車両用ワイヤハーネス及び車両の配線方法
【課題】複数の電子ユニットに設けられたユニット側コネクタとハーネス側コネクタとを効率良くしかも高い信頼性をもって結合する。
【解決手段】ワイヤハーネス本体の端末に設けられたハーネス側コネクタ14を、電子ユニット18のユニットケース16に保持させる。この保持は、ハーネス側コネクタが電子ユニットのユニット側コネクタに結合する方向に変位可能となる保持とし、そのユニットケースに電子ユニットが挿入された状態で操作部材50を操作することによりコネクタ同士を結合することができるようにする。
【解決手段】ワイヤハーネス本体の端末に設けられたハーネス側コネクタ14を、電子ユニット18のユニットケース16に保持させる。この保持は、ハーネス側コネクタが電子ユニットのユニット側コネクタに結合する方向に変位可能となる保持とし、そのユニットケースに電子ユニットが挿入された状態で操作部材50を操作することによりコネクタ同士を結合することができるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、ユニットケースに収容される複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内に装備される複数個の電子ユニットをワイヤハーネスを介して車両側回路に接続するための技術として、例えば特許文献1の図1には、共通のユニットケースに収納されて特定箇所に保持された複数のECU(電子制御ユニット)のコネクタに対し、前記ワイヤハーネス側のコネクタをそれぞれ結合するものが開示されている。
【0003】
その配線例を図15に示す。同図において、車両のインストゥルメントパネル100の裏側にユニットケース102が設置され、このユニットケース102内に複数のECU104が装填されている。前記ユニットケース102は車両後側(図の手前側)に開放されており、当該ユニットケース102に装填される各ECU104のコネクタ(ユニット側コネクタ)106が車両後側に並ぶようになっている。
【0004】
一方、前記インストゥルメントパネル100の裏側には図略のリンホース(車両の強度部材)に沿ってワイヤハーネス110が配索され、このワイヤハーネス110の端末につながっている各ハーネス側コネクタ112が対応するユニット側コネクタ106に結合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−304083号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図15に示した構造では、ユニットケース102に保持される各ECU104のユニット側コネクタ106に対し、ワイヤハーネス110側にある複数のハーネス側コネクタ112の中から前記ECU側コネクタ106に対応するコネクタを1個ずつ選び出し、当該ECU側コネクタ106に差し込む作業が必要であり、手間がかかる。特に、前記ECU側コネクタ106の近傍は多数の配線が密集し、また、他の機器も近傍に配置されていて作業スペースがきわめて狭小であることから、このような車両内空間において前記ハーネス側コネクタ112の選出及びECU側コネクタ106への嵌合作業を行うことは容易でなく、高い作業効率は望めない。
【0007】
なお、前記特許文献1の図13には、予めECUケースの背壁にハーネス側コネクタを固定しておき、このECUケースに挿入されるECUのコネクタがその挿入に伴って前記ハーネス側コネクタに嵌合されるようにする技術が開示されているが、前記ECUケース内へのECUの挿入力でもってコネクタの嵌合を行わせることは事実上難しい。
【0008】
すなわち、前記ECUにはこれを挿入するための力が当該ECUの挿入方向手前側の部位に加えられるが、これに対して当該ECUのコネクタとハーネス側コネクタとが嵌合する位置は前記挿入力が与えられる位置と反対の側すなわち挿入方向奥側にあり、前記操作力が加えられる位置とコネクタ嵌合位置との間に大きな距離があるため、両コネクタを確実かつ十分に嵌合させることは難しく、また、その確認も行い難い。よって、コネクタ同士の接続信頼性に課題が存する。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、複数の電子ユニットに設けられたユニット側コネクタとハーネス側コネクタとを効率良くしかも高い信頼性をもって結合することを可能にす
る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ユニット側コネクタを有する複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための車両用ワイヤハーネスであって、複数本の電線が束ねられたワイヤハーネス本体と、このワイヤハーネス本体の端末に設けられ、前記各ユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な複数のハーネス側コネクタと、前記各電子ユニットを所定の配列で収容するとともに、前記電子ユニットを前記配列で収容した状態で当該電子ユニットのユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な位置に前記ハーネス側コネクタを保持するコネクタ保持部を有するユニットケースと、このユニットケースに前記ユニット側コネクタとハーネス側コネクタとの結合方向と異なる特定方向に操作可能となるように設けられ、その操作前の状態で前記ハーネス側コネクタとこのユニットケースに挿入される電子ユニットとの少なくとも一方と係合する係合部をもつ操作部材とを備え、その係合状態から前記特定方向に前記操作部材が操作されることにより前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとが互いに結合するコネクタ結合方向に相対変位するように前記係合部の形状が設定されているものである。
【0011】
このようなワイヤハーネスを製造しておき、この車両用ワイヤハーネスを車両内に配索してそのユニットケースを特定位置に設置しておけば、そのユニットケース内に電子ユニットを挿入する工程と、当該ユニットケースに設けられている操作部材を特定方向に操作することにより当該ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタとを互いに結合する方向に相対変位させる工程とを順に行うだけの簡単な作業で、前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合を簡単に行うことができる。
【0012】
すなわち、従来のように、車両内の狭いスペースで前記各設置側コネクタに対応するハーネス側コネクタを探し出したり当該ハーネス側コネクタを個別に設置側コネクタに嵌合させたりする作業は不要であり、前記ユニットケースに電子ユニットを挿入してから前記操作部材を特定方向に操作するだけの作業でコネクタ同士の結合が可能となるため、その作業効率は飛躍的に高められる。
【0013】
しかも、前記ユニットケースに前記電子ユニットを挿入した後は、当該電子ユニット、ハーネス側コネクタの少なくとも一方と係合する操作部材を操作することによって、コネクタ同士の結合を確実に行うことが可能であり、高い接続信頼性も確保できる。
【0014】
前記操作部材は、各ハーネス側コネクタごとに設けられたものでもよいが、前記係合部を複数組のハーネス側コネクタ及びユニットケースについて有し、当該操作部材の前記特定方向の操作によって前記複数組のハーネス側コネクタとユニットケースのユニット側コネクタとが一斉に前記コネクタ結合方向に相対変位するように構成されているものが、より好ましい。
【0015】
この構成によれば、共通の操作部材を利用して複数組のハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合を一斉に行うことができるため、作業効率はさらに高められる。
【0016】
また、前記操作部材の係合部が、当該操作部材に加えられる操作力よりも大きな力で前
記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとを結合させる倍力機構を構成しているものであれば、比較的低い操作力でもハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合作業を楽に行うことができる。
【0017】
例えば、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタとこれに対応する電子ユニットとの双方に係合するものであり、当該操作部材の前記特定方向の操作に伴って前記ハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタの双方を前記コネクタ結合方向に変位させるように構成されているものであれば、コネクタ同士の結合に必要な総ストロークをハーネス側コネクタの変位とユニット側コネクタの変位とに分散させることにより、各コネクタの変位量は小さく抑えながらコネクタ同士の結合を実現することができる。
【0018】
