説明

車両用シート

【課題】シート性能を極力維持しつつ、送風装置の送風を着座側に効率良く導くことにある。
【解決手段】表皮材等の他部材を凹部24に引込み状に配置可能であるとともに、送風装置から吹出される気体を、クッション材4Pの流路部80を介して乗員に送風可能である車両用シート2において、流路部80を、凹部24とは異なるクッション材4Pの部位に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置を内蔵の車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、シートクッションと、シートバックと、送風装置を有する車両用シートが公知である(特許文献1を参照)。
送風装置は、遠心式の送風機構(装置軸方向から外気を吸気しつつ遠心方向に送風する機構)を有する。
またシートクッションは、シート外形をなすクッション材と、クッション材の流路部と、布帛製の表皮材を有する。クッション材は、乗員を支持可能な弾性部材であり、例えばポリウレタンフォーム(連続気泡構造を備えた発泡樹脂)にて形成できる。
【0003】
そして流路部は、連通部と、通気孔と、蓋部材を有する。連通部は、クッション材裏側の凹み部位(線状)である。また通気孔は、一端側が、クッション材の着座側に開口し、他端側が連通部に連通する。そして蓋部材は、クッション材の裏面に配置可能な面状部材であり、送風装置と連通部を連通可能な孔部を有する。
公知技術では、クッション材の裏面(通気孔,連通部)を蓋部材で覆いつつ、クッション材の着座側を表皮材で被覆する。つぎに送風装置を、シートクッション下方に配設しつつ、孔部を介して連通部に連通する。そして送風装置から吹出される気体を、クッション材の流路部(孔部,連通部,通気孔)を通じて乗員に送風する。
【0004】
ここで上述の車両用シートでは、クッション材を表皮材で被覆する際に、表皮材一部をクッション材に係止できることが望ましい。
例えば特許文献2では、表皮材一部を、係止構造(係止部,被係止部,リング材)にてクッション材着座側の凹部に係止する。リング材は、略C字状の線状部材であり、工具などで閉め状態(略O字状)とされる。
係止部は、表皮材側の構成であり、第一ワイヤと、帯状の布材を有する。布材は、内折り状態で表皮材一部に取付けられており、その内部に第一ワイヤが挿設される。また被係止部は、クッション材側の構成であり、第二ワイヤを有する。第二ワイヤは、クッション材内に埋設されて、第一ワイヤに対面可能に配置する。そして第二ワイヤの一部が、凹部(クッション材着座側の凹み部位)から露出する。
公知技術では、表皮材一部を凹部に引込みつつ、第一ワイヤと第二ワイヤをリング材に通したのち、リング材を閉め状態とする。こうすることでクッション材を表皮材で被覆しつつ、表皮材一部を、クッション材の凹部に係止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−8334号公報
【特許文献2】特開2002−186794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで公知技術では、クッション材が、着座側の凹部と、裏側の連通部を有する。このため凹部と連通部の重なる部分では、クッション材の厚み寸法が極端に小さくなるなどして、エア漏れが生じるおそれがあった(送風効率にやや劣る構成であった)。
もっとも着座側の凹部を省略してクッション材の厚み寸法を確保してもよいが、そうするとシートの利便性にやや欠ける(シート性能に劣る)構成となる。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート性能を極力維持しつつ、送風装置の送風を着座側に効率良く導くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、シート外形をなして弾性的に乗員を支持可能なクッション材と、シート構成部材に配設の送風装置と、クッション材の着座側に設けた溝部と、溝部の底面に設けた凹部を有する。
そして本発明では、表皮材等の他部材を凹部に引込み状に配置可能である(利便性を有する)とともに、送風装置から吹出される気体を、クッション材の流路部を介して乗員に送風可能である。
【0008】
この種のシート構成では、シート性能(利便性など)を極力維持しつつ、送風装置の送風を着座側に効率良く導けることが望ましい。
そこで本発明では、上述の流路部を、凹部形成位置とは異なるクッション材の部位に設けることとした。こうすることでクッション材の厚み寸法を極端に小さくすることなく、送風装置の送風を着座側に導くことができる(送風効率に優れる構成である)。
【0009】
第2発明の車両用シートは、第1発明の車両用シートであって、上述のクッション材が、着座側を構成する第一クッション部と、第一クッション部の着座側に設けた凹部と、第一クッション部と同材質の第二クッション部とを有する。また流路部が、第一クッション部を貫通する第一通気孔と、第一クッション部と第二クッション部の間に設けた連通部と、第二クッション部を貫通して送風装置に連通可能な第二通気孔を有する。
