説明

車両用ブレーキ制御装置

【課題】ウィリー走行中であっても、車輪速センサの異常判定をより精度良く行える車両用ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】二輪車用ブレーキ制御装置1Aは、前輪TF、後輪TRの車輪速度を取得する車輪速センサ2F、2R、液圧ユニット31、制御ユニット30Aを備えている。制御ユニットは、前輪車輪速度から車輪加速度を取得する従動輪加速度取得手段32と、車輪加速度に基づいて走行状態を判定する走行状態判定手段33Aと、車輪速センサの異常の有無を判定する異常判定手段34と、液圧ユニットを制御する制動力制御手段35を有している。異常判定手段は、後輪が非停止状態を示し、前輪が停止状態を示している場合に、走行状態判定手段に前輪が浮き上がったままの走行状態かどうか判定させ、その結果に基づいて前輪の車輪速センサに異常が有るか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキ制御機能等を有する車両用ブレーキ制御装置では、フェールセーフの観点から、複数の車輪それぞれに車輪速センサを備え、少なくとも一つの車輪速センサが、車輪速度が所定値以上で車両の走行状態を示しているにもかかわらず、車輪速センサが停止状態(車輪速度が所定値以下)を示す場合は、停止状態を示す車輪速センサが異常であると判定する機能を有するものが一般的である。
車輪速センサの異常判定の精度を高めるために、例えば、車輪加速度から駆動輪の空回り(ホイルスピン)を判定し、ホイルスピンをしていると判定された場合は、車輪速センサの異常判定を中止するものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−291886号公報(段落[0006])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来技術における車輪速センサの異常判定では、車輪速度が所定値以下の車輪速度を示す車輪が検出されることを基本にしているので、自動二輪車に適用した場合、ウィリー走行等の前輪が浮き上がったままの走行状態による前輪車輪速度の低下及び停止状態と、車輪速センサの異常による前輪車輪速度の停止状態とを識別できない場合があった。
【0004】
本発明は、係る問題を解決することを課題とし、車輪速センサの異常判定をより精度良く行える車両用ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、従動輪及び駆動輪それぞれの車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、車輪速度取得手段の異常の有無を判定する異常判定手段と、取得された車輪速度に基づいて従動輪及び駆動輪それぞれに設けられたブレーキ装置の制動力を制御するとともに、異常判定手段によって異常有りと判定された場合には、異常に対応する所定の異常対応制御を実行する制動力制御手段と、を備えた車両用ブレーキ制御装置であって、更に、従動輪の走行状態信号を出力する従動輪走行状態取得手段と、出力された走行状態信号から、当該従動輪が浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定する走行状態判定手段を備え、
異常判定手段は、駆動輪に係る車輪速度取得手段が非停止状態を示し、従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示している場合には、走行状態判定手段により従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定されたときに、従動輪に係る車輪速度取得手段に異常があると判定し、走行状態判定手段により従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定されたときに、従動輪に係る車輪速度取得手段に異常が無いと判定することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、駆動輪に係る車輪速度取得手段が非停止状態を示しているにもかかわらず、従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示している場合でも、走行状態が従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定される場合には、ウィリー走行等による従動輪の停止と判定し、従動輪に係る車輪速度取得手段の異常と判定しないようにできる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、従動輪走行状態取得手段は、従動輪に設けられた荷重センサであって、荷重信号を出力し、走行状態判定手段は、荷重センサが所定の基準荷重未満を示す場合は、従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定し、所定の基準荷重以上を示す場合は、従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、車両の仕様に応じて基準荷重をあらかじめ設定しておくことで、従動輪に設けられた荷重センサからの荷重信号により、容易に従動輪が浮き上がったままの走行状態か否かが判定できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、従動輪走行状態取得手段は、従動輪に係る車輪速度取得手段からの車輪速度に基づいて車輪加速度を取得する従動輪加速度取得手段であって、走行状態信号として車輪加速度信号を出力し、走行状態判定手段は、従動輪の停止状態に至るまでの車輪加速度信号が所定の基準減速度未満の車輪減速度である場合は、従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定し、所定の基準減速度以上の車輪減速度である場合は、従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定することを特徴とする。
