車両用内装部品の製造装置
【課題】 本発明は、車両用内装部品の縁部において表皮の端末処理を行う装置であって、狭いスペースにおいても使用が可能で、樹脂芯材の変形を防止できる車両用内装部品の製造装置を提供する。
【解決手段】 中央部に開口が開設された樹脂芯材の表面に、表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、表皮を貼着した樹脂芯材を載置する受け台2と、 樹脂芯材を押圧して前記受け台に仮固定する押え冶具8と、開口の縁部に沿って樹脂芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズル5と、熱風ノズルにより加熱軟化された樹脂芯材の端末と表皮材の端末を、樹脂芯材の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具15と、を備え、押え冶具8は、樹脂芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部8と、押圧部を回動自在に支持する支持部11と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】 中央部に開口が開設された樹脂芯材の表面に、表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、表皮を貼着した樹脂芯材を載置する受け台2と、 樹脂芯材を押圧して前記受け台に仮固定する押え冶具8と、開口の縁部に沿って樹脂芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズル5と、熱風ノズルにより加熱軟化された樹脂芯材の端末と表皮材の端末を、樹脂芯材の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具15と、を備え、押え冶具8は、樹脂芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部8と、押圧部を回動自在に支持する支持部11と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品の端末処理を行う製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装着されて使用される内装部品の多くは、合成樹脂製の芯材に表皮材を貼着して構成されている。これら車両用内装部品の工業製品としての市場価値を高めるためには、表皮材をムラなく均一に貼着して美観を向上させることが重要である。
【0003】
図7は、車両のルーフパネルの室内面側に取り付けられる成形天井3を模式的に示した説明図である。成形天井3は、保形性並びにルーフパネルに取り付けるための剛性を備えた樹脂製の芯材に外観性能、手触り感の優れた表皮42を貼着して構成されている。図7(a)は、成形天井3を車室側から見た全体の外形を示しており、ルーフパネルに設けられるサンルーフに対応した開口51を有している点に特徴がある。
【0004】
サンルーフ用開口51を備えた、この種の成形天井は、ガラス繊維等を混入した熱可塑性樹脂板を加熱軟化処理した後、コールドプレス成形により所定の形状に成形される樹脂芯材41に、表皮42を一体貼着したものである。コールドプレス成形後、金型から取り出された状態の成形天井3には、レーザーカット装置を用いて、製品外形に沿ったトリムカット処理が施されると共に、サンルーフ用開口51が形成される。そして、図7(b)に示すように、サンルーフ用開口51の縁部Hにおいて、表皮42の端末と樹脂芯材41を裏面に巻き込んで処理する所謂ヘミング処理が施される。
【0005】
特許文献1に記載された従来技術では、成形天井におけるサンルーフ用開口の縁部に沿ってヘミング処理を行う表皮の端末処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のサンルーフ用開口縁部のヘミング処理を行う装置においては、処理中に樹脂芯材が変形して製品寸法が安定しないこと、また、ヘミング処理を行う装置のサイズが大きく、幅の狭い部分における処理ができない等の問題があった。
【0008】
以下に、従来技術の問題点について図面を参照しながら説明する。図8は、従来のヘミング装置50を示す模式図である。ヘミング装置50は、成形天井3を載置する受け冶具2と、ヘミング処理を行うヘミングブロック15、および、支持筐体4で構成されている。
【0009】
ヘミングブロックは、ブロックシリンダ16、17で垂直、水平方向に駆動されて樹脂芯材41と表皮42の端末を巻き込み処理する。支持筐体4には、駆動シリンダ55ないし58を介して熱風ノズル51、熱風遮蔽板52および押え板54が取り付けられている。また、支持筐体4は、受け台2に成形天井3を載置または取り外す際に、筐体シリンダ14によって上昇させられ、ヘミング処理する間は下降した状態に置かれる。
