車両用モータ駆動装置および自動車
【課題】 減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える車両用モータ駆動装置を提供する。
【解決手段】 電動式のモータ10と、固定ギヤ比の切り換え可能な2つのギヤ列23,24を有する減速機20とを備える。モータ10の出力特性によって定まる、前記各ギヤ列23,24における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L1,L2が、いずれも、トルク一定曲線部L1a,L2a、トルク漸減曲線部L1b,L2b、および速度一定曲線部L1c,L2c、を有する。各ギヤ列23,24は、両ギヤ列23,24の駆動力曲線L1,L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとする。
【解決手段】 電動式のモータ10と、固定ギヤ比の切り換え可能な2つのギヤ列23,24を有する減速機20とを備える。モータ10の出力特性によって定まる、前記各ギヤ列23,24における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L1,L2が、いずれも、トルク一定曲線部L1a,L2a、トルク漸減曲線部L1b,L2b、および速度一定曲線部L1c,L2c、を有する。各ギヤ列23,24は、両ギヤ列23,24の駆動力曲線L1,L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動式のモータを駆動源として備え、そのモータの出力を減速して車輪に伝える車両用モータ駆動装置、およびこの車両用モータ駆動装置を搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式のモータは、回転速度と出力トルクとの関係が、或る範囲で高効率となる特性を持つ。そのため、モータの回転は減速機を介して車輪に伝えるのが一般的である。前記減速機の減速比は、優れた効率が得られる出力トルク・回転速度の関係で使用されるように定められる。しかし、車両では、車庫入れ時等の低速走行から、高速道路での高速走行時など、走行速度の範囲が広範囲となる。そのため、固定した減速比では、モータを高効率に駆動させることができない。これを解消するため、車両用モータ駆動装置において、減速比を2段に切り換え可能な減速機、つまり変速機を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、車両用モータ駆動装置において、減速比を2段に切り換え可能とすることが提案されている。しかし、各段の間の減速比の関係をどのような関係に設定するかについては、未解決である。
【0005】
図15は、モータの出力特性によって定まる、減速機の各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係の例を示す。前記出力回転速度は車速と考えても良い。図15(a)は減速比小(高速重視)の場合、同図(b)は減速比大(低速高トルク重視)の場合を示す。
この関係を示す駆動力曲線L1,L2は、一般的に同図のように、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなる。
この駆動力曲線L1,L2よりも内部(原点側:ハッチングを施した範囲)で、種々の走行条件に応じた出力トルク・回転速度の関係でモータ駆動されることになる。各図の黒塗り部分が一般的にモータが高効率となる領域である。
【0006】
図15(a)の減速比小の場合は、高速走行が可能であるが、出力トルクは小さいため、高速重視の場合に適する。同図(b)の減速比大の場合は、出力トルクは大きく得られるが、走行速度は遅いため、低速大トルク重視の場合に適する。減速比を2段に切り換え可能とすると、同図(a)と(b)を重ね合わせた同図(c)の駆動力曲線Lの範囲で走行可能となり、高速小トルク走行と低速大トルク走行とが可能となる。
【0007】
しかし、減速比小の場合の減速比と、減速比大の場合の減速比との関係を適切に設定しなければ、同図(c)のように、駆動力曲線Lにおける、トルク漸減曲線部L1b,L2bが不連続となって、速度一定曲線部L1cおよびトルク一定曲線部L2aに続く領域である不連続領域C(網点を施した領域)が生じる。この不連続領域Cは、減速機出力として得ることのできない回転速度と出力トルクの関係の領域である。
この不連続領域Cが生じる減速比の場合、例えば図中の点Q1の条件でモータ駆動されているような場合は、変速操作を行っても支障は生じないが、不連続領域Cの付近で、点Q2,点Q点の条件のように、駆動力曲線L上や駆動力曲線Lに沿う位置に近い条件で走行している場合は、そのときに変速操作を行うと急激なトルク変動が生じることになる。そのため、スムーズな変速操作が行えなくて、走行の快適性が損なわれる。特に、高速道路等における料金所通過時等の低速走行から高速走行に至るまで急に加速しようとした場合などは、上記不連続領域Cの影響でスムーズな加速が行えない。
【0008】
この発明の目的は、複数段の変速機能を持ち、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える車両用モータ駆動装置を提供することである。
この発明の他の目的は、モータ出力を減速する複数段の変速機能を持ち、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える電気自動車、ハイブリッド自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両用モータ駆動装置は、電動式のモータ10と、このモータ10と車輪1との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列23,24を有していてこれら2つのギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機20とを備えた車両用モータ駆動装置Aであって、
前記モータ10の出力特性によって定まる、前記各ギヤ列23,24における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L1,L2が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなり、
前記各ギヤ列23,24は、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、前記トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有する、ことを特徴とする。
なお、ギヤ列が3つ以上の場合、上記の減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列は、その3つ以上のギヤ列のうち、減速比が互いに1段異なる各2つのギヤ列間における減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列を言う。
【0010】
この構成によると、減速機20を複数段に切換え可能としたため、モータ10が小型でも急加速,高速走行が可能となり、小型軽量な車両用モータ駆動装置Aとなる。特に、前記減速機20は、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2cで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとしたため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、モータ10が小型でも低速域から高速域までスムーズな加速が可能となり、快適な走行が行える。しかも、出力回転速度と出力トルクの関係において、高効率域Hが拡大し、最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【0011】
この発明において、前記減速機20の前記複数のギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を切り換える手段が、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構50であっても良い。クラッチの係合、解除によって切換えを行う形式の場合に、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果が、より効果的となる。
前記クラッチは、例えば、ローラクラッチまたはドグクラッチであっても良い。ローラクラッチやドグクラッチでは、駆動側と被駆動側で回転差があっても切換が可能であるが、このようなクラッチの場合に、上記の重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果、さらに効果的となる。
【0012】
この発明において、前記減速機20の出力を車両の左右の車輪1,1に分配して伝達するディファレンシャル80を有するものとしても良い。この場合に、前記車両は走行駆動源として前記モータ10を1台のみ有するものであっても良い。
この発明の車両用モータ駆動装置Aは、車輪1を個別に駆動する場合にも適用可能ではあるが、減速比の切換えに対する安定した走行性の確保のため、1台のモータ10で左右両輪1,1を駆動する場合、特に1台のモータ10で車両を駆動する場合に、より効果的である。
【0013】
この発明において、前記モータ10が、埋め込み磁石形同期モータであっても良い。埋め込み磁石形同期モータは、車両走行用のモータとして各種の優れた性能を有するが、この発明の複数段減速構成とすることで、より効率的に駆動することができる。
【0014】
この発明の電気自動車EVは、この発明の上記いずれか構成の車両用モータ駆動装置Aを搭載したものである。
