説明

車両用フード構造

【課題】耐デント性を確保しながら、フード前端部下方のスペースの確保と衝突体がフードに当接した際の変形ストロークの確保との両立を図ることができる車両用フード構造を得る。
【解決手段】フードアウタパネル20を補強するデントリインフォース44は、接合フランジ54がフードアウタパネル20寄りでフードインナパネル22の前端部26側に接合され、かつ、第1壁部50が補強部48の前端48Bから屈曲されてフードインナパネル22の立壁部28側へ向けて延在すると共に第1壁部50から略フード上方側へ折り返された第2壁部52が接合フランジ54と連続している。フード略上方から所定値以上の荷重F2が入力された場合、フードアウタパネル20を介して荷重を受ける第1壁部50がフード下方側へ変位し、デントリインフォース44が折返し部60から大きく曲げ変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードアウタパネルとフードインナパネルとを含んで構成された車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用フードにおいては、フードアウタパネル及びフードインナパネルが補強パネルによって補強されている構造があり(例えば、特許文献1参照)、例えば、耐デント性を確保するために、デントリインフォースが配設される場合がある。このようなデントリインフォースは、例えば、フード前端側の端部がフードインナパネルのフード前端側の端部に接合されると共に、フード後方側に向けてフードアウタパネルに沿って延在した部分がマスチックを介して当該フードアウタパネルに接着されている。
【0003】
ここで、フードインナパネルのフード前端側の端部は、フードとフード下方に配置される部品との干渉を回避するために、フードインナパネルの底部よりもフードアウタパネルに近い位置に設けられる場合があり、この場合、デントリインフォースのフード前端側の接合位置も、フードインナパネルの底部よりもフードアウタパネルに近い位置に設けられることになる。
【0004】
しかし、この場合、構造によっては、衝突体がフードに当接した際に、デントリインフォースが伸び変形を伴って変形することになり、変形ストローク(変形可能なストローク)を確保しにくい。
【特許文献1】特開2005−75176公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、耐デント性を確保しながら、フード前端部下方のスペースの確保と衝突体がフードに当接した際の変形ストロークの確保との両立を図ることができる車両用フード構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用フード構造は、エンジンルームを開閉可能に覆うフードの外板を構成するフードアウタパネルと、前記フードアウタパネルに対してフード下方側へ配置されてフードの内板を構成し、フード前端側で前記フードアウタパネル寄りの位置に配置される前端部と、前記前端部のフード前後方向における後端から屈曲されて略フード下方側へ延在した立壁部と、前記立壁部のフード上下方向における下端から屈曲されて略フード後方側へ延在すると共に前記フードアウタパネルに対して略平行に配置された底部と、を備えるフードインナパネルと、前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間に配置され、前記フードアウタパネルに接合されて当該フードアウタパネルを補強する補強部と、前記補強部のフード前後方向における前端から屈曲されて前記立壁部側へ向けて延在する第1壁部と、前記第1壁部のフード上下方向における下端から略フード上方側へ折り返されて前記立壁部に沿って延在する第2壁部と、前記第2壁部のフード上下方向における上端から屈曲されて略フード前方側へ延在すると共に前記前端部に直接又は他部材を介して接合され或いは当該前端部側に位置する他部材のフード前端側の端部に接合される接合フランジと、を備える補強部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用フード構造によれば、補強部材の補強部が、フードアウタパネルに接合されて当該フードアウタパネルを補強するので、例えば、フードを閉じる際にフードアウタパネルを手で押しても、フードアウタパネルの凹みが抑えられる。また、フードアウタパネルに対してフード下方側へ配置されるフードインナパネルは、その前端部がフード前端側でフードアウタパネル寄りの位置に配置されているので、フード前端部下方にスペースが確保される。
【0008】
このフードインナパネルの前端部に直接又は他部材を介して補強部材の接合フランジが接合され或いは当該前端部側に位置する他部材のフード前端側の端部に補強部材の接合フランジが接合されるが、補強部材は、第1壁部が補強部のフード前後方向における前端から屈曲されて立壁部側へ向けて延在すると共に第2壁部が第1壁部のフード上下方向における下端から略フード上方側へ折り返されて立壁部に沿って延在して接合フランジと連続しているので、フード略上方から衝突体がフードに当接して所定値以上の荷重がフードに入力された場合には、フードアウタパネルを介して補強部と共に荷重を受ける第1壁部がフード下方側へ変位し、補強部材が第1壁部から第2壁部への折返し部分から大きく曲げ変形する。これによって、フードの変形ストロークが確保され、衝突時の衝突エネルギーが十分に吸収される。