説明

車両用バッテリー装置

【課題】低コストで盗難を防止でき、かつユーザの利便性を損なわない車両用バッテリー装置を提供する。
【解決手段】外部から取得した照合用データを予め記憶されたマスターデータと照合し、照合成功時に動作モードを通常の動作モードである通常モードからバッテリーを交換可能な動作モードであるバッテリー交換中モードに移行させ、その動作モードを記憶し、バッテリー装着時に、記憶されている動作モードがバッテリー交換中モードであれば車両の走行に関する動作を許可し、バッテリー交換中モードでなければ車両の走行に関する動作を許可しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド車や電気自動車等の車両用バッテリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのみで動く車両の他に、エンジンおよびモータの両方を駆動源として動くハイブリッド車や、モータで動く電気自動車の普及が広まっている。ハイブリッド車や電気自動車の場合、車体にバッテリー(例えば、288V相当)を搭載し、これを駆動源としてモータを駆動する。ところで、この種のバッテリーは高価であることから、車両自体ではなくバッテリーを盗難の対象にされる可能性も否定できない。
【0003】
そこで、バッテリーの現在使用状態に相当する状態値がバッテリーの使用許可範囲にあるか否かを判別し、状態値が使用許可範囲を超えていれば、正規使用者による充電状況下でないと判断して、バッテリーへの充電を制限する技術が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−042985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、バッテリーパックに、バッテリーとバッテリーの充電状態を監視する電池ECUを含む構成であるため、バッテリーパックが電池ECUの分だけ高価になるという問題がある。また、電池ECUも同時に盗まれることになるため、電池IDコードあるいは電池IDコードの有効期限が改竄される可能性がある。さらに、バッテリーパックのバッテリーのみを交換した状態で充電されてしまう可能性もある。
【0006】
また、現在位置が指定範囲外であるときは、充電が制限される構成であるため、帰省先や旅行先が指定範囲外であるときは充電ができず、ユーザの利便性を損なうという問題もある。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、低コストで盗難を防止でき、かつユーザの利便性を損なわない車両用バッテリー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための車両用バッテリー装置は、外部から照合用データを取得する照合用データ取得部と、取得した照合用データを予め記憶されたマスターデータと照合する照合部と、照合部による照合成功時に、動作モードを通常の動作モードである通常モードからバッテリーを交換可能な動作モードであるバッテリー交換中モードに移行させる動作モード制御部と、動作モードを記憶する動作モード記憶部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によって、バッテリーの不正な交換を防止することが可能となる。また、バッテリーパックにはバッテリーのみを含み、電池ECUを含まないため、コストを低減できるとともに、電池IDコードあるいは電池IDコードの有効期限が改竄されるという問題も発生しない。さらに、車両の現在位置に関係なく、バッテリーの交換を行うことができる。
【0010】
また、本発明の車両用バッテリー装置における動作モード記憶部は、不揮発性メモリを含んで構成される。
【0011】
上記構成によって、バッテリーを取り外されても動作モードを記憶しておくことができる。また、バックアップ用のバッテリーも不要となる。
【0012】
また、本発明の車両用バッテリー装置は、バッテリーの装着状態を検出する装着状態検出部と、装着状態検出部がバッテリーの装着を検出したとき、動作モード記憶部に記憶されている動作モードがバッテリー交換中モードであれば車両の走行に関する動作を許可し、バッテリー交換中モードでなければ車両の走行に関する動作を許可しない動作許可部と、を備える。
【0013】
上記構成によって、バッテリーの交換が正規の手順により行われたものか否かを判定でき、盗難バッテリーの使用、さらに車両の不正使用を防止することが可能となる。
【0014】