この構成の電気自動車EVによると、この発明の車両用モータ駆動装置Aの搭載によって、小型のモータ10でもスムーズな加速と高速走行が可能で、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行え、また減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、快適な走行が行える。
【0015】
この発明のハイブリッド自動車HVは、車両の前部に設けられた左右一対の前輪1,1と後部に設けられた左右一対の後輪2,2の一方をエンジンEで駆動し、他方を、この発明の上記いずれかの構成の車両用モータ駆動装置Aで駆動する。
この構成のハイブリッド自動車HVによると、この発明の車両用モータ駆動装置Aの搭載により、モータ走行時に、小型のモータ10でもスムーズな加速と高速走行が可能で、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行え、また減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、快適な走行が行える。
【発明の効果】
【0016】
この発明の車両用モータ駆動装置は、電動式のモータと、このモータと車輪との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列を有していてこれら複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機とを備えた車両用モータ駆動装置であって、前記モータの出力特性によって定まる、前記各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度までは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部となり、前記トルク低下開始速度から最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部となり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部となり、前記各ギヤ列は、前記減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有するため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【0017】
この発明の電気自動車およびハイブリッド自動車は、この発明の車両用モータ駆動装置を搭載しているため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係る車両用モータ駆動装置を概念構成を示す説明図、(B)の(a)〜(c)は、その各ギヤ列およびこれらギヤ列を組み合わせた出力の回転速度と出力トルクの関係を示す説明図である。
【図2】同回転速度と出力トルクの関係および高効率域を示す説明図である。
【図3】減速比固定の車両用モータ駆動装置と実施形態の車両用モータ駆動装置との外形の大きさを比較する説明図である。
【図4】(イ)は、同車両用モータ駆動装置を採用した電気自動車の概略図、(ロ)は、上記車両用モータ駆動装置を採用したハイブリッド車の概略図
【図5】同実施形態に係る車両用モータ駆動装置の断面図
【図6】図5の変速機の要部を拡大して示す断面図
【図7】図6のVII −VII 線に沿った断面図
【図8】図6のVIII−VIII 線に沿った断面図
【図9】変速比切換機構を示す断面図
【図10】図6のX−X線に沿った断面図
【図11】図9の一部を拡大して示す断面図
【図12】変速切換状態を示す断面図
【図13】2ウェイローラクラッチの内輪、保持器、スイッチばねおよび変速比切換機構の弾性部材、ワッシャ、摩擦板のそれぞれを示す分解斜視図である。
【図14】同車両用モータ駆動装置におけるモータの一例の断面図である。
【図15】提案例に係る2段切り換えの減速機における出力回転速度と出力トルクの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1に示すように、この車両用モータ駆動装置Aは、電動式のモータ10と、このモータ10と車輪1,1との間のトルク伝達系に介在した減速機20とを備える。減速機20は、それぞれ固定減速比である減速比小側と減速比大側の2つのギヤ列23,24を有し、これら2つのギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を変速比切換機構50で切り換え可能とされている。変速比切換機構50は、後述のクラッチの係合、解除によって切換えを行う形式のものである。減速機20の出力は、ディファレンシャル80により車両の左右の車輪1,1に分配して伝達される。モータ10は、同期形のモータ、例えば埋め込み磁石形同期モータである。
【0020】
図1(B)の(a),(b)に、前記減速比小側および減速比大側の各ギヤ列24,23における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L2,L1をそれぞれ示す。この駆動力曲線L1,L2は、モータ10の出力特性と減速比によって定まるが、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなる。
【0021】
前記2つのギヤ列23,24は、図1(B)の(c)に示すように、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、前記トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するように、互いの減速比の関係に設定される。すなわち、両駆動力曲線L1,L2が重なり部分Lbaを持って連続するように設定される。重なり部分Lbaの長さは、零未満でなければ良く、適宜設計される。
【0022】
この構成によると、減速機20を2段切換え可能としたため、小型のモータ10でも急加速,高速走行が可能となり、小型軽量な車両用モータ駆動装置Aとなる。例えば、図3に概念的に示すように、同図(A)のように減速比固定の減速機20Aを用いた場合に比べ、2段変速の場合は減速機20が大きくなるが、モータ10が小型化されて、このモータ小型化の影響の方が、減速機大型化よりも影響が強く、車両用モータ駆動装置Aの全体としては小型軽量化される。
また、この実施形態では、減速機20は、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとしたため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることない。そのため、小型のモータ10でも、低速域から高速域までスムーズな加速が可能となり、快適な走行が行える。
【0023】
しかも、出力回転速度と出力トルクの関係において、高効率域が拡大し、最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。例えば、図2(a),(b)に2段の各ギヤ列23,24おける高効率域Hを斜線部で示すが、両ギヤ列23,24を切り換える2段切り換えとした場合、同図(c)に示すように、高効率域Hが拡大することになる。
このように、適切な2段切り換えとすることで、高速走行域の拡大、低速域での駆動力(トルク)増が得られると共に、高効率域Hが拡大し、それだけ高効率域Hで運転される確率も増えて、低電力使用量で走行できる。
【0024】
また、この実施形態では、2つのギヤ列23,24の間でのトルク伝達経路を切り換えを、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構50で行うようにしているが、このようなクラッチ使用の変速比切換機構50を用いた場合に、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果が、より効果的となる。
【0025】
また、減速機20の出力はディファレンシャル80を介して車両の左右の車輪1,1に分配して伝達されるが、減速比の切換えに対する安定した走行性の確保のため、1台のモータで左右両輪を駆動する場合、特に1台のモータで車両を駆動する場合に、この実施形態の2段切り換えの車両用モータ駆動装置Aが効果的である。
【0026】
モータ10は、任意の形式のもので良いが、埋め込み磁石形同期モータが、車両走行用として種々の面で優れている。埋め込み磁石形同期モータを用いた場合に、この実施形態の形式の2段減速構成の車両用モータ駆動装置Aの上記効果が、より一層効率的に発揮される。
【0027】
次にこの車両用モータ駆動装置を搭載した自動車の例、および減速機等の具体的な構成例を、図4ないし図14と共に説明する。
図4(A)は、この実施形態に係る車両用モータ駆動装置Aによって、左右一対の前輪である車輪1を駆動するようにした電気自動車EVを示す。図4(B)は、エンジンEによって左右一対の駆動輪としての前輪である車輪1を駆動し、上記モータ駆動装置Aによって左右一対の補助駆動輪としての後輪である車輪2を駆動するハイブリッド車HVを示し、上記エンジンEの回転を、トランスミッションT、およびディファレンシャルDを介して前輪である車輪1に伝達するようにしている。
【0028】
図5に示すように、車両用モータ駆動装置Aは、電動式のモータ10と、そのモータ10の出力軸11の回転を変速する減速機20と、その減速機20から出力される動力を、図4(A)に示す電気自動車EVの左右一対の前輪1に分配し、または、図4(B)に示すハイブリッド車HVの左右一対の後輪2に分配するディファレンシャル80とを有している。
【0029】
減速機20は、2段切り換えの変速機であり、第1シャフト21と第2シャフト22間に、それぞれ固定減速比の第1減速ギヤ列23と第2減速ギヤ列24を設けた常時噛合い式減速機からなる。
【0030】
第1シャフト21および第2シャフト22は、ハウジング25内に組込まれた対向一対の軸受26により回転自在に支持されて平行の配置とされ、上記第1シャフト21がモータ10の出力軸11に接続されている。