【0010】
なお、従動輪の「車輪加速度」は、前進方向の車輪速度が増加する場合及び、前進方向の車輪速度が減少する場合の両方を含み、前進方向の車輪速度が減少する場合、つまり負の車輪加速度を、「車輪減速度」と特定して明確化したものである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、例えば、ウィリー走行時の浮き上がった従動輪が停止状態に至ったときに、誤った車輪速度取得手段の異常判定を行わずに済む。
例えば、自動二輪車において、運転者が急激にスロットル開放動作を行うことにより、ウィリー走行が開始される際に、ブレーキ操作が行われていない場合、従動輪である前輪は非接地状態での空転減速状態となり、車輪速度は惰性による減速をし、停止に至る。つまり前輪の加速度が緩やかな車輪減速度を示す。従って、従動輪走行状態取得手段で取得した前輪が停止するまでの車輪加速度に基づいて従動輪が「急」停止したのか、「緩」停止したのかを判定することができる。よって、走行状態判定手段はウィリー走行状態か否かの判定をできる。
また、従動輪の加速度から従動輪が浮き上がったままの走行状態か否かを判定できるので、追加のセンサ、例えば荷重センサを必要とせず安価に判定できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成に加えて、所定の基準減速度とは、従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる車輪減速度に対応することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した発明によれば、非接地状態での空転減速状態を従動輪の基準減速度として車両の仕様に応じて予め設定しておくことで、従動輪が「急」停止したのか、「緩」停止したのかを簡単に判定することができる。よって、従動輪の停止に至る車輪減速度からウィリー走行状態かそうでないかが容易に判定できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4の構成に加えて、走行状態判定手段は、取得された車輪加速度の経時変化を示す履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段を有し、履歴情報記憶手段に記憶された履歴情報に基づいて、従動輪の浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、車輪加速度の経時変化を履歴情報として記憶しておくことで、従動輪の回転が停止状態となる前の車輪加速度を参照可能にできる。ウィリー走行等により従動輪が非接地状態になって自然に従動輪が減速停止する空転減速状態の場合には、従動輪の車輪速度取得手段の異常による車輪速度の変化の場合と比較してゆっくりと減速することから、履歴情報の車輪加速度からゆっくりした減速であるか否かを判定することで、車輪速度取得手段の異常によるものかどうかを正確に判定できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5の構成に加えて、異常判定手段は、駆動輪に係る車輪速度取得手段が非停止状態を示し、従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示している場合には、ブレーキ非操作状態で従動輪が停止したと判定されたときに、走行状態判定手段において、従動輪が停止状態となった時点よりも所定時間前の履歴情報を参照し、従動輪の浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載した発明によれば、従動輪が停止した時点よりも所定時間前からの履歴情報を参照するように、履歴情報を遡る時間を適当に設定することで、従動輪が停止する直前の一瞬の減速状態に基づいて判定してしまうという不具合を防ぎ、判定の精度を高めることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6の構成に加えて、走行状態判定手段は、所定時間前の履歴情報に基づいた判定では、従動輪の浮き上がったままの走行状態に該当しないと判定された場合、所定時間よりも更に過去の前記履歴情報を参照し、参照した履歴情報における従動輪の車輪減速度が前記所定の基準減速度未満である場合には、従動輪の浮き上がったままの走行状態に該当すると判定することを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載した発明によれば、特に自動二輪車に適用した場合、運転者がウィリー走行を止めようとアクセルを戻した際にブレーキペダルの操作をし、非接地状態での空転減速中の従動輪が急制動され、車輪速度が急激に減速する場合にも、更に過去の履歴情報を遡って、その時点での従動輪が非接地状態での空転減速状態に該当するか否かを判定するので、より正確に判定できる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、従動輪及び駆動輪それぞれの車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、車輪速度取得手段の異常の有無を判定する異常判定手段と、取得された車輪速度に基づいて従動輪及び駆動輪それぞれに設けられたブレーキ装置の制動力を制御するとともに、異常判定手段によって異常有りと判定された場合には、異常に対応する所定の異常対応制御を実行する制動力制御手段と、を備えた車両用ブレーキ制御装置であって、