また、本発明の車両用バッテリー装置は、バッテリーから電源を供給され、バッテリーが装着されたことにより発生するパワーオンリセットを、バッテリーの装着を検出したものとする。
【0015】
上記構成によって、バックアップ用のバッテリーが不要な構成となり、さらに、新たな部品あるいは回路を追加することなく、バッテリーの装着を検出することが可能となる。
【0016】
また、本発明の車両用バッテリー装置は、バッテリーから電源を供給され、バッテリーが装着時に発生する電源電圧の変化を検出したときに、バッテリーの装着を検出したものとする
【0017】
上記構成によっても、バックアップ用のバッテリーが不要な構成となり、さらに、新たな部品あるいは回路を追加することなく、バッテリーの装着を検出することが可能となる。
【0018】
また、本発明の車両用バッテリー装置は、装着状態検出部がバッテリーの装着を検出したとき、バッテリーの交換が行われたか否かを判定する交換判定部を備え、動作許可部は、交換判定部においてバッテリーの交換が行われたと判定したとき、動作モード記憶部に記憶されている動作モードがバッテリー交換中モードであれば車両の走行に関する動作を許可し、バッテリー交換中モードでなければ車両の走行に関する動作を許可しない。
【0019】
上記構成によって、単なるバッテリーの取り外し/取り付けでは、車両は走行しないため、不正なバッテリーの交換を防止することが可能となる。
【0020】
また、本発明の車両用バッテリー装置は、バッテリーの充電状態を取得する充電状態取得部と、動作モードが通常モードからバッテリー交換中モードに移行する際に、充電状態取得部が取得した充電状態を記憶する充電状態記憶部と、を備え、充電状態取得部は、バッテリーの装着を検出したときに、装着したバッテリーの充電状態を取得し、交換判定部は、充電状態記憶部に記憶されている充電状態と、バッテリーの装着を検出したときに充電状態取得部が取得した充電状態とに基づいて、バッテリーの交換を行ったか否かを判定する。
【0021】
例えば、ハイブリッド車両や電気自動車では、常にバッテリーの充電状態を把握している。上記構成によって、バッテリーパックに電池ECUを含んだり、バッテリー側にバッテリーを識別するためのIDコードを記憶しておくことなく簡易な構成かつ低コストで、バッテリーの交換を行ったか否かを判定することが可能となる。
【0022】
また、本発明の車両用バッテリー装置における交換判定部は、充電状態記憶部に記憶されている充電状態と、バッテリーの装着を検出したときに充電状態取得部が取得した充電状態とに基づいて算出される、バッテリーへの充電量の差が予め定められた閾値を上回るとき、バッテリーの交換を行ったと判定する。
【0023】
正規の手順でバッテリーを交換した場合、交換後のバッテリーの充電量は満充電状態に近いものと考えられる。上記構成によって、交換前後のバッテリーの充電量の差を算出することで、簡易な構成でバッテリーの交換を行ったか否かを判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】車両用バッテリー装置の構成を示すブロック図。
【図2】動作モード移行処理を説明するフロー図。
【図3】走行許可判定処理を説明するフロー図。
【図4】動作モード移行処理の別例を説明するフロー図。
【図5】走行許可判定処理の別例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の車両用バッテリー装置について、図面を用いて説明する。図1に、ハイブリッド車両に適用した車両用バッテリー装置1の構成を示す。ハイブリッド車両は、エンジン34とモータMの両方を車輪駆動源として走行する。そして、例えば、エンジン34の動力を機械的に車輪に伝えて走行するモードと、エンジンの動力で発電を行いモータMで走行するモードと、エンジン34およびモータMの双方で車輪を直接駆動するモードと、エンジンを停止してモータMのみで走行するモードの各種モードで走行する。
【0026】
走行制御ECU31には、インバータ32を介してモータMが接続されるとともに、車内LAN30を介してエンジン34の点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU33が通信可能に接続されている。走行制御ECU31は、アクセル開度、シフトポジション、各種センサからの出力信号に従い、運転状態に応じたエンジン出力およびモータトルクを求め、インバータ32およびエンジンECU33に要求値を出力することで駆動力を制御する。
【0027】
車両用バッテリー装置1は、電池ECU2と、電池ECU2に接続される照合用端末21,電池ECU2と無線通信可能な照合用携帯機22,バッテリー24,リレー25,バックアップバッテリー26を含んで構成される。