【0010】
図9は、成形天井3の構成部材の樹脂芯材41の端末を加熱軟化処理する工程を示す説明図である。成形天井3が受け冶具2に載置された後、図9(a)に示すように、ノズル用シリンダ55および遮蔽用シリンダ56、57により駆動された熱風ノズル51と熱風遮蔽板52が下降し、処理位置にセットされる。また、押圧用シリンダ58によって駆動された押え板54が下降して、成形天井3を受け冶具2に仮固定する。
【0011】
図9(b)は、熱風ノズル51と熱風遮蔽板52が処理位置にセットされ、押え板54により成形天井3が受け冶具に押圧されて仮固定された状態を示している。この状態で、熱風ノズル51の先端から高温の熱風が吹き出し、樹脂芯材41の端末を加熱して軟化させる。熱風遮蔽板52は、熱風ノズル51から吹き出した熱風が樹脂芯材41の端末以外の部分に当らないように遮蔽する。
【0012】
図10は、ヘミングブロック15を駆動して加熱軟化処理された樹脂芯材41と表皮42の端末をヘミング処理する工程を示した説明図である。図10(a)に示すように、加熱軟化処理を完了すると熱風ノズル51は、ノズル用シリンダにより上昇させられ、熱風遮蔽板52は、成形天井3のサンルーフ開口縁部を押えた状態に保持される。この状態において、ブロックシリンダ17によってヘミングブロック15が図中矢印に示す方向に前進し、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げる。
【0013】
次に、図10(b)に示すように、遮蔽板52は、遮蔽用シリンダ57に駆動されて図中矢印の方向に後退し、さらに、図10(c)に示すように、遮蔽用シリンダ56により上方に退避する。一方、ヘミングブロック15は、図10(b)に示すように、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げた後、図10(c)に示すように、ブロックシリンダ16により下方に駆動されて、樹脂芯材41と表皮42の端末を巻き込んで接着する。
【0014】
上述したように、従来のヘミング装置50においては、遮蔽板52が遮蔽用シリンダ57により後退するので、その駆動量だけ余分なスペースが必要となっていた。このため、2つのサンルーフ開口が並列に配置される成形天井などにおいては、2つのサンルーフ開口縁部の幅が狭くなり、押え板54および熱風ノズル51、熱風遮蔽板52をセットするスペースを確保できないという問題が生じていた。
【0015】
また、遮蔽板52を後退させるスペースを省くために、熱風ノズル51と熱風遮蔽板52を同時に上方に退避させてヘミング処理を行うと、図11に示すように、ヘミングブロック15に押し出されて樹脂芯材41が変形する不具合が生じる場合があった。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両用内装部品の縁部において端末処理を行う装置であって、狭いスペースにおいても使用が可能で、車両用内装部品の縁部の変形を防止できる車両用内装部品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、芯材の表面に表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、表皮を貼着した芯材を載置する受け台と、芯材を押圧して受け台に仮固定する押え冶具と、芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズルと、熱風ノズルにより加熱軟化された芯材の端末部と表皮材の端末を、芯材裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具と、を備え、押え冶具は、芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部と、押圧部を回動自在に支持する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、芯材の形状に適合した押圧部が、芯材を受け台に安定して仮固定するので、端末部を折り曲げ処理する際に、遮蔽板を退避させるための余分なスペースを必要としない。また、樹脂芯材に適合した押圧部の形状が、樹脂芯材の変形を防止する。
【0019】
さらに、本発明に係る車両用内装部品の製造装置において、押え冶具は、芯材の形状に適合して押圧を加える位置と、芯材の折り曲げ部に接触しないで離脱して押圧を開放する位置と、の間に、押圧部の回動を規制するストッパを有することを特徴とする。
【0020】
