車両用冷凍サイクル装置
【課題】エンジン回転数の変動の影響を受けにくく、正確に冷媒不足の判定が行える車両用冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】エアコンECU5は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
これによれば、容量制御弁38を有するコンプレッサ1を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動してコンプレッサ回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、正確に冷媒不足の判定を行うことができる。
【解決手段】エアコンECU5は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
これによれば、容量制御弁38を有するコンプレッサ1を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動してコンプレッサ回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、正確に冷媒不足の判定を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行用エンジンによって駆動される圧縮機を有する車両用冷凍サイクル装置に関するものであり、特に冷凍サイクル中の冷媒(ガス)不足の検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクル中の冷媒(ガス)不足を検出する技術として、下記特許文献1〜3に示されるような技術がある。下記の特許文献1に示すクーラサイクルでは、コンプレッサ(圧縮機)の吐出部近辺に冷媒の圧力および温度検出器を設け、圧力が一定値以下で且つ温度が一定値以上のときにのみ冷媒量不足信号を発生させる検知装置を設けている。
【0003】
また、下記の特許文献2に示す空気調和機では、コンプレッサの吐出側における圧力Hpと吐出ガス温度Tdとの関係において、Td>A×Hp+B(Aは係数、Bは定数)の場合にガス欠と判断している。また、下記の特許文献3に示す車両用ヒートポンプ式冷暖房装置では、冷凍サイクル中の冷媒不足判定を、起動前の飽和圧力値と、起動してから所定時間経過後の圧力値との2つの圧力値によって判定している。
【特許文献1】特開昭58−95175号公報
【特許文献2】特開平6−185837号公報
【特許文献3】特許第3404990号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されるように、車両エンジンによって駆動されるコンプレッサで冷媒循環させる冷凍サイクルでは、コンプレッサの回転数がエンジン回転数に依存して大きく変動するものとなる。そのため、上記特許文献1ではエンジン回転数の変動の影響も考慮しているものの、正確な冷媒不足の判定が難しいという問題点がある。ちなみに上記特許文献2の冷凍サイクルは定置式であり、インバータ制御の電動式コンプレッサを用いている。また、上記特許文献3の冷凍サイクルは車両用であるが、コンプレッサには電動式コンプレッサもしくは油圧駆動式のコンプレッサを用いている。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、エンジン回転数の変動の影響を受けにくく、正確に冷媒不足の判定が行える車両用冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項9に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両エンジン(4)によって駆動される圧縮機(1)、放熱器(6)、減圧手段(8)、蒸発器(9)を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクル(R)と、圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって圧縮機(1)の吐出容量を制御する容量制御機構(38)と、車両エンジン(4)の回転数に関連する回転数信号が入力され、容量制御機構(38)を制御する制御手段(5)とを備え、
制御手段(5)には、圧縮機(1)が吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、冷凍サイクル(R)中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備え、
制御手段(5)は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0007】
この請求項1に記載の発明によれば、容量制御機構(38)を有する圧縮機(1)を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動して圧縮機回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、圧縮機(1)が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、可変状態検出手段として、容量制御機構(38)を制御して吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流(Imax)と、実際に容量制御機構(38)に出力する制御電流(Ic)とを比較し、制御電流(Ic)が可変開始電流(Imax)よりも小さい場合に可変状態であると判定することを特徴としている。
【0009】
この請求項2に記載の発明によれば、容量可変を開始させる際の可変開始電流(Imax)に対して容量可変中の制御電流(Ic)は小さくて済むため、出力している制御電流(Ic)が可変開始電流(Imax)よりも小さいか否かを判定することで容易に容量可変中か否かを検出することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、蒸発器(9)の蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備え、
制御手段(5)は、検出された蒸発器後温度(Te)と、所定時間前に検出された蒸発器後温度(Te)とを比較して温度変化量(ΔTe)を算出し、温度変化量(ΔTe)の絶対値が所定値よりも小さい場合に、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0011】
この請求項3に記載の発明によれば、容量可変状態の検出に加え、定常状態であることを蒸発器後温度(Te)の変化率が所定値よりも小さいことで検出することにより、より確実に定常状態を選択して、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、冷凍サイクル(R)を起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0013】
この請求項4に記載の発明によれば、起動初期で冷凍サイクルが安定に向かっている過渡期には冷媒不足判定を行わず、安定的な稼働となってから冷媒不足判定を開始するようになるため、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒圧力(Pd)を検出する吐出圧検出手段(39)と、圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒温度(Td)を検出する吐出温検出手段(40)とを備え、
制御手段(5)は、冷媒不足検出手段として、検出された吐出側冷媒圧力(Pd)から冷媒不足を判定する吐出側冷媒温度(Td)の閾値(TDO)を決め、検出された吐出側冷媒温度(Td)と閾値(TDO)とを比較して吐出側冷媒温度(Td)が閾値(TDO)よりも高い場合に冷媒不足であると判定することを特徴としている。
【0015】
この請求項5に記載の発明によれば、吐出側冷媒圧力(Pd)と吐出側冷媒温度(Td)とで判定を行うことにより、外気温度やエンジン回転数などの外的要因による影響を受けにくく、広い冷媒量領域で正確な判定が行える。
【0016】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置において、圧縮機(1)に吸入される吸入側冷媒圧力(Ps)を検出する吸入圧検出手段(41)を備え、
制御手段(5)は、検出される吸入側冷媒圧力(Ps)に応じて閾値(TDO)を補正することを特徴としている。
【0017】
この請求項6に記載の発明によれば、吐出側冷媒温度(Td)は、吐出側冷媒圧力(Pd)と吸入側冷媒圧力(Ps)と圧縮効率とで決まるため、さらに低圧側の吸入側冷媒圧力(Ps)にて補正を加えることで、より正確に冷媒不足を判定することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明では、請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、検出される蒸発器後温度(Te)に応じて閾値(TDO)を補正することを特徴としている。
【0019】
この請求項7に記載の発明によれば、通常、冷凍サイクルでは冷却制御や除霜制御を行うために、蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備えている。このため、吸入側冷媒圧力(Ps)を蒸発器後温度(Te)から推定することで吸入圧検出手段(41)を不要とすることができ、センサ数を低減してコストを抑えることができる。
【0020】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル(R)の稼働状況を表示する表示手段(36)を備え、
制御手段(5)は、冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、表示手段(36)に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力することを特徴としている。
【0021】
この請求項8に記載の発明によれば、通常ならば乗員が冷却能力の異常に気付いてから冷媒不足が判明して処置が成されるが、乗員に対して早期に(冷媒不足度合いが小さいうちに)知らしめることにより、乗員に冷却能力不足の不満を抱かせる前に圧縮機保護の処置が早期に成されるようになる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷媒として二酸化炭素(CO2)冷媒を使用していることを特徴としている。
【0023】
この請求項9に記載の発明によれば、二酸化炭素(CO2)冷媒を用いて吐出側冷媒圧力(Pd)が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルでは、フロン冷媒などを用いて吐出側冷媒圧力(Pd)が冷媒の臨界圧力以下となる亜臨界冷凍サイクルに対して吐出側冷媒温度(Td)が高くなる。このため、通常では冷媒不足による吐出温度保護が入り易くなるが、本冷媒不足検出制御を適用することで二酸化炭素(CO2)冷媒を用いても吐出温度保護が入りにくくすることができ、より確実に冷房能力を確保することができる。
【0024】
なお、上記各手段および特許請求の範囲に記載する各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1ないし図3は、本発明の実施形態に係るオートエアコンシステムを示すものであり、図1はオートエアコンシステムの全体構成を示した模式図、図2は図1のオートエアコンシステムにおける制御系の構成を示すブロック図である。また、図3は図1、図2のエアコンECU5(制御手段)における全体制御プログラムを示すフローチャートである。
【0026】
車両用空調装置の冷凍サイクルRには、冷媒を吸入し圧縮して吐出するコンプレッサ(圧縮機)1が備えられている。なお、本実施形態の冷凍サイクルRは、冷媒に二酸化炭素(以下、CO2)冷媒を用いており、コンプレッサ1にて冷媒の臨界圧力以上まで圧縮する超臨界冷凍サイクルである。また、コンプレッサ1は容量可変機構によって圧縮容量が可変できる可変容量コンプレッサ1となっており、冷却能力可変手段として、容量制御弁(容量制御機構)38で圧縮容量を制御している。