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両用フード構造は、請求項1記載の構成において、前記第1壁部が、フード下方へ向けてフード前方側へ傾斜することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載する本発明の車両用フード構造によれば、第1壁部がフード下方へ向けてフード前方側へ傾斜しているので、衝突体がフードに当接して所定値以上の荷重が入力された場合には、第1壁部から第2壁部への折返し部分を支点(起点)として第1壁部がフード下方側へ倒れ込んで反転するように変位し、補強部材が前記折返し部分から効率良く曲げ変形する。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両用フード構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第1壁部から略フード上方側へ折り返された折返し部が、前記フードインナパネルの前記底部と前記フードアウタパネルとの中央位置を結んで延長した仮想中央線上又は前記仮想中央線上の近傍に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載する本発明の車両用フード構造によれば、第1壁部から略フード上方側へ折り返された折返し部が、フードインナパネルの底部とフードアウタパネルとの中央位置を結んで延長した仮想中央線上又は仮想中央線上の近傍に設けられるので、衝突体がフードに当接して所定値以上の荷重が入力された場合には、フードアウタパネルを介して補強部と共に荷重を受ける第1壁部は、荷重入力前にフードアウタパネル側に配置されていた先端部がフードインナパネルの底部又は底部近傍まで変位する。これによって、変形ストロークが有効に確保される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用フード構造によれば、耐デント性を確保しながら、フード前端部下方のスペースの確保と衝突体がフードに当接した際の変形ストロークの確保との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項2に記載の車両用フード構造によれば、第1壁部を傾斜させることで、衝突体がフードに当接した際に補強部材を効率良く曲げ変形させることができるという優れた効果を有する。
【0015】
請求項3に記載の車両用フード構造によれば、フードインナパネルの底部とフードアウタパネルとの間の距離に応じて折返し部の位置を設定することで、衝突体がフードに当接した際の変形ストロークを有効に確保することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明における車両用フード構造の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向をそれぞれ示す。また、フードの閉止状態においては、フードの上方向は車両の上方向と同じ方向とし、フードの前方向は車両の前方向と同じ方向とする。
【0017】
図1に示されるように、車両前部10には、エンジンルーム12を開閉可能に覆うフード14が配設されており、閉止状態のフード14における前端部のフード幅方向(車幅方向と同じ方向)の中央部に対応して、周知のフードロック機構16が配設されている。
【0018】
図2に示されるように、フード14は、フード14の外板を構成すると共に略車両前後方向に沿って延在されるフードアウタパネル20と、このフードアウタパネル20に対してフード下方側に配置されてフード14の内板を構成するフードインナパネル22と、を含んで構成されており、フードアウタパネル20の前端縁部20Aとフードインナパネル22の前端縁部24とは、ヘミング加工にて結合されている。なお、フードアウタパネル20及びフードインナパネル22は、いずれも金属板(例えば、鋼板、アルミニウム合金板等)をプレス成形することにより形成されている。
【0019】
フードインナパネル22は、フード前端側でフードアウタパネル20寄りの位置に配置される前端部26と、前端部26のフード前後方向における後端26Aから屈曲されて略フード下方側へ延在した立壁部28と、立壁部28のフード上下方向における下端28Aから屈曲されて略フード後方側へ延在すると共にフードアウタパネル20に対して略平行に配置された底部30と、底部30よりもフード後方側とされてフード後方へ向けてフードアウタパネル20に接近する方向へ延在する傾斜壁部32と、を備えている。また、立壁部28は、本実施形態では、フード下方へ向けてフード後方側へ傾斜している。なお、前端部26と傾斜状の立壁部28とを備えるフードインナパネル22は、絞り加工が容易で成形性が良い。
【0020】
また、前端部26がフード前端側でフードアウタパネル20寄りの位置に配置されているので、フード前端部下方にスペース36が確保される。このスペース36は、フード下方部材(例えば、フード下方に設置されてフードロック機構16の一部を構成するフード開用のレバー(オグジアリキャッチレバー)、ラジエータグリル、フロントバンパカバー等(図示省略))との干渉回避のための逃げ空間とされている。
【0021】
フードインナパネル22の底部30には、貫通孔30Aが貫通形成されており、この貫通孔30Aには、フードロック機構16の一部を構成するストライカ38がフード上方側から挿入されている。ストライカ38は、側断面視形状が略U字形状となっており、ベースプレート40を介してフードロックリインフォース42(フードロックリインフォースパネル)の下壁部42Cに固定され、フードインナパネル22の底部30に対してフード下方側に突出している。
【0022】
フードロックリインフォース42は、板状とされ、剛性補強用としてフード幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に沿って延在してフードインナパネル22の上面側に固定されており、フードインナパネル22の前端部26に沿って配置されたフード前端側の端部としてのフランジ部42Aと、フランジ部42Aから屈曲されてフードインナパネル22の立壁部28に沿って配置された前壁部42Bと、前壁部42Bから屈曲されてフードインナパネル22の底部30に沿って配置された下壁部42Cと、を含んで構成されている。下壁部42Cには、ストライカ38が挿通される貫通孔42Dが貫通形成されている。
【0023】
フードアウタパネル20とフードインナパネル22との間には、フード14を閉止する際のフードアウタパネル20の変形を抑制するために、補強部材としてのデントリインフォース44(デントリインフォースパネル)が配置されてフード幅方向(図2の紙面に垂直な方向)に延在している。フード補強パネルとして機能するデントリインフォース44は、板状(図4参照)とされ、フードアウタパネル20にほぼ沿って延在すると共にマスチック56を介してフードアウタパネル20に接合されてフードアウタパネル20を補強する補強部48と、補強部48よりもフード後方側とされてフードインナパネル22の傾斜壁部32に接合される後端フランジ46と、補強部48のフード前後方向における前端48Bから屈曲されて立壁部28側へ向けて延在する第1壁部50と、第1壁部50のフード上下方向における下端50A(下部先端)から略フード上方側へ折り返されて立壁部28に沿って延在する第2壁部52と、第2壁部52のフード上下方向における上端52Aから屈曲されて略フード前方側へ延在すると共に前端部26側に接合される接合フランジ54と、を備えた構造となっている。接合フランジ54は、第1壁部50から略フード上方側へ折り返された折返し部60(第1壁部50と第2壁部52との境目部分)よりもフード前方側に配置されている。
【0024】
補強部48は、フード上方側へ向けられた上面がフードアウタパネル20との接合部となるマスチック座面48Aとされており、このマスチック座面48Aがマスチック56によりフードアウタパネル20の下面に接着されている。補強部48のフード後方側の後端フランジ46は、フードインナパネル22の傾斜壁部32にスポット溶接により接合されている(図4では、スポット溶接部における打点を「×」印で示す)。また、接合フランジ54は、他部材としてのフードロックリインフォース42のフランジ部42Aにスポット溶接により接合されており(図4では、スポット溶接部における打点を「×」印で示す)、フランジ部42Aを介してフードインナパネル22の前端部26に固定(接合)されている。図4に示されるように、接合フランジ54及び後端フランジ46は、フード幅方向(矢印14W方向)に間隔を開けて複数設けられている。
【0025】
図2に示されるように、第1壁部50から略フード上方側へ折り返された折返し部60は、フードインナパネル22の底部30とフードアウタパネル20との中央位置(フード前方側寄りにおける中央位置、フード後方側寄りにおける中央位置等のような複数の中央位置)を結んで延長した仮想中央線CL上又は仮想中央線CL上の近傍に設けられている。また、第1壁部50は、フード下方へ向けてフード前方側へ傾斜している。
【0026】
これらにより、第1壁部50及び第2壁部52は、補強部48と接合フランジ54との最短となる接続方向から迂回するかたちでフード下方側に配置されてフード側断面視でV字状のV溝形状を構成しており、フード略上方から所定値以上の荷重F2(図3参照)がフード14に入力された状態では、第1壁部50が折返し部60を起点としてフード下方側へ反転可能となっている。ここで、第2壁部52の側断面視における長さを変えることによって、第1壁部50が反転する際の起点となる位置、及び、第1壁部50が反転する際の回転半径を適宜設定することができる。
【0027】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
図2に示されるように、デントリインフォース44の補強部48が、フードアウタパネル20にほぼ沿って延在すると共にフードアウタパネル20に接合されてフードアウタパネル20を補強するので、例えば、フード14を閉じる際にフードアウタパネル20を手で押して押圧力F1を加えても、フードアウタパネル20の凹みが抑えられる。また、フードアウタパネル20に対してフード下方側へ配置されるフードインナパネル22は、その前端部26がフード前端側でフードアウタパネル20寄りの位置に配置されているので、フード前端部下方にスペース36が確保され、フード14の下方に設置されるフード下方部材(図示省略)と干渉しない。
【0029】
このフードインナパネル22の前端部26側には、フードロックリインフォース42のフランジ部42Aにデントリインフォース44の接合フランジ54が接合されるが、デントリインフォース44は、第1壁部50が補強部48のフード前後方向における前端48Bから屈曲されて立壁部28側へ向けて延在すると共に第2壁部52が第1壁部50のフード上下方向における下端から略フード上方側へ折り返されて立壁部28に沿って延在して接合フランジ54と連続しているので、図3に示されるように、フードロック機構16の上方又は上方近傍におけるフード略上方から衝突体64がフード14に当接して所定値以上の荷重F2がフード14に入力された場合には、フードアウタパネル20を介して補強部48と共に荷重F2を受ける第1壁部50がフード下方側へ変位し、デントリインフォース44が折返し部60から大きく曲げ変形する。図3では、デントリインフォース44の変形後の位置及び形状を二点鎖線で示している。なお、このとき、第2壁部52は、前壁部42Bを介して立壁部28から反力を受けている。
