説明

車両用シート

【課題】シートの後方からの車両衝突時に高さ調整機構の作動を規制可能な車両用シートの汎用性を向上する。
【解決手段】板状のリヤリンク14の回動に伴いアッパレール12に対してロアサイドフレーム15を昇降させる高さ調整機構20と、アッパレール12に回動自在に連結されたストッパリンク27と、ストッパリンク27の先端部に設けられリヤリンク14に形成された係合溝26に該リヤリンク14の回動軌跡を遮るように遊挿されたストッパピン29とを備え、シートの後方からの車両衝突時にストッパピン29を係合溝26と係合させて高さ調整機構20の作動を規制する車両用シートにおいて、シートの前方からの車両衝突時にリヤリンク14に加わる荷重をアッパレール12に伝達するブラケット30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ調整機構を備えた車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フロアに対してシート(座面)を昇降させる高さ調整機構を備えた車両用シートとして種々のものが提案されている。また、こうした車両用シートにおいて、車両衝突時(後突時)のシートの沈み込みを防止する必要性から、例えば特許文献1、2では、高さ調整機構の作動を規制する衝突ストッパを設けることが提案されている。
【0003】
すなわち、高さ調整機構を構成するリアリンクに凹凸面の有する長溝を形成するとともに、該長溝にストッパリンクの先端部に設けたストッパピンを挿通する。これにより、車両衝突時にシートが沈み込もうとする際、リアリンクの長溝(凹凸面)にストッパピンが係合することでそれ以上のシートの沈み込みが防止される。
【特許文献1】特開2006−224701号公報
【特許文献2】特開2006−224794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした車両用シートにおいて、シートベルトのベルトアンカが取り付けられる場合、車両衝突時(前突時)など過大なベルトアンカ荷重入力時、リアリンクの長溝(凹凸面)に係合するストッパピンには、その中心線に直交する方向にせん断荷重が加わることになる。例えば法規上の要求から、ベルトアンカ荷重入力時に、シート骨格(フレーム)はシート自重の20倍の負荷に耐え得る強度確保が必要となっており、従って、ストッパピンもシート自重に応じたせん断荷重に耐え得る強度の確保が必要となる。この場合、シート自重が異なる種類のシートごとに必要な強度を有するストッパピン等が必要になり、汎用性が著しく損なわれることになる。あるいは、最も重いシートに要求される強度を満たす共通のストッパピンを採用した場合には、軽量なシートに対して過剰な強度仕様が設定されることになり、徒な重量増加やコストの増大を強いられるという別の問題が発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、シートの後方からの車両衝突時に高さ調整機構の作動を規制可能な車両用シートの汎用性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、一側の端部が支持部材に回動自在に連結されるとともに他側の端部がシートに回動自在に連結された板状のレバー部材を有し、該レバー部材の回動に伴い前記支持部材に対して前記シートを昇降させる高さ調整機構と、前記支持部材に回動自在に連結されたストッパリンクと、前記ストッパリンクの先端部に設けられ前記レバー部材に形成された係合溝に該レバー部材の回動軌跡を遮るように遊挿されたストッパピンとを備え、前記シートの後方からの車両衝突時に前記ストッパピンを前記係合溝と係合させて前記高さ調整機構の作動を規制する車両用シートにおいて、前記シートの前方からの車両衝突時に前記レバー部材に加わる荷重を前記支持部材に伝達する伝達手段を備えたことを要旨とする。
【0007】
同構成によれば、前記シートの前方からの車両衝突時には、前記伝達手段により前記レバー部材に加わる荷重(シートベルトのベルトアンカ荷重)が前記支持部材へと伝達されることで、前記係合溝を介して前記ストッパピンに伝達される荷重(せん断荷重)が軽減される。従って、ストッパピンのせん断を抑制することができ、ひいては前記シートの強度を向上することができる。また、前記シート(シート骨格)に対しては、シート自重に応じた負荷に耐え得る強度が要求されているが、基本的に前記伝達手段を変更することで前記係合溝を介して前記ストッパピンに伝達されるせん断荷重を調整することができる。このため、前記ストッパピンのせん断荷重に対する強度をシート自重に応じて変更する必要がなく、該ストッパピン及びその周辺構造の汎用性を向上することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記伝達手段は、前記支持部材に取り付けられたブラケットであることを要旨とする。
