車両用内装パネル
【課題】パネル本体に割れが発生した場合でも、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制する。
【解決手段】本発明のインストルメントパネル10では、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間に、パネル本体12の表面に密着されると共に、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有する第二フィルム22が設けられている。従って、車両衝突時に例えば乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突してパネル本体12に割れ13が発生した場合でも、この割れ13の周辺部において第二フィルム22の一部22Aが伸長し、パネル本体12の表面が第二フィルム22によって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12A(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【解決手段】本発明のインストルメントパネル10では、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間に、パネル本体12の表面に密着されると共に、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有する第二フィルム22が設けられている。従って、車両衝突時に例えば乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突してパネル本体12に割れ13が発生した場合でも、この割れ13の周辺部において第二フィルム22の一部22Aが伸長し、パネル本体12の表面が第二フィルム22によって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12A(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装パネルとしては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1には、基材の表面側にアクリル系フィルムが設けられると共に、この基材の裏面側に衝撃吸収用のリブが形成された車両用内装部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−120681号公報
【特許文献2】特開平10−58613号公報
【特許文献3】特開2001−276725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の車両用内装パネルにおいては、車両衝突時に例えば乗員等が車両用内装パネルと衝突した場合に、衝撃吸収用のリブの根元に応力が集中したり、このリブの間に局所的な変形が生じたりしてパネル本体に割れが発生し、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することが想定される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、パネル本体に割れが発生した場合でも、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる車両用内装パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用内装パネルは、車室内に設けられ、車両に備えられた車両構造体を覆うパネル本体と、前記パネル本体の表面側に設けられた第一フィルムと、前記パネル本体の表面と前記第一フィルムとの間に積層状態で設けられると共に、前記パネル本体の表面に密着され、且つ、前記第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムと、を備えている。
【0007】
この車両用内装パネルによれば、パネル本体の表面と第一フィルムとの間には、パネル本体の表面に密着されると共に、第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムが設けられている。従って、車両衝突時に例えば乗員等が車両用内装パネルと衝突してパネル本体に割れが発生した場合でも、この割れの周辺部において第二フィルムの一部が伸長し、パネル本体の表面が第二フィルムによって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の車両用内装パネルは、請求項1に記載の車両用内装パネルにおいて、前記パネル本体の一部に、表面側に凹を成す凹部が形成され、前記第二フィルムの一部が、前記凹部の内面に沿って設けられた構成とされている。
【0009】
この車両用内装パネルによれば、車両衝突時に乗員等が車両用内装パネルと衝突して、パネル本体が凹部を起点として割れたときには、第二フィルムの一部が凹部の両側で拘束された状態でこの第二フィルムの一部に対し引っ張り力が作用するので、この第二フィルムの一部が凹部の内面から剥がれた状態で伸長される。
【0010】
ここで、この第二フィルムの一部は、元々、凹部の内面に沿って設けられている。従って、上述のように、パネル本体が凹部を起点として割れたときには、元々、この凹部の内面に沿って設けられていた第二フィルムの一部を弛みとして利用することができるので、この割れたパネル片の変位量が増大しても、この第二フィルムの一部が伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部が露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用内装パネルは、請求項1又は請求項2に記載の車両用内装パネルにおいて、前記パネル本体の裏面に、前記車両構造体に向けて突出すると共に、前記車両構造体との間に、前記車両構造体との干渉を抑制するための隙間を有する変形規制部が形成された構成とされている。
【0012】
この車両用内装パネルによれば、車両衝突時に乗員等が車両用内装パネルと衝突してパネル本体に割れが発生し、このうち変形規制部を有するパネル片が車体構造体側へ変位された場合でも、変形規制部が車体構造体と当接される。従って、このパネル片の車体構造体側への変位、すなわち、パネル本体の変形を規制することができるので、第二フィルムの一部が伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部が露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0013】