更に、従動輪の車輪加速度を取得する従動輪加速度取得手段を備え、異常判定手段は、駆動輪に係る車輪速度取得手段が非停止状態を示し、従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示したときには、従動輪加速度取得手段で取得した車輪加速度に基づいて、従動輪の停止状態に至るまでの車輪減速度が、従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる所定の基準減速度未満である場合は、従動輪に係る車輪速度取得手段に異常が無いと判定し、所定の基準減速度以上である場合は、異常があると判定することを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載した発明によれば、例えば、ウィリー走行時の浮き上がった従動輪が停止状態に至ったときに、誤った車輪速センサの異常判定を行わずに済む。
例えば、自動二輪車において、運転者が急激にスロットル開放動作を行うことにより、ウィリー走行が開始される際に、ブレーキ操作が行われていない場合、従動輪である前輪は非接地状態での空転減速状態となり、車輪速度は惰性による減速をし、停止に至る。つまり前輪の加速度が緩やかな車輪減速度を示す。従って、従動輪走行状態取得手段で取得した前輪が停止するまでの車輪加速度に基づいて従動輪が非接地状態での空転減速状態で停止したのか否かが判定できる。よって、異常判定手段は、従動輪が非接地状態での空転減速状態で停止したのか否かが判定できる。
また、車両の仕様に応じて所定の基準減速度をあらかじめ設定しておくことで、簡単に従動輪の非接地状態の空転減速状態か、否かが判定できる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項8の構成に加えて、所定の基準減速度とは、従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる車輪減速度に対応することを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載した発明によれば、非接地状態での空転減速状態を従動輪の基準減速度として車両の仕様に応じて予め設定しておくことで、従動輪が「急」停止したのか、「緩」停止したのかを簡単に判定することができる。よって、従動輪の停止に至る車輪減速度からウィリー走行状態かそうでないかが容易に判定できる。
【発明の効果】
【0024】
以上、請求項1から請求項9の発明によれば、車輪速度取得手段、例えば、車輪速センサの異常判定をより精度良く行える車両用ブレーキ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
《第1の実施の形態》
次に、本発明の車両用ブレーキ制御装置を適用した第1の実施の形態に係る二輪車用ブレーキ制御装置について適宜図1を参照しながら詳細に説明する。図1は第1の実施の形態に係る二輪車用ブレーキ制御装置の構造を示す概念図である。
【0026】
図1に示すように、二輪車用ブレーキ制御装置1Aは、自動二輪車Bの前輪(従動輪)TFと後輪(駆動輪)TRのそれぞれの車輪速度を取得するための車輪速センサ(車輪速度取得手段)2F、2Rと、運転者のブレーキ操作子(ブレーキペダルBP及びブレーキレバーBL)によるブレーキ操作によって生じるブレーキ液圧を適宜制御して車輪ブレーキTB(前輪ブレーキTBF、後輪ブレーキTBR)に付与する液圧ユニット31と、前記ブレーキ操作と車輪速センサ2F、2Rからの車輪速度に基づいて液圧ユニット31を制御する制御ユニット30Aとを主に備えている。
【0027】
なお、自動二輪車BのブレーキペダルBP及びブレーキレバーBLには、ブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作スイッチ(ブレーキ操作SW)3A、3Bがそれぞれ設けられている。ブレーキ操作スイッチ3A、3Bは、ブレーキ操作を検出したときはオン(ON)信号を、ブレーキ操作を検出しないときはオフ(OFF)信号を制御ユニット30Aに入力する。
ここで、液圧ユニット31と制御ユニット30Aは、自動二輪車Bの車体の適所に設けることが可能な程度の小さなものであるが、説明の便宜上、大きく図示している。また、ブレーキレバーBLは右のハンドルに、ブレーキペダルBPは車体の右側に設けられているが、図面上仮想線で示した車体の手前側(車体の左側)に示してある。
【0028】
液圧ユニット31は、図示しない、油路や各種部品(電磁弁やポンプ等)を有している。制御ユニット30Aは、内蔵する制動力制御手段35により液圧ユニット31内に設けられる各種部品を適宜制御して、各車輪ブレーキTBF、TBRに加わるブレーキ液圧を増圧・減圧・保持させる。
【0029】
(制御ユニットの構成)
次に、制御ユニット30Aの詳細な構成を説明する。
制御ユニット30Aは、従動輪加速度取得手段32と、走行状態判定手段33Aと、異常判定手段34と、制動力制御手段35とを有している。
ここで、制御ユニット30Aは、CPU、RAM、ROM及び入出力回路を備えており、各車輪速センサ2F、2Rからの車輪速度信号と、ブレーキ操作スイッチ3A、3Bからのブレーキ操作有無のオン/オフ信号と、ROMに記憶されたプログラムやデータとに基づいて各種演算処理を行うことによってブレーキ液圧制御を実行するように構成されている。
【0030】
制御ユニット30Aは、車輪速センサ2Fにより取得した前輪車輪速度と、車輪速センサ2Rにより取得した後輪車輪速度とに基づいて推定車体速度と前輪TFのスリップ率を算出し、この推定車体速度とスリップ率に基づいて、制動力制御手段35において液圧ユニット31を適宜制御することで前輪TFのロックを防止する公知のアンチロック制御を実行する機能を有している。