これにより、押圧部を下降させて芯材を押圧し、また上昇させて退避する機構を、簡便な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置によれば、狭いスペースにおいても表皮と芯材の端末処理を行うことができ、車両用内装部品の変形を防止できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図3】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図4】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図5】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の他の実施態様を示す説明図である。
【図7】車両用内装部品である成形天井を示す説明図である。
【図8】従来技術に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図9】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【図10】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【図11】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。最初に、本発明に係る車両用内装部品の製造装置であるヘミング装置10の説明を行い、次に、ヘミング処理の実施態様について説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る車両用内装部品の製造装置であるヘミング装置10を示す模式図である。ヘミング装置10は、樹脂芯材41を載置する受け台である受け冶具2と、加工冶具をセットした支持筐体4と、樹脂芯材41と表皮42の端末部を樹脂芯材41の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具で構成されている。巻き込み冶具は、図中に示すヘミングブロック15である。
【0025】
支持筐体4に取り付けられている加工冶具は、樹脂芯材41の端末部を加熱して軟化させる熱風ノズル5と熱風遮断板6を備えた加熱ユニット25と、樹脂芯材41を押圧して受け冶具2に仮固定する押え冶具である。加熱ユニット25は、ノズル用シリンダ12を介して支持筐体4に取り付けられている。押え冶具は、樹脂芯材41の形状に適合して押圧を加える押圧部と、押圧部を回動自在に支持する支持部9とで構成されている。押圧部は図中に示す押え板8であり、押え用シリンダ13に取り付けられた支持部9にヒンジ部11を介して回動自在に取り付けられている。また、押え板8は、樹脂芯材41の開口縁部の形状に沿うようにセットすることができる。
【0026】
図2(a)は、押え板8と支持部9で構成される押え冶具を模式的に示す斜視図である。押え板8は、3つのヒンジ11で回動自在に結合されている。また、ヒンジ11の間には、2つのストッパが配置されている。図2(b)は、押え冶具のA−A断面を示す模式図である。3つのヒンジ11で回動する押え板8は、ストッパ21に当接することにより回動が規制され、樹脂芯材41を押圧することが可能となる。一方、ヘミング処理を完了して、押圧シリンダの駆動により樹脂芯材41から離脱して押圧を開放する際には、押え板8は自重で下方に回動し、図2(c)に示すように、支持部9の下端面と押え板8の端面が、図中に示すP点において当接し、下方への回動が規制される。すなわち、支持部9の下端面が、押圧を開放した状態でのストッパとして機能する。
【0027】
以下、ヘミング装置10を用いたサンルーフ用開口51(図7参照)の縁部における表皮の端末処理について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、サンルーフ開口51の縁部全周にわたってヘミング処理を施すために、加熱ユニット25および押え板8を一組とした加工ユニットが、図7(a)に示すサンルーフ用開口51の短辺に沿ってそれぞれ1台ずつ、長辺に沿ってそれぞれ2台ずつ、計6台が支持筐体4に取り付けられる。また、各加工ユニットに対応するヘミングブロック15も、同台数がサンルーフ開口51の内側に配置される。以下の実施態様では、そのうちの一組の動作について説明を行う。
【0028】
図3は、成形天井3の樹脂芯材41の端末部を加熱軟化処理する工程を示す説明図である。成形天井3が受け冶具2に載置された後、図3(a)に示すように、ノズル用シリンダ12によって駆動された熱風ノズル5と熱風遮蔽板6を備えた加熱ユニット25が下降し、処理位置にセットされる。また、押圧用シリンダ13によって駆動された押え板8が下降して、成形天井3を受け冶具2に押圧する。
【0029】