同構成によれば、前記伝達手段は、前記支持部材や前記レバー部材とは別体のブラケットであるため、シート自重に応じて選択する該ブラケットの種類を変更することで前記ストッパピンに伝達されるせん断荷重を調整することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ブラケットは、前記レバー部材の対向面と面接触するにように成形された端面を有することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記レバー部材及び前記ブラケット間で伝達される荷重を、前記レバー部材の対向面と面接触する前記端面内で分散することができ、例えば点接触や線接触での場合に比べてこれらレバー部材及びブラケットの強度を向上することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用シートにおいて、前記ブラケットは、前記レバー部材の回動軌跡を遮る態様で該レバー部材の対向面と二箇所で接触するにようにU字状に成形された端面を有することを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記レバー部材及び前記ブラケット間で伝達される荷重を、前記レバー部材の対向面と二箇所で接触するにようにU字状に成形された前記端面内で分散することができ、例えば一箇所での場合に比べてこれらレバー部材及びブラケットの強度を向上することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記ブラケットは、板材からなり、前記支持部材の一側面に当接して該支持部材に締結される取付片と、前記支持部材に形成された挿通孔に挿通されて前記支持部材の他側面に係止される係止片とを有することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記ブラケットは、前記係止片を前記挿通孔に挿通し前記支持部材の他側面に係止することで仮止め(位置決め)され、この状態で前記支持部材の一側面に当接する前記取付片を該支持部材に締結することで固定される。従って、前記支持部材及び前記ブラケットの締結作業を一箇所行うのみで、これら支持部材及びブラケットを二箇所で安定させた状態で固定することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、前記ブラケットは、板材からなり、前記レバー部材の対向面との接触部から該レバー部材の回動軌跡の接線方向に延在する壁部を有することを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記レバー部材から前記ブラケットに伝達される荷重を、前記接触部から前記レバー部材の回動軌跡の接線方向に延在する前記壁部で効率的に受けることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両用シートにおいて、前記壁部は、屈曲部を有し、該屈曲部を介して前記支持部材から垂直に立ち上がるように成形されていることを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、前記壁部は、前記屈曲部を介して前記支持部材から垂直に立ち上がるように成形されていることで、荷重を前記支持部材へと効率的に伝達することができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記伝達手段は、前記レバー部材に一体形成されていることを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、前記伝達手段は、前記レバー部材に一体形成されているため、シート自重に応じて選択する該レバー部材の種類を変更することで前記ストッパピンに伝達されるせん断荷重を調整することができる。また、前記伝達手段が前記レバー部材に一体形成されていることで部品点数の増大を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、シートの後方からの車両衝突時に高さ調整機構の作動を規制可能な車両用シートの汎用性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両の前席側に搭載される車両用シートのシート骨格を示す側面図である。この車両用シートは、シートベルトのベルトアンカ(図示略)を保持する。なお、図1で示されるシート骨格は、車両用シートの幅方向で対をなして配設されており、ここでは車両の前方(シート前方)に向かって右側に配置されたシート骨格をシート内側から見た側面図を示している。車両の前方に向かって左側に配置されるシート骨格については同様の形状であるため、右側のシート骨格を代表して以下に説明する。