そして着座側とは異なる第一クッション部の裏面に第二クッション部を当接配置して、第一通気孔と第二通気孔を連通部で連通することにより、送風装置から吹出される気体をクッション材の着座側に導く構成とした。
本発明では、第一クッション部と第二クッション部(共に同材質)にて流路部を構成することにより、シート性能(着座性など)を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、シート性能を極力維持しつつ、送風装置の送風を着座側に効率良く導くことができる。また第2発明によれば、シート性能を良好に維持しつつ、送風装置の送風を着座側に効率良く導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両用シートの斜視図である。
【図2】フレーム部材の斜視図である。
【図3】クッション材の分解斜視図である。
【図4】クッション材の別角度の分解斜視図である。
【図5】(a)は、図4のVa−Va線断面図であり、(b)は、図4のVb−Vb線断面図である。
【図6】シートクッションの縦断面図である。
【図7】クッション材一部と表皮材一部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜図7を参照して説明する。各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
図1の車両用シート2は、シート構成部材(シートクッション4、シートバック6、ヘッドレスト8)と、レール部材9を有する。
これらシート構成部材は、各々、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材を被覆の表皮材(4S,6S,8S)を有する。
またレール部材9は、アッパレール9aと、アッパレール9aに摺動可能に組付けられるロアレール9bを有する。そしてシートクッション4をアッパレール9aに取付けることで、車両用シート2が、ロアレール9b上をスライド移動可能となる。
【0013】
[シートクッション]
シートクッション4は、基本構成(4F,4P,4S)と、送風装置40と、複数の溝部(21a,21b,22)と、凹部24と、流路部80を有する(図1〜図7を参照、各部材の詳細は後述)。
本実施例では、フレーム部材4F上にクッション材4Pを配置するとともに、クッション材4Pを表皮材4Sで被覆する。このとき表皮材一部(中表部13)を、複数の溝部(21a,21b,22)に引込みつつ凹部24に係止可能である(利便性を有する)。
そして送風装置40から吹出される気体を、クッション材4Pの流路部80を通じて乗員に送風する。この種のシート構成では、シート性能(利便性等)を極力維持しつつ、送風装置40の送風を着座側に効率良く導けることが望ましい。
そこで本実施例では、後述の構成により、シート性能を極力維持しつつ、送風装置40の送風を着座側に効率良く導くこととした。以下各構成について詳述する。
【0014】
(フレーム部材)
フレーム部材4Fは、略矩形の枠状部材であり、前方フレーム12と、一対の側方フレーム14と、後方フレーム16と、支持部材15を有する(図2及び図6を参照)。
前方フレーム12は、シートクッション4の前部を構成する部材であり、掛止突起13aを有する。掛止突起13aは、前方フレーム12上に突出する平板部位(略逆L字状)であり、前方フレーム12から立設してシート前方に屈曲する。
また一対の側方フレーム14は、それぞれシートクッション4の側部を構成する平板部材であり、シート側方において互いに対面状に配置する。そして後方フレーム16は、フレーム部材4Fの後部を補強する棒状部材であり、一対の側方フレーム14の間に橋渡し状に配設できる。
そして支持部材15は、線状(上方視で連続したS字状)の部材であり、前方フレーム12と後方フレーム16の間に掛渡し状に配置できる(図6を参照)。支持部材15の前部は、シート幅方向に延びており、前方フレーム12(掛止突起13a)に掛止できる。また支持部材15の後部は略J字状とされており、後方フレーム16に掛止できる。
【0015】
(クッション材)
クッション材4Pは、シート外形をなして弾性的に乗員を支持可能な部材(略長方形状)であり、第一クッション部24fと、第二クッション部24sを有する(図3〜図6を参照)。
ここでクッション材4Pの材質は特に限定しないが、ポリウレタンフォームなどの樹脂を例示できる。本実施例では、第一クッション部24fと第二クッション部24sを同材質の素材で形成することで、シートの着座性を良好に維持できる。なおクッション材4Pの裏面にはバッキング層B(樹脂製の保護層)を形成できる。
【0016】
(第一クッション部)
第一クッション部24fは、クッション材4Pの着座側を構成する部材(略長方形状)である(図3〜図5を参照)。本実施例の第一クッション部24fは、掛止部32と、収納部34と、組付け部36と、後述の流路部80の構成を有する。
