説明

車両用デフロスター装置

【課題】車両用デフロスター装置に関し、簡素な構成で効率的に配風する。
【解決手段】車両のインストルメントパネル1とウィンドシールドガラス6との間隙に空気を供給する車両用デフロスター装置8において、インストルメントパネル1の表面から上方へ向けて凸設部1cを突設させる。
凸設部1cの車幅方向左右両端に第一送風口4a,4bを穿設し、空気をインストルメントパネル1の上面に沿って車幅方向へ配向させる。また、凸設部1cの上面に第二送風口5を穿設し、空気をウィンドシールドガラス6に沿って上方へ放射状に配向させる
好ましくは、インストルメントパネル1の上面に凹設路を設け、インストルメントパネルの端部へ至るまで延設する。
より好ましくは、凸設部1cの上部に複数の整流板を設け、車幅方向中央ほど垂直に近く、車幅方向左右両端側ほどその上端を車幅方向外側へ向けて水平に寝かせて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のガラス面に付着した霜や水滴膜を除去するデフロスター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバス等の車両の室内前部には、ガラス窓を介した視認性を向上させるための設備としてデフロスター装置が設けられている。デフロスター装置は、空調装置から供給される空気をガラス面へ吹き付けることによって、ガラス外表面に付着した霜や内表面に結露した水滴膜を除去するように機能する。
例えば特許文献1には、インストルメントパネルの表面に複数の吹き出し口を形成し、インストルメントパネルの内部にダクトを設けて各吹き出し口と空調ユニットとを連結した空調ダクト構造が開示されている。この技術では、空調ユニットに接続されるデフロスタノズル本体から各吹き出し口へ向けて管状のダクトを分岐形成することにより、空気の流れを分散させている。
【特許文献1】特開2001−213135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなダクトを用いて配風位置や配風方向を設定する場合、吹き出し口の数に合わせて導風用のダクトを設ける必要がある。特に、車両側方の視認性向上の観点から、ウィンドシールドガラス(フロントガラス)だけでなくサイドガラスに対しても空気を吹き出させたい場合には、ダクトが長くなりコストが嵩むほか、ダクト配設用のスペースをインストルメントパネルの内部に確保しなければならず、スペース効率を向上させることができない。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、簡素な構成で効率的に配風することのできる車両用デフロスター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明の車両用デフロスター装置は、車両のインストルメントパネルとウィンドシールドガラスとの間隙に空気を供給する車両用デフロスター装置であって、該間隙の内部において車幅方向に延在し、該インストルメントパネルの表面から上方へ向けて突設された凸設部と、該空気を該インストルメントパネルの上面に沿って車幅方向へ配向させるべく、該凸設部の車幅方向左右両端に穿設された第一送風口と、該空気を該ウィンドシールドガラスに沿って上方へ放射状に配向させるべく、該凸設部の上面に穿設された第二送風口とを備えたことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2記載の本発明の車両用デフロスター装置は、請求項1記載の構成において、該インストルメントパネルの表面から下方へ向けて凹設された凹設路をさらに備え、該凹設路が、少なくとも左右それぞれの該第一送風口から車幅方向外側へ向けて該インストルメントパネルの端部へ至るまで延設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用デフロスター装置(請求項1)によれば、インストルメントパネルの表面から上方に突設された凸設部の左右両端に第一送風口を設けることにより、空気をウィンドシールドガラスとサイドガラスとの双方へ供給することができる。すなわち、ウィンドシールドガラスへ供給される空気は第二供給口を介して送風することができ、一方、サイドガラスへ供給される空気は第一供給口を介してインストルメントパネルの上面に沿って送風することができる。
【0008】
インストルメントパネルの上面を空気の供給路として利用することにより、空気をサイドガラスへ誘導するための導風ダクトが不要となり、部品点数を削減することができる。また、構成が簡素であり、コストを低減させつつサイドガラスの曇り止め機能を確保することができる。
また、本発明の車両用デフロスター装置(請求項2)によれば、インストルパネルの左右両端部へ至るまで延設された凹設路を介して空気をサイドガラスへスムーズに供給することができ、サイドガラスの曇り止め機能を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の車両用デフロスター装置によれば、第一供給口を介した水平な空気の流れを容易に形成することができる。また、第二供給口から吹き出される空気も放射状に配向されるため、ウィンドシールドガラスの全面に対して満遍なく空気を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図3は本発明の一実施形態に係る車両用デフロスター装置を示すものであり、図1は本装置を備えた車両の室内前部を模式的に示す斜視図、図2は本装置の内部構造を示す断面図(図1のA−A断面図)、図3は本装置を備えた車両の室内前部の拡大断面図(図1のB−B断面図)である。なお、図4は本発明の変形例を示す模式的な斜視図である。
