説明

車両用シートクッション

【課題】エアバッグの展開方向を安定させることでエアバッグ装置が安定した性能を発揮することができる車両用シートクッションを得る。
【解決手段】クッション部30には、メインパッド32と着座センサ付きパッド34とによって、エアバッグ44の上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部38が形成されているので、車両の衝突時にエアバッグ44が膨張して展開状態となる際には、エアバッグ44は、その上方から車両後方側へ向けてガイド凹部38に沿って、メインパッド32と着座センサ付きパッド34との間に入り込んで展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にエアバッグが配設された車両用シートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、衝突時における乗員の大腿部等の慣性移動を制限するために、シートクッション内にエアバッグを配設している場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようなシートクッションでは、クッションパッドの下側にエアバッグを近接配置した状態としている。
【0003】
しかし、この従来構造では、エアバッグの展開方向をコントロールするための機構がないため、膨張したエアバッグが前方に張り出してしまうことがある等、エアバッグの展開方向が安定せず、エアバッグ装置が安定した性能を発揮することができない。
【特許文献1】特開2005−112000公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、エアバッグの展開方向を安定させることでエアバッグ装置が安定した性能を発揮することができる車両用シートクッションを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車両用シートクッションは、シートクッションフレームに支持され、車両の衝突時に膨張して展開状態となるエアバッグを備えたエアバッグ装置と、前記シートクッションフレームに支持され、前記エアバッグの膨張力を下面側で受けるクッション部と、前記エアバッグの展開する方向を制限して前記エアバッグを車両後方側へ誘導するガイド手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートクッションによれば、エアバッグの展開する方向を制限してエアバッグを車両後方側へ誘導するガイド手段が設けられているので、車両の衝突時にエアバッグが膨張して展開状態となる際には、エアバッグは、車両後方側へ向けて展開する。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車両用シートクッションは、請求項1記載の構成において、前記ガイド手段が、前記クッション部に形成されて前記エアバッグの上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用シートクッションによれば、クッション部には、エアバッグの上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部が形成されているので、車両の衝突時にエアバッグが膨張して展開状態となる際には、エアバッグは、その上方から車両後方側へ向けてガイド凹部に沿って確実に展開する。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車両用シートクッションは、請求項2記載の構成において、前記クッション部が、該クッション部の上部を構成する第1クッション部と、該クッション部の下部を構成する第2クッション部と、を備えており、前記ガイド凹部が、前記第1クッション部と前記第2クッション部とによって形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用シートクッションによれば、クッション部は、例えば、着座センサの取付けや着座者の着座フィーリング向上等のために、その上部を構成する第1クッション部とその下部を構成する第2クッション部とを備えており、ガイド凹部は、第1クッション部と第2クッション部とによって形成されるので、車両の衝突時にエアバッグが膨張して展開状態となる際には、エアバッグは、その上方から車両後方側へ向けて第1クッション部と第2クッション部との間に入り込んで展開する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用シートクッションによれば、エアバッグの展開方向を安定させることができ、その結果として、エアバッグ装置が安定した性能を発揮することができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載の車両用シートクッションによれば、エアバッグをガイド凹部に沿わせて展開させることで、エアバッグの展開方向を確実に安定させることができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項3に記載の車両用シートクッションによれば、上下に配置される第1クッション部と第2クッション部とを有効に利用して、エアバッグの展開方向をより一層安定させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態の構成)