【0027】
この容量制御弁38は本空調装置の制御手段としてのエアコンECU5によって制御されている。コンプレッサ1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、車両エンジン(車両走行用エンジン)4の動力がVベルト3および電磁クラッチ2を介してコンプレッサ1に伝達される。電磁クラッチ2への通電はエアコンECU5によって断続され、電磁クラッチ2が通電されて接続状態になると、コンプレッサ1は運転状態となる。これに反し、電磁クラッチ2の通電が遮断されて開離状態になると、コンプレッサ1は停止する。
【0028】
コンプレッサ1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、ガスクーラ(放熱器)6に流入し、ここで、図示しない冷却ファンによって送風される外気冷却風と熱交換して冷却される。なお冷媒は、臨界圧力以上まで圧縮されているため、この冷却では凝縮しない。このガスクーラ6で冷却された冷媒は、次に内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aを流通する。この内部熱交換器33は、コンプレッサ1に吸入される低圧冷媒と、ガスクーラ6から流出した高圧冷媒とを熱交換させるものである。
【0029】
内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aから流出した冷媒は、減圧手段として機械温度式の膨張弁8によって低圧に減圧され、低温低圧の気液2相状態となる。膨張弁8は感温部8aを有しており、この感温部8aをガスクーラ6の冷媒流出部と内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aとの間に配設している。このように、本実施形態での膨張弁8は、ガスクーラ6出口の冷媒温度を感温して、サイクル効率が最大となるよう高圧を自動制御する機械式の膨張弁8である。
【0030】
機械温度式膨張弁8からの低圧冷媒は、冷却手段としてのエバポレータ(蒸発器)9に流入する。このエバポレータ9は、車両用空調装置の空調ケース(空調ダクト)10内に設置され、エバポレータ9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内を流通する空気から吸熱して蒸発する。
【0031】
エバポレータ6で蒸発した低圧冷媒はアキュムレータ7に供給される。アキュムレータ7は、液相冷媒と気相冷媒とを分離して余剰冷媒を液相冷媒として蓄えるとともに、コンプレッサ1の吸入側に気相冷媒および分離抽出された冷凍機用オイルを供給する気液分離器である。そして、アキュムレータ7からの気相冷媒と冷凍機用オイルは、先の内部熱交換器33の低圧側冷媒流路33bを通ってコンプレッサ1に吸引される。上述した構成部品によって冷凍サイクルRの閉回路が構成されている。
【0032】
次に、空調ユニットの概略構造について説明する。空調ケース10において、エバポレータ9の上流側には送風手段としてのブロワ11が配置されている。このブロワ11には、送風ファン12とブロワモータ13とが備えられている。また、送風ファン12の吸入側には、内外気切替手段としての内外気切替箱14が配置されている。
【0033】
この内外気切替箱14は、内部の内外気切替ドア14aによって外気導入口14bと内気導入口14cとの開閉比率を可変する。これにより、内外気切替箱14内に外気(車室外空気)または内気(車室内空気)の導入割合が調節される。なお、内外気切替ドア14aは、電気駆動装置としてのサーボモータ14dによって駆動される。
【0034】
次に、空調装置通風系のうち、ブロワ11下流側に配置される空調ユニット15について説明する。空調ユニット15は、通常、車室内前部の計器盤内側において、車両幅方向の略中央位置に配置され、ブロワ11は空調ユニット15に対して助手席側にオフセットして配置されている。
【0035】
空調ケース10内でエバポレータ9の下流側には、エアミックス(A/M)ドア19が配置されており、エアミックスドア19の下流側には、車両エンジン4の冷却水(温水)を熱源として空気を加熱する温水式のヒータコア(加熱用熱交換器)20が設置されている。そして、このヒータコア20の上方側には、ヒータコア20をバイパスして空気(冷風)を流すバイパス通路21が形成されている。
【0036】
エアミックスドア19は、ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであり、この冷温風の風量割合の調節によって車室内への吹出空気温度を調節している。すなわち、本例においては、エアミックスドア19によって車室内への吹出空気の温度調節手段が構成されている。なお、エアミックスドア19は、図1に示す電気駆動装置としてのサーボモータ22によって駆動される。
【0037】
ヒータコア20の下流側には、下側から上側へと延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風とが空気混合部24付近で混合して、所望温度の空調用空気を作り出すことができる。さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側には吹出モード切替部が構成されている。
【0038】
すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロントガラスの内面に空気を吹き出す図示しないデフロスタ吹出口につながっている。そして、デフロスタ開口部25は、回動自在な板状のデフロスタドア(風量割合調節手段)26によって開閉される。
【0039】
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にはフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す図示しないセンターフェイス吹出口とサイドフェイス吹出口とにつながっている。そして、フェイス開口部27は、回動自在な板状のフェイスドア28(風量割合調節手段)によって開閉される。
【0040】
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にはフット開口部29が形成され、このフット開口部29は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出す図示しないフット吹出口につながっている。そして、フット開口部29は、回動自在な板状のフットドア(風量割合調節手段)30によって開閉される。上記した吹出モードドア26、28、30は、共通の図示しないリンク機構によって連結され、このリンク機構を介して電気駆動装置としてのモードサーボモータ(風量割合調節手段)31によって連動するように駆動される。
【0041】
次に、本実施形態における電気制御部の概要を、図1と図2とを併せて用いて説明する。車両には、車室内空気温度Trを検出する内気温度検出手段としての内気温センサ35aと、車室外空気温度Tamを検出する外気温度検出手段としての外気温センサ35bが設けられている。
【0042】
また、空調ケース10内のエバポレータ9の空気吹出部には、冷却温度としての蒸発器後温度Teを検出する蒸発器後温度検出手段としてのエバポレータ後センサ32が設けられている。なお、本実施形態ではエバポレータ後センサ32として、熱交換コア部のフィン間に差し込んで温度を検出するフィン温度センサを用いており、ブロワ11を駆動してエバポレータ9に通風させなくとも蒸発器後温度Teが検出できるようにしているが、エバポレータ9の熱交換コア部を通過した空気の温度を検出する空気温度センサであっても良い。
【0043】
エアコンECU5には、上記した各温度センサ32・35a・35bの他にも、空調制御のために日射量Tsを検出する日射センサ35c、冷却水温度Twを検出する冷却水温センサ35dなど、周知の環境条件検出手段としてのセンサ群35から検出信号が入力され、後述する目標吹出温度TAOなどが算出される。
【0044】
車室内計器盤近傍に設置されるエアコン操作パネル36には、乗員により手動操作される操作スイッチ群37が備えられ、この操作スイッチ群37の操作信号もエアコンECU5に入力され、パネルスイッチの入力処理やエアコン操作パネル36への表示処理などが成される。
【0045】
この操作スイッチ群37としては、温度設定信号Tsetを発生する車室内温度設定手段としての温度設定スイッチ37a、風量切替信号を発生する風量スイッチ37b、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ37c、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37d、コンプレッサ1のON−OFF信号を発生するエアコンスイッチ37eなどが設けられている。なお、吹出モードスイッチ37cにより、周知の吹出モードであるフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモードの各モードがマニュアル操作で切り替えられる。
【0046】
エアコンECU5は、CPU、ROM、RAMなどからなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。エアコンECU5は、後述する目標温度としての目標蒸発器後温度TEOを演算し、容量制御弁38を制御する制御部と、吸込口モード位置を演算して内外気切替ドア14aを駆動する吸込口モータ14dを制御する制御部と、吹出風量を演算してブロワモータ13を制御する制御部と、吹出温度制御としてエアミックスドア19を駆動するエアミックスモータ22を制御する制御部と、吹出口モード位置を演算して吹出口切替モータ31を制御する制御部などを有している。
【0047】
次に、本発明の要部である冷媒不足検出制御に関する構成について説明する。まず、冷媒不足検出制御に関するセンサ類として、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒圧力Pdを検出する吐出圧センサ(吐出圧検出手段)39、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒温度Tdを検出する吐出温センサ(吐出温検出手段)40、コンプレッサ1に吸入される吸入側冷媒圧力Psを検出する吸入圧センサ(吸入圧検出手段)41を備えている。また、車両エンジン4の回転数を検出するE/G回転数センサ4aを備えている。そしてこれらの検出信号は、エアコンECU5へ入力されるようになっている。
【0048】
特にエアコンECU5内の吐出容量制御部5aは、目標吹出温度から目標エバポレータ後温度TEOを決め、そのために必要なコンプレッサ1からの必要吐出量と、そのための制御電流値とを演算し、容量制御弁38へ制御電流Icを出力する部分であり、E/G回転数センサ4aで検出された回転数信号が入力されるようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の作動を図示しないオートスイッチがONされたとき、つまりオート制御時におけるエアコンECU5の処理手順に基づいて、図3のフローチャートを用いて説明する。まず、イグニッションスイッチがONされて、エアコンECU5に電源が供給されると、図3に示すメインルーチンが起動する。そして、ステップS1にて、データ処理用メモリ(RAM)の記憶内容などの初期化を行う。
【0050】
そして、次のステップS2にて、内気温センサ35aが検出した内気温度Tr、外気温センサ35bが検出した外気温度Tam、日射センサ35cが検出した日射量Ts、エバポレータ後センサ32が検出したエバポレータ後温度Te、水温センサ35dが検出した水温Tw、サーボモータ22内のポテンショメータが検出したエアミックスドア19の現在位置TPなどの環境条件と、操作パネル36からの出力信号のうち、温度設定スイッチ37aによって設定された目標温度Tsetの操作スイッチの状態などを読み込む。
【0051】
そして、目標吹出温度演算手段である次のステップS3にて、ROMに予め記憶された数式(省略する)に、上記ステップS2にて読み込んだTset、Tr、Tam、Tsを代入することによって、車室内へ吹き出す空調風の目標吹出温度TAOを算出する。そして、次のステップS4では、上記ステップS3で求めた車室内への目標吹出温度TAOに基づいてブロア風量を決め、そのためのブロワ制御電圧を演算する。本実施形態では、予めROMに記憶された図示しない送風特性から、目標吹出温度TAOに対応するブロア制御電圧VFが求められる。