なお、請求項4に記載のように、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用内装パネルは、インストルメントパネルとされていると好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、本発明によれば、パネル本体に割れが発生した場合でも、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装パネルとしてのインストルメントパネルを車両前後方向後側から見た図である。
【図2A】図1に示されるインストルメントパネルの要部拡大側面断面図である。
【図2B】図2Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図3B】図3Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図4B】図4Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図5B】図5Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図6A】本発明の参考例に係るインストルメントパネルを示す要部拡大側面断面図である。
【図6B】図6Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
なお、図1における矢印UP、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。また、図2A,図2Bにおける矢印S、矢印Rは、インストルメントパネル10の表側、裏側をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用内装部材としてのインストルメントパネル10は、パネル本体12を備えている。このパネル本体12は、樹脂製とされており、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインパネリインフォースメントに取り付けられている。また、このパネル本体12は、車室内に設けられており、この車両に備えられた例えば空調装置やエアバッグ装置等の車両構造体14を車両上下方向上側から覆っている。
【0019】
このインストルメントパネル10において、その上部におけるステアリングホイール16と重なる領域以外の領域は、乗員の頭部の衝撃を吸収するための衝撃吸収部18として構成されている。なお、図1では、理解の容易のために、衝撃吸収部18は、ハッチングが施されて示されている。
【0020】
この衝撃吸収部18は、図2Aに示される断面構成とされている。すなわち、この衝撃吸収部18は、上述のパネル本体12と、第一フィルム20と、第二フィルム22とを有する積層構造とされている。
【0021】
第一フィルム20は、パネル本体12の表面側に設けられており、第二フィルム22の表面に例えば接着等により密着されている。この第一フィルム20は、表面に傷が付きにくいように硬質性を有すると共に、直射日光に対する耐光性や、模様等が印刷される等による装飾性などを備えている。この第一フィルム20としては、例えば、アクリル系フィルムとされていると好適である。
【0022】
第二フィルム22は、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間に設けられており、パネル本体12の表面に例えば接着等により密着されている。この第二フィルム22は、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有している。この第二フィルム22としては、例えば、オレフィン系フィルム、又は、オレフィン系エラストマーフィルムとされていると好適である。
【0023】
なお、第一フィルム20及び第二フィルム22は、衝撃吸収部18のみならず、パネル本体12の全体に設けられていても良い。また、第二フィルム22が衝撃吸収部18のみに設けられ、第一フィルム20がパネル本体12の全体に設けられた構成とされていても良い。
【0024】
また、第二フィルム22は、予めフィルム体として形成されたものがパネル本体12に貼り付けられても良く、また、例えば塗装等によってパネル本体12の表面にフィルム体として形成されたものであっても良い。また、第一フィルム20も、予めフィルム体として形成されたものが第二フィルム22に貼り付けられても良く、また、例えば塗装等によって第二フィルム22の表面にフィルム体として形成されたものであっても良い。
【0025】
また、パネル本体12の裏面には、補強リブ30が形成されている。
【0026】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
このインストルメントパネル10によれば、図2Aに示されるように、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間には、パネル本体12の表面に密着されると共に、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有する第二フィルム22が設けられている。
【0028】
従って、車両衝突時に例えば乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突して、このインストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力された場合には、パネル本体12が弾性変形することに加えて、この第二フィルム22が弾性的に伸長することで衝撃力を吸収することができる。これにより、パネル本体12単体の場合に比して、衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0029】
しかも、このインストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力されたときに、図2Bに示されるように、万が一、補強リブ30の根元部分を起点としてパネル本体12に割れ13が発生した場合でも、この割れ13の周辺部において第二フィルム22の一部22Aが伸長し、パネル本体12の表面が第二フィルム22によって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12A(すなわち、シャープエッジ)が車室内に露出することを抑制することができる。
【0030】
また、このようにパネル本体12の割れた部分の端部12Aの露出を抑制する構造とすることにより、パネル本体12の薄肉化が可能となるので、軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0031】