本発明における車両用シートクッションの実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向をそれぞれ示す。
【0015】
図1には、車両用シートクッション14(以下、単に「シートクッション14」という。)を備えた車両用シート10が示されている。車両室内で乗員着座用とされる車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、このシートクッション14の後端側に傾倒可能に支持されて乗員の背面を支持するシートバック12と、シートバック12の上端部に上下調節可能に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を含んで構成されている。シートクッション14は、上面部が乗員の着座部とされており、スライド機構部(図示省略)によって車両前後方向にスライド移動可能とされている。
【0016】
シートクッション14は、シートクッション14内に配設された骨格部材として機能するシートクッションフレーム16と、このシートクッションフレーム16に掛け渡されたシートクッションスプリング28と、シートクッションスプリング28上に配置されてシートクッションスプリング28を介してシートクッションフレーム16に支持されるクッション部30と、クッション部30の表面に接着されてクッション部30を被覆する表皮材40と、シートクッションフレーム16に支持されて車両の衝突時に膨張して展開状態となるエアバッグ44を備えたエアバッグ装置42と、を含んで構成されている。
【0017】
図2に示されるように、シートクッションフレーム16は、平面視で枠状に形成されており、各々車両前後方向を長手方向として延在する左右一対のサイドフレーム部20と、左右一対のサイドフレーム部20の前端部間に掛け渡されたシートパン部18と、左右一対のサイドフレーム部20の後端部同士を連結するロッド部22と、を含んで構成されている。
【0018】
図1及び図2に示されるように、シートパン部18の車両前後方向における前部18Aは、その前端側が車両下方側へ垂下されている。前部18Aの車両後方側には、車両上方側が開放されてシートパン部18の一部を構成する凹状(略箱体形状)の凹陥部18Bが形成されている。この凹陥部18Bは、エアバッグ装置42におけるインフレータ46を収容するためのエアバッグケースを兼ねている。凹陥部18Bの車両後方側は、シートパン部18の後部18Cとされて車両後下方側に階段状に延在している。
【0019】
インフレータ46は、シート幅方向(図2の矢印14W方向)を軸方向とした略円柱形状とされ、図示しない制御装置に接続されており、制御装置の制御によって車両衝突時に作動することによりガスを噴出するようになっている。図1に示されるように、エアバッグ装置42におけるエアバッグ44は、インフレータ46から噴出されたガスが流入されるようにインフレータ46の車両上方側に折り畳み状態で配置されている。ここで、インフレータ46は、凹陥部18B内に完全に収容されているが、エアバッグ44は、インフレータ46の上方においては、凹陥部18Bの開口部上方に配設されている。また、図2に示されるように、折り畳み状態のエアバッグ44は、シートパン部18上において、シート幅方向(矢印14W方向)に延在している。図3に示されるように、エアバッグ44の膨張状態では、クッション部30がその下面側でエアバッグ44の膨張力を受けるようになっており、エアバッグ44の膨張反力は、シートパン部18によって支持されるようになっている。
【0020】
図1及び図2に示されるように、シートパン部18の後部18Cの車両下方側には、補強板24が配設されている。補強板24は、縦断面形状では車両下方側が開放された略コ字状に形成されており、シート幅方向(図2の矢印14W方向)の両側がシートクッションフレーム16におけるサイドフレーム部20に掛け渡されている。補強板24は、エアバッグ装置42のエアバッグ44の展開時にシートパン部18の後部18Cを支持できるようになっている。
【0021】
図1に示されるように、クッション部30は、クッション部30の上部を構成する第1クッション部としてのメインパッド32と、メインパッド32とは別体とされてクッション部30の下部を構成する第2クッション部としての着座センサ付きパッド34と、を備えている。このように、本実施形態において、クッション部30が上下2個のパッド(メインパッド32及び着座センサ付きパッド34)で構成されているのは、後述する着座センサ36をクッション部30内に配置するためである。メインパッド32及び着座センサ付きパッド34は、ウレタンの発泡体等からなり、シートクッション14の形状を作り出すと共にクッションの役目を果たしている。クッション部30は、部位によって硬さの異なるものが適用されており、着座者の着座フィーリングの向上や着座性能の向上のために、メインパッド32の硬さが着座センサ付きパッド34の硬さと異なるような構成にしてもよい。
【0022】
着座センサ付きパッド34の上面部には、シートクッション14に乗員が着座したか否かを検出するために、乗員着座状態検出手段として機能する着座センサ36が取り付けられている。この着座センサ36としては、例えば、シート状に構成された圧力検知センサ等を適用することができる。なお、本実施形態では、シート状の着座センサ36が適用されているが、着座センサは、必ずしもシート状のセンサでなくてもよい。
