説明

車両用シート

【課題】シートバックを前倒れ位置と後倒れ位置との間でモータの駆動によって傾倒し、リクライニング強度を十分確保する。
【解決手段】リヤシート10では、ロック機構44のロックが解除された際に、モータ74が駆動されると、セクタギヤ88が前倒れ方向又は後倒れ方向へ回転される。この際には、シートバック側ブラケット34が回転されることで、シートバックが前倒れ方向又は後倒れ方向へ傾倒される。これにより、シートバックを、使用位置と前倒れ位置との間及び使用位置と後倒れ位置との間で、モータ74の駆動によって傾倒できる。さらに、シートバックが使用位置と後倒れ位置との間に傾倒された後では、シートバックがロック機構44によって傾倒不能にロックされる。このため、シートバックはロック機構44によって保持される。これにより、シートバックのリクライニング強度を十分確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動によって、シートバックが傾倒される車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のシート装置では、リクライニング装置に設けられたロック機構部がロックすることで、シートバックがリクライニング位置において傾倒不能にされる。これにより、このシート装置では、シートバックがロック機構部によって保持されるため、シートバックに作用する荷重に対して十分なリクライニング強度を確保できるという利点がある。
【0003】
また、このシート装置では、ロック機構部のロックが解除されることにより、シートバックが渦巻きばねの付勢力によって使用位置(起立位置)から前倒れ位置へ傾倒される。一方、シートバックが前倒れ位置から使用位置へ引き起こされる際には、回動装置(復帰機構)のモータが駆動することによってシートバックが使用位置へ復帰される。これにより、このシート装置では、シートバックの前倒れ位置から使用位置への復帰を遠隔操作することができ、利便性を向上できるという利点もある。
【0004】
しかしながら、このシート装置では、シートバックが前倒しされる際に、渦巻きばねの付勢力に加えて、自重によりシートバックが加速する。これにより、シートバックの前倒れ時の傾倒速度が速くなるという問題がある。
【0005】
また、車両のシート装置では、モータの駆動によってシートバックを使用位置から後方へ傾倒させて、シートバックをリクライニング位置へ傾倒できる所謂パワーリクライニング機構を備えたものもある(特許文献2参照)。このパワーリクライニング機構を備えたシート装置では、モータの駆動によってシートバックをリクライニング位置へ傾倒できるため、利便性を向上できるという利点がある。
【0006】
一方、このパワーリクライニング機構を備えたシート装置は、前述のシート装置のようなロック機構部を備えておらず、リクライニング位置におけるシートバックがパワーリクライニング機構によって保持される。このため、パワーリクライニング機構が、シートバックに作用する荷重に対して、該荷重に耐えうるリクライニング強度を備える必要がある。
【0007】
ところで、リヤシートでは、シートバックの上部に配置されたシートベルト装置と車両のベルトアンカとのシート幅方向の距離が、シート幅方向両側の両側席に比してシート幅方向中央の中央席の方が大きく設定されている。これにより、リヤシートの中央席におけるシートバックに作用する荷重が、リヤシートの両側席におけるシートバックに作用する荷重に比して大きくなる。このため、リヤシートの中央席では、前述したリクライニング装置と同等のリクライニング強度を備える必要がある。
【0008】
しかしながら、パワーリクライニング機構では、該リクライニング装置と同等のリクライニング強度を備えていないため、パワーリクライニング機構をリヤシートの中央席に適用することが困難であった。
【0009】
以上により、車両のシート装置では、前述した両者のシート装置の利点を備えつつ、前倒れ時の傾倒速度が速くなることを抑制できることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−7386号公報
【特許文献2】特開2001−149162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事実を考慮し、シートバックを前倒れ位置と後倒れ位置との間でモータの駆動によって傾倒でき、リクライニング強度を十分確保できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の車両用シートは、車体に連結されたシートクッションと、前記シートクッションに対して使用位置と前倒れ位置との間及び前記使用位置と後倒れ位置との間で傾倒可能に構成されたシートバックと、前記使用位置と前記後倒れ位置との間において前記シートバックを傾倒不能にロックすると共に、前記ロックを解除させる解除機構を有するロック機構と、前記車体に回転可能に支持されると共に前記シートバックに連結され、回転することで前記シートバックを傾倒させる回転部材と、駆動することで回転力を発生するモータと前記モータ及び前記回転部材に連結されて前記モータの回転力を前記回転部材に伝達する伝達部とを有し、前記解除機構によって前記ロック機構の前記ロックが解除された際に前記モータを駆動することで前記回転部材を回転させて前記シートバックを前記使用位置と前記前倒れ位置との間及び前記使用位置と前記後倒れ位置との間で傾倒させる駆動機構と、を備えている。
【0013】
請求項1に記載の車両用シートでは、使用位置と後倒れ位置との間において、シートバックが、ロック機構のロックによって傾倒不能にされており、ロック機構のロックが解除機構によって解除されることで、シートバックが傾向可能にされる。また、シートバックには回転部材が連結されており、回転部材は駆動機構の伝達部を介して駆動機構のモータと連結されている。
【0014】
ここで、ロック機構のロックが解除された際に、駆動機構のモータが駆動することで、回転部材が回転されて、シートバックが使用位置と前倒れ位置との間及び使用位置と後倒れ位置との間で傾倒される。これにより、シートバックが、前倒れ位置と後倒れ位置との間で、モータの駆動によって傾倒される。さらに、シートバックが使用位置と後倒れ位置との間に傾倒された後では、シートバックがロック機構によって傾倒不能にロックされるため、リクライニング強度が十分確保される。
【0015】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記回転部材に突出して設けられた突出ピンと、前記伝達部の一部を構成すると共に、前記突出ピンと係合されることで前記伝達部を前記回転部材に連結させる係合溝を有し、前記モータの駆動によって回転されることで前記回転部材を回転させる回転体と、を備えている。