また、このインストルメントパネル10によれば、パネル本体12の表面に、硬質性、、耐光性、装飾性などを備えた第一フィルム20と、伸縮性を備えた第二フィルム22とが個別に設けられているので、インストルメントパネル10の耐久性や意匠性と、シャープエッジの車室内への露出を抑制する機能性とを両立させることができる。
【0032】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0033】
なお、以下に説明する各図においても、矢印S、矢印Rは、インストルメントパネル10の表側、裏側をそれぞれ示している。
【0034】
上記実施形態において、衝撃吸収部18は、例えば、次のように構成されていても良い。すなわち、図3Aに示される変形例では、パネル本体12の一部が、表面側に凹を成す凹部26として構成されており、第二フィルム22の一部22Aは、凹部26の内面に沿って設けられている。また、第一フィルム20の一部20Aは、この第二フィルム22の一部22Aに沿って設けられている。
【0035】
この構成によれば、車両衝突時に乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突して、図3Bに示されるように、パネル本体12が凹部26を起点として割れたときには、第二フィルム22の一部22Aが凹部26の両側で拘束された状態でこの第二フィルム22の一部22Aに対し引っ張り力が作用するので、この第二フィルム22の一部22Aが凹部26の内面から剥がれた状態で伸長される。
【0036】
ここで、この第二フィルム22の一部22Aは、元々、凹部26の内面に沿って設けられている。従って、上述のように、パネル本体12が凹部26を起点として割れたときには、元々、この凹部26の内面に沿って設けられていた第二フィルム22の一部22Aを弛みとして利用することができるので、この割れたパネル片15の変位量が増大しても、この第二フィルム22の一部22Aが伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12Aが露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0037】
なお、上述の図3A,図3Bに示される変形例では、パネル本体12の一部が凹部26として構成されていたが、図4A,図4Bに示される変形例のように、パネル本体12の表面に凹部28が形成されていても良い。
【0038】
このように構成されていても、上述の図3A,図3Bに示される変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
また、上記実施形態において、衝撃吸収部18は、次のように構成されていても良い。すなわち、図5Aに示される変形例では、車両構造体14に向けて突出する変形規制部32が形成されている。この変形規制部32は、車両構造体14との間に車両構造体14との干渉を抑制するための隙間34を有している。この隙間34は、車両走行時における異音対策のために設けられている。
【0040】
この構成によれば、図5Bに示されるように、インストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力されてパネル本体12に割れ13が発生し、このうち変形規制部32を有するパネル片15が車体構造体14側へ変位された場合でも、変形規制部32が車体構造体14と当接される。従って、このパネル片15の車体構造体14側への変位、すなわち、パネル本体12の変形を規制することができるので、第二フィルム22の一部22Aが伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12Aが露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、この変形例において、隙間34(変形規制部32の長さ)は、変形規制部32が車体構造体14と当接されるまでパネル片15が車体構造体14側へ変位された場合でも、第二フィルム22の一部22Aが伸長限度内に収まるように、その寸法が設定されている。
【0042】
また、この衝突荷重Fの入力方向は、乗員の座席をニュートラルポジション(中央位置)に設定すると共に乗員がシートベルトを着用した状態において、車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突等が発生したときに、乗員の頭部がインストルメントパネル10に二次衝突する方向に相当する。
【0043】
また、この図5A,図5Bに示される変形例は、上述の図3A,図3Bに示される変形例又は図4A,図4Bに示される変形例と組み合わされても良い。
【0044】
また、上記実施形態において、インストルメントパネル10には、その上部におけるステアリングホイール16と重なる領域以外の領域に、乗員の頭部の衝撃を吸収するための衝撃吸収部18が形成されていたが、この衝撃吸収部18の下方に位置する領域に、衝撃吸収部18と同様な衝撃吸収部が乗員の膝部の衝撃を吸収するために形成されていても良い。
【0045】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0046】
また、本発明は、インストルメントパネル以外の車両用内装パネル(例えば、クラスタパネルやピラーガーニッシュ等)に適用されても良いことは勿論である。
【0047】
次に、本発明の参考例について説明する。
【0048】
図6Aに示される本発明の参考例に係る車両用内装パネルとしてのインストルメントパネル40は、上述の本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル10に対し、第一フィルム20を省いた構成とされている。なお、フィルム42は、上述の第二フィルム22に相当する。
【0049】
このように構成されていても、上述の本発明の一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
なお、この本発明の参考例に係るインストルメントパネル40についても、上述の本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル10と同様の変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 インストルメントパネル(車両用内装パネル)
12 パネル本体
14 車両構造体
20 第一フィルム
22 第二フィルム
26,28 凹部
32 変形規制部
34 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装パネルとしては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1には、基材の表面側にアクリル系フィルムが設けられると共に、この基材の裏面側に衝撃吸収用のリブが形成された車両用内装部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−120681号公報
