車両用シートシステム
【課題】簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる車両用シートシステムを提供する。
【解決手段】後部シート5a,5bの下方には、スライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動自在なアッパーレール10と、後部シート5a,5b毎に個別に予め設定された回動軸心Oa,Obを中心として少なくとも互いに近接する方向に各後部シート5a,5bを揺動自在に支持する揺動機構20とが配設されている。
【解決手段】後部シート5a,5bの下方には、スライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動自在なアッパーレール10と、後部シート5a,5b毎に個別に予め設定された回動軸心Oa,Obを中心として少なくとも互いに近接する方向に各後部シート5a,5bを揺動自在に支持する揺動機構20とが配設されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向にスライド移動自在に構成された車両シートシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばミニバンと呼ばれる車両に搭載される後部シート(シート)は、室内居住性及び利便性を向上させるために、種々のシートアレンジを可能な構成となっている。例えば特許文献1に記載のシートシステムでは、3列目シートを収納可能とするとともに、2列目シートを3列目シート位置近傍まで後方移動可能としている。こうした2列目シートは室内フロアに敷設されたスライドレールに沿って前後動可能となっている。
【0003】
しかし、車両室内における後方部位には、後輪用ホイールハウスを突出形成する必要がある場合が多く、こうした場合、3列目シート部位の領域は2列目シート部位の領域に比べて車幅方向に狭くなってしまう。このため、2列目シートの後方移動時に、該2列目シートが後輪用ホイールハウスに干渉して十分に後方へ移動できないおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1では、車両前方側が車両外側方を向き、車両後方側が室内中心側を向くようにスライドレールが敷設されている。すなわち、スライドレールは平面視において車両前後方向に対して傾斜して配設されている。このため、2列目シートは、車両前方位置においては互いに離間して配置され、車両後方に移動されるに従って近接して配置される。そして、こうした前後方への2列目シートの移動時において、該シートが後輪用ホイールハウスに干渉しにくくなるため、2列目シートを十分に後方へ移動可能となる。
【特許文献1】特開2001−347858号公報(段落[0025]〜[0035]、図1、図2及び図4等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、後輪用ホイールハウスにシートが干渉しないようにするためには、車両前後方向に対するスライドレールの傾斜角を大きく設定したり、前方移動位置において2列目シート間の隙間を狭めたり、2列目シートの形状を変更したりするなど、非常に繊細な設計が必要となる。ところが、傾斜角を大きく設定した場合には、互いに干渉しない位置までしかシートを後方に移動できないため、移動範囲が狭くなる。これに対し、シート前方位置において両シート間の隙間を狭めた場合には、その隙間を3列目シートへの通路とするウォークスルーの機能性が低下してしまい、ユーザビリティの低下を招いてしまう。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる車両用シートシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、車両の室内フロアに敷設された車両前後方向に延びる複数のスライドレールと、車両幅方向に並設された一対のシートと、それらシートの下方に設けられ、前記スライドレールに沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレールに支承される前後移動機構と、前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シート毎に個別に予め設定された回動軸心を中心として少なくとも両シートが近接する方向に各シートを揺動自在に支持する揺動機構とを備えることをその要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、各シートは回動軸心を中心とした円弧軌跡で揺動自在となるため、該シートを後方に移動させる際に、シートを近接させる方向、すなわち車両室内側に揺動させることにより、車両室内に突出する後輪用ホイールハウスがシートに干渉しにくくなる。よって、各シートの前後方向への移動量を確保することができる。また、スライドレールを車両前後方向に対して必ずしも傾斜して配設する必要がなくなり、前方移動位置における両シート間の距離を確保しつつ、後方移動位置において両シートが干渉しにくくすることができる。しかも、各シートを対面する方向に揺動させれば、両シートに着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなるため、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用シートシステムにおいて、前記回動軸心をシートの前方位置または後方位置に設定したことをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、各シートの回動軸心を前方位置に設定した場合、シートの後方移動位置において各シートがやや室外方向を向いた状態となるため、該後方移動位置における乗員のパーソナルスペースを確保することができ、該シートに着座する乗員の快適性を向上可能となる。また、各シートの回動軸心を後方位置に設定した場合、シートの後方移動状態において各シートがやや室内方向を向いた状態となるため、隣席とのコミュニケーション性を向上可能となる。よって、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用シートシステムにおいて、前記揺動機構は、前記前後移動機構に固着され、前記回動軸心を中心とした同心円の円弧の一部をなす複数の揺動レールと、前記シートの下面側に固着され、前記各揺動レールに沿って前記シートを揺動自在な状態で対応する揺動レールにそれぞれ支承される複数の接続部とを備えていることをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、各シートは複数の揺動レールによって支承されるため、該シートの安定した揺動が可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、車両の室内フロアに敷設され、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びる一対のスライドレール構造体と、車両幅方向に並設された一対のシートと、それらシートの下方に設けられ、前記スライドレール構造体に沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレール構造体に支承される前後移動機構と、前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シートを個別に回転自在に支持する回転支持機能とともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向く位置で該シートを保持するシート保持機能を有するシート回転保持機構とを備えることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、スライドレール構造体は車両前方へ向かうほど互いに離間し、車両後方に向かうほど互いに近接するように室内フロアに敷設されているため、車両前方位置において両シートが離間し、車両後方位置において両シートが近接する。よって、シートの後方移動時に、車両室内に突出する後輪用ホイールハウスが該シートに干渉しにくくなる。しかも、回転保持機構により、各シートは、回転自在に支持されるとともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向いた状態で保持される。すなわち、シートの向き自体が移動方向に沿った向きで保持される。このため、シートの外側縁がスライド移動方向に沿った状態となり、該シートの後方移動時に該シートの外側縁が後輪用ホイールハウスにより干渉しにくくなる。よって、車両前方位置における両シート間の離間距離を確保しつつ、各シートの前後方向への移動量を確保することができ、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シート回転保持機構は、前記シートを車両室内方向に向けた位置でも保持自在であることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、両シートを車両室内方向に向けた位置で保持させることにより、各シートに着座する乗員同士は互いに向き合いやすくなる。このため、両シートに着座する乗員間のコミュニケーション性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項4または請求項5に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シート回転保持機構は、少なくとも車両乗降口と対応する位置に前記シートが移動された状態にあっては、該シートを該車両乗降口方向に保持することをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、シートを車両乗降口方向に回転保持させることができるため、該シートへの乗降性が向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シートが車両室内側に突出する後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において該シートの後方への移動を規制する移動規制手段を備え、該移動規制手段は、前記シートが前記後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動された際に、その回避移動に連動して規制状態を解除することをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、シートが後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制手段により、該後輪ホイールハウスに当接する前に該シートの後方への移動が規制される。このため、シートが後輪ホイールハウスに当接してしまうことによって生じるシートの損傷を確実に防止することができる。また、該シートが後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動されると、その回避移動に連動して移動規制手段による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、シートの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の車両用シートシステムにおいて、前記移動規制手段は、前記スライドレールに設けられた規制突部と、前記シート側に設けられ、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において前記規制突部に係合して該シートの車両後方への移動を規制するとともに、該シートの前記回避移動に連動して前記規制突部と非係合状態となる連動機構とを備え、前記連動機構は、前記シートの回避移動に従動して水平方向に回動する第1リンクと、その第1リンクの水平方向への回動に従動して垂直方向に回動する第2リンクとを有し、該第2リンクの先端が前記規制突部に係合・非係合となることにより、前記シートの車両方向への移動を規制・規制解除することをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、シートの回避移動に第1リンクと第2リンクとが連動し、シートが後輪ホイールハウスに干渉する状態においては第2リンクが規制突部に係合し、シートが後輪ホイールハウスに干渉しない状態においては第2リンクが規制突部に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制手段を適用することにより、シートの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明によれば、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、車両1の室内2における室内フロア3には、車両前方位置に運転席シート4a及び助手席シート4bからなる1列目シート4が車両幅方向に配設されている。また、該1列目シートよりも車両後方位置には第1後部シート5a及び第2後部シート5bからなる2列目シート5が並設され、該2列目シート5のさらに車両後方位置には第3後部シート6a及び第4後部シート6bからなる3列目シート6が並設されている。
【0026】
室内フロア3には、それぞれ車両前後方向に平行に延び、第1後部シート5aを車両前後方向に移動自在に支持する一対の第1スライドレール7と、第2後部シート5bを車両前後方向に移動自在に支持する一対の第2スライドレール8とが設けられている。これらスライドレール7,8は、両後部シート5a,5b間に十分な空間が設けられるような間隔をあけて設けられている。そして、図2に示すように、各後部シート5a,5bは、前後移動機構としてのアッパーレール10及び干渉回避機構としての揺動機構20を介して対応するスライドレール7,8に取着されている。
【0027】
詳しくは、アッパーレール10は、転動体11を介してスライドレール7,8に取着された台座12を有し、該転動体11がスライドレール7,8に対して転動することにより、台座12がスライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動可能となっている。
【0028】
スライドレール7,8には、所定の間隔で複数の係合孔7a,8aが透設されている。そして、台座12には、それら係合孔7a,8aのうちのいずれかと係合する係合部13が形成されている。このため、該係合孔7a,8aに対する係合部13の係合により、アッパーレール10の車両前後方向への移動が規制され、各後部シート5a,5bの位置決め固定が可能となる。
【0029】
また、台座12の車両前方側端には、図2に示す矢印A方向に傾動自在なスライド操作レバー14が形成され、該スライド操作レバー14が操作されると、図示しないリンク構造によって係合部13が係合孔7a,8aから離脱する方向に移動する。これにより、係合孔7a,8aに対する係合部13の係合状態が解除され、アッパーレール10を車両前後方向に移動可能となる。
【0030】
こうした台座12の上面における車両前方端及び車両後方端部には、それぞれ揺動機構20を構成する一対のロア揺動レール21が固着されている。これらロア揺動レール21は、図2に示すように、一端が台座12に固着され、断面曲線状をなす他端が上方へ延出する自由端となっている。該ロア揺動レール21の自由端は略逆U字状に湾曲した形状をなしている。また、図4(a),(b)に示すように、両ロア揺動レール21は、2列目シート5よりも車両前方位置(ここでは1列目シート4の配設領域内)に設定された揺動軸心Oa,Obを中心とした同心円の円弧と一致するように車両幅方向に延びた形状をなしている。
【0031】
そして、図2に示すように、第1ローラ22a及び第2ローラ22bを介して第1アッパー揺動レール23a及び第2アッパー揺動レール23bからなるアッパー揺動レール23がロア揺動レール21を挟むように取着されている。第1アッパー揺動レール23aは、各後部シート5a,5bの下面に固着された略平面板状物によって構成され、その車両前後端縁が下方に円弧状に湾曲された形状をなし、その湾曲部位とロア揺動レール21との間に第1ローラ22aが介在されている。第2アッパー揺動レール23bは、一端側が第1アッパー揺動レール23aに固着され、他端側が略S字状に湾曲された形状をなし、その他端とロア揺動レール21との間に第2ローラ22bが介在されている。
【0032】
このため、アッパー揺動レール23は、第1ローラ22a及び第2ローラ22bの転動により、ロア揺動レール21に対して揺動可能となる。すなわち、ロア揺動レール21及びアッパー揺動レール23は軸心Oa,Obを中心とした同心円の円弧軌跡で揺動可能となる。よって、図3及び図4に示すように、第1後部シート5a及び第2後部シート5bが車両幅方向に揺動可能となる。
【0033】
また、図2及び図3に示すように、車両前方側の第2アッパー揺動レール23bには、車両幅方向に延びる揺動規制レバー24が配設されている。図3(a),(b)に示すように、この揺動規制レバー24は、略中央部位が第2アッパー揺動レール23bに支承され、その支承部位を中心に水平方向に回動可能となっている。こうした揺動規制レバー24におけるシート内方端には、ロア揺動レール21及び第2アッパー揺動レール23bに設けられた図示しない係合孔に係合する係合突起24aが形成されている。該係合孔は、少なくとも対応する後部シート5a,5bが車両前方を向く位置(図3(a)参照)と、該後部シート5a,5bが車両内方に揺動された位置(図3(b)参照)とにおいて係合突起24aが係合可能となるように複数箇所に設けられている。また、揺動規制レバー24は、例えば第2アッパー揺動レール23bによる支承部位等に設けられた図示しない付勢部材により、係合突起24aが係合孔に係合する方向に常に付勢されている。このため、揺動規制レバー24が人為的に操作されることによって係合突起24aと係合孔との係合が解除された場合に、後部シート5a,5bの揺動が可能となる。
【0034】
さらに、図2及び図3に示すように、第1後部シート5a及び第2後部シート5bの下方には、該後部シート5a,5bの後方移動量を規制する移動規制機構30が配設されている。詳しくは、移動規制機構30は、スライドレール7,8に設けられた規制突部31と、第1後部シート5a及び第2後部シート5b側に設けられた連動機構32とを備えている。
【0035】
図2に示すように、規制突部31は、スライドレール7,8の底面において、車両前方側に急斜面、車両後方側に緩斜面を有する略山形状に形成されている。こうした規制突部31は、図3に示すように、各スライドレール7,8を構成する一対のレール部材のそれぞれに設けられている。
【0036】
また、連動機構32は、第1アッパー揺動レール23aの下面に設けられた連結プレート33と、台座12の上面に回動可能に支承された一対の第1リンク34,35と、該台座12の内側壁面に回動可能に支承された一対の第2リンク37とを備えている。
【0037】
図3に示すように、連結プレート33は、車両幅方向に延びる曲線棒形状をなし、下面側に長孔33aを有している。第1リンク34,35のうちの一方(ここでは第1リンク34)は、略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12の上面に回動可能に支承されている。このため、第1リンク34は、車両水平方向に回動可能となっている。こうした第1リンク34は、一端に設けられた連結ピン34aが連結プレート33の長孔33aに遊嵌されることにより該連結プレート33に連結されるとともに、他端が車両外側方に延びている。また、もう一方の第1リンク35は略棒状の板状物によって構成され、一端が台座12に回動可能に支承されている。このため、該第1リンク35も車両水平方向に回動可能となっている。こうした第1リンク35の他端は車両内側方に延びている。さらに、第1リンク34における台座12への支承部位の近傍には連動ケーブル36の一端が連結され、該連動ケーブル36の他端が他方の第1リンク35における台座12への支承部位の近傍に連結されている。これにより、一方の第1リンク34が回動すると、他方の第1リンク35が該第1リンク34とは逆方向に回動する。
【0038】
図3に示すように、第2リンク37は、スライドレール7,8の直上となる位置において、台座12の内側壁面にそれぞれ回動可能に支承されている。図2に示すように、第2リンク37は略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12に支承されている。そして、第2リンク37の上端37aが台座12の上方に突出して第1リンク34,35に当接するとともに、下端37bがスライドレール7,8の底面の直上に位置している。また、第2リンク37の支承部位にはコイルバネ等の付勢部材38が配設され、その付勢部材38によって該第2リンク37は、図2に示す時計回り方向に常に付勢されている。さらに、第2リンク37は、図3(a)に示すように、後部シート5a,5bが車両室内側に突出する後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該後部シート5a,5bが該後輪ホイールハウス1aに当接する位置よりも車両前方位置において、規制突部31と当接するように配設されている。なお、ここで後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、後部シート5a,5bが車両前方を向いた状態や、例えば図6に示すように後部シート5a,5bが車両室内方向を向いた状態を示す。
【0039】
よって、図3(a)に示すように、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で後部シート5b(5a)が車両後方に移動された場合には、該後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに当接する前に第2リンク37の下端37bが規制突部31に当接するため、該後部シート5b(5b)の車両前後方向への移動量が規制されることとなる。
【0040】
また、図3(b)及び図4(a)に示すように、車両室内側に揺動されて後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態となるように回避移動されると、後部シート5b(5a)と共に連結プレート33も移動する。このため、該後部シート5b(5a)の回避移動に連動して、第1リンク34の連結ピン34aが連結プレート33によって引っ張られ、該第1リンク34が同図に示す時計回り方向に回動する。それに伴い、連動ケーブル36を介して第1リンク35が同図に示す反時計回り方向に回動する。よって、第2リンク37が第1リンク34,35によって押圧され、図2に示す矢印B方向に第2リンク37が回動する。このため、該第2リンク37の下端37bが上方に移動し、第2リンク37と規制突部31との係合が解除される。すなわち、後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに干渉しない位置に回避移動されると、その回避移動に連動して該後部シート5b(5a)の車両後方への移動規制状態が解除される。それゆえ、図4(b)に示すように、後部シート5b(5a)の車両後方への更なる移動が可能となる。なお、同図に示すように、3列目シート6は室内フロア3の下面側に収納可能となっており、こうした3列目シートの収納状態において、2列目シート5を最後方位置まで移動可能となっている。
【0041】
そして、こうした2列目シート5の最後方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bが互いに離反する方向、すなわち車両外側方を向いた状態となる。このため、両後部シート5a,5b間の距離は近接するものの、それら後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員の脚同士が干渉しにくくなり、1列目シート4との間のスペースを有効に活用したパーソナルスペースを確保することができる。
【0042】
一方、図5に示すように、2列目シート5の車両前方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bを車両外側方向に揺動させることにより、両後部シート5a,5bを互いに向き合う方向に傾動させることができる。このため、後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションの向上を促すことができる。また、両後部シート5a,5b間は離間するため、該後部シート5a,5bに着座する乗員の脚同士が干渉してしまうことも抑止されるとともに、3列目シートへの移動通路も広く確保することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0044】
(1)2列目シート5を構成する各後部シート5a,5bは回動軸心Oa,Obを中心とした円弧軌跡で揺動自在となるため、該シート5a,5bを車両後方に移動させる際に、該後部シート5a,5bを近接させる方向、すなわち車両室内側に揺動させることにより、車両室内に突出する後輪用ホイールハウス1aがそれら後部シート5a,5bに干渉しにくくなる。よって、各後部シート5a,5bの前後方向への移動量を多く確保することができる。また、スライドレール7,8を車両前後方向に対して必ずしも傾斜して配設する必要がなくなり、前方移動位置における両後部シート5a,5b間の距離を確保しつつ、後方移動位置において両後部シート5a,5b同士の干渉を抑止することができる。しかも、各後部シート5a,5bを対面する方向に揺動させれば、両後部シート5a,5bに着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなるため、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0045】
(2)各後部シート5a,5bの回動軸心は、それら後部シート5a,5bの車両前方移動位置よりもさらに車両前方に設定されている。このため、該後部シート5a,5bの後方移動位置にあっては、各後部シート5a,5bがやや室外方向を向いた状態となる。よって、該後方移動位置において該後部シート5a,5bに着座する乗員のパーソナルスペースを広く確保することができ、該乗員の快適性を向上させることができる。
【0046】
(3)各後部シート5a,5bは一対の揺動レール(それぞれ一対をなすロア揺動レール21及びアッパー揺動レール23)によって支承されるため、該後部シート5a,5bを車両幅方向に安定して揺動させることができる。
【0047】