また、前記操作部材の具体的な構成としては、例えば、前記係合部が、前記ハーネス側コネクタ及びこれに対応する電子ユニットの少なくとも一方に設けられるカムフォロアと係合するカム溝であり、当該操作部材の特定方向の操作に伴って前記カムフォロアが設けられている部材が前記コネクタ結合方向に変位するように構成されているものが、好適である。この構成によれば、部品点数の大幅な増大を伴うことなく、簡単な構造で操作部材の操作とコネクタ結合動作とを連動させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ユニットケースに電子ユニットを挿入してから各ハーネス側コネクタにユニット側コネクタへの嵌合操作力を加えるだけの作業でコネクタ同士の結合を効率良く行うことができる。しかも、その結合は、前記ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタを直接操作し、または当該ユニットケース、ハーネス側コネクタの少なくとも一方に係合する操作部材を操作することにより行われるので、コネクタ間の高い接続信頼性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態とは別の参考例に係るワイヤハーネスをユニットケース側から見た分解斜視図である。
【図2】前記ワイヤハーネスをハーネス側コネクタ側から見た分解斜視図である。
【図3】前記ワイヤハーネスを前記ユニットケースの背面側から見た組立斜視図である。
【図4】前記ユニットケースの背面を示す斜視図である。
【図5】前記ユニットケースに挿入される電子ユニットの背面を示す斜視図である。
【図6】前記ユニットケースへの電子ユニットの挿入を開始した段階を示す断面平面図である。
【図7】前記電子ユニットの挿入を完了した状態を示す断面平面図である。
【図8】前記電子ユニットのユニット側コネクタにハーネス側コネクタを結合した状態を示す断面平面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの分解斜視図である。
【図10】図9の分解斜視図においてさらにユニットケースと操作部材とをさらに分解した状態を示す斜視図である。
【図11】(a)は図9に示すワイヤハーネスのユニットケースに電子ユニットを挿入する前の状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図12】(a)は図9に示すワイヤハーネスのユニットケースに電子ユニットを挿入した状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図13】(a)は図12の状態から操作部材を操作してコネクタ同士を結合した状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図14】図13(a)(b)の状態を示す斜視図である。
【図15】従来の車両における電子ユニットに係る配線置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態とは異なる参考例を図1〜図8に基づいて説明する。
【0022】
ここに示すワイヤハーネス10は、多数本の電線が束ねられてなるワイヤハーネス本体12と、そのワイヤハーネス本体12の特定の電線13の端末に設けられた複数個(図例では3個)のハーネス側コネクタ14と、これらのハーネス側コネクタ14を保持するユニットケース16とを含んでいる。このユニットケース16には複数個(図例では3個)の電子ユニット18が挿入可能であり、その挿入状態で、各電子ユニット18に設けられているユニット側コネクタ20(図6〜図8)がこれに対応するハーネス側コネクタ14と対峙して結合可能な位置に保持されるようになっている。
【0023】
前記各ハーネス側コネクタ14は、そのハウジング内に図略のコネクタ端子が縦方向に配列されて保持されたものであり、各コネクタ端子に前記ワイヤハーネス本体12に含まれている電線の端末が接続されている。そのハウジングには、左右にそれぞれ突出する被係止部14a,14bが形成されている。
【0024】
一方、前記ユニットケース16は、複数枚の縦壁21を有し、これらの縦壁21同士の間に前記各電子ユニット18がそれぞれ前側(図6〜図8では右側)から挿入可能な複数(図例では3つ)のユニット挿入空間22が形成されている。このユニットケース16の後側(図6〜図8では左側)は背壁24により塞がれているが、この背壁24には前記各ユニット挿入空間22に対応する複数の貫通孔26が設けられており、これらの貫通孔2
6内に前記各ハーネス側コネクタ14が後側からそれぞれ挿入されることにより、当該ハーネス側コネクタ14が前記各ユニット挿入空間22内に突出する位置に保持されるようになっている。
【0025】
このハーネス側コネクタ14を保持するコネクタ保持部として、図4に示すように、前記背壁24における各貫通孔26の周縁部分には、複数の後側係止片28と、前側係止片30とが形成されている。
【0026】
前記後側係止片28は、前記貫通孔26の上下左右の周縁部分から後方に延びてその後端が左右方向に撓み変形可能な弾性片として形成され、その自由端部(後端部)に内向きに突出する係止突起28aが形成されている。そして、この係止突起28aが前記ハーネス側コネクタ14の両被係止部14a,14bにそれぞれ後側から当接することにより、当該ハーネス側コネクタ14が前記貫通孔26から後側(ケース外側)に離脱することが阻止されるようになっている。
【0027】
これに対して前側係止片30は、前記ユニットケース16の後側からみて前記貫通孔26の左側周縁から一旦前方に延び、その中間部分は後方に略180°転回する平面視略U字状の転回部30aとなっており、その後端が左右方向に撓み変形可能な弾性片となっている。そして、その自由端部(後端部)に内向きに突出する係止突起30bが形成されており、この係止突起30bが前記ハーネス側コネクタ14の一方の被係止部14aに前側から当接することにより、当該ハーネス側コネクタ14が前側(すなわちユニット挿入空間22側)に変位するのを規制するようになっている。
【0028】
前記各電子ユニット18は、略直方体状のケース32を備え、そのケース32内に図6〜図8に示すような回路基板34を収容している。そして、この回路基板34の後側端部(図6〜図8では左側端部)に前記ユニット側コネクタ20が実装されるとともに、このユニット側コネクタ20をユニット後方に開放するための窓36が前記ケース32に形成されている。
【0029】
この窓36の周囲には、図5に示すようなコネクタ規制爪37,38が形成されている。これらのコネクタ規制爪37,38は、前記ユニット側コネクタ20に対して外側から当接することにより、当該ユニット側コネクタ20が前記窓36を通じてケース外側に突出するのを規制する位置に形成されている。
【0030】
前記各電子ユニット18のケース32には、前記ユニットケース16側に保持される部分として、ケース32の天壁及び底壁の前側部分に被係止突起40が形成されるとともに、ケース32の背面に図5に示すような上下一対の被係止爪42が形成されている。
【0031】
これに対し、前記ユニットケース16の各縦壁21の内側面には、図6〜図8に示すようなストッパ43が内向きに突設され、このストッパ43に前記ユニット挿入空間22内に挿入される電子ユニット18のケース32の後端が当接することにより同ユニット18の挿入深さが規定されるようになっている。さらに、このストッパ43に前記ケース32が当接する位置で前記被係止突起40と係合する係止片44がユニットケース16の天壁及び底壁に形成され、さらに同位置で前記被係止爪42に係合する係止片46(図4)が背壁24側に形成されている。
【0032】
前記ケース32のコネクタ規制爪37は、当該ケース32の背面から後方に大きく突出しており、このケース32が図7及び図8に示されるように前記ストッパ43に当接する位置まで挿入される位置で、前記前側係止部30の内側部位(その転回部30aと係止突起30bとの間の部位)を押圧することにより、当該前側係止部30を弾性変形させてそ
の係止突起30bを前記ハーネス側コネクタ14の被係止部14aから外側に離脱させる(すなわち当該係止突起30bを係止位置から解放位置に切換える)ように、当該コネクタ規制爪37の形状及び位置が設定されている。
【0033】
次に、この構造を利用した配線方法(電子ユニット18を車両側回路に接続する方法)を説明する。
【0034】
1)まず、図1等に示されるワイヤハーネス10を製造する。すなわち、ワイヤハーネス本体12から引き出した電線13の端末に各ハーネス側コネクタ14のコネクタ端子を接続し、これらのハーネス側コネクタ14をユニットケース16の背壁24にセットする。具体的には、前記背壁24の各貫通孔26に外側からハーネス側コネクタ14を挿入し、その被係止部14a,14bが後側係止部28の係止突起28aを乗り越え、かつ、前記被係止部14aが前側係止部30の係止突起30bに後ろから突き当る位置まで当該ハーネス側コネクタ14を押し込む。これにより、ハーネス側コネクタ14は両係止部28,30によって前後から挟持された状態となる。
【0035】
2)前記ワイヤハーネス10を車両内に配索してそのユニットケース16を特定位置に設置する。例えば、当該ワイヤハーネス10を自動車のインストゥルメントパネルの裏側に配線する場合には、そのワイヤハーネス本体12をパネル裏側のリンホース(強度部材)に沿って配索するとともに、前記ユニットケース16をパネル近傍の床面上に設置する。
【0036】
3)前記ユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に前側から各電子ユニット18を挿入し、その背面が図7に示すようにユニットケース16内のストッパ43に突き当る位置まで当該電子ユニット18を押し込む。これにより、前記各電子ユニット18のケース32における被係止突起40及び被係止爪42とユニットケース16側の係止片44,46とが係合して当該電子ユニット18が当該ユニットケース16内の所定位置に保持されるとともに、各電子ユニット18のユニット側コネクタ20がこれに対応するハーネス側コネクタ14に対峙した状態になる。さらに、各電子ユニット18のコネクタ規制爪37がユニットケース16側の前側係止部30の特定部位(その転回部30aと係止突起30bとの間の部位)を外向きに押圧することにより、当該前側係止部30が弾性変形してその係止突起30bがハーネス側コネクタ14の被係止部14aから外側に離脱し、当該ハーネス側コネクタ14が前側(ユニット側コネクタ20側)に変位することが許容された状態になる。
