説明

車両用ドア開放装置

【課題】本発明は、ドアの構造を簡単にし、かつドア本体を開ける際の操作性を向上させた車両用ドア開放装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用ドア開放装置1は、ドア本体2のプルハンドル3に設けられたドア開放スイッチ4と、ドア本体2のロック状態を解除するドアロック部5と、ドア開放スイッチ4の入力信号に基づいて、少なくともドア本体2を半ドア状態に開くようにドアロック部5を制御するボディECU7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開放装置に関し、特に、車両用のドア本体を開閉するプルハンドルにドア本体を半ドア状態にするスイッチを設けた車両用ドア開放装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(A)は従来の車両用ドア開放装置を概略的に示す側面図、(B)はその平面図である。図4(A)及び(B)に示すように、従来の車両用ドア開放装置50は、ドア本体51に設けられた開錠つまみ52と、開錠つまみ52の操作によりドア本体をロック状態(施錠)又はアンロック状態(解錠)にするドアロック部53と、ドア本体51の内側面に設けられ、ドア本体51を半ドア状態に開くようにドアロック部53を動作させるインサイドハンドル54と、ドア本体51の内側面に突出して設けられたアームレスト55と、アームレスト55に凹状に又は開口して形成され、ドア本体を開閉するためのプルハンドル56とを有する。
【0003】
インサイドハンドル54とドアロック部53とは、ケーブル57を介して連結されており、インサイドハンドル54を操作することにより、ドアロック部53のオープンレバー(図示せず)を開方向に動作させて、ドアロック部53に設けられたラッチ(図示せず)とボディ58に設けられたストライカ(図示せず)との係合状態を解除し、ドア本体51を半開き状態にすることができる(特許文献1参照)。
【0004】
ドア本体51を開ける場合、まず、操作者は開錠つまみ52を操作してドア本体51をアンロック状態にする。
【0005】
次いで、操作者は、インサイドハンドル54を操作して、ドアロック部53を動作させてドア本体51を半開き状態にする。
【0006】
その後、操作者はプルハンドル56に持ち替えてドア本体51を押し開けるか、又は操作者の肘などをドア本体51に当てた状態でドア本体51を押し開ける(以下、この技術を従来例1という)。
【0007】
また、室内装飾効果を高めるために、インサイドハンドルをなくして、ドアロック部のロックを解除する回転グリップをアシストグリップに回動可能に設けた車両用ドア装置が提案されている(特許文献2参照、以下、この技術を従来例2という)。
【特許文献1】実開平6−28144号公報
【特許文献2】実開平5−44635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例1では、ドア本体51に複雑な機械的なドア駆動構造のインサイドハンドル54を設けているので、ドアの機械的な構造が複雑になり、製造コストや部品コストが高くなるという課題がある。
【0009】
また、ドア本体51を開ける際に、操作者は、インサイドハンドル54を引く第1の動作と、プルハンドル56に持ち替えてドア本体51を押し開けるか、又は操作者の肘などでドア本体51を押し開ける第2の動作との2つの異なる動作を行う必要があり、一連の動作でスムーズにドア本体51を開けることが困難であり、操作性が悪いという課題があった。
【0010】
従来例2では、インサイドハンドルの代わりに、ドアロック部のロックを解除する回転グリップをアシストグリップに設けているので、部品点数は少なくなるが、アシストグリップの構造が複雑になり、製造コストや部品コストが高くなるという課題があった。
【0011】
また、ドア本体を開ける際に、操作者は、回転グリップを回転させる第1の動作と、アシストグリップを押し開ける第2の動作との2つの異なる動作を行う必要があり、一連の動作でスムーズにドア本体を開けることが困難であり、操作性が悪いという課題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ドアの構造を簡単にし、かつドア本体を開ける際の操作性を向上させた車両用ドア開放装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用ドア開放装置は、ドア本体のプルハンドルに設けられたドア開放スイッチと、前記ドア本体のロック状態を解除するドアロック解除手段と、前記ドア開放スイッチの入力信号に基づいて、前記ドア本体を少なくとも半ドア状態に開くように前記ドアロック解除手段を制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0014】
前記ドア開放スイッチは、操作者が前記プルハンドルに手をかけた状態で、その手の指で操作可能な位置に配置されていてもよい。
【0015】
前記ドア開放スイッチは、前記プルハンドルの車両前方側かつ車両内側の側面に設けられていてもよい。
【0016】
前記ドア開放スイッチは、押しボタンスイッチであってもよい。
【0017】
前記ドア開放スイッチは、前記プルハンドルに形成された溝部内に設けられ、押下前後いずれにおいても、前記溝部内に位置してもよい。
【0018】