【0011】
[構成]
本車両用デフロスター装置8は、図1に示す車両のインストルメントパネル1とウィンドシールドガラス6との間に設けられている。インストルメントパネル1は、室内前部においてほぼ全車幅にわたって配設されている。このインストルメントパネル1には、図示しない各種のメータ類やグローブボックスが取り付けられている。また、インストルメントパネル1の上面は、その車両前方が下方へ向けて(前下りに)傾斜した曲面形状となっている。
【0012】
また、インストルメントパネル1の前端部には、表面から下方へ向けて凹んだ形状に設けられた凹設路1a,1bが一対設けられている。図1に示すように、凹設路1a,1bは、ほぼ全車幅にわたって形成されており、第一送風口4a,4bから車幅方向外側へ向けてインストルメントパネル1の端部へ至るまで延設されている。
ウィンドシールドガラス6は、その上部が車両後方へ向けて傾斜するように配置されている。これにより、図3に示すように、インストルメントパネル1とウィンドシールドガラス6との間には溝状の間隙が形成されている。なお、溝の底部近傍における間隙の幅(図3中に示す車両前後方向の寸法a)は、凹設路1a,1bの幅に応じた寸法であり、凹設路1a,1bの幅が大きいほど間隙の幅も大きくなる。
【0013】
また、室内の左右側方には、サイドガラス7a,7bが配設されている。サイドガラス7a,7bはウィンドシールドガラス6と略同じ高さに位置している。
本車両用デフロスター装置8は、インストルメントパネル1とウィンドシールドガラス6との間隙に空気を供給するものである。車両用デフロスター装置8はダクト部材2及び空調ユニット3を備えて構成される。
【0014】
空調ユニット3は、室内への外気や冷温風を供給するものであり、ウィンドシールドガラス6等の内外表面に付着する霜,水滴膜を除去するための空気を吹き出し口3aから空気(冷風や温風)を吹き出すようになっている。
図2に示すように、ダクト部材2はその下端が空調ユニット3の吹き出し口3aに接続されており、空気をウィンドシールドガラス6やサイドガラス7a,7bの表面へ吹き付けるべく、配風方向を設定する機能を有している。このダクト部材2は、拡大部2aを備えて構成されている。
【0015】
拡大部2aは、図2に示すように、下方から上方へ向けて車幅方向へ拡大した断面形状に形成された部位である。ここでは、空調ユニット3の吹き出し口3aの幅よりも車幅方向の外側へ向けて空気が誘導されている。この拡大部2aの上部には、凸設部1c及び整流板1d,1eが配設されている。
凸設部1cは、インストルメントパネル1の表面から上方へ向けて突設された部位である。本実施形態では、凹設路1a,1bよりも上方へ突出した部位を凸設部1cと呼ぶ。図2に示すように、拡大部2aを構成する壁面と凹設路1a,1bとは滑らかに接続されている。
【0016】
整流板1dは、凸設部1cの上端部に配置された板状の部材であり、空調ユニット3から吹き出された空気の流通方向を整流するものである。図2に示すように、凸設部1cの上端部において、複数の整流板1dが車幅方向に適宜の間隔を空けて連設されている。それぞれの整流板1dの板面は、車幅方向中央に配置されているものほど垂直に近く、車幅方向左右両端側に配置されているものほどその上端を車幅方向外側へ向けて水平に寝かされるように配向されている。なお、左右両端部の整流板1eは完全に水平に配向されている。これにより、図2中に白矢印で示すように、インストルメントパネル1の上方へ向かう成分を含む全ての方向へ空気が吹き出されるようになっている。
【0017】
なお、それぞれの整流板1dは、その位置における空気の流通方向を板面に沿った方向へ整流する。したがって、空気は図2に示すように放射状に吹き出されることになる。
凸設部1cの車幅方向左右両端部には、第一送風口4a,4bが穿設されている。図2に示すように、第一送風口4a,4bから吹き出される空気は、凹設路1a,1bの表面に沿って水平に配風されている。また、凸設部1cの上面には、上述の複数の整流板1dの間隙として形成された第二送風口5が設けられている。第二送風口5から吹き出される空気は、第二送風口5よりも上方へ向けて配風されている。
【0018】
[作用・効果]
本発明の一実施形態にかかる車両用デフロスター装置は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
空調ユニット3から吹き出された空気は、拡大部2aの壁面に沿って車幅方向の外側へ向けて誘導され、第一送風口4a,4b及び第二送風口5から吹き出される。第一送風口4a,4bは、図2に示すように、インストルメントパネル1の凹設路1a,1bよりも上方へ突出して設けられているため、ここから吹き出される空気は拡大部2aの壁面から凹設路1a,1bに沿って水平に流通する。一方、第二送風口5から吹き出される空気も、拡大部2aを介して車幅方向へ広がりつつ上方へ向かって流通する。
【0019】
