説明

車両用ドアミラー

【課題】ミラーの防振構造を有する車両用ドアミラーにおいて、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応しつつ、無駄な重量増やコストアップを抑える。
【解決手段】ドアミラー1は、自動車の車体側に固定されるセットプレート2と、セットプレート2上に回動可能に取り付けられたミラーボディー3とを有する。ミラーボディー3は、ドアミラーカバー4を有し、ドアミラーカバー4内には、ミラー7が固定されたミラーホルダ8が収容されている。ドアミラーカバー4の背面側には、ターンシグナルランプユニット9が取り付けられている。ミラー7の裏面側には、防振バネ10が取り付けられている。防振バネ10の先端部10aは、ランプユニット9の一部に設けられた球面状のバネ受け部11に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される車両用ドアミラーに関し、特に、自動車用ドアミラーに取り付けられる防振バネの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ターンシグナルランプ(方向指示灯、以下、シグナルランプ、あるいは、ランプと適宜略称する)をドアミラーに搭載した自動車が増加しており、ドアミラーには、シグナルランプを備えた仕様と、備えない仕様のものが存在している。そして、シグナルランプを搭載するドアミラーは、部品共通化の観点から、ランプ無しの仕様にも対応できるよう、両仕様で共用可能な構造となっているものも多い。
【0003】
シグナルランプを備えたドアミラーでは、ターンシグナルランプユニットは、ドアミラーの外端部側に配置され、しかも、ランプユニット自体の重量が比較的大きい。このため、ランプ有り仕様のドアミラーは、ランプ無し仕様のものよりも、ドアミラーの重心が車両外側に位置する形となる。ドアミラーは、片持ち状態で車体に取り付けられるため、重心が外側に寄ると、走行時に鏡面が振れ易くなり、ドライバーの視認性が悪化する。そこで、ターンシグナルランプを備えたドアミラーでは、ドアミラー内に防振用の板バネ(防振バネ)を設け、車体の振動や風圧によるミラーのビビリ振動を防止している。
【0004】
図4,5は、このようなミラー防振構造を備えた従来のドアミラー51の構成を示す説明図である。ドアミラー51は、自動車の車体側に固定されるセットプレート52と、セットプレート52上に回動可能に取り付けられたミラーボディー53とから構成されている。ミラーボディー53は、プラスチック製のドアミラーカバー54を有しており、ドアミラーカバー54内には、セットプレート52に取り付けられるブラケット55や、モータ等を備えたリモコンユニット56、ミラー57が固定されたミラーホルダ58等が収容されている。また、ドアミラーカバー54の背面側(ミラー57の反対側)には、ターンシグナルランプユニット59が取り付けられている。
【0005】
ミラー57の裏面側(鏡面とは反対側)には、前述の防振バネ60が取り付けられている。防振バネ60は、図4に示すように、ドアミラー51の左上部に取り付けられており、ミラー57の裏面からドアミラー奥部方向に延びている。防振バネ60の先端部60aは、ブラケット55に設けられたバネ受け部61に押接されている。図4,5に示すように、バネ受け部61は壁状に形成されており、ブラケット55の本体部55aからミラー57側に向かって突設されている。バネ受け部61のバネ当接面61aは、球面状に形成されている。ミラー57が傾動すると、防振バネ60の先端部60aは、バネ受け部61に弾性的に押し付けられつつ、ミラー動作に追従してバネ当接面61a上を滑らかに移動する。この防振バネ60によって、ミラー57の振動が規制され、車体の振動等による鏡面ブレが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−72241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、ターンシグナルランプを搭載しないドアミラーでは、ランプユニットの部分に別途カバーが取り付けられる。すなわち、重量の大きいランプユニットに代えて、軽量のカバーが取り付けられる。従って、ランプ無し仕様のドアミラーは、ランプ有り仕様のドアミラーに比して、ドアミラーの重心が車両内側に寄ることとなり、その分、鏡面ブレが生じにくくなる。このため、ターンシグナルランプ無しのドアミラーでは、防振バネを取り付けない仕様が一般的である。
【0008】
ところが、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様にて共用化を図ったドアミラーでは、両仕様とも同じブラケットを使用するため、ランプ無し仕様においても、防振バネが無いにも関わらず、ブラケットにバネ受け部が存在する。このため、ドアミラー重量がバネ受け部の分だけ無意味に大きくなる。特に、ブラケットは、剛性確保のため、通常、ガラス繊維強化プラスチックにて形成されるため、重量増は無視できないレベルとなる。環境問題等の観点から車両の軽量化が求められている中、このような無駄な重量増は好ましくなく、また、材料増に伴うコスト増の問題もあった。
【0009】
さらに、バネ受け部の存在により、ドアミラーの重心が車両外側に寄ってしまうという問題もあった。ランプ無し仕様では、ランプユニットが無く鏡面ブレは生じにくいものの、防振の観点からは、ドアミラーの重心はなるべく内側に寄せた方が好ましい。従って、不要部位の存在により、ドアミラーの重心が無駄に車両外側に寄るのは好ましくなく、この点からも、ミラー防振構造の改善が求められていた。