【0030】
補足すると、補強部のフード前後方向における前端からフード略下方側へ屈曲されてフードインナパネルの前端部側へ接合される場合のような折返し部のない対比構造に比べて、デントリインフォース44の補強部48のフード前後方向における前端48Bから屈曲されてフード略下方側へ向けて延在する前壁部分(本実施形態では第1壁部50)の線長が長くなることで、デントリインフォース44の接合フランジ54とフードインナパネル22の前端部26側との接合位置が、フードインナパネル22の底部30よりもフードアウタパネル20に近くなっても、フード略上方から衝突体64がフード14に衝突した際にデントリインフォース44の伸び変形が生じにくい。
【0031】
ここで、第1壁部50がフード下方へ向けてフード前方側へ傾斜しているので、衝突体64がフード14に当接して所定値以上の荷重F2が入力された場合には、第1壁部50から第2壁部52への折返し部60を支点(起点)として第1壁部50がフード下方側へ倒れ込んで反転するように(矢印A方向へ)変位し、デントリインフォース44が折返し部60から効率良く曲げ変形する。
【0032】
また、第1壁部50から略フード上方側へ折り返された折返し部60が、フードインナパネル22の底部30とフードアウタパネル20との中央位置を結んで延長した仮想中央線CL上又は仮想中央線CL上の近傍に設けられるので、衝突体64がフード14に当接して所定値以上の荷重F2が入力された場合には、フードアウタパネル20を介して補強部48と共に荷重F2を受ける第1壁部50は、荷重F2入力前にフードアウタパネル20側に配置されていた先端部がフードインナパネル22の底部30又は底部30近傍まで変位する。
【0033】
換言すれば、折返し部60の位置がフードインナパネル22の底部30に近すぎると、衝突体64がフード14に当接して所定値以上の荷重F2が入力された場合、変形した第1壁部50に肉余りが生じることになり、逆に、折返し部60の位置がフードアウタパネル20に近すぎると、衝突後半においてデントリインフォース44に張力が作用することになるが、本実施形態では、第1壁部50がフードアウタパネル20からフードインナパネル22の底部30までの間を有効に変位することになる。ここで、衝突体64には、デントリインフォース44の変形によって生じる加速度第1波と、デントリインフォース44とフードインナパネル22との接触又はデントリインフォース44の変形進行に応じて増加する変形抵抗等によって生じる加速度第2波と、が作用するが、本実施形態では、加速度第2波を効果的に小さくすることができる。
【0034】
このように、第1壁部50を傾斜させることで、デントリインフォース44を効率良く曲げ変形させることができ、フードインナパネル22の底部30とフードアウタパネル20との間の距離に応じて折返し部60の位置を設定することで、衝突体64がフード14に当接した際の変形ストロークを有効に確保することができるので、衝突時の衝突エネルギーが十分に吸収される(歩行者保護性能の発揮)。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の車両用フード構造によれば、耐デント性を確保しながら、フード前端部下方のスペース36(図2参照)の確保と衝突体64がフード14に当接した際の変形ストロークの確保との両立を図ることができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、車両用フード構造の第2の実施形態を図5に基づき説明する。第2の実施形態における車両用フード構造は、折返し部60の位置が第1の実施形態における折返し部60(図2参照)の位置に比べてフードインナパネル22の底部30寄りに配置されている。他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図5に示される折返し部60の位置をフードインナパネル22の底部30寄りにした構成においても、衝突体64がフード14に当接して所定値以上の荷重F2が入力された場合には、デントリインフォース44は、折返し部60から曲げ変形するので、デントリインフォース44の伸び変形を防止できる。このとき、変形した第1壁部50に肉余りが生じる場合もあるが、衝突体64がフード14に当接した際の変形ストロークは、折返し部60のない対比構造に比べて確保される。
【0038】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、第1壁部50、第2壁部52、及びこれらの境目となる折返し部60が、デントリインフォース44のフード幅方向の全長に亘って延在しているが、第1壁部、第2壁部、及びこれらの境目となる折返し部は、デントリインフォースのフード幅方向の一部にのみ延在する構成であってもよく、デントリインフォースの前端側におけるフードインナパネル又はフードロックリインフォースとの接合位置との関係を考慮し、必要な部分にのみ設けてもよい。例えば、フード開用のレバーとの干渉を回避する必要があるフード幅方向の中央部(及び中央部近傍)のみに、第1壁部、第2壁部、及びこれらの境目となる折返し部が設けられてもよい。この場合、デントリインフォースのフード幅方向の他部分では、例えば、補強部のフード前後方向における前端からフード略下方側へ屈曲されてフードインナパネルの前端部側へ接合されるような構成であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、第1壁部50が、フード下方へ向けてフード前方側へ傾斜しているが、第1壁部は、例えば、フード下方へ垂下される等のように、フード下方へ向けてフード前方側へ傾斜していない構成であってもよい。
