車両用ボディシェルおよびその製造方法
【課題】 生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ること。
【解決手段】 ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとがモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナ31を採用し、軽量で耐性の高いモノコック構造とする。さらにフロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメント35を採用し、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。ボディシェル10の製造工程として、ルーフアッセンブリ20とボディインナアッセンブリ30とをそれぞれ並行してサブアッセンブルし、その後、両モジュール20、30をグロスアッセンブルする工法を実現することも容易になる。
【解決手段】 ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとがモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナ31を採用し、軽量で耐性の高いモノコック構造とする。さらにフロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメント35を採用し、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。ボディシェル10の製造工程として、ルーフアッセンブリ20とボディインナアッセンブリ30とをそれぞれ並行してサブアッセンブルし、その後、両モジュール20、30をグロスアッセンブルする工法を実現することも容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ボディシェルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両用のボディシェルは、車体の天部外郭を構成するルーフパネルと、このルーフパネルの車両方向前方に配置され、ルーフパネルの下面に固着されるフロントヘッダと、このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとを有している。
【0003】
これら、フロントヘッダ、ルーフサイドレール、およびフロントピラーの接続強度を高めるため、従来は、例えば特許文献1に開示されているように、前記ルーフサイドレールに延長部を一体形成したり、特許文献2に開示されているように、フロントヘッダ、ルーフサイドレール、およびフロントピラーの三者を結合するレインフォースメントを設けたりしていた。
【特許文献1】特開平6−127433号公報
【特許文献2】実開昭61−180878公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モノコック構造の要請等を受け、フロントピラーとルーフサイドレールとは、車体の長さ方向全体にわたり一体化されたモジュール(この明細書で「フロントピラーインナ」という)として製造されつつある。そのようなモジュール品を一体成型する場合、車体方向に長い部材に対して車幅方向に突出する部材を成型することになるので、制約が大きく、歩留まりが悪くなる。そのため、前記フロントピラーインナを採用した場合には、フロントヘッダとフロントピラーインナとを接続するためのコーナーガセットを別途設ける必要があった。
【0005】
他方、生産効率の観点から、ボディシェルの製造工程においては、ルーフパネルとフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを予め製造する一方、前記フロントピラーインナとコーナーガセットを一体化したボディインナアッセンブリを前記ルーフアッセンブリと並行して製造し、両者をグロスアッセンブルする方法が採用されている。このような工法を採用する場合には、外郭部材であるルーフパネルが覆い被さった状態で各部の溶接箇所を確保しなければならず、接続強度を充分に維持することができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることのできる車両用ボディシェルおよびその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルと、このルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダと、このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレール、および車体の窓部構造を構成するフロントピラーの少なくとも一部が一体化されたフロントピラーインナと、このフロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットと、前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントとを備えていることを特徴とする車両用ボディシェルである。
【0008】
この態様では、ルーフサイドレールとフロントピラーの少なくとも一部がモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナを採用しているので、軽量で耐性の高いモノコック構造を得ることができる。さらにそのようなフロントピラーインナを採用し、コーナーガセットを別部材で構成した場合においても、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントを採用しているので、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。
【0009】
さらに、コーナーレインフォースメントは、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合される構成になっているので、ボディシェルの製造工程として、ルーフパネルとフロントヘッダとをサブアッセンブルする一方、フロントピラーインナとコーナーガセット等を一体化してボディインナアッセンブリをサブアッセンブルし、それぞれのサブアッセンブリをグロスアッセンブルする工法を採用した場合でも、コーナーレインフォースメントは、前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるものであることから、何ら支障なく前記工程を実現することが可能になる。
【0010】
好ましい態様において、前記フロントヘッダとコーナーレインフォースメントとが結合されるヘッダ結合部分は、当該フロントヘッダとコーナーガセットとが結合される部分よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメントとフロントピラーインナとが結合されるインナ結合部分は、前記ヘッダ結合部分よりも車体方向後方に延びている。この態様では、ヘッダ結合部分とインナ結合部分とを結ぶ線が、フロントヘッダとフロントピラーインナとを結ぶ線に対して筋交いになるので、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者がコーナーレインフォースメントによってトラス状に結合され、その結合強度を一層高めることが可能になる。