【特許文献2】特開平10−58613号公報
【特許文献3】特開2001−276725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の車両用内装パネルにおいては、車両衝突時に例えば乗員等が車両用内装パネルと衝突した場合に、衝撃吸収用のリブの根元に応力が集中したり、このリブの間に局所的な変形が生じたりしてパネル本体に割れが発生し、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することが想定される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、パネル本体に割れが発生した場合でも、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる車両用内装パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用内装パネルは、車室内に設けられ、車両に備えられた車両構造体を覆うパネル本体と、前記パネル本体の表面側に設けられた第一フィルムと、前記パネル本体の表面と前記第一フィルムとの間に積層状態で設けられると共に、前記パネル本体の表面に密着され、且つ、前記第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムと、を備えている。
【0007】
この車両用内装パネルによれば、パネル本体の表面と第一フィルムとの間には、パネル本体の表面に密着されると共に、第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムが設けられている。従って、車両衝突時に例えば乗員等が車両用内装パネルと衝突してパネル本体に割れが発生した場合でも、この割れの周辺部において第二フィルムの一部が伸長し、パネル本体の表面が第二フィルムによって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の車両用内装パネルは、請求項1に記載の車両用内装パネルにおいて、前記パネル本体の一部に、表面側に凹を成す凹部が形成され、前記第二フィルムの一部が、前記凹部の内面に沿って設けられた構成とされている。
【0009】
この車両用内装パネルによれば、車両衝突時に乗員等が車両用内装パネルと衝突して、パネル本体が凹部を起点として割れたときには、第二フィルムの一部が凹部の両側で拘束された状態でこの第二フィルムの一部に対し引っ張り力が作用するので、この第二フィルムの一部が凹部の内面から剥がれた状態で伸長される。
【0010】
ここで、この第二フィルムの一部は、元々、凹部の内面に沿って設けられている。従って、上述のように、パネル本体が凹部を起点として割れたときには、元々、この凹部の内面に沿って設けられていた第二フィルムの一部を弛みとして利用することができるので、この割れたパネル片の変位量が増大しても、この第二フィルムの一部が伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部が露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0011】
請求項3に記載の車両用内装パネルは、請求項1又は請求項2に記載の車両用内装パネルにおいて、前記パネル本体の裏面に、前記車両構造体に向けて突出すると共に、前記車両構造体との間に、前記車両構造体との干渉を抑制するための隙間を有する変形規制部が形成された構成とされている。
【0012】
この車両用内装パネルによれば、車両衝突時に乗員等が車両用内装パネルと衝突してパネル本体に割れが発生し、このうち変形規制部を有するパネル片が車体構造体側へ変位された場合でも、変形規制部が車体構造体と当接される。従って、このパネル片の車体構造体側への変位、すなわち、パネル本体の変形を規制することができるので、第二フィルムの一部が伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体の割れた部分の端部が露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0013】
なお、請求項4に記載のように、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用内装パネルは、インストルメントパネルとされていると好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したように、本発明によれば、パネル本体に割れが発生した場合でも、このパネル本体の割れた部分の端部(すなわち、シャープエッジ)が露出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装パネルとしてのインストルメントパネルを車両前後方向後側から見た図である。
【図2A】図1に示されるインストルメントパネルの要部拡大側面断面図である。
【図2B】図2Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図3B】図3Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図4B】図4Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルの変形例を示す要部拡大側面断面図である。
【図5B】図5Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【図6A】本発明の参考例に係るインストルメントパネルを示す要部拡大側面断面図である。
【図6B】図6Aに示されるインストルメントパネルのパネル本体に割れが生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
なお、図1における矢印UP、矢印OUTは、車両上下方向上側、車両幅方向外側(右側)をそれぞれ示している。また、図2A,図2Bにおける矢印S、矢印Rは、インストルメントパネル10の表側、裏側をそれぞれ示している。
【0018】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る車両用内装部材としてのインストルメントパネル10は、パネル本体12を備えている。このパネル本体12は、樹脂製とされており、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインパネリインフォースメントに取り付けられている。また、このパネル本体12は、車室内に設けられており、この車両に備えられた例えば空調装置やエアバッグ装置等の車両構造体14を車両上下方向上側から覆っている。