【0052】
次のステップS5では、上記ステップS3で求めた車室内への目標吹出温度TAOと、予めROMに記憶された図示しない吹出口モード特性図とに基づいて車室内への各吹出モードを決定する。具体的には、上記目標吹出温度TAOが低い温度から高い温度にかけて、フェイスモード、ハイレベル(B/L)モード、フットモードとなるように設定されている。
【0053】
また、操作パネル36に設けられた吹出口モード切替スイッチ37cを操作することにより、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、もしくはフットデフロスタ(F/D)モードのうちのいずれかの吹出口モードに固定される。なお、上記フェイスモードとは、空調風を乗員の上半身に向けて吹き出す吹出モードである。また、バイレベルモードとは、空調風を乗員の上半身と足元部とに向けて吹き出す吹出モードである。
【0054】
そして、フットモードとは、空調風を乗員の足元部に向けて吹き出す吹出モードである。更に、フットデフロスタモードとは、空調風を乗員の足元部および車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出す吹出モードである。なお、操作パネル36に設けられた図示しないフロントデフロスタスイッチを操作すると、空調風を車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出すデフロスタ(DEF)モードが設定される。
【0055】
そして、次のステップS6にて、予めROMに記憶された数式(省略する)に、上記ステップS2にて読み込んだTw、Te、および上記TAOを代入することによって、エアミックスドア19の目標開度SWを算出する。そして、次のステップS7にて、上記ステップS3で求めた目標吹出温度TAOと、予めROMに記憶された図示しない内外気モード特性図とに基づいて内外気の導入割合を決定する。この内外気モード特性図によれば、冷房運転時(つまり、TAOの値が低いとき)に内気モードが選択されるようになっている。
【0056】
次のステップS8では、ステップS3で決定した目標吹出温度TAOとするための目標エバポレータ後温度TEOを算出し、その目標エバポレータ後温度TEOとエバポレータ後センサ32の検出値である実際の蒸発器後温度Teとが一致するように、フィードバック制御(PI制御)にてコンプレッサ1の目標吐出量を決定する。
【0057】
次のステップS9では、上記ステップS4で算出したブロア電圧VFの制御量を、図示しないブロアモータ駆動回路へ制御信号を出力する。これにより、ブロアモータ13に固定された送風ファン12を回転させ、車室内へ吹き出される送風量を制御する。そして、次のステップS10にて、上記ステップS5で決定した吹出口モードとなる制御量に基づいてサーボモータ31に制御信号を出力する。
【0058】
そして、次のステップS11にて、上記ステップS6で算出したエアミックスドア19の目標開度SWとなる制御量に基づいてサーボモータ22に制御信号を出力する。そして、次のステップS12にて、上記ステップS7で決定した内外気の導入割合となる制御量に基づいてサーボモータ14dに制御信号を出力する。また、次のステップS13では、ステップS8で決定された制御電流Icをコンプレッサ1に接続された容量制御弁38に出力する。
【0059】
ステップS13の処理後、ステップS2に戻って再び各種信号を読み込み、それにより、ステップS3でTAOを演算し、以下これらのTAOとステップS2で読み込まれた各種入力信号の状態によってステップS3ないしステップS13により車室内への空調の制御が繰り返される。なお、各設定値ともマニュアル設定時にはその設定値に従うものである。
【0060】
次に、本発明の要部であるステップS13の後に加えた冷媒不足検出制御の詳細について図4ないし図6を用いて説明する。図4は、本発明を適用した第1実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。まず、ステップS21では、コンプレッサ1の可変開始電流Imaxを下記の数式1より算出する。なお、数式中のA〜Dは定数、Ncはコンプレッサ回転数、Pdは吐出側冷媒圧力、Psは吸入側冷媒圧力である。
【0061】
(数1)Imax=A×Nc2+B×(Pd−C×Ps)+D
次のステップS22では、ステップS21で算出したImaxと、実際に容量制御弁38に出力している制御電流Icを比較し、制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さいか否かの判定を行う。図5は、容量制御弁38への制御電流Icと冷媒流量Grとの関係を示すグラフである。冷媒流量Gr、言い換えるとコンプレッサ1からの吐出容量を大きくするには制御電流Icも大きくなるという関係である。
【0062】
しかしこれ以外に、所望の吐出容量で維持させるために容量可変を開始しようとする場合、可変開始時の電流が最大となり(Imax)、可変開始後の容量可変中の制御電流Icは可変開始電流Imaxよりも小さくて済む。この特性を利用して、コンプレッサ1が容量制御中であるか否かを判定するものである。
【0063】
ステップS22での判定結果がNOで、コンプレッサ1が容量制御を行っていない場合には、エンジン回転数に依存して吐出容量が大きく変動する可能性があるため、以下の冷媒不足判定は行わず、メインルーチンのステップS2へ戻るものである。また、ステップS22での判定結果がYESで、コンプレッサ1が容量制御を行っている場合にはステップS23へと進む。
【0064】
ステップS23では、吐出側冷媒圧力Pdに対する吐出側冷媒温度Tdのマップより、冷媒不足を判定するための閾値TDOを算出するものである。図6は、吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOとの関係を示すグラフである。このグラフから分かるように、吐出側冷媒圧力Pdが高い場合には高い閾値TDOで判定を行うこととなる。
【0065】
そして次のステップS24では、ステップS23で算出した閾値TDOに対して検出された吐出側冷媒温度Tdが低いか否かを判定するものである。このステップS24での判定結果がYESで、吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも低い状態であれば冷媒量は正常範囲にあると判定してメインルーチンのステップS2へ戻るものである。
【0066】
また、ステップS24での判定結果がNOで、吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも高い状態であれば、冷媒量が不足状態にあると判定し、以後冷媒不足時の処置として、ステップS25ではコンプレッサ1を停止させ、ステップS26では空調装置を送風モードに変更して運転させるものである。
【0067】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、車両エンジン4によって駆動されるコンプレッサ1、ガスクーラ6、膨張弁8、エバポレータ9を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクルRと、コンプレッサ1に設けられ、外部からの制御信号によってコンプレッサ1の吐出容量を制御する容量制御弁38と、車両エンジン4の回転数に関連する回転数信号が入力され、容量制御弁38を制御するエアコンECU5とを備えている。
【0068】
そして、エアコンECU5には、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、冷凍サイクルR中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備えている。そして、エアコンECU5は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0069】
これによれば、容量制御弁38を有するコンプレッサ1を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動して圧縮機回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0070】
また、エアコンECU5は、可変状態検出手段として、容量制御弁38を制御して吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流Imaxと、実際に容量制御弁38に出力する制御電流Icとを比較し、制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さい場合に可変状態であると判定するようにしている。
【0071】
これによれば、容量可変を開始させる際の可変開始電流Imaxに対して容量可変中の制御電流Icは小さくて済むため、出力している制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さいか否かを判定することで容易に容量可変中か否かを検出することができる。
【0072】
また、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒圧力Pdを検出する吐出圧センサ39と、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒温度Tdを検出する吐出温センサ40とを備え、エアコンECU5は、冷媒不足検出手段として、検出された吐出側冷媒圧力Pdから冷媒不足を判定する吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOを決め、検出された吐出側冷媒温度Tdと閾値TDOとを比較して吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも高い場合に冷媒不足であると判定するようにしている。
【0073】
これによれば、吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdとで判定を行うことにより、外気温度やエンジン回転数などの外的要因による影響を受けにくく、広い冷媒量領域で正確な判定が行える。
【0074】
また、冷媒としてCO2冷媒を使用している。これによれば、CO2冷媒を用いて吐出側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルでは、フロン冷媒などを用いて吐出側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力以下となる亜臨界冷凍サイクルに対して吐出側冷媒温度Tdが高くなる。このため、通常では冷媒不足による吐出温度保護が入り易くなるが、本冷媒不足検出制御を適用することでCO2冷媒を用いても吐出温度保護が入りにくくすることができ、より確実に冷房能力を確保することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した第2実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0076】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ22(容量制御中か否かの判定)とステップ23(閾値TDOの算出)との間に、ステップ221、222を加えたものである。ステップ221では、エバポレータ後センサ32で検出される蒸発器後温度Teの所定時間での変化量ΔTeを算出する。例えば、今回検出されたTeと、1回前のメインルーチンで検出されたTeとの差などである。
【0077】
そして次のステップS222では、ステップ221で算出された変化量ΔTeの絶対値が所定値よりも小さいか否かの判定を行い、変化量ΔTeが所定値よりも大きい場合は変化中であるとして冷媒不足検出は行わず、変化量ΔTeが所定値よりも小さい場合は定常状態であるとして冷媒不足検出を行うものである。
【0078】
