説明

車両用シート

【課題】シートバックフレームに付与される荷重を安定的に吸収すると共に効率よく吸収する。
【解決手段】車両用シート10では、固定プレート50によって脆弱部48が形成されており、脆弱部48は、締結ボルトのヒンジベースブラケット40に対する相対移動方向に固定孔44の縁部から連続的に延在されている。このため、ベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに回動する際に、脆弱部48が締結ボルトに押圧される。また、脆弱部48が塑性変形する際には、脆弱部48の押し広げられるような変形が抑制されて、脆弱部48が押し潰されるように変形する。したがって、シートバックフレーム64に付与された荷重を脆弱部48によって安定的に吸収できる。また、締結ボルトによって脆弱部48が塑性変形する際には、脆弱部48が連続的に塑性変形するため、シートバックフレーム64に付与された荷重を脆弱部48によって効率よく吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションフレームとシートバックフレームとを連結する連結部材を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の車両用シートでは、シート座部が設けられており、シート座部にシートバックが連結されている。シートバックは下部フレームを有しており、下部フレームには第1のピン及び第2のピンが設けられている。また、シートバックはサイドフレームを有しており、サイドフレームには第1の貫通孔及び第2の貫通孔が形成されている。さらに、第2の貫通孔には補助穴部が連通されており、補助穴部は、第2の貫通孔側に開口されている。そして、第1の貫通孔に第1のピンが挿通されると共に、第2の貫通孔に第2のピンが挿通されることで、サイドフレームが下部フレームに連結されている。
【0003】
ところで、シートバックに車両後方の衝撃荷重が付与されると、サイドフレームが第1のピンを中心として回転すると共に、第2の貫通孔の縁部が、第2の貫通孔と補助穴部との2箇所の接続部において、第2のピンと当接して、補助穴部が第2のピンによって押し広げられるように変形する。これにより、シートバックに付与された衝撃エネルギーが補助穴部を変形させるエネルギーとして用いられるため、シートバックに付与された衝撃荷重を吸収できる。
【0004】
また、下記特許文献2に記載の自動車の座席は、座部構造を備えている。座部構造には、アダプタがピボットと固定ネジとによって連結されており、アダプタには、背もたれ構造が連結されている。
【0005】
さらに、アダプタには、固定ネジが挿通される穴が設けられている。この穴の側方部には、切り抜き部が所定の間隔毎に貫通形成されており、穴と切り抜き部との間及び切り抜き部と切り抜き部との間が接続部とされている。
【0006】
ところで、背もたれ構造に車両後方の衝撃荷重が付与されると、ピボットを中心にしてアダプタが回転されると共に、穴と切り抜き部との間の接続部が固定ネジに当接して、この接続部が破断(変形)される。この接続部が破断されると、破断された接続部が、さらに切り抜き部と切り抜き部との間の次の接続部に当接して、次の接続部が破断される。このため、背もたれ構造に付与された衝撃エネルギーが各接続部を破断(変形)させるエネルギーとして用いられるため、背もたれ構造に付与された衝撃荷重を吸収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−238969号公報
【特許文献2】特表2010−500213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両用シートでは、上述のように、シートバックに車両後方の衝撃荷重が付与された際に、第2の貫通孔の縁部が、第2の貫通孔と補助穴部との2箇所の接続部において、第2のピンに当接して、補助穴部が第2のピンによって押し広げられる。このため、シートバックに付与された衝撃荷重が低い場合でも補助穴部が変形する可能性がある。これにより、シートバックに付与された衝撃荷重を安定して吸収できない可能性がある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の自動車の座席では、各接続部の破断(変形)が断続的にされるため、背もたれ構造に付与された衝撃荷重が断続的に吸収される。このため、衝撃荷重を効率よく吸収できない。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮し、シートバックフレームに付与される荷重を安定的に吸収できると共に効率よく吸収できる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の車両用シートは、シートクッション内に設けられたクッションフレームと、シートバック内に設けられたシートバックフレームと、前記シートバックフレームを回転可能に支持すると共に、前記クッションフレームに固定されるための固定孔が設けられ、前記クッションフレームと前記シートバックフレームとを連結する連結部材と、前記固定孔に挿通され、前記連結部材を前記クッションフレームに固定する固定部と、前記連結部材の板厚方向一側に一体的に設けられると共に、前記固定部によって前記連結部材と共に前記クッションフレームに固定され、前記シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際の前記固定部の前記連結部材に対する相対移動方向に前記固定孔の縁部から連続的に延在される脆弱部を形成するプレートと、を備えている。
