説明

車両用制動制御装置

【課題】シール部材の変形不良を是正し、シール部材の変形が不十分なことによる押圧部材の戻し不足を防止する。
【解決手段】ロック動作開始から前記解除動作終了までの期間中に、W/C圧を自動加圧し、シール部材22の変形不足を是正する。これにより、ピストン19を引き戻すときにシール部材22により大きな復元力を発生させることができ、その復元力に基づいてピストン19を引き戻すことが可能となる。よって、ピストン19を十分に移動させられ、ピストン19の引き戻し不足を防止することができる。また、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から所望距離離間させることができ、ドライバにブレーキの引き摺り感を与えることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車ブレーキによって車輪をロックして制動力を発生させたあと、そのロック状態を解除するためのリリース制御を行う車両用制動制御装置に関するもので、特に、電動パーキングブレーキ(以下、EPB(Electric parking brake)という)によって制動力を発生させる場合に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、駐車時の車両の移動を規制するためにパーキングブレーキが用いられており、例えば、パーキングブレーキとして、操作レバーによってブレーキケーブルを引っ張ることで操作力をブレーキ機構に伝える手動式のものや、モータの回転力をブレーキ機構に伝える電動式のもの等がある。
【0003】
電動式のパーキングブレーキであるEPBでは、ロック時には、モータをロック側に回転(正回転)させてモータ回転力をブレーキ機構(アクチュエータ)に伝えると共に、制動力を発生させた状態でモータ駆動を停止させ、リリース時には、モータをリリース側に回転(逆回転)させることで制動力を解除している。このようなロック制御やリリース制御を行うことで、制動力の発生・解除を行っている。
【0004】
ところで、通常のサービスブレーキでは、油圧によって制動力を発生させると、ホイールシリンダ(以下、W/Cという)内のピストン(押圧部材に相当)とボディとの間に配置されるシール部材の変形を利用してピストンの戻しを行うことが一般的である。しかし、EPBによってブレーキパッドをブレーキディスクに当接させるようにピストンを移動させると、移動時にシール部材に油圧が掛からないため、シール部材の変形が不十分となり、リリース制御を行った際にピストンの引き戻し量が不足するという問題が発生する。
【0005】
これに対し、特許文献1では、W/Cのピストンを引き戻す場合に、引き戻し量が不安定になることを抑制できるように、電動ブレーキシステムにおいてディスクとの離間方向の戻し量をシール部材に依らず電動ブレーキの動作によって行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3726443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような電動ブレーキシステムは、通常のブレーキも電動ブレーキで実施するシステムであり、応答性、耐久性、操作への追従性などの要求が高く、構造が複雑になって非常に高価なものとなる。従って、油圧を利用した従来のブレーキ構造のまま、シール部材に起因するピストンの引き戻し量不足を対策することが求められる。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、シール部材の変形不良を是正し、シール部材の変形が不十分なことによる押圧部材の戻し不足を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、W/C(32、42)は、押圧部材(19)および移動部材(18)が収容される中空部(14a)を有するシリンダ状のボディ(14)が備えられていると共に、該ボディ(14a)と押圧部材(19)との間にシール部材(22)が備えられた構成とされ、電子制御手段(9)は、ロック動作開始から解除動作終了までの期間中に、ブレーキ液圧調整手段(7)にてW/C(32、42)内のブレーキ液圧であるW/C圧を自動加圧し、この加圧液圧をシール部材(22)に加えることで、シール部材(22)の変形量を是正する変形量是正加圧を行うこと特徴としている。
【0010】
このように、ロック動作開始から解除動作終了までの期間中に、ブレーキ液圧調整手段(7)にてW/C圧を自動加圧し、この加圧液圧をシール部材(22)に加えることでシール部材(22)の変形不足を是正するようにしている。このため、解除動作の際に押圧部材(19)を引き戻すときにシール部材(22)により大きな復元力を発生させることができ、その復元力に基づいて押圧部材(19)を引き戻すことが可能となる。よって、押圧部材(19)を十分に移動させられ、押圧部材(19)の引き戻し不足を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、電子制御手段(9)は、W/C圧を検出する圧力検出手段を有し、ロック動作開始から解除動作開始までの期間中に、圧力検出手段にて、予め設定した必要液圧以上のW/C圧が発生させられていないときに、変形量是正加圧を行うことを特徴としている。