【0011】
本発明の別の態様は、車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルとこのルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを製造するルーフアッセンブル工程と、前記フロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとが一体化されたフロントピラーインナを製造する工程と、前記フロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットとを一体化してボディインナアッセンブリを製造するボディインナアッセンブル工程と、両アセンブリを結合するボディインナグロスアッセンブル工程とを備え、前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントを一体化する工程を含み、前記ボディインナグロスアッセンブル工程は、フロントヘッダをコーナーレインフォースメントに結合する工程を含んでいることを特徴とする車両用ボディシェルの製造方法である。この態様では、ルーフパネルを含むルーフアッセンブリと、フロントピラーインナを含むボディインナアッセンブリとを並行して製造することができるので、生産効率が向上する。さらに、製造されたボディインナアッセンブリには、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントが一体化されているとともに、このコーナーレインフォースメントに対してフロントヘッダが結合されるので、コーナーレインフォースメントは、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成することになる。この結果、生産されたボディシェルのフロントコーナー部分の組付強度が飛躍的に高まる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成するコーナーレインフォースメントを採用しているので、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態に係るボディシェル10の概略構成を示す斜視図である。
【0015】
同図を参照して、ボディシェル10は、予めルーフアッセンブリ20と、左右1対のボディインナアッセンブリ30とを備えている。これらのアッセンブリ20、30は、それぞれ並行して製造され、その後、グロスアッセンブルされて組み付けられたものである。なお、これらモジュール20、30に含まれないボディシェル10の残余の部材並びにその組立方法については、従来と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0016】
図2は、図1の実施形態に係るルーフアッセンブリ20の分解斜視図である。
【0017】
図1、図2を参照して、ルーフアッセンブリ20は、ルーフパネル21と、このルーフパネル21の前部下面に結合されるフロントヘッダ22とを一体化したものである。
【0018】
ルーフパネル21は、車体の天井の表面となる外装面21aと、外装面21aの外周縁に延設された矩形の枠状の取付部21bとを有しており、前記取付部21bに図略の外装部品が溶接されることにより、車体の天井部分の外郭を構成するものである。
【0019】
フロントヘッダ22は、全体としてルーフパネル21の幅方向に沿って延びる構造体であり、中央側が前方にせり出すように滑らかに湾曲する底部22aと、底部22aの前後に連続し、長手方向全体にわたって延びるフランジ部22b、22cとが形成されている。
【0020】
底部22aは、断面が皿形に形成されて、所定の深さを有する樋状の部材であり、その端壁部分22dによって、各フランジ部22b、22cとの間に所定の作業空間を形成している。底部22aには、図略の溶接装置を挿抜させるための作業孔22eが適所に開口している。
【0021】
各フランジ部22b、22cは、強度を高めるためのものであり、特に、後ろ側のフランジ部22cは、上下に起伏して稜線22fを形成し(図8参照)、これによって剛性を持たせている。
【0022】
図3は、図1の実施形態に係る左右1対のボディインナアッセンブリ30の左側のものを概略的に示す分解斜視図である。
【0023】
図示の通りボディインナアッセンブリ30は、モノコック構造のフロントピラーインナ31と、このフロントピラーインナ31に対して溶接されるコーナーガセット32と、コーナーガセット32およびフロントピラーインナ31に溶接されるコーナーレインフォースメント35とを一体化したものである。
【0024】
前記フロントピラーインナ31は、ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとが一体化された公知のプレス成型品であり、全体として上方および車幅方向外方に外壁を延ばしている。ルーフサイドレール31aは、ルーフアッセンブリ20のフロントヘッダ22の両側に前部が連結されるようにルーフパネル21の車幅方向両側に配置され、後述するグロスアッセンブル時にルーフパネル21の下面に溶接されるものである。フロントピラー31bは、前方から下方に屈曲するコーナー部分31cを介してルーフサイドレール31aと一体に連続し、車体の窓部構造を構成するものである。このコーナー部分31cには、前記フロントヘッダ22の先端部が車幅方向に対向し、コーナーガセット32を介して一体化されるようになっている。図示の例において、フロントピラーインナ31は、公知の構成と同様に、センタピラー31dおよびリアピラー31e、並びにサイドシルレインフォースメント33と一体化される(図1参照)。
【0025】
図4は、図1の実施形態に係るコーナーガセット32の概略構成を示す斜視図である。
【0026】
同図を参照して、コーナーガセット32は、前記フロントピラーインナ31のコーナー部分31cの内壁の起伏に沿って隆起するボディ部32aと、このボディ部32aから概ね直角に突出し、組付時において車幅方向内方に向かって延びるフロント部32bとを一体に有している板金製のプレス成形品である。図示のように、コーナーガセット32のフロント部32bの前後両側には、基端側が上方に隆起して先端縁側が互いに前後に離反する方向に延びるフランジ部32cが形成されている。フランジ部32cは、それぞれフロント部32bの先端部分からボディ部32aとの境界部分にかけて延びており、このフランジ部32cによって、フロント部32bは、フロントヘッダ22の下面に沿う樋状の断面形状を呈している。さらに、図示の例において、フロント部32bの略中央部分には、矩形の作業孔32dが形成されており、この作業孔32dを挿抜する図略の溶接装置によって、ボディ部32aと前記フロントピラーインナ31のコーナー部分31cとが溶接されるようになっている。なお当実施形態では、フロントピラーインナ31にコーナーガセット32が固定されたもの(まだ、コーナーレインフォースメント35が結合されていないもの)を仮にボディインナ中間体34と呼称する。
【0027】
次に、コーナーレインフォースメント35について説明する。
【0028】