【0037】
4)3)の状態で各ハーネス側コネクタ14を前側に押込み操作することにより、同コネクタ14をこれに対応するユニット側コネクタ20に結合する。
【0038】
以上のような構成によれば、予め各ハーネス側コネクタ14がユニットケース16に仮保持されたワイヤハーネス10を工場等で製造しておくことにより、このワイヤハーネス10を車両内に配索した後は、そのユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に電子ユニット18を挿入し、次いで各ハーネス側コネクタ14をユニット側コネクタ20側に操作するだけの簡単な作業で、各コネクタ14,20の結合を行うことができる。従って、従来のように狭い車両スペース内で複数のハーネス側コネクタ14の中から各ユニット側コネクタ20に対応するものを選び出したり、当該ハーネス側コネクタ14をユニット側コネクタ20と嵌合可能な位置に合せたりする必要がなく、コネクタ14,20同士の結合を効率良く行うことができる。
【0039】
しかも、コネクタ14,20同士の結合は、ハーネス側コネクタ14を直接操作することによって行われるので、例えばユニットケース16側にハーネス側コネクタ14を完全
固定しておいてこのハーネス側コネクタ14に電子ユニット18の挿入力でそのユニット側コネクタ20を嵌合させる場合に比べ、コネクタ14,20同士の嵌合をより確実に行うことが可能であり、その接続信頼性を高めることができる。
【0040】
さらに、この参考例では、各電子ユニット18がユニットケース16内に挿入されるのに伴って、その電子ユニット18のコネクタ規制爪37(それ以外の部位でもよい)が前側係止部30を押圧してその係止突起30bによるハーネス側コネクタ14の前側への変位の規制を解除する作用をするため、その後はハーネス側コネクタ14の押込み操作を楽に行うことができる利点がある。
【0041】
なお、この参考例においてユニットケース16による各ハーネス側コネクタ14の保持構造は前記のものに限らない。例えば、当該ハーネス側コネクタ14が相手方のユニット側コネクタ20と嵌合するためのストローク分だけ変位可能(スライド可能)となるように当該ハーネス側コネクタ14をユニットケース16に保持させておき、このユニットケース16への電子ユニット18の挿入後、前記ハーネス側コネクタ14をスライドさせて前記各電子ユニット18のユニット側コネクタ20に結合するようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明の実施の形態を図9〜図14に基づいて説明する。
【0043】
ここに示すワイヤハーネス10は、多数本の電線が束ねられてなるワイヤハーネス本体12と、そのワイヤハーネス本体12の特定の電線13の端末に設けられた複数個(図例では3個)のハーネス側コネクタ14と、これらのハーネス側コネクタ14を保持するユニットケース16とを含み、さらに、このユニットケース16に装着される操作部材50を備えている。
【0044】
前記各ハーネス側コネクタ14は、そのハウジング内に図略のコネクタ端子が縦方向に配列されて保持されたものであり、各コネクタ端子に前記ワイヤハーネス本体12に含まれている電線の端末が接続されている。また、そのハウジングの天壁及び底壁には被係止突起14cが突設され、同ハウジングの左右側面には略円柱状のカムフォロア15が外向きに突設されている。
【0045】
一方、前記ユニットケース16は、複数個(図例では3個)の電子ユニット18が挿入可能なものであり、その挿入状態で、各電子ユニット18に設けられているユニット側コネクタ20(図11〜図13)がこれに対応するハーネス側コネクタ14と対峙して結合可能な位置に保持されるようになっている。
【0046】
具体的に、このユニットケース16は、複数枚の縦壁21を有し、これらの縦壁21同士の間に前記各電子ユニット18がそれぞれ前側(図11〜図13では左側)から挿入可能な複数(図例では3つ)のユニット挿入空間22が形成されている。各ユニット挿入空間22の後側(図11〜図13では右側)は背壁24により塞がれているが、各ユニット挿入空間22同士の間の位置にはユニットケース16を上下に貫く操作部材差込溝25が形成されている。
【0047】
前記背壁24にはこれを前後方向に貫く複数の貫通孔26が前記操作部材差込溝25同士の間の位置にそれぞれ形成されており、これらの貫通孔26内に前記各ハーネス側コネクタ14が後側から挿入されて前後方向にスライド可能となるように保持される。また、貫通孔26の上下内面には内向きに係止突起29が突設され(図11〜図13)、この係止突起29を前記ハーネス側コネクタ14の被係止突起14cが乗り越えることにより同コネクタ14がユニットケース16に仮保持されるようになっている。
【0048】
さらに、前記各貫通孔26の左右両外側に位置する背壁24の部分にはこれをその肉厚方向(左右方向)に貫通する案内長孔27が形成されている。この案内長孔27は、前後方向に延び、かつ、前記カムフォロア15が嵌まり込み可能な幅寸法(上下寸法)を有している。また、この貫通長孔27に前記各カムフォロア15が嵌まり込んだ状態で当該カムフォロア15が前記貫通長孔27からさらに外側に突出して各操作部材差込溝25内に臨むように、当該カムフォロア15の突出寸法が設定されている。
【0049】
前記各電子ユニット18は、略直方体状のケース32を備え、その後部(図11〜図13では右側部)に前記ユニット側コネクタ20が固定されるとともに、このユニット側コネクタ20をユニット後方に開放するための窓36が前記ケース32の背壁に形成されている。
【0050】
前記各電子ユニット18のケース32の左右両側面には、上下一対の被係止突起32aと、その被係止突起32aの位置よりもやや前方でかつ上下方向外側の位置にある被係止突起32bとが形成されている。また、その左右両側面の後部には、カムフォロア33が外向きに突設され、このカムフォロア33の形状は、前記カムフォロア15と同じく略円柱状とされ、その突出寸法も同等に設定されている。
【0051】
これに対し、前記ユニットケース16の各縦壁21には、上下一対の係止片44が形成されている。これらの係止片44は、その前端部が左右方向に撓み変形可能な弾性片として形成され、当該前端部に上下に延びる内向きの係止突起44aを有しており、この係止突起44aが前記被係止突起32a,32bの双方と係合可能となる高さ位置に形成されている。そして、この係止突起44aが前記被係止突起32aを乗り越えるまで電子ユニット18がユニットケース16に挿入された位置が当該電子ユニット18の仮係止位置とされ、さらに前記係止突起44aが前記被係止突起32bを乗り越えるまで電子ユニット18がユニットケース16に挿入された位置が当該電子ユニット18の本係止位置とされている。
【0052】
また、前記各縦壁21の内側面には、前記電子ユニット18の挿入の際にそのカムフォロア33が嵌入可能な凹溝35が形成されている。この凹溝35は、前記縦壁21をその前端から前記操作部材差込溝25に至るまで前後方向に貫く形状を有し、この凹溝35を通って前記カムフォロア33が前記操作部材差込溝25まで進入できるようになっている。
【0053】
前記操作部材50は、前記ユニットケース16の各操作部材差込溝25内に下方から差込可能なカム板52と、これらのカム板52の下端同士を連結する底板54とを有し、各カム板52の内側面には、ユニットケース後側のコネクタ用カム溝56及びユニットケース前側のユニット用カム溝58が形成されている(図例では両カム溝56,58の形成領域の大半部分に同カム板52を貫通する貫通長孔が形成されている。)。
【0054】
前記コネクタ用カム溝56は、前記案内長孔27からその外側に突出したハーネス側コネクタ14のカムフォロア15が嵌まり込み可能な幅寸法を有し、その外側端(案内部材50の後端)56aから前方に向かうに従って大きな勾配で下方に変位する形状を有している。一方、前記ユニット用カム溝58は、前記凹溝35を通じて操作部材差込溝25内に進入する電子ユニット18側のカムフォロア33が嵌まり込み可能な幅寸法を有し、その外側端(案内部材50の前端)58aから後方に向かうに従って大きな勾配で下方に変位する形状を有している。両カム溝56,58の外側端56a,58aの位置は図例では同じ高さ位置に設定されている。
【0055】
前記カム板52の上端にはその板厚方向に撓み変形可能な被係止片53が形成され、そ
の上端に被係止突起53aが形成される一方、前記操作部材差込溝25に臨む背壁24の面には、前記被係止突起53aと係合して操作部材50を図9に示す仮係止位置に保持する仮係止凹部24aと、前記仮係止凹部24aよりも上側の位置で前記被係止突起53aと係合して前記操作部材50を図14に示す本係止位置に保持する本係止凹部24bとが形成されている。ここで、前記操作部材50の仮係止位置は、当該操作部材50の両カム溝56,58の外側端56a,58aが前記案内長孔27及び凹溝35と並ぶ高さ位置に設定されており、前記本係止位置は、前記カムフォロア15,33が前記各カム溝56,58の内側端(下端)56b,58bに至る高さ位置に設定されている。
【0056】
