説明

車両用カウルルーバの取付け構造

【課題】組み付け精度のばらつきが生じた場合にも確実に取り付けることができる車両用カウルルーバの取付け構造を提供する。
【解決手段】係止部7cは、カウル本体7aに続いて下方に延びる基部と、該基部の下端から斜め上方に延びる爪部とを有し、該爪部は、基部が取付け孔10cの前縁部に当たったときに該基部を取付け孔10c内に誘導する前側挿入ガイド部7p′を有し、前記基部は、該基部が取付け孔10cの後縁部に当たったときに該基部を取付け孔10c内に誘導する後側挿入ガイド部7n′を有し、該後側挿入ガイド部7n′は、挟持部7bを支点Pとしてカウル本体7aを回動させたときの前記基部の下端の回動軌跡Rより後側に膨出するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスとフードとの間を覆うように配設された車両用カウルルーバの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカウルルーバを取り付ける場合、例えば、特許文献1では、カウルルーバの後端部に形成されたコ字形状の挟持部でフロントガラスの下縁部を挟持するとともに、カウルルーバの前端部に形成された起立壁部とカウルパネルとをクリップにより結合するようにしている。
【0003】
また前記クリップを不要にして部品コストの低減を図る観点から、例えば、特許文献2では、カウルルーバの前端部に爪を一体に形成し、該爪をカウルパネルの取付け孔に装着するようにした構造が提案されている。
【0004】
前記カウルルーバを取り付ける場合には、カウルルーバの挟持部によりフロントガラスの下縁部を挟持した状態で、カウルルーバを、前記挟持部を支点にして下方に回動させることにより前記爪をカウルパネルの取付け孔に押し込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−248405号公報
【特許文献2】特開平7−285319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来の取付け構造では、カウルルーバのフロントガラスへの組み付け精度のばらつきにより、該カウルルーバの爪がカウルパネルの取付け孔の縁部に引っ掛かって挿入できない場合がある。特に、近年のフロントガラスは、曲率を大きくしたラウンド形状となっていることから、カウルルーバの挟持部のフロントガラスへの装着荷重が大きくなり、挟持部を奥まで押し込めない場合がある。その結果、カウルルーバ全体が前側にずれることから、爪が取付け孔の前縁部に引っ掛かることとなる。またフロントガラスに挟持部を奥まで装着した場合には、爪が取付け孔の後縁部に引っ掛かる場合があり、組付け時の作業性を高めるために、この点での改善が要請されている。
【0007】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、組み付け精度のばらつきが生じた場合にも確実に取り付けることができる車両用カウルルーバの取付け構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、フロントガラスの前側下方に配置された車両構成部材の上方を覆うカウル本体の、後端部に前記フロントガラスの下縁部を挟持する挟持部が形成され、前端部に前記車両構成部材に形成された取付け孔に装着される係止部が形成された車両用カウルルーバを、前記挟持部を支点としてカウル本体を下方に回動させることにより前記係止部を前記取付け孔に装着するようにした車両用カウルルーバの取付け構造であって、前記係止部は、前記カウル本体に続いて下方に延びる基部と、該基部の下端から斜め上方に延びる爪部とを有し、該爪部は、前記基部が前記取付け孔の前縁部に当たったときに該基部を取付け孔内に誘導する前側挿入ガイド部を有し、前記基部は、該基部が前記取付け孔の後縁部に当たったときに該基部を取付け孔内に誘導する後側挿入ガイド部を有し、該後側挿入ガイド部は、前記挟持部を支点としてカウル本体を回動させたときの前記基部の下端の回動軌跡より後方に弧状に膨出するように形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用カウルルーバの取付け構造において、前記挟持部には、前記フロントガラスへの装着時の装着荷重を軽減する装着荷重軽減構造が設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の車両用カウルルーバの取付け構造において、前記後側挿入ガイド部は、前記基部の下端部の後面を覆う円弧状をなしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る取付け構造によれば、係止部に、取付け孔に誘導する前側挿入ガイド部及び後側挿入ガイド部を形成し、さらに該後側挿入ガイド部を、前記挟持部を支点としてカウル本体を回動させたときの前記基部の下端の回動軌跡より後方に弧状に膨出する形状としたので、カウル本体を、挟持部を支点として下方に回動させることにより、係止部を取付け孔に確実に誘導でき、カウルルーバのフロントガラスへの組み付け精度にばらつきが生じた場合でも、カウルルーバを車両構成部材に確実に取り付けることができ、組み付け時の作業性を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明では、挟持部にフロントガラスへの装着時の装着荷重を軽減する装着荷重軽減構造を設けたので、例えばフロントガラスが大きくラウンドした形状であっても、カウルルーバの挟持部をフロントガラスの下縁部に容易に装着することができ、また装着量を均一にすることが可能となり、カウルルーバのフロントガラスへの組み付け精度を高めることができる。
【0013】
請求項3の発明では、後側挿入ガイド部を、基部の下端部後面を覆う円弧状をなすよう膨出形成したので、後側挿入ガイド部が取付け孔の後縁部に当たると、基部が前側に弾性変形して取付け孔内に誘導されることとなり、組み付け時の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1による自動車のカウルルーバの斜視図である。
【図2】前記カウルルーバの断面図(図1のII-II線断面図)である。
【図3】前記カウルルーバの挟持部の平面図である。
【図4】前記挟持部の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
【図5】前記挟持部の断面図(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記カウルルーバの係止部の平面図である。
【図7】前記係止部の断面図(図6のVII-VII線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1ないし図7は、本発明の実施例1による車両用カウルルーバの取付け構造を説明するための図である。なお、本実施例の説明のなかで前後,左右という場合は、自動車に搭載されたシートに着座した状態で見た場合の前後,左右をいう。
【0017】
図において、1は自動車のエンジン室2と車室3とを画成するカウル部を示している。このカウル部1は、前記車室3の前面に配置されたフロントガラス4と、該フロントガラス4の前側下方に配置され、車幅方向に延びるカウルパネル(車両構成部材)5と、該カウルパネル5の前方に配置され、前記エンジン室2を開閉するフード6と、前記カウルパネル5の上方に配置され、前記フロントガラス4とフード6との間を覆うカウルルーバ7とを備えている。
【0018】
前記カウルパネル5は、上方に開口する概ね断面ハット形状のロアパネル10と、該ロアパネル10に後開口部を覆うように溶接により接合されたアッパパネル11とを有する。前記ロアパネル10は、前フランジ10aと後フランジ10bとを有し、該後フランジ10bに前記アッパパネルが接合されている。
【0019】
前記カウルパネル5内には、前記フロントガラス4に付着した雨水等を払拭するワイパ装置の駆動ユニット12が配設されている。このフロントガラス4は、これの車幅方向左,右側部が中央部から後方に大きく湾曲するラウンド形状を有している。
【0020】
前記カウルルーバ7は、樹脂製のものからなり、前記カウルパネル5の上方を覆うカウル本体7aと、該カウル本体7aの後端部に車幅方向に所定間隔をあけて複数形成され、前記フロントガラス4の下縁部4aを挟持する挟持部7bと、前記カウル本体7aの前端部に車幅方向に所定間隔をあけて複数形成され、前記カウルパネル5に取り付けられた係止部7cとを有する。詳細には、ロアパネル10の前フランジ10aに形成された取付け孔10cに、前記係止部7cを差し込むことにより取り付けられている。