【0031】
また、同様に制御ユニット30Aは、車輪速センサ2Fにより取得した前輪車輪速度と、車輪速センサ2Rにより取得した後輪車輪速度とに基づいて推定車体速度と後輪TRのスリップ率を算出し、この推定車体速度とスリップ率に基づいて、制動力制御手段35において液圧ユニット31の各種部品を適宜制御することで後輪TRのロックを防止する公知のアンチロック制御を実行する機能を有している。
【0032】
更に、制御ユニット30Aは、前輪TFまたは後輪TRの少なくとも一方のアンチロック制御を行っている場合は、各車輪速センサ2F、2Rで取得した前輪車輪速度と後輪車輪速度とを比較して大きい方の車輪速度に基づいて推定車体速度を算出し、前輪TF及び後輪TRのいずれもアンチロック制御を行っていない場合は、車輪速センサ2Fで取得した前輪車輪速度に基づいて推定車体速度を算出する機能を有している。
【0033】
更に、制御ユニット30Aの従動輪加速度取得手段32において、車輪速センサ2Fで取得した前輪車輪速度に基づいて前輪TFの車輪加速度を算出し、算出した車輪加速度(走行状態信号)を走行状態判定手段33Aの後記する履歴情報記憶手段41に入力する機能を有している。
なお、従動輪加速度取得手段32は、車輪加速度を算出するとしたが、厳密な意味での車輪加速度を算出する必要は無く、車輪加速度を一定の周期で算出する繰り返しループにおいて、前回ループの車輪速度と今回ループの車輪速度の差分、つまり、[(今回ループの車輪速度)−(前回ループの車輪速度)]を以って車輪加速度として代用しても良い。
【0034】
走行状態判定手段33Aは、履歴情報記憶手段41を有している。履歴情報記憶手段41は、例えば、前記RAMで構成され、従動輪加速度取得手段32が算出した前輪TFの車輪加速度の経時データ(履歴情報)を、所定の周期で常時最寄りの過去の所定時間分だけ記憶し、所定時間以上古いデータはオーバーフローさせて消去する。
【0035】
なお、履歴情報記憶手段41への車輪加速度の経時データの記憶は、前輪TFが停止状態と判定された後は、再び前輪TFが走行状態と判定されるまで車輪加速度の経時データの記憶を一時停止し、再び前輪TFが走行状態と判定されたときは、車輪加速度の経時データを一旦消去してから車輪加速度の経時データの記憶を開始することが好ましい。
【0036】
走行状態判定手段33Aは、必要に応じて履歴情報記憶手段41から前輪TFの車輪加速度の経時データを読み出し、前輪TFの停止に至る所定時間前の車輪減速度(負の車輪加速度)が所定の基準減速度未満か否かを判定し、ブレーキ操作スイッチ3Bからのオン/オフ信号も参照して、前輪TFが非接地状態での空転減速状態か否かを判定することによって、二輪自動車Bの走行状態が、従動輪(前輪TF)が浮き上がったままの走行状態、つまりウィリー走行状態か否かを判定する。走行状態の判定結果は異常判定手段34に入力される。以下、非接地での空転減速状態を「非接地空転減速状態」と略称する。
【0037】
また、制御ユニット30Aの異常判定手段34においては、車輪速センサ2F、2Rに異常があるかどうかを判定し、その判定結果を制動力制御手段35に入力し、その判定結果に応じて制動力制御手段35において、液圧ユニット31の各種部品を適宜制御する。例えば、異常判定手段34において、車輪速センサ2F、2Rいずれかに異常があると判定された場合は、制動力制御手段35は、アンチロック制御をしないものとする。
【0038】
(異常判定手段の詳細な機能)
次に、異常判定手段34の詳細な機能を説明する。
異常判定手段34は、車輪速センサ2F、2Rの異常判定を行うために、車輪速センサ2F、2Rからの車輪速度を常時監視し、所定値以下、例えば、4km/h以下の場合は当該車輪Tが停止状態、所定値を超える場合、例えば、4km/hを超える場合は当該車輪Tが走行状態と判定する。そして、駆動輪である後輪TRが走行状態と判定されたときに、従動輪である前輪TFが停止状態と判定されたとき、以下のように車輪速センサ2Fに対する異常判定を行う。
【0039】
異常判定手段34は、後輪TRの車輪速センサ2Rが走行状態を示し、前輪TFの車輪速センサ2Fが停止状態を示している場合には、走行状態判定手段33Aに従動輪(前輪TF)が浮き上がったままの走行状態、つまり、ウィリー走行状態か否かの判定をさせる。異常判定手段34は、走行状態判定手段33Aにおいて、ウィリー走行状態と判定された場合は、車輪速センサ2Fに異常が無いと判定し、ウィリー走行状態と判定されなかった場合は、車輪速センサ2Fに異常が有ると判定して、車輪速センサ2Fの異常の有無の判定結果を制動力制御手段35に出力する。
【0040】
制動力制御手段35は、車輪速センサ2Fに異常がある場合は、例えば、アンチロックブレーキ制御等を行わず、運転者のブレーキペダルBP、ブレーキレバーBLの操作に応じた制御を液圧ユニット31に対して行う。
また、異常判定手段34は、車輪速センサ2Fの異常を運転者に対して表示させても良い。
【0041】
(異常判定の制御の流れ)
次に、適宜図2及び図3を参照しながら本実施の形態の二輪車用ブレーキ制御装置における前輪TFに対する異常判定の制御の流れを説明する。図2は異常判定手段及び走行状態判定手段における前輪の車輪速センサの異常判定の制御の流れを示すフローチャートである。
【0042】
ステップS11では、異常判定手段34は、後輪TRが走行状態かどうかをチェックする。具体的には、車輪速センサ2Rからの後輪車輪速度が所定値以下、例えば、4km/h以下の場合は後輪TRが停止状態、所定値を超える場合、例えば、4km/hを超える場合は後輪TRが走行状態と判定する。後輪TRが走行状態の場合(Yes)はステップS12へ進み、停止状態の場合(No)はステップS15に進む。
