説明

車両用ドアロック制御装置

【課題】室内にキーを置いた場合であってもキー閉じ込めを未然に防止しつつ、ドアロックを可能とする。
【解決手段】運転席側フロントドアの開閉状態を検出するドアスイッチ4と、各ドアのロック/アンロックを操作するマニュアルロックスイッチ3と、利用者を識別する識別情報を登録する識別情報登録手段と、ドアスイッチ4がフロントドアの開放を検知し、且つマニュアルロックスイッチ3で各ドアのロックを操作すると各ドアの強制ロックが設定される強制ロック設定手段とを備え、強制ロック設定手段は識別情報登録手段で識別情報が未登録のときは強制ロックの設定を無効とする。識別情報が未登録のときは強制ロックを無効とすることで、キー閉じ込めを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアロックを解除するキーレスコードが登録されていないときは強制ロックを無効とする車両用ドアロック制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などの車両では、運転席側のフロントドアを開けた状態でロックしても、このフロントドアを閉じたとき自動的にアンロック状態となって、いわゆるキー閉じ込めを防止している。しかし、このような場合であっても、ドアアウタハンドルを解錠方向へ引いた状態でフロントドアを閉めるとアンロック機能が解除され強制的にロックされてしまい、キー閉じ込めが発生してしまう。
【0003】
そのため、例えば特許文献1(特開平9−78919号公報)には、キーをキーシリンダから抜き忘れた状態で降車し、ドアアウタハンドルを解錠方向へ引いた状態でフロントドアを閉めようとしても、キーシリンダに挿入されているキーを検知した場合は、ドアロックを強制的に解除してキー閉じ込めを防止する技術が開示されている。
【0004】
又、同公報には、キーをキーシリンダから抜き取った状態で降車した場合には、ドアアウタハンドルを解錠方向へ引くことなく、ドアロックを可能とすることで、閉錠時の煩わしさを解消する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−78919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、例えば寒冷時の暖房運転や、真夏時の冷房運転において、エンジンを停止させることなく、暖房や冷房を働かせた状態で車両から離れる場合に、ドアをロックすることができないため使い勝手が悪い。
【0006】
又、例えばキーシリンダから抜いたキーを運転席やインストルメントパネルなどの車室内に置き忘れた状態でドアを閉めた場合には、ドアがロックされてしまうのでキー閉じ込めが発生してしまう問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、キーがキーシリンダに差し込まれた状態であってもキー閉じ込めを発生させることなくドアロックを可能とし、しかも室内にキーを置いた場合であってもドアロックを可能としつつキー閉じ込めを未然に防止することのできる車両用ドアロック制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明による車両用ドアロック制御装置は、車両の少なくとも1つのドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段と、各ドアのロック/アンロックを操作するマニュアルロック操作手段と、利用者を識別する識別情報を登録する識別情報登録手段と、上記ドア開閉検出手段が上記ドアの開放を検知し、且つ上記マニュアルロック操作手段で上記ドアのロックを操作することで強制ロックを設定する強制ロック設定手段とを備え、上記強制ロック設定手段は、上記識別情報登録手段で上記識別情報が未登録のときは上記強制ロックの設定を無効とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キーがキーシリンダに差し込まれた状態であってもキー閉じ込めを発生させることなくドアロックを可能とし、しかも室内にキーを置いた場合であってもドアロックを可能としつつキー閉じ込めを未然に防止することができるなど優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1に車両用ドアロック制御装置の回路構成図を示す。
【0011】
同図の符号1はドアロック制御回路であり、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを備えたマイクロコンピュータを主体に構成されている。このドアロック制御回路1の入出力インターフェースの入力側に、アウタハンドルスイッチ2、マニュアルロック操作手段としてのマニュアルロックスイッチ3、ドア開閉検出手段としてのドアスイッチ4、キー検知スイッチ5が接続されている。
【0012】
アウタハンドルスイッチ2は、運転席側のフロントドアに設けられたドアアウタハンドル(図示せず)の回動を検知するもので、ドアアウタハンドルが解錠方向へ引かれる間、ON信号が出力される。マニュアルロックスイッチ3は、運転席側のフロントドアの内側に設けられて、ドアロック/アンロック動作をマニュアル操作するもので、ドアロック側へ傾倒させたときロック信号が出力され、アンロック側へ傾倒させたときアンロック信号が出力される。尚、このマニュアルロックスイッチ3は、フロントドアを開いた状態でロック側へ傾倒させた場合、後述する強制ロック許可条件が不成立のときは、図示しないソレノイドなどのアクチュエータの作動によりアンロック側へ強制的に戻される。
【0013】