【0021】
前記カウル本体7aは、前記フロントガラス4の下縁部4aに当接する後フランジ部7dと、該後フランジ部7dに続いて前方に延びる上壁部7eと、該上壁部7eの前端に段落ち状に形成され、フード6とカウルルーバ7との間から流入した雨水,洗浄水を外部に排出する樋部7fと、該樋部7fに続いて前上方に延びる前フランジ部7gとを有する。なお、7hは車室3内に走行風を導入する導入口、7iはワイパ挿通孔、7jはウォッシャノズル取付け孔である。
【0022】
前記後フランジ部7dにはフロントガラス4との間をシールするシール部材15が装着されており、前フランジ部7gには前記フード6との間をシールするシール部材16が装着されている。
【0023】
前記カウルルーバ7を組み付けるには、各挟持部7bをフロントガラス4に装着して固定し、この状態で挟持部7bの上端とフロントガラス4との接点を支点P(回転中心)としてカウル本体7aを下方に回動させ、前記係止部7cをロアパネル10の取付け孔10cに押し込んで挿入する(図2参照)。
【0024】
前記各挟持部7bは、前記後フランジ部7dと、該後フランジ部7dの裏面基部に続いて下方に突出する底部7kと、該底部7kに続いて前記後フランジ部7dと平行に延びる挟持片7mとで形成されている。
【0025】
前記各挟持部7bには、大きくラウンドしたフロントガラス4への装着時の装着荷重を軽減する装着荷重軽減構造が設けられている。この装着荷重軽減構造は、前記挟持片7mの板厚を後フランジ部7dより1/2程度小さくするとともに、該挟持片7mに所定厚さの不織布18を貼着して構成されている。
【0026】
前記不織布18は、該不織布18と後フランジ部7dとの隙間がフロントガラス4の板厚と略一致する厚さに設定されている。また前記後フランジ部7dの下面及びシール部材15にはシリコン(不図示)が塗布されている。これにより、フロントガラス4に各挟持部7bを装着する際の装着荷重は、不織布18が圧縮変形するとともに挟持片7mが弾性変形することにより低減されており、かつカウルルーバ7の回動が容易となっている。
【0027】
前記各係止部7cは、前記カウル本体7aの樋部7fkの下面に続いて下方に直線状に延びる基部7nと、該基部7nの下端から前方に屈曲して斜め上方に延びる爪部7pとを有する。この爪部7pには、前記取付け孔10cの開口縁に係合して抜けを防止するストッパ7rが形成されている。
【0028】
前記爪部7pは、組み付け時に前記基部7nの下端がロアパネル10の取付け孔10cの前縁部10c′に当たったときに該取付け孔10c内に誘導する前側挿入ガイド部7p′を有する。
【0029】
この前側挿入ガイド部7p′は、ロアパネル10の前フランジ10aの上面に対して上向きに傾斜するように形成されている。これにより前側挿入ガイド部7p′が取付け孔10cの前縁部10c′に当接すると、爪部7pが後方に弾性変形して取付け孔10c内に案内されることとなる。
【0030】
前記基部7nは、組み付け時に前記基部7nの下端が前記取付け孔10cの後縁部10c′′に当たったときに該取付け孔10c内に誘導する後側挿入ガイド部7n′を有する。
【0031】
この後側挿入ガイド部7n′は、前記挟持部7bを支点Pとしてカウルルーバ7を回動させたときの前記基部7nの下端の回動軌跡Rより後側に位置するよう形成されている。詳細には、前記基部7nの下端部の後面を覆う円弧状をなすよう膨出形成されている。
【0032】
この後側挿入ガイド部7n′は、基部7nの下端から後側に大きく回り込むように形成されている。これにより後側挿入ガイド部7n′が取付け孔10cの後縁部10c′′に当接すると、基部7nが前方に弾性変形して取付け孔10c内に案内されることとなる。
【0033】
また前記基部7nと後側挿入ガイド部7n′の上端とで、取付け孔10cの開口縁に係合して抜けを防止するストッパ7n′′が形成されている。
【0034】
