説明

車両用シート

【課題】アンダートレイ、操作レバーを簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置することが難しい。
【解決手段】操作レバー16はサイドアーム16aの略中央で左右のサイドアーム間に中間バー16bを架設した平面略H形状に形成されている。アンダートレイ20は、その底部の左右端部に前後方向に延びた対向する一対の側壁20cを持つとともに、中間バー16bが後方から着脱可能に把持される把持片20dをその後端に持っている。前後方向に延びた長孔形状のガイド溝20c’が左右の側壁20cに形成され、ボルトからなる2つの支持軸21が前後方向に離反した位置で左右の側壁のガイド溝にそれぞれ挿通されている。サイドアーム前端部にねじ孔16a’が形成され、ガイド溝を挿通したボルト(支持軸)21がねじ孔に螺着、連結されて、アンダートレイが前後方向にスライド可能に操作レバー上に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションの下方にアンダートレイを配設するとともに、シートスライド装置を介在して車床上を前後方向にスライド可能でそのスライド位置にロック機構でロックし、操作レバーの操作のもとでロックオフされる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいては、車床に固定されたロアレールと、シートクッションを載せてロアレールにスライド自在に組み付けられたアッパレールとを備えたシートスライド装置を車床との間に配置して車床上を前後方向にスライド可能とした構成が広く採用されている。
【0003】
シートスライド装置のもとで前後方向にスライド可能な車両用シートにおいては、ロック機構によって左右それぞれのロアレールに対してアッパレールがロックされることにより、ロアレールに対してシートは所定のスライド位置にロックされ、操作レバーを操作してロック機構によるロックを解除(ロックオフ)するようになっている(たとえば、特開平09−011780号公報)。操作レバーとして、前後方向に互いに平行に延びた左右一対のサイドアームの前端を連結した平面略コ字形状にパイプ材を折曲したものが知られており、左右のサイドアームの前端を連結するバーを引き上げると、ロック機構による左右のロックを同時に解除(ロックオフ)できる。平面略コ字形状の操作レバーはタオルバーと称され、その左右のサイドアームの前端を連結するバーはフロントバーと呼ばれる。
【0004】
スライド可能な車両用シートのシートクッションの下方空間を有効利用するために、アンダートレイをシートクッションの下方に引き出し可能に配設した構成が知られている(たとえば、特開2007−050829号公報)。
アンダートレイは、たとえば、シートクッション下面に設けられて前後方向に延びた左右一対の支持レールに支持されてシートクッションの前方に引き出し可能に支持されている(たとえば、実開平05−013848号公報)。アンダートレイは上面を受け皿部としてプラスチックから成形され、その前端には取手片が設けられ、取手片を掴んで前方に引き出すことによって、受け皿部への物の収納、取出しが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−011780号公報
【特許文献2】特開2007−050829号公報
【特許文献3】実開平05−013848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来においては、操作レバーは前後方向に互いに平行に延びた左右のサイドアームの前端をロックオフバー(フロントバー)で連結した平面略コ字形状のタオルバーとされ、フロントバーを引き上げてロック機構をロックオフするように構成されている。そして、容易に引き上げられるように、フロントバーはシートクッション前端の直下に設けられる。しかしながら、シートクッションの下方空間にアンダートレイが配置されており、シートクッション前端直下の空間はアンダートレイの引き出し口に該当し、フロントバーがアンダートレイ前端より前に位置してアンダートレイの引き出し軌跡を横切るため、引き出しの障害となるおそれがある。
また、操作レバー(タオルバー)をフロントバー側で上方に折曲成形させてフロントバーをアンダートレイの引き出し軌跡より上方に配置すれば、アンダートレイの引き出し軌跡との干渉が避けられるが、上方に折曲成形したフロントバーに着座者の脚部が触れて着座者に不快感を与えるおそれがある。
【0007】