図5は、図1の実施形態に係るコーナーレインフォースメント35の斜視図であり、図6は同コーナーレインフォースメント35をフロントピラーインナ31に結合したボディインナアッセンブリ30の要部を拡大して示す斜視図である。
【0029】
図5、図6を参照して、コーナーレインフォースメへント35は、平面視略L字形の板金製プレス成型品である。コーナーレインフォースメント35の一方の端部には、ルーフアッセンブリ20のフロントヘッダ22の先端隅部を受けるヘッダ受け部35aが形成されている。また、コーナーレインフォースメント35の他方の端部には、フロントピラーインナ31のルーフサイドレール31aを受けるレール受け部35bが形成されている。各受け部35a、35bは、概ねフラットに形成されており、その中央部には、アーク溶接用の孔36a、36bが形成されている。両受け部35a、35bの間には、コーナーガセット32下面に沿って起伏するガセット受け部35cが連続して形成されている。このガセット受け部35cは、コーナーガセット32が結合された際、当該コーナーガセット32のフロント部32b上面と前記ヘッダ受け部35aが概ね面一になるとともに、当該コーナーガセット32のボディ部32aとレール受け部35bとが概ね面一になるように起伏している。このため、組付時において、フロントヘッダ22は、前記ヘッダ受け部35aおよびコーナーガセット32とに対し面接触状態で結合されるとともに、フロントピラーインナ31は、レール受け部35bとコーナーガセット32とに対して面接触状態で結合されることになる。ガセット受け部35cには、コーナーガセット32とフロントヘッダ22とが重なり合う部位を開く窪み部35dが形成されている(図11参照)。コーナーレインフォースメント35の内周側縁35eは、樋状に隆起しており、フロントヘッダ22内に配索されレールワイヤーハーネスWHの収容空間を区画している(図9参照)。
【0030】
次に、上述したボディシェル10の製造工程について説明する。図7は図1の実施形態に係るボディシェル10の製造工程の要部を示す工程フロー図である。
【0031】
同図を参照して、ボディシェル10を製造する場合においては、ルーフアッセンブリ20を構成するルーフパネル21およびフロントヘッダ22、並びにボディインナアッセンブリ30を構成するフロントピラーインナ31、コーナーガセット32、およびコーナーレインフォースメント35をそれぞれ製造する製造工程(ステップS1〜S5)が、他の前工程(ステップS6)とともに並行して行われる。
【0032】
これらの製造工程により、図2〜図5で説明したルーフパネル21、フロントヘッダ22、フロントピラーインナ31、コーナーガセット32、およびコーナーレインフォースメント35等が製造される。
【0033】
次いで、各モジュール20、30を製造するための工程が並行して行われる。
【0034】
まず、ステップS11において、ルーフアッセンブリ20を製造するラインでは、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とが位置決めされ、溶接により両者が結合されてルーフアッセンブリ20が製造される(図2参照)。
【0035】
他方、ボディインナアッセンブリ30を製造する工程では、まず、ステップS21において、フロントピラーインナ31に対してコーナーガセット32を溶接することにより、ボディインナ中間体34(図4参照)が製造される。この溶接工程では、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32とが仮組され、図略の溶接装置をコーナーガセット32の作業孔32dから挿通して溶接箇所を挟み込み、通電して両者間にスポット溶接を施すようにしている。次いで、ステップS22において、製造されたボディインナ中間体34に対し、コーナーレインフォースメント35が溶接されてボディインナアッセンブリ30が製造される(図6参照)。この溶接工程では、ボディインナ中間体34とコーナーレインフォースメント35が仮組され、まず、前記コーナーガセット32とコーナーレインフォースメント35とをスポット溶接し、次いで、コーナーレインフォースメント35の孔36bからコーナーレインフォースメント35とフロントピラーインナ31のルーフサイドレール31bにアーク溶接を施す。これにより、コーナーレインフォースメント35は、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32に対し、直接結合されることになる。
【0036】
最後に、ステップS30において、それぞれのモジュール20、30が溶接される。
【0037】
具体的には、フロントヘッダ22の作業孔22eに図略の溶接装置を挿入し、フロントヘッダ22とコーナーガセット32との適所をスポット溶接し、その後、裏面側からコーナーレインフォースメント35の孔36aにアーク溶接を施して、コーナーレインフォースメント35とフロントヘッダ22とを結合する。これにより、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22とも直接結合されることになる。
【0038】
このように当実施形態では、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とを一体化したルーフアッセンブリ20を製造するルーフアッセンブル工程(ステップS11)と、フロントピラーインナ31を製造する工程(ステップS3)と、ボディインナアッセンブリ30を製造するボディインナアッセンブル工程(ステップS21、S22)と、両アセンブリ20、30を結合するボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)とを備えているとともに、前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセット32とフロントピラーインナ31との双方に結合されるコーナーレインフォースメント35を一体化する工程(ステップS22)を含み、前記ボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)は、フロントヘッダ22をコーナーレインフォースメント35に結合する工程を含んでいる。従って当実施形態では、ルーフパネル21を含むルーフアッセンブリ20と、フロントピラーインナ31を含むボディインナアッセンブリ30とを並行して製造することができるので、生産効率が向上する。さらに、製造されたボディインナアッセンブリ30には、コーナーガセット32とフロントピラーインナ31との双方に結合されるコーナーレインフォースメント35が一体化されているとともに、このコーナーレインフォースメント35に対してフロントヘッダ22が結合されるので、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成することになる。この結果、生産されたボディシェル10のフロントコーナー部分の組付強度が飛躍的に高まる。
【0039】
ボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)が終了した後、残余の後工程(ステップS7)を終了することにより、ボディシェル10が完成する。
【0040】
図8は図7の工程によって製造されたボディシェル10の要部を拡大して示す斜視図であり、図9は図8のA−A断面略図、図10は図8のB−B断面略図、図11は図8のC矢視図、図12は図8の拡大図である。