【0031】
第1減速ギヤ列23は、第1シャフト21に第1入力ギヤ23aを設け、その第1入力ギヤ23aに噛合する第1出力ギヤ23bを第2シャフト22を中心にして回転自在としている。
【0032】
第2減速ギヤ列24は、第1シャフト21に第2入力ギヤ24aを設け、その第2入力ギヤ24aに噛合する第2出力ギヤ24bを第2シャフト22を中心にして回転自在としており、その第2減速ギヤ列24の減速比は第1減速ギヤ列23の減速比より小さくなっている。
【0033】
図6ないし図8に示すように、第1出力ギヤ23bと第2シャフト22との間には、その第1出力ギヤ23bと第2シャフト22とを締結、解除する第1の2ウェイローラクラッチ30Aが組込まれている。また、第2出力ギヤ24bと第2シャフト22間には、その第2出力ギヤ24bと第2シャフト22を締結、解除する第2の2ウェイローラクラッチ30Bが組込まれている。
【0034】
第1の2ウェイローラクラッチ30Aと、第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、同一の構成であって左右対称の向きとされているため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを以下に説明し、第2の2ウェイローラクラッチ30Bについては、同一の部品に同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
第1の2ウェイローラクラッチ30は、第2シャフト22に内輪31を、スプライン32による嵌合として回り止めし、その内輪31の外周に第1出力ギヤ23bの内周に形成された円筒面33との間で周方向の両端が狭小のくさび形空間を形成する複数の平坦なカム面34を周方向に等間隔に設け、各カム面34と円筒面33間にローラ35を組込み、そのローラ35を第1出力ギヤ23bと内輪31間に組込まれた保持器36で保持している。
【0036】
内輪31の軸方向の一端面に円形の凹部37を形成し、その凹部37内にスイッチばね38の円形部38aを嵌合し、その円形部38aの両端から外向きに設けられた一対の押圧片38bを、凹部37の外周壁に形成された切欠き39から保持器36の一端面に形成された切欠部40に挿入し、その一対の押圧片38bで切欠き39および切欠部40の周方向で対向する端面を相反する方向に押圧して、ローラ35が円筒面33およびカム面34に対して係合解除する中立位置に保持器36を弾性保持している。
【0037】
第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた内輪31と第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた内輪31は、その対向部間に組込まれた回転部材としての間座41と、第2シャフト22に嵌合された一対のストッパリング44により両側から挟持されて軸方向に非可動の支持とされている。また、間座41は対向一対の内輪31のそれぞれと一体に回転するようになっている。
【0038】
一対の内輪31には、ストッパリング44と対向する外端部に円筒形の軸受嵌合面42が形成され、その軸受嵌合面42に嵌合された軸受43によって、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが内輪31に対して回転自在に支持されている。
【0039】
第1の2ウェイローラクラッチ30Aと第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、図9に示す変速比切換機構50によって係合、解除が制御される。
【0040】
変速比切換機構50は、間座41の外周に軸方向に移動可能な制御リング51を嵌合して回転自在に支持し、その制御リング51の両側に配置された一対の摩擦板52a、52bの一方を第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、かつ、他方を第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60により第1出力ギヤ23bに向けて移動させ、その第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる摩擦板52aの摩擦係合により保持器36を第1出力ギヤ23bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
【0041】
シフト機構60により制御リング51を第2出力ギヤ24bに向けて移動させ、その第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられる摩擦板52bの摩擦係合により保持器36を第2出力ギヤ24bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
【0042】
一対の摩擦板52a、52bは環状をなし、その内径面に形成されたL形の係合片53を保持器36に形成された前記切欠部40に係合して、摩擦板52a、52bのそれぞれを保持器36に回り止めしている。また、係合片53と内輪31の対向面間にワッシャ54と弾性部材55とを組込み、その弾性部材55によって摩擦板52a、52bのそれぞれを内輪31から離反する係合解除位置に向けて付勢している。
【0043】
係合片53の内端に係合溝57を形成し、一方、間座41の外周には、その係合溝57とで係合手段56を形成する複数の係合突条58を設け、上記摩擦板52a、52bが係合解除位置まで移動した際、係合溝57を係合突条58の一つに係合させて、間座41に一体化された内輪31と保持器36とが相対的に回転するのを防止し、ローラ35を中立位置に保持するようにしている。
【0044】
図9に示すように、シフト機構60は、第2シャフト22に平行に配置されたシフトロッド61をハウジング25に取り付けられた一対の滑り軸受62によりスライド自在に支持し、そのシフトロッド61にシフトフォーク63を取付け、一方、制御リング51の外周に嵌合された転がり軸受64でスリーブ65を回転自在に支持し、かつ、軸方向に非可動に支持し、そのスリーブ65の外周に環状溝66を設け、その環状溝66にシフトフォーク63の先端の二股片63aを嵌合し、上記シフトロッド61をアクチュエータ67により軸方向に移動させて、スリーブ65と共に制御リング51を軸方向に移動させるようにしている。
【0045】
アクチュエータ67として、シフトロッド61に接続されるシリンダやソレノイドを採用することができるが、ここでは、モータ68を採用し、そのモータ68の出力軸69の回転を運動変換機構70によりシフトロッド61の軸方向への移動に変換するようにしている。
【0046】
すなわち、モータ68の出力軸69に設けられた駆動ギヤ71にナット部材としての従動ギヤ72を噛合し、その従動ギヤ72を対向一対の軸受73により回転自在に支持し、その従動ギヤ72の内周に形成された雌ねじ74をシフトロッド61の端部外周に形成された雄ねじ75にねじ係合し、上記従動ギヤ72の定位置での回転により、シフトロッド61を軸方向に移動させるようにしている。
【0047】
図5に示すように、第2シャフト22の軸端部には、その第2シャフト22の回転をディファレンシャルギヤ80に伝達するアウトプットギヤ76が設けられている。
【0048】
ディファレンシャル80は、アウトプットギヤ76に噛合するリングギヤ81をハウジング25によって回転自在に支持されたデフケース82に取付け、上記デフケース82により両端部が回転自在に支持されたピニオン軸83に一対のピニオン84を取付け、その一対のピニオン84のそれぞれに一対のサイドギヤ85を噛合した構成とされ、その一対のサイドギヤ85のそれぞれにアクスル86の軸端部が接続されている。
【0049】
この実施形態で示す車両用モータ駆動装置Aは上記の構造からなり、図6は、一対の摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bから離反する係合解除位置に保持された状態を示し、上記第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた第1の2ウェイローラクラッチ30Aおよび第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた第2の2ウェイローラクラッチ30Bのそれぞれは、図7に示すように、係合解除状態にある。
【0050】
このため、モータ10が駆動されて第1シャフト21が回転しても、その回転は第1入力ギヤ23aからこれに噛合する第1出力ギヤ23bに伝達され、また、第2入力ギヤ24aからこれに噛合する第2出力ギヤ24bに伝達されるが、第2シャフト22に伝達されず、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが空転する。
【0051】
第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの空転状態において、2ウェイローラクラッチ30A、30Bの中立状態にあるローラ35には円筒面33との接触により、ドラグトルクが作用して、保持器36を回転させようとする。
【0052】
このとき、保持器36に回り止めされた摩擦板52a、52bのそれぞれは、係合溝57と係合突条58に係合によって内輪31に対して回り止めされているため、保持器36も内輪31に対して回り止めされる状態にある。このため、ローラ35に作用するドラグトルクによって、内輪31と保持器36とが相対回転するようなことはなく、第1、第2の2ウェイローラクラッチ30A、30Bが誤係合するという不都合の発生はない。
【0053】
モータ10の駆動によって第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bのそれぞれが空転する状態において、図9に示すモータ68の駆動によりシフトロッド61を同図の右方向に移動させると、シフトフォーク63によってスリーブ65および制御リング51がシフトロッド61と同方向に移動され、その制御リング51により、摩擦板52aが第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる。