以上、上述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、エバポレータ9の蒸発器後温度Teを検出するエバポレータ後センサ32を備え、エアコンECU5は、検出された蒸発器後温度Teと、所定時間前に検出された蒸発器後温度Teとを比較して温度変化量ΔTeを算出し、その温度変化量ΔTeの絶対値が所定値よりも小さい場合に、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0079】
これによれば、容量可変状態の検出に加え、定常状態であることを蒸発器後温度Teの変化率が所定値よりも小さいことで検出することにより、より確実に定常状態を選択して、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0080】
(第3実施形態)
図8は、本発明を適用した第3実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0081】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ22(容量制御中か否かの判定)とステップ23(閾値TDOの算出)との間に、ステップ223を加えたものである。ステップ223では、冷凍サイクルを起動してからの経過時間が所定時間を越えたか否かの判定を行っている。そして、ステップ223の判定で起動から所定時間に満たない場合は冷媒不足検出は行わず、起動から所定時間が経った後に冷媒不足検出を行うものである。
【0082】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、エアコンECU5は、冷凍サイクルRを起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0083】
これによれば、起動初期で冷凍サイクルが安定に向かっている過渡期には冷媒不足判定を行わず、安定的な稼働となってから冷媒不足判定を開始するようになるため、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0084】
(第4実施形態)
図9は、本発明を適用した第4実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0085】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ23(閾値TDOの算出)とステップ24(閾値TDOとの比較)との間に、ステップ231を加えたものである。ステップ231では、補正量αを算出し、ステップ23で算出した閾値TDOに加えて閾値TDO´に補正するものである。よって次のステップ24では、ステップ231で補正された閾値TDO´を用いて比較判定を行うこととなる。
【0086】
図10は、吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teと補正量αとの関係を示すグラフである。このグラフから分かるように、吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teが低い場合ほど大きな補正量αを加えることとなる。これは、第1実施形態に対して、低圧側の圧力もしくは温度で検出されるサイクル状態で補正を加えるものである。
【0087】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。まず、コンプレッサ1に吸入される吸入側冷媒圧力Psを検出する吸入圧センサ41を備え、エアコンECU5は、検出される吸入側冷媒圧力Psに応じて閾値TDOを補正するようにしている。これによれば、吐出側冷媒温度Tdは、吐出側冷媒圧力Pdと吸入側冷媒圧力Psと圧縮効率とで決まるため、さらに低圧側の吸入側冷媒圧力Psにて補正を加えることで、より正確に冷媒不足を判定することができる。
【0088】
また、この補正は蒸発器後温度Teから飽和圧力を算出して行っても良く、エアコンECU5は、検出される蒸発器後温度Teに応じて閾値TDOを補正するようにしている。これによれば、通常、冷凍サイクルでは冷却制御や除霜制御を行うために、蒸発器後温度Teを検出するエバポレータ後センサ32を備えている。このため、吸入側冷媒圧力Psを蒸発器後温度Teから推定することで吸入圧センサ41を不要とすることができ、センサ数を低減してコストを抑えることができる。
【0089】
(第5実施形態)
図11は、本発明を適用した第5実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0090】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ26(送風モードへの変更)の後に、ステップ27を加えたものである。ステップ231では、エアコン操作パネル36などへコーションを出力するようにしたものである。より具体的には、エアコン操作パネル36に「エアコン、ガス不足」などの表示を点灯させるものである。
【0091】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、冷凍サイクルRの稼働状況を表示する表示手段36を備え、エアコンECU5は、冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、表示手段36に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力するようにしている。
【0092】
これによれば、通常ならば乗員が冷却能力の異常に気付いてから冷媒不足が判明して処置が成されるが、乗員に対して早期に(冷媒不足度合いが小さいうちに)知らしめることにより、乗員に冷却能力不足の不満を抱かせる前に圧縮機保護の処置が早期に成されるようになる。
【0093】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、冷媒としてCO2のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いる蒸気圧縮式の超臨界サイクルについて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系などの冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態に係るオートエアコンシステムの全体構成を示した模式図である。
【図2】図1のオートエアコンシステムにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】図1・図2のエアコンECU5における全体制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】本発明を適用した第1実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図5】容量制御弁38への制御電流Icと冷媒流量Grとの関係を示すグラフである。
【図6】吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOとの関係を示すグラフである。
【図7】本発明を適用した第2実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図8】本発明を適用した第3実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図9】本発明を適用した第4実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図10】吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teと補正量αとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明を適用した第5実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1…コンプレッサ(圧縮機)
4…車両エンジン
5…エアコンECU(制御手段)
6…ガスクーラ(放熱器)
8…膨張弁(減圧手段)
9…エバポレータ(蒸発器)
32…エバポレータ後センサ(蒸発器後温度検出手段)
36…エアコン操作パネル(表示手段)
38…容量制御弁(容量制御機構)
39…吐出圧センサ(吐出圧検出手段)
40…吐出温センサ(吐出温検出手段)
41…吸入圧センサ(吸入圧検出手段)
Ic…制御電流
Imax…可変開始電流
Pd…吐出側冷媒圧力
Ps…吸入側冷媒圧力
R…冷凍サイクル
S223…タイマー手段
Td…吐出側冷媒温度
TDO…閾値
Te…蒸発器後温度
ΔTe…温度変化量
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行用エンジンによって駆動される圧縮機を有する車両用冷凍サイクル装置に関するものであり、特に冷凍サイクル中の冷媒(ガス)不足の検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクル中の冷媒(ガス)不足を検出する技術として、下記特許文献1〜3に示されるような技術がある。下記の特許文献1に示すクーラサイクルでは、コンプレッサ(圧縮機)の吐出部近辺に冷媒の圧力および温度検出器を設け、圧力が一定値以下で且つ温度が一定値以上のときにのみ冷媒量不足信号を発生させる検知装置を設けている。
【0003】
また、下記の特許文献2に示す空気調和機では、コンプレッサの吐出側における圧力Hpと吐出ガス温度Tdとの関係において、Td>A×Hp+B(Aは係数、Bは定数)の場合にガス欠と判断している。また、下記の特許文献3に示す車両用ヒートポンプ式冷暖房装置では、冷凍サイクル中の冷媒不足判定を、起動前の飽和圧力値と、起動してから所定時間経過後の圧力値との2つの圧力値によって判定している。
【特許文献1】特開昭58−95175号公報
【特許文献2】特開平6−185837号公報
【特許文献3】特許第3404990号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されるように、車両エンジンによって駆動されるコンプレッサで冷媒循環させる冷凍サイクルでは、コンプレッサの回転数がエンジン回転数に依存して大きく変動するものとなる。そのため、上記特許文献1ではエンジン回転数の変動の影響も考慮しているものの、正確な冷媒不足の判定が難しいという問題点がある。ちなみに上記特許文献2の冷凍サイクルは定置式であり、インバータ制御の電動式コンプレッサを用いている。また、上記特許文献3の冷凍サイクルは車両用であるが、コンプレッサには電動式コンプレッサもしくは油圧駆動式のコンプレッサを用いている。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、エンジン回転数の変動の影響を受けにくく、正確に冷媒不足の判定が行える車両用冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項9に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両エンジン(4)によって駆動される圧縮機(1)、放熱器(6)、減圧手段(8)、蒸発器(9)を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクル(R)と、圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって圧縮機(1)の吐出容量を制御する容量制御機構(38)と、車両エンジン(4)の回転数に関連する回転数信号が入力され、容量制御機構(38)を制御する制御手段(5)とを備え、
制御手段(5)には、圧縮機(1)が吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、冷凍サイクル(R)中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備え、
制御手段(5)は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0007】