(4)各後部シート5a,5bは、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制機構30により、該後輪ホイールハウス1aに当接する前に後方への移動が規制される。このため、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに当接してしまうことによって生じる該後部シート5a,5bの損傷を確実に防止することができる。また、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に回避移動されると、その回避移動に連動して移動規制機構30による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、各後部シート5a,5bの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができるとともに、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに衝突してしまうのを確実に防止することができる。
【0048】
(5)各後部シート5a,5bの回避移動に第1リンク34,35と第2リンク37とが連動し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉する状態においては第2リンク37が規制突部31に係合し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態においては第2リンク37が規制突部31に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制機構30を適用することにより、後部シート5a,5bの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【0049】
なお、こうした第1実施形態は以下のように変更してもよい。
【0050】
・ 2列目シート5を構成する各後部シート5a,5bは、必ずしも車両前方に設定された軸心Oa,Obを中心とした回転軌跡で揺動するように設定されている必要はなく、例えば図6に示すように、各後部シート5a,5bよりも車両後方位置(ここでは3列目シート6の配設位置に設定された軸心Oc,Odを軸心とした回転軌跡で揺動するように設定されていてもよい。このようにすれば、図7(a)に示すように、車両最後方位置に移動させた状態において両後部シート5a,5bは、互いにやや向き合う状態となる。このため、該後方移動位置において両後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなる。また、図7(b)に示すように、後部シート5bの車両前方移動位置において、車両側部に設けられた乗降口1b方向に後部シート5bを揺動させることにより、該後部シート5bへの乗降容易化を図ることができる。よって、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0051】
・ 各後部シート5a,5bの回動中心は、前記軸心Oa,Obのように必ずしも個別に設定されている必要はなく、例えば両軸心Oa,Ob間を結ぶ直線の中間点など、一箇所に設定されていてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図8〜図13に基づいて説明する。
【0053】
図8に示すように、車両1の室内2における室内フロア3には、車両前方位置に運転席シート4a及び助手席シート4bからなる1列目シート4が車両幅方向に配設されている。また、該1列目シートよりも車両後方位置には第1後部シート5a及び第2後部シート5bからなる2列目シート5が並設され、該2列目シート5のさらに車両後方位置には第3後部シート6a及び第4後部シート6bからなる3列目シート6が並設されている。
【0054】
室内フロア3には、第1後部シート5aを車両前後方向に移動自在に支持するスライドレール構造体としての一対の第1スライドレール7と、第2後部シート5bを車両前後方向に移動自在に支持するスライドレール構造体としての一対の第2スライドレール8とが設けられている。これらスライドレール7,8は、それぞれ車両前後方向に対して斜めに延び、車両前方端が互いに離間し、車両後方端が互いに近接するように室内フロア3に配設されている。換言すれば、各スライドレール7,8は、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びるように室内フロア3に配設されている。その結果、図8に示す車両前方位置に各後部シート5a,5bが位置した状態にあっては、両後部シート5a,5b間に十分な空間が設けられる。
【0055】
図9に示すように、これら後部シート5a,5bは、前後移動機構としての前記アッパーレール10及び干渉回避機構としてのシート回転保持機構40を介して対応するスライドレール7,8に取着されている。詳しくは、アッパーレール10は、前記転動体11(ここでは図示略)を介してスライドレール7,8に取着された台座12を有し、該転動体11がスライドレール7,8に対して転動することにより、台座12がスライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動可能となっている。
【0056】
スライドレール7,8には、所定の間隔で複数の係合孔7a,8aが透設されている。そして、台座12には、それら係合孔7a,8aのうちのいずれかと係合する係合部13が形成されている。このため、該係合孔7a,8aに対する係合部13の係合により、アッパーレール10の車両前後方向への移動が規制され、各後部シート5a,5bの位置決め固定が可能となる。
【0057】
また、台座12の車両前方側端には、図9に示す矢印A方向に傾動自在なスライド操作レバー14が形成され、該スライド操作レバー14が操作されると、図示しないリンク構造によって係合部13が係合孔7a,8aから離脱する方向に移動する。これにより、係合孔7a,8aに対する係合部13の係合状態が解除され、アッパーレール10を車両前後方向に移動可能となる。
【0058】
そして、こうした台座12と各後部シート5a,5bとの間に、シート回転保持機構40が配設されている。図10に示すように、このシート回転保持機構40は、台座12に固定される環状のロアベース41と、後部シート5a,5bの下面に固定される環状の第1アッパーベース42と、該第1アッパーベース42にビス43を用いて固定される環状の第2アッパーベース44とを有している。
【0059】
第1アッパーベース42は上段に配置され、第2アッパーベース44は下段に配置され、ロアベース41は、それらアッパーベース42,44によって挟持された状態となっている。また、ロアベース41と第1アッパーベース42との間にはリング状の第1転動部材45が介在され、ロアベース41と第2アッパーベース44との間にはリング状の第2転動部材46が介在されている。このため、ロアベース41に対して両アッパーベース42,44が回動自在となっている。
【0060】
第2アッパーベース44には、ピン47及びスプリング48により、操作レバー49が第2アッパーベース44に対して回動自在に保持されている。操作レバー49にはロック爪49aが形成され、該スプリング48によって操作レバー49は、該ロック爪49aがロアベース41方向に付勢されるようになっている。詳しくは、ロアベース41の外周面には複数のロック孔50(第1ロック孔50a〜第4ロック孔50d)が所定間隔をあけて透設され、操作レバー49は、それらロック孔50a〜50dのうちの一つにロック爪49aが係合する方向に、スプリング48によって付勢されている。このため、各ロック孔50a〜50dのうちのいずれかがロック爪49aと対応する位置にあるときには、該ロック孔50a〜50dにロック爪49aが係合した状態となる。なお、本実施形態において第1ロック孔50aは、図1に示したように各後部シート5a,5bが車両前方方向を向いた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。また、第2ロック孔50bは、図12(a)に示すようにスライドレール7,8が延びる方向と同方向に各後部シート5a,5b(ここでは第2後部シート5b)を向けた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。また、第3ロック孔50cは、図13(a)に示すように車両前方方向よりも室内側に各後部シート5a,5bを向けた状態、すなわち両後部シート5a,5bが互いにやや向き合う状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。そして、第4ロック孔50dは、図13(b)に示すようにスライドレール7,8が延びる方向よりも車両外側方に各後部シート5a,5bを向けた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。
【0061】
また、第1後部シート5a及び第2後部シート5bの下方には、図11(a)に示すように、該後部シート5a,5bの後方移動量を規制する移動規制機構60が配設されている。詳しくは、移動規制機構60は、スライドレール7,8に設けられた規制突部61と、第1後部シート5a及び第2後部シート5b側に設けられた連動機構62とを備えている。なお、両後部シート5a,5bの下方には、左右対称ではあるものの同等構成の移動規制機構60が配設されている。そこで、ここでは第2後部シート5b側の移動規制機構60についてのみ説明する。また、図11(a)においては、アッパーレール10の図示を省略する。
【0062】
図11(b)に併せ示すように、規制突部61は、スライドレール8の底面において、車両前方側に急斜面、車両後方側に緩斜面を有する略山形状に形成されている。こうした規制突部31は、図11(a)に示すように、スライドレール8を構成する一対のレール部材のそれぞれに設けられている。
【0063】
連動機構62は、第1アッパーベース42の上面に設けられた平板状の連結プレート63と、その連結プレート63の長手方向において該第1アッパーベース42の回転中心Oに対して点対象となる位置に一端が接続された連動ケーブル64と、ロアベース41の下面側においてスライドレール8と近接する箇所に回動可能に支承されるとともに、連動ケーブル64の他端が接続された一対の第1リンク65と、前記台座12の内側壁面に回動可能に支承された一対の第2リンク66とを備えている。
【0064】
各第1リンク65は略「く」字状をなす板状物によって構成され、一端が回転規制機構40の内方、他端が回転規制機構40の外方を向くように、その屈曲部位がロアベース41の下面に回動可能に支承されている。このため、各第1リンク65は、車両水平方向に回動可能となっている。そして、これら第1リンク65における回転規制機構40の内方側端部に連動ケーブル64が接続されている。より詳しくは、車両1の外側方(図11における左方)の第1リンク65に接続された連動ケーブル64の他端は、第1アッパーベース42の回転中心Oよりも車両後方側に接続されている。また、車両1の内側方(図11における右方)の第1リンク65に接続された連動ケーブル64の他端は、該回転中心Oよりも車両前方側に接続されている。このため、第1アッパーベース42が図11に示す反時計回りに回転されると、連動ケーブル64が連結プレート63によって牽引され、各第1リンク65が、回転規制機構40の外方端が車両前方方向に移動するように回動することとなる。
【0065】
図11(b)に併せ示すように、第2リンク66は、スライドレール8の直上となる位置において、台座12の内側壁面にそれぞれ回動可能に支承されている。第2リンク66は略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12に支承されている。そして、第2リンク66の上端66aが台座12の上方に突出して第1リンク65に当接するとともに、下端66bがスライドレール8の底面の直上に位置している。また、第2リンク66の支承部位にはコイルバネ等の付勢部材67が配設され、その付勢部材67によって該第2リンク66は、図11(b)に示す時計回り方向に常に付勢されている。さらに、第2リンク66は、後部シート5bが車両室内側に突出する後輪ホイールハウス1a(図8等参照)に干渉する状態で車両後方に移動された際に、該後部シート5a,5bが該後輪ホイールハウス1aに当接する位置よりも車両前方位置において、規制突部61と当接するように配設されている。なお、ここで後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、図12(a)に示すように後部シート5aが車両前方を向いた状態や、例えば図13(a)に示すように後部シート5a,5bが車両室内方向を向いた状態等を示す。すなわち、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、例えば図12(a)に示すように、後輪ホイールハウス1aに干渉しない移動軌跡L1とならず、後輪ホイールハウス1aに干渉する移動軌跡L2となってしまう状態を示す。
【0066】
よって、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で後部シート5bが車両後方に移動された場合には、該後部シート5bが後輪ホイールハウス1aに当接する前に第2リンク37の下端37bが規制突部31に当接するため、該後部シート5bの車両前後方向への移動量が規制されることとなる。
【0067】