【0041】
図8、図12を参照して、上述した工程により、コーナーレインフォースメント35は、2カ所のアーク溶接ポイントPAと、別の2カ所のスポット溶接ポイントPSとにより、フロントヘッダ22、フロントピラーインナ31、およびコーナーガセット32の三者に対して直接結合されている。当実施形態において、前記フロントヘッダ22とコーナーレインフォースメント35とが結合されるヘッダ結合部分J1は、当該フロントヘッダ22とコーナーガセット32とが結合される部分J(図12のみ図示)よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメント35とフロントピラーインナ31とが結合されるインナ結合部分J2は、前記ヘッダ結合部分J1よりも車体方向後方に延びている。そのため、当実施形態では、ヘッダ結合部分J1とインナ結合部分J2とを結ぶ直線L1が、フロントヘッダ22とフロントピラーインナ31とを結ぶ直線L2に対して筋交いになるので、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者がコーナーレインフォースメント35によってトラス状に結合され、その結合強度を一層高めることが可能になる。
【0042】
以上説明したように、当実施形態のボディシェル10は、ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとがモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナ31を採用しているので、軽量で耐性の高いモノコック構造を得ることができる。さらにそのようなフロントピラーインナ31を採用し、コーナーガセット32を別部材で構成した場合においても、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメント35を採用しているので、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。
【0043】
さらに、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合される構成になっているので、ボディシェル10の製造工程として、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とをサブアッセンブルする一方、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32等を一体化してボディインナアッセンブリ30をサブアッセンブルし、それぞれのサブアッセンブリ20、30をグロスアッセンブルする工法(図7参照)を採用した場合でも、コーナーレインフォースメント35は、前記フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるものであることから、何ら支障なく前記工程を実現することが可能になる。
【0044】
従って本実施形態によれば、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成するコーナーレインフォースメント35を採用しているので、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0045】
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0046】
例えば、上述した実施形態における製造工程において、ステップS21、S22は、概念的なものであり、連続的に行われることを妨げる趣旨ではない。従って、フロントピラーインナ31に対して、コーナーガセット32とコーナーレインフォースメント35とを同時に仮組みし、連続的に溶接してもよい。その場合には、溶接装置を一度作業孔32dに挿入することで、全てのスポット溶接工程を終了することが可能になる。
【0047】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の一形態に係るボディシェルの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態に係るルーフアッセンブリの分解斜視図である。
【図3】図1の実施形態に係る左右1対のボディインナアッセンブリの左側のものを概略的に示す分解斜視図である。
【図4】図1の実施形態に係るコーナーガセットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】図1の実施形態に係るコーナーレインフォースメントの斜視図である。
【図6】同コーナーレインフォースメントをフロントピラーインナに結合したボディインナアッセンブリの要部を拡大して示す斜視図である。
【図7】図1の実施形態に係るボディシェルの製造工程の要部を示す工程フロー図である。
【図8】図7の工程によって製造されたボディシェルの要部を拡大して示す斜視図である。
【図9】図8のA−A断面略図である。
【図10】図8のB−B断面略図である。
【図11】図8のC矢視図である。
【図12】図8の拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ボディシェル
20 ルーフアッセンブリ
21 ルーフパネル
22 フロントヘッダ
30 ボディインナアッセンブリ
31 フロントピラーインナ
32 コーナーガセット
35 コーナーレインフォースメント
J1 ヘッダ結合部分
J2 インナ結合部分
L1 直線
L2 直線
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ボディシェルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両用のボディシェルは、車体の天部外郭を構成するルーフパネルと、このルーフパネルの車両方向前方に配置され、ルーフパネルの下面に固着されるフロントヘッダと、このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとを有している。
【0003】
これら、フロントヘッダ、ルーフサイドレール、およびフロントピラーの接続強度を高めるため、従来は、例えば特許文献1に開示されているように、前記ルーフサイドレールに延長部を一体形成したり、特許文献2に開示されているように、フロントヘッダ、ルーフサイドレール、およびフロントピラーの三者を結合するレインフォースメントを設けたりしていた。
【特許文献1】特開平6−127433号公報
【特許文献2】実開昭61−180878公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モノコック構造の要請等を受け、フロントピラーとルーフサイドレールとは、車体の長さ方向全体にわたり一体化されたモジュール(この明細書で「フロントピラーインナ」という)として製造されつつある。そのようなモジュール品を一体成型する場合、車体方向に長い部材に対して車幅方向に突出する部材を成型することになるので、制約が大きく、歩留まりが悪くなる。そのため、前記フロントピラーインナを採用した場合には、フロントヘッダとフロントピラーインナとを接続するためのコーナーガセットを別途設ける必要があった。
【0005】