前記ドア開放スイッチは、充電手段を有し、メイン電源から電源供給されない場合に、前記充電手段から電源供給されるものでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両用ドア開放装置によれば、プルハンドルに設けられた電気的な信号入力手段であるドア開放スイッチにより、ドア本体を半ドア状態にできるので、複雑な機械的なドア駆動構造のインサイドハンドルが不要となる。その結果、ドアの機械的構造を簡単にでき、製造コストや部品コストを低減できる。
【0020】
また、ドア本体を開ける際に、操作者は、プルハンドルに手をかけた状態で、ドア開放スイッチを操作できるので、一連の動作でスムーズにドア本体を開けることができ、操作性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置を示すブロック図、図2は、本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置を示す側面図、図3は図2のIII−III線断面図である。
【0022】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置1は、ドア本体2のプルハンドル3に設けられたドア開放スイッチ4と、ドア本体2のロック又はロックの解除を行うドアロック部5(ドアロック解除手段)と、ボディ6に設けられ、ドア開放スイッチ4の入力信号に基づいて、ドア本体2のロック状態を解除して、ドア本体2を少なくとも半ドア状態にするようにドアロック部5を制御するボディECU7(制御手段)とを有する。
【0023】
図3に示すように、プルハンドル3は、操作者の手が挿入できるようにアームレスト8に凹状に形成されている。なお、プルハンドル3は、アームレスト8に開口して形成されていてもよく、又は、ドア本体2に取っ手状に設けられたものでもよい。
【0024】
ドア開放スイッチ4は、例えばプルハンドル3に形成された溝部3a内に設けられた押しボタンスイッチであり、溝部3a内に固定された固定接触部4aと、操作者によって押下される可動接触部4bと、固定接触部4aと可動接触部4bとに取り付けられ、可動接触部4bを押下方向の反対方向に付勢させるバネ4cと、溝部3a内に設けられ、可動接触部4bの移動を規制する規制部4dとを有する。
【0025】
ドア開放スイッチ4は、操作者がプルハンドル3に手をかけた状態で、その手の指で操作可能な位置に配置されているのが好ましい。例えば、図3に示すように、操作者がプルハンドル3に手をかけたとき、人差し指から小指F1までプルハンドル3の凹部3b内に指を挿入し、親指F2だけはプルハンドル3の外側に出た状態となる。従って、操作者の親指F2だけの操作を容易にするために、ドア開放スイッチ4は、プルハンドル3の車両前方側かつ車両内部側の側面3cに設けられているのが好ましい。
【0026】
また、ドア開放スイッチ4は、押下前後いずれにおいても、溝部3a内に位置するように配置されているのが好ましい。これによって、ドア本体2を開ける時以外、すなわちドア本体2を閉める時や運転時などに、誤ってドア本体2を開けてしまう誤操作を防止できる。
【0027】
また、車両の車輪の回転を検出するセンサを設け、そのセンサの出力を検出して、車両が走行中である場合には、ドア開放スイッチ4の押下ができないように、又は押下してもドア本体2が開かないように構成してもよい。これによって、誤操作に対する安全性を高めることができる。
【0028】
また、ドア開放スイッチ4の表面4eは、押下時に、操作者の指(例えば親指)の腹部に沿って当接されるように湾曲状に形成されていてもよい。これによって、指への負担を低減することができる。
【0029】
また、ドア開放スイッチ4が運転手座席近傍のドア本体2に設けられている場合には、ドア開放スイッチ4を押下することにより、他の座席の全てのドアロック解除を行う機能を備えていてもよい。これによって、運転手によるドアロックの集中管理を行うことが可能となる。
【0030】
また、ドア開放スイッチ4は、メイン電源であるバッテリが消耗して電源供給されなくなった場合であっても動作できるように、キャパシタ9(充電手段)を内蔵して、キャパシタ9により数十回駆動できるように構成してもよい。
【0031】
ドア本体2には、ドア開放スイッチ4の他に、ドア本体2をロックするためのドアロックスイッチ10やウィンドウガラス11を上下動させるためのウィンドウスイッチ12などが設けられている。
【0032】
ドア開放スイッチ4、ドアロックスイッチ10及びウィンドウスイッチ12は、マスタースイッチECU13(Electronic Control Unit)により制御される。
【0033】
マスタースイッチECU13は、車両内に設けられたボディECU7にLANなどの車内ネットワーク14により接続されている。
【0034】
ボディECU7は、マイクロコンピュータによって構成されており、マスタースイッチECU13などの各種車載装置を制御する。
【0035】
ドアロック部5は、ボディ6側に設けられたストライカ15と噛み合うラッチ16を備えたラッチ機構を作動させるものであり、ドア本体2のロック状態を解除するオープンレバー17、オープンレバー17を回動させるオープンレバー用モータ18、ドア本体2をロック状態にするロックレバー19、ロックレバー19を回動させるロックレバー用モータ20などを有する。
【0036】
次に、本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置1の動作について説明する。
【0037】