また、図12(a)に示すように、後部シート5bは、スライドレール8が延びる方向と平行方向となるように車両1の外側方に回転されると、図10に示した操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第2ロック孔50bに係合し、車両後方に移動しても後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に固定される。すなわち、後部シート5bは、車両前後方向への移動軌跡が前記移動軌跡L1となる回転角度で固定される。そして、こうした後部シート5bの回転に連動して連結プレート62が図11(a)に示す反時計方向に回転するとともに、連動ケーブル64が連結プレート63によって牽引され、各第1リンク65が、回転規制機構40の外方端が車両前方方向に移動するように回動する。このため、該第1リンク65の外方端が作用して各第2リンク66が図11(b)に示す反時計方向に回転し、該第2リンク66の下端66bが上方に移動し、第2リンク66と規制突部61との係合が解除される。すなわち、後部シート5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない位置に回転されると、その回避移動に連動して該後部シート5bの車両後方への移動規制状態が解除される。それゆえ、図12(b)に示すように、後部シート5b(5a)の車両後方への更なる移動が可能となる。なお、同図に示すように、3列目シート6は室内フロア3の下面側に収納可能となっており、こうした3列目シートの収納状態において、2列目シート5を最後方位置まで移動可能となっている。
【0068】
そして、こうした2列目シート5の最後方位置への移動状態にあっては、図12(b)に2点鎖線で示すように、両後部シート5a,5bが互いに離反する方向、すなわち車両外側方を向いた状態となる。このため、両後部シート5a,5b間の距離は近接するものの、それら後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員の脚同士が干渉しにくくなり、1列目シート4との間のスペースを有効に活用したパーソナルスペースを確保することができる。また、同図に実線で示すように、両後部シート5a,5bを車両前方に回転させることも可能となる。
【0069】
一方、図13(a)に示すように、2列目シート5の車両前方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bを車両内方向に回転させると、図10に示した操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第3ロック孔50cに係合する。このため、両後部シート5a,5bを互いにやや向き合う方向に位置させることができ、後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションの向上を促すことができる。また、車両前方位置において両後部シート5a,5b間は離間するため、該後部シート5a,5bに着座する乗員の脚同士が干渉してしまうことも抑止されるとともに、3列目シート6への移動通路も広く確保することができる。
【0070】
他方、図13(b)に示すように、後部シート5bの車両前方移動位置において、車両側部に設けられた乗降口1b方向に後部シート5bを回転させると、前記操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第4ロック孔50dに係合する。このため、該後部シート5bへの乗降容易化を図ることができ、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0071】
なお、第1後部シート5aについても、第2シート5bと同等の動作が可能であることから、同様の作用を奏する。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
(6)スライドレール構造体を構成する各スライドレール7,8は、車両前方へ向かうほど互いに離間し、車両後方に向かうほど互いに近接するように室内フロア3に敷設されているため、車両前方位置において第1後部シート5aと第2後部シート5bとが離間し、車両後方位置において両後部シート5a,5bが近接する。よって、両後部シート5a,5bの後方移動時に、室内フロア3に突出する後輪用ホイールハウス1aが該後部シート5a,5bに干渉しにくくなる。しかも、回転保持機構40により、各後部5a,5bシートは、回転自在に支持されるとともに、対応するスライドレール7,8が延びる方向と同方向を向いた状態で保持される。すなわち、各後部シート5a,5bの向き自体が移動方向に沿った向きで保持される。このため、各後部シート5a,5bの外側縁がスライド移動方向(車両前後移動方向)に沿った状態となり、該後部シート5a,5bの後方移動時に該後部シート5a,5bの外側縁が後輪用ホイールハウス1aに、より干渉しにくくすることができる。よって、車両前方位置における各後部シート5a,5b間の離間距離を確保しつつ、各後部シート5a,5bの前後方向への移動量を確保することができ、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0074】
(7)両後部シート5a,5bを車両室内方向に向けた位置で保持させることにより、各後部シート5a,5bに着座する乗員同士は互いに向き合いやすくなる。このため、両後部シート5a,5bに着座する乗員間のコミュニケーション性の向上を図ることができる。
【0075】
(8)両後部シート5a,5bを車両乗降口1b方向に回転保持させることができるため、該シートへの乗降性が向上する。
【0076】
(9)各後部シート5a,5bは、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制機構60により、該後輪ホイールハウス1aに当接する前に後方への移動が規制される。このため、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに当接してしまうことによって生じる該後部シート5a,5bの損傷を確実に防止することができる。また、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に回転されると、その回転動作に連動して移動規制機構60による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、各後部シート5a,5bの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができるとともに、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに衝突してしまうのを確実に防止することができる。
【0077】
(10)各後部シート5a,5bの回避移動に第1リンク65と第2リンク66とが連動し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉する状態においては第2リンク66が規制突部31に係合し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態においては第2リンク66が規制突部61に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制機構60を適用することにより、後部シート5a,5bの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【0078】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0079】
・ 第1実施形態において、各スライドレール7,8は、第2実施形態と同様に車両前後方向に対して斜めに延びるように構成されていてもよい。
【0080】
・ 第2実施形態において、ロアベース41に透設されるロック孔50は、前記第1ロック孔50a〜50dに限らず、例えば両後部シート5a,5bが互いに対向する回転位置でロック爪49aに係合する位置など、他の位置にも透設されていてもよい。
【0081】
・ 第1実施形態における移動規制機構30、及び第2実施形態における移動規制機構60は、必ずしも設けられている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用シートシステムを搭載した車両の室内を概略的に示す平面図。
【図2】同実施形態の車両用シートシステムの一部を概略的に示す側面図。
【図3】(a),(b)は、揺動機構及び移動規制機構の動作を概略的に示す平面図。
【図4】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図5】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図6】同実施形態の変更例を搭載した車両を概略的に示す平面図。
【図7】(a),(b)は、該変更例の動作の一例を概略的に示す平面図。
【図8】第2実施形態の車両用シートシステムを搭載した車両の室内を概略的に示す平面図。
【図9】同実施形態の車両用シートシステムの構造を示す分解斜視図。
【図10】同実施形態のシート回転保持機構を示す分解斜視図。
【図11】(a)は移動規制機構を概略的に示す平面図、(b)は(a)の矢印F方向からの矢視図。
【図12】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図13】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0083】
1…車両、1a…後輪ホイールハウス、2…室内、3…室内フロア、4…1列目シート、5…2列目シート、6…3列目シート、7,8…スライドレール(スライドレール構造体)、10…アッパーレール(前後移動機構)、20…揺動機構(干渉回避機構)、21…ロア揺動レール、23…アッパー揺動レール、24…揺動規制レバー、30,60…移動規制機構、31,61…規制突部、32,62…連動機構、33,63…連結プレート、34,35,65…第1リンク、36,64…連動ケーブル、37,66…第2リンク、38,67…付勢部材、40…シート回転保持機構(干渉回避機構)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向にスライド移動自在に構成された車両シートシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばミニバンと呼ばれる車両に搭載される後部シート(シート)は、室内居住性及び利便性を向上させるために、種々のシートアレンジを可能な構成となっている。例えば特許文献1に記載のシートシステムでは、3列目シートを収納可能とするとともに、2列目シートを3列目シート位置近傍まで後方移動可能としている。こうした2列目シートは室内フロアに敷設されたスライドレールに沿って前後動可能となっている。
【0003】
しかし、車両室内における後方部位には、後輪用ホイールハウスを突出形成する必要がある場合が多く、こうした場合、3列目シート部位の領域は2列目シート部位の領域に比べて車幅方向に狭くなってしまう。このため、2列目シートの後方移動時に、該2列目シートが後輪用ホイールハウスに干渉して十分に後方へ移動できないおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1では、車両前方側が車両外側方を向き、車両後方側が室内中心側を向くようにスライドレールが敷設されている。すなわち、スライドレールは平面視において車両前後方向に対して傾斜して配設されている。このため、2列目シートは、車両前方位置においては互いに離間して配置され、車両後方に移動されるに従って近接して配置される。そして、こうした前後方への2列目シートの移動時において、該シートが後輪用ホイールハウスに干渉しにくくなるため、2列目シートを十分に後方へ移動可能となる。