【0016】
請求項2に記載の車両用シートでは、駆動機構に回転体が設けられており、回転体の係合溝が回転部材の突出ピンと係合されることで、伝達部が回転部材に連結される。そして、回転体がモータの駆動によって回転されることで、回転部材が回転される。これにより、突出ピンに係合する係合溝を回転体に設けることで、例えば、従来のシートバックを傾倒させるリクライニング装置を利用しつつ、モータの駆動によってシートバックを前倒れ位置と後倒れ位置との間で傾倒できる。
【0017】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記駆動機構は、押圧されることで前記シートバックの前記使用位置への傾倒を検出する使用位置検出スイッチと、押圧されることで前記シートバックの前記後倒れ位置への傾倒を検出する後倒れ位置検出スイッチと、押圧されることで前記シートバックの前記前倒れ位置への傾倒を検出する前倒れ位置検出スイッチと、を有し、前記回転体は、前記使用位置検出スイッチ、前記後方位置検出スイッチ、及び前記前倒れ位置検出スイッチを押圧可能に構成されている。
【0018】
請求項3に記載の車両用シートでは、駆動機構に使用位置検出スイッチが設けられており、回転体が使用位置検出スイッチを押圧することで、シートバックが使用位置へ傾倒されたことが検出される。また、駆動機構には後倒れ位置検出スイッチが設けられており、回転体が後倒れ位置検出スイッチを押圧することで、シートバックが後倒れ位置へ傾倒されたことが検出される。さらに、駆動機構には前倒れ位置検出スイッチが設けられており、回転体が前倒れ位置検出スイッチを押圧することで、シートバックが前倒れ位置へ傾倒されたことが検出される。
【0019】
これにより、回転体が回転されることで、シートバックが傾倒された位置を検出できるため、簡易な構成で傾倒されたシートバックの位置が検出される。また、回転体が、使用位置検出スイッチ、後方位置検出スイッチ、及び前倒れ位置検出スイッチをそれぞれ直接押圧するため、傾倒されたシートバックの位置の検出精度を向上できる。
【0020】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記解除機構は、作動されることで前記ロック機構の前記ロックを解除する解除レバーと前記解除レバーに接続されると共に駆動することで前記解除レバーを作動させるアクチュエータとを備えている。
【0021】
請求項4に記載の車両用シートでは、解除機構が、解除レバーとアクチュエータとを備えている。アクチュエータは解除レバーに接続されており、アクチュエータが駆動することで、解除レバーが作動されて、ロック機構のロックが解除される。これにより、例えば、従来のリクライニング装置に設けられたロック機構のロックを解除するレバーにアクチュエータを接続することで、従来のリクライニング機構を利用しつつ、ロック機構のロックを解除できる。さらに、アクチュエータの駆動によってレバーを作動できるため、利便性が向上される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の車両用シートによれば、シートバックを前倒れ位置と後倒れ位置との間でモータの駆動によって傾倒でき、リクライニング強度を十分確保できる。
【0023】
請求項2に記載の車両用シートによれば、例えば、従来のシートバックを傾倒させるリクライニング装置を利用しつつ、シートバックを前倒れ位置と後倒れ位置との間でモータの駆動によって傾倒できる。
【0024】
請求項3に記載の車両用シートによれば、簡易な構成でシートバックが傾倒された位置を検出でき、傾倒されたシートバックの位置の検出精度を向上できる。
【0025】
請求項4に記載の車両用シートによれば、従来のリクライニング機構を利用でき、ロック機構のロックを解除する際の利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るリヤシートの要部を示す分解した斜視図である。
【図2】図1に示されるシートバックフレームに保持されたシートバックが使用位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図である。
【図3】(A)は、図2に示されるシートバックが使用位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック位置に配置されると共に、セクタギヤが初期位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【図4】(A)は、図2に示されるシートバックが使用位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック解除位置に配置されると共に、セクタギヤが初期位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【図5】(A)は、図2に示されるシートバックが後倒れ位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック解除位置に配置されると共に、セクタギヤが後倒れ完了位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【図6】(A)は、図2に示されるシートバックが後倒れ位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック位置に配置されると共に、セクタギヤが後倒れ完了位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【図7】(A)は、図2に示されるシートバックが前倒れ位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック解除位置に配置されると共に、セクタギヤが前倒れ完了位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【図8】(A)は、図2に示されるシートバックが前倒れ位置に配置された状態において、ロック解除レバーがロック位置に配置されると共に、セクタギヤが前倒れ完了位置に配置された状態を示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(B)は、(A)の状態をシート幅方向内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明の実施形態に係る車両用シートとしてのリヤシート10の要部が分解した斜視図で示されている。なお、図中に適宜示される矢印FRは、リヤシート10の前方向を示しており、矢印Wは、リヤシート10の幅方向を示している。また、矢印UPは、上方向を示している。