成形天井3は、ガラス繊維を混入したPP樹脂をシート状に押し出した原反シートを加熱軟化処理した後、コールドプレス成形することにより所要形状に成形された樹脂芯材41と、表面に貼着された表皮42が貼付される。表皮42の素材としては、例えば、トリコットクロスが使用される。また、ジャージ、モケット、ニット等のクロスシートを使用することができ、あるいは、不織布シート、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。尚、樹脂芯材41と表皮42との接着性を考慮して、表皮42側にホットメルトフィルムが予めラミネート処理されている。
【0030】
図3(b)に示すように、押え板8により成形天井3が受け冶具に押圧されて仮固定された状態を示している。押え板54は、樹脂芯材41の面に沿ってサンルーフ開口51の縁部まで押圧を加える形状となっており、ヘミングブロック15に押し曲げられて変形することを防いでいる(図11参照)。この状態において、熱風ノズル5から吹き出す高温の熱風により、樹脂芯材41の端末を加熱して軟化させる。熱風ノズル5は、20〜600℃まで温度調整が可能であり、450〜500℃の範囲、好適には480℃の熱風を吹き付けており、樹脂芯材41の端末部の加熱温度は、170〜190℃になるように調整される。熱風遮蔽板6は、熱風ノズル5から吹き出した熱風が樹脂芯材41の端末以外の部分に当らないように遮蔽する。
【0031】
図4は、ヘミングブロック15による表皮42と樹脂芯材41の端末処理を説明するための模式図である。図4(a)に示すように、加熱軟化処理を完了した熱風ノズル5と熱風遮蔽板6の加熱ユニット25は、ノズル用シリンダ12により上方に退避させられ、ブロックシリンダ17によってヘミングブロック15が図中矢印に示す方向に前進し、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げる。さらに、図4(b)に示すように、ヘミングブロック15は、ブロックシリンダ16により下方に駆動されて、表皮42と樹脂芯材41の端末を裏面に折り曲げる。
【0032】
上記のとおり、熱風遮蔽板6は、熱風ノズル5と共に上方に退避するので、従来例において説明したような後退動作をする必要がなく、そのスペースを省くことが可能となる(図10b参照)。また、前述したように、押え板8がサンルーフ開口51の縁部まで押圧しているので、ヘミングブロック15が表皮42の端末と樹脂芯材端末を押し曲げる際に、樹脂芯材41が変形することを防止できる。
【0033】
図5は、ヘミング処理を完了した後において、ヘミングブロック15および押え板8が退避する状態を示す模式図である。ヘミングブロック15は、ブロックシリンダ16,17によって駆動され、図中に矢印で示す動作を行い後方の位置へ退避する。一方、支持部9が押え用シリンダ13によって上方へ移動すると、押え板8は、前述したように、ヒンジ11を軸として自重で下方へ回動しながら、上方へ退避する。これにより、押え板8の先端部がヘミング処理された表皮42と樹脂芯材41の端末部に触れることがないので、折り曲げられた表皮42と樹脂芯材41の端末の変形を防ぐことができる。
【0034】
図6は、本発明に係るヘミング装置の別の実施態様を示す模式図である。図6(a)に示すように、サンルーフ開口51の縁部周辺において、樹脂芯材43が曲面を有する成形天井34であっても、押え板32をその形状に適合させることにより、ヘミング処理を実施することができる。また、前述したように、熱風遮蔽板6を後退させるスペースを省くことができるので、図6(b)に示すように、加熱ユニット25と押え板8を2組配置する場合に、その配置間隔をコンパクトにすることができる。これにより、サンルーフ開口51が並列して配置された成形天井35において、2つのサンルーフ開口51の対向する縁部の間に加熱ユニット25と押え板8を配置することが可能となり、ヘミング処理を行うことができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施態様について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は上述した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
2 受け冶具
3、34 成形天井
5 熱風ノズル
6 熱風遮蔽板
8、32、54 押え板
9 支持部
10、50 ヘミング処理装置
11 ヒンジ
15 ヘミングブロック
21 押え用ストッパ
41 樹脂芯材
42 表皮
51 サンルーフ用開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装部品の端末処理を行う製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内に装着されて使用される内装部品の多くは、合成樹脂製の芯材に表皮材を貼着して構成されている。これら車両用内装部品の工業製品としての市場価値を高めるためには、表皮材をムラなく均一に貼着して美観を向上させることが重要である。