他方、生産効率の観点から、ボディシェルの製造工程においては、ルーフパネルとフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを予め製造する一方、前記フロントピラーインナとコーナーガセットを一体化したボディインナアッセンブリを前記ルーフアッセンブリと並行して製造し、両者をグロスアッセンブルする方法が採用されている。このような工法を採用する場合には、外郭部材であるルーフパネルが覆い被さった状態で各部の溶接箇所を確保しなければならず、接続強度を充分に維持することができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることのできる車両用ボディシェルおよびその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルと、このルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダと、このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレール、および車体の窓部構造を構成するフロントピラーの少なくとも一部が一体化されたフロントピラーインナと、このフロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットと、前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントとを備えていることを特徴とする車両用ボディシェルである。
【0008】
この態様では、ルーフサイドレールとフロントピラーの少なくとも一部がモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナを採用しているので、軽量で耐性の高いモノコック構造を得ることができる。さらにそのようなフロントピラーインナを採用し、コーナーガセットを別部材で構成した場合においても、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントを採用しているので、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。
【0009】
さらに、コーナーレインフォースメントは、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合される構成になっているので、ボディシェルの製造工程として、ルーフパネルとフロントヘッダとをサブアッセンブルする一方、フロントピラーインナとコーナーガセット等を一体化してボディインナアッセンブリをサブアッセンブルし、それぞれのサブアッセンブリをグロスアッセンブルする工法を採用した場合でも、コーナーレインフォースメントは、前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるものであることから、何ら支障なく前記工程を実現することが可能になる。
【0010】
好ましい態様において、前記フロントヘッダとコーナーレインフォースメントとが結合されるヘッダ結合部分は、当該フロントヘッダとコーナーガセットとが結合される部分よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメントとフロントピラーインナとが結合されるインナ結合部分は、前記ヘッダ結合部分よりも車体方向後方に延びている。この態様では、ヘッダ結合部分とインナ結合部分とを結ぶ線が、フロントヘッダとフロントピラーインナとを結ぶ線に対して筋交いになるので、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者がコーナーレインフォースメントによってトラス状に結合され、その結合強度を一層高めることが可能になる。
【0011】
本発明の別の態様は、車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルとこのルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを製造するルーフアッセンブル工程と、前記フロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとが一体化されたフロントピラーインナを製造する工程と、前記フロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットとを一体化してボディインナアッセンブリを製造するボディインナアッセンブル工程と、両アセンブリを結合するボディインナグロスアッセンブル工程とを備え、前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントを一体化する工程を含み、前記ボディインナグロスアッセンブル工程は、フロントヘッダをコーナーレインフォースメントに結合する工程を含んでいることを特徴とする車両用ボディシェルの製造方法である。この態様では、ルーフパネルを含むルーフアッセンブリと、フロントピラーインナを含むボディインナアッセンブリとを並行して製造することができるので、生産効率が向上する。さらに、製造されたボディインナアッセンブリには、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントが一体化されているとともに、このコーナーレインフォースメントに対してフロントヘッダが結合されるので、コーナーレインフォースメントは、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成することになる。この結果、生産されたボディシェルのフロントコーナー部分の組付強度が飛躍的に高まる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成するコーナーレインフォースメントを採用しているので、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態に係るボディシェル10の概略構成を示す斜視図である。
【0015】
同図を参照して、ボディシェル10は、予めルーフアッセンブリ20と、左右1対のボディインナアッセンブリ30とを備えている。これらのアッセンブリ20、30は、それぞれ並行して製造され、その後、グロスアッセンブルされて組み付けられたものである。なお、これらモジュール20、30に含まれないボディシェル10の残余の部材並びにその組立方法については、従来と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0016】
図2は、図1の実施形態に係るルーフアッセンブリ20の分解斜視図である。
【0017】
図1、図2を参照して、ルーフアッセンブリ20は、ルーフパネル21と、このルーフパネル21の前部下面に結合されるフロントヘッダ22とを一体化したものである。
【0018】
ルーフパネル21は、車体の天井の表面となる外装面21aと、外装面21aの外周縁に延設された矩形の枠状の取付部21bとを有しており、前記取付部21bに図略の外装部品が溶接されることにより、車体の天井部分の外郭を構成するものである。
【0019】
フロントヘッダ22は、全体としてルーフパネル21の幅方向に沿って延びる構造体であり、中央側が前方にせり出すように滑らかに湾曲する底部22aと、底部22aの前後に連続し、長手方向全体にわたって延びるフランジ部22b、22cとが形成されている。
