説明

車両用ワイパ装置

【課題】複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアームの往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側に噴射することができる車両用ワイパ装置を提供する。
【解決手段】ワイパブレード21は、ワイパアーム22の先端部に連結され、ワイパアーム22と共に往復回動されて払拭面3aを払拭する。ワイパアーム22には、払拭面3aに向けて洗浄液を噴射するウォッシャノズル42が固定されている。また、ワイパブレード21は、ワイパアーム22の往動時には、ウォッシャノズル42から洗浄液が噴射された場合に洗浄液が着水する払拭面3a上の目標着水点P1をワイパアーム22の回動方向に沿った一方側から他方側へ横切り、ワイパアーム22の復動時には目標着水点P1をワイパアーム22の回動方向に沿った他方側から一方側へ横切るように、ワイパアーム22の回動動作に連動してワイパアーム22に対する払拭姿勢を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドガラスの払拭面の払拭とともに該払拭面へ洗浄液を供給する手段を有する車両用ワイパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウインドガラスの払拭面に付着した汚れをワイパブレードにて払拭する際、ウォッシャ装置の作動により払拭面に洗浄液が供給されるようになっている。例えば、特許文献1に記載されている車両用ワイパ装置では、ワイパブレードの短手方向の両側に、洗浄液が吐出されるウォッシャノズルがそれぞれ設けられている。そして、車両用ワイパの作動時には、車両用ワイパ装置の制御回路は、2つのウォッシャノズルのうちワイパブレードの進行方向前方側に設けられたウォッシャノズルから洗浄液が吐出されるように制御を行う。このように、ワイパブレードの進行方向の前方側に洗浄液を吐出させることにより、車両用ワイパの作動後の洗浄液の拭き残しを低減させて、拭き残った洗浄液によって車両の運転者の運転視界が遮られることを防止している。
【特許文献1】実開昭50−104333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用ワイパ装置では、ワイパブレードの動作状態を検出し、その検出結果に基づいて洗浄液を吐出するウォッシャノズルを切り替えるため、制御回路において複雑な電気制御を行っている。そのため、制御回路の構成が複雑化され、車両用ワイパ装置が高価なものとなってしまう虞があった。
【0004】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアームの往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側に噴射することができる車両用ワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ピボット軸の軸線周りに往復回動されるワイパアームの先端部に連結されたワイパブレードにて払拭面を払拭する車両用ワイパ装置であって、前記ワイパアームには、前記払拭面に向けて洗浄液を噴射するウォッシャノズルが固定され、前記ワイパブレードは、前記ワイパアームの往動時には、前記ウォッシャノズルから前記洗浄液が噴射された場合に前記洗浄液が着水する前記払拭面上の目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ横切り、前記ワイパアームの復動時には前記目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った他方側から一方側へ横切るように、前記ワイパアームの回動動作に連動して前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させることをその要旨としている。
【0006】
同構成によれば、ウォッシャノズルは、ワイパアームに固定されていることから、ワイパアームと共に往復回動される。従って、ウォッシャノズルからの洗浄液の噴射方向は、ワイパアームに対して常に一定の方向となり、目標着水点とワイパアームとの位置関係が常に一定となる。このため、ワイパブレードは、ワイパアームの回動動作に連動して該ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させることにより、ワイパアームの往復回動時に、目標着水点をワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ、また、他方側から一方側へ横切る。