特開2007−050829号公報では、操作レバーは、ロック機構のロックを維持したまま第1、第2の2つの位置を切り替え可能とされ、第1または第2の位置から引き上げられてロックオフされるように構成されている。ここで、第1の位置では操作レバーのフロントバーはアンダートレイの引き出し軌跡を横切って位置するとはいえ、第2の位置が第1の位置より下方でアンダートレイの引き出し軌跡を避けて設定されているため、フロントバーは第2の位置ではアンダートレイの引き出しの障害とならない。
【0008】
そして、通常は引き上げの容易な第1の位置に操作レバーを設定し、操作レバーを第1の位置から押し下げて第2の位置に切り替えれば、アンダートレイは操作レバーに邪魔されずに引き出せる。なお、操作レバーが第1の位置にあっても、操作レバーのフロントバーがアンダートレイの引き出し軌跡より上方にないため、フロントバーに着座者の脚部が触れず、着座者に不快感を与えるおそれはない。
【0009】
第1、第2の位置に操作レバーを切り替え可能とすることによりアンダートレイ、操作レバーが互いに干渉することなく併設できるとはいえ、操作レバーの切り替え機構や第1、第2の位置に操作レバーを保持する構成が必要となり、構成の複雑化が避けられない。
【0010】
さらに、前後にスライド可能なアンダートレイを操作レバーに併設する公知の構成では、アンダートレイの有効長および有効幅が過剰に制限され、上面の受け皿部を広く設定することが難しい。
すなわち、平面略コ字形状の操作レバー(タオルバー)においてロックオフバーであるフロントバーは、シートクッション前端の直下に位置し、フロントバーの背後にアンダートレイが配置されるが、フロントバーとアンダートレイとの間に隙間を設けてフロントバーを掴みやすくしている。
このように、アンダートレイは、操作レバーの背後に配置されるだけでなく、フロントバーとの間に隙間が設けられるため、前後方向におけるアンダートレイの長さが過剰に制限され、十分な有効長を確保し難い。
【0011】
また、操作レバーの左右のサイドアームは、シートスライド装置の内側でシートスライド装置に沿って前後に延びて位置する。そして、アンダートレイのスライドをガイドする支持レールは、シートクッションの裏側に設けられるが、通常、サイドアームの内側でアンダートレイの側方に位置することとなり、アンダートレイの幅が過剰に制限されて、十分な有効幅が確保し難い。
そして、アンダートレイの有効長、有効幅が過剰に制限されると、物を収納するための受け皿部を広く設定できず、アンダートレイに長いものや幅の広いものが収納できない。また、多くのものがアンダートレイに収納できない。
【0012】
本発明は、アンダートレイの有効長、有効幅を過剰に制限することなく、アンダートレイ、操作レバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明では、左右のサイドアームの略中央にバー(中間バー)を架設して左右のサイドアームを連結した平面略H形状に操作レバーを形成し、中間バーをアンダートレイに設けた把持片で把持可能とするとともに、アンダートレイのスライドをガイドする支持レールをアンダートレイそのものに設けている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、その上面を受け皿部とするとともにその前端に取手片を持つアンダートレイをシートクッションの下方に引き出し可能に配置するとともに、シートスライド装置のロック解除のための操作レバーをシートクッション下方にアンダートレイと併設したシートスライド装置付の車両用シートにおいて、サイドアームの略中央で左右のサイドアーム間に中間バーを架設して操作レバーを平面略H形状に形成し、アンダートレイは、その底部の左右端部に前後方向に延びた対向する一対の側壁を持つとともに、操作レバーの中間バーが後方から着脱可能に把持される把持片をその後端に持ち、前後方向に延びた長孔形状のガイド溝が左右の側壁に形成され、前後方向に離反した位置でガイド溝に挿通された複数の支持軸が、操作レバーの左右のサイドアームの前端部に連結されて、アンダートレイが前後方向にスライド可能に操作レバー上に支持されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明では、アンダートレイは平面略H形状の操作レバー上に置かれ、操作レバーはアンダートレイの下に位置してアンダートレイの引き出し軌跡に干渉しない。そして、アンダートレイ後端の把持片による操作レバーの中間バーの把持を外せばアンダートレイはフリーとなり、アンダートレイは、ガイド溝を支持軸に摺接させながら支持軸にガイドされて操作レバーの左右のサイドアーム上を前方にスライドしてシートクッションの下方から引き出される。
また、アンダートレイ後端の把持片で操作レバーの中間バーを把持した状態でアンダートレイ前端の取手片を持ち上げれば、アンダートレイとともに操作レバーの前端部が一体的に持ち上げられてロックオフできる。