ステップS12では、異常判定手段34は、前輪TFは停止状態かどうかをチェックする。具体的には、車輪速センサ2Fからの前輪車輪速度が所定値以下、例えば、4km/h以下の場合は前輪TFが停止状態、所定値を超える場合、例えば、4km/hを超える場合は前輪TFが走行状態と判定する。前輪TFが停止状態の場合(Yes)はステップS13へ進み、走行状態の場合(No)はステップS15に進む。
【0043】
ステップS13では、異常判定手段34は、運転者が前輪TFのブレーキ操作をしたかどうか(ON/OFF)をチェックする。ブレーキ操作のON/OFFは、ブレーキ操作スイッチ3Bからのオン、オフ信号で判定する。ONの場合はステップS15へ進み、OFFの場合はステップS14に進む。
【0044】
ステップS14では、走行状態判定手段33Aにおいて、前輪TFが惰性による減速(非接地空転減速状態で減速)後に停止かどうかを判定する。この判定は履歴情報記憶手段41から、車輪減速度の経時データ(履歴情報)を読み出し、車輪停止時点から所定の時間遡った時点の車輪減速度データに基づいて判定する。このとき、1個の車輪減速度データを用いて判定しても良いし、連続する複数個の車輪減速度データの平均値を用いて判定しても良い。
【0045】
前輪TFが惰性による減速後に停止かどうかを判定する方法を具体例で説明する。図3は、横軸を時間(t)、縦軸を車輪速度(km/h)として前輪TFの車輪速度が停止状態と判定される所定値以下、この場合4km/h以下になって、ある程度時間経過するまでの車輪速度の変化を示したものである。
図中に示した黒丸は、従動輪加速度取得手段32が、車輪速センサ2Fからの車輪速度に基づいて車輪減速度を算出する繰り返しループのサンプリングタイミングを示す。
【0046】
ここでは、前回ループの車輪速度と今回ループの車輪速度の差分[(前回ループの車輪速度)−(今回ループの車輪速度)]を「車輪減速度」として用いている場合を例に説明する。
また、異常判定手段34は、車輪速度が4km/h以下になった場合、停止状態と判定するものとする。更に走行状態判定手段33Aは、車輪減速度(前回ループの車輪速度と今回ループの車輪速度の差分)が所定の基準減速度未満、例えば、3km/h未満で停止状態に至った場合、惰性による減速(非接地空転減速状態で減速)後に停止と判定するものとする。なお、所定の基準減速度は自動二輪車Bの仕様に応じて予め前記ROMに記憶させておくものとする。
【0047】
図3の(a)に示す実線の場合は、車輪が停止状態と判定された時点tから、所定時間遡った時点の車輪減速度、例えば1個及び2個のループ分過去のサンプリングタイミング(図中のt、t)の車輪速度の差分が2km/hなので、走行状態判定手段33Aは、停止に至る前の減速状態が惰性による減速(非接地空転減速状態)であると判定する。つまり、緩い車輪減速度で停止(「緩」停止)と判定する。従って、走行状態判定手段33Aは、自動二輪車Bの走行状態はウィリー走行状態と判定する。
(b)に示す実線の場合は、車輪が停止状態と判定された時点(t)から、所定時間遡った時点の車輪減速度、この場合1個及び2個のループ分過去のサンプリングタイミング(図中のt、t)の車輪速度の差分が3km/hなので、走行状態判定手段33Aは、停止に至る前の減速状態が惰性による減速(非接地空転減速状態)であるとは判定しない。つまり、比較的大きい車輪減速度で停止(「急」停止)と判定する。従って、走行状態判定手段33Aは、自動二輪車Bの走行状態はウィリー走行状態ではないと判定する。
【0048】
ステップS14において、惰性による減速後に停止と判定した場合(Yes)は、ステップS15へ進む。
ステップS14において、「急」停止と判定した場合(No)は、ステップS16へ進み、異常判定手段34は、前輪TFの車輪速センサ2Fに異常が有ると判定する。ステップS16の後ステップS17へ進む。
【0049】
ステップS15では、異常判定手段34は、前輪TFの車輪速センサ2Fに異常は無いと判定する。ステップS14からステップS15へ進んだ場合は、前輪TFは非接地空転減速状態で停止に至ったもの、言い換えると自動二輪車Bがウィリー走行して前輪TFが浮き上がって空転しながらゆっくり停止(惰性による減速後に停止)したものとみなされる。またステップS11、S12、S13からステップS15に進んだ場合は、通常状態とみなされて、車輪速センサ2Fは正常とみなされる。
ステップS15の後ステップS17へ進む。
【0050】
ステップS17では、制動力制動手段35は、前輪TFの車輪速センサ2Fの異常状態に応じたブレーキ制御の対応をする。
例えば、車輪速センサ2Fに異常があると判定された場合は、運転者のブレーキ操作に対して、アンチロック制御をしないようにし、車輪速センサ2Fに異常が無いと判定された場合は、アンチロック制御を可能とする。
また、異常判定手段34は、ステップS16からステップS17へ進む際に、車輪速センサ2Fが異常であるとの表示を運転者に表示するようにしても良い。
ステップS17の後、一連の車輪速センサ2Fに対する異常判定の処理は終了し、ステップS11に戻り繰り返す。
【0051】
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態では、後輪TRが走行状態で、前輪TFが停止状態に至ったときに、それがウィリー走行時の浮き上がった前輪TFの停止による場合に、車輪速センサ2Fに対して誤った異常判定を行わずに済む。
例えば、自動二輪車Bにおいて、運転者が急激にスロットル開放動作を行うことにより、ウィリー走行が開始されるが、前輪TFに対してブレーキ操作が行われていない場合には、前輪TFは非接地空転減速状態となり、前輪車輪速度は惰性による減速後に停止状態に至る。つまり前輪TFの加速度は緩やかな車輪減速度を示す。この前輪TFの非接地空転減速状態の後に停止状態に至った場合は、車輪速センサ2Fに異常はないと判定するので、車輪速センサ2Fに対して正確な異常判定ができる。