掛止部32は、後方フレーム16を嵌装する部位であり、第一クッション部24fの後部裏面に形成できる。本実施例の掛止部32は、シート幅方向に伸びる凹み箇所(断面視で略半円状)である。
また収納部34は、後述の第二クッション部24sを嵌装可能な凹み箇所(略矩形)であり、第一クッション部24fの前部裏面に形成できる。
そして組付け部36は、収納部34底面の凸部位であり、後述の第二クッション部24s(被組付け部38)に嵌込み可能である。本実施例では、一対の組付け部36(直線状)を、収納部34の側壁から中央に向かって(シート幅方向に)延設するとともに、両者の間に、後述の流路部80を形成可能な隙間(クリアランスC1)を設ける。
【0017】
(溝部・凹部)
複数の溝部(第一溝部21a,21b、第二溝部22)は、いずれも線状の凹み部位であり、第一クッション部24fの着座側に穿設できる(図3〜図5を参照)。
第一溝部21a,21bは、シート幅方向に延びる凹み部位であり、第二溝部22は、シート前後方向に延びる凹み部位である。
また凹部24は、第一溝部21aの底面に設けた凹み箇所であり、後述の係止構造を配置できる(図5を参照)。ここで典型的な凹部24の形成位置におけるクッション材4Pの厚み寸法T1は、通常の溝部形成位置におけるクッション材4Pの厚み寸法T2よりも小さくなる(なお本実施例では、組付け部36によりクッション材の厚み寸法がある程度確保される構成でもある)。
本実施例では、一対の第二溝部22をシート両側に形成する。つぎに一対の第一溝部21a,21bを、それぞれシート幅方向に横断して形成しつつ、同溝部両端をそれぞれ第二溝部22に連通する。
このとき一方の第一溝部21aがシート前方に配置するとともに、他方の第一溝部21bが、シート後方に配置して第一溝部21aに並列する。そして凹部24が、一方(シート前方側)の第一溝部21aの両側部にそれぞれ形成される。
【0018】
(第二クッション部)
第二クッション部24sは、収納部34に配置可能な部材(略矩形)であり、被組付け部38と、後述の流路部80の構成を有する(図3〜図5を参照)。
被組付け部38は、第二クッション部24sの表面(第一クッション部を臨む面)の凹み部位(直線状)であり、上述の組付け部36を嵌装可能である。
本実施例では、シート幅方向に伸びる一対の被組付け部38を形成して、それぞれ組付け部36に対面可能に配置する。各被組付け部38は、それぞれ組付け部36に対面配置しており、両被組付け部38の間に、後述の流路部80(第二連通部84s)を形成可能な隙間(クリアランスC2)が設けられる。
【0019】
(流路部)
流路部80は、送風装置40(後述)の送風を着座側に導く流路である(図3〜図6を参照)。本実施例の流路部80は、第一通気孔82fと、第二通気孔82sと、連通部(第一連通部84f,第二連通部84s)を有する(なお図では、便宜上、第一通気孔の一部にのみ符号を付す)。
第一通気孔82fは、第一クッション部24fを厚み方向に貫通する貫通孔(略円形)である。本実施例では、複数の第一通気孔82fを、第一クッション部24fの前部側に形成する。このとき複数の第一通気孔82fを、一方の第一溝部21aの前方位置と後方位置にそれぞれ設けて、凹部24とは異なる位置に配置する。
また第二通気孔82sは、第二クッション部24sを厚み方向に貫通する貫通孔(略矩形)であり、送風装置40に連通可能である。本実施例では、第二通気孔82sを、第二クッション部24sの後方位置に設けて、凹部24とは異なる位置に配置する。
【0020】
また連通部は、第一通気孔82fと第二通気孔82sを連通する部位であり、第一連通部(84fa,84fb)と、第二連通部84sを有する。
第一連通部(84fa,84fb)は、第一クッション部24fの裏面に設けた凹み部位(線状)である。本実施例では、第一溝部21aの前方位置と後方位置(凹部24とは異なるクッション材の位置)に、それぞれ第一連通部84faを形成できる。
例えば本実施例では、第一溝部21aの前方位置に、略U字状の第一連通部84faを形成する。略U字状の第一連通部84faは、自由端側が枝分かれしつつ、溝部前方に配置の第一通気孔82fにそれぞれ連通する(図4を参照)。
また第一溝部21aの後方位置に、線状の第一連通部84fbを形成する。線状の第一連通部84fbは、その両端部において、溝部後方に配置の第一通気孔82fにそれぞれ連通する。
【0021】
また第二連通部84sは、第二クッション部24sの表面に設けた凹み部位(線状)である(図3を参照)。
本実施例では、第二連通部84sを、一対の被組付け部38の間(凹部24とは異なるクッション材の位置)に形成する。第二連通部84sは、第二通気孔82sからシート前方に向かって(溝部を横断する位置まで)延設される。
そして後述するように第一クッション部24fと第二クッション部24sを当接させる。このとき第二連通部84sの少なくとも一部が、上述の第一連通部84fa、84fbの双方に重なることで両連通部が連通状態となる。