この請求項1に記載の発明によれば、容量制御機構(38)を有する圧縮機(1)を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動して圧縮機回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、圧縮機(1)が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、可変状態検出手段として、容量制御機構(38)を制御して吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流(Imax)と、実際に容量制御機構(38)に出力する制御電流(Ic)とを比較し、制御電流(Ic)が可変開始電流(Imax)よりも小さい場合に可変状態であると判定することを特徴としている。
【0009】
この請求項2に記載の発明によれば、容量可変を開始させる際の可変開始電流(Imax)に対して容量可変中の制御電流(Ic)は小さくて済むため、出力している制御電流(Ic)が可変開始電流(Imax)よりも小さいか否かを判定することで容易に容量可変中か否かを検出することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、蒸発器(9)の蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備え、
制御手段(5)は、検出された蒸発器後温度(Te)と、所定時間前に検出された蒸発器後温度(Te)とを比較して温度変化量(ΔTe)を算出し、温度変化量(ΔTe)の絶対値が所定値よりも小さい場合に、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0011】
この請求項3に記載の発明によれば、容量可変状態の検出に加え、定常状態であることを蒸発器後温度(Te)の変化率が所定値よりも小さいことで検出することにより、より確実に定常状態を選択して、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、冷凍サイクル(R)を起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴としている。
【0013】
この請求項4に記載の発明によれば、起動初期で冷凍サイクルが安定に向かっている過渡期には冷媒不足判定を行わず、安定的な稼働となってから冷媒不足判定を開始するようになるため、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒圧力(Pd)を検出する吐出圧検出手段(39)と、圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒温度(Td)を検出する吐出温検出手段(40)とを備え、
制御手段(5)は、冷媒不足検出手段として、検出された吐出側冷媒圧力(Pd)から冷媒不足を判定する吐出側冷媒温度(Td)の閾値(TDO)を決め、検出された吐出側冷媒温度(Td)と閾値(TDO)とを比較して吐出側冷媒温度(Td)が閾値(TDO)よりも高い場合に冷媒不足であると判定することを特徴としている。
【0015】
この請求項5に記載の発明によれば、吐出側冷媒圧力(Pd)と吐出側冷媒温度(Td)とで判定を行うことにより、外気温度やエンジン回転数などの外的要因による影響を受けにくく、広い冷媒量領域で正確な判定が行える。
【0016】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置において、圧縮機(1)に吸入される吸入側冷媒圧力(Ps)を検出する吸入圧検出手段(41)を備え、
制御手段(5)は、検出される吸入側冷媒圧力(Ps)に応じて閾値(TDO)を補正することを特徴としている。
【0017】
この請求項6に記載の発明によれば、吐出側冷媒温度(Td)は、吐出側冷媒圧力(Pd)と吸入側冷媒圧力(Ps)と圧縮効率とで決まるため、さらに低圧側の吸入側冷媒圧力(Ps)にて補正を加えることで、より正確に冷媒不足を判定することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の発明では、請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置において、制御手段(5)は、検出される蒸発器後温度(Te)に応じて閾値(TDO)を補正することを特徴としている。
【0019】
この請求項7に記載の発明によれば、通常、冷凍サイクルでは冷却制御や除霜制御を行うために、蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備えている。このため、吸入側冷媒圧力(Ps)を蒸発器後温度(Te)から推定することで吸入圧検出手段(41)を不要とすることができ、センサ数を低減してコストを抑えることができる。
【0020】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷凍サイクル(R)の稼働状況を表示する表示手段(36)を備え、
制御手段(5)は、冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、表示手段(36)に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力することを特徴としている。
【0021】
この請求項8に記載の発明によれば、通常ならば乗員が冷却能力の異常に気付いてから冷媒不足が判明して処置が成されるが、乗員に対して早期に(冷媒不足度合いが小さいうちに)知らしめることにより、乗員に冷却能力不足の不満を抱かせる前に圧縮機保護の処置が早期に成されるようになる。
【0022】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置において、冷媒として二酸化炭素(CO2)冷媒を使用していることを特徴としている。
【0023】
この請求項9に記載の発明によれば、二酸化炭素(CO2)冷媒を用いて吐出側冷媒圧力(Pd)が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルでは、フロン冷媒などを用いて吐出側冷媒圧力(Pd)が冷媒の臨界圧力以下となる亜臨界冷凍サイクルに対して吐出側冷媒温度(Td)が高くなる。このため、通常では冷媒不足による吐出温度保護が入り易くなるが、本冷媒不足検出制御を適用することで二酸化炭素(CO2)冷媒を用いても吐出温度保護が入りにくくすることができ、より確実に冷房能力を確保することができる。
【0024】
なお、上記各手段および特許請求の範囲に記載する各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1ないし図3は、本発明の実施形態に係るオートエアコンシステムを示すものであり、図1はオートエアコンシステムの全体構成を示した模式図、図2は図1のオートエアコンシステムにおける制御系の構成を示すブロック図である。また、図3は図1、図2のエアコンECU5(制御手段)における全体制御プログラムを示すフローチャートである。
【0026】
車両用空調装置の冷凍サイクルRには、冷媒を吸入し圧縮して吐出するコンプレッサ(圧縮機)1が備えられている。なお、本実施形態の冷凍サイクルRは、冷媒に二酸化炭素(以下、CO2)冷媒を用いており、コンプレッサ1にて冷媒の臨界圧力以上まで圧縮する超臨界冷凍サイクルである。また、コンプレッサ1は容量可変機構によって圧縮容量が可変できる可変容量コンプレッサ1となっており、冷却能力可変手段として、容量制御弁(容量制御機構)38で圧縮容量を制御している。
【0027】
この容量制御弁38は本空調装置の制御手段としてのエアコンECU5によって制御されている。コンプレッサ1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、車両エンジン(車両走行用エンジン)4の動力がVベルト3および電磁クラッチ2を介してコンプレッサ1に伝達される。電磁クラッチ2への通電はエアコンECU5によって断続され、電磁クラッチ2が通電されて接続状態になると、コンプレッサ1は運転状態となる。これに反し、電磁クラッチ2の通電が遮断されて開離状態になると、コンプレッサ1は停止する。
【0028】
コンプレッサ1から吐出された高温高圧のガス冷媒は、ガスクーラ(放熱器)6に流入し、ここで、図示しない冷却ファンによって送風される外気冷却風と熱交換して冷却される。なお冷媒は、臨界圧力以上まで圧縮されているため、この冷却では凝縮しない。このガスクーラ6で冷却された冷媒は、次に内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aを流通する。この内部熱交換器33は、コンプレッサ1に吸入される低圧冷媒と、ガスクーラ6から流出した高圧冷媒とを熱交換させるものである。
【0029】
内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aから流出した冷媒は、減圧手段として機械温度式の膨張弁8によって低圧に減圧され、低温低圧の気液2相状態となる。膨張弁8は感温部8aを有しており、この感温部8aをガスクーラ6の冷媒流出部と内部熱交換器33の高圧側冷媒流路33aとの間に配設している。このように、本実施形態での膨張弁8は、ガスクーラ6出口の冷媒温度を感温して、サイクル効率が最大となるよう高圧を自動制御する機械式の膨張弁8である。
【0030】
機械温度式膨張弁8からの低圧冷媒は、冷却手段としてのエバポレータ(蒸発器)9に流入する。このエバポレータ9は、車両用空調装置の空調ケース(空調ダクト)10内に設置され、エバポレータ9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内を流通する空気から吸熱して蒸発する。
【0031】
エバポレータ6で蒸発した低圧冷媒はアキュムレータ7に供給される。アキュムレータ7は、液相冷媒と気相冷媒とを分離して余剰冷媒を液相冷媒として蓄えるとともに、コンプレッサ1の吸入側に気相冷媒および分離抽出された冷凍機用オイルを供給する気液分離器である。そして、アキュムレータ7からの気相冷媒と冷凍機用オイルは、先の内部熱交換器33の低圧側冷媒流路33bを通ってコンプレッサ1に吸引される。上述した構成部品によって冷凍サイクルRの閉回路が構成されている。
【0032】
次に、空調ユニットの概略構造について説明する。空調ケース10において、エバポレータ9の上流側には送風手段としてのブロワ11が配置されている。このブロワ11には、送風ファン12とブロワモータ13とが備えられている。また、送風ファン12の吸入側には、内外気切替手段としての内外気切替箱14が配置されている。
【0033】
この内外気切替箱14は、内部の内外気切替ドア14aによって外気導入口14bと内気導入口14cとの開閉比率を可変する。これにより、内外気切替箱14内に外気(車室外空気)または内気(車室内空気)の導入割合が調節される。なお、内外気切替ドア14aは、電気駆動装置としてのサーボモータ14dによって駆動される。
【0034】
次に、空調装置通風系のうち、ブロワ11下流側に配置される空調ユニット15について説明する。空調ユニット15は、通常、車室内前部の計器盤内側において、車両幅方向の略中央位置に配置され、ブロワ11は空調ユニット15に対して助手席側にオフセットして配置されている。
【0035】
空調ケース10内でエバポレータ9の下流側には、エアミックス(A/M)ドア19が配置されており、エアミックスドア19の下流側には、車両エンジン4の冷却水(温水)を熱源として空気を加熱する温水式のヒータコア(加熱用熱交換器)20が設置されている。そして、このヒータコア20の上方側には、ヒータコア20をバイパスして空気(冷風)を流すバイパス通路21が形成されている。
【0036】
エアミックスドア19は、ヒータコア20を通過する温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調節するものであり、この冷温風の風量割合の調節によって車室内への吹出空気温度を調節している。すなわち、本例においては、エアミックスドア19によって車室内への吹出空気の温度調節手段が構成されている。なお、エアミックスドア19は、図1に示す電気駆動装置としてのサーボモータ22によって駆動される。
【0037】