【0012】
請求項1に記載の車両用シートでは、連結部材に固定孔が設けられており、固定孔に固定部が挿通されて、連結部材がクッションフレームに固定されている。また、連結部材はシートバックフレームを回転可能に支持しており、これにより、クッションフレームとシートバックフレームとが連結部材によって連結されている。したがって、シートバックフレームに車両後方の荷重が付与されて、固定部による連結部材をクッションフレームに固定する力より大きい力が連結部材に作用すると、連結部材がクッションフレーム及び固定部に対して相対移動する。換言すると、固定部が連結部材に対して相対移動する。
【0013】
ここで、連結部材の板厚方向一側にはプレートが一体的に設けられており、固定部によって、プレートが連結部材と共にクッションフレームに固定されている。また、プレートによって、脆弱部が形成されており、脆弱部は、シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際の固定部の連結部材に対する相対移動方向に固定孔の縁部から延在されている。このため、固定部が連結部材に対して相対移動する際には、脆弱部が固定部に押圧される。これにより、固定部が脆弱部を押圧する力が脆弱部の機械的強度より高い場合には、脆弱部が塑性変形する。
【0014】
しかも、脆弱部は、固定孔の縁部から連続的に延在されているため、脆弱部が塑性変形する際には、脆弱部の押し広げられるような変形が抑制されて、脆弱部が押し潰されるように変形する。したがって、低荷重での脆弱部の塑性変形が抑制されて、シートバックフレームに付与された荷重を脆弱部によって安定的に吸収できる。また、固定部によって脆弱部が塑性変形する際には、脆弱部が連続的に塑性変形するため、脆弱部によってシートバックフレームに付与された荷重を効率よく吸収できる。
【0015】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記連結部材に設けられると共に前記固定孔の車両後方に配置され、前記クッションフレームに連結される連結部を備え、前記シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際に前記連結部を中心に前記連結部材が上方に回転移動される。
【0016】
請求項2に記載の車両用シートでは、連結部材に連結部が設けられており、連結部は、固定孔の車両後方に配置されて、クッションフレームに連結されている。また、シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際に、連結部材が連結部を中心に上方へ回転移動される。これにより、固定部が連結部材に対して下方へ相対移動するため、脆弱部が固定孔に対して下方に延在される。このため、例えば、連結部材がリクライニング機構を介してシートバックフレームを回転可能に支持する際に、固定孔に対してリクライニング機構とは反対側に脆弱部が延在されるため、固定部によって脆弱部が塑性変形する際のリクライニング機構への影響を抑制できる。
【0017】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1または請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記プレートに設けられ、一端部が前記固定孔に連通されると共に前記一端部から前記固定部の前記連結部材に対する前記相対移動方向に沿って延設された長孔を備えている。
【0018】
請求項3に記載の車両用シートでは、プレートには長孔が設けられている。この長孔の一端部は固定孔と連通されており、長孔は、一端部から固定部の連結部材に対する相対移動方向に沿って延設されている。このため、固定孔の縁部から連続的に延在される脆弱部を簡易な構成で形成できる。しかも、シートバックフレームに車両後方の荷重が付与されて連結部材が固定部に対して相対移動する際には、長孔によって連結部材の移動をガイドできる。
【0019】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記長孔の幅寸法が前記一端部から離間する方向へ向かうに従い大きく設定されている。
【0020】
請求項4に記載の車両用シートでは、長孔の幅寸法が長孔の一端部から離間する方向へ向かうに従い大きく設定されているため、固定部によって押し潰された脆弱部の肉部分を長孔の幅方向外側に容易に押出すことができる。