【0015】
つまり、アンダートレイ底部のガイド溝付き側壁が支持レールとなるとともに、アンダートレイ前端の把持片がフロントバーを把持した状態では取手片が操作レバーのロックオフバーとなる。そして、操作レバーの中間バーを把持する把持片をアンダートレイに形成するとともに、アンダートレイ底部の左右にガイド溝付の側壁を設けてガイド溝を挿通する支持軸を操作レバーの左右のサイドアームに連結するだけで足り、アンダートレイ、操作レバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
【0016】
支持レールをシートクッションの裏側に設けることなくアンダートレイ底部に設けた構成では、操作レバーの左右のサイドアームを越えてその底部を幅方向に広げられ、アンダートレイの有効幅が過剰な制限を受けることなく十分に拡張(拡幅)できる。また、アンダートレイ前端の取手片が操作レバーのロックオフバーとして機能するため、操作レバーの前端にロックオフバーを設ける必要がなく、ロックオフバーを掴むための隙間の確保が不要となり、アンダートレイの有効長が過剰な制限を受けることなく十分に拡張できる。そして、過剰な制限を受けることなくアンダートレイの有効長、有効幅が設定できるため、アンダートレイ上面の受け皿部を広く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図を示す。
【図2】(A)は本発明の一実施例に係る車両用シートに設けられた操作レバーの下方からの斜視図、(B)は操作レバーの中間バーを把持したアンダートレイの格納位置における下方からの斜視図をそれぞれ示す。
【図3】(A)(B)はアンダートレイの上方および下方からの斜視図をそれぞれ示す。
【図4】(A)(B)はアンダートレイの把持片による操作レバーの中間バーの把持の前後における模式図をそれぞれ示す。
【図5】(A)〜(C)はシートクッション下方空間でのアンダートレイの格納位置(初期位置)、シートクッション下方空間からの引き出し開始直後の位置、引き出し前限位置でのアンダートレイ、操作レバーの側面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
操作レバーは、サイドアームの略中央で左右のサイドアーム間に中間バーを架設した平面略H形状に形成されている。また、アンダートレイは、その底部の左右端部に前後方向に延びた対向する一対の側壁を持つとともに、操作レバーの中間バーが後方から着脱可能に把持される把持片をその後端に持っている。そして、前後方向に延びた長孔形状のガイド溝が左右の側壁に形成され、複数の支持軸が前後方向に離反した位置でガイド溝に挿通されて操作レバーの左右のサイドアームの前端部に連結されて、アンダートレイが前後方向にスライド可能に操作レバー上に支持されている。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略側面図を示す。また、図2(A)(B)は本発明の一実施例に係る車両用シートに設けられた操作レバーの下方からの斜視図、操作レバーの中間バーを把持したアンダートレイの格納位置における下方からの斜視図をそれぞれ示す。
【0020】
図1に示すように、本発明の車両用シート10はシートスライド装置12を備え、このシートスライド装置は、車床14に固定されたロアレールと、ロアレールに摺動自在(スライド自在)に組み付けられたアッパレールと、ロアレールに対するアッパレールの摺動をロックして規制するロック機構とを有し、このロック機構は、操作レバー16を操作してロックオフするように構成されている。ここで、アッパレールにはシートクッション18Cが積載されているとともに、シートクッション後端にシートバック18Bがリクライニング装置(リクライナー)を介在して前後傾動可能に取り付けられている。
なお、サイドカバー19がシートクッション18Cの左右の側面にそれぞれ取り付けられて、側面における美観を確保している。
実施例の説明における前後はドライバーシートに着座したドライバーから見た方向をいい、Fr、Rrで示す。また、上下をUp、Lwで示す。
【0021】
図2(A)に示すように、操作レバー16は、前後方向に互いに平行に延びた左右一対のサイドアーム16aの略中間にバー(中間バー)16bを架設し連結して平面略H形状に形成され、そのサイドアームの後端は、シートスライド装置の左右のロック機構に対してそれぞれ連動可能もしくは一体揺動可能に組み付けられている。この操作レバー16は、たとえばサイドアーム16aもしくはその延長部材上に規定された所定位置を支点として上下揺動可能に支持され、操作レバーの前端部の引き上げに伴ったサイドアームの揺動のもとでシートスライド装置の左右のロック機構を同時にロックオフするように構成されている。