【0054】
このとき、摩擦板52aの係合溝57と間座41の係合突条58の係合が解除し、また、摩擦板52aは、第1出力ギヤ23bの側面に摩擦係合するため、保持器36は第1出力ギヤ23bに連結される状態になる。
【0055】
このため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第1出力ギヤ23bの回転は、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを介して第2シャフト22に直ちに伝達される。また、第2シャフト22の回転はディファレンシャルギヤ80を介してアクスル86に伝達される。
【0056】
その結果、図4(A)に示す電気自動車EVにおいては、前輪1が回転することになり、その電気自動車EVを走行させることができると共に、図4(B)に示すハイブリッド車HVにおいては、補助駆動輪としての後輪2が回転し、前輪1の駆動をアシストすることになる。
【0057】
ここで、内輪31と保持器36が相対回転すると、スイッチばね38が弾性変形する。そのため、モータ68を上記の逆方向に回転し、シフトロッド61を上記の逆の方向に移動(図9の左方向)させて、制御リング51を第1出力ギヤ23bから離反する方向に移動させると、摩擦板52aは弾性部材55の復元弾性により、第1出力ギヤ23bから離反し、同時にスイッチばね38の復元弾性により、保持器36が復帰回動され、ローラ35は中立位置に戻されることになり、第1シャフト21から第2シャフト22への回転伝達が直ちに遮断されることになる。
【0058】
シフトロッド61を同方向(図9の左方向)にさらに移動させると、制御リング51の押圧により、摩擦板52bが第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられて摩擦係合する。
【0059】
このため、第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第2出力ギヤ24bの回転は、第2の2ウェイローラクラッチ30Bを介して第2シャフト22に直ちに伝達されることになり、トルク伝達経路が直ちに切換えられることになる。
【0060】
上記のように、アクチュエータとしてのモータ68を駆動してシフトロッド61を軸方向に移動させることにより、第1の2ウェイローラクラッチ30Aまたは第2の2ウェイローラクラッチ30Bが直ちに係合および係合解除するため、変速の切換えを迅速に行なうことができる。
【0061】
実施の形態で示すように、第1出力ギヤ23bと第2出力ギヤ24b間に制御リング51と2枚の摩擦板52a、52bを組込み、一方の摩擦板52aを第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、他方の摩擦板52bを第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60で左右方向にシフトできるようにして、1つの変速比切換機構50によって2組の2ウェイローラクラッチ30A、30Bの係合、解除を制御し得るように構成すると、モータ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0062】
ここで、図では省略したが、摩擦板52a、52bと制御リング51の対向面間に転がり軸受を組込んでおくのがよい。その転がり軸受の組込みによって、摩擦板52a、52bと制御リング51との接触部に作用する摩擦抵抗の低減化を図ることができる。このため、摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23b、第2出力ギヤ24bに押し付けられて摩擦係合する係合時に、摩擦板52a、52bを制御リング51に対して円滑に相対回転させることができ、2ウェイローラクラッチ30A,30Bを確実に係合させることができる。
【0063】
実施の形態においては、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周に円筒面33を形成し、各出力ギヤ23b、24bの内側に組込まれた内輪31の外周にカム面34を設けたが、その逆に、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周にカム面を形成し、内輪の外周に円筒面を設けるようにしてもよい。この場合、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bと保持器36との間にスイッチばねを組込むようにして、ローラが中立状態となるよう保持器を弾性保持する。
【0064】
図14において、モータ10は、円筒状のモータハウジング172に固定したモータステータ173と、出力軸11に取り付けたモータロータ175との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のIPMモータである。出力軸11は、減速機20のインボード側のハウジングの筒部に2つの軸受で片持ち支持されている。
【0065】
モータステータ173は、軟質磁性体からなるステータコア部177とコイル178とでなる。ステータコア部177は、その外周面がモータハウジング172の内周面に嵌合して、モータハウジング172に保持されている。モータロータ175は、モータステータ173と同心に出力軸11に外嵌するロータコア部179と、このロータコア部179に内蔵される複数の永久磁石180とでなる。永久磁石180はV字状に配置されている。
【0066】
なお、上記実施形態では、減速機20を2段のギヤ列23,24を有する2段切換式のものとしたが、減速機20は、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる3つ以上のギヤ列を有していて、これ3つ以上のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能なものとしても良い。この場合、その3つ以上のギヤ列のうち、減速比が互いに1段異なる各2つのギヤ列間における減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列につき、減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有するものとする。
また、上記実施形態では、減速機20の前記複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換える手段を、ローラクラッチ30A、30Bとしたが、この切り換え手段として用いるクラッチは、ドグクラッチ(図示せず)であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1,2…車輪
10…モータ
20…減速機
21…第1シャフト
22…第2シャフト
23…第1減速ギヤ列
24…第2減速ギヤ列
30A…第1の2ウェイローラクラッチ
30B…第2の2ウェイローラクラッチ
50…変速比切換機構
80ディファレンシャル
L,L1,L2…駆動力曲線
L1a,L2a…トルク一定曲線部
L1b,L2b…トルク漸減曲線部
L1c,L2c…速度一定曲線部
Lba…重なり部分
H…高効率域
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動式のモータを駆動源として備え、そのモータの出力を減速して車輪に伝える車両用モータ駆動装置、およびこの車両用モータ駆動装置を搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式のモータは、回転速度と出力トルクとの関係が、或る範囲で高効率となる特性を持つ。そのため、モータの回転は減速機を介して車輪に伝えるのが一般的である。前記減速機の減速比は、優れた効率が得られる出力トルク・回転速度の関係で使用されるように定められる。しかし、車両では、車庫入れ時等の低速走行から、高速道路での高速走行時など、走行速度の範囲が広範囲となる。そのため、固定した減速比では、モータを高効率に駆動させることができない。これを解消するため、車両用モータ駆動装置において、減速比を2段に切り換え可能な減速機、つまり変速機を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−58534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、車両用モータ駆動装置において、減速比を2段に切り換え可能とすることが提案されている。しかし、各段の間の減速比の関係をどのような関係に設定するかについては、未解決である。
【0005】
図15は、モータの出力特性によって定まる、減速機の各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係の例を示す。前記出力回転速度は車速と考えても良い。図15(a)は減速比小(高速重視)の場合、同図(b)は減速比大(低速高トルク重視)の場合を示す。
この関係を示す駆動力曲線L1,L2は、一般的に同図のように、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなる。
この駆動力曲線L1,L2よりも内部(原点側:ハッチングを施した範囲)で、種々の走行条件に応じた出力トルク・回転速度の関係でモータ駆動されることになる。各図の黒塗り部分が一般的にモータが高効率となる領域である。
【0006】
図15(a)の減速比小の場合は、高速走行が可能であるが、出力トルクは小さいため、高速重視の場合に適する。同図(b)の減速比大の場合は、出力トルクは大きく得られるが、走行速度は遅いため、低速大トルク重視の場合に適する。減速比を2段に切り換え可能とすると、同図(a)と(b)を重ね合わせた同図(c)の駆動力曲線Lの範囲で走行可能となり、高速小トルク走行と低速大トルク走行とが可能となる。
