説明

車両用シート

【課題】可動式のヘッドレストを有する車両用シートにおいて、再利用性に優れ、且つ、簡易な構造を有する車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートには、ヘッドレスト31が前方に移動可能なように、該ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持フレーム21がシートバックフレーム11に回動可能に支持されている。車両用シートは、シートバックフレームの上部及びヘッドレスト支持フレームの間で、該シートバックフレームに移動可能に支持された楔形のカム部材33と、カム部材に一端37aが連結され、シートバックフレームの下部に他端37bが連結されたワイヤ37とを備える。車両後突時の乗員の上半身の後方移動によりワイヤが引っ張られ、カム部材が移動して、ヘッドレストが前方に移動するようにヘッドレスト支持フレームが回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式のヘッドレストを有する車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、車両後突時の乗員の安全性を向上させるため、衝撃等に基づきヘッドレストを前方に移動させ、乗員の頭部を後側から支えるものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両用シートでは、シートバック(3)の上部の横方向に延びるアッパフレーム部(6)に、該アッパフレーム部に沿う駆動力を発生するアクチュエータユニット(16)を取り付けている。この場合、後突検知用のセンサ(23)により所定値を超える衝撃が検出されると、これに基づき発生されるアクチュエータユニットの駆動力がカム部材(28)に伝達され、該カム部材に押圧されるヘッドレスト支持フレーム(8)が回動する。これにより、ヘッドレスト支持フレームに支持されたヘッドレストが乗員の頭部に接近すべく前方に移動して、該頭部を後側から支える。
【0004】
また、特許文献2に記載された車両用シートでは、ヘッドレスト(6)を支持するためのヘッドレスト支持フレーム(8)をその中間部においてシートバックフレーム(2)に回動可能に支持し、且つ、該ヘッドレスト支持フレームの下端部に乗員の後方移動を受ける受圧部材(10)を設けている。この場合、車両後突時に乗員の上半身が後方移動すると、受圧部材が後方に向けて強く押圧され、ヘッドレスト支持フレームがその回動軸周りに後方に回動する。これにより、ヘッドレストが乗員の頭部に接近すべく前方に移動して、該頭部を後側から支える。また、この車両用シートでは、ヘッドレストの作動後のヘッドレスト支持フレームの戻り回動を防止するためにラチェット機構(14)を設けることが提案されている。
【特許文献1】特開2004−50924号公報
【特許文献2】特開2002−274240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、後突検知用のセンサを設け、該センサの検出信号に基づいてアクチュエータユニットにより駆動力を発生しヘッドレストを作動させることになるため、複雑なシステムを構成する必要があり、製造コストの増大を余儀なくされる。
【0006】
加えて、アッパフレーム部近傍の限られたスペースに搭載可能であり、且つ、瞬間的に十分な駆動力を発生し得るアクチュエータユニットとしては、現状の技術常識から考えて火薬式のものを採用せざるを得ない。この場合、ヘッドレストの作動の都度にアクチュエータユニット(点火部)を交換しなければならず、例えば軽度な車両後突時の場合も含めると、利用者の費用負担が大きくなってしまう。一方、ヘッドレストの作動の感度を下げてヘッドレストの作動頻度を低減することも考えられるが、軽度な車両後突時であっても鞭打ちが発生し得ることを考えれば現実的ではない。
【0007】
また、特許文献2では、ヘッドレスト支持フレームをその回動軸周りに回動させる簡易な機構を採用しているため、車両後突時以外であっても、車両急加速時や乗員のひざつき動作などでヘッドレストが動いてしまい、煩わしい。また、このような煩わしさを回避するため、こうした車両用シートでは、受圧部材を乗員から予め遠ざけておくことが主流になっているが、この場合には、実際の車両後突時のヘッドレストの反応速度が低下してしまい、鞭打ち低減効果が損なわれる可能性がある。また、戻り回動防止用のラチェット機構は、その回動規制を解除するための操作レバー(22)を備えるため、その突出分だけ車両用シートの見栄えが損なわれてしまう。
【0008】