ヒータコア20の下流側には、下側から上側へと延びる温風通路23が形成され、この温風通路23からの温風とバイパス通路21からの冷風とが空気混合部24付近で混合して、所望温度の空調用空気を作り出すことができる。さらに、空調ケース10内で、空気混合部24の下流側には吹出モード切替部が構成されている。
【0038】
すなわち、空調ケース10の上面部にはデフロスタ開口部25が形成され、このデフロスタ開口部25は図示しないデフロスタダクトを介して車両フロントガラスの内面に空気を吹き出す図示しないデフロスタ吹出口につながっている。そして、デフロスタ開口部25は、回動自在な板状のデフロスタドア(風量割合調節手段)26によって開閉される。
【0039】
また、空調ケース10の上面部で、デフロスタ開口部25より車両後方側の部位にはフェイス開口部27が形成され、このフェイス開口部27は図示しないフェイスダクトを介して車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す図示しないセンターフェイス吹出口とサイドフェイス吹出口とにつながっている。そして、フェイス開口部27は、回動自在な板状のフェイスドア28(風量割合調節手段)によって開閉される。
【0040】
また、空調ケース10において、フェイス開口部27の下側部位にはフット開口部29が形成され、このフット開口部29は図示しないフットダクトを介して車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出す図示しないフット吹出口につながっている。そして、フット開口部29は、回動自在な板状のフットドア(風量割合調節手段)30によって開閉される。上記した吹出モードドア26、28、30は、共通の図示しないリンク機構によって連結され、このリンク機構を介して電気駆動装置としてのモードサーボモータ(風量割合調節手段)31によって連動するように駆動される。
【0041】
次に、本実施形態における電気制御部の概要を、図1と図2とを併せて用いて説明する。車両には、車室内空気温度Trを検出する内気温度検出手段としての内気温センサ35aと、車室外空気温度Tamを検出する外気温度検出手段としての外気温センサ35bが設けられている。
【0042】
また、空調ケース10内のエバポレータ9の空気吹出部には、冷却温度としての蒸発器後温度Teを検出する蒸発器後温度検出手段としてのエバポレータ後センサ32が設けられている。なお、本実施形態ではエバポレータ後センサ32として、熱交換コア部のフィン間に差し込んで温度を検出するフィン温度センサを用いており、ブロワ11を駆動してエバポレータ9に通風させなくとも蒸発器後温度Teが検出できるようにしているが、エバポレータ9の熱交換コア部を通過した空気の温度を検出する空気温度センサであっても良い。
【0043】
エアコンECU5には、上記した各温度センサ32・35a・35bの他にも、空調制御のために日射量Tsを検出する日射センサ35c、冷却水温度Twを検出する冷却水温センサ35dなど、周知の環境条件検出手段としてのセンサ群35から検出信号が入力され、後述する目標吹出温度TAOなどが算出される。
【0044】
車室内計器盤近傍に設置されるエアコン操作パネル36には、乗員により手動操作される操作スイッチ群37が備えられ、この操作スイッチ群37の操作信号もエアコンECU5に入力され、パネルスイッチの入力処理やエアコン操作パネル36への表示処理などが成される。
【0045】
この操作スイッチ群37としては、温度設定信号Tsetを発生する車室内温度設定手段としての温度設定スイッチ37a、風量切替信号を発生する風量スイッチ37b、吹出モード信号を発生する吹出モードスイッチ37c、内外気切替信号を発生する内外気切替スイッチ37d、コンプレッサ1のON−OFF信号を発生するエアコンスイッチ37eなどが設けられている。なお、吹出モードスイッチ37cにより、周知の吹出モードであるフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモードの各モードがマニュアル操作で切り替えられる。
【0046】
エアコンECU5は、CPU、ROM、RAMなどからなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路にて構成されるものである。エアコンECU5は、後述する目標温度としての目標蒸発器後温度TEOを演算し、容量制御弁38を制御する制御部と、吸込口モード位置を演算して内外気切替ドア14aを駆動する吸込口モータ14dを制御する制御部と、吹出風量を演算してブロワモータ13を制御する制御部と、吹出温度制御としてエアミックスドア19を駆動するエアミックスモータ22を制御する制御部と、吹出口モード位置を演算して吹出口切替モータ31を制御する制御部などを有している。
【0047】
次に、本発明の要部である冷媒不足検出制御に関する構成について説明する。まず、冷媒不足検出制御に関するセンサ類として、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒圧力Pdを検出する吐出圧センサ(吐出圧検出手段)39、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒温度Tdを検出する吐出温センサ(吐出温検出手段)40、コンプレッサ1に吸入される吸入側冷媒圧力Psを検出する吸入圧センサ(吸入圧検出手段)41を備えている。また、車両エンジン4の回転数を検出するE/G回転数センサ4aを備えている。そしてこれらの検出信号は、エアコンECU5へ入力されるようになっている。
【0048】
特にエアコンECU5内の吐出容量制御部5aは、目標吹出温度から目標エバポレータ後温度TEOを決め、そのために必要なコンプレッサ1からの必要吐出量と、そのための制御電流値とを演算し、容量制御弁38へ制御電流Icを出力する部分であり、E/G回転数センサ4aで検出された回転数信号が入力されるようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の作動を図示しないオートスイッチがONされたとき、つまりオート制御時におけるエアコンECU5の処理手順に基づいて、図3のフローチャートを用いて説明する。まず、イグニッションスイッチがONされて、エアコンECU5に電源が供給されると、図3に示すメインルーチンが起動する。そして、ステップS1にて、データ処理用メモリ(RAM)の記憶内容などの初期化を行う。
【0050】
そして、次のステップS2にて、内気温センサ35aが検出した内気温度Tr、外気温センサ35bが検出した外気温度Tam、日射センサ35cが検出した日射量Ts、エバポレータ後センサ32が検出したエバポレータ後温度Te、水温センサ35dが検出した水温Tw、サーボモータ22内のポテンショメータが検出したエアミックスドア19の現在位置TPなどの環境条件と、操作パネル36からの出力信号のうち、温度設定スイッチ37aによって設定された目標温度Tsetの操作スイッチの状態などを読み込む。
【0051】
そして、目標吹出温度演算手段である次のステップS3にて、ROMに予め記憶された数式(省略する)に、上記ステップS2にて読み込んだTset、Tr、Tam、Tsを代入することによって、車室内へ吹き出す空調風の目標吹出温度TAOを算出する。そして、次のステップS4では、上記ステップS3で求めた車室内への目標吹出温度TAOに基づいてブロア風量を決め、そのためのブロワ制御電圧を演算する。本実施形態では、予めROMに記憶された図示しない送風特性から、目標吹出温度TAOに対応するブロア制御電圧VFが求められる。
【0052】
次のステップS5では、上記ステップS3で求めた車室内への目標吹出温度TAOと、予めROMに記憶された図示しない吹出口モード特性図とに基づいて車室内への各吹出モードを決定する。具体的には、上記目標吹出温度TAOが低い温度から高い温度にかけて、フェイスモード、ハイレベル(B/L)モード、フットモードとなるように設定されている。
【0053】
また、操作パネル36に設けられた吹出口モード切替スイッチ37cを操作することにより、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、もしくはフットデフロスタ(F/D)モードのうちのいずれかの吹出口モードに固定される。なお、上記フェイスモードとは、空調風を乗員の上半身に向けて吹き出す吹出モードである。また、バイレベルモードとは、空調風を乗員の上半身と足元部とに向けて吹き出す吹出モードである。
【0054】
そして、フットモードとは、空調風を乗員の足元部に向けて吹き出す吹出モードである。更に、フットデフロスタモードとは、空調風を乗員の足元部および車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出す吹出モードである。なお、操作パネル36に設けられた図示しないフロントデフロスタスイッチを操作すると、空調風を車両のフロントウインドの内面に向けて吹き出すデフロスタ(DEF)モードが設定される。
【0055】
そして、次のステップS6にて、予めROMに記憶された数式(省略する)に、上記ステップS2にて読み込んだTw、Te、および上記TAOを代入することによって、エアミックスドア19の目標開度SWを算出する。そして、次のステップS7にて、上記ステップS3で求めた目標吹出温度TAOと、予めROMに記憶された図示しない内外気モード特性図とに基づいて内外気の導入割合を決定する。この内外気モード特性図によれば、冷房運転時(つまり、TAOの値が低いとき)に内気モードが選択されるようになっている。
【0056】
次のステップS8では、ステップS3で決定した目標吹出温度TAOとするための目標エバポレータ後温度TEOを算出し、その目標エバポレータ後温度TEOとエバポレータ後センサ32の検出値である実際の蒸発器後温度Teとが一致するように、フィードバック制御(PI制御)にてコンプレッサ1の目標吐出量を決定する。
【0057】
次のステップS9では、上記ステップS4で算出したブロア電圧VFの制御量を、図示しないブロアモータ駆動回路へ制御信号を出力する。これにより、ブロアモータ13に固定された送風ファン12を回転させ、車室内へ吹き出される送風量を制御する。そして、次のステップS10にて、上記ステップS5で決定した吹出口モードとなる制御量に基づいてサーボモータ31に制御信号を出力する。
【0058】
そして、次のステップS11にて、上記ステップS6で算出したエアミックスドア19の目標開度SWとなる制御量に基づいてサーボモータ22に制御信号を出力する。そして、次のステップS12にて、上記ステップS7で決定した内外気の導入割合となる制御量に基づいてサーボモータ14dに制御信号を出力する。また、次のステップS13では、ステップS8で決定された制御電流Icをコンプレッサ1に接続された容量制御弁38に出力する。
【0059】
ステップS13の処理後、ステップS2に戻って再び各種信号を読み込み、それにより、ステップS3でTAOを演算し、以下これらのTAOとステップS2で読み込まれた各種入力信号の状態によってステップS3ないしステップS13により車室内への空調の制御が繰り返される。なお、各設定値ともマニュアル設定時にはその設定値に従うものである。
【0060】
次に、本発明の要部であるステップS13の後に加えた冷媒不足検出制御の詳細について図4ないし図6を用いて説明する。図4は、本発明を適用した第1実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。まず、ステップS21では、コンプレッサ1の可変開始電流Imaxを下記の数式1より算出する。なお、数式中のA〜Dは定数、Ncはコンプレッサ回転数、Pdは吐出側冷媒圧力、Psは吸入側冷媒圧力である。
【0061】
(数1)Imax=A×Nc2+B×(Pd−C×Ps)+D
次のステップS22では、ステップS21で算出したImaxと、実際に容量制御弁38に出力している制御電流Icを比較し、制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さいか否かの判定を行う。図5は、容量制御弁38への制御電流Icと冷媒流量Grとの関係を示すグラフである。冷媒流量Gr、言い換えるとコンプレッサ1からの吐出容量を大きくするには制御電流Icも大きくなるという関係である。
【0062】