これらのカム溝56,58の形状は、その外側端56a,58aにそれぞれ前記カムフォロア15,33が嵌まり込んだ状態(図12(a)(b)の状態)から前記操作部材50がその仮係止位置から本係止位置まで上向きに操作されることにより、図13及び図14に示すように前記カムフォロア15,33をもつハーネス側コネクタ14と電子ユニット18とが互いに引き寄せられて当該ハーネス側コネクタ14と当該電子ユニット18のユニット側コネクタ20とが結合するように、設定されている。
【0057】
次に、この構造を利用した配線方法(電子ユニット18を車両側回路に接続する方法)を説明する。
【0058】
1)まず、図1等に示されるワイヤハーネス10を製造する。具体的には、ワイヤハーネス本体12から引き出した電線13の端末に各ハーネス側コネクタ14のコネクタ端子を接続する一方、ユニットケース16には操作部材50を仮係止位置(すなわち操作部材50の被係止突起53aがユニットケース背壁24の仮係止凹部24aに嵌まり込む位置)に仮係止させておき、この状態で前記ハーネス側コネクタ14を前記背壁24の貫通孔26内に外側から挿入して同コネクタ14の被係止突起14cが係止突起29を乗り越えるようにする(図11)。このとき、ハーネス側コネクタ14のカムフォロア15はユニットケース16の案内長孔27内に進入し、さらに、コネクタ用カム溝56の外側端(始端)56aに入り込む。
【0059】
2)前記ワイヤハーネス10を車両内に配索してそのユニットケース16を特定位置に設置する。例えば、当該ワイヤハーネス10を自動車のインストゥルメントパネルの裏側に配線する場合には、そのワイヤハーネス本体12をパネル裏側のリンホース(強度部材)に沿って配索するとともに、前記ユニットケース16をパネル近傍の床面上に設置する。
【0060】
3)前記ユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に前側から各電子ユニット18を挿入し、そのケース32の被係止突起32aがユニットケース16側の係止片44の係止突起44aを乗り越える深さ位置まで当該電子ユニット18を押し込む。このとき、当該電子ユニット18のケース32のカムフォロア33はユニットケース16側の凹溝35を通って操作部材50のユニット用カム溝58の外側端(始端)58aに入り込む(図12)。
【0061】
4)3)の状態から操作部材50を本係止位置(すなわち前記被係止突起53aが前記本係止凹部24bに嵌まり込む位置)まで上向きにスライド操作する。これに伴って両カムフォロア15,33はそれぞれカム溝56,58の外側端56a,58aから内側端56b,58bまで移行し、そのカム作用によって両カムフォロア15,33が互いに引き寄せられる。すなわち、前記カムフォロア15を有するハーネス側コネクタ14と、前記カムフォロア33を有する電子ユニット18のケース32とが互いに引き寄せられ、その結果、前記ハーネス側コネクタ14と前記電子ユニット18のユニット側コネクタ20とが結合される。
【0062】
以上のような構成によれば、予め各ハーネス側コネクタ14がユニットケース16に仮保持されたワイヤハーネス10を工場等で製造しておくことにより、このワイヤハーネス10を車両内に配索した後は、そのユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に電子ユニット18を挿入し、次いで操作部材50をスライド操作するだけの簡単な作業で、各コネクタ14,20の結合を一括して行うことができる。従って、従来のように狭い車両スペース内で複数のハーネス側コネクタ14の中から各ユニット側コネクタ20に対応するものを選び出したり、当該ハーネス側コネクタ14の位置をユニット側コネクタ20と嵌合可能な位置に合せたりする作業が必要なくなり、コネクタ14,20同士の結合を効率良く行うことができる。
【0063】
しかも、コネクタ14,20同士の結合は、ハーネス側コネクタ14とユニットケース16とに係合する操作部材50を操作することによって行われるので、例えばユニットケース16側にハーネス側コネクタ14を完全固定しておいてこのハーネス側コネクタ14に電子ユニット18の挿入力でそのユニット側コネクタ20を嵌合させる場合に比べ、コネクタ14,20同士の結合をより確実に行うことが可能であり、その接続信頼性を高めることができる。
【0064】
なお、前記操作部材50は各コネクタ14,20ごとに設けてもよいが、図示のように複数のハーネス側コネクタ14及びこれに対応する電子ユニット18に共通の操作部材50を係合するようにすれば、その操作部材50の操作によって複数のコネクタ結合を一斉に行うことができ、作業効率はさらに高められることになる。
【0065】
特に、図例のカム機構のように、前記操作部材50の操作ストロークがコネクタ14,20同士の嵌合ストロークよりも大きくなるようにカム溝56,58の形状を設定して倍力機構(すなわち操作部材50の操作力よりも大きなコネクタ嵌合力を発生させる機構)を構築するようにすれば、比較的低い操作力でコネクタ嵌合を行うことが可能であり、操作性はより高められる。
【0066】
前記操作部材50は、例えば前記ハーネス側コネクタ14と電子ユニット18のうちのいずれか一方のみに係合するようにし、他方はユニットケース16に固定しておくようにしてもよい。ただし、図例のようにハーネス側コネクタ14と電子ユニット18の双方を操作部材50に係合して両者がコネクタ結合方向(互いに接近する方向)に移動するようにすれば、コネクタ14,20の嵌合に必要なストロークをハーネス側コネクタ14の移動量と電子ユニット18の移動量とに分散させることが可能になる。
【0067】
また、本発明において、操作部材はコネクタ結合方向と異なる方向に操作されるものであれば、その具体的な構造は問わず、前記のようにスライド操作されるものの他、例えばレバー操作(回動操作)されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 ワイヤハーネス
12 ワイヤハーネス本体
14 ハーネス側コネクタ
15 カムフォロア
16 ユニットケース
18 電子ユニット
20 ユニット側コネクタ
22 ユニット挿入空間
28 後側係止片(コネクタ保持部)
30 前側係止片(コネクタ保持部)
33 カムフォロア
50 操作部材
56 コネクタ用カム溝
58 ユニット用カム溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、ユニットケースに収容される複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内に装備される複数個の電子ユニットをワイヤハーネスを介して車両側回路に接続するための技術として、例えば特許文献1の図1には、共通のユニットケースに収納されて特定箇所に保持された複数のECU(電子制御ユニット)のコネクタに対し、前記ワイヤハーネス側のコネクタをそれぞれ結合するものが開示されている。
【0003】
その配線例を図15に示す。同図において、車両のインストゥルメントパネル100の裏側にユニットケース102が設置され、このユニットケース102内に複数のECU104が装填されている。前記ユニットケース102は車両後側(図の手前側)に開放されており、当該ユニットケース102に装填される各ECU104のコネクタ(ユニット側コネクタ)106が車両後側に並ぶようになっている。
【0004】
一方、前記インストゥルメントパネル100の裏側には図略のリンホース(車両の強度部材)に沿ってワイヤハーネス110が配索され、このワイヤハーネス110の端末につながっている各ハーネス側コネクタ112が対応するユニット側コネクタ106に結合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−304083号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記図15に示した構造では、ユニットケース102に保持される各ECU104のユニット側コネクタ106に対し、ワイヤハーネス110側にある複数のハーネス側コネクタ112の中から前記ECU側コネクタ106に対応するコネクタを1個ずつ選び出し、当該ECU側コネクタ106に差し込む作業が必要であり、手間がかかる。特に、前記ECU側コネクタ106の近傍は多数の配線が密集し、また、他の機器も近傍に配置されていて作業スペースがきわめて狭小であることから、このような車両内空間において前記ハーネス側コネクタ112の選出及びECU側コネクタ106への嵌合作業を行うことは容易でなく、高い作業効率は望めない。
【0007】
なお、前記特許文献1の図13には、予めECUケースの背壁にハーネス側コネクタを固定しておき、このECUケースに挿入されるECUのコネクタがその挿入に伴って前記ハーネス側コネクタに嵌合されるようにする技術が開示されているが、前記ECUケース内へのECUの挿入力でもってコネクタの嵌合を行わせることは事実上難しい。
【0008】
すなわち、前記ECUにはこれを挿入するための力が当該ECUの挿入方向手前側の部位に加えられるが、これに対して当該ECUのコネクタとハーネス側コネクタとが嵌合する位置は前記挿入力が与えられる位置と反対の側すなわち挿入方向奥側にあり、前記操作力が加えられる位置とコネクタ嵌合位置との間に大きな距離があるため、両コネクタを確実かつ十分に嵌合させることは難しく、また、その確認も行い難い。よって、コネクタ同士の接続信頼性に課題が存する。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、複数の電子ユニットに設けられたユニット側コネクタとハーネス側コネクタとを効率良くしかも高い信頼性をもって結合することを可能にす