【0022】
[クッション材の配設]
図3〜図5を参照して、第一クッション部24fに第二クッション部24sを組付けつつ、支持部材15上にクッション材4Pを取付ける。
このとき本実施例では、被組付け部38に組付け部36を嵌装しつつ(位置決めしつつ)、第二クッション部24sを収納部34に配置する。このように着座側とは異なる第一クッション部24fの裏面に第二クッション部24sを当接配置させて、第一連通部84fa、84fbと第二連通部84sを重ねて両連通部を連通させる。そして両連通部を介して、第一通気孔82fと第二通気孔82sが連通状態となる。
【0023】
(送風装置)
送風装置40は、中空の箱体(短尺な円筒状)であり、送風機構42と、第一開口部44fと、第二開口部44sと、管部材46を有する(図6を参照)。管部材46(典型的に蛇腹状)は、送風装置40と流路部80を連通する管材である。
また送風機構42は、小径の円筒状部材であり、送風装置40内に収納できる。送風機構42として、例えば遠心式の機構(装置軸方向から吸気しつつ遠心方向に送風する機構)を使用できる。この種の送風機構42として、多翼ファン(シロッコファン)、プレートファン、ターボファン、翼形ファン、リミットロードファンを例示できる。
そして第一開口部44fは、送風装置40の裏面側(装置の軸方向)に形成された貫通孔であり、送風機構42に気体(外気)を供給できる。また第二開口部44sは、送風装置40の周面側(装置の遠心方向)に形成された貫通孔であり、送風機構42から吹出される気体を装置外部に排出(送風)できる。
【0024】
[送風装置の取付け作業]
本実施例では、送風装置40を、支持部材15の中央下方(第二通気孔82sの後方)に取付ける(図6を参照)。
送風装置40は、図示しない留め具を用いて支持部材15に取付けることができる。そして管部材46の一端を第二開口部44sに連通して、管部材46の他端を第二通気孔82sに接続する。
こうすることで送風装置40から吹出される気体が、流路部80(第二通気孔82s、連通部84fa,84fb,84s、第一通気孔82f)を通過して乗員に供給可能となる。
【0025】
(表皮材)
表皮材4Sは、クッション材4Pを被覆可能な袋状部材であり、複数の表皮ピース(4Sa,4Sb)を縫合して形成できる(図6及び図7を参照)。表皮材4S(素材)は特に限定しないが、通気性を有する布帛(織物,編物,不織布)を例示できる。
そして本実施例では、隣り合う表皮ピース(4Sa,4Sb)の端部をそれぞれ内折状に重ね合わせて、中表部13を形成する。中表部13(表皮材一部)は、シート内方に突出して、シート幅方向又は前後方向に延びる線状となる。そして中表部13を、後述の係止構造を介して凹部24内に引込み状に係止する。
【0026】
(係止構造)
係止構造は、係止部52と、被係止部54と、リング材56を有する(図7を参照)。リング材56は、略C字状の部材であり、工具などで閉め状態(略O字状)となる。
係止部52は、第一ワイヤ52aと、布材52bを有する。第一ワイヤ52a(棒状部材)は、中表部13に沿って配置可能な長さ寸法を有する。また布材52bは、中表部13に沿って配置可能な帯状部材である。
本実施例では、布材52bを内折しつつ、中表部13に取付ける。そして布材52bの内部に第一ワイヤ52aを挿入してシート幅方向に延設する。
また被係止部54は、凹部24内に形成される部位であり、第二ワイヤ54aを有する。第二ワイヤ54aは、クッション材4P内に埋設された棒状部材である。本実施例では、第二ワイヤ54aを第一クッション部24fに埋設してシート幅方向に配置する。そして第二ワイヤ54aを凹部24から露出させて、第一ワイヤ52aに対面可能とする。
【0027】
[表皮材の被覆作業]
図6及び図7を参照して、被係止部54に係止部52を係止しつつ、クッション材4Pを表皮材4Sで被覆する。
本実施例では、中表部13を、複数の溝部(21a,21b,22)に引入れつつ、凹部24に係止する。このとき中表部13を凹部24に引込みつつ、第一ワイヤ52aと第二ワイヤ54aをリング材56に通したのち、リング材56を閉め状態とする。こうすることでクッション材4Pを表皮材4Sで被覆しつつ、中表部13(表皮材一部)を凹部24に係止できる(利便性に優れる構成である)。
【0028】
[送風装置の駆動]
図6を参照して、送風装置40に外気を供給しつつ、送風装置40から吹出される気体を、流路部80を通じて乗員に送風する。
このとき本実施例では、流路部80が、凹部24とは異なる位置に形成されている(図3〜図5を参照)。このため、クッション材4Pの厚みを極端に小さくすることなく、送風装置40の送風を着座側に導くことができる(送風効率に優れる構成である)。すなわち本実施例では、凹部24の形成位置におけるクッション材4Pの厚み寸法T1が適正に維持されることで、同箇所におけるエア漏れを防止又は低減できる(図5を参照)。
【0029】