【特許文献1】特開2001−347858号公報(段落[0025]〜[0035]、図1、図2及び図4等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、後輪用ホイールハウスにシートが干渉しないようにするためには、車両前後方向に対するスライドレールの傾斜角を大きく設定したり、前方移動位置において2列目シート間の隙間を狭めたり、2列目シートの形状を変更したりするなど、非常に繊細な設計が必要となる。ところが、傾斜角を大きく設定した場合には、互いに干渉しない位置までしかシートを後方に移動できないため、移動範囲が狭くなる。これに対し、シート前方位置において両シート間の隙間を狭めた場合には、その隙間を3列目シートへの通路とするウォークスルーの機能性が低下してしまい、ユーザビリティの低下を招いてしまう。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる車両用シートシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、車両の室内フロアに敷設された車両前後方向に延びる複数のスライドレールと、車両幅方向に並設された一対のシートと、それらシートの下方に設けられ、前記スライドレールに沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレールに支承される前後移動機構と、前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シート毎に個別に予め設定された回動軸心を中心として少なくとも両シートが近接する方向に各シートを揺動自在に支持する揺動機構とを備えることをその要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、各シートは回動軸心を中心とした円弧軌跡で揺動自在となるため、該シートを後方に移動させる際に、シートを近接させる方向、すなわち車両室内側に揺動させることにより、車両室内に突出する後輪用ホイールハウスがシートに干渉しにくくなる。よって、各シートの前後方向への移動量を確保することができる。また、スライドレールを車両前後方向に対して必ずしも傾斜して配設する必要がなくなり、前方移動位置における両シート間の距離を確保しつつ、後方移動位置において両シートが干渉しにくくすることができる。しかも、各シートを対面する方向に揺動させれば、両シートに着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなるため、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用シートシステムにおいて、前記回動軸心をシートの前方位置または後方位置に設定したことをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、各シートの回動軸心を前方位置に設定した場合、シートの後方移動位置において各シートがやや室外方向を向いた状態となるため、該後方移動位置における乗員のパーソナルスペースを確保することができ、該シートに着座する乗員の快適性を向上可能となる。また、各シートの回動軸心を後方位置に設定した場合、シートの後方移動状態において各シートがやや室内方向を向いた状態となるため、隣席とのコミュニケーション性を向上可能となる。よって、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用シートシステムにおいて、前記揺動機構は、前記前後移動機構に固着され、前記回動軸心を中心とした同心円の円弧の一部をなす複数の揺動レールと、前記シートの下面側に固着され、前記各揺動レールに沿って前記シートを揺動自在な状態で対応する揺動レールにそれぞれ支承される複数の接続部とを備えていることをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、各シートは複数の揺動レールによって支承されるため、該シートの安定した揺動が可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、車両の室内フロアに敷設され、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びる一対のスライドレール構造体と、車両幅方向に並設された一対のシートと、それらシートの下方に設けられ、前記スライドレール構造体に沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレール構造体に支承される前後移動機構と、前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シートを個別に回転自在に支持する回転支持機能とともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向く位置で該シートを保持するシート保持機能を有するシート回転保持機構とを備えることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、スライドレール構造体は車両前方へ向かうほど互いに離間し、車両後方に向かうほど互いに近接するように室内フロアに敷設されているため、車両前方位置において両シートが離間し、車両後方位置において両シートが近接する。よって、シートの後方移動時に、車両室内に突出する後輪用ホイールハウスが該シートに干渉しにくくなる。しかも、回転保持機構により、各シートは、回転自在に支持されるとともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向いた状態で保持される。すなわち、シートの向き自体が移動方向に沿った向きで保持される。このため、シートの外側縁がスライド移動方向に沿った状態となり、該シートの後方移動時に該シートの外側縁が後輪用ホイールハウスにより干渉しにくくなる。よって、車両前方位置における両シート間の離間距離を確保しつつ、各シートの前後方向への移動量を確保することができ、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シート回転保持機構は、前記シートを車両室内方向に向けた位置でも保持自在であることをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、両シートを車両室内方向に向けた位置で保持させることにより、各シートに着座する乗員同士は互いに向き合いやすくなる。このため、両シートに着座する乗員間のコミュニケーション性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項4または請求項5に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シート回転保持機構は、少なくとも車両乗降口と対応する位置に前記シートが移動された状態にあっては、該シートを該車両乗降口方向に保持することをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、シートを車両乗降口方向に回転保持させることができるため、該シートへの乗降性が向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用シートシステムにおいて、前記シートが車両室内側に突出する後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において該シートの後方への移動を規制する移動規制手段を備え、該移動規制手段は、前記シートが前記後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動された際に、その回避移動に連動して規制状態を解除することをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、シートが後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制手段により、該後輪ホイールハウスに当接する前に該シートの後方への移動が規制される。このため、シートが後輪ホイールハウスに当接してしまうことによって生じるシートの損傷を確実に防止することができる。また、該シートが後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動されると、その回避移動に連動して移動規制手段による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、シートの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の車両用シートシステムにおいて、前記移動規制手段は、前記スライドレールに設けられた規制突部と、前記シート側に設けられ、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において前記規制突部に係合して該シートの車両後方への移動を規制するとともに、該シートの前記回避移動に連動して前記規制突部と非係合状態となる連動機構とを備え、前記連動機構は、前記シートの回避移動に従動して水平方向に回動する第1リンクと、その第1リンクの水平方向への回動に従動して垂直方向に回動する第2リンクとを有し、該第2リンクの先端が前記規制突部に係合・非係合となることにより、前記シートの車両方向への移動を規制・規制解除することをその要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、シートの回避移動に第1リンクと第2リンクとが連動し、シートが後輪ホイールハウスに干渉する状態においては第2リンクが規制突部に係合し、シートが後輪ホイールハウスに干渉しない状態においては第2リンクが規制突部に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制手段を適用することにより、シートの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明によれば、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、車両1の室内2における室内フロア3には、車両前方位置に運転席シート4a及び助手席シート4bからなる1列目シート4が車両幅方向に配設されている。また、該1列目シートよりも車両後方位置には第1後部シート5a及び第2後部シート5bからなる2列目シート5が並設され、該2列目シート5のさらに車両後方位置には第3後部シート6a及び第4後部シート6bからなる3列目シート6が並設されている。
【0026】
室内フロア3には、それぞれ車両前後方向に平行に延び、第1後部シート5aを車両前後方向に移動自在に支持する一対の第1スライドレール7と、第2後部シート5bを車両前後方向に移動自在に支持する一対の第2スライドレール8とが設けられている。これらスライドレール7,8は、両後部シート5a,5b間に十分な空間が設けられるような間隔をあけて設けられている。そして、図2に示すように、各後部シート5a,5bは、前後移動機構としてのアッパーレール10及び干渉回避機構としての揺動機構20を介して対応するスライドレール7,8に取着されている。
【0027】
詳しくは、アッパーレール10は、転動体11を介してスライドレール7,8に取着された台座12を有し、該転動体11がスライドレール7,8に対して転動することにより、台座12がスライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動可能となっている。
【0028】
スライドレール7,8には、所定の間隔で複数の係合孔7a,8aが透設されている。そして、台座12には、それら係合孔7a,8aのうちのいずれかと係合する係合部13が形成されている。このため、該係合孔7a,8aに対する係合部13の係合により、アッパーレール10の車両前後方向への移動が規制され、各後部シート5a,5bの位置決め固定が可能となる。
【0029】
また、台座12の車両前方側端には、図2に示す矢印A方向に傾動自在なスライド操作レバー14が形成され、該スライド操作レバー14が操作されると、図示しないリンク構造によって係合部13が係合孔7a,8aから離脱する方向に移動する。これにより、係合孔7a,8aに対する係合部13の係合状態が解除され、アッパーレール10を車両前後方向に移動可能となる。
【0030】
こうした台座12の上面における車両前方端及び車両後方端部には、それぞれ揺動機構20を構成する一対のロア揺動レール21が固着されている。これらロア揺動レール21は、図2に示すように、一端が台座12に固着され、断面曲線状をなす他端が上方へ延出する自由端となっている。該ロア揺動レール21の自由端は略逆U字状に湾曲した形状をなしている。また、図4(a),(b)に示すように、両ロア揺動レール21は、2列目シート5よりも車両前方位置(ここでは1列目シート4の配設領域内)に設定された揺動軸心Oa,Obを中心とした同心円の円弧と一致するように車両幅方向に延びた形状をなしている。
【0031】
そして、図2に示すように、第1ローラ22a及び第2ローラ22bを介して第1アッパー揺動レール23a及び第2アッパー揺動レール23bからなるアッパー揺動レール23がロア揺動レール21を挟むように取着されている。第1アッパー揺動レール23aは、各後部シート5a,5bの下面に固着された略平面板状物によって構成され、その車両前後端縁が下方に円弧状に湾曲された形状をなし、その湾曲部位とロア揺動レール21との間に第1ローラ22aが介在されている。第2アッパー揺動レール23bは、一端側が第1アッパー揺動レール23aに固着され、他端側が略S字状に湾曲された形状をなし、その他端とロア揺動レール21との間に第2ローラ22bが介在されている。
【0032】
このため、アッパー揺動レール23は、第1ローラ22a及び第2ローラ22bの転動により、ロア揺動レール21に対して揺動可能となる。すなわち、ロア揺動レール21及びアッパー揺動レール23は軸心Oa,Obを中心とした同心円の円弧軌跡で揺動可能となる。よって、図3及び図4に示すように、第1後部シート5a及び第2後部シート5bが車両幅方向に揺動可能となる。
【0033】
また、図2及び図3に示すように、車両前方側の第2アッパー揺動レール23bには、車両幅方向に延びる揺動規制レバー24が配設されている。図3(a),(b)に示すように、この揺動規制レバー24は、略中央部位が第2アッパー揺動レール23bに支承され、その支承部位を中心に水平方向に回動可能となっている。こうした揺動規制レバー24におけるシート内方端には、ロア揺動レール21及び第2アッパー揺動レール23bに設けられた図示しない係合孔に係合する係合突起24aが形成されている。該係合孔は、少なくとも対応する後部シート5a,5bが車両前方を向く位置(図3(a)参照)と、該後部シート5a,5bが車両内方に揺動された位置(図3(b)参照)とにおいて係合突起24aが係合可能となるように複数箇所に設けられている。また、揺動規制レバー24は、例えば第2アッパー揺動レール23bによる支承部位等に設けられた図示しない付勢部材により、係合突起24aが係合孔に係合する方向に常に付勢されている。このため、揺動規制レバー24が人為的に操作されることによって係合突起24aと係合孔との係合が解除された場合に、後部シート5a,5bの揺動が可能となる。