【0022】
操作レバーの左右のサイドアーム16a、中間バー16bはいずれもパイプ材(たとえば、鋼管)を切断して形成され、サイドアームの前端部はロック機構への組み付けを考慮して上方に折曲されてその先端は平坦にプレス加工されている。
また、左右のサイドアーム16aの前端部には前後方向に離反した複数の、実施例では2つずつの挿通孔16a’がサイドアームを貫通してそれぞれ形成されており、実施例では、挿通孔はねじ付の孔(ねじ孔)となっている。
【0023】
車両用シート10は、シートスライド装置のロック機構に対する操作レバーの前端部の引き上げによるロックオフ操作により、車床上を前後方向にスライドでき、引き上げ力解除に伴ったロック機構によるロックにより、車両用シートは任意の前後位置で保持(ロック)される。
【0024】
この種のシートスライド装置12の基本構成は、たとえば特開平09−011780号公報などに記載されているように公知であり、その構成自体はこの発明の趣旨でないため、詳細な説明は省略する。
【0025】
図1に示すように、シートクッション18Cの下方空間を有効利用するために、アンダートレイ20がシートクッションの下方に配設されている。図3(A)(B)はアンダートレイの上方および下方からの斜視図をそれぞれ示す。また、図4(A)(B)はアンダートレイの把持片による操作レバーの中間バーの把持の前後における模式図をそれぞれ示す。
【0026】
図1に加えて図3(A)を見るとよくわかるように、アンダートレイ20は、その上面に受け皿部20aが形成されるとともに前端に把持のための取手片20bを持つ略直方形形状とされ、前端の取手片を掴んで前方に引き出すことによって、上面の受け皿部への物の収納、取出しが行われる。
【0027】
図3(B)に示すように、アンダートレイ20は前後方向に延びた対向する一対の側壁20cを底部の左右端部に持ち、左右の側壁には、前後方向に延びた長孔形状のガイド溝20c’が形成されている。
また、アンダートレイ20は、操作レバーの中間バー16bが後方から着脱可能に把持される把持片20dをその後端に持っている。通常、アンダートレイ20は、プラスチックから取手片20b、側壁20c、把持片20dを一体的に有して成形される。
【0028】
実施例では、アンダートレイ底部の左右の側壁20cがアンダートレイの後端まで延出されて側壁の延出部が把持片20dとなっている。つまり、左右の側壁20cの延出部が把持片20dを兼ねるとともに、左右の側壁間にさらに2つの把持片が設けられ、計4つの把持片がほぼ等間隔離反して左右方向に一直線に配列されている。
【0029】
図3(A)(B)に加えて図4(A)を見るとよくわかるように、アンダートレイの把持片20dは、たとえば、操作レバーの中間バー16bに対向した部分(後端部分)に把持のための切欠き20d’を持つ側面略三角形状とされ、後方からの中間バーの把持を可能とするように、切欠きは中間バーに面した後端部分で開口した形状に形成される。通常、中間バー16bがパイプ材から形成されてその外形が円形であるため、切欠き20d’は中間バーに面した後端部分で一部を欠いた略円形形状とされる。
【0030】
シートクッションの下方でアンダートレイ20を押し込むと、つまり、図4(A)において矢視のように後方に押せば、切欠き20d’の上下に位置する舌片20d1’、20d2’が中間バー16bに押圧されて半径方向外方に撓む(逃げる)。そして、切欠き20d’に中間バー16bが入りこむと、舌片20d1’、20d2’が原形に復帰して、図4(B)に示すように、把持片20dはその切欠き内に中間バーを把持する。
アンダートレイ20が取手片20b、側壁20c、把持片20dを一体的に有してプラスチックから成形されているため、把持片の舌片20d1’、20d2’の撓みがプラスチックの弾性のもとで十分に得られ、把持片20dが中間バー16bを確実に把持できる。また、アンダートレイ20を前方に引けば、中間バー16bの把持を容易に外すことができる。
【0031】
把持片20dの数、間隔、形状などは一例であり、図示のものに限定されないことはいうまでもない。たとえば、左右の側壁にのみ、または左右の側壁間だけに把持片20dを設けてもよい。しかし、実施例のように、左右の側壁およびその間に複数、たとえば2つの把持片20dを設ければ、中間バー16bを確実に把持できて好ましい。また、把持片20dは中間バー16bを着脱自在に後方から把持できれば足り、舌片20d1’、20d2’付の略円形形状の切欠き20d’を持つ形状に限定されない。
【0032】