ドアスイッチ4は、運転席側のフロントドアの開放/閉鎖を検知するもので、当該フロントドアが開放されている間、ON信号が出力され、フロントドアが閉鎖されたときOFF信号が出力される。キー検知スイッチ5は、キープレートがキーシリンダにキーが差し込まれているか否かを検知するもので、キーシリンダにキープレートが差し込まれている間、ON信号が出力される。
【0014】
又、ドアロック制御回路1の入出力インターフェイスの出力側に、車両の各ドア(左右フロントドア、左右リヤドア、トランクリッドなど)に設けられているドアロック駆動手段としての電動アクチュエータ6が各々接続されている。
【0015】
各電動アクチュエータ6は、車両の各ドアのロック機構をロック/アンロック動作させるものである。尚、各ドアのロック/アンロックは同期した状態で動作されるため、図においては1つの電動アクチュエータ6のみを代表として示す。
【0016】
ドアロック制御回路1では、上述した各スイッチ2〜5の動作状態に応じて、各ドアの電動アクチュエータ6に対して、ロック信号或いはアンロック信号を出力する。各ドアのロック機構はドアロック制御回路1からロック信号が出力された場合には各ドアをロックし、又、アンロック信号が出力されたときはロックを解除する。
【0017】
ドアロック制御回路1では、初期設定の状態では、運転席側のフロントドアを開けた状態でロックしても、このフロントドアを閉じたときにはロック状態を自動的に解除するアンロック制御が行われる。但し、運転者を代表とする当該車両の利用者が一定操作を行うことで、アンロック制御が解除され、ドアロックした状態でフロントドアを閉じたとき、そのまま全ドアがロックされる強制ロックを選択することができる。
【0018】
当該車両の利用者が行う強制ロックの設定、及び強制ロックを設定した後の解除操作は、図2、図3に示すフローチャートに従って行う。図2に示す識別情報登録判定ルーチンでは、先ず、ステップS1でキーレスドアエントリの識別情報が登録済みか否かを調べる。そして、未登録の場合は、登録されるまで待機する。
【0019】
キーレスエントリの識別情報を登録する手段としては、暗証番号を登録することが一般的であるが、これに限らず指紋、声紋、静脈、虹彩など、個人を特定できるものを登録するようにしても良い。更に、登録できる人数は、一人に限らす二人以上であっても良い。
【0020】
識別情報を登録する手段の一例として、例えば特開平11−280318号公報には、暗証番号を識別情報として用いた技術が開示されている。すなわち、運転席側のフロントドアを開放した状態で、ロック機構をアンロック状態としておき、当該フロントドアのドアアウタハンドルを引いて、アウタハンドルスイッチ2を所定時間内で複数回ON/OFFさせ、このときのアウタハンドルスイッチ2から出力されるパルスをカウントして、1桁の番号を設定し、これを4回繰り返して、複数桁から成る暗証番号を登録する。又、このような暗証番号を代表とする識別情報は、携帯電話などの携帯無線機を用い、この携帯無線機から車両に搭載されている受信機に送信して登録するようにしても良い。
【0021】
そして、個人を特定する識別情報が正しくされた場合、ステップS2へ進む。ステップS2では、識別情報登録済み判定フラグFをセットして(F←1)、ルーチンを終了する。尚、識別情報登録済み判定フラグFの初期値は0であり、一旦セットされた後は、初期化処理が行われるまで、F=1の状態が維持される。
【0022】
又、図3に示す強制ロック設定ルーチンでは、先ず、ステップS11〜S14で強制ロック設定条件を判定する。すなわち、ステップS11は、ドアスイッチ4の出力信号に基づき、運転席側のフロントドアが開いているか否かを調べる。そして、ドアスイッチ4がOFFのフロントドアが閉じられているときは、ステップS13へ分岐し、押し時間計時タイマのカウント値Tをクリアして(T←0)、ルーチンを抜ける。一方、ドアスイッチ4がONのフロントドアが開いているときは、ステップS12へ進む。
【0023】
ステップS12では、ロック発信手段として機能するマニュアルロックスイッチ3からロック設定信号であるロック信号が出力されているか否かを調べる。上述したように、マニュアルロックスイッチ3は、強制ロックが設定されていない場合、フロントドアが開いている状態でロック側へ傾倒しても、アクチュエータの動作によりアンロック側へ強制的に戻される。
【0024】
そして、ロック信号の出力が検出されない場合は、ステップS13へ分岐し、押し時間計時タイマのカウント値Tをクリアして(T←0)、ルーチンを抜ける。
【0025】
又、ロック信号の出力が検出されたとき、すなわち、フロントドアを開けた状態でマニュアルロックスイッチ3がロック側へ傾倒されているときは、ステップS14へ進む。ステップS14では、識別情報登録済み判定フラグFの値を調べる。
【0026】
そして、F=1の識別情報が登録済みのときはステップS15へ進み、押し時間タイマによる経過時間の計時を開始する。又、F=0の識別情報が未登録のときはステップS16へ分岐し、設定無効の表示を行った後、ルーチンを抜ける。
【0027】
強制ロックの設定無効を表示する手段としては、種々ものが考えられる。例えば、ハザードランプ、ルームランプなどを点灯させ、或いはコンビネーションメータに設けられているウォーニングランプを点灯させるなど、視覚的な手段により表示するようにしても良い。又は、ブザーやホーンなどにより聴覚的な手段により表示するようにしても良い。或いは、ナビゲーションシステムなどモニタを有するシステムが搭載されてい場合は、モニタに強制ロック操作が無効である旨を絵や文字を用いて視覚的に表示するようにしても良い。この場合、更に強制ロックを設定する手順を音声によりガイダンスするようにしても良い。
【0028】