【0034】
さらに、図2及び図3に示すように、第1後部シート5a及び第2後部シート5bの下方には、該後部シート5a,5bの後方移動量を規制する移動規制機構30が配設されている。詳しくは、移動規制機構30は、スライドレール7,8に設けられた規制突部31と、第1後部シート5a及び第2後部シート5b側に設けられた連動機構32とを備えている。
【0035】
図2に示すように、規制突部31は、スライドレール7,8の底面において、車両前方側に急斜面、車両後方側に緩斜面を有する略山形状に形成されている。こうした規制突部31は、図3に示すように、各スライドレール7,8を構成する一対のレール部材のそれぞれに設けられている。
【0036】
また、連動機構32は、第1アッパー揺動レール23aの下面に設けられた連結プレート33と、台座12の上面に回動可能に支承された一対の第1リンク34,35と、該台座12の内側壁面に回動可能に支承された一対の第2リンク37とを備えている。
【0037】
図3に示すように、連結プレート33は、車両幅方向に延びる曲線棒形状をなし、下面側に長孔33aを有している。第1リンク34,35のうちの一方(ここでは第1リンク34)は、略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12の上面に回動可能に支承されている。このため、第1リンク34は、車両水平方向に回動可能となっている。こうした第1リンク34は、一端に設けられた連結ピン34aが連結プレート33の長孔33aに遊嵌されることにより該連結プレート33に連結されるとともに、他端が車両外側方に延びている。また、もう一方の第1リンク35は略棒状の板状物によって構成され、一端が台座12に回動可能に支承されている。このため、該第1リンク35も車両水平方向に回動可能となっている。こうした第1リンク35の他端は車両内側方に延びている。さらに、第1リンク34における台座12への支承部位の近傍には連動ケーブル36の一端が連結され、該連動ケーブル36の他端が他方の第1リンク35における台座12への支承部位の近傍に連結されている。これにより、一方の第1リンク34が回動すると、他方の第1リンク35が該第1リンク34とは逆方向に回動する。
【0038】
図3に示すように、第2リンク37は、スライドレール7,8の直上となる位置において、台座12の内側壁面にそれぞれ回動可能に支承されている。図2に示すように、第2リンク37は略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12に支承されている。そして、第2リンク37の上端37aが台座12の上方に突出して第1リンク34,35に当接するとともに、下端37bがスライドレール7,8の底面の直上に位置している。また、第2リンク37の支承部位にはコイルバネ等の付勢部材38が配設され、その付勢部材38によって該第2リンク37は、図2に示す時計回り方向に常に付勢されている。さらに、第2リンク37は、図3(a)に示すように、後部シート5a,5bが車両室内側に突出する後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該後部シート5a,5bが該後輪ホイールハウス1aに当接する位置よりも車両前方位置において、規制突部31と当接するように配設されている。なお、ここで後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、後部シート5a,5bが車両前方を向いた状態や、例えば図6に示すように後部シート5a,5bが車両室内方向を向いた状態を示す。
【0039】
よって、図3(a)に示すように、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で後部シート5b(5a)が車両後方に移動された場合には、該後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに当接する前に第2リンク37の下端37bが規制突部31に当接するため、該後部シート5b(5b)の車両前後方向への移動量が規制されることとなる。
【0040】
また、図3(b)及び図4(a)に示すように、車両室内側に揺動されて後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態となるように回避移動されると、後部シート5b(5a)と共に連結プレート33も移動する。このため、該後部シート5b(5a)の回避移動に連動して、第1リンク34の連結ピン34aが連結プレート33によって引っ張られ、該第1リンク34が同図に示す時計回り方向に回動する。それに伴い、連動ケーブル36を介して第1リンク35が同図に示す反時計回り方向に回動する。よって、第2リンク37が第1リンク34,35によって押圧され、図2に示す矢印B方向に第2リンク37が回動する。このため、該第2リンク37の下端37bが上方に移動し、第2リンク37と規制突部31との係合が解除される。すなわち、後部シート5b(5a)が後輪ホイールハウス1aに干渉しない位置に回避移動されると、その回避移動に連動して該後部シート5b(5a)の車両後方への移動規制状態が解除される。それゆえ、図4(b)に示すように、後部シート5b(5a)の車両後方への更なる移動が可能となる。なお、同図に示すように、3列目シート6は室内フロア3の下面側に収納可能となっており、こうした3列目シートの収納状態において、2列目シート5を最後方位置まで移動可能となっている。
【0041】
そして、こうした2列目シート5の最後方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bが互いに離反する方向、すなわち車両外側方を向いた状態となる。このため、両後部シート5a,5b間の距離は近接するものの、それら後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員の脚同士が干渉しにくくなり、1列目シート4との間のスペースを有効に活用したパーソナルスペースを確保することができる。
【0042】
一方、図5に示すように、2列目シート5の車両前方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bを車両外側方向に揺動させることにより、両後部シート5a,5bを互いに向き合う方向に傾動させることができる。このため、後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションの向上を促すことができる。また、両後部シート5a,5b間は離間するため、該後部シート5a,5bに着座する乗員の脚同士が干渉してしまうことも抑止されるとともに、3列目シートへの移動通路も広く確保することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0044】
(1)2列目シート5を構成する各後部シート5a,5bは回動軸心Oa,Obを中心とした円弧軌跡で揺動自在となるため、該シート5a,5bを車両後方に移動させる際に、該後部シート5a,5bを近接させる方向、すなわち車両室内側に揺動させることにより、車両室内に突出する後輪用ホイールハウス1aがそれら後部シート5a,5bに干渉しにくくなる。よって、各後部シート5a,5bの前後方向への移動量を多く確保することができる。また、スライドレール7,8を車両前後方向に対して必ずしも傾斜して配設する必要がなくなり、前方移動位置における両後部シート5a,5b間の距離を確保しつつ、後方移動位置において両後部シート5a,5b同士の干渉を抑止することができる。しかも、各後部シート5a,5bを対面する方向に揺動させれば、両後部シート5a,5bに着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなるため、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0045】
(2)各後部シート5a,5bの回動軸心は、それら後部シート5a,5bの車両前方移動位置よりもさらに車両前方に設定されている。このため、該後部シート5a,5bの後方移動位置にあっては、各後部シート5a,5bがやや室外方向を向いた状態となる。よって、該後方移動位置において該後部シート5a,5bに着座する乗員のパーソナルスペースを広く確保することができ、該乗員の快適性を向上させることができる。
【0046】
(3)各後部シート5a,5bは一対の揺動レール(それぞれ一対をなすロア揺動レール21及びアッパー揺動レール23)によって支承されるため、該後部シート5a,5bを車両幅方向に安定して揺動させることができる。
【0047】
(4)各後部シート5a,5bは、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制機構30により、該後輪ホイールハウス1aに当接する前に後方への移動が規制される。このため、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに当接してしまうことによって生じる該後部シート5a,5bの損傷を確実に防止することができる。また、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に回避移動されると、その回避移動に連動して移動規制機構30による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、各後部シート5a,5bの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができるとともに、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに衝突してしまうのを確実に防止することができる。
【0048】
(5)各後部シート5a,5bの回避移動に第1リンク34,35と第2リンク37とが連動し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉する状態においては第2リンク37が規制突部31に係合し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態においては第2リンク37が規制突部31に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制機構30を適用することにより、後部シート5a,5bの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【0049】
なお、こうした第1実施形態は以下のように変更してもよい。
【0050】
・ 2列目シート5を構成する各後部シート5a,5bは、必ずしも車両前方に設定された軸心Oa,Obを中心とした回転軌跡で揺動するように設定されている必要はなく、例えば図6に示すように、各後部シート5a,5bよりも車両後方位置(ここでは3列目シート6の配設位置に設定された軸心Oc,Odを軸心とした回転軌跡で揺動するように設定されていてもよい。このようにすれば、図7(a)に示すように、車両最後方位置に移動させた状態において両後部シート5a,5bは、互いにやや向き合う状態となる。このため、該後方移動位置において両後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションが図られやすくなる。また、図7(b)に示すように、後部シート5bの車両前方移動位置において、車両側部に設けられた乗降口1b方向に後部シート5bを揺動させることにより、該後部シート5bへの乗降容易化を図ることができる。よって、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0051】
・ 各後部シート5a,5bの回動中心は、前記軸心Oa,Obのように必ずしも個別に設定されている必要はなく、例えば両軸心Oa,Ob間を結ぶ直線の中間点など、一箇所に設定されていてもよい。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図8〜図13に基づいて説明する。
【0053】
図8に示すように、車両1の室内2における室内フロア3には、車両前方位置に運転席シート4a及び助手席シート4bからなる1列目シート4が車両幅方向に配設されている。また、該1列目シートよりも車両後方位置には第1後部シート5a及び第2後部シート5bからなる2列目シート5が並設され、該2列目シート5のさらに車両後方位置には第3後部シート6a及び第4後部シート6bからなる3列目シート6が並設されている。
【0054】
室内フロア3には、第1後部シート5aを車両前後方向に移動自在に支持するスライドレール構造体としての一対の第1スライドレール7と、第2後部シート5bを車両前後方向に移動自在に支持するスライドレール構造体としての一対の第2スライドレール8とが設けられている。これらスライドレール7,8は、それぞれ車両前後方向に対して斜めに延び、車両前方端が互いに離間し、車両後方端が互いに近接するように室内フロア3に配設されている。換言すれば、各スライドレール7,8は、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びるように室内フロア3に配設されている。その結果、図8に示す車両前方位置に各後部シート5a,5bが位置した状態にあっては、両後部シート5a,5b間に十分な空間が設けられる。