そして、ワイパブレードが目標着水点を横切ることにより、ワイパブレードの進行方向前方側にあった目標着水点はワイパブレードの進行方向後方側へ移り、逆に、ワイパブレードの進行方向後方側にあった目標着水点はワイパブレードの進行方向前方側へ移る。従って、ワイパアームの往動時及び復動時の何れの場合においても、洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側へ噴射することができる。これらのことから、ワイパブレードが目標着水点を横切るようにワイパアームに対する該ワイパブレードの払拭姿勢をワイパアームの回動動作に連動して変化させることにより、従来のように洗浄液を噴射するウォッシャノズルを切り替える等の複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアームの往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側に噴射することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、ピボット軸の軸線周りに往復回動されるワイパアームの先端部に連結されたワイパブレードにて払拭面を払拭する車両用ワイパ装置であって、前記ワイパアームには、前記払拭面に向けて洗浄液を噴射するウォッシャノズルが固定され、前記ワイパブレードは、前記ワイパアームの往動時には、前記ウォッシャノズルから前記洗浄液が噴射された場合に前記洗浄液が着水する前記払拭面上の目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ横切り、前記ワイパアームの復動時には前記目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った他方側から一方側へ横切るように、前記ワイパアームの回動動作に連動して前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させるとともに、前記払拭面において車両の運転者の運転視界を最低限確保した領域であるアイポイント領域の外側の外周領域内で前記目標着水点を横切ることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、ウォッシャノズルは、ワイパアームに固定されていることから、ワイパアームと共に往復回動される。従って、ウォッシャノズルからの洗浄液の噴射方向は、ワイパアームに対して常に一定の方向となり、目標着水点とワイパアームとの位置関係が常に一定となる。このため、ワイパブレードは、ワイパアームの回動動作に連動して該ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させることにより、ワイパアームの往復回動時に、目標着水点をワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ、また、他方側から一方側へ横切る。そして、ワイパブレードが目標着水点を横切ることにより、ワイパブレードの進行方向前方側にあった目標着水点はワイパブレードの進行方向後方側へ移り、逆に、ワイパブレードの進行方向後方側にあった目標着水点はワイパブレードの進行方向前方側へ移る。従って、ワイパアームの往動時及び復動時の何れの場合においても、洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側へ噴射することができる。これらのことから、ワイパブレードが目標着水点を横切るようにワイパアームに対する該ワイパブレードの払拭姿勢をワイパアームの回動動作に連動して変化させることにより、従来のように洗浄液を噴射するウォッシャノズルを切り替える等の複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアームの往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側に噴射することができる。また、ワイパブレードは、払拭面において車両の運転者の運転視界を最低限確保した領域であるアイポイント領域の外側の外周領域内で目標着水点を横切るように設定されている。従って、ワイパブレードが目標着水点を横切る際に洗浄液が噴射されたとしても、ワイパブレードに当たって飛散した洗浄液によって運転者の運転視界が遮られることが抑制される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用ワイパ装置において、前記ワイパアームは、その基端部が前記ピボット軸に固定されたメインアームと、前記ピボット軸と異なる位置に配置された従動軸にその基端部が固定されたサブアームとから構成され、前記ワイパブレードは、前記メインアームの先端部及び前記サブアームの先端部がそれぞれ連結された連結部材を介して前記メインアーム及び前記サブアームに対して互いに回動可能に連結されていることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、メインアームがピボット軸の軸線周りに回動されると、それに伴って、ワイパブレードが回動されるとともにサブアームが従動軸の軸線周りに回動される。