【0021】
請求項5に記載の車両用シートは、請求項3に記載の車両用シートにおいて、前記長孔の幅寸法が前記一端部から離間する方向へ向かうに従い小さく設定されている。
【0022】
請求項5に記載の車両用シートでは、長孔の幅寸法が長孔の一端部から離間する方向へ向かうに従い小さく設定されているため、連結部材が固定部に対して相対移動する際には、固定部によって長孔が徐々に押し広げられるように塑性変形する。このため、シートバックフレームに付与された荷重をプレートの変形によっても吸収できる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームに付与される荷重を安定的に吸収できると共に効率よく吸収できる。
【0024】
請求項2に記載の車両用シートによれば、固定部によって脆弱部が塑性変形する際のリクライニング機構への影響を抑制できる。
【0025】
請求項3に記載の車両用シートによれば、簡易な構成で脆弱部を形成でき、長孔によって連結部材の移動をガイドできる。
【0026】
請求項4に記載の車両用シートによれば、固定部によって押し潰された脆弱部の肉部分を長孔の幅方向外側に容易に押出すことができる。
【0027】
請求項5に記載の車両用シートによれば、シートバックフレームに付与された荷重を効果的に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用シートを示す車両左方から見た側面図である。
【図2】図1に示される車両用シートの要部を示す車両左方から見た側面図である。
【図3】(A)は図2に示される車両用シートに用いられるヒンジベースブラケットを車両左方から見た側面図であり、(B)はヒンジベースブラケットの一部を車両後下方から見た断面図(図3の(A)の3B−3B線断面図)である。
【図4】図3に示されるヒンジベースブラケットを示す斜視図である。
【図5】図2に示される車両用シートの要部を車両後方から見た断面図(図2の5−5線断面図)である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用シートに用いられるヒンジベースブラケットを示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用シートに用いられるヒンジベースブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両用シート10が車両左方から見た側面図にて示されている。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方を示し、矢印UPは上方を示す。
【0030】
この図に示されるように、車両用シート10は、下部において、前後位置調節機構12を備えている。前後位置調節機構12は、一対の長尺状のガイドレール14を有しており、一対のガイドレール14は、車両前後方向に沿って平行に配置されて、車体フロアに固定されている。各ガイドレール14には、アッパーレール16がそれぞれ設けられており、アッパーレール16はガイドレール14に対して車両前後方向にスライド可能に支持されている。また、アッパーレール16にはそれぞれライザー18が締結されている。
【0031】
ライザー18の上部には、車両前方の部分において、図示しない高さ調整機構を構成する前側リンク20の一端部が相対回転可能に連結されており、ライザー18の上部には、車両後方の部分において、高さ調整機構を構成する後側リンク22の一端部が相対回転可能に連結されている。
【0032】
また、車両用シート10はシートクッション24を備えており、シートクッション24は車両後方に向かうに従い水平もしくは下向に傾斜して配置されている。シートクッション24内には、クッションフレーム26が設けられている。クッションフレーム26は、シートクッション24の車両右側部及び車両左側部において、金属により製作された板状の一対のサイドクッションフレーム28を備えており、一対のサイドクッションフレーム28は車両前後方向に沿って、配置されている。サイドクッションフレーム28の下部には、車両前方の部分において、前側リンク20の他端部が相対回転可能に連結されており、サイドクッションフレーム28の下部には、車両後方の部分において、後側リンク22の他端部が相対回転可能に連結されている。これにより、クッションフレーム26は高さ調整機構、ライザー18、及びアッパーレール16を介して、ガイドレール14に連結されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、サイドクッションフレーム28の車両後方の部分には、上部において、円形状の支持孔30が貫通形成されている。また、サイドクッションフレーム28には、支持孔30の車両前方において、略トラック形状の配置孔32が貫通形成されている。図5に示すように、サイドクッションフレーム28の内側(一対のサイドクッションフレーム28が対向する側)の面には、締結ナット34が設けられており、締結ナット34は、配置孔32と同軸上に配置されると共に、サイドクッションフレーム28に溶接によって固定されている。締結ナット34の中央部には、図示しない雌ねじ部が貫通形成されており、雌ねじ部の内周部には、雌ねじが形成されている。