【0003】
図7は、車両のルーフパネルの室内面側に取り付けられる成形天井3を模式的に示した説明図である。成形天井3は、保形性並びにルーフパネルに取り付けるための剛性を備えた樹脂製の芯材に外観性能、手触り感の優れた表皮42を貼着して構成されている。図7(a)は、成形天井3を車室側から見た全体の外形を示しており、ルーフパネルに設けられるサンルーフに対応した開口51を有している点に特徴がある。
【0004】
サンルーフ用開口51を備えた、この種の成形天井は、ガラス繊維等を混入した熱可塑性樹脂板を加熱軟化処理した後、コールドプレス成形により所定の形状に成形される樹脂芯材41に、表皮42を一体貼着したものである。コールドプレス成形後、金型から取り出された状態の成形天井3には、レーザーカット装置を用いて、製品外形に沿ったトリムカット処理が施されると共に、サンルーフ用開口51が形成される。そして、図7(b)に示すように、サンルーフ用開口51の縁部Hにおいて、表皮42の端末と樹脂芯材41を裏面に巻き込んで処理する所謂ヘミング処理が施される。
【0005】
特許文献1に記載された従来技術では、成形天井におけるサンルーフ用開口の縁部に沿ってヘミング処理を行う表皮の端末処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のサンルーフ用開口縁部のヘミング処理を行う装置においては、処理中に樹脂芯材が変形して製品寸法が安定しないこと、また、ヘミング処理を行う装置のサイズが大きく、幅の狭い部分における処理ができない等の問題があった。
【0008】
以下に、従来技術の問題点について図面を参照しながら説明する。図8は、従来のヘミング装置50を示す模式図である。ヘミング装置50は、成形天井3を載置する受け冶具2と、ヘミング処理を行うヘミングブロック15、および、支持筐体4で構成されている。
【0009】
ヘミングブロックは、ブロックシリンダ16、17で垂直、水平方向に駆動されて樹脂芯材41と表皮42の端末を巻き込み処理する。支持筐体4には、駆動シリンダ55ないし58を介して熱風ノズル51、熱風遮蔽板52および押え板54が取り付けられている。また、支持筐体4は、受け台2に成形天井3を載置または取り外す際に、筐体シリンダ14によって上昇させられ、ヘミング処理する間は下降した状態に置かれる。
【0010】
図9は、成形天井3の構成部材の樹脂芯材41の端末を加熱軟化処理する工程を示す説明図である。成形天井3が受け冶具2に載置された後、図9(a)に示すように、ノズル用シリンダ55および遮蔽用シリンダ56、57により駆動された熱風ノズル51と熱風遮蔽板52が下降し、処理位置にセットされる。また、押圧用シリンダ58によって駆動された押え板54が下降して、成形天井3を受け冶具2に仮固定する。
【0011】
図9(b)は、熱風ノズル51と熱風遮蔽板52が処理位置にセットされ、押え板54により成形天井3が受け冶具に押圧されて仮固定された状態を示している。この状態で、熱風ノズル51の先端から高温の熱風が吹き出し、樹脂芯材41の端末を加熱して軟化させる。熱風遮蔽板52は、熱風ノズル51から吹き出した熱風が樹脂芯材41の端末以外の部分に当らないように遮蔽する。
【0012】
図10は、ヘミングブロック15を駆動して加熱軟化処理された樹脂芯材41と表皮42の端末をヘミング処理する工程を示した説明図である。図10(a)に示すように、加熱軟化処理を完了すると熱風ノズル51は、ノズル用シリンダにより上昇させられ、熱風遮蔽板52は、成形天井3のサンルーフ開口縁部を押えた状態に保持される。この状態において、ブロックシリンダ17によってヘミングブロック15が図中矢印に示す方向に前進し、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げる。
【0013】
次に、図10(b)に示すように、遮蔽板52は、遮蔽用シリンダ57に駆動されて図中矢印の方向に後退し、さらに、図10(c)に示すように、遮蔽用シリンダ56により上方に退避する。一方、ヘミングブロック15は、図10(b)に示すように、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げた後、図10(c)に示すように、ブロックシリンダ16により下方に駆動されて、樹脂芯材41と表皮42の端末を巻き込んで接着する。
【0014】
上述したように、従来のヘミング装置50においては、遮蔽板52が遮蔽用シリンダ57により後退するので、その駆動量だけ余分なスペースが必要となっていた。このため、2つのサンルーフ開口が並列に配置される成形天井などにおいては、2つのサンルーフ開口縁部の幅が狭くなり、押え板54および熱風ノズル51、熱風遮蔽板52をセットするスペースを確保できないという問題が生じていた。