【0028】
この図に示されるように、リヤシート10は、一対のシートクッション側ブラケット12、14を備えている。シートクッション側ブラケット12、14は、車体の床部に締結固定されている。シートクッション側ブラケット12、14のシート後方の端部には、上方において、長尺状の連結部材16が設けられている。連結部材16は、シート幅方向に沿って配置されて、シートクッション側ブラケット12、14に連結されている。また、シートクッション側ブラケット14のシート後方には、ベースプレート20が設けられており、ベースプレート20は車体の床部に締結固定されている。
【0029】
図2に示すように、シートクッション側ブラケット12、14の上方には、シートクッション22が取付けられている。また、シートクッション22のシート後方には、シートバック24が起立した状態で設けられており、シートバック24は車体の床部に回転可能に連結されている。
【0030】
図1に示すように、シートバック24には、シートバック24の骨格を構成するシートバックフレーム26が設けられている。シートバックフレーム26は、パイプ材によって成形されたフレーム本体28を有しており、フレーム本体28は正面視で略矩形枠状に形成されている。また、シートバックフレーム26は、板金材料によって成形された一対のサイド部30,32を有しており、サイド部30,32は、フレーム本体28における下端側の両側部に固定されている。
【0031】
図2にも示すように、シートバックフレーム26のサイド部32の下方には、シートバックフレーム26の一部を構成する回転部材としてのシートバック側ブラケット34が設けられている。シートバック側ブラケット34は、略板状に形成されて、サイド部32の下端側におけるシート幅方向外側面に固定されている。また、シートバック側ブラケット34は、前述したベースプレート20の上端部に、シート幅方向に沿って配置された支持軸36を介して回転可能に連結されている。これにより、シートバックフレーム26のシート幅方向一側の部分が、支持軸36及びベースプレート20を介して車体床部に回転可能に連結されている。また、シートバック側ブラケット34には、円柱形状の突出ピン34Aが設けられている。突出ピン34Aは、シートバック側ブラケット34からシート幅方向内側へ向けて突出されて、後述するセクタギヤ88の係合溝90に係合している。
【0032】
シートバックフレーム26のサイド部30とシートクッション側ブラケット12との間には、リクライニング機構40が設けられている。リクライニング機構40は、サイド部30の下方端部及びシートクッション側ブラケット12の後方の端部に連結されている。これにより、シートバックフレーム26のシート幅方向他側の部分が、リクライニング機構40を介してシートクッション側ブラケット12に連結されている。リクライニング機構40は、従来から使用されている一般的なものであり、リクライナ42を備えている。
【0033】
このリクライナ42(リクライニング機構40)は、シートクッション22に対するシートバック24の傾斜角度(リクライニング角度)の調節及び傾倒(回動)を可能にするためのものであり、支持軸36と同軸上に配置されている。これにより、シートバック24が、シートクッション22に対して図2に示される使用位置と当該使用位置からシート前方に設定された前倒れ位置(図示省略)との間、及び使用位置と当該使用位置よりもシート後方に設定された後倒れ位置(図示省略)との間で傾倒可能に構成されている。また、リクライナ42及び後述するロック機構44によって、シートバック24のリクライニング角度が、使用位置と後倒れ位置との間で、多段階に調整可能に構成されている。
【0034】
ここで、使用位置とは、シートバック24がシートクッション22に対して略起立した状態の位置であり、シートバック24のリクライニング角度が初段に設定された位置をいう。また、前倒れ位置とは、シートバック24がシートクッション22の上側に略平行に重なり合う状態の位置であり、前倒れ位置においては、シートバック24の背面を、テーブルとして使用したり、荷室の一部として使用することができる。また、後倒れ位置とは、シートバック24がシートクッション22に対して後方にリクライニングされて、シートバック24のリクライニング角度が最終段に設定された位置であり、後倒れ位置において、乗員は安楽姿勢をとることができる。
【0035】
また、リクライナ42には、周知のロック機構44が設けられている。シートバック24が使用位置と後倒れ位置との間に傾倒された際に、ロック機構44はシートバック24を傾倒不能にロック(拘束)するように構成されている。これにより、シートバック24が、使用位置と後倒れ位置との間のリクライニング位置に保持される。一方、シートバック24が前倒れ位置に配置された状態では、シートバック24を傾倒不能にロック(拘束)する必要がないため、この状態では、ロック機構44はシートバック24に対してロックしないように構成されている。
【0036】
一方、前述したベースプレート20のシート幅方向外側には、ロック機構44を構成する解除機構46が設けられており、解除機構46は、解除レバーとしてのロック解除レバー48を備えている。ロック解除レバー48は、ベースプレート20に対してシート幅方向外側に配置されると共に、ベースプレート20に回転可能に支持されている。また、ロック解除レバー48は、シャフト50と前述した支持軸36の軸心部を貫通した連結軸52とを介して、ロック機構44に連結されている。
【0037】
また、シートバック24がリクライニング位置に傾倒された状態において、ロック解除レバー48が、図3(A)に示す位置(以下、この位置を「ロック位置」という)に配置される際に、ロック機構44がロック状態になるように構成されている。ただし、上述したように、シートバック24が前倒れ位置に配置された状態では、シートバック24に対してロック機構44はロックしないため、この状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されても、シートバック24が傾倒可能に構成されている。一方、シートバック24がリクライニング位置に傾倒された状態において、ロック解除レバー48が、ロック位置から図3(A)に示される矢印A方向(以下、この方向を「ロック解除方向」という)へ回転されて、図4(A)の実線で示される位置(以下、この位置を「ロック解除位置」という)に配置される際に、ロック機構44のロックが解除されるように構成されている。これにより、ロック機構44がロック解除状態になり、シートバック24の傾倒が可能になる。なお、図2では説明の都合上、ロック解除レバー48の一部のみが図示されている。