【0034】
図1〜図4に示すように、各サイドクッションフレーム28の外側(一対のサイドクッションフレーム28が対向する方向とは反対側)には、連結部材としてのヒンジベースブラケット40がそれぞれ設けられており、ヒンジベースブラケット40は板金により製作されて略三角形状に形成されている。
【0035】
ヒンジベースブラケット40のサイドクッションフレーム28とは反対側の部分には、車両後方の部分において、支持プレート56が設けられている。支持プレート56は、板金により製作されると共に、略矩形状に形成されている。また、支持プレート56は、板厚方向をヒンジベースブラケット40の板厚方向と一致させて、ヒンジベースブラケット40に重なり合う状態で溶接等によって接合されている。これにより、支持プレート56がヒンジベースブラケット40に一体に設けられて、このヒンジベースブラケット40と支持プレート56とが一体に設けられている部分が、第1厚肉部45とされている。
【0036】
ヒンジベースブラケット40の第1厚肉部45には、円形状の連結部としての支持孔42が貫通形成されており、支持孔42はサイドクッションフレーム28の支持孔30と同軸上に配置されている。支持孔42及び支持孔30内には、図示しない略円柱状の支持ボルトが挿通されており、支持ボルトの先端部に図示しない支持ナットが螺合されて、ヒンジベースブラケット40及び支持プレート56がサイドクッションフレーム28に締結(連結)されている。
【0037】
図4及び図5に示すように、ヒンジベースブラケット40の下部には、車両前方の部分において、略トラック形状の固定孔44が貫通形成されており、固定孔44はサイドクッションフレーム28の配置孔32と同軸上に配置されている。
【0038】
また、ヒンジベースブラケット40のサイドクッションフレーム28とは反対側には、プレートとしての固定プレート50が設けられている。固定プレート50は、板金により製作されて、略矩形状に形成されている。また、固定プレート50は、ヒンジベースブラケット40の支持孔42を中心とした周方向に沿って湾曲して形成されており、固定プレート50は、板厚方向をヒンジベースブラケット40の板厚方向と一致させて、ヒンジベースブラケット40に重なり合う状態で溶接等によって接合されている。これにより、固定プレート50がヒンジベースブラケット40に一体に設けられている。
【0039】
固定プレート50の中央部には、略矩形状の長孔としてのガイド孔52が貫通形成されており、ガイド孔52は、支持孔42を中心とした周方向に沿って湾曲して形成されている。また、ガイド孔52の長手方向の寸法は固定孔44の短手方向の寸法に比して大きく設定されている。さらに、側面視においてガイド孔52内に固定孔44が配置されるように、ガイド孔52が形成されている。つまり、側面視においてガイド孔52の上端部(一端部)と固定孔44とが重なって連通されており、ガイド孔52は上端部から下方へ延設されている。これにより、固定孔44の周囲において、固定プレート50とヒンジベースブラケット40とが一体に設けられている部分が第2厚肉部46とされており、固定プレート50とヒンジベースブラケット40とが一体に設けられていない部分(ヒンジベースブラケット40のみで構成されている部分)が脆弱部48とされている。そして、脆弱部48は、固定孔44の縁部から固定孔44に対して離間する方向(下方)へガイド孔52に沿って連続的に形成されている。また、脆弱部48の板厚は第1厚肉部45及び第2厚肉部46の板厚に比して薄く形成されているため、脆弱部48の剛性が、第1厚肉部45及び第2厚肉部46の剛性に比して低く設定されている。
【0040】
また、図5に示すように、ガイド孔52、固定孔44、及び配置孔32内には、固定部としての略円柱状の締結ボルト60が挿通されており、締結ボルト60の一端部に設けられた頭部60Bが固定プレート50に当接されている。また、締結ボルト60の他端部には、雄ねじ部60Aが設けられており、雄ねじ部60Aには、外周部において、雄ねじが形成されている。そして、雄ねじ部60Aの先端部はサイドクッションフレーム28の締結ナット34に螺合されている。これにより、ヒンジベースブラケット40及び固定プレート50は、固定孔44の部位においても、サイドクッションフレーム28に締結(固定)されている。なお、図1及び図2には、便宜上、締結ボルト60が図示省略されている。
【0041】
図1〜図4に示すように、ヒンジベースブラケット40の中央部には、後述するリクライニング機構を取付けるための円形状の取付部41が設けられている。取付部41は、絞り加工等によって、ヒンジベースブラケット40に対してサイドクッションフレーム28とは反対側へ突出されている。取付部41の中央部には、円形状の取付孔41Aが貫通形成されている。