【0015】
また、遮蔽板52を後退させるスペースを省くために、熱風ノズル51と熱風遮蔽板52を同時に上方に退避させてヘミング処理を行うと、図11に示すように、ヘミングブロック15に押し出されて樹脂芯材41が変形する不具合が生じる場合があった。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両用内装部品の縁部において端末処理を行う装置であって、狭いスペースにおいても使用が可能で、車両用内装部品の縁部の変形を防止できる車両用内装部品の製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は、芯材の表面に表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、表皮を貼着した芯材を載置する受け台と、芯材を押圧して受け台に仮固定する押え冶具と、芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズルと、熱風ノズルにより加熱軟化された芯材の端末部と表皮材の端末を、芯材裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具と、を備え、押え冶具は、芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部と、押圧部を回動自在に支持する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、芯材の形状に適合した押圧部が、芯材を受け台に安定して仮固定するので、端末部を折り曲げ処理する際に、遮蔽板を退避させるための余分なスペースを必要としない。また、樹脂芯材に適合した押圧部の形状が、樹脂芯材の変形を防止する。
【0019】
さらに、本発明に係る車両用内装部品の製造装置において、押え冶具は、芯材の形状に適合して押圧を加える位置と、芯材の折り曲げ部に接触しないで離脱して押圧を開放する位置と、の間に、押圧部の回動を規制するストッパを有することを特徴とする。
【0020】
これにより、押圧部を下降させて芯材を押圧し、また上昇させて退避する機構を、簡便な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用内装部品の製造装置によれば、狭いスペースにおいても表皮と芯材の端末処理を行うことができ、車両用内装部品の変形を防止できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図3】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図4】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図5】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の実施態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係る車両用内装部品の製造装置の他の実施態様を示す説明図である。
【図7】車両用内装部品である成形天井を示す説明図である。
【図8】従来技術に係る車両用内装部品の製造装置を示す模式図である。
【図9】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【図10】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【図11】従来技術に係る車両用内装部品の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。最初に、本発明に係る車両用内装部品の製造装置であるヘミング装置10の説明を行い、次に、ヘミング処理の実施態様について説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る車両用内装部品の製造装置であるヘミング装置10を示す模式図である。ヘミング装置10は、樹脂芯材41を載置する受け台である受け冶具2と、加工冶具をセットした支持筐体4と、樹脂芯材41と表皮42の端末部を樹脂芯材41の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具で構成されている。巻き込み冶具は、図中に示すヘミングブロック15である。
【0025】