この時、サブアームの基端部はピボット軸と異なる位置に配置された従動軸に固定されるとともに、メインアーム及びサブアームの先端部はそれぞれ連結部材を介してワイパブレードに対して互い回動可能に連結されているため、サブアームの作用によって、ワイパブレードは、メインアーム及びサブアームに対する払拭姿勢を変化させる。このように、ワイパアームの回動動作に伴って、ワイパアームに対するワイパブレードの払拭姿勢を容易に機械的に変化させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用ワイパ装置において、前記ウォッシャノズルは、前記メインアーム及び前記サブアームのうち、少なくとも前記ワイパアームの往動時における前記ワイパアームの進行方向前方側に配置されたアームに固定され、前記洗浄液を、前記ワイパアームの往動時における前記ワイパアームの進行方向前方側に噴射することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、ワイパアームの往動時において、ウォッシャノズルからの洗浄液の噴射が、メインアーム及びサブアームのうちウォッシャノズルが固定されていない方のアームによって妨げられることが防止される。また、洗浄液は、ワイパアームの往動時におけるワイパアームの進行方向前方側に噴射されるため、ワイパアームが始動されてから直ちに払拭面に洗浄液を供給してワイパブレードによる払拭面の乾拭きを防止するとともに迅速に払拭面の汚れを取り除くことが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用ワイパ装置において、前記ワイパブレードは、車両のウインドガラスの下端に沿った下反転位置から該下反転位置よりも上方の上反転位置に向かって往動されるとともに、前記上反転位置から前記下反転位置に向かって復動され、前記ワイパアームの往動時及び復動時の各動作時には、前記目標着水点を前記ワイパアームの進行方向後方側から前方側に向かって横切るように前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させ、前記払拭面において車両の運転者の運転視界を最低限確保した領域であり前記下反転位置と前記上反転位置との間に位置するアイポイント領域よりも前記下反転位置側で前記目標着水点を横切ることをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、ワイパアームの復動時において、ワイパブレードが目標着水点をワイパブレードの進行方向前方側から後方側へ横切るまでの間は、洗浄液は、ワイパブレードの進行方向前方側に噴射される。そして、ワイパブレードは、アイポイント領域よりも下反転位置側で目標着水点を横切る。従って、何れのタイミングで洗浄液が噴射された場合であっても、ワイパアームが一往復された後にアイポイント領域内に洗浄液の拭き残しが生じることを抑制することができる。その結果、洗浄液によって運転者の運転視界が遮られることがより抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアームの往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレードの進行方向前方側に噴射可能な車両用ワイパ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用ワイパ装置1は、車両2のフロントガラス3における車室外側の面である払拭面3aを払拭するためのものである。図2に示すように、車両用ワイパ装置1は、車両用ワイパ11と、ワイパ駆動機構12と、ワイパモータ13と、ECU(電子制御装置)14とを備えている。
【0017】