【0052】
また、自動二輪車Bの仕様に応じて基準減速度のデータをあらかじめROMに記憶しておくことで、車両の仕様に応じ簡単に前輪TFの非接地空転減速状態か、否かが判定できる。
【0053】
車輪減速度の経時データを履歴情報として履歴情報記憶手段41に記憶しておくことで、前輪TFの回転が停止状態となる前の車輪減速度を参照可能になる。
ブレーキレバーBLの非操作状態で前輪TFが停止状態と判定された場合、走行状態判定手段33Aにおいて、停止状態と判定された時点よりも所定時間前の履歴情報を参照し、参照した履歴情報における前輪TFの車輪減速度が基準減速度未満である場合、前輪TFは非接地空転減速状態で停止に至ったと判定するので、前輪TFが停止に至る直前の、普通正確な空転減速を示さない一瞬の減速状態に基づいて判定してしまうという不具合を防ぎ、判定の精度を高めることができる。
例えば、図3の(b)において、時間t、tのサンプリングタイミングで車輪減速度を判定せず、停止状態と判定した時間tのサンプリングタイミングと、その一つ前のループの時間tのサンプリングタイミングとで車輪減速度を算出すると、明らかに2km/hの車輪減速度と誤算出してしまう。
従って、このような車輪減速度の誤算出を防止でき、車輪速センサ2Fの異常判定をより精度良く行える車両用ブレーキ制御装置を提供することができる。
【0054】
なお、前輪TFの非接地空転減速状態の車輪減速度が十分小さく、図3の(b)を例に説明した時間t、tのサンプリングタイミングで車輪減速度を算出しても、非接地空転減速状態か否かの判定に支障がない場合は、時間t、tのサンプリングタイミングで車輪減速度を算出しても良い。
【0055】
なお、本実施の形態のフローチャートのステップS14において、惰性による減速後に停止と判定した場合は、制御ユニット30Aの推定車体速度を計算する機能において、前輪TF及び後輪TRのいずれもアンチロック制御を行っていない場合の推定車体速度を後輪車輪速度に基づいて算出するようにし、前輪TFが接地して前輪車輪速度が後輪車輪速度の所定値比率以上、例えば80%以上になったとき前輪車輪速度に基づいて算出するようにしても良い。
【0056】
このように、前輪TFが惰性による減速後に停止と判定した場合は、運転者がウィリー走行をしている状態に対応するので、前輪TFの車輪速度をもって推定車体速度を算出しても意味が無く、またウィリー走行が終わった直後の前輪車輪速度も十分実際の車体速度に追随していないので、上記の期間は後輪車輪速度をもって推定車体速度とするのがスリップ率の算出上適切である。
【0057】
(第1の実施形態の変形)
次に、本実施の形態の変形例を説明する。
本変形例では、ステップS14において、図3の(a)に破線で示すような場合、例えば、前輪TFが停止状態と判定された時点(t)直前の、1つ手前のループ(時間t、tのサンプリングタイミング)における車輪減速が基準減速度以上の場合は、更に1つ前のループ(時間t、tのサンプリングタイミング)における車輪減速度をチェックして、前輪TFが惰性による減速をしていたかどうかを判定する。時間t、tのサンプリングタイミングの車輪減速度が基準減速度以上の場合は、履歴情報記憶手段41に記憶された車輪加速度の履歴情報を順次遡りチェックする。このように更に遡った時点において前輪TFが惰性による減速をしていたことを検出した場合は、ステップS15へ進み、履歴情報を順次遡っても基準減速度以上の車輪減速度を検出した場合はステップS16へ進む。
【0058】
このようにすることで、運転者がウィリー走行を止めようとアクセルを戻し、その際にブレーキペダルBPを踏み込み、前輪TFが後輪TRと連動して制動された場合でも、非接地空転減速中の車輪速度が「急」停止する場合に、ステップ16へ進んで車輪速センサ2Fの異常と判断せず、ステップS15へ進むので、車輪速センサ2Fの異常の有無をより正確に判定できる。従って、車輪速度取得手段、例えば、車輪速センサの異常判定をより精度良く行える車両用ブレーキ制御装置を提供することができる。
【0059】
なお、第1の実施の形態における、走行状態判定手段33Aが異常判定手段34の中に含まれる構成としても良い。
【0060】
《第2の実施の形態》
次に、本発明の車両用ブレーキ制御装置を適用した第2の実施の形態に係る二輪車用ブレーキ制御装置について適宜図4、図5を参照しながら詳細に説明する。図4は第2の実施形態に係る二輪車用ブレーキ制御装置の構造を示す概念図である。
【0061】
図4に示すように、二輪車用ブレーキ制御装置1Bは、第1の実施の形態における二輪車用ブレーキ制御装置1Aと比較して、前輪TFのフォークに荷重センサ(従動輪走行状態取得手段)5を備え、制御ユニット30Aに替わって制御ユニット30Bを備えている点が異なる。
【0062】
荷重センサ5は、例えば、図5に示すようなテレスコピック型のフロントサスペンションの場合、ダンパーユニット23のクッションスプリング21に対する座面に取り付ける。通常、クッションスプリング21にはセット荷重が掛かっており、更に車両重量及び運転者の体重が掛かってセット荷重より高い荷重が荷重センサ5で検出される。(a)はフロントサスペンションに車体重量や運転者の体重が掛かって入る場合を示し、(b)は車体重量や運転者の体重が掛かっておらずクッションスプリング21のセット荷重だけが掛かった、フロントフォークが伸びきった状態を示す。
第1の実施の形態と同じ構成は同一符号を付し説明を省略する。
【0063】
(制御ユニットの構成)
次に、制御ユニット30Bの詳細な構成を説明する。
制御ユニット30Bは、走行状態判定手段33Bと、異常判定手段34と、制動力制御手段35とを有している。