支持筐体4に取り付けられている加工冶具は、樹脂芯材41の端末部を加熱して軟化させる熱風ノズル5と熱風遮断板6を備えた加熱ユニット25と、樹脂芯材41を押圧して受け冶具2に仮固定する押え冶具である。加熱ユニット25は、ノズル用シリンダ12を介して支持筐体4に取り付けられている。押え冶具は、樹脂芯材41の形状に適合して押圧を加える押圧部と、押圧部を回動自在に支持する支持部9とで構成されている。押圧部は図中に示す押え板8であり、押え用シリンダ13に取り付けられた支持部9にヒンジ部11を介して回動自在に取り付けられている。また、押え板8は、樹脂芯材41の開口縁部の形状に沿うようにセットすることができる。
【0026】
図2(a)は、押え板8と支持部9で構成される押え冶具を模式的に示す斜視図である。押え板8は、3つのヒンジ11で回動自在に結合されている。また、ヒンジ11の間には、2つのストッパが配置されている。図2(b)は、押え冶具のA−A断面を示す模式図である。3つのヒンジ11で回動する押え板8は、ストッパ21に当接することにより回動が規制され、樹脂芯材41を押圧することが可能となる。一方、ヘミング処理を完了して、押圧シリンダの駆動により樹脂芯材41から離脱して押圧を開放する際には、押え板8は自重で下方に回動し、図2(c)に示すように、支持部9の下端面と押え板8の端面が、図中に示すP点において当接し、下方への回動が規制される。すなわち、支持部9の下端面が、押圧を開放した状態でのストッパとして機能する。
【0027】
以下、ヘミング装置10を用いたサンルーフ用開口51(図7参照)の縁部における表皮の端末処理について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、サンルーフ開口51の縁部全周にわたってヘミング処理を施すために、加熱ユニット25および押え板8を一組とした加工ユニットが、図7(a)に示すサンルーフ用開口51の短辺に沿ってそれぞれ1台ずつ、長辺に沿ってそれぞれ2台ずつ、計6台が支持筐体4に取り付けられる。また、各加工ユニットに対応するヘミングブロック15も、同台数がサンルーフ開口51の内側に配置される。以下の実施態様では、そのうちの一組の動作について説明を行う。
【0028】
図3は、成形天井3の樹脂芯材41の端末部を加熱軟化処理する工程を示す説明図である。成形天井3が受け冶具2に載置された後、図3(a)に示すように、ノズル用シリンダ12によって駆動された熱風ノズル5と熱風遮蔽板6を備えた加熱ユニット25が下降し、処理位置にセットされる。また、押圧用シリンダ13によって駆動された押え板8が下降して、成形天井3を受け冶具2に押圧する。
【0029】
成形天井3は、ガラス繊維を混入したPP樹脂をシート状に押し出した原反シートを加熱軟化処理した後、コールドプレス成形することにより所要形状に成形された樹脂芯材41と、表面に貼着された表皮42が貼付される。表皮42の素材としては、例えば、トリコットクロスが使用される。また、ジャージ、モケット、ニット等のクロスシートを使用することができ、あるいは、不織布シート、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。尚、樹脂芯材41と表皮42との接着性を考慮して、表皮42側にホットメルトフィルムが予めラミネート処理されている。
【0030】
図3(b)に示すように、押え板8により成形天井3が受け冶具に押圧されて仮固定された状態を示している。押え板54は、樹脂芯材41の面に沿ってサンルーフ開口51の縁部まで押圧を加える形状となっており、ヘミングブロック15に押し曲げられて変形することを防いでいる(図11参照)。この状態において、熱風ノズル5から吹き出す高温の熱風により、樹脂芯材41の端末を加熱して軟化させる。熱風ノズル5は、20〜600℃まで温度調整が可能であり、450〜500℃の範囲、好適には480℃の熱風を吹き付けており、樹脂芯材41の端末部の加熱温度は、170〜190℃になるように調整される。熱風遮蔽板6は、熱風ノズル5から吹き出した熱風が樹脂芯材41の端末以外の部分に当らないように遮蔽する。
【0031】
図4は、ヘミングブロック15による表皮42と樹脂芯材41の端末処理を説明するための模式図である。図4(a)に示すように、加熱軟化処理を完了した熱風ノズル5と熱風遮蔽板6の加熱ユニット25は、ノズル用シリンダ12により上方に退避させられ、ブロックシリンダ17によってヘミングブロック15が図中矢印に示す方向に前進し、表皮42と樹脂芯材41の端末を折り曲げる。さらに、図4(b)に示すように、ヘミングブロック15は、ブロックシリンダ16により下方に駆動されて、表皮42と樹脂芯材41の端末を裏面に折り曲げる。
【0032】
上記のとおり、熱風遮蔽板6は、熱風ノズル5と共に上方に退避するので、従来例において説明したような後退動作をする必要がなく、そのスペースを省くことが可能となる(図10b参照)。また、前述したように、押え板8がサンルーフ開口51の縁部まで押圧しているので、ヘミングブロック15が表皮42の端末と樹脂芯材端末を押し曲げる際に、樹脂芯材41が変形することを防止できる。
