説明

車両用スピーカ

【課題】端子部が水に接触して腐食することを防止できる車両用スピーカを提供する。
【解決手段】スピーカフレーム2と、スピーカフレーム2の背面側に設けられるレインカバー24と、スピーカフレーム2の下部におけるレインカバー24の欠落箇所241に設けられる端子部10とを備え、スピーカフレーム2の車両前方寄りに設けられ端子部10の上側に位置するレインカバー24の一方の端部242に、外側上方に屈曲する折り返し部243を設ける車両用スピーカ1であり、折り返し部243は、略V字形に折り返して形成し、その内部底面244がスピーカフレーム2の前面側から背面側に向かって下方に漸次傾斜するように形成すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア等に取り付けられる車両用スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドア等に取り付けられる車両用スピーカとして特許文献1の構造がある。特許文献1の車両用スピーカは、ねじ孔が内部に形成されている係合部が係止板の一面側に突出して設けられ、且つ内部に空洞が形成され、切欠に略扇形の係止片が側方に拡がるように形成された係止部が係止板の他面側に突出して設けられる取付具を用いて取付板に取り付けるものであり、係合部をスピーカフレームの係合受部に係入し、スピーカフレームの挿通孔から係合部のねじ孔までねじを螺合されて、複数箇所に着脱可能に設けられているスピーカを、取付板の取付孔を通過させ弾性復帰した係止片の水平方向に延びる上端面と係止板及びスピーカフレームとで取付板を挟持することにより、取付板に取り付けるものである。
【0003】
この車両用スピーカの取付具は、スピーカフレームの複数箇所に設けられ、好適には、その内の1箇所をスピーカフレームの正面視円形の中心から真下の最下端近傍に設け、取付具の空洞を介してスピーカフレームの周りに伝う水を排水するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−65245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用スピーカのスピーカフレームの背面側にレインカバーを設ける場合、スピーカフレームの下部にレインカバーの欠落箇所を設け、その欠落箇所に端子部を設けるのが一般的である。しかしながら、端子部の周辺ではレインカバーが欠落しているため、車両の走行等により端子部が水に接触して端子部が腐食するという問題があった。この腐食は海に近い場所での走行時など、塩分を多く含む水に端子部が接触した場合には加速される。
【0006】
また、上記特許文献1の車両用スピーカで取付具をスピーカフレームの最下端近傍に設ける場合、端子部を最下端近傍に設けることができないため、端子部をスピーカフレームの最下端近傍よりも上側の側方寄りに設ける必要が生ずる。しかし、この箇所に端子部やレインカバーの欠落箇所を設ける場合には、レインカバーの上側に位置する一方の端部が、端子部を充分に覆うことができず、端子部が水に接触して腐食する可能性が高くなる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、端子部が水に接触して腐食することを防止できる車両用スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用スピーカは、スピーカフレームと、前記スピーカフレームの背面側に設けられるレインカバーと、前記スピーカフレームの下部における前記レインカバーの欠落箇所に設けられる端子部とを備え、少なくとも前記端子部の上側に位置する前記レインカバーの一方の端部に、外側上方に屈曲する折り返し部を設けることを特徴とする。
この構成によれば、端子部の上側に位置するレインカバーの一方の端部に、外側上方に屈曲する折り返し部を設けることにより、折り返し部で水を導水、排出することが可能となり、端子部が水に接触して腐食することを防止できる。特に海に近い場所での走行時など、塩分を多く含む水への端子部の接触を防止する必要性が高い場合にその効果は顕著となる。
【0009】
本発明の車両用スピーカは、前記折り返し部は略V字形に折り返して形成され、前記折り返し部の底部内面が、前記スピーカフレームから背面側に向かって下方に漸次傾斜して形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、略V字形で底部内面がスピーカフレームの前面側から背面側に向かって下方に漸次傾斜することにより、レインカバーの外側面を伝う水の導水が一層スムーズになり、端子部の水への接触による腐食の防止をより確実に図ることができる。
【0010】
本発明の車両用スピーカは、前記端子部が前記スピーカフレームの車両前方寄りに設けられ、前記折り返し部が前記端子部よりも車両前方寄りに設けられることを特徴とする。
この構成によれば、端子部を車両前方寄りに設けることにより、車両の走行でより水が伝う車両後方寄りの部分をレインカバーで大部分覆うことができ、車両後方寄りの部分の防水を確実に図ることができる。また、車両前方寄りの部分は折り返し部で水を導水、排出し、端子部の水への接触による腐食の防止をより図ることができる。また、特許文献1のようなスピーカフレームの真下に水を排出する空洞を有する取付具を設ける構成でも、端子部の設置スペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用スピーカは、折り返し部で水を導水、排出することが可能となり、端子部が水に接触して腐食することを防止できる。特に海に近い場所での走行時など、塩分を多く含む水への端子部の接触を防止する必要性が高い場合にその効果は顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による実施形態の車両用スピーカの平面図。
【図2】本発明による実施形態の車両用スピーカの底面図。
【図3】図1のA−A線矢視断面図。
【図4】図1のA−A線矢視側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による実施形態の車両用スピーカについて図1〜図4に基づき説明する。
【0014】
本実施形態の車両用スピーカ1は、図1〜図4に示すように、略円周状で樹脂製等のスピーカフレーム2と、コーン形で略上端にエッジ31を有すると共に、中央にサブコーン32を有し、スピーカフレーム2にエッジ31の外側縁を当接して固着される振動板3と、前記外側縁上に周状に設けられるアダプター4と、スピーカフレーム2内でサブコーン32等の振動板3を支持する蛇腹状のダンパー5とを備える。