ここで、制御ユニット30Bは、CPU、RAM、ROM及び入出力回路を備えており、各車輪速センサ2F、2Rからの車輪速度信号と、ブレーキ操作スイッチ3A、3Bからのブレーキ操作有無のオン/オフ信号と、荷重センサ5からの荷重信号と、ROMに記憶されたプログラムやデータとに基づいて各種演算処理を行うことによってブレーキ液圧制御を実行するように構成されている。
【0064】
制御ユニット30Bは、第1の実施の形態において説明したものと同様に、前輪TF及び後輪TRのロックを防止する公知のアンチロック制御を実行する機能を有している。
また、制御ユニット30Bは、第1の実施の形態において説明したと同様に推定車体速度を算出する機能を有している。
【0065】
走行状態判定手段33Bは、荷重センサ5からの荷重信号(走行状態信号)を読み出し、荷重信号に基づいて従動輪(前輪TF)が浮き上がったままの走行状態、つまり、ウィリー走行状態か否かを判定し、判定結果を異常判定手段34に送る機能を有している。走行状態判定手段33Bは、荷重センサ5からの荷重信号が、所定値以下、例えば、前記セット荷重(所定の基準荷重)以下の場合、従動輪が浮き上がったままの走行状態判定し、前記セット荷重を超える場合、通常走行状態と判定する。なお、所定の基準荷重は、ROMに予め記憶させておくものとする。
【0066】
また、異常判定手段34は、車輪速センサ2F、2Rに異常があるかどうかを判定し、その判定結果を制動力制御手段35に出し、その判定結果に応じて制動力制御手段35において液圧ユニット31の各種部品を適宜制御する。例えば、異常判定手段34において、車輪速センサ2F、2Rいずれかに異常があると判定された場合は、制動力制御手段35は、アンチロック制御をしないものとする。
【0067】
(異常判定手段の詳細な機能)
次に、異常判定手段34の詳細な機能を説明する。
異常判定手段34は、車輪速センサ2F、2Rの異常判定を行うために、車輪速センサ2F、2Rからの車輪速度を常時監視し、所定値以下、例えば、4km/h以下の場合は当該車輪Tが停止状態と判定し、所定値を超える場合、例えば、4km/hを超える場合は当該車輪Tが走行状態と判定する。そして、駆動輪である後輪TRが走行状態と判定されたときに、従動輪である前輪TFが停止状態と判定されたとき、後記のように車輪速センサ2Fに対する異常判定を行う。
【0068】
異常判定手段34は、後輪TRの車輪速センサ2Rが走行状態を示し、前輪TFの車輪速センサ2Fが停止状態を示している場合には、走行状態判定手段33Bに従動輪(前輪TF)が浮き上がったままの走行状態、つまり、ウィリー走行状態か否かの判定をさせる。異常判定手段34は、走行状態判定手段33Bにおいて、ウィリー走行状態と判定された場合は、車輪速センサ2Fに異常が無いと判定し、ウィリー走行状態と判定されなかった場合は、車輪速センサ2Fに異常が有ると判定して、車輪速センサ2Fの異常の有無の判定結果を制動力制御手段35に出力する。
【0069】
(第2の実施の形態の効果)
以上説明した本実施の形態では、後輪TRが走行状態で前輪TFが停止状態に至った場合であっても、それがウィリー走行に起因するものと判定された場合には、車輪速センサ2Fの異常と判断しないので、異常判定の精度が高まる。
具体的には、フロントフォークが伸びきって、荷重センサ5がセット荷重以下の荷重である場合は、ウィリー走行状態と判定して、車輪速センサ2Fが停止状態を示しても異常はないと判定するので、車輪速センサ2Fに対して正確な異常判定ができる。
【0070】
また、自動二輪車Bの仕様に応じてセット荷重のデータをあらかじめROMに記憶しておくことで、車両の仕様に応じ簡単に自動二輪車Bのウィリー走行状態か、否かが判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態に係る二輪用アンチロックブレーキ装置の構造概念図である。
【図2】前輪の車輪速センサの異常判定の制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】前輪TFが非接地空転減速状態か否かの判定を説明する図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る二輪用アンチロックブレーキ装置の構造概念図である。
【図5】(a)は、通常走行状態でのフロントサスペンションの状態を、(b)はウィリー走行状態でのフロントサスペンションの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1A、1B 二輪車用ブレーキ制御装置
2F、2R 車輪速センサ(車輪速度取得手段)
3A、3B ブレーキ操作スイッチ
5 荷重センサ(従動輪走行状態取得手段)
21 クッションスプリング
23 ダンパーユニット
31 液圧ユニット
30A、30B 制御ユニット
32 従動輪加速度取得手段(従動輪走行状態取得手段)
33A、33B 走行状態判定手段
34 異常判定手段
35 制動力制御手段
41 履歴情報記憶手段
B 自動二輪車
TF 前輪(従動輪)
TR 後輪(駆動輪)
TBF 前輪ブレーキ
TBR 後輪ブレーキ
BP ブレーキペダル
BL ブレーキレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従動輪及び駆動輪それぞれの車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、前記車輪速度取得手段の異常の有無を判定する異常判定手段と、前記取得された車輪速度に基づいて前記従動輪及び駆動輪それぞれに設けられたブレーキ装置の制動力を制御するとともに、前記異常判定手段によって異常有りと判定された場合には、前記異常に対応する所定の異常対応制御を実行する制動力制御手段と、を備えた車両用ブレーキ制御装置であって、