車両用ワイパ11は、ワイパアーム22と、該ワイパアーム22の先端に連結される長尺状のワイパブレード21とから構成されている。ワイパアーム22は、棒状のメインアーム23及びサブアーム24とから構成されるとともに、連結部材25を介してワイパブレード21に連結されている。連結部材25は、ワイパブレード21の長手方向の中央部に固定される固定部25aと、該固定部25aからワイパブレード21の短手方向の両側にそれぞれ突出した連結部25b,25cとから構成されている。そして、一方の連結部25bにメインアーム23の先端部が互いに回動可能に連結されるとともに、他方の連結部25cにサブアーム24の先端部が互いに回動可能に連結されている。また、メインアーム23の基端部は、ピボット軸26の先端部に一体回転可能に固定されるとともに、サブアーム24の基端部は、ピボット軸26と異なる位置に配置された従動軸27に一体回転可能に固定されている。本実施形態では、従動軸27は、ピボット軸26と平行をなすように配置され、ピボット軸26の軸線L1と従動軸27の軸線L2とは平行をなしている。図2においては、軸線L1,L2は、紙面垂直方向に延びている。また、従動軸27は、図示しない軸受等により軸支されている。そして、メインアーム23はピボット軸26と共に該ピボット軸26の軸線L1周りに回動可能であるとともに、サブアーム24は、従動軸27と共に該従動軸27の軸線L1周りに回動可能となっている。
【0018】
また、ピボット軸26には、レバー31の基端部が一体回動可能に固定されるとともに、レバー31の先端部は、棒状のリンクロッド32先端部に互いに回転可能に連結されている。更に、リンクロッド32の基端部は、ワイパモータ13の出力軸33に固定されたクランクアーム34の先端部に互いに回転可能に連結されている。尚、本実施形態では、前記ワイパ駆動機構12は、ピボット軸26、レバー31、リンクロッド32及びクランクアーム34から構成されている。
【0019】
前記ワイパモータ13は、該ワイパモータ13の出力軸33を中心としてクランクアーム34を往復回転させる。このクランクアーム34の回転によりリンクロッド32を介してレバー31が往復回動され、ピボット軸26が往復回動される。そして、ピボット軸26の回動に伴ってメインアーム23が往復回動し、ワイパブレード21が所定の払拭角度で往復回動され、該ワイパブレード21によってフロントガラス3の払拭面3aにおける所定の範囲が払拭される。
【0020】
図3に示すように、ワイパブレード21は、ワイパモータ13(図2参照)が停止状態にあるときには格納位置T1に配置されている。この格納位置T1は、ワイパブレード21がフロントガラス3の下端に沿うように配置される位置である。また、ワイパモータ13(図2参照)が駆動されると、ワイパブレード21は、下反転位置T2と上反転位置T3との間で往復回動される。下反転位置T2は、格納位置T1よりもやや上方となる位置でフロントガラス3の下端に沿うようにワイパブレード21が配置される位置であり、上反転位置T3は、ワイパブレード21の長手方向がフロントガラス3の上下方向に沿うように該ワイパブレード21が配置される位置である。そして、本実施形態では、ワイパモータ13(図2参照)が駆動され始めた直後にワイパアーム22が進む方向の動作を往動とし、ワイパモータ13が駆動され始めて最初に反転した後にワイパアーム22が進む方向の動作を復動とする。従って、下反転位置T2から上反転位置T3までワイパブレード21を回動させる際のワイパアーム22の動作が往動であり、上反転位置T3から下反転位置T2までワイパブレード21を回動させる際のワイパアーム22の動作が復動となる。
【0021】
また、払拭面3aにおいて、下反転位置T2と上反転位置T3との間でワイパブレード21にて払拭される範囲には、アイポイント領域A1が含まれている。アイポイント領域A1は、払拭面3aにおいて車両2の運転者の運転視界に基づいて設定されるものであり、払拭面3aにおいて車両2の運転者の運転視界を最低限確保した領域である。このアイポイント領域A1は、車両2に備えられる車両用ワイパ11のワイパブレード21にて99%〜100%払拭される領域であり、例えば、SAE(Society of Automotive Engineers )規格に定められている「C払拭範囲」に準ずる領域である。また、払拭面3aにおいてアイポイント領域A1の外側の領域を外周領域A2とする。
【0022】
図2に示すように、前記メインアーム23には、その下面に、車体側のウォッシャポンプ(図示略)から延びる車体側ホース41が設けられている。この車体側ホース41の先端部に取着されたウォッシャノズル42は、メインアーム23において、車両用ワイパ11の往動時における進行方向前方側の側面に突出形成されたノズル保持部23aにて保持されている。そして、ウォッシャポンプから供給される洗浄液は、車体側ホース41を通ってウォッシャノズル42から払拭面3aに向けてワイパアーム22の往動時の進行方向前方側に噴射される。尚、噴射された洗浄液が払拭面3a上に着水する位置を目標着水点P1とすると、ウォッシャノズル42は、ノズル保持部23aによりメインアーム23に固定されているため、ウォッシャノズル42からの洗浄液の噴射方向は、メインアーム23に対して常に一定の方向となり、目標着水点P1とワイパアーム22との位置関係が常に一定となる。また、本実施形態では、目標着水点P1は、メインアーム23における車両用ワイパ11の往動時の進行方向前方側で、メインアーム23の先端とノズル保持部23aとの間となる位置に設定されている。更に、目標着水点P1は、払拭面3a上において、ワイパブレード21が通過する部分、即ちワイパブレード21にて払拭される範囲内に設定されている。