【0038】
ロック解除レバー48とベースプレート20との間には、付勢スプリング54が掛け渡されている。付勢スプリング54は、常にロック機構44をロック解除方向とは反対側の方向(図3(A)に示される矢印B方向であり、この方向を「ロック方向」という)へ付勢している。
【0039】
ロック解除レバー48には、解除機構46を構成するアクチュエータ56がワイヤ等を介して接続されている。アクチュエータ56が作動(駆動)することで、アクチュエータ56がロック解除レバー48を付勢スプリング54の付勢力に抗してロック解除方向へ回転させて、ロック解除レバー48がロック解除位置に配置される。一方、アクチュエータ56の作動が停止することで、ロック解除レバー48が、付勢スプリング54の付勢力によってロック方向へ回転されて、ロック位置に配置される。
【0040】
ロック解除レバー48には、後端の部分において、アーム部48Aが形成されており、アーム部48Aは、後述する第1リミットスイッチ58に対応している。アーム部48Aのシート後方には、第1リミットスイッチ58(広義には、「ロック位置検出スイッチ」として把握される要素である。)が設けられている。第1リミットスイッチ58は取付ブラケット60に取付けられており、取付ブラケット60はベースプレート20に固定されている。第1リミットスイッチ58は、ロック解除レバー48がロック位置に配置された際に、アーム部48Aに押圧される。これにより、第1リミットスイッチ58がON状態となる。
【0041】
ベースプレート20のシート幅方向内側には、駆動機構62が設けられている。駆動機構62は、シートバック24を、使用位置と前倒れ位置との間、及び使用位置と後倒れ位置との間で、傾倒させるための装置である。駆動機構62は、保持ブラケット64を備えており、保持ブラケット64は、ベースプレート20に対してシート幅方向内側に配置されて、ベースプレート20に取付けられている。
【0042】
図3〜図8にも示すように、保持ブラケット64の上端部には、使用位置検出スイッチとしての第2リミットスイッチ66が取付けられている。また、保持ブラケット64には、第2リミットスイッチ66のシート後方の位置において、後倒れ位置検出スイッチとしての第3リミットスイッチ68が取付けられている。さらに、保持ブラケット64には、第3リミットスイッチ68のシート後方の位置において、前倒れ位置検出スイッチとしての第4リミットスイッチ70が取付けられている。第2リミットスイッチ66、第3リミットスイッチ68は、後述するセクタギヤ88の第1押圧部92に対応しており、第4リミットスイッチ70は後述するセクタギヤ88の第2押圧部94に対応している。なお、図3〜図8では、第2リミットスイッチ66、第3リミットスイッチ68、及び第4リミットスイッチ70が簡略化した形状で示されると共に、保持ブラケット64が図示省略されている。
【0043】
保持ブラケット64のシート幅方向内側には、モータユニット72が配置されている。モータユニット72は、モータ74とギヤボックス76とを備えており、ギヤボックス76がボルトによって保持ブラケット64に固定されている。モータユニット72の出力軸78は、ギヤボックス76からシート幅方向外側へ突出されて、保持ブラケット64を貫通している。また、出力軸78の先端部には、略円筒形状のモータギヤ80が固定されている。モータギヤ80は、保持ブラケット64とベースプレート20との間に配置されており、モータギヤ80の外周全体には、外歯が形成されている。
【0044】
保持ブラケット64とベースプレート20との間には、伝達部としてのギヤ列81が設けられている。ギヤ列81は、略円盤形状の伝達ギヤ82を備えており、伝達ギヤ82の外周部には、外歯が形成されている。伝達ギヤ82は、保持ブラケット64及びベースプレート20によって回転自在に支持されると共に、伝達ギヤ82の外歯がモータギヤ80の外歯と噛合されている。また、伝達ギヤ82の側方には、ギヤ列81を構成する略円盤形状の減速ギヤ84が設けられており、減速ギヤ84の外周全体には、外歯が形成されている。減速ギヤ84は、保持ブラケット64及びベースプレート20によって回転自在に支持されると共に、減速ギヤ84の外歯が伝達ギヤ82の外歯と噛合されている。さらに、減速ギヤ84には、シート幅方向内側において、ギヤ列81を構成する略円盤形状の小径ギヤ86が同軸的かつ一体的に設けられている。小径ギヤ86の外周全体には、外歯が形成されている(図1及び図2では、小径ギヤ86が図示省略されている)。
【0045】
保持ブラケット64とシートバック側ブラケット34との間には、回転体としてのギヤ列81を構成する略扇方形状のセクタギヤ88が設けられている。セクタギヤ88は、前述した支持軸36に回転自在に支持されている。セクタギヤ88の外周部には、外歯が形成されており、この外歯が小径ギヤ86の外歯と噛合されている。また、前述したように、支持軸36はリクライナ42と同軸上に配置されているため、セクタギヤ88は、シートクッション22に対するシートバック24の傾倒中心(回動中心)と同軸的に配置されている。なお、セクタギヤ88、モータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84に対するシートバック側ブラケット34及びベースプレート20のシート幅方向の配置は図1に示される通りであるが、図2では説明の都合上、シートバック側ブラケット34及びベースプレート20の手前側に、セクタギヤ88、モータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84が図示されている。
【0046】
セクタギヤ88の外周部には、上方の部分において、係合溝90が設けられている。係合溝90は、セクタギヤ88の径方向に沿って配置されると共に、セクタギヤ88の径方向外側へ向けて開口されている。係合溝90の溝幅寸法は、シートバック側ブラケット34の突出ピン34Aの外径寸法に比して僅かに大きく設定されており、係合溝90内に突出ピン34Aが配置されて、突出ピン34Aと係合溝90とが係合されている。これにより、モータユニット72のモータ74が、モータギヤ80、ギヤ列81(伝達ギヤ82、減速ギヤ84、小径ギヤ86、及びセクタギヤ88)を介してシートバック側ブラケット34に連結されている。また、モータユニット72(モータ74)の回転力がモータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84及び小径ギヤ86を介してセクタギヤ88に伝達されることにより、セクタギヤ88が後倒れ方向(図5(A)及び(B)に示される矢印C方向)又は前倒れ方向(図5(A)及び(B)に示される矢印D方向)へ回転される。さらに、この際には、係合溝90の内周面が突出ピン34Aの外周面に当接して、シートバック側ブラケット34(シートバック24)が後倒れ方向(図5(A)及び(B)に示される矢印E方向)又は前倒れ方向(図5(A)及び(B)に示される矢印F方向)へ傾倒される。