支持軸21が側壁のガイド溝20c’を挿通してサイドアームに連結されることにより、アンダートレイが操作レバーに組み込まれる。たとえば、支持軸21はボルトとされ、図2(B)、図3(B)に示すように、左右2本ずつ計4本のボルトが左右の側壁20cの内側から対応する側壁のガイド溝20c’に挿通されてサイドアーム前端部のねじ孔16a’に螺着、連結されることによって、アンダートレイが操作レバーに組み込まれて操作レバーと一体化されている。
【0033】
ボルト21はワッシャ付とされ、ねじの切られていない軸部をガイド溝の中に位置し、アンダートレイのスライドを妨げない程度にワッシャと側壁との間に僅かな隙間を残してサイドアームのねじ孔16a’にねじ止めされている。そのため、サイドアームのねじ孔16a’にその先端が固定されたボルト21を支持軸として、アンダートレイ20は前後方向にスライド自在に操作レバーに組み込まれる。
【0034】
図1に示すアンダートレイ20は、シートクッションの下方で最も奥に位置するいわゆる格納位置にあり、この格納位置において、図2(B)に示すように、アンダートレイの把持片20dが操作レバーの中間バー16bを把持する。
図5(A)〜(C)はシートクッション下方空間でのアンダートレイの格納位置(初期位置)、シートクッション下方空間からの引き出し開始直後の位置、引き出し前限位置でのアンダートレイ、操作レバーの側面図をそれぞれ示し、図5(A)〜(C)を参照しながら、アンダートレイ20、操作レバー16の動きについて以下に説明する。
【0035】
図5(A)では、図1、図2(B)と同様に、把持片20dが中間バーを把持する格納位置にアンダートレイが位置しており、このアンダートレイの格納位置においては、前後に離反した2つの支持軸(ボルト)のうちの前の支持軸21−1に側壁のガイド溝の前端20c’−1が押圧される。つまり、ガイド溝の前端20c’−1が前の支持軸21−1に押圧されてそれ以上押し込めない位置までアンダートレイを押し込めば、図4(A)(B)に示すように把持片20dに中間バー16が把持されてアンダートレイの格納位置が得られる。
【0036】
アンダートレイ20はこの格納位置を初期位置として待機しており、その後端の把持片20dが操作レバーの中間バー16bを把持してその後端が固定されるとともに、側壁のガイド溝20c’と支持軸21との上下方向の隙間はスライドを確保するための僅かなものにすぎない。そのため、その初期位置(格納位置)でアンダートレイ20は操作レバー上にガタなく支持され、車両の走行時での振動に起因するアンダートレイのガタの発生が防止される。
また、アンダートレイの後端の把持片20dが操作レバーの中間バー16bを把持することで、急停車時等におけるアンダートレイ20の前方飛び出しが確実に防止される。
【0037】
この格納位置では、支持軸21がアンダートレイの側壁のガイド溝21cを挿通して操作レバーのサイドアームに連結、固定されるとともに、把持片20dに中間バー16が把持されて、アンダートレイ、操作レバーが一体化されている。そのため、図5(A)に矢視するように、アンダートレイ前端の取手片20bを掴んで引き上げれば、支持軸21が側壁のガイド溝20c’の上端を押圧して取手片の引き上げに伴って操作レバーの前端部が取手片とともに引き上げられ、左右のサイドアームが上方に揺動されて、シートスライド装置のロック機構のロックが解除される(ロックオフされる)。つまり、アンダートレイ前端の取手片20bの引き上げによってロックオフされ、アンダートレイ前端の取手片は、平面コ形状の従来の操作レバー(タオルバー)におけるフロントバーのようなロックオフ機能を持つ。
【0038】
アンダートレイ前端の取手片20a2による操作レバー16の引き上げ操作のもとでシートスライド装置のロック機構をロックオフすれば、前後方向へのシート10のスライドが可能になる。そして、シート10の任意の位置において、アンダートレイの取手片20a2に対する操作力(引き上げ力)を除けば、引き上げ前の位置(初期位置)へのアンダートレイ20の下降、ひいては初期位置への操作レバー16の下降に伴うロック機構のロックにより、シートはその任意の位置に保持(ロック)される。
【0039】
図5(A)において、アンダートレイ前端の取手片20bを掴んで引き上げることなく前方に引けば、切欠き20d’の上下に位置する把持片の舌片20d1’、20d2’が中間バー16bに押圧されて半径方向外方に撓んで(逃げて)、把持片20dによる中間バー16bの把持が外れる。
【0040】
把持片20dによる中間バー16bの把持が外れれば、アンダートレイ20は前方にスライド可能となる。そのため、把持片20dによる中間バー16bの把持が外れてからもアンダートレイ20を前方に引けば、操作レバーのサイドアーム16aに固定された左右2つずつの支持軸(ボルト)21の支持のもとで、アンダートレイ底部のガイド溝付の側壁20cを支持レール、支持軸21をガイド(ガイドピン)として、図5(B)に示すように、アンダートレイ20が前方にスライドされ、引き出される。