【0022】
図1に示されるように、車両フロアFには、ロアレール11が車両前後方向に延在する態様で固定されるとともに、該ロアレール11には、支持部材としてのアッパレール12がロアレール11に対し相対移動可能に装着されている。このアッパレール12は、その下方が開口するように断面U字状に形成されており(図2参照)、外側面に沿って上壁12aから上側に立設された支持部12bを有する。なお、ロアレール11及びアッパレール12の相対移動は、ロック部材(図示略)により通常は規制されており、該ロック部材に操作力を付与することでその規制が解除される。
【0023】
アッパレール12(支持部12b)の前部には、板材からなるフロントリンク13の一側の端部が軸21により回動自在に連結されるとともに、アッパレール12の後部には、板材からなる扇形状のリヤリンク14の一側の端部が軸22により回動自在に連結されている。そして、これらフロントリンク13及びリヤリンク14の他側の端部は、シートクッションの骨格をなすロアサイドフレーム15の前部及び後部にそれぞれ軸23,24により回動自在に連結されている。ロアサイドフレーム15の後端部には、シートバックの骨格をなすシートバックフレーム16が回動可能に連結されている。つまり、シートクッション及びシートバックを有するシートは、フロントリンク13及びリヤリンク14を介してアッパレール12に支持されている。
【0024】
ここで、フロントリンク13、リヤリンク14及びロアサイドフレーム15は、アッパレール12を固定リンクとする4節回転連鎖を構成する。そして、フロントリンク13は図示しないアクチュエータに駆動連結されており、ロアサイドフレーム15(シート)は、フロントリンク13がリヤリンク14ともども回動駆動されることでアッパレール12に対して昇降する。例えば、ロアサイドフレーム15は、フロントリンク13がリヤリンク14ともども図示時計方向に回動駆動されることでアッパレール12に対して下降し、反対に図示反時計方向に回動駆動されることでアッパレール12に対して上昇する。図1及び図2では、アッパレール12に対してロアサイドフレーム15が最大限に上昇した状態を表している。アッパレール12に連結されたフロントリンク13、リヤリンク14及びロアサイドフレーム15は、アッパレール12(フロア)に対してシート(座面)を昇降する高さ調整機構20を構成する。
【0025】
なお、軸24は、円筒形状で車両用シートの幅方向(紙面に直交する手前方向)に延在して対をなす他方のロアサイドフレーム15(及びリヤリンク14)とも連結されている。従って、両側のロアサイドフレーム15は、互いに同期してアッパレール12に対し昇降する。
【0026】
前記リヤリンク14には、その先端側の円弧形状に沿って円弧状をなすとともに板厚方向に貫通する係合溝26が形成されている。この係合溝26の上面は、長手方向に波形をなして係合面26aを形成するとともに、下面は、長手方向に平坦な当接面26bを形成する。一方、アッパレール12(支持部12b)には、軸22の後側で板材からなるストッパリンク27の一側の端部が軸28により回動自在に連結されている。このストッパリンク27は、リヤリンク14との干渉を避ける態様で該リヤリンク14に対しシート外側(紙面に直交する奥側)に回り込むように曲成されており、ストッパリンク27の先端部には、紙面に直交する手前側に中心線の延びる円柱状のストッパピン29が、例えばカシメにて固着されている。このストッパピン29は、前記リヤリンク14の回動軌跡を遮るように前記係合溝26に遊挿されている。
【0027】
なお、ストッパリンク27は、通常は図示しない付勢手段にてストッパピン29が係合溝26の当接面26bに当接するように付勢されている。従って、高さ調整に伴うリヤリンク14の回動に際しては、ストッパピン29は、前記当接面26bを摺動することでその回動を阻害することはない。また、シートの後方からの車両衝突時(即ち後突時)には、慣性によってリヤリンク14が図示時計回転方向に回動しようとし、シートが沈み込むように下降しようとする。このとき、ストッパリンク27は、同じく慣性によって前述の付勢手段に抗して図示時計回転方向に回動しようとし、前記ストッパピン29が係合面26aに食い込むように係合することで、リヤリンク14のそれ以上の回動が規制される。このように高さ調整機構20の作動を規制することで、それ以上のシートの下降を防止することができ、例えばシートバックの上部に支持されたヘッドレストの高さを維持することができる。