【0015】
また、スピーカフレーム2の中央部には凹部21が形成されており、凹部21内にマグネット6が収容され、その周囲にボイスコイル7が配置されている。スピーカフレーム2の周縁22には複数箇所、本例では3箇所に取付穴23が形成され、そのうちの一箇所はスピーカフレーム2の最下部に配置して設けられている。そして、特許文献1と同一構成等の取付具8をスピーカフレーム2の取付穴23に挿入して取付板9の取付穴91に係合することにより、車両用スピーカ1が取付板91に取り付けられるようになっている。
【0016】
スピーカフレーム2の背面側には、スピーカフレーム2の前面側から背面側に突出するようにして一体形成されるレインカバー24が設けられている。レインカバー24は略円周状の形状の一部に欠落箇所241が形成される形状であり、スピーカフレーム2の下部にレインカバー24の欠落箇所241が形成されている。そして、本例では最下部から車両側方寄り、より詳細には最下部から車両前方寄りにかけて1/8〜1/4程度の円弧状に欠落箇所241が形成されている。
【0017】
スピーカフレーム2の欠落箇所241には、後側下方に突出するようにして端子部10が設けられており、本例の端子部10はスピーカフレーム2の車両前方寄りの位置に設けられている。
【0018】
端子部31の上側に位置するレインカバー24の一方の端部242、本例では端子部10よりも車両前方寄りの端部242には、外側上方に屈曲する折り返し部243が形成されている。折り返し部243は略V字形に折り返して形成され、折り返し部243の底部内面244は、スピーカフレーム2の前面側から背面側に向かって下方に漸次傾斜するように形成されている。尚、245はレインカバー24内に万一水が浸入した際に排出するための水抜き穴である。
【0019】
本実施形態の車両用スピーカ1は、折り返し部243で水を導水、排出することが可能となり、端子部10が水に接触して腐食することを防止できる。特に海に近い場所での走行時など、塩分を多く含む水への端子部10の接触を防止する必要性が高い場合にその効果は顕著となる。また、略V字形で底部内面244をスピーカフレーム2の前面側から背面側に向かって下方に漸次傾斜させることにより、レインカバー24の外側面を伝う水の導水、排出が一層スムーズになり、端子部10の水への接触による腐食の防止をより確実に図ることができる。
【0020】
更に、端子部10を車両前方寄りに設けることにより、車両の走行でより水が伝う車両後方寄りの部分をレインカバー24で大部分覆うことができ、車両後方寄りの部分の防水を確実に図ることができる。また、車両前方寄りの部分は折り返し部243で水を導水、排出し、端子部10の水への接触による腐食の防止をより図ることができる。また、スピーカフレーム2の真下に水を排出する空洞を有する取付具8を設ける構成でも、端子部10の設置スペースを確保することができる。
【0021】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明には、各発明や実施形態等の構成の他に、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれ、例えば下記変形例も包含する。
【0022】
例えば上記実施形態では、端子部10と欠落箇所241の位置をスピーカフレーム2の最下部よりも上の車両前方よりの位置としたが、端子部10の位置は車両後方側或いは最下部の位置などスピーカフレーム2の下部に設けられる構成であれば本発明に包含され、欠落箇所241はその端子部10の位置に対応して適宜設定することが可能である。
【0023】
また、レインカバー24の双方の端部242・242に適宜に折り返し部243を設けることが可能である。また、折り返し部243の形状は上記実施形態に限定されず、例えば略U字形の溝状など、端子部10に水が接触するのを防止するように水を導水、排出可能な形状であれば適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の車両用スピーカは、例えば自動車内に設けられるスピーカとして利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…車両用スピーカ 2…スピーカフレーム 21…凹部 22…周縁 23…取付穴 24…レインカバー 241…欠落箇所 242…端部 243…折り返し部 244…底部内面 245…水抜き穴 3…振動板 31…エッジ 32…サブコーン 4…アダプター 5…ダンパー 6…マグネット 7…ボイスコイル 8…取付具 9…取付板 91…取付穴 10…端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカフレームと、
前記スピーカフレームの背面側に設けられるレインカバーと、
前記スピーカフレームの下部における前記レインカバーの欠落箇所に設けられる端子部とを備え、
少なくとも前記端子部の上側に位置する前記レインカバーの一方の端部に、外側上方に屈曲する折り返し部を設けることを特徴とする車両用スピーカ。
【請求項2】
前記折り返し部は略V字形に折り返して形成され、
前記折り返し部の底部内面が、前記スピーカフレームの前面側から背面側に向かって下方に漸次傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用スピーカ。
【請求項3】
前記端子部が前記スピーカフレームの車両前方寄りに設けられ、
前記折り返し部が前記端子部よりも車両前方寄りに設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用スピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−147230(P2012−147230A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3808(P2011−3808)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(391023862)テーダブリュ電気株式会社 (16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】