【0047】
また、セクタギヤ88の外周部には、係合溝90のシート後方の位置において、第1押圧部92(図3(B)参照)が設けられている。セクタギヤ88が図3(B)に示される位置(以下、この位置を「初期位置」という)に配置された状態では、シートバック24が使用位置に配置されると共に、第1押圧部92が第2リミットスイッチ66を押圧するように設定されている。これにより、この状態では、第2リミットスイッチ66がON状態にされる。また、この状態からセクタギヤ88が後倒れ方向へ回転されて、セクタギヤ88が図5(B)に示される位置(以下、この位置を「後倒れ完了位置」という)に配置された際には、シートバック24が後倒れ位置へ傾倒されると共に、第1押圧部92が第3リミットスイッチ68を押圧するように設定されている。これにより、この状態では、第2リミットスイッチ66及び第3リミットスイッチ68がON状態にされる。
【0048】
さらに、セクタギヤ88の外周部には、セクタギヤ88の外歯に隣接した位置において、第2押圧部94が設けられている(図3(B)参照)。セクタギヤ88が、初期位置から前倒れ方向へ回転されて、図7(B)に示される位置(以下、この位置を「前倒れ完了位置」という)に配置された際には、シートバック24が前倒れ位置へ傾倒されると共に、第2押圧部94が第4リミットスイッチ70を押圧するように設定されている。これにより、この状態では、第4リミットスイッチ70がON状態にされる。
【0049】
また、駆動機構62は、図示しない制御回路を備えている。制御回路には、第1リミットスイッチ58〜第4リミットスイッチ70が電気的に接続されると共に、モータユニット72のモータ74及びアクチュエータ56が電気的に接続されている。また、制御回路には、図示しない操作スイッチが電気的に接続されており、操作スイッチは、例えば車両の運転席の近傍に配設されている。さらに、制御回路は、操作スイッチの操作状態、及び第1リミットスイッチ58〜第4リミットスイッチ70のON・OFF状態に基づいて、モータ74及びアクチュエータ56の作動(駆動)を制御する構成になっている。
【0050】
次に本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0051】
はじめに、シートバック24を使用位置から後倒れ方向へ傾倒させる動作について説明する。
【0052】
図3(A)及び(B)に示すように、シートバック24が使用位置に配置された状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されており、ロック機構44がロック状態にされている。このため、シートバック24が傾倒不能にロックされている。この状態では、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧しているため、第1リミットスイッチ58がON状態にされている。また、セクタギヤ88は初期位置に配置されており、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66を押圧して、第2リミットスイッチ66がON状態にされている。
【0053】
この状態において、シートバック24を後倒れ方向へ回動させるために乗員が操作スイッチを操作すると、制御回路によってアクチュエータ56が作動(駆動)される。これにより、アクチュエータ56がロック解除レバー48を付勢スプリング54の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置へ回転させることで、ロック機構44がロック解除状態になる(図4(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58から離間されて、第1リミットスイッチ58がOFF状態にされる。
【0054】
第1リミットスイッチ58がOFF状態であることを制御回路が認識すると、制御回路は、セクタギヤ88を後倒れ方向へ回転させるように、モータユニット72のモータ74を駆動させる。モータ74が駆動されると、モータユニット72の回転力がモータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84及び小径ギヤ86を介してセクタギヤ88に伝達されることにより、セクタギヤ88が後倒れ方向へ回転される。この際には、セクタギヤ88の係合溝90の内周面がシートバック側ブラケット34の突出ピン34Aの外周面に当接して、シートバック側ブラケット34が回転されることで、シートバック24が後倒れ方向へ傾倒される。この状態で乗員の操作スイッチへの操作が停止されると、制御回路がモータ74の駆動を停止させ、セクタギヤ88の後倒れ方向への回転が停止する。したがって、セクタギヤ88の回転に対応して、シートバック24が使用位置と後倒れ位置との間のリクライニング位置に傾倒される。
【0055】
なお、セクタギヤ88が後倒れ完了位置まで回転されるように操作スイッチが持続して操作された際には、セクタギヤ88の第1押圧部92が第3リミットスイッチ68を押圧する。このため、第3リミットスイッチ68がON状態になることで、制御回路はモータ74の駆動を停止させる。これにより、シートバック24が後倒れ位置へ傾倒される(図5(B)参照)。
【0056】
モータ74の駆動が停止された後では、制御回路はアクチュエータ56の作動を停止させる。これにより、付勢スプリング54の付勢力によって、ロック解除レバー48が、ロック解除位置からロック位置へ回転される(図6(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧して、第1リミットスイッチ58がON状態にされると共に、ロック機構44がロック状態になる。したがって、シートバック24が、リクライニング位置又は後倒れ位置において、傾倒不能にロックされる。
【0057】
次に、シートバック24を後倒れ位置から前倒れ方向へ傾倒させる動作について説明する。
【0058】