【0028】
ここで、本実施形態では、シートの前方からの車両衝突時(即ち前突時)に前記リヤリンク14に加わる荷重(ベルトアンカ荷重)をアッパレール12(上壁12a)に伝達する伝達手段としてのブラケット30が設けられている。図2及び図3(a)(b)に示すように、このブラケット30は、板材からなり、軸22の前側で支持部12bよりもシート内側に配置される。このブラケット30は、支持部12b側が開口するように断面U字状に形成された本体部31を有するとともに、該本体部31のシート前側の開口端から支持部12bに沿って前方に延出する取付片32を有し、更に前記本体部31のシート後側の開口端から支持部12bに沿って後方に延出する係止片33を有する。なお、係止片33は、取付片32よりも前記支持部12bの板厚分だけシート外側に配置されている。また、前記取付片32には、支持部12bの反対側にナット34が溶着されている。
【0029】
このブラケット30は、前記支持部12bに形成された位置決め用の挿通孔12cにシート内側から前記係止片33を挿通し前記支持部12bの外側面(他側面)に係止することで仮止め(位置決め)される。そして、ブラケット30は、前記支持部12bの内側面(一側面)に当接する前記取付片32ともども前記支持部12bを貫通するボルト35の先端部を前記ナット34に締め付け、これら取付片32及び支持部12bを締結することで固定される。
【0030】
図3(a)(b)に示すように、前記本体部31は、前記リヤリンク14の対向面14aの外形に合わせて前後の壁部36,37に高低差が設定されており、該壁部36,37は、アッパレール12に対してロアサイドフレーム15が最大限に上昇したときのリヤリンク14の回動位置(図1参照)でその対向面14aに当接又は近接する。そして、本体部31のU字状に成形された上端面31aは、図面にハッチングを付した範囲(以下、「接触部A,B」ともいう)で前記対向面14aと面接触するにように成形されている。つまり、前記本体部31の上端面31aは、前記リヤリンク14の回動軌跡を遮る態様で該リヤリンク14の対向面14aと前後の二箇所で接触する。
【0031】
また、本体部31の前側の壁部36は、前記リヤリンク14の対向面14aとの接触部Aから該リヤリンク14の回動軌跡の接線方向に斜めに延在するとともに、高さ方向中間部に形成された屈曲部36aを介して前記アッパレール12の上壁12aから垂直に立ち上がるように成形されている。つまり、壁部36は、屈曲部36aを介して上下に二分された上壁部36b及び下壁部36cを有する。一方、本体部31の後側の壁部37は、前記アッパレール12の上壁12aから垂直に立ち上がるように成形されている。
【0032】
このような構成にあって、シートの前方からの車両衝突時(即ち前突時)、過大なベルトアンカからの入力荷重(ベルトアンカ荷重)によってリヤリンク14は、係合溝26の終端がストッパピン29に達するまで図示反時計回転方向に回動しようとする。このとき、リヤリンク14の回動は、前記ブラケット30にその対向面14aが当接することで規制され、前記荷重はアッパレール12(上壁12a)へと伝達され始める。これにより、係合溝26を介してストッパピン29に伝達される荷重(せん断荷重)の増加が抑えられ該荷重が軽減される。
【0033】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、シートの前方からの車両衝突時(前突時)には、ブラケット30によりリヤリンク14に加わる荷重(ベルトアンカ荷重)がアッパレール12(上壁12a)へと伝達されることで、係合溝26を介してストッパピン29に伝達される荷重(せん断荷重)が軽減される。従って、ストッパピン29のせん断を抑制することができ、ひいてはシートの強度を向上することができる。また、シート(シート骨格)に対しては、シート自重に応じた負荷に耐え得る強度が要求されているが、基本的にブラケット30を変更することで係合溝26を介してストッパピン29に伝達されるせん断荷重を調整することができる。このため、ストッパピン29のせん断荷重に対する強度をシート自重に応じて変更する必要がなく、該ストッパピン29及びその周辺構造の汎用性を向上することができる。
【0034】
(2)本実施形態では、ブラケット30は、アッパレール12やリヤリンク14とは別体(別部材)であるため、シート自重に応じて選択する該ブラケット30の種類を変更することでストッパピン29に伝達されるせん断荷重を調整することができる。