本実施例によれば、カウルルーバ7の係止部7cの爪部7pに、基部7nの下端が取付け孔10cの前縁部10c′に当たったときに前記爪部7pを弾性変形させて取付け孔10c内に案内する前側挿入ガイド部7p′を形成し、前記基部7nに、該基部7nの下端が取付け孔10cの後縁部10c′′に当たったときに前記基部7nを弾性変形させて取付け孔10c内に案内する後側挿入ガイド部7n′を形成し、該後側挿入ガイド部7n′を基部7nの下端の回動軌跡Rより後方に膨出させたので、カウルルーバ7のフロントガラス4への組み付け精度にばらつきが生じてもカウルパネル5に確実に取り付けることができ、組み付け時の作業性を高めることができる。
【0035】
前記カウルルーバ7の取付け時には、作業者から係止部7cが見えないことから、目視できない状態で押し込むこととなるが、本実施例では、組み付けのばらつきを吸収できることから、目視できない場合にも作業性を向上できる。
【0036】
本実施例では、前記カウルルーバ7の挟持部7bをフロントガラス4に装着する際の装着荷重を軽減する不織布18等からなる装着荷重軽減構造を設けたので、フロントガラス4が大きくラウンドした形状であっても、カウルルーバ7の挟持部7bをフロントガラス4の下縁部に容易に装着することができるとともに、装着量を均一にすることが可能となり、カウルルーバ7のフロントガラス4への組み付け精度を高めることができる。
【0037】
また本実施例では、前記カウルルーバ7の挟持部7bを脆弱化することができるので、外部からの荷重に対してカウルルーバ7が容易に変形することとなり、歩行者の保護性能を高めることができる。
【0038】
本実施例では、後側挿入ガイド部7n′を基部7nの下端部に円弧形状をなすよう膨出形成したので、後側挿入ガイド部7n′が取付け孔10cの後縁部10c′′に当たると、基部7nが前側に弾性変形して取付け孔10c内に案内されることとなり、組み付けを容易に行なうことができる。
【符号の説明】
【0039】
4 フロントガラス
4a 下縁部
5 カウルパネル(車両構成部材)
7 カウルルーバ
7a カウル本体
7b 挟持部
7c 係止部
7n 基部
7n′ 後側挿入ガイド部
7p 爪部
7p′ 前側挿入ガイド部
10c 取付け孔
10c′ 前縁部
10c′′ 後縁部
18 不織布(装着荷重軽減構造)
P 支点
R 回動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの前側下方に配置された車両構成部材の上方を覆うカウル本体の、後端部に前記フロントガラスの下縁部を挟持する挟持部が形成され、前端部に前記車両構成部材に形成された取付け孔に装着される係止部が形成された車両用カウルルーバを、前記挟持部を支点としてカウル本体を下方に回動させることにより前記係止部を前記取付け孔に装着するようにした車両用カウルルーバの取付け構造であって、
前記係止部は、前記カウル本体に続いて下方に延びる基部と、該基部の下端から斜め上方に延びる爪部とを有し、
該爪部は、前記基部が前記取付け孔の前縁部に当たったときに該基部を取付け孔内に誘導する前側挿入ガイド部を有し、
前記基部は、該基部が前記取付け孔の後縁部に当たったときに該基部を取付け孔内に誘導する後側挿入ガイド部を有し、
該後側挿入ガイド部は、前記挟持部を支点としてカウル本体を回動させたときの前記基部の下端の回動軌跡より後方に弧状に膨出するように形成されている
ことを特徴とする車両用カウルルーバの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用カウルルーバの取付け構造において、
前記挟持部には、前記フロントガラスへの装着時の装着荷重を軽減する装着荷重軽減構造が設けられている
ことを特徴とする車両用カウルルーバの取付け構造。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用カウルルーバの取付け構造において、
前記後側挿入ガイド部は、前記基部の下端部の後面を覆う円弧状をなしている
ことを特徴とする車両用カウルルーバの取付け構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−152882(P2011−152882A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16730(P2010−16730)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】