【0023】
メインパッド32は、クッション部30の上部において、シート前後方向におけるクッション部30の全長に亘って配設されており、シート前方側では、車両下方側へ向けてシートパン部18の前部18Aの前方側に延出した形状とされており、シート後方側では、ロッド部22の後方側で車両後下方側に延出した形状となっている。メインパッド32には、エアバッグ44の上方からシート前後方向の中央部付近にかけて、車両下方側から凹状にえぐられるように切り欠かれた切欠部33が形成されている。
【0024】
切欠部33は、車両前方側に配設される前壁部33Aと、車両上方側に配設される上壁部33Bと、車両後方側に配設される後壁部33Cと、を備えている。切欠部33における前壁部33Aは、車両後上方に傾斜しており、前壁部33Aの下部における車両後方側には、折り畳み状態のエアバッグ44が近接配置されている。切欠部33における上壁部33Bは、折り畳み状態のエアバッグ44から所定距離離れており、車両下方側に向いた略水平面を備えている。切欠部33における後壁部33Cは、車両後下方に傾斜しており、着座センサ付きパッド34の上面位置まで延在している。また、前壁部33A側から上壁部33B側への中間部となる屈曲部33D、及び、上壁部33B側から後壁部33C側への中間部となる屈曲部33Eは、R状に形成されている。
【0025】
なお、メインパッド32において、切欠部33の上方部位は、乗員の膝部寄り部分を支持することになるので、車両下方側へ向けては比較的小さな荷重が作用する部位となっている。このため、切欠部33を支持する部材を配置しなくても、メインパッド32は、乗員着座状態において切欠部33の形状をほぼ維持することができる。
【0026】
着座センサ付きパッド34は、クッション部30の下部において、シート前後方向におけるクッション部30の中間部に配設されており、縦断面視で略シート前後方向に延在している。着座センサ付きパッド34における車両前方側の前部34Aは、メインパッド32の切欠部33における開口部の一部(車両後方側寄りの部分)を塞いでいる。
【0027】
クッション部30には、このようなメインパッド32の切欠部33と着座センサ付きパッド34の前部34Aとによってガイド手段としてのガイド凹部38が形成されており、このガイド凹部38は、エアバッグ44の上方から車両後方側へ向けて延びている。このガイド凹部38によって、エアバッグ44の展開用スペース39が確保されると共にエアバッグ44の展開する方向が制限されてエアバッグ44が車両後方側へ誘導されるようになっている。
【0028】
なお、クッション部30の表面には、布製等からなる表皮材40が接着されており、このようなシートクッション14(車両用シート10)は、接着シートと呼ばれることがある。本実施形態における着座センサ36を備えた接着シートは、メインパッド32と着座センサ付きパッド34とによって上下に分割される構造となっている。
【0029】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記の実施形態の作用及び効果を説明する。
【0030】
図1に示されるように、クッション部30には、メインパッド32と着座センサ付きパッド34とによって、エアバッグ44の上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部38が形成されているので、車両の衝突時にエアバッグ44が膨張して展開状態となる際には、図3に示されるように、エアバッグ44は、その上方から車両後方側へ向けてガイド凹部38に沿って、メインパッド32と着座センサ付きパッド34との間に入り込んで展開する。
【0031】
すなわち、図3(A)に示されるように、エアバッグ44の初期展開時には、エアバッグ44が展開用スペース39内でガイド凹部38における切欠部33に車両後方側(矢印A方向)へ誘導されて展開していく。ここで、エアバッグ44は、車両上方側へ向けての展開が切欠部33の上壁部33Bによって、車両前方側へ向けての展開が切欠部33の前壁部33Aによって、それぞれ制限(規制)されることで、エアバッグ44の展開方向が制限(規制)されることになり、エアバッグ44は、車両後方側へ向けて膨張していく。その結果、図3(B)に示されるように、エアバッグ44の完全展開時には、エアバッグ44は、メインパッド32と着座センサ付きパッド34との間に入り込んで展開形状が制限(規制)された状態で展開する(エアバッグ展開形状規制構造)。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シートクッション14によれば、上下に配置されるメインパッド32と着座センサ付きパッド34とを有効に利用してエアバッグ44の展開方向を安定させることができる。その結果として、エアバッグ装置42が安定した性能を発揮することが可能となるので、車両衝突時における乗員のサポート性が担保され、乗員がシートクッション14に潜り込むような姿勢となる所謂サブマリン現象の発生を抑制することができる。
【0033】
また、エアバッグ44の展開方向を安定化させることで、エアバッグ44の膨張力がクッション部30の特定箇所へ集中するという問題を回避でき、クッション部30の損傷を抑えることが可能となるため、修繕コストを低減できる。さらに、メインパッド32においては、切欠部33の形成のために切り欠いた部分の材料費を低減できる。さらにまた、エアバッグ44は、折り畳み形態で収納されるために、展開用スペース39を確保しやすい。