【0023】
前記ECU14には、車両室内に設けられ車両2の運転者によって操作されるワイパスイッチ51が電気的に接続されるとともに、車両2のバッテリ52から電力が供給される。尚、ワイパスイッチ51内には、払拭面3aに洗浄液を噴射するために運転者によって操作されるウォッシャスイッチ(図示略)が設けられている。そして、ECU14は、ワイパスイッチ51から入力される信号に応じて、車両用ワイパ11を作動させるための各種制御を行う。
【0024】
ここで、上記のように構成された車両用ワイパ装置1においては、メインアーム23はピボット軸26の軸線L1周りに回動するように構成されるとともに、サブアーム24はメインアーム23の回動に従動して従動軸27の軸線L2周りに回動するように構成されている。更に、メインアーム23の先端部及びサブアーム24の先端部は互いに間隔を空けて連結部材25に対して連結されている。そのため、ワイパモータ13の駆動力によりメインアーム23が回動されると、図3に示すように、メインアーム23及びサブアーム24の回動動作に伴って、ワイパブレード21は、メインアーム23(若しくはサブアーム24)と該ワイパブレード21とがなす角度(払拭面方向の角度)を変化させるように、メインアーム23及びサブアーム24に対する払拭姿勢を変化させる。そして、ワイパブレード21は、メインアーム及びサブアーム24に対する払拭姿勢を変化させることにより、下反転位置T2から上反転位置T3まで往動する間、及び上反転位置T3から下反転位置T2まで復動する間に、それぞれ洗浄液の目標着水点P1を横切る。
【0025】
車両用ワイパ11の作動中にワイパブレード21が目標着水点P1を横切る位置を通過位置T4とすると、この通過位置T4は、前記外周領域A2内において前記アイポイント領域A1よりも下反転位置T2側となる位置に設定されている。そして、車両用ワイパ装置1においては、ワイパブレード21が所望の通過位置T4にて目標着水点P1を横切るように、ピボット軸26と従動軸27との位置関係、メインアーム23及びサブアーム24の長さ、連結部材25におけるメインアーム23及びサブアーム24の連結位置等、メインアーム23の回動位置に応じてメインアーム23に対する払拭姿勢を変化させるワイパブレード21の軌跡に関連するパラメータの設定を行っている。また、アイポイント領域A1、メインアーム23に対するウォッシャノズル42の固定位置、及びウォッシャノズル42からの洗浄液の噴射方向等についても、ワイパブレード21が所望の通過位置T4にて目標着水点P1を横切るように考慮して設定されている。
【0026】
次に、上記のように構成された車両用ワイパ装置1の動作を説明する。
車両用ワイパ11は、その停止状態では、格納位置T1に配置されている。そして、車両用ワイパ11を作動すべく車両2の運転者によってワイパスイッチ51が操作されると、ECU14は、ワイパスイッチ51から入力される信号に基づいて、車両用ワイパ11を作動させるべくワイパモータ13を駆動する。ワイパモータ13が駆動されることにより、ワイパ駆動機構12を介してメインアーム23がピボット軸26の軸線L1周りに往復回動され、このメインアーム23の往復回動に伴って、ワイパブレード21が下反転位置T2と上反転位置T3との間で往復回動されると共にサブアーム24が従動軸27の軸線周りに往復回動される。そして、往復回動されるワイパブレード21によって、払拭面3aにおける所定の範囲が払拭される。
【0027】
また、払拭面3aに洗浄液を供給すべく運転者によってワイパスイッチ51内のウォッシャスイッチ(図示略)が操作されると、ECU14は、ウォッシャポンプを作動させる。ウォッシャポンプが作動されると、ウォッシャポンプにてタンクから組みあげられた洗浄液が車体側ホース41からウォッシャノズル42に圧送されるとともに、洗浄液は、ウォッシャノズル42から目標着水点P1に向けて噴射される。そして、ウォッシャポンプの作動に連動して車両用ワイパ11が作動され、ワイパブレード21が下反転位置T2及び上反転位置T3間を往復回動する。
【0028】