ドア本体2を開ける場合、まず、操作者は開錠つまみ21を操作してドア本体2をアンロック(解錠)状態にする。
【0038】
次いで、操作者はプルハンドル3に手をかけ、その状態で手の指(例えば親指)でドア開放スイッチ4を押下する。ドア開放スイッチ4からの入力信号は、マスタースイッチECU13を介してボディECU7に入力される。
【0039】
ボディECU7は、オープンレバー用モータ18を駆動させて、オープンレバー17を回動させ、ストライカ15とラッチ16との噛み合いを解除する。これによって、ドア本体2は半ドア状態になる。
【0040】
その後、操作者は、プルハンドル3に手をかけたまま、ドア本体2を押し開ける。
【0041】
本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置1によれば、プルハンドル3に設けられた電気的な信号入力手段であるドア開放スイッチ4により、ドア本体2を半ドア状態にできるので、複雑な機械的なドア駆動構造のインサイドハンドルが不要となる。その結果、ドアの機械的構造を簡単にでき、製造コストや部品コストを低減できる。
【0042】
また、ドア本体2を開ける際に、操作者は、プルハンドル3に手をかけた状態で、ドア開放スイッチ4を操作できるので、一連の動作でスムーズにドア本体2を開けることができ、操作性が著しく向上する。
【0043】
なお、ドア開放スイッチ4により、ドア本体2をアンロック(解錠)できるように構成すれば、開錠つまみ21が不要となり、さらにドアの構造が簡単になるとともに操作性が向上する。
【0044】
本発明は、上記実施の形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、ドア開放スイッチ4が故障などで作動しない場合を考慮して、ドアロック部5に機械的に連結された緊急用インサイドハンドル22をドア本体2の目立たない適当な位置に設けてもよい。この緊急用インサイドハンドル22は、従来のインサイドハンドルと同様に、操作者の操作によりドアロック部5を動作させるものである。
【0046】
また、上記の緊急用インサイドハンドル22は、通常は、ドア本体2内に収納されて、ドア開放スイッチ4の電圧低下を検知した場合に、緊急用インサイドハンドル22が操作者の認識しやすい位置に露出されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自動車などの車両用ドアを開放するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態例に係る車両用ドア開放装置を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】(A)は従来の車両用ドア開放装置を概略的に示す側面図、(B)はその平面図である。
【符号の説明】
【0049】
1:車両用ドア開放装置
2:ドア本体
3:プルハンドル
4:ドア開放スイッチ
5:ドアロック部
6:ボディ
7:ボディECU7(制御手段)
8:アームレスト
9:キャパシタ
10:ドアロックスイッチ
11:ウィンドウガラス
12:ウィンドウスイッチ
13:マスタースイッチECU
14:車内ネットワーク
15:ストライカ
16:ラッチ
17:オープンレバー
18:オープンレバー用モータ
19:ロックレバー
20:ロックレバー用モータ
21:開錠つまみ
22:緊急用インサイドハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体のプルハンドルに設けられたドア開放スイッチと、

前記ドア本体のロック状態を解除するドアロック解除手段と、
前記ドア開放スイッチの入力信号に基づいて、前記ドア本体を少なくとも半ドア状態に開くように前記ドアロック解除手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用ドア開放装置。
【請求項2】
前記ドア開放スイッチは、操作者が前記プルハンドルに手をかけた状態で、その手の指で操作可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開放装置。
【請求項3】
前記ドア開放スイッチは、前記プルハンドルの車両前方側かつ車両内側の側面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ドア開放装置。
【請求項4】
前記ドア開放スイッチは、押しボタンスイッチであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つの項に記載の車両用ドア開放装置。
【請求項5】
前記ドア開放スイッチは、前記プルハンドルに形成された溝部内に設けられ、押下前後いずれにおいても、前記溝部内に位置することを特徴とする請求項4に記載の車両用ドア開放装置。
【請求項6】
前記ドア開放スイッチは、充電手段を有し、メイン電源から電源供給されない場合に、前記充電手段から電源供給されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つの項に記載の車両用ドア開放装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−182740(P2007−182740A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3095(P2006−3095)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】