本発明の目的は、可動式のヘッドレストを有する車両用シートにおいて、再利用性に優れ、且つ、簡易な構造を有する車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ヘッドレストが前方に移動可能なように、該ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持フレームがシートバックフレームに移動可能に支持されてなる車両用シートにおいて、前記シートバックフレームの上部及び前記ヘッドレスト支持フレームの間で、該シートバックフレームに移動可能に支持され、一側方向に移動することで前記シートバックフレームの上部及び前記ヘッドレスト支持フレームの間の相対距離が増加するようにこれらシートバックフレームの上部及びヘッドレスト支持フレームと係合する楔形のカム部材と、前記カム部材に一端が連結され、前記シートバックフレームの中間部又は下部に他端が連結されたワイヤとを備え、車両後突時の乗員の上半身の後方移動により前記ワイヤが引っ張られ、前記カム部材が一側方向に移動して、前記ヘッドレストが前方に移動するように前記ヘッドレスト支持フレームが移動することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記ワイヤの一端及び他端のいずれか一方は、該ワイヤに緩やかに発生する張力を吸収するダンパー機構を介して前記カム部材及び前記シートバックフレームの中間部又は下部のいずれか一方に連結されていることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用シートにおいて、前記カム部材を他側方向に付勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記ヘッドレストが後方に移動する前記ヘッドレスト支持フレームの戻り移動を規制するラチェット機構を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明では、車両後突時の乗員の上半身の後方移動により前記ワイヤが引っ張られ、前記カム部材が一側方向に移動して、前記ヘッドレストが前方に移動するように前記ヘッドレスト支持フレームが移動する。これにより、前記ヘッドレストが乗員の頭部に接近して、該頭部を後側から支える。この場合、前記ヘッドレストの作動は、車両後突時の乗員の上半身の後方移動に基づいて、そのときに発生するワイヤの張力を利用して行うため、例えば後突検知用のセンサを設けたり、該センサの検出信号に基づいて前記ヘッドレストを適宜のアクチュエータにて駆動するといった複雑なシステムを構成する必要はなく、その構造を極めて簡易なものにできる。
【0013】
また、前記ワイヤの張力を解放することで、前記ヘッドレストを容易に元の状態に復帰させることができるため、例えば軽度な後突により該ヘッドレストが作動した場合であっても、繰り返し使用することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、前記ワイヤに緩やかに発生する張力は、前記ダンパー機構により吸収される。従って、例えば乗員のひざつき動作などで前記ワイヤが緩やかに引っ張られる場合には、その発生する張力が前記ダンパー機構にて吸収されることで、前記ヘッドレストの誤作動を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、前記付勢手段により、前記カム部材が他側方向に付勢されることで、該カム部材の意図しない一側方向への移動によって前記ヘッドレストが誤作動したりすることを抑制できる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、前記ラチェット機構により、前記ヘッドレスト支持フレームの戻り移動が規制されることで、車両後突時において、前記ヘッドレストによる頭部の支持を好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用シートの骨格を示す斜視図である。同図に示されるように、この車両用シートは、シートバックの骨格をなすシートバックフレーム11を備えるとともに、該シートバックフレーム11は、車両の幅方向(車両の前方に向かって左右方向)で対をなす板材からなるサイドフレーム12を有し、更に各サイドフレーム12の上端部でこれら両サイドフレーム12間を連結する筒材からなるアッパパイプ13を有する。
【0018】
なお、アッパパイプ13は、車両の幅方向に延びる本体部13aと、該本体部13aの両端部にそれぞれ連続する態様で下方に延びる一対の腕部13bとを有してU字状に曲成されている。そして、両腕部13bは、それぞれの上端部において、車両の幅方向に延びる板材からなるアッパフレーム14にて連結されている。このアッパフレーム14は、その中央部から下方に延出する延出部14aを形成するとともに、該延出部14aの下端にガイド溝14bを形成する。また、両サイドフレーム12は、それぞれの下端部において、車両の幅方向に延びる板材からなるロアフレーム15にて連結されている。