この時、メインアーム23及びサブアーム24は異なる軸の軸線周りに回動されるため、これらアーム23,24の先端部に連結部材25を介して連結されたワイパブレード21は、メインアーム23及びサブアーム24に対する払拭姿勢を変化させる。そして、ワイパブレード21は、メインアーム23及びサブアーム24の回動動作に応じてメインアーム23及びサブアーム24に対する払拭姿勢を変化させることにより、その往動時及び復動時の各動作時に1回ずつ、ワイパアーム22の回動とともに移動する洗浄液の目標着水点P1を通過位置T4にて横切る。詳述すると、ウォッシャノズル42は、ワイパアーム22の往動時の該ワイパアーム22の進行方向前方側に洗浄液を噴射するため、目標着水点P1は、ウォッシャノズル42が固定されたメインアーム23の往動時の進行方向前方側に位置する。従って、ワイパアーム22の往動時には、ワイパブレード21は、ワイパアーム22の往動時の進行方向後方側から前方側に向かって目標着水点P1を横切る。一方、ワイパアーム22の復動時には、ワイパブレード21は、ワイパアーム22の復動時の進行方向の後方側から前方側に向かって(即ちワイパアーム22の往動時の進行方向前方側から後方側に向かって)目標着水点P1を横切る。従って、ワイパアーム22の往動時には、ワイパブレード21が下反転位置T2から通過位置T4まで回動する間は、ワイパブレード21の進行方向前方側に洗浄液が噴射される。一方、ワイパアーム22の復動時には、ワイパブレード21が上反転位置T3から通過位置T4まで回動する間は、ワイパブレード21の進行方向前方側に洗浄液が噴射される。その結果、車両用ワイパ11の作動中においてどのタイミングで洗浄液が噴射されても、ワイパアーム22が一往復された後には、払拭面3aにおいて下反転位置T2と上反転位置T3との間でワイパブレード21にて払拭される範囲のうち、通過位置T4と下反転位置T2との間の範囲にしか洗浄液は残らない。
【0029】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)ウォッシャノズル42は、ワイパアーム22を構成するメインアーム23に固定されていることから、ワイパアーム22と共に往復回動される。従って、ウォッシャノズル42からの洗浄液の噴射方向は、ワイパアーム22に対して常に一定の方向となり、目標着水点P1とワイパアーム22との位置関係が常に一定となる。このため、ワイパブレード21は、ワイパアーム22の回動動作に連動して該ワイパアーム22に対する払拭姿勢を変化させることにより、ワイパアーム22の往動時及び復動時の各動作時に1回ずつ、ワイパアーム22の回動とともに移動する目標着水点P1をワイパアーム22の進行方向後方側から前方側へ横切る。そして、ワイパブレード21が目標着水点P1を横切ることにより、ワイパブレード21の進行方向前方側にあった目標着水点P1はワイパブレード21の進行方向後方側へ移り、逆に、ワイパブレード21の進行方向後方側にあった目標着水点P1はワイパブレード21の進行方向前方側へ移る。従って、ワイパアーム22の往動時及び復動時の何れの場合においても、洗浄液をワイパブレード21の進行方向前方側へ噴射することができる。これらのことから、ワイパブレード21が目標着水点P1を横切るようにワイパアーム22に対する該ワイパブレード21の払拭姿勢をワイパアーム22の回動動作に連動して機械的に変化させることにより、従来のように洗浄液を噴射するウォッシャノズルを切り替える等の複雑な電気制御を行わなくとも、ワイパアーム22の往動時及び復動時に洗浄液をワイパブレード21の進行方向前方側に噴射することができる。その結果、洗浄液の拭き残しを低減させることができる。
【0030】
(2)ワイパブレード21は、払拭面3aにおいて車両2の運転者の運転視界を最低限確保した領域であるアイポイント領域A1の外側の外周領域A2内で目標着水点P1を横切る。従って、ワイパブレード21が目標着水点P1を横切る際に洗浄液が噴射されたとしても、ワイパブレード21に当たって飛散した洗浄液によって運転者の運転視界が遮られることが抑制される。
【0031】
(3)22ワイパアームは、その基端部がピボット軸26に固定されたメインアーム23と、ピボット軸26と異なる位置に配置された従動軸27にその基端部が固定されたサブアーム24とから構成されている。また、ワイパブレード21は、メインアーム23の先端部及びサブアーム24の先端部がそれぞれ連結された連結部材25を介してメインアーム23及びサブアーム24に対して互いに回動可能に連結されている。そのため、メインアーム23がピボット軸26の軸線L1周りに回動されると、それに伴って、ワイパブレード21が回動されるとともにサブアーム24が従動軸27の軸線L2周りに回動される。この時、サブアーム24の基端部はピボット軸26と異なる位置に配置された従動軸27に固定されるとともに、メインアーム23及びサブアーム24の先端部はそれぞれ連結部材25を介してワイパブレード21に対して互い回動可能に連結されているため、サブアーム24の作用によって、ワイパブレード21は、メインアーム23及びサブアーム24に対する払拭姿勢を変化させる。このように、ワイパアーム22の回動動作に伴って、ワイパアーム22に対するワイパブレード21の払拭姿勢を容易に機械的に変化させることができる。