図6(A)及び(B)に示すように、シートバック24が後倒れ位置に配置された状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されており、ロック機構44がロック状態にされている。このため、シートバック24が傾倒不能にロックされている。この状態では、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧しているため、第1リミットスイッチ58がON状態にされている。また、セクタギヤ88は後倒れ完了位置に配置されており、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66及び第3リミットスイッチ68を押圧して、第2リミットスイッチ66及び第3リミットスイッチ68がON状態にされている。
【0059】
この状態において、シートバック24を前倒れ方向へ回動させるために乗員が操作スイッチを操作すると、制御回路によってアクチュエータ56が作動される。これにより、アクチュエータ56がロック解除レバー48を付勢スプリング54の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置へ回転させて、ロック機構44がロック解除状態になる(図5(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58から離間されて、第1リミットスイッチ58がOFF状態にされる。
【0060】
第1リミットスイッチ58がOFF状態であることを制御回路が認識すると、制御回路は、セクタギヤ88を前倒れ方向へ回転させるように、モータユニット72のモータ74を駆動させる。モータ74が駆動されると、モータユニット72の回転力がモータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84及び小径ギヤ86を介してセクタギヤ88に伝達されることにより、セクタギヤ88が前倒れ方向へ回転される。この際には、セクタギヤ88の係合溝90の内周面がシートバック側ブラケット34の突出ピン34Aの外周面に当接して、シートバック側ブラケット34が回転されることで、シートバック24が前倒れ方向へ傾倒される。この状態で乗員の操作スイッチへの操作が停止されると、制御回路がモータ74の駆動を停止させて、セクタギヤ88の前倒れ方向への回転が停止される。したがって、セクタギヤ88の回転に対応して、シートバック24が後倒れ位置と使用位置との間のリクライニング位置に傾倒される。
【0061】
なお、セクタギヤ88が初期位置を越えるまで回転されるように操作スイッチが持続して操作された際には、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66から離間される。これにより、第2リミットスイッチ66がOFF状態になることで、制御回路が、モータ74の駆動を停止させると共に、セクタギヤ88を後倒れ方向へ回転させるようにモータ74を駆動する。そうすると、セクタギヤ88が初期位置へ向けて回転されて、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66を押圧する。このため、第2リミットスイッチ66がOFF状態からON状態になることで、制御回路がモータ74の駆動を停止させる。これにより、シートバック24が使用位置に傾倒される(図4(A)及び(B)参照)。
【0062】
モータ74の駆動が停止された後では、制御回路はアクチュエータ56の作動を停止させる。これにより、付勢スプリング54の付勢力によって、ロック解除レバー48が、ロック解除位置からロック位置へ回転される(図3(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧して、第1リミットスイッチ58がON状態にされると共に、ロック機構44がロック状態となる。したがって、シートバック24が、後倒れ位置と使用位置との間のリクライニング位置又は使用位置において、傾倒不能にロックされる。
【0063】
次に、シートバック24を使用位置から前倒れ方向へ傾倒させる動作について説明する。
【0064】
上述と同様に、図3(A)及び(B)に示すように、シートバック24が使用位置に配置された状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されており、ロック機構44がロック状態にされている。このため、シートバック24が傾倒不能にロックされている。この状態では、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧しているため、第1リミットスイッチ58がON状態にされている。また、セクタギヤ88は初期位置に配置されており、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66を押圧して、第2リミットスイッチ66がON状態にされている。
【0065】
この状態において、シートバック24を前倒れ方向へ回動させるために乗員が操作スイッチを操作すると、制御回路によってアクチュエータ56が作動される。これにより、アクチュエータ56がロック解除レバー48を付勢スプリング54の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置へ回転させて、ロック機構44がロック解除状態になる(図4(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58から離間されて、第1リミットスイッチ58がOFF状態にされる。
【0066】
第1リミットスイッチ58がOFF状態であることを制御回路が認識すると、制御回路は、セクタギヤ88を前倒れ方向へ回転させるように、モータユニット72のモータ74を駆動させる。これにより、セクタギヤ88が、初期位置から前倒れ完了位置まで回転されて、シートバック側ブラケット34及びシートバック24が使用位置から前倒れ位置へ傾倒される(図7(B)参照)。シートバック24が前倒れ位置へ傾倒された際には、セクタギヤ88の第2押圧部94が第4リミットスイッチ70を押圧して、第4リミットスイッチ70がON状態になることで、制御回路はモータ74の駆動を停止させる。
【0067】
モータ74の駆動が停止された後では、制御回路はアクチュエータ56の作動を停止させる。これにより、付勢スプリング54の付勢力によって、ロック解除レバー48がロック解除位置からロック位置へ回転される(図8(A)参照)。ロック解除レバー48がロック位置へ回転された際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧して、第1リミットスイッチ58がON状態にされる。また、この状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されているが、シートバック24が前倒れ位置へ傾倒されているため、シートバック24に対してロック機構44はロックしていない(シートバック24が傾倒可能にされている)。
【0068】