【0019】
前記各腕部13bの下端部には、車両の前方に延出する板材からなるシートバックフレーム側ヒンジブラケット16が接合されるとともに、これらシートバックフレーム側ヒンジブラケット16には、筒材からなるヘッドレスト支持フレーム21が移動(回動)可能に支持されている。すなわち、前記ヘッドレスト支持フレーム21は、車両の幅方向に延びる本体部21aと、該本体部21aの両端部にそれぞれ連続する態様で下方に延びる一対のレバー部21bとを有してU字状に曲成されており、各レバー部21bの下端部において、ヒンジピン22により前記シートバックフレーム側ヒンジブラケット16に回動可能に支持されている。
【0020】
なお、前記各シートバックフレーム側ヒンジブラケット16には、各レバー部21bの回動軌跡を遮るように車両の幅方向内側に突出して、前記ヘッドレスト支持フレーム21の一側方向(図1において反時計回転方向)への回動範囲を規制する回転ストッパ16aが一体形成されている。
【0021】
前記ヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aには、上下方向に軸線の延びる四角筒状の一対のサポートブラケット23が車両の幅方向で対称となるように接合されるとともに、各サポートブラケット23には、樹脂材からなるヘッドレストステー摺動用サポート24が装着されている。そして、これらヘッドレストステー摺動用サポート24には、ヘッドレスト31の一対のステー32がそれぞれ挿入される。つまり、ヘッドレスト31は、各ステー32がヘッドレストステー摺動用サポート24に挿入されることで、前記ヘッドレスト支持フレーム21のサポートブラケット23に着脱自在に支持される。
【0022】
なお、各サポートブラケット23は、前記本体部13aよりも上方に突出するようにその軸線方向の長さが設定されている(図2参照)。そして、各サポートブラケット23には、前記ヘッドレスト支持フレーム21の他側方向(図2において時計回転方向)への回動に伴い前記本体部13aと弾性的に当接して当該方向への回動範囲を規制するクッションゴム25が接合されている。
【0023】
また、前記アッパパイプ13の各腕部13bには、シートバックフレーム側ヒンジブラケット16の近傍となるその下端部において、車両の幅方向に延びるワイヤ26の各先端部が固着されている。そして、このワイヤ26には、各レバー部21bに一端の係止されたテンションスプリング27の他端が係止されている。これにより、前記ヘッドレスト支持フレーム21は、前記ヒンジピン22を中心に前記サポートブラケット23に接合されたクッションゴム25が前記本体部13aに当接する側に付勢されている。
【0024】
前記アッパフレーム14の中央部には、前記ヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aとの間に挟まれる態様で、楔形のカム部材33がアッパフレーム14に沿う上下方向に移動可能に支持されている。このカム部材33は、アッパフレーム14からの突出長が該アッパフレーム14に沿う下方に向かって漸減するように成形された複数(4つ)の傾斜面33aを有するとともに、各隣り合う傾斜面33a間に設定された段差33bを有する。つまり、カム部材33は、全体としてはアッパフレーム14に沿う下方に向かって先鋭となる段付き形状を呈している。
【0025】
従って、カム部材33は、アッパフレーム14に沿う下方に移動することで該アッパフレーム14及びヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aの間の相対距離が増加するようにこれらアッパフレーム14及びヘッドレスト支持フレーム21と係合する。
【0026】
また、このカム部材33には、アッパフレーム14の上端に一端の係止されたテンションスプリング34の他端が係止されている(図2参照)。これにより、前記カム部材33は、アッパフレーム14に沿う上方側、即ちアッパフレーム14及びヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aの間の相対距離が減少する側に付勢されている。
【0027】
なお、図2に示すように、前記本体部21aには、カム部材33に対向して突起状の係止片35が固定されている。この係止片35は、カム部材33がアッパフレーム14に沿う下方に移動することで、傾斜面33aが摺動されるとともに、段差33bで係止されてカム部材33のアッパフレーム14に沿う上方への戻り移動を規制する。このように、カム部材33の戻り移動を規制する該カム部材33及び係止片35の係合は、いわゆるラチェット機構を構成する。
【0028】
