間させておくことにより、両者5a,10aを当接させる場合と比べてより顕著な効果がもたらせられる。
【0044】
さらに、蓋体12の閉状態では、フロア部2の上面と蓋体12の上面とが面一となっている。従って、フロア収納部10を設けているにも拘わらず、この収納部10は効果的に隠蔽され、乗員の乗車快適性に影響を与えることもない。
【0045】
そして、乗員の要求に応じてオットマン部5を使用する場合には、まず図示しないロック機構を解放し、続いて同じく図示しない把持部をもって蓋体12を上方に回動させ、図5に示すように、キックアップ部212の上端部に蓋体12の対応箇所(図5では先端部)を係合させることにより、蓋体12を全開させる。なお、蓋体12とフロア部2との係合当接箇所に、ベルクロファスナー等の全開維持手段を設け、この全開維持手段によって蓋体12を全開状態で維持させるように構成してもよい。
【0046】
このとき、オットマン部5は、後部シート4のシートクッション41前端部からフロア収納部10の後端部に向かって傾斜した状態となっており、この状態で後部シート4に着座する乗員Cの脚部、より詳しくはふくらはぎの下半部からかかとまでの所定範囲に亘って載置可能となっている。このように、蓋体12を高剛性部材であるキックアップ部212に支持させることによりオットマン部5に脚部を載置させても蓋体12の沈み込みを効果的に防止することができ、これにより品質及び使用感を向上させることができる。しかも、この蓋体12の全開状態では、フロア収納部10も開口しているので、フロア部2におけるフロア収納部10が形成されている箇所は実質的にフロア部2が低く形成されていることになり、従って後部シート4に比較的足の長い乗員が着座した場合でも、当該乗員の足部がフロア部2に接地されることを回避して、このような乗員に対してもよりリラックスした姿勢で脚部をオットマン部5で支持させることができる。
【0047】
そして、このフロア収納部10内に被収納物を収納させる場合には、図3に二点鎖線で示すように、被収納物Mを収容して、蓋体12を閉塞することにより、弾性を有するオットマン部5によって被収納物Mをフロア収納部10の底面に弾性的に押し付けて固定できるので、被収納物Mの移動を効果的に防止することができる。
【0048】
なお、本発明の車両用オットマン構造の具体的構成は、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
【0049】
(1)上記実施形態では、オットマン部5が設けられた蓋体12が支持アーム部材13によって回動可能に支持されるものとなされているが、このように別途蓋体12を支持する支持部材を設けなくても、例えばフロア収納部10の内壁やこのフロア収納部10に内箱が設けられる場合にはその内箱の車幅方向両側壁に蓋体12を回動自在に支持させるようにしてもよい。この場合に、フロア収納部10の内壁や内箱の車幅方向両側壁に軸受部材を配設するようにしてもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、オットマン部5が弾性芯材51とオットマントリム52とを有して構成されているが、弾性芯材51自体の見栄えが良い場合等には、トリム材で表面を被覆せずに弾性芯材51自体をオットマン部として構成するものであってもよい。
【0051】
(3)上記オットマン部5の具体的形状は特に限定されるものではなく、例えば乗員の脚部に沿うような形状を有するものであってもよく、また下方に向かうに従って順次厚肉ないしは薄肉に形成されるものであってもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では蓋体12の閉状態で、オットマン部5の下面5aとフロア収納部10の底面10aとが当接しないように構成されているが、両者5a,10aが当接するように構成してもよい。この場合には、比較的埃や砂などが付着しにくい皮革やビニールシートなどがオットマントリム52として用いられるオットマン部5を使用するのが好ましい。なお、このように両者5a,10aが当接している場合であってもオットマン部5が柔軟なものであるため、フロア収納部10に被収納物を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】当実施形態の車両用オットマン構造を示す概略側面図である。
【図2】同オットマン構造を一部切り欠いて示す分解斜視図である。
【図3】同オットマン構造を蓋体を閉塞した状態で示す断面図である。
【図4】オットマン部の不使用時における同オットマン構造を示す説明図である。
【図5】オットマン部の使用時における同オットマン構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
2 フロア部
212 キックアップ部
4 後部シート
5 オットマン部
5a 下面
51 弾性芯材
52 オットマントリム
10 フロア収納部
10a 底面
11 開口部
12 蓋体
A 車室
C 乗員
M 被収納物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びるフロア部と、このフロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の脚部を載置させるオットマン部とを備える車両用オットマン構造において、
上記シート前方のフロア部には車室内に開口して内部に被収納物を収納するフロア収納部が設けられるとともに、このフロア収納部の開口部には上記シート側の縁部を中心に回動させることにより上記開口部を開閉し、かつ、裏面が上記オットマン部として構成された蓋体が設けられ、
この蓋体は、閉状態で上記オットマン部をフロア収納部内に収納させるとともに、開状態で上記オットマン部を収納状態から露出させて上記乗員の脚部を載置可能な使用状態に切り換えることを特徴とする車両用オットマン構造。
【請求項2】
上記蓋体は、閉状態で上記フロア部の上面と面一になるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用オットマン構造。
【請求項3】
上記オットマン部は、柔軟な弾性芯材と、この弾性芯材の表面を被覆するファブリック製のオットマントリムとを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用オットマン構造。
【請求項4】
上記オットマン部の収納状態で、このオットマン部の下面は上記フロア収納部の底面から離間してその間に収納空間が形成されていることを特徴とする請求項3記載の車両用オットマン構造。
【請求項5】
上記フロア部は車体後方側が段上げされたキックアップ部を有し、このフロア部の上段に上記シートが配設されているとともに、フロア部の下段に上記フロア収納部が設けられ、上記蓋体は、開状態でこのキックアップ部に支持され、上記オットマン部に上記シートに着座する乗員の脚部を載置可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用オットマン構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−193048(P2006−193048A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6597(P2005−6597)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】