また、空気の流れは、凸設部1cの上端部に設けられた整流板1dによってもその配向を制御される。整流板1dの板面の向きは、車幅方向中央に配置されているものほど垂直に近くなっているため、図1中に矢印Cで示すように、車幅方向中央ではほぼウィンドシールドガラス6の中央を上方へ向けて空気が流通する。
一方、車幅方向左右両端側の整流板1dほど、その上端を車幅方向外側へ寝かされたように配置されているため、図1中に矢印D,Eで示すように、ウィンドシールドガラス6の全体に広がるように満遍なく空気が供給される。
【0020】
さらに、左右両端部の整流板1eは完全に水平に配向されているため、図1中に矢印F,Gで示すように、第一送風口4a,4bから吹き出される空気は確実に車幅方向へ水平に移動し、インストルメントパネル1の凹設路1a,1bへと導入される。
この凹設路1a,1bは、第一送風口4a,4bから車幅方向外側へ向けてインストルメントパネル1の端部へ至るまで延設されているため、室内形状に沿って左右のサイドガラス7a,7bへと空気が供給される。
【0021】
このように、本車両用デフロスター装置8によれば、空調ユニット3から吹き出された空気をウィンドシールドガラス6とサイドガラス7a,7bとの双方へ供給することができる。また、サイドガラス7a,7bへの空気の流れを形成するに際し、インストルメントパネル1の上面の凹設路1a,1bを空気の供給路として利用することにより、インストルパネル1の内部に導風ダクトを設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。また、凹設路1a,1bを設けることにより、空気をサイドガラス7a,7bへスムーズに供給することができる。
【0022】
また、凸設部1cに複数の整流板1dを設けることにより、空気流の配向制御が容易となる。特に、本実施形態では整流板1dが図2に示すような配向となっているため、容易に空気を放射状に吹き出させることができ、ウィンドシールドガラス6の全面に対して満遍なく空気を供給することができる。
このように、簡素な構成でコストを低減させつつ効率的に配風することができ、ウィンドシールドガラス6及びサイドガラス7a,7bの両方の曇り止め機能を確保することができる。
【0023】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、図4に示すように、インストルメントパネル1に凹設路1a,1bを持たない車両に対して本発明を適用することも可能である。この場合、少なくとも凸設部1cがインストルメントパネル1の上面から凸設されていれば、矢印C〜Gで示すような空気の流れを形成することが可能である。
【0024】
また、整流板1dは必須の構成ではなく、配設する数や配向等については任意であるが、上述の実施形態における左右両端部の整流板1eのように、第一送風口4a,4bの近傍には、水平に配向されたものを配設することが好ましいと考えられる。
なお、本発明はインストルメントパネル1の前端部にデフロスター装置が設けられた車両全般に適用可能であり、例えば乗用車やトラック,トレーラ,バス等に適用することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用デフロスター装置を備えた車両の室内前部を示す斜視図である。
【図2】本車両用デフロスター装置の内部構造を示す断面図(図1のA−A断面図)である。
【図3】本車両用デフロスター装置を備えた車両の室内前部の拡大断面図(図1のB−B断面図)である。
【図4】本発明の変形例に係る車両用デフロスター装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 インストルメントパネル
1a,1b 凹設路
1c 凸設部
1d 整流板
1e 左右両端部の整流板
2 ダクト部材
2a 拡大部
3 空調ユニット
4a,4b 第一送風口
5 第二送風口
6 ウィンドシールドガラス
7a,7b サイドガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルとウィンドシールドガラスとの間隙に空気を供給する車両用デフロスター装置であって、
該間隙の内部において車幅方向に延在し、該インストルメントパネルの表面から上方へ向けて突設された凸設部と、
該空気を該インストルメントパネルの上面に沿って車幅方向へ配向させるべく、該凸設部の車幅方向左右両端に穿設された第一送風口と、
該空気を該ウィンドシールドガラスに沿って上方へ放射状に配向させるべく、該凸設部の上面に穿設された第二送風口とを備えた
ことを特徴とする、車両用デフロスター装置。
【請求項2】
該インストルメントパネルの表面から下方へ向けて凹設された凹設路をさらに備え、
該凹設路が、少なくとも左右それぞれの該第一送風口から車幅方向外側へ向けて該インストルメントパネルの端部へ至るまで延設されている
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用デフロスター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111335(P2010−111335A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287363(P2008−287363)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】