【0028】
電池ECU2は、バッテリー24の電圧を検出する電圧センサ3,電池ECU2の外部との間で信号の遣り取りを行う信号入出力回路であるI/O4,照合用携帯機22からの電波を受信する受信機5,例えばフラッシュメモリのような不揮発性記憶媒体を含んで構成されるメモリ6,車内LAN30を介して他の車載機器との通信を行うための通信インターフェースであるLAN I/F7,これらとバスライン8を介して接続されたマイコン10、およびバッテリー24の信号線を接続するためのコネクタ9を含んで構成される。なお、I/O4,受信機5が本発明の照合用データ取得部に相当する。また、メモリ6が本発明の動作モード記憶部,充電状態記憶部に相当する。
【0029】
マイコン10は、周知のCPU11,ROM12,RAM13,AD変換器14を含んで構成され、CPU11がROM12に記憶された制御プログラムを実行することで種々の処理を実行するとともに、本発明の構成を実現する。なお、マイコン10が本発明の照合部,動作モード制御部,装着状態検出部,動作許可部,交換判定部に相当する。
【0030】
照合用端末21は、例えばパーソナルコンピュータ、PDAともいわれる携帯情報端末等で構成され、電池ECU2との間で、バッテリー交換を行うための照合を行うために用いる(詳細は後述)。照合用端末21の他に予め照合用のデータが記憶されたメモリカード23(あるいはこれに準ずる記憶媒体)を用いてもよい。この場合、I/O4には、これら端末あるいはメモリカードを接続するためのインターフェース回路あるいはカードリーダ等が含まれている。
【0031】
照合用携帯機22は、電池ECU2との間で無線通信によりバッテリー交換を行うための照合を行うために用いる(詳細は後述)。
【0032】
なお、車両に、キーレス操作キーとの双方向通信結果に基づいて、ドアのロック/アンロックやエンジン始動の許可等の予め定められた動作を許可するキーレスシステムが設けられているときには、照合用携帯機22をキーレス操作キーと兼用する構成としてもよい。
【0033】
また、車両に、ユーザの操作によりリモート操作キーから送信される制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて、ドアのロック/アンロックを行うリモートキーレスエントリーシステムが設けられているときには、照合用携帯機22をリモート操作キーと兼用する構成としてもよい。
【0034】
リレー25は、電池ECU2からの制御指令に基づいて、バッテリー24からインバータへの電源の供給/遮断を行うためのものである。
【0035】
バッテリー24は、電池ECU2,走行制御ECU31,インバータ32,エンジンECU33に電源を供給する。各ECUには、バッテリー24の電圧を、ECU内部の回路を動作させるための所定の電圧に変換するための電圧変換回路(電源回路ともいう)が含まれている。
【0036】
バックアップバッテリー26は、バッテリー24から車両の各部に電源を供給できないときに電源を供給するためのものである。バックアップバッテリー26を含まない構成としてもよい。
【0037】
また、本発明の車両用バッテリー装置1を電気自動車に適用してもよい。この場合、図1においては、エンジンECU33およびエンジン34を含まない構成となり、走行制御ECU31は、アクセル開度、シフトポジション、各種センサからの出力信号に従い、運転状態に応じたモータトルクを求め、インバータ32に要求値を出力することで駆動力を制御する。これ以外の構成は、上述のハイブリッド車両に適用した構成と同様である。
【0038】
図2を用いて、マイコン10における動作モード移行処理について説明する。なお、本処理は、上述の制御プログラムに含まれ、予め定められたタイミングで繰り返し実行される。まず、以下のうちの少なくとも一つを用いて、照合用データを取得したか否かを判定する(S11)。
・電池ECU2に照合用端末21が接続され、I/O4を介して照合用端末21からデータを受信したとき、受信したデータに照合用データが含まれているか否かを判定し、照合用データが含まれているとき、これを取得する。
・受信機5を介して照合用携帯機22からデータを受信したとき、受信したデータに照合用データが含まれているか否かを判定し、照合用データが含まれているとき、これを取得する。
・メモリカード23が接続あるいは挿入されたとき、メモリカード23から照合用データを取得する。
【0039】