次に、シートバック24を前倒れ位置から使用位置へ傾倒させる動作について説明する。
【0069】
図8(A)及び(B)に示すように、シートバック24が前倒れ位置に配置された状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されており、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧して、第1リミットスイッチ58がON状態にされている。ただし、上述した如く、この状態では、ロック解除レバー48がロック位置に配置されているが、シートバック24が前倒れ位置へ傾倒されているため、シートバック24に対してロック機構44はロックしていない(シートバック24が傾倒可能にされている)。また、セクタギヤ88は前倒れ完了位置に配置されており、セクタギヤ88の第2押圧部94が第4リミットスイッチ70を押圧して、第4リミットスイッチ70がON状態にされている。
【0070】
この状態において、シートバック24を後倒れ方向へ回動させるために乗員が操作スイッチを操作すると、制御回路によってアクチュエータ56が作動される。これにより、アクチュエータ56がロック解除レバー48を付勢スプリング54の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置へ回転させる(図7(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58から離間されて、第1リミットスイッチ58がOFF状態にされる。
【0071】
第1リミットスイッチ58がOFF状態であることを制御回路が認識すると、制御回路は、セクタギヤ88を後倒れ方向へ回転させるように、モータユニット72のモータ74を駆動させる。これにより、セクタギヤ88が、前倒れ完了位置から初期位置へ回転されると共に、シートバック側ブラケット34及びシートバック24が前倒れ位置から使用位置へ傾倒(復帰)される(図4(B)参照)。シートバック24が使用位置へ傾倒された際には、セクタギヤ88の第1押圧部92が第2リミットスイッチ66を押圧して、第2リミットスイッチ66がON状態になることで、制御回路がモータ74の駆動を停止させる。
【0072】
モータ74の駆動が停止された後では、制御回路はアクチュエータ56の作動を停止させる。これにより、付勢スプリング54の付勢力によって、ロック解除レバー48が、ロック解除位置からロック位置へ回転される(図3(A)参照)。この際には、ロック解除レバー48のアーム部48Aが第1リミットスイッチ58を押圧して、第1リミットスイッチ58がON状態にされると共に、ロック機構44がロック状態になる。したがって、シートバック24が、使用位置において、傾倒不能にロックされる。
【0073】
ここで、ロック機構44のロックが解除された際に、駆動機構62のモータ74が駆動されると、モータユニット72の回転力がモータギヤ80、伝達ギヤ82、減速ギヤ84及び小径ギヤ86を介してセクタギヤ88に伝達される。これにより、セクタギヤ88が前倒れ方向又は後倒れ方向へ回転される。この際には、セクタギヤ88の係合溝90の内周面がシートバック側ブラケット34の突出ピン34Aの外周面に当接して、シートバック側ブラケット34が回転されることで、シートバック24が前倒れ方向又は後倒れ方向へ傾倒される。これにより、シートバック24が、使用位置と前倒れ位置との間及び使用位置と後倒れ位置との間で、モータ74の駆動によって傾倒(回動)される。さらに、シートバック24が使用位置と後倒れ位置との間に傾倒された後では、シートバック24がロック機構44によって傾倒不能にロックされる。このため、シートバック24はロック機構44によって保持される。これにより、シートバック24のリクライニング強度を十分確保できる。したがって、シートバック24を前倒れ位置と後倒れ位置との間でモータ74の駆動によって傾倒でき、シートバック24を保持するリクライニング強度を十分確保できる。
【0074】
また、シートバック側ブラケット34には突出ピン34Aが設けられている。また、駆動機構62にはセクタギヤ88が回転可能に設けられており、セクタギヤ88の係合溝90が、突出ピン34Aと係合されることで、ギヤ列81がシートバック側ブラケット34に連結される。これにより、突出ピン34Aに係合する係合溝90を駆動機構62のセクタギヤ88に設けることで、例えば、従来のリクライニング機構40を利用しつつ、モータ74の駆動によってシートバック24を前倒れ位置と後倒れ位置との間で傾倒できる。
【0075】
さらに、保持ブラケット64には、第2リミットスイッチ66、第3リミットスイッチ68、及び第4リミットスイッチ70が取付けられている。第2リミットスイッチ66、第3リミットスイッチ68は、セクタギヤ88の第1押圧部92に押圧可能に構成されており、第4リミットスイッチ70はセクタギヤ88の第2押圧部94に押圧可能に構成されている。これにより、セクタギヤ88の回転によって、シートバック24が傾倒された位置を検出できるため、簡易な構成で傾倒されたシートバックの位置を検出できる。また、セクタギヤ88が、第2リミットスイッチ66、第3リミットスイッチ68、及び第4リミットスイッチ70をそれぞれ直接押圧するため、傾倒されたシートバック24の位置の検出精度を向上できる。
【0076】
また、ロック解除レバー48にアクチュエータ56が接続されており、アクチュエータ56が作動(駆動)することで、ロック解除レバー48がロック位置からロック解除位置に回転されて、ロック機構44のロックが解除される。これにより、従来のリクライニング機構40に設けられたロック解除レバー48にアクチュエータ56を接続することで、従来のリクライニング機構40を利用しつつ、ロック機構44のロックを解除できる。さらに、アクチュエータ56の作動によってロック解除レバー48を作動できるため、利便性を向上できる。
【0077】