【0019】
このインストルメントパネル10において、その上部におけるステアリングホイール16と重なる領域以外の領域は、乗員の頭部の衝撃を吸収するための衝撃吸収部18として構成されている。なお、図1では、理解の容易のために、衝撃吸収部18は、ハッチングが施されて示されている。
【0020】
この衝撃吸収部18は、図2Aに示される断面構成とされている。すなわち、この衝撃吸収部18は、上述のパネル本体12と、第一フィルム20と、第二フィルム22とを有する積層構造とされている。
【0021】
第一フィルム20は、パネル本体12の表面側に設けられており、第二フィルム22の表面に例えば接着等により密着されている。この第一フィルム20は、表面に傷が付きにくいように硬質性を有すると共に、直射日光に対する耐光性や、模様等が印刷される等による装飾性などを備えている。この第一フィルム20としては、例えば、アクリル系フィルムとされていると好適である。
【0022】
第二フィルム22は、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間に設けられており、パネル本体12の表面に例えば接着等により密着されている。この第二フィルム22は、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有している。この第二フィルム22としては、例えば、オレフィン系フィルム、又は、オレフィン系エラストマーフィルムとされていると好適である。
【0023】
なお、第一フィルム20及び第二フィルム22は、衝撃吸収部18のみならず、パネル本体12の全体に設けられていても良い。また、第二フィルム22が衝撃吸収部18のみに設けられ、第一フィルム20がパネル本体12の全体に設けられた構成とされていても良い。
【0024】
また、第二フィルム22は、予めフィルム体として形成されたものがパネル本体12に貼り付けられても良く、また、例えば塗装等によってパネル本体12の表面にフィルム体として形成されたものであっても良い。また、第一フィルム20も、予めフィルム体として形成されたものが第二フィルム22に貼り付けられても良く、また、例えば塗装等によって第二フィルム22の表面にフィルム体として形成されたものであっても良い。
【0025】
また、パネル本体12の裏面には、補強リブ30が形成されている。
【0026】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
このインストルメントパネル10によれば、図2Aに示されるように、パネル本体12の表面と第一フィルム20との間には、パネル本体12の表面に密着されると共に、第一フィルム20よりも高い伸縮性を有する第二フィルム22が設けられている。
【0028】
従って、車両衝突時に例えば乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突して、このインストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力された場合には、パネル本体12が弾性変形することに加えて、この第二フィルム22が弾性的に伸長することで衝撃力を吸収することができる。これにより、パネル本体12単体の場合に比して、衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0029】
しかも、このインストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力されたときに、図2Bに示されるように、万が一、補強リブ30の根元部分を起点としてパネル本体12に割れ13が発生した場合でも、この割れ13の周辺部において第二フィルム22の一部22Aが伸長し、パネル本体12の表面が第二フィルム22によって被覆された状態に維持される。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12A(すなわち、シャープエッジ)が車室内に露出することを抑制することができる。
【0030】
また、このようにパネル本体12の割れた部分の端部12Aの露出を抑制する構造とすることにより、パネル本体12の薄肉化が可能となるので、軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0031】
また、このインストルメントパネル10によれば、パネル本体12の表面に、硬質性、、耐光性、装飾性などを備えた第一フィルム20と、伸縮性を備えた第二フィルム22とが個別に設けられているので、インストルメントパネル10の耐久性や意匠性と、シャープエッジの車室内への露出を抑制する機能性とを両立させることができる。
【0032】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0033】
なお、以下に説明する各図においても、矢印S、矢印Rは、インストルメントパネル10の表側、裏側をそれぞれ示している。
【0034】
上記実施形態において、衝撃吸収部18は、例えば、次のように構成されていても良い。すなわち、図3Aに示される変形例では、パネル本体12の一部が、表面側に凹を成す凹部26として構成されており、第二フィルム22の一部22Aは、凹部26の内面に沿って設けられている。また、第一フィルム20の一部20Aは、この第二フィルム22の一部22Aに沿って設けられている。
【0035】
この構成によれば、車両衝突時に乗員の頭部等がインストルメントパネル10と二次衝突して、図3Bに示されるように、パネル本体12が凹部26を起点として割れたときには、第二フィルム22の一部22Aが凹部26の両側で拘束された状態でこの第二フィルム22の一部22Aに対し引っ張り力が作用するので、この第二フィルム22の一部22Aが凹部26の内面から剥がれた状態で伸長される。
【0036】
ここで、この第二フィルム22の一部22Aは、元々、凹部26の内面に沿って設けられている。従って、上述のように、パネル本体12が凹部26を起点として割れたときには、元々、この凹部26の内面に沿って設けられていた第二フィルム22の一部22Aを弛みとして利用することができるので、この割れたパネル片15の変位量が増大しても、この第二フィルム22の一部22Aが伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12Aが露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0037】
なお、上述の図3A,図3Bに示される変形例では、パネル本体12の一部が凹部26として構成されていたが、図4A,図4Bに示される変形例のように、パネル本体12の表面に凹部28が形成されていても良い。