【0020】
底部22aは、断面が皿形に形成されて、所定の深さを有する樋状の部材であり、その端壁部分22dによって、各フランジ部22b、22cとの間に所定の作業空間を形成している。底部22aには、図略の溶接装置を挿抜させるための作業孔22eが適所に開口している。
【0021】
各フランジ部22b、22cは、強度を高めるためのものであり、特に、後ろ側のフランジ部22cは、上下に起伏して稜線22fを形成し(図8参照)、これによって剛性を持たせている。
【0022】
図3は、図1の実施形態に係る左右1対のボディインナアッセンブリ30の左側のものを概略的に示す分解斜視図である。
【0023】
図示の通りボディインナアッセンブリ30は、モノコック構造のフロントピラーインナ31と、このフロントピラーインナ31に対して溶接されるコーナーガセット32と、コーナーガセット32およびフロントピラーインナ31に溶接されるコーナーレインフォースメント35とを一体化したものである。
【0024】
前記フロントピラーインナ31は、ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとが一体化された公知のプレス成型品であり、全体として上方および車幅方向外方に外壁を延ばしている。ルーフサイドレール31aは、ルーフアッセンブリ20のフロントヘッダ22の両側に前部が連結されるようにルーフパネル21の車幅方向両側に配置され、後述するグロスアッセンブル時にルーフパネル21の下面に溶接されるものである。フロントピラー31bは、前方から下方に屈曲するコーナー部分31cを介してルーフサイドレール31aと一体に連続し、車体の窓部構造を構成するものである。このコーナー部分31cには、前記フロントヘッダ22の先端部が車幅方向に対向し、コーナーガセット32を介して一体化されるようになっている。図示の例において、フロントピラーインナ31は、公知の構成と同様に、センタピラー31dおよびリアピラー31e、並びにサイドシルレインフォースメント33と一体化される(図1参照)。
【0025】
図4は、図1の実施形態に係るコーナーガセット32の概略構成を示す斜視図である。
【0026】
同図を参照して、コーナーガセット32は、前記フロントピラーインナ31のコーナー部分31cの内壁の起伏に沿って隆起するボディ部32aと、このボディ部32aから概ね直角に突出し、組付時において車幅方向内方に向かって延びるフロント部32bとを一体に有している板金製のプレス成形品である。図示のように、コーナーガセット32のフロント部32bの前後両側には、基端側が上方に隆起して先端縁側が互いに前後に離反する方向に延びるフランジ部32cが形成されている。フランジ部32cは、それぞれフロント部32bの先端部分からボディ部32aとの境界部分にかけて延びており、このフランジ部32cによって、フロント部32bは、フロントヘッダ22の下面に沿う樋状の断面形状を呈している。さらに、図示の例において、フロント部32bの略中央部分には、矩形の作業孔32dが形成されており、この作業孔32dを挿抜する図略の溶接装置によって、ボディ部32aと前記フロントピラーインナ31のコーナー部分31cとが溶接されるようになっている。なお当実施形態では、フロントピラーインナ31にコーナーガセット32が固定されたもの(まだ、コーナーレインフォースメント35が結合されていないもの)を仮にボディインナ中間体34と呼称する。
【0027】
次に、コーナーレインフォースメント35について説明する。
【0028】
図5は、図1の実施形態に係るコーナーレインフォースメント35の斜視図であり、図6は同コーナーレインフォースメント35をフロントピラーインナ31に結合したボディインナアッセンブリ30の要部を拡大して示す斜視図である。
【0029】
図5、図6を参照して、コーナーレインフォースメへント35は、平面視略L字形の板金製プレス成型品である。コーナーレインフォースメント35の一方の端部には、ルーフアッセンブリ20のフロントヘッダ22の先端隅部を受けるヘッダ受け部35aが形成されている。また、コーナーレインフォースメント35の他方の端部には、フロントピラーインナ31のルーフサイドレール31aを受けるレール受け部35bが形成されている。各受け部35a、35bは、概ねフラットに形成されており、その中央部には、アーク溶接用の孔36a、36bが形成されている。両受け部35a、35bの間には、コーナーガセット32下面に沿って起伏するガセット受け部35cが連続して形成されている。このガセット受け部35cは、コーナーガセット32が結合された際、当該コーナーガセット32のフロント部32b上面と前記ヘッダ受け部35aが概ね面一になるとともに、当該コーナーガセット32のボディ部32aとレール受け部35bとが概ね面一になるように起伏している。このため、組付時において、フロントヘッダ22は、前記ヘッダ受け部35aおよびコーナーガセット32とに対し面接触状態で結合されるとともに、フロントピラーインナ31は、レール受け部35bとコーナーガセット32とに対して面接触状態で結合されることになる。ガセット受け部35cには、コーナーガセット32とフロントヘッダ22とが重なり合う部位を開く窪み部35dが形成されている(図11参照)。コーナーレインフォースメント35の内周側縁35eは、樋状に隆起しており、フロントヘッダ22内に配索されレールワイヤーハーネスWHの収容空間を区画している(図9参照)。
【0030】
次に、上述したボディシェル10の製造工程について説明する。図7は図1の実施形態に係るボディシェル10の製造工程の要部を示す工程フロー図である。
【0031】
同図を参照して、ボディシェル10を製造する場合においては、ルーフアッセンブリ20を構成するルーフパネル21およびフロントヘッダ22、並びにボディインナアッセンブリ30を構成するフロントピラーインナ31、コーナーガセット32、およびコーナーレインフォースメント35をそれぞれ製造する製造工程(ステップS1〜S5)が、他の前工程(ステップS6)とともに並行して行われる。
【0032】
これらの製造工程により、図2〜図5で説明したルーフパネル21、フロントヘッダ22、フロントピラーインナ31、コーナーガセット32、およびコーナーレインフォースメント35等が製造される。
【0033】
次いで、各モジュール20、30を製造するための工程が並行して行われる。
【0034】
まず、ステップS11において、ルーフアッセンブリ20を製造するラインでは、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とが位置決めされ、溶接により両者が結合されてルーフアッセンブリ20が製造される(図2参照)。
【0035】