【0034】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、ガイド手段がガイド凹部38である場合について具体的に説明したが、ガイド手段は、例えば、上記実施形態におけるシートパン部18に取り付けられて前壁部33Aに替えて前壁部33Aの位置に配置するガイドプレートを一構成要素とするガイド機構(誘導機構)等のような他のガイド手段であってもよい。
【0035】
また、ガイド手段についての他の例として、例えば、シートクッションフレームの内部底面側に所定の曲面形状に形成された平面視で略矩形状のパネル材とされるシートパンを配置し、シートパンの四隅に引張コイルスプリングの下端部が係止されると共に引張コイルスプリングの上端部がシートクッションフレームに形成されるような車両用シートにおいては、シートパンの下方に所定間隔を置いてエアバッグ装置を配設し、シートパンの裏面をエアバッグ案内用のガイド面にすると共にその両サイドにガイド用の壁部を立設することによって、シートパンがエアバッグの展開する方向を制限してエアバッグを車両後方側へ誘導するガイド手段とされる構成としてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、クッション部30がメインパッド32と着座センサ付きパッド34との2個のパッドを備えた構成となっているが、クッション部は、1個のパッドで構成されても、3個以上のパッドで構成されてもよく、そのようなクッション部にエアバッグの上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部が形成されてもよい。
【0037】
さらに、上記実施形態では、切欠部33の裏面(車両下方側面)には何も被覆されていないが、エアバッグ44の展開時にメインパッド32の損傷を確実に抑えてさらなるエアバッグ性能の向上を図るために、切欠部33の裏面には、例えば、接着等によって不織布等のシート状部材を配設してもよい。
【0038】
さらにまた、上記実施形態では、ケースに入っていないエアバッグ装置42を用い、インフレータ46がシートパン部18の凹陥部18B内に収容されているが、ケース入りのエアバッグ装置をシートクッションフレームに取り付けて支持させてもよい。その場合、ケース上部に扉部がない形態であってもよいし、展開可能な扉部が設けられる形態であってもよい。
【0039】
なお、上記実施形態では、クッション部30の下部を構成する第2クッション部(着座センサ付きパッド34)における上面部に着座センサ36が取り付けられているが、例えば、着座センサは、クッション部の上部を構成する第1クッション部の下面部に取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートクッションを示す縦断面図である(図2の1−1線拡大断面図に相当する。)。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用シートクッションを示す平面図である(表皮材及びクッション部を透視した状態で示す。)。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用シートクッションのエアバッグ展開時の状態変化を示す縦断面図である(図3(A)、図3(B)の順で状態変化する。)。
【符号の説明】
【0041】
14 シートクッション(車両用シートクッション)
16 シートクッションフレーム
30 クッション部
32 メインパッド(第1クッション部)
34 着座センサ付きパッド(第2クッション部)
38 ガイド凹部(ガイド手段)
42 エアバッグ装置
44 エアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションフレームに支持され、車両の衝突時に膨張して展開状態となるエアバッグを備えたエアバッグ装置と、
前記シートクッションフレームに支持され、前記エアバッグの膨張力を下面側で受けるクッション部と、
前記エアバッグの展開する方向を制限して前記エアバッグを車両後方側へ誘導するガイド手段と、
を有することを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項2】
前記ガイド手段が、前記クッション部に形成されて前記エアバッグの上方から車両後方側へ向けて延びるガイド凹部であることを特徴とする請求項1記載の車両用シートクッション。
【請求項3】
前記クッション部が、該クッション部の上部を構成する第1クッション部と、該クッション部の下部を構成する第2クッション部と、を備えており、
前記ガイド凹部が、前記第1クッション部と前記第2クッション部とによって形成されることを特徴とする請求項2記載の車両用シートクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−62792(P2008−62792A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242757(P2006−242757)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】