【0010】
本発明の目的は、ミラーの防振構造を有する車両用ドアミラーにおいて、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応可能なように部品を共用化しつつ、無駄な重量増やコストアップを抑え得るドアミラー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用ドアミラーは、ドアミラーカバーと、前記ドアミラーカバー内に収容されたミラーホルダと、前記ミラーホルダミラーに取り付けられたミラーと、を備え、前記ドアミラーカバーに対し、シグナルランプを備えたターンシグナルランプユニットが着脱可能に設定された車両用ドアミラーであって、前記ターンシグナルランプユニットに、前記ミラーの裏面側に取り付けられた防振バネが当接するバネ受け部を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、ターンシグナルランプユニットに防振バネの受け部を設けることにより、ランプユニット非搭載仕様では使用されないバネ受け部をブラケットから廃することができ、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応しつつ、ドアミラー重量や製品コストの削減が図られる。また、ブラケットからバネ受け部を無くすことにより、ドアミラーの重心をより内側に寄せることができ、車体振動等に起因する鏡面ブレも低減される。
【0013】
前記車両用ドアミラーにおいて、前記バネ受け部に、前記防振バネが押接される球面状のバネ当接面を設けても良い。これにより、防振バネの先端部は、ミラーが傾動すると、バネ受け部に弾性的に押し付けられつつ、ミラー動作に追従してバネ当接面上を滑らかに移動する。
【0014】
また、前記車両用ドアミラーは、前記ターンシグナルランプユニットに代えてカバー部材を取り付けることにより、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応可能なものであっても良い。ターンシグナルランプ有りの場合は、防振バネを使用し、該防振バネは、ターンシグナルランプユニットに設けられたバネ受け部に当接する。ターンシグナルランプ無しの場合は、防振バネを使用せず、ターンシグナルランプユニットの部位にはカバーが取り付けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用ドアミラーによれば、シグナルランプを備えたターンシグナルランプユニットが着脱可能に設定された車両用ドアミラーにて、防振バネの受け部をターンシグナルランプユニットに設定したので、ランプユニット非搭載仕様では使用されないバネ受け部をブラケットから廃することができ、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応しつつ、ドアミラー重量や製品コストの削減を図ることが可能となる。また、ブラケットからバネ受け部を無くすことにより、ドアミラーの重心をより内側に寄せることができ、車体振動等に起因する鏡面ブレを低減させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例であるドアミラーの構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例であるドアミラーの構成を示す説明図である。
【図3】防振バネの取付構造を示す説明図である。
【図4】従来のドアミラーの構成を示す説明図である。
【図5】従来のドアミラーの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1,図2は、本発明の一実施例であるドアミラー1の構成を示す説明図である。図1のドアミラー1も、図4のものと同様に、自動車の車体側に固定されるセットプレート2と、セットプレート2上に回動可能に取り付けられたミラーボディー3とから構成されている。ミラーボディー3は、プラスチック製のドアミラーカバー4を有しており、ドアミラーカバー4内には、セットプレート2に取り付けられるブラケット5や、モータ等を備えたリモコンユニット6、ミラー7が固定されたミラーホルダ8等が収容されている。ミラーホルダ8は、リモコンユニット6と接続されており、リモコンユニット6内の図示しないモータの動作によって、ミラーホルダ8が作動し、ミラー7が傾動するようになっている。また、ドアミラーカバー4の背面側(ミラー7の反対側)には、ターンシグナルランプユニット9(以下、ランプユニット9と略記する)が取り付けられている。
【0018】
図3は、防振バネ10の取付構造を示す説明図である。図3に示すように、本発明によるドアミラー1においても、ミラー7の裏面側には防振バネ10が取り付けられている。防振バネ10は、ミラー7の裏面からドアミラー奥部方向に延びている。当該ドアミラー1では、図4のドアミラー51とは異なり、防振バネ10はドアミラー1の左中央部に取り付けられている。そして、防振バネ10の先端部10aは、ブラケット5ではなく、ランプユニット9の一部に当接している。つまり、従来のドアミラー51では、防振バネ60がブラケット55のバネ受け部61に当接しているのに対し、本発明によるドアミラー1では、ブラケット5にはバネ受け部が設けられておらず、防振バネ10はランプユニット9の筐体に当接している。
【0019】