次に、照合用データを取得したとき(S11:Yes)、取得した照合用データを、メモリ6に予め記憶されているマスターデータと照合する(S12)。照合の結果、取得した照合用データがマスターデータと異なるとき(S13:No)、動作モードを通常の動作状態である(すなわち、バッテリー交換中でない)通常モードとし(S23)、メモリ6上の動作モード記憶領域に記憶する(S24)。
【0040】
一方、照合の結果、取得した照合用データがマスターデータと一致して照合に成功したとき(S13:Yes)、動作モードを、バッテリーを交換中であることを表すバッテリー交換中モードとし(S14)、メモリ6上の動作モード記憶領域に記憶する(S15)。
【0041】
次に、電圧センサ3を用いて検出したバッテリー24の電圧に基づいて、バッテリー24の充電状態を取得する(S16)。バッテリー24の充電状態は、充電率あるいは充電電力のいずれを取得してもよい。そして、算出したバッテリー24の充電状態を、バッテリー交換前充電状態として、メモリ6上の充電状態記憶領域に記憶する(S17)。
【0042】
次に、バッテリー24の取り外しを検出したか否かを、以下のうちのいずれかを用いて判定する。
・バックアップバッテリー26を含まない構成のときは、バッテリー24を取り外すと、電池ECU2の動作は停止するので(この時点で、バッテリー24が取り外されたと見なす)、以降の処理は実施されない。
・バックアップバッテリー26を含む構成のとき、I/O4を介して取得したコネクタ9の状態、あるいは電圧センサ3が検出するバッテリー24の電圧値に基づいて、バッテリー24の取り外しを検出したか否かを判定する。
【0043】
例えば、コネクタ9にバッテリー24の脱着に応じて状態(電圧)が変わる端子を設け、その端子の状態に基づいて、バッテリー24の取り外しを検出する。あるいは、電圧センサ3が検出するバッテリー24の電圧値が例えば0.5Vのような閾値を下回ったときに、バッテリー24を取り外したと判定する。
【0044】
バックアップバッテリー26を含む構成のとき、バッテリー24の取り外しを検出したとき(S18:Yes)本処理を終了する。一方、バッテリー24の取り外しを検出しないとき(S18:No)、照合成功時から所定時間経過したか否かを判定する。所定時間経過したとき(S19:Yes)、上述の照合成功を無効として、動作モードを通常モードに戻して(S20)、メモリ6上の動作モード記憶領域に記憶する(S21)。そして、メモリ6上の充電状態記憶領域に記憶されたバッテリー交換前充電状態の記憶内容をクリアする(S22)。
【0045】
図3を用いて、マイコン10における走行許可判定処理について説明する。なお、本処理は、上述の制御プログラムに含まれ、予め定められたタイミングで繰り返し実行される。まず、バッテリー24の装着を検出するタイミングが到来したか否かを、以下のうちのいずれかを用いて判定する。
・バックアップバッテリー26を含まない構成のときは、バッテリー24を装着すると、電池ECU2が起動する(すなわち、パワーオンリセット)ので、電池ECU2の初期化処理内で本処理を実施すればよく、この場合、常にバッテリー24の装着を検出していることになる。
・バックアップバッテリー26を含む構成のとき、I/O4を介して取得したコネクタ9の状態、あるいは電圧センサ3が検出するバッテリー24の電圧値に基づいて、バッテリー24の装着を検出したか否かを、例えば一定周期で判定する。
【0046】
バッテリー24の装着を検出するタイミングが到来し(S31:Yes)、バッテリー24の装着を検出したとき(S32:Yes)、メモリ6上の動作モード記憶領域の内容を読み出す(S33)。続いて、読み出した動作モードがバッテリー交換中モードであるか否かを判定し、バッテリー交換中モードであるとき(S34:Yes)、メモリ6上の充電状態記憶領域に記憶されたバッテリー交換前充電状態の記憶内容を読み出す(S35)。
【0047】
次に、図1のステップS16と同様の方法で、現在のバッテリー24の充電状態(「バッテリー交換後充電状態」という)を取得する(S36)。そして、バッテリー交換後充電状態とバッテリー交換前充電状態との差を、バッテリー24への充電量として算出する(S37)。
【0048】
次に、算出した充電量が、予めメモリ6に記憶された閾値を上回るとき(S38:Yes)、バッテリー交換が正しく行われたと判断して、車両の走行動作を許可する(S39)。一方、読み出した動作モードがバッテリー交換中モードでないとき(S34:No)、あるいは、算出した充電量が閾値を下回るとき(S38:No)、バッテリー交換が不正に行われたと判断して、車両の走行動作を不許可とする(S40)。
【0049】
なお、車両の走行動作の許可/不許可は、以下のうちの少なくとも一つを用いる。