【0038】
このように構成されていても、上述の図3A,図3Bに示される変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
また、上記実施形態において、衝撃吸収部18は、次のように構成されていても良い。すなわち、図5Aに示される変形例では、車両構造体14に向けて突出する変形規制部32が形成されている。この変形規制部32は、車両構造体14との間に車両構造体14との干渉を抑制するための隙間34を有している。この隙間34は、車両走行時における異音対策のために設けられている。
【0040】
この構成によれば、図5Bに示されるように、インストルメントパネル10に衝突荷重Fが入力されてパネル本体12に割れ13が発生し、このうち変形規制部32を有するパネル片15が車体構造体14側へ変位された場合でも、変形規制部32が車体構造体14と当接される。従って、このパネル片15の車体構造体14側への変位、すなわち、パネル本体12の変形を規制することができるので、第二フィルム22の一部22Aが伸長限度を超えて破断することを抑制することができる。これにより、このパネル本体12の割れた部分の端部12Aが露出することをより一層効果的に抑制することができる。
【0041】
なお、この変形例において、隙間34(変形規制部32の長さ)は、変形規制部32が車体構造体14と当接されるまでパネル片15が車体構造体14側へ変位された場合でも、第二フィルム22の一部22Aが伸長限度内に収まるように、その寸法が設定されている。
【0042】
また、この衝突荷重Fの入力方向は、乗員の座席をニュートラルポジション(中央位置)に設定すると共に乗員がシートベルトを着用した状態において、車両前面衝突又は車両前面オフセット衝突等が発生したときに、乗員の頭部がインストルメントパネル10に二次衝突する方向に相当する。
【0043】
また、この図5A,図5Bに示される変形例は、上述の図3A,図3Bに示される変形例又は図4A,図4Bに示される変形例と組み合わされても良い。
【0044】
また、上記実施形態において、インストルメントパネル10には、その上部におけるステアリングホイール16と重なる領域以外の領域に、乗員の頭部の衝撃を吸収するための衝撃吸収部18が形成されていたが、この衝撃吸収部18の下方に位置する領域に、衝撃吸収部18と同様な衝撃吸収部が乗員の膝部の衝撃を吸収するために形成されていても良い。
【0045】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0046】
また、本発明は、インストルメントパネル以外の車両用内装パネル(例えば、クラスタパネルやピラーガーニッシュ等)に適用されても良いことは勿論である。
【0047】
次に、本発明の参考例について説明する。
【0048】
図6Aに示される本発明の参考例に係る車両用内装パネルとしてのインストルメントパネル40は、上述の本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル10に対し、第一フィルム20を省いた構成とされている。なお、フィルム42は、上述の第二フィルム22に相当する。
【0049】
このように構成されていても、上述の本発明の一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0050】
なお、この本発明の参考例に係るインストルメントパネル40についても、上述の本発明の一実施形態に係るインストルメントパネル10と同様の変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 インストルメントパネル(車両用内装パネル)
12 パネル本体
14 車両構造体
20 第一フィルム
22 第二フィルム
26,28 凹部
32 変形規制部
34 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、車両に備えられた車両構造体を覆うパネル本体と、
前記パネル本体の表面側に設けられた第一フィルムと、
前記パネル本体の表面と前記第一フィルムとの間に積層状態で設けられると共に、前記パネル本体の表面に密着され、且つ、前記第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムと、
を備えた車両用内装パネル。
【請求項2】
前記パネル本体の一部には、表面側に凹を成す凹部が形成され、
前記第二フィルムの一部は、前記凹部の内面に沿って設けられている、
請求項1に記載の車両用内装パネル。
【請求項3】
前記パネル本体の裏面には、前記車両構造体に向けて突出すると共に、前記車両構造体との間に、前記車両構造体との干渉を抑制するための隙間を有する変形規制部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用内装パネル。
【請求項4】
前記車両用内装パネルは、インストルメントパネルとされている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用内装パネル。
【請求項1】
車室内に設けられ、車両に備えられた車両構造体を覆うパネル本体と、
前記パネル本体の表面側に設けられた第一フィルムと、
前記パネル本体の表面と前記第一フィルムとの間に積層状態で設けられると共に、前記パネル本体の表面に密着され、且つ、前記第一フィルムよりも高い伸縮性を有する第二フィルムと、
を備えた車両用内装パネル。
【請求項2】
前記パネル本体の一部には、表面側に凹を成す凹部が形成され、
前記第二フィルムの一部は、前記凹部の内面に沿って設けられている、
請求項1に記載の車両用内装パネル。
【請求項3】
前記パネル本体の裏面には、前記車両構造体に向けて突出すると共に、前記車両構造体との間に、前記車両構造体との干渉を抑制するための隙間を有する変形規制部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の車両用内装パネル。
【請求項4】
前記車両用内装パネルは、インストルメントパネルとされている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用内装パネル。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2011−105093(P2011−105093A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260921(P2009−260921)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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