【0032】
(4)ウォッシャノズル42は、メインアーム23及びサブアーム24のうち、ワイパアーム22の往動時におけるワイパアーム22の進行方向前方側に配置されたメインアーム23に固定され、洗浄液を、ワイパアーム22の往動時におけるワイパアーム22の進行方向前方側に噴射する。従って、ワイパアーム22の往動時において、ウォッシャノズル42からの洗浄液の噴射が、メインアーム23及びサブアーム24のうちウォッシャノズル42が固定されていない方のサブアーム24によって妨げられることが防止される。また、洗浄液は、ワイパアーム22の往動時におけるワイパアーム22の進行方向前方側に噴射されるため、ワイパアーム22が始動されてから直ちに払拭面3aに洗浄液を供給してワイパブレード21による払拭面3aの乾拭きを防止するとともに迅速に払拭面3aの汚れを取り除くことが可能となる。
【0033】
(5)ワイパアーム22の復動時において、ワイパブレード21が目標着水点P1をワイパブレード21の進行方向前方側から後方側へ横切るまでの間は、洗浄液は、ワイパブレード21の進行方向前方側に噴射される。そして、ワイパブレード21は、アイポイント領域A1よりも下反転位置側で目標着水点P1を横切る。従って、何れのタイミングで洗浄液が噴射された場合であっても、ワイパアーム22が一往復された後にアイポイント領域A1内に洗浄液の拭き残しが生じることを抑制することができる。その結果、洗浄液によって運転者の運転視界が遮られることがより抑制される。
【0034】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ワイパブレード21が目標着水点P1を横切る通過位置T4は、外周領域A2内においてアイポイント領域A1よりも下反転位置T2側となる位置に設定されている。しかしながら、通過位置T4は、下反転位置T2と上反転位置T3との間であれば、何れの位置に設定されてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、ウォッシャノズル42は、メインアーム23に固定されているが、サブアーム24に固定されてもよい。また、ウォッシャノズル42から噴射される洗浄液は、ワイパアーム22の往動時の進行方向前方側に限らず、進行方向後方側に向けて噴射されてもよい。
【0036】
・上記実施形態では、ワイパアーム22は、メインアーム23及びサブアーム24の2本のアームから構成されている。しかしながら、ワイパアーム22を構成するアームの数は、ワイパアーム22の回動動作に連動して該ワイパアーム22に対するワイパブレード21の払拭姿勢が変化されるように構成されるのであれば、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0037】
・上記実施形態では、ワイパモータ13が停止状態にあるとき、ワイパブレード21は、フロントガラス3の下端に沿った格納位置T1に配置される。しかしながら、ワイパモータ13が停止状態にあるとき、フロントガラス3の左右方向の端部(例えば、車両のAピラー等)に沿った格納位置にワイパブレード21が配置される構成としてもよい。この場合、上反転位置T3から下反転位置T2までワイパブレード21を回動させる際のワイパアーム22の動作が往動であり、下反転位置T2から上反転位置T3までワイパブレード21を回動させる際のワイパアーム22の動作が復動となる。
【0038】
・上記実施形態では、車両2のフロントガラス3の払拭面3aを払拭する車両用ワイパ装置1を例に本発明を詳述した。しかしながら、車両の後部に設けられたリヤガラスの車室外側の面である払拭面を払拭する車両用ワイパ装置において、ワイパアーム22の回動動作に伴ってワイパブレード21がワイパアーム22に対する払拭姿勢を変化させることにより、該ワイパブレード21が目標着水点P1を横切るように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】車両用ワイパ装置を備えた車両の斜視図。
【図2】車両用ワイパ装置の概略構成図。
【図3】車両用ワイパの動作を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0040】