【0042】
また、ヒンジベースブラケット40の外周部には、固定プレート50の下方及び取付部41の上方を除いた部分において、フランジ49が一体に形成されており、フランジ49はヒンジベースブラケット40からサイドクッションフレーム28とは反対側へ突出されている。これにより、フランジ49によってヒンジベースブラケット40全体の剛性が確保されている。
【0043】
一方、図1に示すように、車両用シート10はシートバック62を備えており、シートバック62はシートクッション24の車両後方の端部に起立した状態で配置されている。シートバック62内には、シートバックフレーム64が設けられている。シートバックフレーム64は、シートバック62の車両右側部及び車両左側部において、金属により製作された板状の一対のサイドフレーム66を備えており、サイドフレーム66はヒンジベースブラケット40の内側に配置されている。サイドフレーム66の下端部とヒンジベースブラケット40との間には、図示しない周知のリクライニング機構が設けられており、リクライニング機構を介してサイドフレーム66とヒンジベースブラケット40とが連結されている。これにより、シートバックフレーム64が、リクライニング機構を介してヒンジベースブラケット40に支持されると共に、連結されている。
【0044】
ここで、通常では、ヒンジベースブラケット40は、支持ボルトと支持ナットとによる締結力、及び締結ボルト60と締結ナット34とによる締結力によって、クッションフレーム26に相対移動不能に固定されている。
【0045】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
本実施の形態の車両用シート10では、車両用シート10に乗員が着座している状態で、車両後方から他の車両によって車両が衝突(後突)された場合や車両が後方に走行している際に他の車両等に車両が衝突した場合に、乗員に車両後方の慣性力が作用する。この際には、この慣性力によって、乗員がシートバック62側(車両後方)へ移動されて、乗員からシートバック62(シートバックフレーム64)へ車両後方の衝撃荷重が付与される。
【0047】
シートバック62(シートバックフレーム64)に車両後方の衝撃荷重が付与された際には、この衝撃荷重が、サイドフレーム66、リクライニング機構を介してヒンジベースブラケット40に伝達されて、ヒンジベースブラケット40に、支持孔42を中心とした図1における時計周り方向(車両上方)の回転力が作用する。
【0048】
そして、この回転力が、支持ボルトと支持ナットとによる締結力、及び、締結ボルト60と締結ナット34とによる締結力よりも大きい場合には、ヒンジベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに回転移動する。換言すると、締結ボルト60がヒンジベースブラケット40に対して相対移動する。
【0049】
ここで、固定プレート50がヒンジベースブラケット40の板厚方向一側に一体的に設けられており、固定プレート50が、締結ボルト60によって、ヒンジベースブラケット40と共にクッションフレーム26に固定されている。また、固定プレート50によって、脆弱部48が形成されており、脆弱部48は、締結ボルト60のヒンジベースブラケット40に対する相対移動方向に固定孔44の縁部から延在されている。このため、ヒンジベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに回転移動すると、脆弱部48が締結ボルト60の雄ねじ部60Aの外周部に当接(押圧)される。これにより、締結ボルト60から脆弱部48に押圧力が作用する。
【0050】
この押圧力が脆弱部48の機械的強度より高い場合には、締結ボルト60によって脆弱部48が塑性変形して、ヒンジベースブラケット40がクッションフレーム26(締結ボルト60)に対してさらに相対移動する。これにより、シートバックフレーム64に付与された衝撃エネルギーが脆弱部48を塑性変形させるエネルギーに用いられて、シートバックフレーム64に付与される衝撃荷重が吸収される。
【0051】
しかも、この脆弱部48は、固定孔44の縁部から固定孔44に対して離間する方向(下方)へ連続的に延在されているため、脆弱部48が塑性変形する際には、脆弱部48の押し広げられるような変形が抑制されて、脆弱部48が押し潰されるように変形する。したがって、低荷重での脆弱部48の塑性変形が抑制されて、シートバックフレーム64に付与された荷重を脆弱部48によって安定的に吸収できる。また、締結ボルト60によって脆弱部48が塑性変形する際には、脆弱部48が連続的に塑性変形するため、シートバックフレーム64に付与された荷重を脆弱部48によって効率よく吸収できる。
【0052】