【0007】
しかし、減速比小の場合の減速比と、減速比大の場合の減速比との関係を適切に設定しなければ、同図(c)のように、駆動力曲線Lにおける、トルク漸減曲線部L1b,L2bが不連続となって、速度一定曲線部L1cおよびトルク一定曲線部L2aに続く領域である不連続領域C(網点を施した領域)が生じる。この不連続領域Cは、減速機出力として得ることのできない回転速度と出力トルクの関係の領域である。
この不連続領域Cが生じる減速比の場合、例えば図中の点Q1の条件でモータ駆動されているような場合は、変速操作を行っても支障は生じないが、不連続領域Cの付近で、点Q2,点Q点の条件のように、駆動力曲線L上や駆動力曲線Lに沿う位置に近い条件で走行している場合は、そのときに変速操作を行うと急激なトルク変動が生じることになる。そのため、スムーズな変速操作が行えなくて、走行の快適性が損なわれる。特に、高速道路等における料金所通過時等の低速走行から高速走行に至るまで急に加速しようとした場合などは、上記不連続領域Cの影響でスムーズな加速が行えない。
【0008】
この発明の目的は、複数段の変速機能を持ち、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える車両用モータ駆動装置を提供することである。
この発明の他の目的は、モータ出力を減速する複数段の変速機能を持ち、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える電気自動車、ハイブリッド自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両用モータ駆動装置は、電動式のモータ10と、このモータ10と車輪1との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列23,24を有していてこれら2つのギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機20とを備えた車両用モータ駆動装置Aであって、
前記モータ10の出力特性によって定まる、前記各ギヤ列23,24における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L1,L2が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなり、
前記各ギヤ列23,24は、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、前記トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有する、ことを特徴とする。
なお、ギヤ列が3つ以上の場合、上記の減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列は、その3つ以上のギヤ列のうち、減速比が互いに1段異なる各2つのギヤ列間における減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列を言う。
【0010】
この構成によると、減速機20を複数段に切換え可能としたため、モータ10が小型でも急加速,高速走行が可能となり、小型軽量な車両用モータ駆動装置Aとなる。特に、前記減速機20は、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2cで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとしたため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、モータ10が小型でも低速域から高速域までスムーズな加速が可能となり、快適な走行が行える。しかも、出力回転速度と出力トルクの関係において、高効率域Hが拡大し、最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【0011】
この発明において、前記減速機20の前記複数のギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を切り換える手段が、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構50であっても良い。クラッチの係合、解除によって切換えを行う形式の場合に、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果が、より効果的となる。
前記クラッチは、例えば、ローラクラッチまたはドグクラッチであっても良い。ローラクラッチやドグクラッチでは、駆動側と被駆動側で回転差があっても切換が可能であるが、このようなクラッチの場合に、上記の重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果、さらに効果的となる。
【0012】
この発明において、前記減速機20の出力を車両の左右の車輪1,1に分配して伝達するディファレンシャル80を有するものとしても良い。この場合に、前記車両は走行駆動源として前記モータ10を1台のみ有するものであっても良い。
この発明の車両用モータ駆動装置Aは、車輪1を個別に駆動する場合にも適用可能ではあるが、減速比の切換えに対する安定した走行性の確保のため、1台のモータ10で左右両輪1,1を駆動する場合、特に1台のモータ10で車両を駆動する場合に、より効果的である。
【0013】
この発明において、前記モータ10が、埋め込み磁石形同期モータであっても良い。埋め込み磁石形同期モータは、車両走行用のモータとして各種の優れた性能を有するが、この発明の複数段減速構成とすることで、より効率的に駆動することができる。
【0014】
この発明の電気自動車EVは、この発明の上記いずれか構成の車両用モータ駆動装置Aを搭載したものである。
この構成の電気自動車EVによると、この発明の車両用モータ駆動装置Aの搭載によって、小型のモータ10でもスムーズな加速と高速走行が可能で、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行え、また減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、快適な走行が行える。
【0015】
この発明のハイブリッド自動車HVは、車両の前部に設けられた左右一対の前輪1,1と後部に設けられた左右一対の後輪2,2の一方をエンジンEで駆動し、他方を、この発明の上記いずれかの構成の車両用モータ駆動装置Aで駆動する。
この構成のハイブリッド自動車HVによると、この発明の車両用モータ駆動装置Aの搭載により、モータ走行時に、小型のモータ10でもスムーズな加速と高速走行が可能で、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行え、また減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることなく、快適な走行が行える。
【発明の効果】
【0016】
この発明の車両用モータ駆動装置は、電動式のモータと、このモータと車輪との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列を有していてこれら複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機とを備えた車両用モータ駆動装置であって、前記モータの出力特性によって定まる、前記各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度までは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部となり、前記トルク低下開始速度から最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部となり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部となり、前記各ギヤ列は、前記減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有するため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【0017】
この発明の電気自動車およびハイブリッド自動車は、この発明の車両用モータ駆動装置を搭載しているため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることがなく、小型のモータでもスムーズな加速と高速走行が可能で、快適な走行が行え、かつ最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態に係る車両用モータ駆動装置を概念構成を示す説明図、(B)の(a)〜(c)は、その各ギヤ列およびこれらギヤ列を組み合わせた出力の回転速度と出力トルクの関係を示す説明図である。
【図2】同回転速度と出力トルクの関係および高効率域を示す説明図である。
【図3】減速比固定の車両用モータ駆動装置と実施形態の車両用モータ駆動装置との外形の大きさを比較する説明図である。
【図4】(イ)は、同車両用モータ駆動装置を採用した電気自動車の概略図、(ロ)は、上記車両用モータ駆動装置を採用したハイブリッド車の概略図
【図5】同実施形態に係る車両用モータ駆動装置の断面図
【図6】図5の変速機の要部を拡大して示す断面図
【図7】図6のVII −VII 線に沿った断面図
【図8】図6のVIII−VIII 線に沿った断面図
【図9】変速比切換機構を示す断面図
【図10】図6のX−X線に沿った断面図
【図11】図9の一部を拡大して示す断面図