【0035】
(3)本実施形態では、リヤリンク14及びブラケット30間で伝達される荷重を、リヤリンク14の対向面14aと面接触する本体部31の上端面31a内(接触部A,B)で分散することができ、例えば点接触や線接触での場合に比べてこれらリヤリンク14及びブラケット30の強度を向上することができる。
【0036】
(4)本実施形態では、リヤリンク14及びブラケット30間で伝達される荷重を、リヤリンク14の対向面14aと二箇所で接触するにようにU字状に成形された本体部31の上端面31a内(接触部A,B)で分散することができ、例えば一箇所での場合に比べてこれらリヤリンク14及びブラケット30の強度を向上することができる。
【0037】
(5)本実施形態では、前記ブラケット30は、係止片33を挿通孔12cに挿通し支持部12b(アッパレール12)の外側面に係止することで仮止め(位置決め)され、この状態で支持部12bの内側面に当接する取付片32を該支持部12bに締結することで固定される。従って、アッパレール12及びブラケット30の締結作業を一箇所行うのみで、これらアッパレール12及びブラケット30を二箇所で安定させた状態で固定することができる。
【0038】
(6)本実施形態では、シートの前方からの車両衝突時(前突時)にリヤリンク14からブラケット30に伝達される荷重を、前記接触部Aから前記レバー部材の回動軌跡の接線方向に延在する前記壁部36(上壁部36b)で効率的に受けることができる。
【0039】
(7)前記壁部36(下壁部36c)は、前記屈曲部36aを介してアッパレール12(上壁12a)から垂直に立ち上がるように成形されていることで、シートの前方からの車両衝突時(前突時)にリヤリンク14からブラケット30に伝達される荷重をアッパレール12へと効率的に伝達することができる。
【0040】
(8)シートの後方からの車両衝突時(後突時)の高さ調整機構20の作動を規制するためのストッパピン29を、シートの前方からの車両衝突時(前突時)の要求仕様に合わせて設計変更しなくてもよい。そして、基本的には、シート骨格をシート自重に応じた要求仕様に合わせて設計変更しなくてもよく、ブラケット30を追加するのみの簡易な方法でシート骨格の強度を確保することができる。従って、大規模な構造変更を伴うことなく、安価に要求仕様に応えることができる。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、レバー部材(リヤリンク)に加わる荷重(ベルトアンカ荷重)をアッパレール12(上壁12a)に伝達する伝達手段をリヤリンクに一体形成してもよい。すなわち、図4に示すリヤリンク41は、軸22の前側で扇形状の下部から更に下側に延出するL字状の伝達片42を一体的に有する。この伝達片42のシート幅方向に延びるフランジ部42aは、アッパレール12に対してロアサイドフレーム15が最大限に上昇したときのリヤリンク14の回動位置でアッパレール12の上壁12aに当接又は近接する。そして、リヤリンク41は、上壁12aに対向するフランジ部42aの下端面42b全面で該上壁12aと面接触するにように成形されている。このような構造を採用した場合、シート自重に応じて選択するリヤリンク41(伝達片42)の種類を変更することで係合溝26を介してストッパピン29に伝達されるせん断荷重を調整することができる。また、伝達片42がリヤリンク41に一体形成されていることで部品点数の増大を回避することができる。
【0042】
・前記実施形態において、軸21に代えて、アッパレール12(支持部12b)及びフロントリンク13のいずれか一方に設けたガイド溝に、いずれか他方に設けたスライダを摺動させる構造を採用してもよい。あるいは、軸23に代えて、フロントリンク13及びロアサイドフレーム15のいずれか一方に設けたガイド溝に、いずれか他方に設けたスライダを摺動させる構造を採用してもよい。
【0043】
・前記実施形態において、アクチュエータに代えて、フロントリンク13を手動で回動させる適宜の操作部材を設けてもよい。また、アクチュエータ若しくは操作部材により、リヤリンク14を回動させて高さ調整機構20を作動させてもよい。
【0044】
・前記実施形態において、アッパレール12及びブラケット30を二箇所以上で締結して固定してもよい。
・前記実施形態において、リヤリンク14の対向面14aと一箇所のみで接触する平板状のブラケットや、三箇所以上で接触する波板状のブラケットであってもよい。
【0045】
・前記実施形態において、リヤリンク14の対向面14aと線接触又は点接触するブラケットであってもよい。