以上説明したとおり、本実施例では、流路部80を、凹部形成位置とは異なるクッション材4Pの部位に設けることとした。こうすることでクッション材4Pの厚み寸法を極端に小さくすることなく、中表部13を凹部24に係止できる(利便性に優れる構成である)とともに、送風装置40の送風を着座側に導くことができる。
また本実施例では、第一クッション部24fと第二クッション部24s(共に同材質)にて流路部80を構成することにより、着座性などを良好に維持できる。
このため本実施例によれば、シート性能を極力維持しつつ、送風装置40の送風を着座側に効率良く導くことができる。
【0030】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、表皮材一部(他部材)を凹部24に引込む例を説明したが、他部材の種類を限定する趣旨ではない。
他部材として、ヒータ部材やセンサ部材等の各種の面状部材を例示できる。例えばヒータ部材は、シート表面に配置可能な面状部材であり、第一ヒータ部と、第二ヒータ部と、連結部を有する。連結部は、第一ヒータ部と第二ヒータ部(いずれも略矩形状)を連結する部位であり、典型的に各ヒータ部よりも幅狭の帯状部位である。そこで第一ヒータ部と第二ヒータ部をクッション材4P材上に配置しつつ、連結部を、凹部24内に引込み状に配置する(コンパクトに配置する)ことができる(図5を参照)。
【0031】
(2)また本実施形態では、第一クッション部24fと第二クッション部24sを有するクッション材4Pを例示したが、クッション材の構成を限定する趣旨ではない。また第一クッション部と第二クッション部の構成も適宜変更可能である。
例えば第二クッション部の代替として、樹脂製の蓋部材を使用できる。蓋部材は、第二クッション部と略同一の構成を有して、収納部34に配置できる。
【0032】
(3)また本実施形態では、溝部(21a,21b,22)と凹部24の構成を例示したが、これら部位の構成(形成位置、形成数)を限定する趣旨ではない。凹部は、単数設けてもよく複数設けてもよい。また凹部は、複数の溝部の少なくとも一部位に設けることができる。
(4)また本実施形態では、流路部80の構成(形成位置、形成数)を例示したが、流路部の構成を限定する趣旨ではない。例えば第一通気孔と第二通気孔は、それぞれ独立に単数又は複数設けることができる。また第一連通部と第二連通部も、それぞれ独立に単数又は複数設けることができる。
(5)また本実施形態では、シートクッション4を一例に説明したが、本実施例の構成は、シートバックなどのシート構成部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
2 車両用シート
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
4F フレーム部材
4P クッション材
4S 表皮材
13 中表部
21a,21b 第一溝部
22 第二溝部
24 凹部
24f 第一クッション部
24s 第二クッション部
40 送風装置
52 係止部
54 被係止部
80 流路部
82f 第一通気孔
82s 第二通気孔
84fa,84fb 第一連通部
84s 第二連通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションやシートバックなどのシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、シート外形をなして弾性的に乗員を支持可能なクッション材と、前記シート構成部材に配設の送風装置と、前記クッション材の着座側に設けた溝部と、前記溝部の底面に設けた凹部を有し、
表皮材等の他部材を前記凹部に引込み状に配置可能であるとともに、前記送風装置から吹出される気体を、前記クッション材の流路部を介して乗員に送風可能である車両用シートにおいて、
前記流路部を、前記凹部形成位置とは異なる前記クッション材の部位に設けた車両用シート。
【請求項2】
前記クッション材が、着座側を構成する第一クッション部と、前記第一クッション部の着座側に設けた前記凹部と、前記第一クッション部と同材質の第二クッション部とを有し、
前記流路部が、前記第一クッション部を貫通する第一通気孔と、前記第一クッション部と前記第二クッション部の間に設けた連通部と、前記第二クッション部を貫通して前記送風装置に連通可能な第二通気孔を有し、
着座側とは異なる前記第一クッション部の裏面に前記第二クッション部を当接配置して、前記第一通気孔と前記第二通気孔を前記連通部で連通することにより、前記送風装置から吹出される気体を、前記クッション材の着座側に導く構成とした請求項1に記載の車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224234(P2012−224234A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94101(P2011−94101)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】