【0055】
図9に示すように、これら後部シート5a,5bは、前後移動機構としての前記アッパーレール10及び干渉回避機構としてのシート回転保持機構40を介して対応するスライドレール7,8に取着されている。詳しくは、アッパーレール10は、前記転動体11(ここでは図示略)を介してスライドレール7,8に取着された台座12を有し、該転動体11がスライドレール7,8に対して転動することにより、台座12がスライドレール7,8に沿って車両前後方向に移動可能となっている。
【0056】
スライドレール7,8には、所定の間隔で複数の係合孔7a,8aが透設されている。そして、台座12には、それら係合孔7a,8aのうちのいずれかと係合する係合部13が形成されている。このため、該係合孔7a,8aに対する係合部13の係合により、アッパーレール10の車両前後方向への移動が規制され、各後部シート5a,5bの位置決め固定が可能となる。
【0057】
また、台座12の車両前方側端には、図9に示す矢印A方向に傾動自在なスライド操作レバー14が形成され、該スライド操作レバー14が操作されると、図示しないリンク構造によって係合部13が係合孔7a,8aから離脱する方向に移動する。これにより、係合孔7a,8aに対する係合部13の係合状態が解除され、アッパーレール10を車両前後方向に移動可能となる。
【0058】
そして、こうした台座12と各後部シート5a,5bとの間に、シート回転保持機構40が配設されている。図10に示すように、このシート回転保持機構40は、台座12に固定される環状のロアベース41と、後部シート5a,5bの下面に固定される環状の第1アッパーベース42と、該第1アッパーベース42にビス43を用いて固定される環状の第2アッパーベース44とを有している。
【0059】
第1アッパーベース42は上段に配置され、第2アッパーベース44は下段に配置され、ロアベース41は、それらアッパーベース42,44によって挟持された状態となっている。また、ロアベース41と第1アッパーベース42との間にはリング状の第1転動部材45が介在され、ロアベース41と第2アッパーベース44との間にはリング状の第2転動部材46が介在されている。このため、ロアベース41に対して両アッパーベース42,44が回動自在となっている。
【0060】
第2アッパーベース44には、ピン47及びスプリング48により、操作レバー49が第2アッパーベース44に対して回動自在に保持されている。操作レバー49にはロック爪49aが形成され、該スプリング48によって操作レバー49は、該ロック爪49aがロアベース41方向に付勢されるようになっている。詳しくは、ロアベース41の外周面には複数のロック孔50(第1ロック孔50a〜第4ロック孔50d)が所定間隔をあけて透設され、操作レバー49は、それらロック孔50a〜50dのうちの一つにロック爪49aが係合する方向に、スプリング48によって付勢されている。このため、各ロック孔50a〜50dのうちのいずれかがロック爪49aと対応する位置にあるときには、該ロック孔50a〜50dにロック爪49aが係合した状態となる。なお、本実施形態において第1ロック孔50aは、図1に示したように各後部シート5a,5bが車両前方方向を向いた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。また、第2ロック孔50bは、図12(a)に示すようにスライドレール7,8が延びる方向と同方向に各後部シート5a,5b(ここでは第2後部シート5b)を向けた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。また、第3ロック孔50cは、図13(a)に示すように車両前方方向よりも室内側に各後部シート5a,5bを向けた状態、すなわち両後部シート5a,5bが互いにやや向き合う状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。そして、第4ロック孔50dは、図13(b)に示すようにスライドレール7,8が延びる方向よりも車両外側方に各後部シート5a,5bを向けた状態において、ロック爪49aと対応するように透設されている。
【0061】
また、第1後部シート5a及び第2後部シート5bの下方には、図11(a)に示すように、該後部シート5a,5bの後方移動量を規制する移動規制機構60が配設されている。詳しくは、移動規制機構60は、スライドレール7,8に設けられた規制突部61と、第1後部シート5a及び第2後部シート5b側に設けられた連動機構62とを備えている。なお、両後部シート5a,5bの下方には、左右対称ではあるものの同等構成の移動規制機構60が配設されている。そこで、ここでは第2後部シート5b側の移動規制機構60についてのみ説明する。また、図11(a)においては、アッパーレール10の図示を省略する。
【0062】
図11(b)に併せ示すように、規制突部61は、スライドレール8の底面において、車両前方側に急斜面、車両後方側に緩斜面を有する略山形状に形成されている。こうした規制突部31は、図11(a)に示すように、スライドレール8を構成する一対のレール部材のそれぞれに設けられている。
【0063】
連動機構62は、第1アッパーベース42の上面に設けられた平板状の連結プレート63と、その連結プレート63の長手方向において該第1アッパーベース42の回転中心Oに対して点対象となる位置に一端が接続された連動ケーブル64と、ロアベース41の下面側においてスライドレール8と近接する箇所に回動可能に支承されるとともに、連動ケーブル64の他端が接続された一対の第1リンク65と、前記台座12の内側壁面に回動可能に支承された一対の第2リンク66とを備えている。
【0064】
各第1リンク65は略「く」字状をなす板状物によって構成され、一端が回転規制機構40の内方、他端が回転規制機構40の外方を向くように、その屈曲部位がロアベース41の下面に回動可能に支承されている。このため、各第1リンク65は、車両水平方向に回動可能となっている。そして、これら第1リンク65における回転規制機構40の内方側端部に連動ケーブル64が接続されている。より詳しくは、車両1の外側方(図11における左方)の第1リンク65に接続された連動ケーブル64の他端は、第1アッパーベース42の回転中心Oよりも車両後方側に接続されている。また、車両1の内側方(図11における右方)の第1リンク65に接続された連動ケーブル64の他端は、該回転中心Oよりも車両前方側に接続されている。このため、第1アッパーベース42が図11に示す反時計回りに回転されると、連動ケーブル64が連結プレート63によって牽引され、各第1リンク65が、回転規制機構40の外方端が車両前方方向に移動するように回動することとなる。
【0065】
図11(b)に併せ示すように、第2リンク66は、スライドレール8の直上となる位置において、台座12の内側壁面にそれぞれ回動可能に支承されている。第2リンク66は略「く」字状をなす板状物によって構成され、その屈曲部位が台座12に支承されている。そして、第2リンク66の上端66aが台座12の上方に突出して第1リンク65に当接するとともに、下端66bがスライドレール8の底面の直上に位置している。また、第2リンク66の支承部位にはコイルバネ等の付勢部材67が配設され、その付勢部材67によって該第2リンク66は、図11(b)に示す時計回り方向に常に付勢されている。さらに、第2リンク66は、後部シート5bが車両室内側に突出する後輪ホイールハウス1a(図8等参照)に干渉する状態で車両後方に移動された際に、該後部シート5a,5bが該後輪ホイールハウス1aに当接する位置よりも車両前方位置において、規制突部61と当接するように配設されている。なお、ここで後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、図12(a)に示すように後部シート5aが車両前方を向いた状態や、例えば図13(a)に示すように後部シート5a,5bが車両室内方向を向いた状態等を示す。すなわち、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態とは、例えば図12(a)に示すように、後輪ホイールハウス1aに干渉しない移動軌跡L1とならず、後輪ホイールハウス1aに干渉する移動軌跡L2となってしまう状態を示す。
【0066】
よって、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で後部シート5bが車両後方に移動された場合には、該後部シート5bが後輪ホイールハウス1aに当接する前に第2リンク37の下端37bが規制突部31に当接するため、該後部シート5bの車両前後方向への移動量が規制されることとなる。
【0067】
また、図12(a)に示すように、後部シート5bは、スライドレール8が延びる方向と平行方向となるように車両1の外側方に回転されると、図10に示した操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第2ロック孔50bに係合し、車両後方に移動しても後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に固定される。すなわち、後部シート5bは、車両前後方向への移動軌跡が前記移動軌跡L1となる回転角度で固定される。そして、こうした後部シート5bの回転に連動して連結プレート62が図11(a)に示す反時計方向に回転するとともに、連動ケーブル64が連結プレート63によって牽引され、各第1リンク65が、回転規制機構40の外方端が車両前方方向に移動するように回動する。このため、該第1リンク65の外方端が作用して各第2リンク66が図11(b)に示す反時計方向に回転し、該第2リンク66の下端66bが上方に移動し、第2リンク66と規制突部61との係合が解除される。すなわち、後部シート5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない位置に回転されると、その回避移動に連動して該後部シート5bの車両後方への移動規制状態が解除される。それゆえ、図12(b)に示すように、後部シート5b(5a)の車両後方への更なる移動が可能となる。なお、同図に示すように、3列目シート6は室内フロア3の下面側に収納可能となっており、こうした3列目シートの収納状態において、2列目シート5を最後方位置まで移動可能となっている。
【0068】
そして、こうした2列目シート5の最後方位置への移動状態にあっては、図12(b)に2点鎖線で示すように、両後部シート5a,5bが互いに離反する方向、すなわち車両外側方を向いた状態となる。このため、両後部シート5a,5b間の距離は近接するものの、それら後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員の脚同士が干渉しにくくなり、1列目シート4との間のスペースを有効に活用したパーソナルスペースを確保することができる。また、同図に実線で示すように、両後部シート5a,5bを車両前方に回転させることも可能となる。
【0069】
一方、図13(a)に示すように、2列目シート5の車両前方位置への移動状態にあっては、両後部シート5a,5bを車両内方向に回転させると、図10に示した操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第3ロック孔50cに係合する。このため、両後部シート5a,5bを互いにやや向き合う方向に位置させることができ、後部シート5a,5bにそれぞれ着座する乗員間のコミュニケーションの向上を促すことができる。また、車両前方位置において両後部シート5a,5b間は離間するため、該後部シート5a,5bに着座する乗員の脚同士が干渉してしまうことも抑止されるとともに、3列目シート6への移動通路も広く確保することができる。
【0070】
他方、図13(b)に示すように、後部シート5bの車両前方移動位置において、車両側部に設けられた乗降口1b方向に後部シート5bを回転させると、前記操作レバー49のロック爪49aが、前記ロアベース41に透設された第4ロック孔50dに係合する。このため、該後部シート5bへの乗降容易化を図ることができ、ユーザビリティの更なる向上を図ることができる。
【0071】
なお、第1後部シート5aについても、第2シート5bと同等の動作が可能であることから、同様の作用を奏する。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0073】
(6)スライドレール構造体を構成する各スライドレール7,8は、車両前方へ向かうほど互いに離間し、車両後方に向かうほど互いに近接するように室内フロア3に敷設されているため、車両前方位置において第1後部シート5aと第2後部シート5bとが離間し、車両後方位置において両後部シート5a,5bが近接する。よって、両後部シート5a,5bの後方移動時に、室内フロア3に突出する後輪用ホイールハウス1aが該後部シート5a,5bに干渉しにくくなる。しかも、回転保持機構40により、各後部5a,5bシートは、回転自在に支持されるとともに、対応するスライドレール7,8が延びる方向と同方向を向いた状態で保持される。すなわち、各後部シート5a,5bの向き自体が移動方向に沿った向きで保持される。このため、各後部シート5a,5bの外側縁がスライド移動方向(車両前後移動方向)に沿った状態となり、該後部シート5a,5bの後方移動時に該後部シート5a,5bの外側縁が後輪用ホイールハウス1aに、より干渉しにくくすることができる。よって、車両前方位置における各後部シート5a,5b間の離間距離を確保しつつ、各後部シート5a,5bの前後方向への移動量を確保することができ、簡素な構造でユーザビリティの高いシートアレンジを実現することができる。