【図12】変速切換状態を示す断面図
【図13】2ウェイローラクラッチの内輪、保持器、スイッチばねおよび変速比切換機構の弾性部材、ワッシャ、摩擦板のそれぞれを示す分解斜視図である。
【図14】同車両用モータ駆動装置におけるモータの一例の断面図である。
【図15】提案例に係る2段切り換えの減速機における出力回転速度と出力トルクの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1に示すように、この車両用モータ駆動装置Aは、電動式のモータ10と、このモータ10と車輪1,1との間のトルク伝達系に介在した減速機20とを備える。減速機20は、それぞれ固定減速比である減速比小側と減速比大側の2つのギヤ列23,24を有し、これら2つのギヤ列23,24の間でトルク伝達経路を変速比切換機構50で切り換え可能とされている。変速比切換機構50は、後述のクラッチの係合、解除によって切換えを行う形式のものである。減速機20の出力は、ディファレンシャル80により車両の左右の車輪1,1に分配して伝達される。モータ10は、同期形のモータ、例えば埋め込み磁石形同期モータである。
【0020】
図1(B)の(a),(b)に、前記減速比小側および減速比大側の各ギヤ列24,23における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線L2,L1をそれぞれ示す。この駆動力曲線L1,L2は、モータ10の出力特性と減速比によって定まるが、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度V1a,V2aまでは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部L1a,L2aとなり、前記トルク低下開始速度V1a,V2aから最大回転速度までは回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部L1b,L2bとなり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって回転速度一定となる速度一定曲線部L1c,L2cとなる。
【0021】
前記2つのギヤ列23,24は、図1(B)の(c)に示すように、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、前記トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するように、互いの減速比の関係に設定される。すなわち、両駆動力曲線L1,L2が重なり部分Lbaを持って連続するように設定される。重なり部分Lbaの長さは、零未満でなければ良く、適宜設計される。
【0022】
この構成によると、減速機20を2段切換え可能としたため、小型のモータ10でも急加速,高速走行が可能となり、小型軽量な車両用モータ駆動装置Aとなる。例えば、図3に概念的に示すように、同図(A)のように減速比固定の減速機20Aを用いた場合に比べ、2段変速の場合は減速機20が大きくなるが、モータ10が小型化されて、このモータ小型化の影響の方が、減速機大型化よりも影響が強く、車両用モータ駆動装置Aの全体としては小型軽量化される。
また、この実施形態では、減速機20は、減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有するものとしたため、減速比の切り換え時に急激なトルク変動が生じることない。そのため、小型のモータ10でも、低速域から高速域までスムーズな加速が可能となり、快適な走行が行える。
【0023】
しかも、出力回転速度と出力トルクの関係において、高効率域が拡大し、最適なギヤ選択により高効率のモータ駆動が行える。例えば、図2(a),(b)に2段の各ギヤ列23,24おける高効率域Hを斜線部で示すが、両ギヤ列23,24を切り換える2段切り換えとした場合、同図(c)に示すように、高効率域Hが拡大することになる。
このように、適切な2段切り換えとすることで、高速走行域の拡大、低速域での駆動力(トルク)増が得られると共に、高効率域Hが拡大し、それだけ高効率域Hで運転される確率も増えて、低電力使用量で走行できる。
【0024】
また、この実施形態では、2つのギヤ列23,24の間でのトルク伝達経路を切り換えを、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構50で行うようにしているが、このようなクラッチ使用の変速比切換機構50を用いた場合に、前記減速比大側のギヤ列23の駆動力曲線L1と、減速比小側のギヤ列24の駆動力曲線L2が、トルク漸減曲線部L1b,L2bで重なり部分Lbaを持って連続する減速比を有することによる効果が、より効果的となる。
【0025】
また、減速機20の出力はディファレンシャル80を介して車両の左右の車輪1,1に分配して伝達されるが、減速比の切換えに対する安定した走行性の確保のため、1台のモータで左右両輪を駆動する場合、特に1台のモータで車両を駆動する場合に、この実施形態の2段切り換えの車両用モータ駆動装置Aが効果的である。
【0026】
モータ10は、任意の形式のもので良いが、埋め込み磁石形同期モータが、車両走行用として種々の面で優れている。埋め込み磁石形同期モータを用いた場合に、この実施形態の形式の2段減速構成の車両用モータ駆動装置Aの上記効果が、より一層効率的に発揮される。
【0027】
次にこの車両用モータ駆動装置を搭載した自動車の例、および減速機等の具体的な構成例を、図4ないし図14と共に説明する。
図4(A)は、この実施形態に係る車両用モータ駆動装置Aによって、左右一対の前輪である車輪1を駆動するようにした電気自動車EVを示す。図4(B)は、エンジンEによって左右一対の駆動輪としての前輪である車輪1を駆動し、上記モータ駆動装置Aによって左右一対の補助駆動輪としての後輪である車輪2を駆動するハイブリッド車HVを示し、上記エンジンEの回転を、トランスミッションT、およびディファレンシャルDを介して前輪である車輪1に伝達するようにしている。
【0028】
図5に示すように、車両用モータ駆動装置Aは、電動式のモータ10と、そのモータ10の出力軸11の回転を変速する減速機20と、その減速機20から出力される動力を、図4(A)に示す電気自動車EVの左右一対の前輪1に分配し、または、図4(B)に示すハイブリッド車HVの左右一対の後輪2に分配するディファレンシャル80とを有している。
【0029】
減速機20は、2段切り換えの変速機であり、第1シャフト21と第2シャフト22間に、それぞれ固定減速比の第1減速ギヤ列23と第2減速ギヤ列24を設けた常時噛合い式減速機からなる。
【0030】
第1シャフト21および第2シャフト22は、ハウジング25内に組込まれた対向一対の軸受26により回転自在に支持されて平行の配置とされ、上記第1シャフト21がモータ10の出力軸11に接続されている。
【0031】
第1減速ギヤ列23は、第1シャフト21に第1入力ギヤ23aを設け、その第1入力ギヤ23aに噛合する第1出力ギヤ23bを第2シャフト22を中心にして回転自在としている。
【0032】
第2減速ギヤ列24は、第1シャフト21に第2入力ギヤ24aを設け、その第2入力ギヤ24aに噛合する第2出力ギヤ24bを第2シャフト22を中心にして回転自在としており、その第2減速ギヤ列24の減速比は第1減速ギヤ列23の減速比より小さくなっている。
【0033】
図6ないし図8に示すように、第1出力ギヤ23bと第2シャフト22との間には、その第1出力ギヤ23bと第2シャフト22とを締結、解除する第1の2ウェイローラクラッチ30Aが組込まれている。また、第2出力ギヤ24bと第2シャフト22間には、その第2出力ギヤ24bと第2シャフト22を締結、解除する第2の2ウェイローラクラッチ30Bが組込まれている。
【0034】
第1の2ウェイローラクラッチ30Aと、第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、同一の構成であって左右対称の向きとされているため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを以下に説明し、第2の2ウェイローラクラッチ30Bについては、同一の部品に同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
第1の2ウェイローラクラッチ30は、第2シャフト22に内輪31を、スプライン32による嵌合として回り止めし、その内輪31の外周に第1出力ギヤ23bの内周に形成された円筒面33との間で周方向の両端が狭小のくさび形空間を形成する複数の平坦なカム面34を周方向に等間隔に設け、各カム面34と円筒面33間にローラ35を組込み、そのローラ35を第1出力ギヤ23bと内輪31間に組込まれた保持器36で保持している。
【0036】
内輪31の軸方向の一端面に円形の凹部37を形成し、その凹部37内にスイッチばね38の円形部38aを嵌合し、その円形部38aの両端から外向きに設けられた一対の押圧片38bを、凹部37の外周壁に形成された切欠き39から保持器36の一端面に形成された切欠部40に挿入し、その一対の押圧片38bで切欠き39および切欠部40の周方向で対向する端面を相反する方向に押圧して、ローラ35が円筒面33およびカム面34に対して係合解除する中立位置に保持器36を弾性保持している。
【0037】
第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた内輪31と第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた内輪31は、その対向部間に組込まれた回転部材としての間座41と、第2シャフト22に嵌合された一対のストッパリング44により両側から挟持されて軸方向に非可動の支持とされている。また、間座41は対向一対の内輪31のそれぞれと一体に回転するようになっている。
【0038】