本実施形態において、前記ヘッドレスト支持フレーム21は、前記テンションスプリング27により、前記ヒンジピン22を中心に前記係止片35が前記カム部材33に当接する側に併せて付勢されている。これにより、カム部材33は、アッパフレーム14に沿う下方への移動に伴いより堅固に、段差33bで前記係止片35に係止されつつ、該係止片35に前記傾斜面33aが摺動されて、アッパフレーム14及びヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aの間の相対距離を増加させる。そして、ヘッドレスト支持フレーム21のサポートブラケット23(ヘッドレストステー摺動用サポート24)に支持されたヘッドレスト31は、後方への戻り移動が規制されつつ、前方に移動する。
【0029】
前記ロアフレーム15の中央部には、車両前方に突出する態様で、ブラケット36が固定されている。そして、このブラケット36には、一端37aが前記カム部材33に連結されたワイヤ37の他端37bが連結されている。そして、ワイヤ37は、基本的にシートバック内でパッド裏面Pに当接又は隣接する態様で所定の余長をもって配索されている。なお、ワイヤ37の一端37aは、前記ガイド溝14bに案内される態様でカム部材33に連結されている。
【0030】
次に、本実施形態の動作について図2に基づき総括して説明する。なお、図2(a)は、ワイヤ37が負荷のかかることなく緩んだ状態を示し、図2(b)は、車両後突時の乗員Mの上半身の後方移動によりワイヤ37が押されて引っ張られた状態を示す。
【0031】
同図に示されるように、車両後突時の乗員Mの上半身の後方移動により前記ワイヤ37が押されて引っ張られると、テンションスプリング34に抗して前記カム部材33がアッパフレーム14に沿う下方に移動する。これにより、カム部材33は、テンションスプリング27に抗してヘッドレスト支持フレーム21の本体部21aを押圧する。そして、ヘッドレスト支持フレーム21は、ヒンジピン22周りに一側方向(図2において反時計回転方向)に回動し、ヘッドレスト31が前方に移動する。これにより、ヘッドレスト31が乗員Mの頭部に接近して、該頭部を後側から支える。
【0032】
このとき、乗員Mの頭部がヘッドレスト31に衝突して、カム部材33等に衝撃が加わっても、該カム部材33は、段差33bで係止片35に係止されることでアッパフレーム14に沿う上方への戻り移動が規制され、ヘッドレスト31の後方への戻り移動が規制される。これにより、ヘッドレスト31による頭部の支持を好適に行うことができる。なお、車両後突が終了すると、ヘッドレスト31を前方に引き出して段差33bにおけるカム部材33の係止片35との係止を解除することで、ワイヤ37を緩めつつ、徐々に元の状態に復帰させることができる。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、前記ヘッドレスト31の作動は、車両後突時の乗員Mの上半身の後方移動に基づいて、そのときに発生するワイヤ37の張力を利用して行うため、例えば後突検知用のセンサを設けたり、該センサの検出信号に基づいて前記ヘッドレスト31を適宜のアクチュエータにて駆動するといった複雑なシステムを構成する必要はなく、その構造を極めて簡易なものにできる。
【0034】
また、前記ワイヤ37の張力を解放することで、前記ヘッドレスト31を容易に元の状態に復帰させることができるため、例えば軽度な後突により該ヘッドレスト31が作動した場合であっても、繰り返し使用することができる。また、従来例のように見栄えを損なう操作レバーを設ける必要もない。
【0035】
(2)本実施形態では、カム部材33をアッパフレーム14に沿う上方に付勢するテンションスプリング34を設けたことで、該カム部材33の意図しない下方への移動によって前記ヘッドレスト31が誤作動したりすることを抑制できる。
【0036】
(3)本実施形態では、前記カム部材33は、段差33bで係止片35に係止されることでアッパフレーム14に沿う上方への戻り移動が規制され、ヘッドレスト31の後方への戻り移動が規制される。これにより、車両後突時において、ヘッドレスト31による頭部の支持を好適に行うことができる。
【0037】
(4)本実施形態では、ワイヤ37は、所定の余長をもって配索されていることで、例えば乗員Mが急発進などで背中をシートバックに押し付けたり、ひざつき動作を行うなどする場合に、ヘッドレスト31の誤作動を抑制することができる。
【0038】