更に、前記従動輪の走行状態信号を出力する従動輪走行状態取得手段と、
前記出力された走行状態信号から、当該従動輪が浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定する走行状態判定手段を備え、
前記異常判定手段は、
前記駆動輪に係る前記車輪速度取得手段が非停止状態を示し、前記従動輪に係る前記車輪速度取得手段が停止状態を示している場合には、
前記走行状態判定手段により前記従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定されたときに、前記従動輪に係る車輪速度取得手段に異常があると判定し、
前記走行状態判定手段により前記従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定されたときに、前記従動輪に係る車輪速度取得手段に異常が無いと判定することを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記従動輪走行状態取得手段は、前記従動輪に設けられた荷重センサであって、前記走行状態信号として荷重信号を出力し、
前記走行状態判定手段は、
前記荷重センサが所定の基準荷重以下を示す場合は、前記従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定し、
前記所定の基準荷重を超える荷重を示す場合は、前記従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記従動輪走行状態取得手段は、前記従動輪に係る車輪速度取得手段からの車輪速度に基づいて車輪加速度を取得する従動輪加速度取得手段であって、前記走行状態信号として車輪加速度信号を出力し、
前記走行状態判定手段は、
前記従動輪の停止状態に至るまでの車輪加速度信号が所定の基準減速度未満の車輪減速度である場合は、前記従動輪が浮き上がったままの走行状態であると判定し、前記所定の基準減速度以上の車輪減速度である場合は、前記従動輪が浮き上がったままの走行状態ではないと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記所定の基準減速度とは、前記従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる最大の車輪減速度に対応することを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記走行状態判定手段は、
前記取得された車輪加速度の経時変化を示す履歴情報を記憶する履歴情報記憶手段を有し、
該履歴情報記憶手段に記憶された履歴情報に基づいて、前記従動輪が浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記異常判定手段は、
前記駆動輪に係る車輪速度取得手段が非停止状態を示し、前記従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示している場合には、ブレーキ非操作状態で前記従動輪が停止したと判定されたときに、
前記走行状態判定手段において、前記従動輪が停止状態となった時点よりも所定時間前の前記履歴情報を参照し、前記従動輪の浮き上がったままの走行状態であるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記走行状態判定手段は、
前記所定時間前の前記履歴情報に基づいた判定では、前記従動輪の浮き上がったままの走行状態に該当しないと判定された場合、前記所定時間よりも更に過去の前記履歴情報を参照し、参照した履歴情報における従動輪の車輪減速度が前記所定の基準減速度未満である場合には、前記従動輪の浮き上がったままの走行状態に該当すると判定することを特徴とする請求項6に記載の車両用ブレーキ制御装置。
【請求項8】
従動輪及び駆動輪それぞれの車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、前記車輪速度取得手段の異常の有無を判定する異常判定手段と、前記取得された車輪速度に基づいて前記従動輪及び駆動輪それぞれに設けられたブレーキ装置の制動力を制御するとともに、前記異常判定手段によって異常有りと判定された場合には、前記異常に対応する所定の異常対応制御を実行する制動力制御手段と、を備えた車両用ブレーキ制御装置であって、
更に、前記従動輪の車輪加速度を取得する従動輪加速度取得手段を備え、
前記異常判定手段は、
前記駆動輪に係る前記車輪速度取得手段が非停止状態を示し、前記従動輪に係る車輪速度取得手段が停止状態を示したときには、前記従動輪加速度取得手段で取得した車輪加速度に基づいて、前記従動輪の停止状態に至るまでの車輪減速度が、従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる所定の基準減速度未満である場合は、前記従動輪に係る車輪速度取得手段に異常が無いと判定し、前記所定の基準減速度以上である場合は、異常があると判定することを特徴とする車両用ブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記所定の基準減速度とは、前記従動輪の非接地状態での空転減速状態とみなせる最大の車輪減速度に対応することを特徴とする請求項8に記載の車両用ブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−189127(P2008−189127A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25495(P2007−25495)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】