る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ユニット側コネクタを有する複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための車両用ワイヤハーネスであって、複数本の電線が束ねられたワイヤハーネス本体と、このワイヤハーネス本体の端末に設けられ、前記各ユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な複数のハーネス側コネクタと、前記各電子ユニットを所定の配列で収容するとともに、前記電子ユニットを前記配列で収容した状態で当該電子ユニットのユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な位置に前記ハーネス側コネクタを保持するコネクタ保持部を有するユニットケースと、このユニットケースに前記ユニット側コネクタとハーネス側コネクタとの結合方向と異なる特定方向に操作可能となるように設けられ、その操作前の状態で前記ハーネス側コネクタとこのユニットケースに挿入される電子ユニットとの少なくとも一方と係合する係合部をもつ操作部材とを備え、その係合状態から前記特定方向に前記操作部材が操作されることにより前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとが互いに結合するコネクタ結合方向に相対変位するように前記係合部の形状が設定されているものである。
【0011】
このようなワイヤハーネスを製造しておき、この車両用ワイヤハーネスを車両内に配索してそのユニットケースを特定位置に設置しておけば、そのユニットケース内に電子ユニットを挿入する工程と、当該ユニットケースに設けられている操作部材を特定方向に操作することにより当該ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタとを互いに結合する方向に相対変位させる工程とを順に行うだけの簡単な作業で、前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合を簡単に行うことができる。
【0012】
すなわち、従来のように、車両内の狭いスペースで前記各設置側コネクタに対応するハーネス側コネクタを探し出したり当該ハーネス側コネクタを個別に設置側コネクタに嵌合させたりする作業は不要であり、前記ユニットケースに電子ユニットを挿入してから前記操作部材を特定方向に操作するだけの作業でコネクタ同士の結合が可能となるため、その作業効率は飛躍的に高められる。
【0013】
しかも、前記ユニットケースに前記電子ユニットを挿入した後は、当該電子ユニット、ハーネス側コネクタの少なくとも一方と係合する操作部材を操作することによって、コネクタ同士の結合を確実に行うことが可能であり、高い接続信頼性も確保できる。
【0014】
前記操作部材は、各ハーネス側コネクタごとに設けられたものでもよいが、前記係合部を複数組のハーネス側コネクタ及びユニットケースについて有し、当該操作部材の前記特定方向の操作によって前記複数組のハーネス側コネクタとユニットケースのユニット側コネクタとが一斉に前記コネクタ結合方向に相対変位するように構成されているものが、より好ましい。
【0015】
この構成によれば、共通の操作部材を利用して複数組のハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合を一斉に行うことができるため、作業効率はさらに高められる。
【0016】
また、前記操作部材の係合部が、当該操作部材に加えられる操作力よりも大きな力で前
記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとを結合させる倍力機構を構成しているものであれば、比較的低い操作力でもハーネス側コネクタとユニット側コネクタとの結合作業を楽に行うことができる。
【0017】
例えば、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタとこれに対応する電子ユニットとの双方に係合するものであり、当該操作部材の前記特定方向の操作に伴って前記ハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタの双方を前記コネクタ結合方向に変位させるように構成されているものであれば、コネクタ同士の結合に必要な総ストロークをハーネス側コネクタの変位とユニット側コネクタの変位とに分散させることにより、各コネクタの変位量は小さく抑えながらコネクタ同士の結合を実現することができる。
【0018】
また、前記操作部材の具体的な構成としては、例えば、前記係合部が、前記ハーネス側コネクタ及びこれに対応する電子ユニットの少なくとも一方に設けられるカムフォロアと係合するカム溝であり、当該操作部材の特定方向の操作に伴って前記カムフォロアが設けられている部材が前記コネクタ結合方向に変位するように構成されているものが、好適である。この構成によれば、部品点数の大幅な増大を伴うことなく、簡単な構造で操作部材の操作とコネクタ結合動作とを連動させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ユニットケースに電子ユニットを挿入してから各ハーネス側コネクタにユニット側コネクタへの嵌合操作力を加えるだけの作業でコネクタ同士の結合を効率良く行うことができる。しかも、その結合は、前記ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタを直接操作し、または当該ユニットケース、ハーネス側コネクタの少なくとも一方に係合する操作部材を操作することにより行われるので、コネクタ間の高い接続信頼性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態とは別の参考例に係るワイヤハーネスをユニットケース側から見た分解斜視図である。
【図2】前記ワイヤハーネスをハーネス側コネクタ側から見た分解斜視図である。
【図3】前記ワイヤハーネスを前記ユニットケースの背面側から見た組立斜視図である。
【図4】前記ユニットケースの背面を示す斜視図である。
【図5】前記ユニットケースに挿入される電子ユニットの背面を示す斜視図である。
【図6】前記ユニットケースへの電子ユニットの挿入を開始した段階を示す断面平面図である。
【図7】前記電子ユニットの挿入を完了した状態を示す断面平面図である。
【図8】前記電子ユニットのユニット側コネクタにハーネス側コネクタを結合した状態を示す断面平面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスの分解斜視図である。
【図10】図9の分解斜視図においてさらにユニットケースと操作部材とをさらに分解した状態を示す斜視図である。
【図11】(a)は図9に示すワイヤハーネスのユニットケースに電子ユニットを挿入する前の状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図12】(a)は図9に示すワイヤハーネスのユニットケースに電子ユニットを挿入した状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図13】(a)は図12の状態から操作部材を操作してコネクタ同士を結合した状態を示す一部断面側面図、(b)はその側面図である。
【図14】図13(a)(b)の状態を示す斜視図である。
【図15】従来の車両における電子ユニットに係る配線置例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態とは異なる参考例を図1〜図8に基づいて説明する。
【0022】
ここに示すワイヤハーネス10は、多数本の電線が束ねられてなるワイヤハーネス本体12と、そのワイヤハーネス本体12の特定の電線13の端末に設けられた複数個(図例では3個)のハーネス側コネクタ14と、これらのハーネス側コネクタ14を保持するユニットケース16とを含んでいる。このユニットケース16には複数個(図例では3個)の電子ユニット18が挿入可能であり、その挿入状態で、各電子ユニット18に設けられているユニット側コネクタ20(図6〜図8)がこれに対応するハーネス側コネクタ14と対峙して結合可能な位置に保持されるようになっている。
【0023】
前記各ハーネス側コネクタ14は、そのハウジング内に図略のコネクタ端子が縦方向に配列されて保持されたものであり、各コネクタ端子に前記ワイヤハーネス本体12に含まれている電線の端末が接続されている。そのハウジングには、左右にそれぞれ突出する被係止部14a,14bが形成されている。
【0024】
一方、前記ユニットケース16は、複数枚の縦壁21を有し、これらの縦壁21同士の間に前記各電子ユニット18がそれぞれ前側(図6〜図8では右側)から挿入可能な複数(図例では3つ)のユニット挿入空間22が形成されている。このユニットケース16の後側(図6〜図8では左側)は背壁24により塞がれているが、この背壁24には前記各ユニット挿入空間22に対応する複数の貫通孔26が設けられており、これらの貫通孔2
6内に前記各ハーネス側コネクタ14が後側からそれぞれ挿入されることにより、当該ハーネス側コネクタ14が前記各ユニット挿入空間22内に突出する位置に保持されるようになっている。
【0025】
このハーネス側コネクタ14を保持するコネクタ保持部として、図4に示すように、前記背壁24における各貫通孔26の周縁部分には、複数の後側係止片28と、前側係止片30とが形成されている。
【0026】