【0012】
ドライバがブレーキ操作を行ってシール部材(22)の変形不足が解消されているような場合には、シール部材(22)の変形不足の是正を行う必要はない。このため、W/C圧を検出する圧力検出手段を備えるようにし、ロック動作開始から解除動作開始までの期間中に、圧力検出手段の検出結果に基づいて、予め設定した必要液圧以上のW/C圧が発生させられていないときに、変形量是正加圧を行うようにしても良い。
【0013】
請求項3に記載の発明では、電子制御手段(9)は、押圧部材(19)の移動位置を推定する移動位置推定手段を有し、推定した移動位置に応じて必要液圧を変化させることを特徴としている。
【0014】
摩擦材(11)の磨耗などにより、押圧部材(19)の移動量が変化し、それに応じてシール部材(22)の変形不足になる度合いも変化する。このため、移動位置推定手段によって押圧部材(19)の移動位置を推定し、その移動位置に応じて必要液圧を変化させるようにすれば、ロック時の押圧部材(19)の移動量の変化に対応して、シール部材(22)が変形不足であるか否かを判定することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明では、電子制御手段(9)は、移動位置推定手段にて推定した移動位置に応じて変形是正加圧による加圧液圧を設定することを特徴としている。
【0016】
このように、移動位置推定手段にて推定した押圧部材(19)の移動位置に応じて、サービスブレーキ(1)の自動加圧機能によるW/C圧の加圧液圧を設定するようにしても良い。すなわち、押圧部材(19)の移動位置の変化に伴って、その移動位置まで押圧部材(19)を移動させるのに必要なW/C圧が変化すれば、それに対応してシール部材(22)の変形量も変化することになる。したがって、押圧部材(19)の移動位置に応じてW/C圧の加圧液圧を設定することで、シール部材(22)の変形不足の是正に必要な加圧液圧を適切に設定することができる。
【0017】
この場合、請求項5に記載したように、電子制御手段(9)は、変形是正加圧による加圧液圧を、ロック保持動作時の押圧部材(19)の移動位置から、さらに摩擦材(11)を被摩擦材(12)との当接側に移動させられる液圧に設定することができる。
【0018】
このようにすれば、通常のブレーキ時に摩擦材(11)が被摩擦材(12)に当接させるまで押圧部材(19)を移動させるのに必要なW/C圧以上のW/C圧を発生させる状況を作り出すことができるため、確実にシール部材(22)の変形不足を是正することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、電子制御手段(9)は、加圧液圧として、シール部材(22)の変形不良を是正可能な圧力として予め設定された圧力を設定することを特徴としている。
【0020】
このように、シール部材(22)の変形不良を是正可能な液圧を実験などによって予め求めておき、その予め求めておいた変形不良を是正可能な液圧をW/C圧として発生させるようにしても良い。変形不良を是正可能な液圧を予め求めておけば、不必要に大きな液圧を発生させなくても良いため、ブレーキ液圧調整手段(7)の作動音や作動時間を低減することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、電子制御手段(9)は、解除動作によってパーキングブレーキ(2)によって発生させていた制動力が解除されるロック解除の前に変形量是正加圧を行うことを特徴としている。
【0022】
ロック解除のタイミングまでは、押圧部材(19)からシール部材(22)の接触面に加えられる力がシール部材(22)の変形方向と同方向になるが、ロック解除以後にその力がシール部材(22)の変形方向と逆方向になる。このため、ロック解除の前に変形量是正加圧を行うことで、W/C圧を自動加圧したときに、より確実にシール部材(22)の変形不足を是正することが可能となる。
【0023】
この場合、請求項8に記載したように、電子制御手段(9)にてロック動作終了時に変形量是正加圧を実施すれば、解除動作時にW/C圧の自動加圧を行う必要がなくなるため、より早くロック解除を行うことができ、リリース遅れを防止することができる。
【0024】
また、請求項9に記載したように、電子制御手段(9)にて解除動作中におけるロック解除の前に変形量是正加圧を実施することもできる。そして、解除動作時にはドライバがブレーキ操作を行うことが多いことから、シール部材(22)の変形不足の是正を行わなくても済む場合が多いため、請求項2に記載したように、圧力検出手段にてW/C圧を検出し、W/C圧が必要液圧以上になったことをモニタしておくことで、シール部材(22)の変形不足の是正のための自動加圧を行うためのブレーキ液圧調整手段(7)の作動頻度を低減することが可能となる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、パーキングブレーキ(2)は、電動駆動源(10)を有し、電子制御手段(9)の指令にしたがって移動部材(18)を用いて押圧部材(19)を移動させる電動パーキングブレーキであり、電子制御手段(9)は、変形量是正加圧を実施するときに、電動パーキングブレーキによって、移動部材(18)により、摩擦材(11)が被摩擦材(12)との当接側に移動させる方向に押圧部材(19)を移動させることを特徴としている。