【0041】
図5(C)に示すように、側壁のガイド溝の後端20c’−2が前後に離反した2つの支持軸のうちの後の支持軸21−2に押圧されるまでアンダートレイ20を引き出すことができ、通常、この引き出し位置(引き出し限度位置)において受け皿部20a(図3(A)参照)への収納、取出しがなされる。もちろん、側壁のガイド溝の後端20c’−2が後の支持軸21−2に押圧される前にアンダートレイ20の引き出しを止めてその位置で受け皿部20aへの収納、取出しを行ってもよい。
【0042】
このように把持片20dが中間バー16bを把持し、側壁のガイド溝の前端20c’−1が、前後に離反した2つの支持軸のうちの前の支持軸21−1に押圧される図5(A)に示す位置(初期位置、格納位置)とガイド溝の後端20c’−2が後の支持軸に押圧される図5(A)に示す位置との間で、アンダートレイ20は前後にスライドされる。
【0043】
底部の左右の側壁21に設けたガイド溝21c’が前後に離反した支持軸21に摺接、支持されるとともに、前後左右の4つの支持点が十分に離反して位置するため、アンダートレイ20は操作レバー上に安定して支持され、ガタつくことなく円滑に引き出される。
また、側壁のガイド溝の前後の端20c’−1、20c’−2が、前後の支持軸21(21−1、21−2)に押圧するまでアンダートレイを引き出し、押し込むだけでその引き出し位置、初期位置(格納位置)が自動的に得られ、アンダートレイの引き出し、押し込みが迅速に行える。
【0044】
前後に離反した2つの支持軸21(21−1、21−2)は、アンダートレイの側壁のガイド溝20cに組み合わされることによってアンダートレイのスライドをガイドするガイド(ガイドピン)として機能するとともに、アンダートレイの前後のスライドを規制するストッパとして、つまり、アンダートレイの過剰な引き出し、押し込みを規制するストッパとしても機能する。
【0045】
実施例では、支持軸21、およびそれに対応するサイドアームの挿通孔16a’は、前後に離反して2つ設けられているが、前後に離反して複数配置されていれば足り、その数は2つに限定されない。
【0046】
また、操作レバーのサイドアーム前端部に形成した挿通孔16a’をねじ孔として、このねじ孔に先端のねじ部が螺着されるボルトとして支持軸21が具体化されているが、アンダートレイの側壁のガイド溝20cとの組み合わせのもとでアンダートレイ20のスライドをガイドし、そのスライドを規制すれば足り、ねじ孔、ボルトの組合せに限定されない。
たとえば、サイドアームの挿通孔16a’をねじ孔とせず、サイドアームに溶着したナットにボルト(支持軸)21をねじ止めしてもよい。また、支持軸21をボルトとしないでヘッド付で先端に嵌合溝の形成された軸部材とし、側壁のガイド溝21c’、およびサイドアーム前端部の挿通孔16a’を介して延びて先端の嵌合溝にスナップリングを嵌合させて支持軸をサイドアームに連結、固定してもよい。
【0047】
アンダートレイ20は平面略H形状の操作レバー上に置かれ、操作レバー16はアンダートレイの下に位置しているため、アンダートレイの引き出し軌跡に干渉しない。そして、操作レバーの中間バーを把持する把持片をアンダートレイに形成するとともに、アンダートレイ底部の左右にガイド溝付の側壁を設けてガイド溝を挿通する支持軸を操作レバーの左右のサイドアームに連結するだけで足り、アンダートレイ、操作レバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
【0048】
アンダートレイ底部に設けたガイド溝付の側壁20cが、アンダートレイの支持レールとして機能しており、支持レールをシートクッションの裏側に設けることなくアンダートレイ底部に設けたこの構成では、図2(B)に示すように、操作レバーの左右のサイドアーム16aを越えてその底部を幅方向に広げられ、アンダートレイの有効幅が過剰な制限を受けることなく十分に拡張(拡幅)できる。
また、アンダートレイ前端の取手片が操作レバーのロックオフバーとして機能するため、操作レバーの前端にロックオフバーを設ける必要がなく、ロックオフバーを把持するための隙間の確保が不要となり、アンダートレイの有効長が過剰な制限を受けることなく十分に拡張できる。
過剰な制限を受けることなくアンダートレイの有効長、有効幅が設定できるため、物を収納するための受け皿部を広く設定できる。
【0049】