一対の内輪31には、ストッパリング44と対向する外端部に円筒形の軸受嵌合面42が形成され、その軸受嵌合面42に嵌合された軸受43によって、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが内輪31に対して回転自在に支持されている。
【0039】
第1の2ウェイローラクラッチ30Aと第2の2ウェイローラクラッチ30Bは、図9に示す変速比切換機構50によって係合、解除が制御される。
【0040】
変速比切換機構50は、間座41の外周に軸方向に移動可能な制御リング51を嵌合して回転自在に支持し、その制御リング51の両側に配置された一対の摩擦板52a、52bの一方を第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、かつ、他方を第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60により第1出力ギヤ23bに向けて移動させ、その第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる摩擦板52aの摩擦係合により保持器36を第1出力ギヤ23bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
【0041】
シフト機構60により制御リング51を第2出力ギヤ24bに向けて移動させ、その第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられる摩擦板52bの摩擦係合により保持器36を第2出力ギヤ24bに連結して、その保持器36と内輪31の相対回転により、ローラ35を円筒面33およびカム面34に係合させるようにしている。
【0042】
一対の摩擦板52a、52bは環状をなし、その内径面に形成されたL形の係合片53を保持器36に形成された前記切欠部40に係合して、摩擦板52a、52bのそれぞれを保持器36に回り止めしている。また、係合片53と内輪31の対向面間にワッシャ54と弾性部材55とを組込み、その弾性部材55によって摩擦板52a、52bのそれぞれを内輪31から離反する係合解除位置に向けて付勢している。
【0043】
係合片53の内端に係合溝57を形成し、一方、間座41の外周には、その係合溝57とで係合手段56を形成する複数の係合突条58を設け、上記摩擦板52a、52bが係合解除位置まで移動した際、係合溝57を係合突条58の一つに係合させて、間座41に一体化された内輪31と保持器36とが相対的に回転するのを防止し、ローラ35を中立位置に保持するようにしている。
【0044】
図9に示すように、シフト機構60は、第2シャフト22に平行に配置されたシフトロッド61をハウジング25に取り付けられた一対の滑り軸受62によりスライド自在に支持し、そのシフトロッド61にシフトフォーク63を取付け、一方、制御リング51の外周に嵌合された転がり軸受64でスリーブ65を回転自在に支持し、かつ、軸方向に非可動に支持し、そのスリーブ65の外周に環状溝66を設け、その環状溝66にシフトフォーク63の先端の二股片63aを嵌合し、上記シフトロッド61をアクチュエータ67により軸方向に移動させて、スリーブ65と共に制御リング51を軸方向に移動させるようにしている。
【0045】
アクチュエータ67として、シフトロッド61に接続されるシリンダやソレノイドを採用することができるが、ここでは、モータ68を採用し、そのモータ68の出力軸69の回転を運動変換機構70によりシフトロッド61の軸方向への移動に変換するようにしている。
【0046】
すなわち、モータ68の出力軸69に設けられた駆動ギヤ71にナット部材としての従動ギヤ72を噛合し、その従動ギヤ72を対向一対の軸受73により回転自在に支持し、その従動ギヤ72の内周に形成された雌ねじ74をシフトロッド61の端部外周に形成された雄ねじ75にねじ係合し、上記従動ギヤ72の定位置での回転により、シフトロッド61を軸方向に移動させるようにしている。
【0047】
図5に示すように、第2シャフト22の軸端部には、その第2シャフト22の回転をディファレンシャルギヤ80に伝達するアウトプットギヤ76が設けられている。
【0048】
ディファレンシャル80は、アウトプットギヤ76に噛合するリングギヤ81をハウジング25によって回転自在に支持されたデフケース82に取付け、上記デフケース82により両端部が回転自在に支持されたピニオン軸83に一対のピニオン84を取付け、その一対のピニオン84のそれぞれに一対のサイドギヤ85を噛合した構成とされ、その一対のサイドギヤ85のそれぞれにアクスル86の軸端部が接続されている。
【0049】
この実施形態で示す車両用モータ駆動装置Aは上記の構造からなり、図6は、一対の摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bから離反する係合解除位置に保持された状態を示し、上記第1出力ギヤ23bの内側に組込まれた第1の2ウェイローラクラッチ30Aおよび第2出力ギヤ24bの内側に組込まれた第2の2ウェイローラクラッチ30Bのそれぞれは、図7に示すように、係合解除状態にある。
【0050】
このため、モータ10が駆動されて第1シャフト21が回転しても、その回転は第1入力ギヤ23aからこれに噛合する第1出力ギヤ23bに伝達され、また、第2入力ギヤ24aからこれに噛合する第2出力ギヤ24bに伝達されるが、第2シャフト22に伝達されず、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bが空転する。
【0051】
第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの空転状態において、2ウェイローラクラッチ30A、30Bの中立状態にあるローラ35には円筒面33との接触により、ドラグトルクが作用して、保持器36を回転させようとする。
【0052】
このとき、保持器36に回り止めされた摩擦板52a、52bのそれぞれは、係合溝57と係合突条58に係合によって内輪31に対して回り止めされているため、保持器36も内輪31に対して回り止めされる状態にある。このため、ローラ35に作用するドラグトルクによって、内輪31と保持器36とが相対回転するようなことはなく、第1、第2の2ウェイローラクラッチ30A、30Bが誤係合するという不都合の発生はない。
【0053】
モータ10の駆動によって第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bのそれぞれが空転する状態において、図9に示すモータ68の駆動によりシフトロッド61を同図の右方向に移動させると、シフトフォーク63によってスリーブ65および制御リング51がシフトロッド61と同方向に移動され、その制御リング51により、摩擦板52aが第1出力ギヤ23bの側面に押し付けられる。
【0054】
このとき、摩擦板52aの係合溝57と間座41の係合突条58の係合が解除し、また、摩擦板52aは、第1出力ギヤ23bの側面に摩擦係合するため、保持器36は第1出力ギヤ23bに連結される状態になる。
【0055】
このため、第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第1出力ギヤ23bの回転は、第1の2ウェイローラクラッチ30Aを介して第2シャフト22に直ちに伝達される。また、第2シャフト22の回転はディファレンシャルギヤ80を介してアクスル86に伝達される。
【0056】
その結果、図4(A)に示す電気自動車EVにおいては、前輪1が回転することになり、その電気自動車EVを走行させることができると共に、図4(B)に示すハイブリッド車HVにおいては、補助駆動輪としての後輪2が回転し、前輪1の駆動をアシストすることになる。
【0057】
ここで、内輪31と保持器36が相対回転すると、スイッチばね38が弾性変形する。そのため、モータ68を上記の逆方向に回転し、シフトロッド61を上記の逆の方向に移動(図9の左方向)させて、制御リング51を第1出力ギヤ23bから離反する方向に移動させると、摩擦板52aは弾性部材55の復元弾性により、第1出力ギヤ23bから離反し、同時にスイッチばね38の復元弾性により、保持器36が復帰回動され、ローラ35は中立位置に戻されることになり、第1シャフト21から第2シャフト22への回転伝達が直ちに遮断されることになる。
【0058】
シフトロッド61を同方向(図9の左方向)にさらに移動させると、制御リング51の押圧により、摩擦板52bが第2出力ギヤ24bの側面に押し付けられて摩擦係合する。
【0059】
このため、第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36が内輪31に対して相対回転し、ローラ35が円筒面33およびカム面34に係合し、第2出力ギヤ24bの回転は、第2の2ウェイローラクラッチ30Bを介して第2シャフト22に直ちに伝達されることになり、トルク伝達経路が直ちに切換えられることになる。
【0060】
上記のように、アクチュエータとしてのモータ68を駆動してシフトロッド61を軸方向に移動させることにより、第1の2ウェイローラクラッチ30Aまたは第2の2ウェイローラクラッチ30Bが直ちに係合および係合解除するため、変速の切換えを迅速に行なうことができる。
【0061】
実施の形態で示すように、第1出力ギヤ23bと第2出力ギヤ24b間に制御リング51と2枚の摩擦板52a、52bを組込み、一方の摩擦板52aを第1の2ウェイローラクラッチ30Aの保持器36に回り止めし、他方の摩擦板52bを第2の2ウェイローラクラッチ30Bの保持器36に回り止めし、上記制御リング51をシフト機構60で左右方向にシフトできるようにして、1つの変速比切換機構50によって2組の2ウェイローラクラッチ30A、30Bの係合、解除を制御し得るように構成すると、モータ駆動装置の小型化を図ることができる。
【0062】