また、シートバック62(シートバックフレーム64)に車両後方の衝撃荷重が付与されてヒンジベースブラケット40が移動する際には、ヒンジベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに上方へ回転移動する。これにより、締結ボルト60がヒンジベースブラケット40に対して下方へ相対移動するため、脆弱部48が固定孔44に対して下方へ配置されている。これにより、固定孔44からリクライニング機構とは反対側に脆弱部48が延在されているため、締結ボルト60によって脆弱部48が塑性変形する際のリクライニング機構への影響を抑制できる。
【0053】
また、固定プレート50にはガイド孔52が設けられている。このガイド孔52は、第1支持孔42を中心とした周方向に沿って湾曲して形成されており、ガイド孔52の上端部と固定孔44とが連通されて、ガイド孔52が上端部から下方へ延在されている。これにより、ガイド孔52の縁部から連続的に延在される脆弱部48を簡易な構成で形成できる。また、シートバックフレーム64に車両後方の衝撃荷重が付与されてヒンジベースブラケット40がクッションフレーム26に対して相対移動する際には、ガイド孔52によってヒンジベースブラケット40の移動をガイドできる。
【0054】
さらに、支持プレート56及び固定プレート50をヒンジベースブラケット40に接合することで、ヒンジベースブラケット40に脆弱部48が設けられている。このため、ヒンジベースブラケット40の板厚を比較的薄く設定して、脆弱部48を形成できるため、ヒンジベースブラケット40を軽量化でき、ひいては車両用シート10を軽量化できる。さらに、シートバックフレーム64に車両後方の衝撃荷重が付与されて、脆弱部48が締結ボルト60によって変形された際には、ヒンジベースブラケット40を交換することで、車両用シート10を修復できる。
【0055】
また、ヒンジベースブラケット40の外周部には、フランジ49が設けられている。このため、ヒンジベースブラケット40の板厚を比較的薄く設定しても、フランジ49によってヒンジベースブラケット40全体の剛性を確保できる。
【0056】
(変形例1)
【0057】
変形例1は本実施の形態と同様に構成されているが、以下の点で異なる。
【0058】
図6に示すように、変形例1では、固定プレート50のガイド孔52の幅寸法が、固定孔44に対して離間する方向(下方)へ向かうに従い、大きく設定されている。
【0059】
このため、ヒンジベースブラケット40が締結ボルト60に対して相対移動する際には、締結ボルト60によって押し潰された脆弱部48の肉部分をガイド孔52の幅方向外側に容易に押出すことができる。
【0060】
(変形例2)
【0061】
変形例2は本実施の形態と同様に構成されているが、以下の点で異なる。
【0062】
図7に示すように、変形例2では、固定プレート50のガイド孔52の幅寸法が、固定孔44に対して離間する方向(下方)へ向かうに従い、小さく設定されている。
【0063】
このため、ヒンジベースブラケット40が締結ボルト60に対して相対移動する際には、締結ボルト60によってガイド孔52が徐々に押し広げられるように塑性変形する。このため、シートバックフレーム64に付与された荷重を固定プレート50の変形によっても吸収できる。したがって、シートバックフレーム64に付与された荷重を効果的に吸収できる。
【0064】
なお、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、固定プレート50が溶接によってヒンジベースブラケット40に接合されている。これに替えて、固定プレート50をカシメによってヒンジベースブラケット40に接合してもよい。
【0065】
また、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、ガイド孔52が、支持孔42を中心とした周方向に沿って湾曲して形成されており、ガイド孔52の上端部と固定孔44とが連通されて、ガイド孔52が上端部から下方へ延在されている。これに替えて、ガイド孔52の下端部を下方へ開放させるように形成してもよい。換言すると、側面視において固定プレート50を略逆U字形状に形成してもよい。つまり、締結ボルト60がヒンジベースブラケット40に対して相対移動する方向に、脆弱部48が形成されるように構成されていればよい。
【0066】
さらに、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、締結ボルト60がクッションフレーム26に固定された締結ナット34に螺合されて、ヒンジベースブラケット40がクッションフレーム26に連結されている。これに替えて、締結ボルト60の雄ねじ部60Aをヒンジベースブラケット40側に突出させた状態で締結ボルト60をクッションフレーム26に固定して、締結ナット34によってヒンジベースブラケット40がクッションフレーム26に連結されてもよい。
【0067】