他方、ボディインナアッセンブリ30を製造する工程では、まず、ステップS21において、フロントピラーインナ31に対してコーナーガセット32を溶接することにより、ボディインナ中間体34(図4参照)が製造される。この溶接工程では、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32とが仮組され、図略の溶接装置をコーナーガセット32の作業孔32dから挿通して溶接箇所を挟み込み、通電して両者間にスポット溶接を施すようにしている。次いで、ステップS22において、製造されたボディインナ中間体34に対し、コーナーレインフォースメント35が溶接されてボディインナアッセンブリ30が製造される(図6参照)。この溶接工程では、ボディインナ中間体34とコーナーレインフォースメント35が仮組され、まず、前記コーナーガセット32とコーナーレインフォースメント35とをスポット溶接し、次いで、コーナーレインフォースメント35の孔36bからコーナーレインフォースメント35とフロントピラーインナ31のルーフサイドレール31bにアーク溶接を施す。これにより、コーナーレインフォースメント35は、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32に対し、直接結合されることになる。
【0036】
最後に、ステップS30において、それぞれのモジュール20、30が溶接される。
【0037】
具体的には、フロントヘッダ22の作業孔22eに図略の溶接装置を挿入し、フロントヘッダ22とコーナーガセット32との適所をスポット溶接し、その後、裏面側からコーナーレインフォースメント35の孔36aにアーク溶接を施して、コーナーレインフォースメント35とフロントヘッダ22とを結合する。これにより、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22とも直接結合されることになる。
【0038】
このように当実施形態では、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とを一体化したルーフアッセンブリ20を製造するルーフアッセンブル工程(ステップS11)と、フロントピラーインナ31を製造する工程(ステップS3)と、ボディインナアッセンブリ30を製造するボディインナアッセンブル工程(ステップS21、S22)と、両アセンブリ20、30を結合するボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)とを備えているとともに、前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセット32とフロントピラーインナ31との双方に結合されるコーナーレインフォースメント35を一体化する工程(ステップS22)を含み、前記ボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)は、フロントヘッダ22をコーナーレインフォースメント35に結合する工程を含んでいる。従って当実施形態では、ルーフパネル21を含むルーフアッセンブリ20と、フロントピラーインナ31を含むボディインナアッセンブリ30とを並行して製造することができるので、生産効率が向上する。さらに、製造されたボディインナアッセンブリ30には、コーナーガセット32とフロントピラーインナ31との双方に結合されるコーナーレインフォースメント35が一体化されているとともに、このコーナーレインフォースメント35に対してフロントヘッダ22が結合されるので、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成することになる。この結果、生産されたボディシェル10のフロントコーナー部分の組付強度が飛躍的に高まる。
【0039】
ボディインナグロスアッセンブル工程(ステップS30)が終了した後、残余の後工程(ステップS7)を終了することにより、ボディシェル10が完成する。
【0040】
図8は図7の工程によって製造されたボディシェル10の要部を拡大して示す斜視図であり、図9は図8のA−A断面略図、図10は図8のB−B断面略図、図11は図8のC矢視図、図12は図8の拡大図である。
【0041】
図8、図12を参照して、上述した工程により、コーナーレインフォースメント35は、2カ所のアーク溶接ポイントPAと、別の2カ所のスポット溶接ポイントPSとにより、フロントヘッダ22、フロントピラーインナ31、およびコーナーガセット32の三者に対して直接結合されている。当実施形態において、前記フロントヘッダ22とコーナーレインフォースメント35とが結合されるヘッダ結合部分J1は、当該フロントヘッダ22とコーナーガセット32とが結合される部分J(図12のみ図示)よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメント35とフロントピラーインナ31とが結合されるインナ結合部分J2は、前記ヘッダ結合部分J1よりも車体方向後方に延びている。そのため、当実施形態では、ヘッダ結合部分J1とインナ結合部分J2とを結ぶ直線L1が、フロントヘッダ22とフロントピラーインナ31とを結ぶ直線L2に対して筋交いになるので、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者がコーナーレインフォースメント35によってトラス状に結合され、その結合強度を一層高めることが可能になる。
【0042】
以上説明したように、当実施形態のボディシェル10は、ルーフサイドレール31aとフロントピラー31bとがモジュール化(一体化)されたフロントピラーインナ31を採用しているので、軽量で耐性の高いモノコック構造を得ることができる。さらにそのようなフロントピラーインナ31を採用し、コーナーガセット32を別部材で構成した場合においても、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメント35を採用しているので、組付時の剛性を飛躍的に高めることが可能になる。
【0043】
さらに、コーナーレインフォースメント35は、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合される構成になっているので、ボディシェル10の製造工程として、ルーフパネル21とフロントヘッダ22とをサブアッセンブルする一方、フロントピラーインナ31とコーナーガセット32等を一体化してボディインナアッセンブリ30をサブアッセンブルし、それぞれのサブアッセンブリ20、30をグロスアッセンブルする工法(図7参照)を採用した場合でも、コーナーレインフォースメント35は、前記フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合されるものであることから、何ら支障なく前記工程を実現することが可能になる。
【0044】
従って本実施形態によれば、フロントヘッダ22、コーナーガセット32、およびフロントピラーインナ31の三者に対して直接結合され、堅固な補強構造を構成するコーナーレインフォースメント35を採用しているので、生産効率が高く、可及的にモノコック構造を維持しつつ、高い組付強度を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0045】
上述した実施形態は本発明の好ましい具体例に過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【0046】
例えば、上述した実施形態における製造工程において、ステップS21、S22は、概念的なものであり、連続的に行われることを妨げる趣旨ではない。従って、フロントピラーインナ31に対して、コーナーガセット32とコーナーレインフォースメント35とを同時に仮組みし、連続的に溶接してもよい。その場合には、溶接装置を一度作業孔32dに挿入することで、全てのスポット溶接工程を終了することが可能になる。