・車両の走行動作を許可するときには、電池ECU2の指令により、リレー25を導通状態とする。また、車両の走行動作を許可しないときには、リレー25を遮断状態とする。
・車両の走行動作を許可するときには、電池ECU2から、走行制御ECU31に、インバータの駆動許可信号を送る。また、車両の走行動作を許可しないときには、走行制御ECU31に、インバータの駆動禁止信号を送る。走行制御ECU31は、これらの信号に基づいてインバータの駆動制御を行う。
・車両の走行動作を許可するときには、電池ECU2から、エンジンECU33に、エンジンの始動許可信号を送る。また、車両の走行動作を許可しないときには、エンジンECU33に、エンジンの始動禁止信号を送る。エンジンECU33は、これらの信号に基づいてエンジンの始動制御を行う。
【0050】
図2および図3の各処理において、充電量に基づく車両の走行動作の許可/不許可を実施しない構成としてもよい。この場合、図2のステップS16,S17,S22および図3のステップS35〜S38は実行されない。
【0051】
また、充電量(バッテリー交換後充電状態とバッテリー交換前充電状態との差)が、例えば0±満充電量の5%のような、0に近いとき、単に点検のために電池を取り外したとして、車両の走行動作を許可してもよい。この場合、ステップS38での判断は、以下のようになる。
・算出した充電量が閾値を上回るとき、あるいは、バッテリー交換前後の充電状態の差が上述のような0に近いとき、車両の走行動作を許可する。
・上記以外のとき、車両の走行動作を許可しない。
【0052】
また、照合用コードを、バッテリー交換用(充電を行う)とバッテリー点検用(充電を行わない)とに区別して設定してもよい。以下、図4,図5を用いて、本構成について説明する。なお、図4,図5は、それぞれ図2,図3の変形例であるため、相違点のみ説明し、同一の処理ステップには同一の番号を付与し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0053】
まず、図4を用いて、図2の動作モード移行処理の変形例について説明する。照合に成功したとき(S13:Yes)、取得した照合用コードが「バッテリー交換用」であるか否かを判定し、「バッテリー交換用」の照合用コードであるとき(S131:Yes)、動作モードをバッテリー交換中モードとする(S14)。そして、この動作モードをメモリ6に記憶する(S15)。
【0054】
一方、取得した照合用コードが「バッテリー交換用」の照合用コードでないとき(S131:No)、「バッテリー点検用」であるか否かを判定し、「バッテリー点検用」の照合用コードであるとき(S132:Yes)、動作モードをバッテリー点検中モードとする(S133)。そして、この動作モードをメモリ6に記憶する(S15)。
【0055】
また、一方、照合に失敗したとき(S13:No)、あるいは取得した照合用コードが「バッテリー点検用」の照合用コードでないとき(S132:No)、動作モードを通常モードとし(S23)、この動作モードをメモリ6に記憶する(S24)。
【0056】
図5を用いて、図3の走行許可判定処理の変形例について説明する。メモリ6に記憶された動作モードを読み出し(S33)、動作モードがバッテリー交換中モードあるいはバッテリー点検中モードであるとき(S34:YesあるいはS341:Yes)、メモリ6に記憶されたバッテリー交換前充電状態の記憶内容を読み出し(S35)、現在のバッテリー24の充電状態(「バッテリー交換後充電状態」)を取得する(S36)。そして、バッテリー交換後充電状態とバッテリー交換前充電状態との差を、バッテリー24への充電量として算出する(S37)。
【0057】
動作モードがバッテリー交換中モードであるとき(S371:Yes)、算出した充電量が、予めメモリ6に記憶された閾値を上回るか否かを判定する(S38)。そして、その判定結果に基づいて、車両の走行動作の許可/不許可を行う(S39,S40)。
【0058】
一方、動作モードがバッテリー点検中モードであるとき(S371:No→S372:Yes)、算出した充電量(バッテリー交換後充電状態とバッテリー交換前充電状態との差)が、0あるいは0±満充電量の5%のような、0に近いか否かを判定する。算出した充電量が0に近いとき(S373:Yes)、車両の走行動作を許可する(S39)。
【0059】
一方、動作モードがバッテリー点検中モードでないとき(S341:NoあるいはS372:No)、あるいは、動作モードがバッテリー点検中モードで、かつ算出した充電量が0に近くないとき(S373:No)、車両の走行動作を許可しない(S40)。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用バッテリー装置