又、ステップS15では、押し時間タイマのカウント値Tをインクリメントして(T←T+1)、ステップS17へ進む。ステップS17では、押し時間タイマのカウント値Tと設定時間To(例えば4sec)とを比較し、T<Toのときはそのままルーチンを抜ける。
【0029】
そして、押し時間タイマのカウント値Tが設定時間Toに達したとき(T≧To)、ステップS118へ進み、強制ロックを設定する処理を実行して、ルーチンを抜ける。強制ロックが設定されると、運転席側のフロントドアを開放した状態でマニュアルロックスイッチ3をロック側へ傾倒させてもアンロック側へ戻されることが無くロック状態となる。従って、この状態で運転者が降車し、フロントドアを閉めてもロック機構がアンロック動作せずロック状態が維持される。
【0030】
その結果、例えば寒冷時や真夏時において、暖房運転や冷房運転を継続させた状態で車両から離れる際には、ドアを簡単にロックすることができるため使い勝手がよい。又、エンジンを停止した場合であっても、車室内にキーを残したままドアをロックすることができるので、車両を駐車させてレジャー施設などへ赴く場合、途中でキーを過つて落としたり、忘れたりすることが無くなる。更に、荷物を持ち込めない施設を使用する場合は、荷物と共にキーを車室内に残すことができるなど、より広い使い道が生まれる。
【0031】
一方、予め登録した識別情報を車体側に入力すれば、ドアはアンロックされるため、キー閉じ込めは未然に防止することができる。
【0032】
尚、本発明は、上述した形態に限るものではなく、例えばキー検知スイッチ5からON信号が出力されているとき、すなわち、キープレートがキーシリンダに差し込まれた状態のときは、従来と同様、強制ロックをキャンセルするようにしても良い。更に、このキャンセル機構も、例えばキープレートを何度かキーシリンダに抜き差しして、キー検知スイッチからON信号とOFF信号とを所定時間内に所定回数繰り返し出力させることでキャンセルさせない、すなわち強制ロックを維持させるようにしても良い。
【0033】
又、識別情報が未登録であっても、予め設定したロック設定操作を行うことで強制ロックを有効とさせることも可能である。このロック設定操作は、当該車両の利用者が、例えばマニュアルロックスイッチ3をロック側とアンロック側とに複数回繰り返し傾倒させることで行う。但し、このようなロック設定操作は、1回の設定で登録されてしまうとキー閉じ込めの可能性があるため、登録せず1回毎に行うようにすることが好ましい。
【0034】
尚、この場合、誤ってキー閉じ込めが発生した場合は、例えばディーラに連絡し、ディーラが遠隔地から当該車両の受信機にキャンセル信号を送信することで、ドアのロックをアンロックさせるようにする対応も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】車両用ドアロック制御装置の回路構成図
【図2】識別情報登録判定ルーチンを示すフローチャート
【図3】強制ロック設定ルーチン示すフローチャート
【符号の説明】
【0036】
1 ドアロック制御回路
2 アウタハンドルスイッチ
3 マニュアルロックスイッチ
4 ドアスイッチ
5 キー検知スイッチ
6 電動アクチュエータ
F 識別情報登録済み判定フラグ
T カウント値
To 設定時間

代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つのドアの開閉状態を検出するドア開閉検出手段と、
各ドアのロック/アンロックを操作するマニュアルロック操作手段と、
利用者を識別する識別情報を登録する識別情報登録手段と、
上記ドア開閉検出手段が上記ドアの開放を検知し、且つ上記マニュアルロック操作手段で上記ドアのロックを操作することで強制ロックを設定する強制ロック設定手段と
を備え、
上記強制ロック設定手段は、上記識別情報登録手段で上記識別情報が未登録のときは上記強制ロックの設定を無効とする
ことを特徴とする車両用ドアロック制御装置。
【請求項2】
上記強制ロック設定手段は、上記ドア開閉検出手段が上記ドアの開放を検知し、且つ上記マニュアルロック操作手段で上記ドアのロックを操作した後、上記ドア開閉検出手段が上記ドアの閉鎖を検出しても該各ドアのロック状態を保持させる強制ロックを設定する機能を備える
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項3】
上記強制ロック設定手段は、上記強制ロックの設定が無効のときは設定無効の表示を行う
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項4】
上記強制ロック設定手段は、上記識別情報が登録されている状態で、上記ドア開閉検出手段で上記ドアの開放が検知され、且つ上記マニュアルロック操作手段でロック操作を設定時間継続して行っていることを条件として上記強制ロックを設定する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両用ドアロック制御装置。
【請求項5】
上記強制ロック設定手段は、上記識別情報が登録されていない場合で合っても、予め設定したロック設定操作を行うことで、強制ロックの設定を可能とする
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両用ドアロック制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−207147(P2006−207147A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17247(P2005−17247)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】