しかしこれ以外に、所望の吐出容量で維持させるために容量可変を開始しようとする場合、可変開始時の電流が最大となり(Imax)、可変開始後の容量可変中の制御電流Icは可変開始電流Imaxよりも小さくて済む。この特性を利用して、コンプレッサ1が容量制御中であるか否かを判定するものである。
【0063】
ステップS22での判定結果がNOで、コンプレッサ1が容量制御を行っていない場合には、エンジン回転数に依存して吐出容量が大きく変動する可能性があるため、以下の冷媒不足判定は行わず、メインルーチンのステップS2へ戻るものである。また、ステップS22での判定結果がYESで、コンプレッサ1が容量制御を行っている場合にはステップS23へと進む。
【0064】
ステップS23では、吐出側冷媒圧力Pdに対する吐出側冷媒温度Tdのマップより、冷媒不足を判定するための閾値TDOを算出するものである。図6は、吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOとの関係を示すグラフである。このグラフから分かるように、吐出側冷媒圧力Pdが高い場合には高い閾値TDOで判定を行うこととなる。
【0065】
そして次のステップS24では、ステップS23で算出した閾値TDOに対して検出された吐出側冷媒温度Tdが低いか否かを判定するものである。このステップS24での判定結果がYESで、吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも低い状態であれば冷媒量は正常範囲にあると判定してメインルーチンのステップS2へ戻るものである。
【0066】
また、ステップS24での判定結果がNOで、吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも高い状態であれば、冷媒量が不足状態にあると判定し、以後冷媒不足時の処置として、ステップS25ではコンプレッサ1を停止させ、ステップS26では空調装置を送風モードに変更して運転させるものである。
【0067】
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。まず、車両エンジン4によって駆動されるコンプレッサ1、ガスクーラ6、膨張弁8、エバポレータ9を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクルRと、コンプレッサ1に設けられ、外部からの制御信号によってコンプレッサ1の吐出容量を制御する容量制御弁38と、車両エンジン4の回転数に関連する回転数信号が入力され、容量制御弁38を制御するエアコンECU5とを備えている。
【0068】
そして、エアコンECU5には、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、冷凍サイクルR中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備えている。そして、エアコンECU5は、可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0069】
これによれば、容量制御弁38を有するコンプレッサ1を用いることで吐出容量の可変時には、エンジン回転数と連動して圧縮機回転数が変動しても冷媒流量は一定となるように制御される。このため、コンプレッサ1が吐出容量を可変している状態にあることを検出して、この冷媒流量が一定となっているときに冷媒不足検出を行うようにすることにより、エンジン回転数の変動の影響を受けず、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0070】
また、エアコンECU5は、可変状態検出手段として、容量制御弁38を制御して吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流Imaxと、実際に容量制御弁38に出力する制御電流Icとを比較し、制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さい場合に可変状態であると判定するようにしている。
【0071】
これによれば、容量可変を開始させる際の可変開始電流Imaxに対して容量可変中の制御電流Icは小さくて済むため、出力している制御電流Icが可変開始電流Imaxよりも小さいか否かを判定することで容易に容量可変中か否かを検出することができる。
【0072】
また、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒圧力Pdを検出する吐出圧センサ39と、コンプレッサ1から吐出される吐出側冷媒温度Tdを検出する吐出温センサ40とを備え、エアコンECU5は、冷媒不足検出手段として、検出された吐出側冷媒圧力Pdから冷媒不足を判定する吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOを決め、検出された吐出側冷媒温度Tdと閾値TDOとを比較して吐出側冷媒温度Tdが閾値TDOよりも高い場合に冷媒不足であると判定するようにしている。
【0073】
これによれば、吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdとで判定を行うことにより、外気温度やエンジン回転数などの外的要因による影響を受けにくく、広い冷媒量領域で正確な判定が行える。
【0074】
また、冷媒としてCO2冷媒を使用している。これによれば、CO2冷媒を用いて吐出側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルでは、フロン冷媒などを用いて吐出側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力以下となる亜臨界冷凍サイクルに対して吐出側冷媒温度Tdが高くなる。このため、通常では冷媒不足による吐出温度保護が入り易くなるが、本冷媒不足検出制御を適用することでCO2冷媒を用いても吐出温度保護が入りにくくすることができ、より確実に冷房能力を確保することができる。
【0075】
(第2実施形態)
図7は、本発明を適用した第2実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0076】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ22(容量制御中か否かの判定)とステップ23(閾値TDOの算出)との間に、ステップ221、222を加えたものである。ステップ221では、エバポレータ後センサ32で検出される蒸発器後温度Teの所定時間での変化量ΔTeを算出する。例えば、今回検出されたTeと、1回前のメインルーチンで検出されたTeとの差などである。
【0077】
そして次のステップS222では、ステップ221で算出された変化量ΔTeの絶対値が所定値よりも小さいか否かの判定を行い、変化量ΔTeが所定値よりも大きい場合は変化中であるとして冷媒不足検出は行わず、変化量ΔTeが所定値よりも小さい場合は定常状態であるとして冷媒不足検出を行うものである。
【0078】
以上、上述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、エバポレータ9の蒸発器後温度Teを検出するエバポレータ後センサ32を備え、エアコンECU5は、検出された蒸発器後温度Teと、所定時間前に検出された蒸発器後温度Teとを比較して温度変化量ΔTeを算出し、その温度変化量ΔTeの絶対値が所定値よりも小さい場合に、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0079】
これによれば、容量可変状態の検出に加え、定常状態であることを蒸発器後温度Teの変化率が所定値よりも小さいことで検出することにより、より確実に定常状態を選択して、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0080】
(第3実施形態)
図8は、本発明を適用した第3実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0081】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ22(容量制御中か否かの判定)とステップ23(閾値TDOの算出)との間に、ステップ223を加えたものである。ステップ223では、冷凍サイクルを起動してからの経過時間が所定時間を越えたか否かの判定を行っている。そして、ステップ223の判定で起動から所定時間に満たない場合は冷媒不足検出は行わず、起動から所定時間が経った後に冷媒不足検出を行うものである。
【0082】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、エアコンECU5は、冷凍サイクルRを起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うようにしている。
【0083】
これによれば、起動初期で冷凍サイクルが安定に向かっている過渡期には冷媒不足判定を行わず、安定的な稼働となってから冷媒不足判定を開始するようになるため、冷媒不足の判定を正確に行うことができる。
【0084】
(第4実施形態)
図9は、本発明を適用した第4実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0085】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ23(閾値TDOの算出)とステップ24(閾値TDOとの比較)との間に、ステップ231を加えたものである。ステップ231では、補正量αを算出し、ステップ23で算出した閾値TDOに加えて閾値TDO´に補正するものである。よって次のステップ24では、ステップ231で補正された閾値TDO´を用いて比較判定を行うこととなる。
【0086】
図10は、吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teと補正量αとの関係を示すグラフである。このグラフから分かるように、吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teが低い場合ほど大きな補正量αを加えることとなる。これは、第1実施形態に対して、低圧側の圧力もしくは温度で検出されるサイクル状態で補正を加えるものである。
【0087】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。まず、コンプレッサ1に吸入される吸入側冷媒圧力Psを検出する吸入圧センサ41を備え、エアコンECU5は、検出される吸入側冷媒圧力Psに応じて閾値TDOを補正するようにしている。これによれば、吐出側冷媒温度Tdは、吐出側冷媒圧力Pdと吸入側冷媒圧力Psと圧縮効率とで決まるため、さらに低圧側の吸入側冷媒圧力Psにて補正を加えることで、より正確に冷媒不足を判定することができる。
【0088】
また、この補正は蒸発器後温度Teから飽和圧力を算出して行っても良く、エアコンECU5は、検出される蒸発器後温度Teに応じて閾値TDOを補正するようにしている。これによれば、通常、冷凍サイクルでは冷却制御や除霜制御を行うために、蒸発器後温度Teを検出するエバポレータ後センサ32を備えている。このため、吸入側冷媒圧力Psを蒸発器後温度Teから推定することで吸入圧センサ41を不要とすることができ、センサ数を低減してコストを抑えることができる。
【0089】
(第5実施形態)
図11は、本発明を適用した第5実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。なお、図4で説明した第1実施形態のフローチャートでのステップと同様のステップは、同じステップ番号を付して説明を省略し、異なるステップ部分のみ説明する。
【0090】
本実施形態は図4で説明したフローチャートのステップ26(送風モードへの変更)の後に、ステップ27を加えたものである。ステップ231では、エアコン操作パネル36などへコーションを出力するようにしたものである。より具体的には、エアコン操作パネル36に「エアコン、ガス不足」などの表示を点灯させるものである。
【0091】