【0026】
このように、自動加圧と同時に押圧部材(19)を移動させれば、シール部材(22)における押圧部材(19)との接触面にシール部材(22)を変形させたい方向の力を発生させることができるため、より確実にシール部材(22)の変形不足の是正を図ることが可能となる。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる駐車ブレーキ制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。
【図2】図1に示したブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。
【図3】アクチュエータ7の詳細構造を示したブレーキシステムの油圧回路図である。
【図4】駐車ブレーキ制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図5】ロック制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図6】リリース制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図7】(a)は、サービスブレーキ1によるW/C圧が発生させられていない状況でロック制御が行われたときのシール部材22の様子を示した図であり、(b)は、加圧要求によってW/C圧を自動加圧したときのシール部材22の様子を示した図である。
【図8】ロック・リリース表示処理の詳細を示したフローチャートである。
【図9】駐車ブレーキ制御処理を実行したときのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用している車両用ブレーキシステムを例に挙げて説明する。図1は、本実施形態にかかる制動制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。また、図2は、ブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
【0031】
図1に示すように、ブレーキシステムは、ドライバの踏力に基づいて制動力を発生させるサービスブレーキ1と駐車時に車両の移動を規制するためのEPB2とが備えられている。
【0032】
サービスブレーキ1は、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込みに応じた踏力を倍力装置4にて倍力したのち、この倍力された踏力に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ(以下、M/Cという)5内に発生させ、このブレーキ液圧を各車輪のブレーキ機構に備えられた各W/C31、32、41、42に伝えることで制動力を発生させる。また、M/C5とW/C31、32、41、42との間にブレーキ液圧調整手段としてのアクチュエータ7が備えられており、サービスブレーキ1により発生させる制動力を調整し、車両の安全性を向上させるための各種制御(例えば、アンチスキッド制御等)を行える構造とされている。
【0033】
アクチュエータ7を用いた各種制御は、ESC(Electronic Stability Control)−ECU8にて実行される。例えば、ESC−ECU8からアクチュエータ7に備えられる各種制御弁やポンプ駆動用のモータを制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ7に備えられる油圧回路を制御し、W/C31、32、41、42に伝えられるW/C圧を制御する。このアクチュエータ7の詳細構成に関しては後述する。
【0034】
一方、EPB2は、EPB制御装置(以下、EPB−ECUという)9によって制御され、EPB−ECU9によってモータ10を駆動し、ブレーキ機構を制御することで制動力を発生させる。
【0035】
ブレーキ機構は、本実施形態のブレーキシステムにおいて制動力を発生させる機械的構造であり、前輪系のブレーキ機構はサービスブレーキ1の操作によって制動力を発生させる構造とされているが、後輪系のブレーキ機構は、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対して制動力を発生させる共用の構造とされている。前輪系のブレーキ機構は、後輪系のブレーキ機構に対して、EPB2の操作に基づいて制動力を発生させる機構をなくした従来から一般的に用いられているブレーキ機構であるため、ここでは説明を省略し、以下の説明では後輪系のブレーキ機構について説明する。