アンダートレイ底部のガイド溝付き側壁20cが支持レールとなるとともに、アンダートレイの把持片20dが中間バー16bを把持した状態では、アンダートレイ前端の取手片20bが操作レバー16のロックオフバーとして機能する。そして、操作レバーの中間バー16bを把持する把持片20dをアンダートレイ20に形成するとともに、アンダートレイ底部の左右にガイド溝付の側壁20cを設けてそのガイド溝21c’を挿通する支持軸21を操作レバーの左右のサイドアーム16aに連結するだけで足り、アンダートレイ20、操作レバー16が簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
【0050】
支持レールをシートクッションの裏側に設けることなくアンダートレイ底部に設けた構成では、操作レバーの左右のサイドアーム16aを越えてその底部を幅方向に広げられ、アンダートレイ20の有効幅が過剰な制限を受けることなく十分に拡張(拡幅)できる。また、アンダートレイの取手片20bが操作レバー16のロックオフバーとして機能するため、操作レバーの前端にロックオフバーを設ける必要がなく、ロックオフバーを把持するための隙間の確保が不要となり、アンダートレイ20の有効長が過剰な制限を受けることなく十分に拡張できる。そして、過剰な制限を受けることなくアンダートレイ20の有効長、有効幅が設定できるため、物を収納するための上面の受け皿部を広く設定できる。
【0051】
上記のように本発明によれば、アンダートレイの有効長、有効幅を過剰に制限することなく、アンダートレイ、操作レバーが簡単な構成のもとで互いに干渉することなく配置できる。
【0052】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、自動車のシートに限定されず、シートスライド装置のロック機構のロックを操作レバーで解除する飛行機、船舶、電車等の車両のシートに広範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0054】
10 車両用シート
12 シートスライド装置
16 操作レバー
16a サイドアーム
16b 中間バー
20 アンダートレイ
20a 受け皿部
20b 取手片
20c 側壁
20c’ ガイド溝
20c’−1、20c’−2 ガイド溝の前端、後端
20d 把持片
20d’ 切欠き
21 支持軸(ボルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面を受け皿部とするとともにその前端に取手片を持つアンダートレイをシートクッションの下方に引き出し可能に配置するとともに、シートスライド装置のロック解除のための操作レバーをシートクッション下方にアンダートレイと併設したシートスライド装置付の車両用シートにおいて、
サイドアームの略中央で左右のサイドアーム間に中間バーを架設して操作レバーを平面略H形状に形成し、
アンダートレイは、その底部の左右端部に前後方向に延びた対向する一対の側壁を持つとともに、操作レバーの中間バーが後方から着脱可能に把持される把持片をその後端に持ち、
前後方向に延びた長孔形状のガイド溝が左右の側壁に形成され、
前後方向に離反した位置でガイド溝に挿通された複数の支持軸が、操作レバーの左右のサイドアームの前端部に連結されて、アンダートレイが前後方向にスライド可能に操作レバー上に支持されたことを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
アンダートレイ底部の左右の側壁がアンダートレイの後端まで延出され、把持孔が側壁の延出部に形成された請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
把持片が左右の側壁の間で左右方向に離間して複数設けられている請求項1または2記載の車両用シート。
【請求項4】
支持軸は、ボルトからなり、側壁のガイド溝を介して延び、サイドアームの前端部に形成されたねじ孔に先端のねじ部が螺着された請求項1〜3のいずれか記載の車両用シート。
【請求項5】
支持軸は、ボルトからなり、側壁のガイド溝、およびサイドアームの前端部に形成された挿通孔を介して延びてナットにその先端のねじ部が螺着された請求項1〜3のいずれか記載の車両用シート。
【請求項6】
支持軸は、ヘッド付で先端に嵌合溝の形成された軸部材とされ、側壁のガイド溝、およびサイドアームの前端部の挿通孔を介して延びて嵌合溝にスナップリングを嵌合させてサイドアームに固定された請求項1〜3のいずれか記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162106(P2012−162106A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21944(P2011−21944)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】