・前記実施形態においては、車両の前方とシート前方とが一致することを前提に、車両衝突時(前突時)にリヤリンク14に加わる荷重(ベルトアンカ荷重)をアッパレール12(上壁12a)に伝達するブラケット30を設けた。これに対し、車両の前方とシート前方とが相反するシート(対面シートなど)の場合には、車両衝突時(後突時)にリヤリンク(14)に加わる荷重(ベルトアンカ荷重)をアッパレール12(上壁12a)に伝達するブラケットであってもよい。
【0046】
・前記実施形態においては、シート前後位置の調整機構(シートスライド機構)を有する車両用シートについて説明したが、このような機構を割愛した車両用シートであってもよい。この場合、例えば車両フロアFに設けられた適宜の支持部材に対してロアサイドフレーム15を昇降させるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】同実施形態を示す斜視図。
【図3】(a)(b)は、ブラケットを示す平面図及び正面図。
【図4】本発明の変形形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0048】
A…接触部、12…アッパレール(支持部材)、12a…上壁、12b…支持部、12c…挿通孔、14,41…リヤリンク(レバー部材)、14a…対向面、15…ロアサイドフレーム(シート)、20…高さ調整機構、26…係合溝、27…ストッパリンク、29…ストッパピン、30…ブラケット(伝達手段)、31a…上端面(端面)、32…取付片、33…係止片、34…ナット、36…壁部、36a…屈曲部、42…伝達片(伝達手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側の端部が支持部材に回動自在に連結されるとともに他側の端部がシートに回動自在に連結された板状のレバー部材を有し、該レバー部材の回動に伴い前記支持部材に対して前記シートを昇降させる高さ調整機構と、前記支持部材に回動自在に連結されたストッパリンクと、前記ストッパリンクの先端部に設けられ前記レバー部材に形成された係合溝に該レバー部材の回動軌跡を遮るように遊挿されたストッパピンとを備え、前記シートの後方からの車両衝突時に前記ストッパピンを前記係合溝と係合させて前記高さ調整機構の作動を規制する車両用シートにおいて、
前記シートの前方からの車両衝突時に前記レバー部材に加わる荷重を前記支持部材に伝達する伝達手段を備えたことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記伝達手段は、前記支持部材に取り付けられたブラケットであることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記ブラケットは、前記レバー部材の対向面と面接触するにように成形された端面を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用シートにおいて、
前記ブラケットは、前記レバー部材の回動軌跡を遮る態様で該レバー部材の対向面と二箇所で接触するにようにU字状に成形された端面を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、
前記ブラケットは、板材からなり、前記支持部材の一側面に当接して該支持部材に締結される取付片と、前記支持部材に形成された挿通孔に挿通されて前記支持部材の他側面に係止される係止片とを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の車両用シートにおいて、
前記ブラケットは、板材からなり、前記レバー部材の対向面との接触部から該レバー部材の回動軌跡の接線方向に延在する壁部を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用シートにおいて、
前記壁部は、屈曲部を有し、該屈曲部を介して前記支持部材から垂直に立ち上がるように成形されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記伝達手段は、前記レバー部材に一体形成されていることを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208737(P2009−208737A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56589(P2008−56589)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】