1…車両用ワイパ装置、2…車両、3…ウインドガラスとしてのフロントガラス、3a…払拭面、21…ワイパブレード、22…ワイパアーム、23…メインアーム、24…サブアーム、25…連結部材、26…ピボット軸、27…従動軸、42…ウォッシャノズル、A1…アイポイント領域、A2…外周領域、L1…ピボット軸の軸線、P1…目標着水点、T2…下反転位置、T3…上反転位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピボット軸の軸線周りに往復回動されるワイパアームの先端部に連結されたワイパブレードにて払拭面を払拭する車両用ワイパ装置であって、
前記ワイパアームには、前記払拭面に向けて洗浄液を噴射するウォッシャノズルが固定され、
前記ワイパブレードは、前記ワイパアームの往動時には、前記ウォッシャノズルから前記洗浄液が噴射された場合に前記洗浄液が着水する前記払拭面上の目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ横切り、前記ワイパアームの復動時には前記目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った他方側から一方側へ横切るように、前記ワイパアームの回動動作に連動して前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させることを特徴とする車両用ワイパ装置。
【請求項2】
ピボット軸の軸線周りに往復回動されるワイパアームの先端部に連結されたワイパブレードにて払拭面を払拭する車両用ワイパ装置であって、
前記ワイパアームには、前記払拭面に向けて洗浄液を噴射するウォッシャノズルが固定され、
前記ワイパブレードは、前記ワイパアームの往動時には、前記ウォッシャノズルから前記洗浄液が噴射された場合に前記洗浄液が着水する前記払拭面上の目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った一方側から他方側へ横切り、前記ワイパアームの復動時には前記目標着水点を前記ワイパアームの回動方向に沿った他方側から一方側へ横切るように、前記ワイパアームの回動動作に連動して前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させるとともに、前記払拭面において車両の運転者の運転視界を最低限確保した領域であるアイポイント領域の外側の外周領域内で前記目標着水点を横切ることを特徴とする車両用ワイパ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ワイパ装置において、
前記ワイパアームは、その基端部が前記ピボット軸に固定されたメインアームと、前記ピボット軸と異なる位置に配置された従動軸にその基端部が固定されたサブアームとから構成され、
前記ワイパブレードは、前記メインアームの先端部及び前記サブアームの先端部がそれぞれ連結された連結部材を介して前記メインアーム及び前記サブアームに対して互いに回動可能に連結されていることを特徴とする車両用ワイパ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ワイパ装置において、
前記ウォッシャノズルは、前記メインアーム及び前記サブアームのうち、少なくとも前記ワイパアームの往動時における前記ワイパアームの進行方向前方側に配置されたアームに固定され、前記洗浄液を、前記ワイパアームの往動時における前記ワイパアームの進行方向前方側に噴射することを特徴とする車両用ワイパ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用ワイパ装置において、
前記ワイパブレードは、車両のウインドガラスの下端に沿った下反転位置から該下反転位置よりも上方の上反転位置に向かって往動されるとともに、前記上反転位置から前記下反転位置に向かって復動され、前記ワイパアームの往動時及び復動時の各動作時には、前記目標着水点を前記ワイパアームの進行方向後方側から前方側に向かって横切るように前記ワイパアームに対する払拭姿勢を変化させ、前記払拭面において車両の運転者の運転視界を最低限確保した領域であり前記下反転位置と前記上反転位置との間に位置するアイポイント領域よりも前記下反転位置側で前記目標着水点を横切ることを特徴とする車両用ワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−168808(P2008−168808A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4509(P2007−4509)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】