【0047】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の一形態に係るボディシェルの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態に係るルーフアッセンブリの分解斜視図である。
【図3】図1の実施形態に係る左右1対のボディインナアッセンブリの左側のものを概略的に示す分解斜視図である。
【図4】図1の実施形態に係るコーナーガセットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】図1の実施形態に係るコーナーレインフォースメントの斜視図である。
【図6】同コーナーレインフォースメントをフロントピラーインナに結合したボディインナアッセンブリの要部を拡大して示す斜視図である。
【図7】図1の実施形態に係るボディシェルの製造工程の要部を示す工程フロー図である。
【図8】図7の工程によって製造されたボディシェルの要部を拡大して示す斜視図である。
【図9】図8のA−A断面略図である。
【図10】図8のB−B断面略図である。
【図11】図8のC矢視図である。
【図12】図8の拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ボディシェル
20 ルーフアッセンブリ
21 ルーフパネル
22 フロントヘッダ
30 ボディインナアッセンブリ
31 フロントピラーインナ
32 コーナーガセット
35 コーナーレインフォースメント
J1 ヘッダ結合部分
J2 インナ結合部分
L1 直線
L2 直線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルと、
このルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダと、
このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレール、および車体の窓部構造を構成するフロントピラーの少なくとも一部が一体化されたフロントピラーインナと、
このフロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットと、
前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントと
を備えていることを特徴とする車両用ボディシェル。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ボディシェルにおいて、
前記フロントヘッダとコーナーレインフォースメントとが結合されるヘッダ結合部分は、当該フロントヘッダとコーナーガセットとが結合される部分よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメントとフロントピラーインナとが結合されるインナ結合部分は、前記ヘッダ結合部分よりも車体方向後方に延びていることを特徴とする車両用ボディシェル。
【請求項3】
車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルとこのルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを製造するルーフアッセンブル工程と、
前記フロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとが一体化されたフロントピラーインナを製造する工程と、
前記フロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットとを一体化してボディインナアッセンブリを製造するボディインナアッセンブル工程と、
両アセンブリを結合するボディインナグロスアッセンブル工程と
を備え、
前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントを一体化する工程を含み、
前記ボディインナグロスアッセンブル工程は、フロントヘッダをコーナーレインフォースメントに結合する工程を含んでいることを特徴とする車両用ボディシェルの製造方法。
【請求項1】
車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルと、
このルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダと、
このフロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレール、および車体の窓部構造を構成するフロントピラーの少なくとも一部が一体化されたフロントピラーインナと、
このフロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットと、
前記フロントヘッダ、コーナーガセット、およびフロントピラーインナの三者の後部に配置され、これら三者に対して直接結合されるコーナーレインフォースメントと
を備えていることを特徴とする車両用ボディシェル。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ボディシェルにおいて、
前記フロントヘッダとコーナーレインフォースメントとが結合されるヘッダ結合部分は、当該フロントヘッダとコーナーガセットとが結合される部分よりも車幅方向内方に位置するとともに、前記コーナーレインフォースメントとフロントピラーインナとが結合されるインナ結合部分は、前記ヘッダ結合部分よりも車体方向後方に延びていることを特徴とする車両用ボディシェル。
【請求項3】
車体の天井部分の外郭を構成するルーフパネルとこのルーフパネルの前部下面に結合されるフロントヘッダとを一体化したルーフアッセンブリを製造するルーフアッセンブル工程と、
前記フロントヘッダの両側に前部が連結されるようにルーフパネルの車幅方向両側に配置されるルーフサイドレールと、このルーフサイドレールとフロントヘッダの対向位置に上端部が接続されて、車体の窓部構造を構成するフロントピラーとが一体化されたフロントピラーインナを製造する工程と、
前記フロントピラーインナを前記フロントヘッダに連結するコーナーガセットとを一体化してボディインナアッセンブリを製造するボディインナアッセンブル工程と、
両アセンブリを結合するボディインナグロスアッセンブル工程と
を備え、
前記ボディインナアッセンブル工程は、コーナーガセットとフロントピラーインナとの双方に結合されるコーナーレインフォースメントを一体化する工程を含み、
前記ボディインナグロスアッセンブル工程は、フロントヘッダをコーナーレインフォースメントに結合する工程を含んでいることを特徴とする車両用ボディシェルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−76371(P2006−76371A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260574(P2004−260574)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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