【0074】
(7)両後部シート5a,5bを車両室内方向に向けた位置で保持させることにより、各後部シート5a,5bに着座する乗員同士は互いに向き合いやすくなる。このため、両後部シート5a,5bに着座する乗員間のコミュニケーション性の向上を図ることができる。
【0075】
(8)両後部シート5a,5bを車両乗降口1b方向に回転保持させることができるため、該シートへの乗降性が向上する。
【0076】
(9)各後部シート5a,5bは、後輪ホイールハウス1aに干渉する状態で車両後方に移動されると、移動規制機構60により、該後輪ホイールハウス1aに当接する前に後方への移動が規制される。このため、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに当接してしまうことによって生じる該後部シート5a,5bの損傷を確実に防止することができる。また、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態に回転されると、その回転動作に連動して移動規制機構60による車両後方への移動規制状態が解除される。このため、各後部シート5a,5bの移動量を確保することができ、ユーザビリティの高いシートアレンジを確保することができるとともに、各後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに衝突してしまうのを確実に防止することができる。
【0077】
(10)各後部シート5a,5bの回避移動に第1リンク65と第2リンク66とが連動し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉する状態においては第2リンク66が規制突部31に係合し、該後部シート5a,5bが後輪ホイールハウス1aに干渉しない状態においては第2リンク66が規制突部61に係合しなくなる。このため、こうしたメカニカルな移動規制機構60を適用することにより、後部シート5a,5bの車両後方への移動を確実に規制・規制解除させることができる。
【0078】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0079】
・ 第1実施形態において、各スライドレール7,8は、第2実施形態と同様に車両前後方向に対して斜めに延びるように構成されていてもよい。
【0080】
・ 第2実施形態において、ロアベース41に透設されるロック孔50は、前記第1ロック孔50a〜50dに限らず、例えば両後部シート5a,5bが互いに対向する回転位置でロック爪49aに係合する位置など、他の位置にも透設されていてもよい。
【0081】
・ 第1実施形態における移動規制機構30、及び第2実施形態における移動規制機構60は、必ずしも設けられている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用シートシステムを搭載した車両の室内を概略的に示す平面図。
【図2】同実施形態の車両用シートシステムの一部を概略的に示す側面図。
【図3】(a),(b)は、揺動機構及び移動規制機構の動作を概略的に示す平面図。
【図4】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図5】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図6】同実施形態の変更例を搭載した車両を概略的に示す平面図。
【図7】(a),(b)は、該変更例の動作の一例を概略的に示す平面図。
【図8】第2実施形態の車両用シートシステムを搭載した車両の室内を概略的に示す平面図。
【図9】同実施形態の車両用シートシステムの構造を示す分解斜視図。
【図10】同実施形態のシート回転保持機構を示す分解斜視図。
【図11】(a)は移動規制機構を概略的に示す平面図、(b)は(a)の矢印F方向からの矢視図。
【図12】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【図13】(a),(b)は、同実施形態の車両用シートシステムの動作の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0083】
1…車両、1a…後輪ホイールハウス、2…室内、3…室内フロア、4…1列目シート、5…2列目シート、6…3列目シート、7,8…スライドレール(スライドレール構造体)、10…アッパーレール(前後移動機構)、20…揺動機構(干渉回避機構)、21…ロア揺動レール、23…アッパー揺動レール、24…揺動規制レバー、30,60…移動規制機構、31,61…規制突部、32,62…連動機構、33,63…連結プレート、34,35,65…第1リンク、36,64…連動ケーブル、37,66…第2リンク、38,67…付勢部材、40…シート回転保持機構(干渉回避機構)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内フロアに敷設された車両前後方向に延びる複数のスライドレールと、
車両幅方向に並設された一対のシートと、
それらシートの下方に設けられ、前記スライドレールに沿って該シートを車両前後方向に移動自在な状態で該スライドレールに支承される前後移動機構と、
前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シート毎に個別に予め設定された回動軸心を中心として少なくとも両シートが近接する方向に各シートを揺動自在に支持する揺動機構とを備えることを特徴とする車両用シートシステム。
【請求項2】
前記回動軸心をシートの前方位置または後方位置に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートシステム。
【請求項3】
前記揺動機構は、
前記前後移動機構に固着され、前記回動軸心を中心とした同心円の円弧の一部をなす複数の揺動レールと、
前記シートの下面側に固着され、前記各揺動レールに沿って前記シートを揺動自在な状態で対応する揺動レールにそれぞれ支承される複数の接続部とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用シートシステム。
【請求項4】
車両の室内フロアに敷設され、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びる一対のスライドレール構造体と、
車両幅方向に並設された一対のシートと、
それらシートの下方に設けられ、前記スライドレール構造体に沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレール構造体に支承される前後移動機構と、
前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シートを個別に回転自在に支持する回転支持機能とともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向く位置で該シートを保持するシート保持機能を有するシート回転保持機構とを備えることを特徴とする車両用シートシステム。
【請求項5】
前記シート回転保持機構は、前記シートを車両室内方向に向けた位置でも保持自在であることを特徴とする請求項4に記載の車両用シートシステム。
【請求項6】
前記シート回転保持機構は、少なくとも車両乗降口と対応する位置に前記シートが移動された状態にあっては、該シートを該車両乗降口方向に保持することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用シートシステム。
【請求項7】
前記シートが車両室内側に突出する後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において該シートの後方への移動を規制する移動規制手段を備え、
該移動規制手段は、前記シートが前記後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動された際に、その回避移動に連動して規制状態を解除することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用シートシステム。
【請求項8】
前記移動規制手段は、前記スライドレールに設けられた規制突部と、前記シート側に設けられ、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において前記規制突部に係合して該シートの車両後方への移動を規制するとともに、該シートの前記回避移動に連動して前記規制突部と非係合状態となる連動機構とを備え、
前記連動機構は、前記シートの回避移動に従動して水平方向に回動する第1リンクと、その第1リンクの水平方向への回動に従動して垂直方向に回動する第2リンクとを有し、該第2リンクの先端が前記規制突部に係合・非係合となることにより、前記シートの車両方向への移動を規制・規制解除することを特徴とする請求項7に記載の車両用シートシステム。
【請求項1】
車両の室内フロアに敷設された車両前後方向に延びる複数のスライドレールと、
車両幅方向に並設された一対のシートと、
それらシートの下方に設けられ、前記スライドレールに沿って該シートを車両前後方向に移動自在な状態で該スライドレールに支承される前後移動機構と、
前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シート毎に個別に予め設定された回動軸心を中心として少なくとも両シートが近接する方向に各シートを揺動自在に支持する揺動機構とを備えることを特徴とする車両用シートシステム。
【請求項2】
前記回動軸心をシートの前方位置または後方位置に設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートシステム。
【請求項3】
前記揺動機構は、
前記前後移動機構に固着され、前記回動軸心を中心とした同心円の円弧の一部をなす複数の揺動レールと、
前記シートの下面側に固着され、前記各揺動レールに沿って前記シートを揺動自在な状態で対応する揺動レールにそれぞれ支承される複数の接続部とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用シートシステム。
【請求項4】
車両の室内フロアに敷設され、車両前後方向における前端が車両外側方に拡散、後端が車両中心に収束する方向に延びる一対のスライドレール構造体と、
車両幅方向に並設された一対のシートと、
それらシートの下方に設けられ、前記スライドレール構造体に沿って該シートを移動自在な状態で該スライドレール構造体に支承される前後移動機構と、
前記シートと前記前後移動機構との間において、前記シートを個別に回転自在に支持する回転支持機能とともに、対応するスライドレール構造体が延びる方向と同方向を向く位置で該シートを保持するシート保持機能を有するシート回転保持機構とを備えることを特徴とする車両用シートシステム。
【請求項5】
前記シート回転保持機構は、前記シートを車両室内方向に向けた位置でも保持自在であることを特徴とする請求項4に記載の車両用シートシステム。
【請求項6】
前記シート回転保持機構は、少なくとも車両乗降口と対応する位置に前記シートが移動された状態にあっては、該シートを該車両乗降口方向に保持することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用シートシステム。
【請求項7】
前記シートが車両室内側に突出する後輪ホイールハウスに干渉する状態で車両後方に移動された際に、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において該シートの後方への移動を規制する移動規制手段を備え、
該移動規制手段は、前記シートが前記後輪ホイールハウスに干渉しない状態に回避移動された際に、その回避移動に連動して規制状態を解除することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用シートシステム。
【請求項8】
前記移動規制手段は、前記スライドレールに設けられた規制突部と、前記シート側に設けられ、該シートが前記後輪ホイールハウスに当接する位置よりも車両前方位置において前記規制突部に係合して該シートの車両後方への移動を規制するとともに、該シートの前記回避移動に連動して前記規制突部と非係合状態となる連動機構とを備え、
前記連動機構は、前記シートの回避移動に従動して水平方向に回動する第1リンクと、その第1リンクの水平方向への回動に従動して垂直方向に回動する第2リンクとを有し、該第2リンクの先端が前記規制突部に係合・非係合となることにより、前記シートの車両方向への移動を規制・規制解除することを特徴とする請求項7に記載の車両用シートシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−290625(P2008−290625A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139410(P2007−139410)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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