以上、前述した第1実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、冷凍サイクルRの稼働状況を表示する表示手段36を備え、エアコンECU5は、冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、表示手段36に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力するようにしている。
【0092】
これによれば、通常ならば乗員が冷却能力の異常に気付いてから冷媒不足が判明して処置が成されるが、乗員に対して早期に(冷媒不足度合いが小さいうちに)知らしめることにより、乗員に冷却能力不足の不満を抱かせる前に圧縮機保護の処置が早期に成されるようになる。
【0093】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、冷媒としてCO2のように高圧圧力が臨界圧力を超える冷媒を用いる蒸気圧縮式の超臨界サイクルについて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、冷媒として高圧圧力が臨界圧力を超えないフロン系、HC系などの冷媒を用いる蒸気圧縮式の亜臨界サイクルに本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態に係るオートエアコンシステムの全体構成を示した模式図である。
【図2】図1のオートエアコンシステムにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】図1・図2のエアコンECU5における全体制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】本発明を適用した第1実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図5】容量制御弁38への制御電流Icと冷媒流量Grとの関係を示すグラフである。
【図6】吐出側冷媒圧力Pdと吐出側冷媒温度Tdの閾値TDOとの関係を示すグラフである。
【図7】本発明を適用した第2実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図8】本発明を適用した第3実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図9】本発明を適用した第4実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【図10】吸入側冷媒圧力Psもしくは蒸発器後温度Teと補正量αとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明を適用した第5実施形態のガス不足検出制御プログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1…コンプレッサ(圧縮機)
4…車両エンジン
5…エアコンECU(制御手段)
6…ガスクーラ(放熱器)
8…膨張弁(減圧手段)
9…エバポレータ(蒸発器)
32…エバポレータ後センサ(蒸発器後温度検出手段)
36…エアコン操作パネル(表示手段)
38…容量制御弁(容量制御機構)
39…吐出圧センサ(吐出圧検出手段)
40…吐出温センサ(吐出温検出手段)
41…吸入圧センサ(吸入圧検出手段)
Ic…制御電流
Imax…可変開始電流
Pd…吐出側冷媒圧力
Ps…吸入側冷媒圧力
R…冷凍サイクル
S223…タイマー手段
Td…吐出側冷媒温度
TDO…閾値
Te…蒸発器後温度
ΔTe…温度変化量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両エンジン(4)によって駆動される圧縮機(1)、放熱器(6)、減圧手段(8)、蒸発器(9)を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクル(R)と、
前記圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって前記圧縮機(1)の吐出容量を制御する容量制御機構(38)と、
前記車両エンジン(4)の回転数に関連する回転数信号が入力され、前記容量制御機構(38)を制御する制御手段(5)とを備え、
前記制御手段(5)には、前記圧縮機(1)が前記吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、
前記冷凍サイクル(R)中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備え、
前記制御手段(5)は、前記可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御手段(5)は、前記可変状態検出手段として、前記容量制御機構(38)を制御して前記吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流(Imax)と、実際に前記容量制御機構(38)に出力する制御電流(Ic)とを比較し、前記制御電流(Ic)が前記可変開始電流(Imax)よりも小さい場合に可変状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記蒸発器(9)の蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備え、
前記制御手段(5)は、検出された前記蒸発器後温度(Te)と、所定時間前に検出された前記蒸発器後温度(Te)とを比較して温度変化量(ΔTe)を算出し、前記温度変化量(ΔTe)の絶対値が所定値よりも小さい場合に、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御手段(5)は、前記冷凍サイクル(R)を起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、前記タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒圧力(Pd)を検出する吐出圧検出手段(39)と、
前記圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒温度(Td)を検出する吐出温検出手段(40)とを備え、
前記制御手段(5)は、前記冷媒不足検出手段として、検出された前記吐出側冷媒圧力(Pd)から冷媒不足を判定する前記吐出側冷媒温度(Td)の閾値(TDO)を決め、検出された前記吐出側冷媒温度(Td)と前記閾値(TDO)とを比較して前記吐出側冷媒温度(Td)が前記閾値(TDO)よりも高い場合に冷媒不足であると判定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機(1)に吸入される吸入側冷媒圧力(Ps)を検出する吸入圧検出手段(41)を備え、
前記制御手段(5)は、検出される前記吸入側冷媒圧力(Ps)に応じて前記閾値(TDO)を補正することを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御手段(5)は、検出される前記蒸発器後温度(Te)に応じて前記閾値(TDO)を補正することを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記冷凍サイクル(R)の稼働状況を表示する表示手段(36)を備え、
前記制御手段(5)は、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、前記表示手段(36)に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項9】
冷媒として二酸化炭素(CO2)冷媒を使用していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項1】
車両エンジン(4)によって駆動される圧縮機(1)、放熱器(6)、減圧手段(8)、蒸発器(9)を環状に接続した蒸気圧縮式の冷凍サイクル(R)と、
前記圧縮機(1)に設けられ、外部からの制御信号によって前記圧縮機(1)の吐出容量を制御する容量制御機構(38)と、
前記車両エンジン(4)の回転数に関連する回転数信号が入力され、前記容量制御機構(38)を制御する制御手段(5)とを備え、
前記制御手段(5)には、前記圧縮機(1)が前記吐出容量を可変している状態にあることを検出する可変状態検出手段と、
前記冷凍サイクル(R)中の冷媒不足を検出する冷媒不足検出手段とを備え、
前記制御手段(5)は、前記可変状態検出手段で可変状態が検出されるときに、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする車両用冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御手段(5)は、前記可変状態検出手段として、前記容量制御機構(38)を制御して前記吐出容量を所定値に減少させようとする場合の可変開始電流(Imax)と、実際に前記容量制御機構(38)に出力する制御電流(Ic)とを比較し、前記制御電流(Ic)が前記可変開始電流(Imax)よりも小さい場合に可変状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記蒸発器(9)の蒸発器後温度(Te)を検出する蒸発器後温度検出手段(32)を備え、
前記制御手段(5)は、検出された前記蒸発器後温度(Te)と、所定時間前に検出された前記蒸発器後温度(Te)とを比較して温度変化量(ΔTe)を算出し、前記温度変化量(ΔTe)の絶対値が所定値よりも小さい場合に、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御手段(5)は、前記冷凍サイクル(R)を起動してからの経過時間を計測できるタイマー手段(S223)を有し、前記タイマー手段(S223)にて所定時間以上経過したときに、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒圧力(Pd)を検出する吐出圧検出手段(39)と、
前記圧縮機(1)から吐出される吐出側冷媒温度(Td)を検出する吐出温検出手段(40)とを備え、
前記制御手段(5)は、前記冷媒不足検出手段として、検出された前記吐出側冷媒圧力(Pd)から冷媒不足を判定する前記吐出側冷媒温度(Td)の閾値(TDO)を決め、検出された前記吐出側冷媒温度(Td)と前記閾値(TDO)とを比較して前記吐出側冷媒温度(Td)が前記閾値(TDO)よりも高い場合に冷媒不足であると判定することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記圧縮機(1)に吸入される吸入側冷媒圧力(Ps)を検出する吸入圧検出手段(41)を備え、
前記制御手段(5)は、検出される前記吸入側冷媒圧力(Ps)に応じて前記閾値(TDO)を補正することを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御手段(5)は、検出される前記蒸発器後温度(Te)に応じて前記閾値(TDO)を補正することを特徴とする請求項5に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記冷凍サイクル(R)の稼働状況を表示する表示手段(36)を備え、
前記制御手段(5)は、前記冷媒不足検出手段にて冷媒不足と判定した場合、前記表示手段(36)に、乗員に「冷媒不足」を知らしめる表示を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【請求項9】
冷媒として二酸化炭素(CO2)冷媒を使用していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のうちいずれか1項に記載の車両用冷凍サイクル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−322021(P2007−322021A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150488(P2006−150488)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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