また、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、固定プレート50にガイド孔52が設けられている。これに替えて、ガイド孔52の部分に固定プレート50の板厚に比べて板厚の薄い板金を溶接等で一体に設けると共に、この板金に固定孔44に連通する連通孔を設けてもよい。またさらに、例えば、樹脂プレートを固定プレート50のヒンジベースブラケット40側の面に一体に設けて、この樹脂プレートに固定孔44及びガイド孔52に連通する連通孔を設けてもよい。これにより、この板金や樹脂プレートの厚さを変更することで、シートバックフレーム64に車両後方の衝撃荷重が付与された際の衝撃力の吸収を調整できる。
【0068】
また、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、ヒンジベースブラケット40には、支持孔42の車両前方に固定孔44が配置されており、シートバックフレーム64に車両後方の衝撃荷重が付与された際には、ヒンジベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに回転移動される。これに替えて、ヒンジベースブラケット40の下部に、車両後方の部分において、固定孔44を貫通形成すると共に、ヒンジベースブラケット40の下部に、車両前方の部分において、支持孔42を貫通形成して、シートバックフレーム64に車両後方の衝撃荷重が付与された際には、ヒンジベースブラケット40が支持孔42の軸線回りに回動されるように構成してもよい。この場合には、脆弱部48が固定孔44に対して上方に配置されるように、固定プレート50及びガイド孔52を配置する。
【0069】
さらに、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、固定プレート50と支持プレート56とが、別部材により構成されて、ヒンジベースブラケット40に一体に設けられている。これに替えて、固定プレート50と支持プレート56とを一体に構成して、ヒンジベースブラケット40に一体に設けてもよい。
【0070】
また、本実施の形態、変形例1、及び変形例2では、サイドクッションフレーム28に締結ナット34が溶接によって固定されている。これに替えて、サイドクッションフレーム28に締結ナット34がカシメによって固定されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 車両用シート
24 シートクッション
26 クッションフレーム
40 ヒンジベースブラケット(連結部材)
42 支持孔(連結部)
44 固定孔
50 固定プレート
52 ガイド孔(長孔)
60 締結ボルト(固定部)
62 シートバック
64 シートバックフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション内に設けられたクッションフレームと、
シートバック内に設けられたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームを回転可能に支持すると共に、前記クッションフレームに固定されるための固定孔が設けられ、前記クッションフレームと前記シートバックフレームとを連結する連結部材と、
前記固定孔に挿通され、前記連結部材を前記クッションフレームに固定する固定部と、
前記連結部材の板厚方向一側に一体的に設けられると共に、前記固定部によって前記連結部材と共に前記クッションフレームに固定され、前記シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際の前記固定部の前記連結部材に対する相対移動方向に前記固定孔の縁部から連続的に延在される脆弱部を形成するプレートと、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記連結部材に設けられると共に前記固定孔の車両後方に配置され、前記クッションフレームに連結される連結部を備え、
前記シートバックフレームに車両後方の荷重が付与された際に前記連結部を中心に前記連結部材が上方に回転移動される請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記プレートに設けられ、一端部が前記固定孔に連通されると共に前記一端部から前記固定部の前記連結部材に対する前記相対移動方向に沿って延設された長孔を備えた請求項1または請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記長孔の幅寸法が前記一端部から離間する方向へ向かうに従い大きく設定された請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記長孔の幅寸法が前記一端部から離間する方向へ向かうに従い小さく設定された請求項3に記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67238(P2013−67238A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206093(P2011−206093)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】