【0040】
さらに、上記実施形態では、接合フランジ54は、フードロックリインフォース42のフランジ部42Aを介してフードインナパネル22の前端部26に接合されているが、接合フランジ54は、フードロックリインフォース42のフランジ部42Aを介さずにフードインナパネル22の前端部26に直接接合されてもよい。
【0041】
さらにまた、図6に示されるように、接合フランジ54は、前端部26側に位置するフードロックリインフォース42のフランジ部42Aにのみ接合されてもよく、この場合、フランジ部42Aは、フードインナパネル22の前端部26のフード上方側において当該前端部26から離間した位置に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用フード構造が適用された車両前部を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である(デントリインフォースは、図4の2L−2L線断面に相当する。)。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用フード構造に衝突体が衝突した状態を車両前後方向に切断した断面で示す縦断面図である。デントリインフォースの変形後の位置及び形状を二点鎖線で示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用フード構造におけるデントリインフォースを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用フード構造を車両前後方向に切断した断面で示す縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る車両用フード構造を車両前後方向に切断した断面で示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
12 エンジンルーム
14 フード
20 フードアウタパネル
22 フードインナパネル
26 前端部
26A 前端部のフード前後方向における後端
28 立壁部
28A 立壁部のフード上下方向における下端
30 底部
42 フードロックリインフォース(他部材)
42A フランジ部(他部材のフード前端側の端部)
44 デントリインフォース(補強部材)
48 補強部
48B 補強部のフード前後方向における前端
50 第1壁部
50A 第1壁部のフード上下方向における下端
52 第2壁部
52A 第2壁部のフード上下方向における上端
54 接合フランジ
60 折返し部
CL 仮想中央線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームを開閉可能に覆うフードの外板を構成するフードアウタパネルと、
前記フードアウタパネルに対してフード下方側へ配置されてフードの内板を構成し、フード前端側で前記フードアウタパネル寄りの位置に配置される前端部と、前記前端部のフード前後方向における後端から屈曲されて略フード下方側へ延在した立壁部と、前記立壁部のフード上下方向における下端から屈曲されて略フード後方側へ延在すると共に前記フードアウタパネルに対して略平行に配置された底部と、を備えるフードインナパネルと、
前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間に配置され、前記フードアウタパネルに接合されて当該フードアウタパネルを補強する補強部と、前記補強部のフード前後方向における前端から屈曲されて前記立壁部側へ向けて延在する第1壁部と、前記第1壁部のフード上下方向における下端から略フード上方側へ折り返されて前記立壁部に沿って延在する第2壁部と、前記第2壁部のフード上下方向における上端から屈曲されて略フード前方側へ延在すると共に前記前端部に直接又は他部材を介して接合され或いは当該前端部側に位置する他部材のフード前端側の端部に接合される接合フランジと、を備える補強部材と、
を有することを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記第1壁部が、フード下方へ向けてフード前方側へ傾斜することを特徴とする請求項1記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記第1壁部から略フード上方側へ折り返された折返し部が、前記フードインナパネルの前記底部と前記フードアウタパネルとの中央位置を結んで延長した仮想中央線上又は前記仮想中央線上の近傍に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用フード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−143417(P2008−143417A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334704(P2006−334704)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】