前記後側係止片28は、前記貫通孔26の上下左右の周縁部分から後方に延びてその後端が左右方向に撓み変形可能な弾性片として形成され、その自由端部(後端部)に内向きに突出する係止突起28aが形成されている。そして、この係止突起28aが前記ハーネス側コネクタ14の両被係止部14a,14bにそれぞれ後側から当接することにより、当該ハーネス側コネクタ14が前記貫通孔26から後側(ケース外側)に離脱することが阻止されるようになっている。
【0027】
これに対して前側係止片30は、前記ユニットケース16の後側からみて前記貫通孔26の左側周縁から一旦前方に延び、その中間部分は後方に略180°転回する平面視略U字状の転回部30aとなっており、その後端が左右方向に撓み変形可能な弾性片となっている。そして、その自由端部(後端部)に内向きに突出する係止突起30bが形成されており、この係止突起30bが前記ハーネス側コネクタ14の一方の被係止部14aに前側から当接することにより、当該ハーネス側コネクタ14が前側(すなわちユニット挿入空間22側)に変位するのを規制するようになっている。
【0028】
前記各電子ユニット18は、略直方体状のケース32を備え、そのケース32内に図6〜図8に示すような回路基板34を収容している。そして、この回路基板34の後側端部(図6〜図8では左側端部)に前記ユニット側コネクタ20が実装されるとともに、このユニット側コネクタ20をユニット後方に開放するための窓36が前記ケース32に形成されている。
【0029】
この窓36の周囲には、図5に示すようなコネクタ規制爪37,38が形成されている。これらのコネクタ規制爪37,38は、前記ユニット側コネクタ20に対して外側から当接することにより、当該ユニット側コネクタ20が前記窓36を通じてケース外側に突出するのを規制する位置に形成されている。
【0030】
前記各電子ユニット18のケース32には、前記ユニットケース16側に保持される部分として、ケース32の天壁及び底壁の前側部分に被係止突起40が形成されるとともに、ケース32の背面に図5に示すような上下一対の被係止爪42が形成されている。
【0031】
これに対し、前記ユニットケース16の各縦壁21の内側面には、図6〜図8に示すようなストッパ43が内向きに突設され、このストッパ43に前記ユニット挿入空間22内に挿入される電子ユニット18のケース32の後端が当接することにより同ユニット18の挿入深さが規定されるようになっている。さらに、このストッパ43に前記ケース32が当接する位置で前記被係止突起40と係合する係止片44がユニットケース16の天壁及び底壁に形成され、さらに同位置で前記被係止爪42に係合する係止片46(図4)が背壁24側に形成されている。
【0032】
前記ケース32のコネクタ規制爪37は、当該ケース32の背面から後方に大きく突出しており、このケース32が図7及び図8に示されるように前記ストッパ43に当接する位置まで挿入される位置で、前記前側係止部30の内側部位(その転回部30aと係止突起30bとの間の部位)を押圧することにより、当該前側係止部30を弾性変形させてそ
の係止突起30bを前記ハーネス側コネクタ14の被係止部14aから外側に離脱させる(すなわち当該係止突起30bを係止位置から解放位置に切換える)ように、当該コネクタ規制爪37の形状及び位置が設定されている。
【0033】
次に、この構造を利用した配線方法(電子ユニット18を車両側回路に接続する方法)を説明する。
【0034】
1)まず、図1等に示されるワイヤハーネス10を製造する。すなわち、ワイヤハーネス本体12から引き出した電線13の端末に各ハーネス側コネクタ14のコネクタ端子を接続し、これらのハーネス側コネクタ14をユニットケース16の背壁24にセットする。具体的には、前記背壁24の各貫通孔26に外側からハーネス側コネクタ14を挿入し、その被係止部14a,14bが後側係止部28の係止突起28aを乗り越え、かつ、前記被係止部14aが前側係止部30の係止突起30bに後ろから突き当る位置まで当該ハーネス側コネクタ14を押し込む。これにより、ハーネス側コネクタ14は両係止部28,30によって前後から挟持された状態となる。
【0035】
2)前記ワイヤハーネス10を車両内に配索してそのユニットケース16を特定位置に設置する。例えば、当該ワイヤハーネス10を自動車のインストゥルメントパネルの裏側に配線する場合には、そのワイヤハーネス本体12をパネル裏側のリンホース(強度部材)に沿って配索するとともに、前記ユニットケース16をパネル近傍の床面上に設置する。
【0036】
3)前記ユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に前側から各電子ユニット18を挿入し、その背面が図7に示すようにユニットケース16内のストッパ43に突き当る位置まで当該電子ユニット18を押し込む。これにより、前記各電子ユニット18のケース32における被係止突起40及び被係止爪42とユニットケース16側の係止片44,46とが係合して当該電子ユニット18が当該ユニットケース16内の所定位置に保持されるとともに、各電子ユニット18のユニット側コネクタ20がこれに対応するハーネス側コネクタ14に対峙した状態になる。さらに、各電子ユニット18のコネクタ規制爪37がユニットケース16側の前側係止部30の特定部位(その転回部30aと係止突起30bとの間の部位)を外向きに押圧することにより、当該前側係止部30が弾性変形してその係止突起30bがハーネス側コネクタ14の被係止部14aから外側に離脱し、当該ハーネス側コネクタ14が前側(ユニット側コネクタ20側)に変位することが許容された状態になる。
【0037】
4)3)の状態で各ハーネス側コネクタ14を前側に押込み操作することにより、同コネクタ14をこれに対応するユニット側コネクタ20に結合する。
【0038】
以上のような構成によれば、予め各ハーネス側コネクタ14がユニットケース16に仮保持されたワイヤハーネス10を工場等で製造しておくことにより、このワイヤハーネス10を車両内に配索した後は、そのユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に電子ユニット18を挿入し、次いで各ハーネス側コネクタ14をユニット側コネクタ20側に操作するだけの簡単な作業で、各コネクタ14,20の結合を行うことができる。従って、従来のように狭い車両スペース内で複数のハーネス側コネクタ14の中から各ユニット側コネクタ20に対応するものを選び出したり、当該ハーネス側コネクタ14をユニット側コネクタ20と嵌合可能な位置に合せたりする必要がなく、コネクタ14,20同士の結合を効率良く行うことができる。
【0039】
しかも、コネクタ14,20同士の結合は、ハーネス側コネクタ14を直接操作することによって行われるので、例えばユニットケース16側にハーネス側コネクタ14を完全
固定しておいてこのハーネス側コネクタ14に電子ユニット18の挿入力でそのユニット側コネクタ20を嵌合させる場合に比べ、コネクタ14,20同士の嵌合をより確実に行うことが可能であり、その接続信頼性を高めることができる。
【0040】
さらに、この参考例では、各電子ユニット18がユニットケース16内に挿入されるのに伴って、その電子ユニット18のコネクタ規制爪37(それ以外の部位でもよい)が前側係止部30を押圧してその係止突起30bによるハーネス側コネクタ14の前側への変位の規制を解除する作用をするため、その後はハーネス側コネクタ14の押込み操作を楽に行うことができる利点がある。
【0041】
なお、この参考例においてユニットケース16による各ハーネス側コネクタ14の保持構造は前記のものに限らない。例えば、当該ハーネス側コネクタ14が相手方のユニット側コネクタ20と嵌合するためのストローク分だけ変位可能(スライド可能)となるように当該ハーネス側コネクタ14をユニットケース16に保持させておき、このユニットケース16への電子ユニット18の挿入後、前記ハーネス側コネクタ14をスライドさせて前記各電子ユニット18のユニット側コネクタ20に結合するようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明の実施の形態を図9〜図14に基づいて説明する。
【0043】
ここに示すワイヤハーネス10は、多数本の電線が束ねられてなるワイヤハーネス本体12と、そのワイヤハーネス本体12の特定の電線13の端末に設けられた複数個(図例では3個)のハーネス側コネクタ14と、これらのハーネス側コネクタ14を保持するユニットケース16とを含み、さらに、このユニットケース16に装着される操作部材50を備えている。
【0044】
前記各ハーネス側コネクタ14は、そのハウジング内に図略のコネクタ端子が縦方向に配列されて保持されたものであり、各コネクタ端子に前記ワイヤハーネス本体12に含まれている電線の端末が接続されている。また、そのハウジングの天壁及び底壁には被係止突起14cが突設され、同ハウジングの左右側面には略円柱状のカムフォロア15が外向きに突設されている。
【0045】
一方、前記ユニットケース16は、複数個(図例では3個)の電子ユニット18が挿入可能なものであり、その挿入状態で、各電子ユニット18に設けられているユニット側コネクタ20(図11〜図13)がこれに対応するハーネス側コネクタ14と対峙して結合可能な位置に保持されるようになっている。
【0046】
具体的に、このユニットケース16は、複数枚の縦壁21を有し、これらの縦壁21同士の間に前記各電子ユニット18がそれぞれ前側(図11〜図13では左側)から挿入可能な複数(図例では3つ)のユニット挿入空間22が形成されている。各ユニット挿入空間22の後側(図11〜図13では右側)は背壁24により塞がれているが、各ユニット挿入空間22同士の間の位置にはユニットケース16を上下に貫く操作部材差込溝25が形成されている。