図1〜3に示すように、ランプユニット9の内部側の筐体9aには、バネ受け部11が形成されている。バネ受け部11は、筐体9aの角隅部を凹面状に切り欠く形で設けられており、そこには球面状のバネ当接面11aが形成されている。防振バネ10はこのバネ受け部11に押接されており、防振バネ10の先端部10aは、バネ当接面11aに弾性的に押し付けられた状態となっている。防振バネ10の先端部10aは、ミラー7が傾動すると、バネ受け部11に弾性的に押し付けられつつ、ミラー動作に追従してバネ当接面11a上を滑らかに移動する。この防振バネ10によって、ミラー7の振動が規制され、車体の振動等による鏡面ブレが抑えられる。
【0020】
このようなドアミラー1では、ランプユニット9を搭載しない仕様の場合、ランプユニット9の部分には、ユニットに代えて図示しないカバーが取り付けられる。一方、ブラケット5は、部品共用化のため、両仕様共通で使用される。前述のように、ランプユニット非搭載仕様の場合には、通常、防振バネ10は使用せず、従来のドアミラー51では、ブラケット55に設けられたバネ受け部61が無用の長物となる。これに対し、本発明によるドアミラー1では、防振バネ10は、ランプユニット9に設けたバネ受け部11に当接するため、ブラケット5には無駄なバネ受け部が不要となる。
【0021】
つまり、防振バネ10は、ランプユニット搭載仕様にのみ使用され、非搭載仕様では使用されないため、バネ受け部11はランプユニット9にあれば足り、ブラケット5にある必然性はない。そこで、本発明のドアミラー1では、ランプユニット9と防振バネ10をセット化して考え、ランプユニット9にバネ受け部11を設けることにより、ブラケット5からバネ受け部を省いている。これにより、ブラケットの1/4程度を占めるような大きな部位であるバネ受け部を削減でき、部品の軽量化を図ることが可能となる。
【0022】
このように、本発明によるドアミラー1では、ランプユニット9に防振バネ10の受け部を設けることにより、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応可能なように部品を共用化しつつ、ドアミラー重量や製品コストの削減を図ることが可能となる。また、重量的にも大きなバネ受け部をブラケットから廃することにより、ランプユニット搭載/非搭載の何れの仕様においても、ドアミラーの重心をより内側に寄せることができ、車体振動等に起因する鏡面ブレを低減させることが可能となる。特に、ランプユニット非搭載仕様では、機能上全く必要ない大きなバネ受け部が省かれることとなり、部品の軽量化や重心の好適化への影響も大きい。
【0023】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、ランプユニット9の一部にバネ受け部11を凹設した構成を示したが、バネ受け部11の形態はこれには限定されず、ランプユニット9から壁状のバネ受け片を突設させる形でも良い。なお、ランプユニット非搭載仕様のものに防振バネ10を使用する場合には、ユニットに代えて取り付けられるカバーや、ドアミラーカバー4の内側に、壁状のバネ受け部を突設するなどの対応も可能である。
【0024】
さらに、本発明による車両用ミラーは、電動格納形のドアミラーにも、手動格納形のドアミラーにも適用可能であり、また、自動車以外の車両(例えば、建設・鉱山機械などの産業用車両)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ドアミラー
2 セットプレート
3 ミラーボディー
4 ドアミラーカバー
5 ブラケット
6 リモコンユニット
7 ミラー
7a ミラー裏面側
8 ミラーホルダ
9 ターンシグナルランプユニット
9a 内部側筐体
10 防振バネ
10a 先端部
11 バネ受け部
11a バネ当接面
51 ドアミラー
52 セットプレート
53 ミラーボディー
54 ドアミラーカバー
55 ブラケット
55a 本体部
56 リモコンユニット
57 ミラー
58 ミラーホルダ
59 ターンシグナルランプユニット
60 防振バネ
60a 先端部
61 バネ受け部
61a バネ当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアミラーカバーと、前記ドアミラーカバー内に収容されたミラーホルダと、前記ミラーホルダミラーに取り付けられたミラーと、を備え、前記ドアミラーカバーに対し、シグナルランプを備えたターンシグナルランプユニットが着脱可能に設定された車両用ドアミラーであって、
前記ターンシグナルランプユニットは、前記ミラーの裏面側に取り付けられた防振バネが当接するバネ受け部を有することを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ドアミラーにおいて、前記バネ受け部は、前記防振バネが押接される球面状のバネ当接面を有することを特徴とする車両用ドアミラー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用ドアミラーにおいて、前記車両用ドアミラーは、前記ターンシグナルランプユニットに代えてカバー部材を取り付けることにより、ターンシグナルランプ有り/無しの両仕様に対応可能であることを特徴とする車両用ドアミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194934(P2011−194934A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61204(P2010−61204)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】