2 電池ECU
3 電圧センサ
4 I/O(照合用データ取得部)
5 受信機(照合用データ取得部)
6 メモリ(動作モード記憶部,充電状態記憶部)
7 LAN I/F
9 コネクタ
10 マイコン(照合部,動作モード制御部,装着状態検出部,動作許可部,交換判定部)
11 CPU
21 照合用端末
22 照合用携帯機
23 メモリカード
24 バッテリー
25 リレー
31 走行制御ECU
33 エンジンECU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から照合用データを取得する照合用データ取得部と、
取得した前記照合用データを予め記憶されたマスターデータと照合する照合部と、
前記照合部による照合成功時に、動作モードを通常の動作モードである通常モードからバッテリーを交換可能な動作モードであるバッテリー交換中モードに移行させる動作モード制御部と、
前記動作モードを記憶する動作モード記憶部と、
を備えることを特徴とする車両用バッテリー装置。
【請求項2】
前記動作モード記憶部は、不揮発性メモリを含んで構成される請求項1に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項3】
前記バッテリーの装着状態を検出する装着状態検出部と、
前記装着状態検出部が前記バッテリーの装着を検出したとき、前記動作モード記憶部に記憶されている前記動作モードが前記バッテリー交換中モードであれば車両の走行に関する動作を許可し、前記バッテリー交換中モードでなければ車両の走行に関する動作を許可しない動作許可部と、
を備える請求項1または請求項2に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項4】
前記車両用バッテリー装置は、前記バッテリーから電源を供給され、前記バッテリーが装着されたことにより発生するパワーオンリセットを、前記バッテリーの装着を検出したものとする請求項3に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項5】
前記車両用バッテリー装置は、前記バッテリーから電源を供給され、前記バッテリーが装着時に発生する電源電圧の変化を検出したときに、前記バッテリーの装着を検出したものとする請求項3に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項6】
前記装着状態検出部が前記バッテリーの装着を検出したとき、前記バッテリーの交換が行われたか否かを判定する交換判定部を備え、
前記動作許可部は、前記交換判定部において前記バッテリーの交換が行われたと判定したき、前記動作モード記憶部に記憶されている前記動作モードが前記バッテリー交換中モードであれば車両の走行に関する動作を許可し、前記バッテリー交換中モードでなければ車両の走行に関する動作を許可しない請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項7】
前記バッテリーの充電状態を取得する充電状態取得部と、
前記動作モードが前記通常モードから前記バッテリー交換中モードに移行する際に、前記充電状態取得部が取得した前記充電状態を記憶する充電状態記憶部と、
を備え、
前記充電状態取得部は、前記バッテリーの装着を検出したときに、前記装着したバッテリーの充電状態を取得し、
前記交換判定部は、前記充電状態記憶部に記憶されている充電状態と、前記バッテリーの装着を検出したときに前記充電状態取得部が取得した充電状態とに基づいて、前記バッテリーの交換を行ったか否かを判定する請求項6に記載の車両用バッテリー装置。
【請求項8】
前記交換判定部は、前記充電状態記憶部に記憶されている充電状態と、前記バッテリーの装着を検出したときに前記充電状態取得部が取得した充電状態とに基づいて算出される、前記バッテリーへの充電量が予め定められた閾値を上回るとき、前記バッテリーの交換を行ったと判定する請求項7に記載の車両用バッテリー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151997(P2012−151997A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8410(P2011−8410)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】