なお、本実施の形態では、シートバック側ブラケット34とセクタギヤ88とが別体に構成されており、シートバック側ブラケット34の突出ピン34Aとセクタギヤ88の係合溝90とが係合されている。これに替えて、シートバック側ブラケット34とセクタギヤ88とを一体に構成してもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、シートバック24を後倒れ位置から使用位置へ傾倒させる際に、シートバック24が使用位置で停止されずに使用位置から一旦前倒れ方向へ傾倒されて、その後シートバック24が使用位置へ配置される。これに替えて、シートバック24を後倒れ位置から使用位置へ傾倒させる際に、シートバック24が使用位置に復帰した時点で、モータ74の駆動を停止させるように構成にしてもよい。この場合には、保持ブラケット64にリミットスイッチを追加して設けて、セクタギヤ88が初期位置に配置された際に、セクタギヤ88の第2押圧部94が追加したリミットスイッチを押圧するように構成すればよい。この構成により、セクタギヤ88が後倒れ完了位置から前倒れ方向へ回転した際に、セクタギヤ88が初期位置に到達するまで、追加したリミットスイッチは、第2押圧部94に押圧されないため、OFF状態になる。一方、セクタギヤ88が初期位置に到達した際に、追加したリミットスイッチが、第2押圧部94に押圧されて、ON状態になる。これにより、制御回路がシートバック24の使用位置への復帰を検出できるため、シートバック24が使用位置に復帰された際に、モータ74の駆動を停止できる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、シートバック24を使用位置から前倒れ位置へ傾倒させる際には、シートバック24が使用位置と前倒れ位置との間で停止することなく、シートバック24が前倒れ位置へ傾倒される。また、シートバック24を前倒れ位置から使用位置へ傾倒させる際には、シートバック24が前倒れ位置と使用位置との間で停止することなく、シートバック24が使用位置へ傾倒(復帰)される。これに替えて、シートバック24を使用位置から前倒れ位置へ傾倒させる際に、シートバック24を使用位置と前倒れ位置との間で停止できるように構成させてもよく、また、シートバック24を前倒れ位置から使用位置へ傾倒される際に、シートバック24を前倒れ位置と使用位置との間で停止できるように構成させてもよい。この場合では、操作スイッチの操作が停止された時点で、制御回路がモータ74の駆動を停止させる構成にすればよい。
【0080】
また、本実施の形態では、ロック解除レバー48がアクチュエータ56と接続されており、アクチュエータ56が作動(駆動)することで、ロック解除レバー48が、ロック解除方向へ回転されて、ロック解除位置に配置される。一方、アクチュエータ56の作動が停止することで、ロック解除レバー48が、付勢スプリング54の付勢力によってロック方向へ回転されて、ロック位置に配置される。これに替えて、付勢スプリング54を削除すると共に、例えば、アクチュエータ56に保持タイプのソレノイドを適用することで、ロック解除レバー48の位置をアクチュエータ56の作動位置に保持させる構成にしてもよい。
【0081】
これにより、シートバック24が使用位置から前倒れ位置に傾倒(回動)された際に、アクチュエータ56の作動を停止させることで、ロック解除レバー48がロック解除位置に保持される。一方、シートバック24を前倒れ位置から使用位置へ傾倒(回動)させる際には、前倒れ位置においてロック解除レバー48がロック解除位置に保持されているため、乗員が操作スイッチを操作することで、セクタギヤ88を後倒れ方向へ回転させるように、モータユニット72のモータ74を直ちに駆動できる。さらに、シートバック24が使用位置へ傾倒(回動)された後に、アクチュエータ56を作動させることで、ロック解除レバー48がロック位置に回転できる。
【0082】
さらに、本実施の形態では、請求項1〜請求項4に係る発明が車両のリヤシート10に適用された場合について説明したが、請求項1〜請求項4に係る発明が車両のフロントシートに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 リヤシート(車両用シート)
22 シートクッション
24 シートバック
34 シートバック側ブラケット(回転部材)
34A 突出ピン
44 ロック機構
46 解除機構
48 ロック解除レバー(解除レバー)
56 アクチュエータ
62 駆動機構
66 第2リミットスイッチ(使用位置検出スイッチ)
68 第3リミットスイッチ(後倒れ位置検出スイッチ)
70 第4リミットスイッチ(前倒れ位置検出スイッチ)
74 モータ
81 ギヤ列(伝達部)
88 セクタギヤ(回転体)
90 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に連結されたシートクッションと、
前記シートクッションに対して使用位置と前倒れ位置との間及び前記使用位置と後倒れ位置との間で傾倒可能に構成されたシートバックと、
前記使用位置と前記後倒れ位置との間において前記シートバックを傾倒不能にロックすると共に、前記ロックを解除させる解除機構を有するロック機構と、
前記車体に回転可能に支持されると共に前記シートバックに連結され、回転することで前記シートバックを傾倒させる回転部材と、
駆動することで回転力を発生するモータと前記モータ及び前記回転部材に連結されて前記モータの回転力を前記回転部材に伝達する伝達部とを有し、前記解除機構によって前記ロック機構の前記ロックが解除された際に前記モータを駆動することで前記回転部材を回転させて前記シートバックを前記使用位置と前記前倒れ位置との間及び前記使用位置と前記後倒れ位置との間で傾倒させる駆動機構と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記回転部材に突出して設けられた突出ピンと、
前記伝達部の一部を構成すると共に、前記突出ピンと係合されることで前記伝達部を前記回転部材に連結させる係合溝を有し、前記モータの駆動によって回転されることで前記回転部材を回転させる回転体と、
を備えた請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記駆動機構は、押圧されることで前記シートバックの前記使用位置への傾倒を検出する使用位置検出スイッチと、押圧されることで前記シートバックの前記後倒れ位置への傾倒を検出する後倒れ位置検出スイッチと、押圧されることで前記シートバックの前記前倒れ位置への傾倒を検出する前倒れ位置検出スイッチと、を有し、
前記回転体は、前記使用位置検出スイッチ、前記後方位置検出スイッチ、及び前記前倒れ位置検出スイッチを押圧可能に構成された請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記解除機構は、作動されることで前記ロック機構の前記ロックを解除する解除レバーと前記解除レバーに接続されると共に駆動することで前記解除レバーを作動させるアクチュエータとを備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240554(P2012−240554A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112560(P2011−112560)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】