(5)本実施形態では、前記ヘッドレスト31の作動に係る前記カム部材33は、前記シートバックフレーム11の上部に配置されて、シートバック内に収まっているため、前記ヘッドレスト31をヘッドレスト支持フレーム21のサポートブラケット23(ヘッドレストステー摺動用サポート24)に装着する際、前記カム部材33に何ら制約を受けることはない。つまり、車両組付工程において前記ヘッドレスト31を除いた車両用シートを予め車両に搭載し、その状態で前記ヘッドレスト31を装着する場合であっても、該ヘッドレスト31を前記ヘッドレスト支持フレーム21のサポートブラケット23に対し容易に装着することができる。また、前記ヘッドレスト31を前記ヘッドレスト支持フレーム21のサポートブラケット23から容易に取り外すことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図3に示したように、ワイヤ37の他端37bを、ロアフレーム15に支持されたダンパー機構41に連結してもよい。このダンパー機構41は、内部に粘性流体が充填されたドラムを備えるもので、車両前方に延出するレバー41aを有するとともに、該レバー41aを図示反時計回転方向に回動する側に付勢するテンションスプリング41bを有する。そして、ワイヤ37の他端37bは、レバー41aに連結されている。従って、ワイヤ37は、テンションスプリング41bによりその張力が増加する側に付勢されている。このダンパー機構41は、ワイヤ37に緩やかに発生する張力を吸収するためのものである。これにより、例えば乗員Mが急発進などで背中をシートバックに押し付けたり、ひざつき動作を行うなどしてワイヤ37に緩やかな張力が発生する場合には、該張力はダンパー機構41にて吸収されることで、ヘッドレスト31の誤作動を抑制することができる。
【0040】
一方、車両後突時の乗員Mの上半身の後方移動によりワイヤ37に急激な張力が発生する場合には、ダンパー機構41による該張力の吸収を待たずして前記ワイヤ37が引っ張られることで、前記ヘッドレスト31の作動が許容される。なお、アッパフレーム14(例えば延出部14a)に同様のダンパー機構を支持し、該ダンパー機構にワイヤ37の一端37aを連結してもよい。
【0041】
・前記実施形態においては、ワイヤ37の他端37bをシートバックフレーム11の下部(ブラケット36)に連結したが、該シートバックフレーム11の中間部に連結してもよい。具体的には、両サイドフレーム12を、それぞれの中間部において、車両の幅方向に延びる適宜のフレームにて連結し、該フレームに設けた適宜のブラケットにワイヤ37の他端37bを連結すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す側面図。
【図3】本発明の変形形態を示す側面図。
【符号の説明】
【0043】
M…乗員、11…シートバックフレーム、21…ヘッドレスト支持フレーム、31…ヘッドレスト、33…カム部材、33a…ラチェット機構を構成する傾斜面、33b…ラチェット機構を構成する段差、34…テンションスプリング(付勢手段)、35…ラチェット機構を構成する係止片、36…ブラケット、37…ワイヤ、37a…一端、37b…他端、41…ダンパー機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストが前方に移動可能なように、該ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持フレームがシートバックフレームに移動可能に支持されてなる車両用シートにおいて、
前記シートバックフレームの上部及び前記ヘッドレスト支持フレームの間で、該シートバックフレームに移動可能に支持され、一側方向に移動することで前記シートバックフレームの上部及び前記ヘッドレスト支持フレームの間の相対距離が増加するようにこれらシートバックフレームの上部及びヘッドレスト支持フレームと係合する楔形のカム部材と、
前記カム部材に一端が連結され、前記シートバックフレームの中間部又は下部に他端が連結されたワイヤとを備え、
車両後突時の乗員の上半身の後方移動により前記ワイヤが引っ張られ、前記カム部材が一側方向に移動して、前記ヘッドレストが前方に移動するように前記ヘッドレスト支持フレームが移動することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記ワイヤの一端及び他端のいずれか一方は、該ワイヤに緩やかに発生する張力を吸収するダンパー機構を介して前記カム部材及び前記シートバックフレームの中間部又は下部のいずれか一方に連結されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用シートにおいて、
前記カム部材を他側方向に付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストが後方に移動する前記ヘッドレスト支持フレームの戻り移動を規制するラチェット機構を備えたことを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74295(P2008−74295A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257158(P2006−257158)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】