【0033】
図5は、ヘミング処理を完了した後において、ヘミングブロック15および押え板8が退避する状態を示す模式図である。ヘミングブロック15は、ブロックシリンダ16,17によって駆動され、図中に矢印で示す動作を行い後方の位置へ退避する。一方、支持部9が押え用シリンダ13によって上方へ移動すると、押え板8は、前述したように、ヒンジ11を軸として自重で下方へ回動しながら、上方へ退避する。これにより、押え板8の先端部がヘミング処理された表皮42と樹脂芯材41の端末部に触れることがないので、折り曲げられた表皮42と樹脂芯材41の端末の変形を防ぐことができる。
【0034】
図6は、本発明に係るヘミング装置の別の実施態様を示す模式図である。図6(a)に示すように、サンルーフ開口51の縁部周辺において、樹脂芯材43が曲面を有する成形天井34であっても、押え板32をその形状に適合させることにより、ヘミング処理を実施することができる。また、前述したように、熱風遮蔽板6を後退させるスペースを省くことができるので、図6(b)に示すように、加熱ユニット25と押え板8を2組配置する場合に、その配置間隔をコンパクトにすることができる。これにより、サンルーフ開口51が並列して配置された成形天井35において、2つのサンルーフ開口51の対向する縁部の間に加熱ユニット25と押え板8を配置することが可能となり、ヘミング処理を行うことができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施態様について詳述したが、本発明に係る車両用内装部品の製造装置は上述した実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
2 受け冶具
3、34 成形天井
5 熱風ノズル
6 熱風遮蔽板
8、32、54 押え板
9 支持部
10、50 ヘミング処理装置
11 ヒンジ
15 ヘミングブロック
21 押え用ストッパ
41 樹脂芯材
42 表皮
51 サンルーフ用開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の表面に、表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、
前記表皮を貼着した芯材を載置する受け台と、
前記芯材を押圧して前記受け台に仮固定する押え冶具と、
前記芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズルと、
前記熱風ノズルにより加熱軟化された芯材の端末と表皮材の端末を、前記芯材の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具と、
を備え、
前記押え冶具は、
前記芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部と、
前記押圧部を回動自在に支持する支持部と、
を備えることを特徴とする車両用内装部品の製造装置。
【請求項2】
前記押え冶具は、
前記芯材の形状に適合して押圧を加える位置と、前記芯材の折り曲げ部に接触しないで離脱して押圧を開放する位置と、の間に、前記押圧部の回動を規制するストッパを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【請求項1】
芯材の表面に、表皮を貼着した車両用内装部品の製造装置であって、
前記表皮を貼着した芯材を載置する受け台と、
前記芯材を押圧して前記受け台に仮固定する押え冶具と、
前記芯材の端末を加熱して軟化させる熱風ノズルと、
前記熱風ノズルにより加熱軟化された芯材の端末と表皮材の端末を、前記芯材の裏面側に折り曲げて巻き込み固定する巻き込み冶具と、
を備え、
前記押え冶具は、
前記芯材の形状に適合して押圧を加える押圧部と、
前記押圧部を回動自在に支持する支持部と、
を備えることを特徴とする車両用内装部品の製造装置。
【請求項2】
前記押え冶具は、
前記芯材の形状に適合して押圧を加える位置と、前記芯材の折り曲げ部に接触しないで離脱して押圧を開放する位置と、の間に、前記押圧部の回動を規制するストッパを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用内装部品の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−280107(P2010−280107A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134572(P2009−134572)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】
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