【0047】
前記背壁24にはこれを前後方向に貫く複数の貫通孔26が前記操作部材差込溝25同士の間の位置にそれぞれ形成されており、これらの貫通孔26内に前記各ハーネス側コネクタ14が後側から挿入されて前後方向にスライド可能となるように保持される。また、貫通孔26の上下内面には内向きに係止突起29が突設され(図11〜図13)、この係止突起29を前記ハーネス側コネクタ14の被係止突起14cが乗り越えることにより同コネクタ14がユニットケース16に仮保持されるようになっている。
【0048】
さらに、前記各貫通孔26の左右両外側に位置する背壁24の部分にはこれをその肉厚方向(左右方向)に貫通する案内長孔27が形成されている。この案内長孔27は、前後方向に延び、かつ、前記カムフォロア15が嵌まり込み可能な幅寸法(上下寸法)を有している。また、この貫通長孔27に前記各カムフォロア15が嵌まり込んだ状態で当該カムフォロア15が前記貫通長孔27からさらに外側に突出して各操作部材差込溝25内に臨むように、当該カムフォロア15の突出寸法が設定されている。
【0049】
前記各電子ユニット18は、略直方体状のケース32を備え、その後部(図11〜図13では右側部)に前記ユニット側コネクタ20が固定されるとともに、このユニット側コネクタ20をユニット後方に開放するための窓36が前記ケース32の背壁に形成されている。
【0050】
前記各電子ユニット18のケース32の左右両側面には、上下一対の被係止突起32aと、その被係止突起32aの位置よりもやや前方でかつ上下方向外側の位置にある被係止突起32bとが形成されている。また、その左右両側面の後部には、カムフォロア33が外向きに突設され、このカムフォロア33の形状は、前記カムフォロア15と同じく略円柱状とされ、その突出寸法も同等に設定されている。
【0051】
これに対し、前記ユニットケース16の各縦壁21には、上下一対の係止片44が形成されている。これらの係止片44は、その前端部が左右方向に撓み変形可能な弾性片として形成され、当該前端部に上下に延びる内向きの係止突起44aを有しており、この係止突起44aが前記被係止突起32a,32bの双方と係合可能となる高さ位置に形成されている。そして、この係止突起44aが前記被係止突起32aを乗り越えるまで電子ユニット18がユニットケース16に挿入された位置が当該電子ユニット18の仮係止位置とされ、さらに前記係止突起44aが前記被係止突起32bを乗り越えるまで電子ユニット18がユニットケース16に挿入された位置が当該電子ユニット18の本係止位置とされている。
【0052】
また、前記各縦壁21の内側面には、前記電子ユニット18の挿入の際にそのカムフォロア33が嵌入可能な凹溝35が形成されている。この凹溝35は、前記縦壁21をその前端から前記操作部材差込溝25に至るまで前後方向に貫く形状を有し、この凹溝35を通って前記カムフォロア33が前記操作部材差込溝25まで進入できるようになっている。
【0053】
前記操作部材50は、前記ユニットケース16の各操作部材差込溝25内に下方から差込可能なカム板52と、これらのカム板52の下端同士を連結する底板54とを有し、各カム板52の内側面には、ユニットケース後側のコネクタ用カム溝56及びユニットケース前側のユニット用カム溝58が形成されている(図例では両カム溝56,58の形成領域の大半部分に同カム板52を貫通する貫通長孔が形成されている。)。
【0054】
前記コネクタ用カム溝56は、前記案内長孔27からその外側に突出したハーネス側コネクタ14のカムフォロア15が嵌まり込み可能な幅寸法を有し、その外側端(案内部材50の後端)56aから前方に向かうに従って大きな勾配で下方に変位する形状を有している。一方、前記ユニット用カム溝58は、前記凹溝35を通じて操作部材差込溝25内に進入する電子ユニット18側のカムフォロア33が嵌まり込み可能な幅寸法を有し、その外側端(案内部材50の前端)58aから後方に向かうに従って大きな勾配で下方に変位する形状を有している。両カム溝56,58の外側端56a,58aの位置は図例では同じ高さ位置に設定されている。
【0055】
前記カム板52の上端にはその板厚方向に撓み変形可能な被係止片53が形成され、そ
の上端に被係止突起53aが形成される一方、前記操作部材差込溝25に臨む背壁24の面には、前記被係止突起53aと係合して操作部材50を図9に示す仮係止位置に保持する仮係止凹部24aと、前記仮係止凹部24aよりも上側の位置で前記被係止突起53aと係合して前記操作部材50を図14に示す本係止位置に保持する本係止凹部24bとが形成されている。ここで、前記操作部材50の仮係止位置は、当該操作部材50の両カム溝56,58の外側端56a,58aが前記案内長孔27及び凹溝35と並ぶ高さ位置に設定されており、前記本係止位置は、前記カムフォロア15,33が前記各カム溝56,58の内側端(下端)56b,58bに至る高さ位置に設定されている。
【0056】
これらのカム溝56,58の形状は、その外側端56a,58aにそれぞれ前記カムフォロア15,33が嵌まり込んだ状態(図12(a)(b)の状態)から前記操作部材50がその仮係止位置から本係止位置まで上向きに操作されることにより、図13及び図14に示すように前記カムフォロア15,33をもつハーネス側コネクタ14と電子ユニット18とが互いに引き寄せられて当該ハーネス側コネクタ14と当該電子ユニット18のユニット側コネクタ20とが結合するように、設定されている。
【0057】
次に、この構造を利用した配線方法(電子ユニット18を車両側回路に接続する方法)を説明する。
【0058】
1)まず、図1等に示されるワイヤハーネス10を製造する。具体的には、ワイヤハーネス本体12から引き出した電線13の端末に各ハーネス側コネクタ14のコネクタ端子を接続する一方、ユニットケース16には操作部材50を仮係止位置(すなわち操作部材50の被係止突起53aがユニットケース背壁24の仮係止凹部24aに嵌まり込む位置)に仮係止させておき、この状態で前記ハーネス側コネクタ14を前記背壁24の貫通孔26内に外側から挿入して同コネクタ14の被係止突起14cが係止突起29を乗り越えるようにする(図11)。このとき、ハーネス側コネクタ14のカムフォロア15はユニットケース16の案内長孔27内に進入し、さらに、コネクタ用カム溝56の外側端(始端)56aに入り込む。
【0059】
2)前記ワイヤハーネス10を車両内に配索してそのユニットケース16を特定位置に設置する。例えば、当該ワイヤハーネス10を自動車のインストゥルメントパネルの裏側に配線する場合には、そのワイヤハーネス本体12をパネル裏側のリンホース(強度部材)に沿って配索するとともに、前記ユニットケース16をパネル近傍の床面上に設置する。
【0060】
3)前記ユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に前側から各電子ユニット18を挿入し、そのケース32の被係止突起32aがユニットケース16側の係止片44の係止突起44aを乗り越える深さ位置まで当該電子ユニット18を押し込む。このとき、当該電子ユニット18のケース32のカムフォロア33はユニットケース16側の凹溝35を通って操作部材50のユニット用カム溝58の外側端(始端)58aに入り込む(図12)。
【0061】
4)3)の状態から操作部材50を本係止位置(すなわち前記被係止突起53aが前記本係止凹部24bに嵌まり込む位置)まで上向きにスライド操作する。これに伴って両カムフォロア15,33はそれぞれカム溝56,58の外側端56a,58aから内側端56b,58bまで移行し、そのカム作用によって両カムフォロア15,33が互いに引き寄せられる。すなわち、前記カムフォロア15を有するハーネス側コネクタ14と、前記カムフォロア33を有する電子ユニット18のケース32とが互いに引き寄せられ、その結果、前記ハーネス側コネクタ14と前記電子ユニット18のユニット側コネクタ20とが結合される。
【0062】
以上のような構成によれば、予め各ハーネス側コネクタ14がユニットケース16に仮保持されたワイヤハーネス10を工場等で製造しておくことにより、このワイヤハーネス10を車両内に配索した後は、そのユニットケース16の各ユニット挿入空間22内に電子ユニット18を挿入し、次いで操作部材50をスライド操作するだけの簡単な作業で、各コネクタ14,20の結合を一括して行うことができる。従って、従来のように狭い車両スペース内で複数のハーネス側コネクタ14の中から各ユニット側コネクタ20に対応するものを選び出したり、当該ハーネス側コネクタ14の位置をユニット側コネクタ20と嵌合可能な位置に合せたりする作業が必要なくなり、コネクタ14,20同士の結合を効率良く行うことができる。
【0063】
しかも、コネクタ14,20同士の結合は、ハーネス側コネクタ14とユニットケース16とに係合する操作部材50を操作することによって行われるので、例えばユニットケース16側にハーネス側コネクタ14を完全固定しておいてこのハーネス側コネクタ14に電子ユニット18の挿入力でそのユニット側コネクタ20を嵌合させる場合に比べ、コネクタ14,20同士の結合をより確実に行うことが可能であり、その接続信頼性を高めることができる。
【0064】
なお、前記操作部材50は各コネクタ14,20ごとに設けてもよいが、図示のように複数のハーネス側コネクタ14及びこれに対応する電子ユニット18に共通の操作部材50を係合するようにすれば、その操作部材50の操作によって複数のコネクタ結合を一斉に行うことができ、作業効率はさらに高められることになる。
【0065】