ここで、図では省略したが、摩擦板52a、52bと制御リング51の対向面間に転がり軸受を組込んでおくのがよい。その転がり軸受の組込みによって、摩擦板52a、52bと制御リング51との接触部に作用する摩擦抵抗の低減化を図ることができる。このため、摩擦板52a、52bが第1出力ギヤ23b、第2出力ギヤ24bに押し付けられて摩擦係合する係合時に、摩擦板52a、52bを制御リング51に対して円滑に相対回転させることができ、2ウェイローラクラッチ30A,30Bを確実に係合させることができる。
【0063】
実施の形態においては、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周に円筒面33を形成し、各出力ギヤ23b、24bの内側に組込まれた内輪31の外周にカム面34を設けたが、その逆に、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bの内周にカム面を形成し、内輪の外周に円筒面を設けるようにしてもよい。この場合、第1出力ギヤ23bおよび第2出力ギヤ24bと保持器36との間にスイッチばねを組込むようにして、ローラが中立状態となるよう保持器を弾性保持する。
【0064】
図14において、モータ10は、円筒状のモータハウジング172に固定したモータステータ173と、出力軸11に取り付けたモータロータ175との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のIPMモータである。出力軸11は、減速機20のインボード側のハウジングの筒部に2つの軸受で片持ち支持されている。
【0065】
モータステータ173は、軟質磁性体からなるステータコア部177とコイル178とでなる。ステータコア部177は、その外周面がモータハウジング172の内周面に嵌合して、モータハウジング172に保持されている。モータロータ175は、モータステータ173と同心に出力軸11に外嵌するロータコア部179と、このロータコア部179に内蔵される複数の永久磁石180とでなる。永久磁石180はV字状に配置されている。
【0066】
なお、上記実施形態では、減速機20を2段のギヤ列23,24を有する2段切換式のものとしたが、減速機20は、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる3つ以上のギヤ列を有していて、これ3つ以上のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能なものとしても良い。この場合、その3つ以上のギヤ列のうち、減速比が互いに1段異なる各2つのギヤ列間における減速比大側のギヤ列および減速比小側のギヤ列につき、減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有するものとする。
また、上記実施形態では、減速機20の前記複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換える手段を、ローラクラッチ30A、30Bとしたが、この切り換え手段として用いるクラッチは、ドグクラッチ(図示せず)であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1,2…車輪
10…モータ
20…減速機
21…第1シャフト
22…第2シャフト
23…第1減速ギヤ列
24…第2減速ギヤ列
30A…第1の2ウェイローラクラッチ
30B…第2の2ウェイローラクラッチ
50…変速比切換機構
80ディファレンシャル
L,L1,L2…駆動力曲線
L1a,L2a…トルク一定曲線部
L1b,L2b…トルク漸減曲線部
L1c,L2c…速度一定曲線部
Lba…重なり部分
H…高効率域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式のモータと、このモータと車輪との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列を有していてこれら複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機とを備えた車両用モータ駆動装置であって、
前記モータの出力特性によって定まる、前記各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度までは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部となり、前記トルク低下開始速度から最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部となり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部となり、
前記各ギヤ列は、前記減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有する、
ことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記減速機の前記複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換える手段が、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構である車両用モータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、前記クラッチが、ローラクラッチまたはドグクラッチである車両用モータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記減速機の出力を車両の左右の車輪に分配して伝達するディファレンシャルを有する車両用モータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記モータが、埋め込み磁石形同期モータである車両用モータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記車両は走行駆動源として前記モータを1台のみ有する車両用モータ駆動装置。
【請求項7】
車両の左右の車輪が、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用モータ駆動装置で駆動される電気自動車。
【請求項8】
車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪のいずれか一方をエンジンで駆動し、他方の請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用モータ駆動装置で駆動するハイブリッド自動車。
【請求項1】
電動式のモータと、このモータと車輪との間のトルク伝達系に介在し、それぞれ固定減速比であって互いに減速比が異なる複数のギヤ列を有していてこれら複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換え可能な減速機とを備えた車両用モータ駆動装置であって、
前記モータの出力特性によって定まる、前記各ギヤ列における出力回転速度とその出力回転速度で最大に得られる出力トルクとの関係を示す駆動力曲線が、いずれも、出力回転速度が零から或る定まったトルク低下開始速度までは、それぞれのギヤ列出力として最大となる最大トルクが続くトルク一定曲線部となり、前記トルク低下開始速度から最大回転速度までは出力回転速度が速くなるに従って出力トルクが次第に低下するトルク漸減曲線部となり、最大回転速度で出力トルクが最低値となって出力回転速度一定となる速度一定曲線部となり、
前記各ギヤ列は、前記減速比大側のギヤ列の駆動力曲線と、減速比小側のギヤ列の駆動力曲線が、前記トルク漸減曲線部で重なり部分を持って連続する減速比を有する、
ことを特徴とする車両用モータ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記減速機の前記複数のギヤ列の間でトルク伝達経路を切り換える手段が、クラッチの係合、解除によって切換えを行う変速比切換機構である車両用モータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、前記クラッチが、ローラクラッチまたはドグクラッチである車両用モータ駆動装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記減速機の出力を車両の左右の車輪に分配して伝達するディファレンシャルを有する車両用モータ駆動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記モータが、埋め込み磁石形同期モータである車両用モータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記車両は走行駆動源として前記モータを1台のみ有する車両用モータ駆動装置。
【請求項7】
車両の左右の車輪が、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用モータ駆動装置で駆動される電気自動車。
【請求項8】
車両の前部に設けられた左右一対の前輪と後部に設けられた左右一対の後輪のいずれか一方をエンジンで駆動し、他方の請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用モータ駆動装置で駆動するハイブリッド自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−60996(P2013−60996A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199008(P2011−199008)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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