特に、図例のカム機構のように、前記操作部材50の操作ストロークがコネクタ14,20同士の嵌合ストロークよりも大きくなるようにカム溝56,58の形状を設定して倍力機構(すなわち操作部材50の操作力よりも大きなコネクタ嵌合力を発生させる機構)を構築するようにすれば、比較的低い操作力でコネクタ嵌合を行うことが可能であり、操作性はより高められる。
【0066】
前記操作部材50は、例えば前記ハーネス側コネクタ14と電子ユニット18のうちのいずれか一方のみに係合するようにし、他方はユニットケース16に固定しておくようにしてもよい。ただし、図例のようにハーネス側コネクタ14と電子ユニット18の双方を操作部材50に係合して両者がコネクタ結合方向(互いに接近する方向)に移動するようにすれば、コネクタ14,20の嵌合に必要なストロークをハーネス側コネクタ14の移動量と電子ユニット18の移動量とに分散させることが可能になる。
【0067】
また、本発明において、操作部材はコネクタ結合方向と異なる方向に操作されるものであれば、その具体的な構造は問わず、前記のようにスライド操作されるものの他、例えばレバー操作(回動操作)されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 ワイヤハーネス
12 ワイヤハーネス本体
14 ハーネス側コネクタ
15 カムフォロア
16 ユニットケース
18 電子ユニット
20 ユニット側コネクタ
22 ユニット挿入空間
28 後側係止片(コネクタ保持部)
30 前側係止片(コネクタ保持部)
33 カムフォロア
50 操作部材
56 コネクタ用カム溝
58 ユニット用カム溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット側コネクタを有する複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための車両用ワイヤハーネスであって、複数本の電線が束ねられたワイヤハーネス本体と、このワイヤハーネス本体の端末に設けられ、前記各ユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な複数のハーネス側コネクタと、前記各電子ユニットを所定の配列で収容するとともに、前記電子ユニットを前記配列で収容した状態で当該電子ユニットのユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な位置に前記ハーネス側コネクタを保持するコネクタ保持部を有するユニットケースと、このユニットケースに前記ユニット側コネクタとハーネス側コネクタとの結合方向と異なる特定方向に操作可能となるように設けられ、その操作前の状態で前記ハーネス側コネクタとこのユニットケースに挿入される電子ユニットとの少なくとも一方と係合する係合部をもつ操作部材とを備え、その係合状態から前記特定方向に前記操作部材が操作されることにより前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとが互いに結合するコネクタ結合方向に相対変位するように前記係合部の形状が設定されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材は、前記係合部を複数組のハーネス側コネクタ及びユニットケースについて有し、当該操作部材の前記特定方向の操作によって前記複数組のハーネス側コネクタとユニットケースのユニット側コネクタとが一斉に前記コネクタ結合方向に相対変位するように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、当該操作部材に加えられる操作力よりも大きな力で前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとを結合させる倍力機構を構成していることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタとこれに対応する電子ユニットとの双方に係合するものであり、当該操作部材の前記特定方向の操作に伴って前記ハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタの双方を前記コネクタ結合方向に変位させるように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタ及びこれに対応する電子ユニットの少なくとも一方に設けられるカムフォロアと係合するカム溝であり、当該操作部材の特定方向の操作に伴って前記カムフォロアが設けられている部材が前記コネクタ結合方向に変位するように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ワイヤハーネスを製造する工程と、この車両用ワイヤハーネスを車両内に配索してそのユニットケースを特定位置に設置する工程と、そのユニットケース内に電子ユニットを挿入する工程と、当該ユニットケースに設けられている操作部材を特定方向に操作することにより当該ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタとを互いに結合する方向に相対変位させる工程とを順に行うことを特徴とする車両の配線方法。
【請求項1】
ユニット側コネクタを有する複数個の電子ユニットを車両側回路に接続するための車両用ワイヤハーネスであって、複数本の電線が束ねられたワイヤハーネス本体と、このワイヤハーネス本体の端末に設けられ、前記各ユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な複数のハーネス側コネクタと、前記各電子ユニットを所定の配列で収容するとともに、前記電子ユニットを前記配列で収容した状態で当該電子ユニットのユニット側コネクタにそれぞれ結合可能な位置に前記ハーネス側コネクタを保持するコネクタ保持部を有するユニットケースと、このユニットケースに前記ユニット側コネクタとハーネス側コネクタとの結合方向と異なる特定方向に操作可能となるように設けられ、その操作前の状態で前記ハーネス側コネクタとこのユニットケースに挿入される電子ユニットとの少なくとも一方と係合する係合部をもつ操作部材とを備え、その係合状態から前記特定方向に前記操作部材が操作されることにより前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとが互いに結合するコネクタ結合方向に相対変位するように前記係合部の形状が設定されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材は、前記係合部を複数組のハーネス側コネクタ及びユニットケースについて有し、当該操作部材の前記特定方向の操作によって前記複数組のハーネス側コネクタとユニットケースのユニット側コネクタとが一斉に前記コネクタ結合方向に相対変位するように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、当該操作部材に加えられる操作力よりも大きな力で前記ハーネス側コネクタとユニット側コネクタとを結合させる倍力機構を構成していることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項3記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタとこれに対応する電子ユニットとの双方に係合するものであり、当該操作部材の前記特定方向の操作に伴って前記ハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタの双方を前記コネクタ結合方向に変位させるように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項3または4記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記操作部材の係合部は、前記ハーネス側コネクタ及びこれに対応する電子ユニットの少なくとも一方に設けられるカムフォロアと係合するカム溝であり、当該操作部材の特定方向の操作に伴って前記カムフォロアが設けられている部材が前記コネクタ結合方向に変位するように構成されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ワイヤハーネスを製造する工程と、この車両用ワイヤハーネスを車両内に配索してそのユニットケースを特定位置に設置する工程と、そのユニットケース内に電子ユニットを挿入する工程と、当該ユニットケースに設けられている操作部材を特定方向に操作することにより当該ユニットケースに保持されているハーネス側コネクタと前記電子ユニットのユニット側コネクタとを互いに結合する方向に相対変位させる工程とを順に行うことを特徴とする車両の配線方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−177205(P2010−177205A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85927(P2010−85927)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【分割の表示】特願2005−167149(P2005−167149)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【分割の表示】特願2005−167149(P2005−167149)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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