【0036】
後輪系のブレーキ機構では、サービスブレーキ1を作動させたときだけでなくEPB2を作動させたときにも、図2に示す摩擦材であるブレーキパッド11を押圧し、ブレーキパッド11によって被摩擦材であるブレーキディスク12を挟み込むことにより、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に摩擦力を発生させ、制動力を発生させる。
【0037】
具体的には、ブレーキ機構は、図1に示すキャリパ13内において、図2に示すようにブレーキパッド11を押圧するためのW/C32、42のボディ14に直接固定されているモータ10を回転させる。そして、モータ10の駆動軸10aに備えられた平歯車15を回転させ、平歯車15に噛合わされた平歯車16にモータ10の回転力を伝えることによりブレーキパッド11を移動させ、EPB2による制動力を発生させる。
【0038】
キャリパ13内には、W/C32、42およびブレーキパッド11に加えて、ブレーキパッド11に挟み込まれるようにしてブレーキディスク12の端面の一部が収容されている。W/C32、42は、シリンダ状のボディ14の中空部14a内に通路14bを通じてブレーキ液圧を導入することで、ブレーキ液収容室である中空部14a内にW/C圧を発生させられるようになっており、中空部14a内に回転軸17、推進軸18、ピストン19などを備えて構成されている。
【0039】
回転軸17は、一端がボディ14に形成された挿入孔14cを通じて平歯車16に連結され、平歯車16が回動させられると、平歯車16の回動に伴って回動させられる。この回転軸17における平歯車16と連結された端部とは反対側の端部において、回転軸17の外周面には雄ネジ溝17aが形成されている。一方、回転軸17の他端は、挿入孔14cに挿入されることで軸支されている。具体的には、挿入孔14cには、Oリング20と共に軸受け21が備えられており、Oリング20にて回転軸17と挿入孔14cの内壁面との間を通じてブレーキ液が漏れ出さないようにされながら、軸受け21により回転軸17の他端を軸支持している。
【0040】
推進軸18は、中空状の筒部材にて構成され、内壁面に回転軸17の雄ネジ溝17aと螺合する雌ネジ溝18aが形成されている。この推進軸18は、例えば回転防止用のキーを備えた円柱状もしくは多角柱状に構成されることで、回転軸17が回動しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられない構造になっている。このため、回転軸17が回動させられると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いにより、回転軸17の回転力を回転軸17の軸方向に推進軸18を移動させる力に変換する。推進軸18は、モータ10の駆動が停止されると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により同じ位置で止まるようになっており、目標制動力になったときにモータ10の駆動を停止すれば、その位置に推進軸18を保持することができる。
【0041】
ピストン19は、推進軸18の外周を囲むように配置されるもので、有底の円筒部材もしくは多角筒部材にて構成され、外周面がボディ14に形成された中空部14aの内壁面と接するように配置されている。ピストン19の外周面とボディ14の内壁面との間のブレーキ液洩れが生じないように、ボディ14の内壁面にシール部材22が備えられ、ピストン19の端面にW/C圧を付与できる構造とされている。このシール部材22が、ロック制御後のリリース制御時にピストン19を引き戻すための反力を発生させるために用いられる部材である。
【0042】
また、ピストン19は、回転軸17が回転しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられないように、推進軸18に回転防止用のキーが備えられる場合にはそのキーが摺動するキー溝が備えられ、推進軸18が多角柱状とされる場合にはそれと対応する形状の多角筒状とされる。
【0043】
このピストン19の先端にブレーキパッド11が配置され、ピストン19の移動に伴ってブレーキパッド11を紙面左右方向に移動させるようになっている。具体的には、ピストン19は、推進軸18の移動に伴って紙面左方向に移動可能で、かつ、ピストン19の端部(ブレーキパッド11が配置された端部と反対側の端部)にW/C圧が付与されることで推進軸18から独立して紙面左方向に移動可能な構成とされている。そして、推進軸18が初期位置(モータ10が回転させられる前の状態)のときに、中空部14a内のブレーキ液圧が付与されていない状態(W/C圧=0)であれば、シール部材22の変形(リトラクト機能)によりピストン19が紙面右方向に移動させられ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離間させられるようになっている。また、モータ10が回転させられて推進軸18が初期位置から紙面左方向に移動させられているときにW/C圧が0になると、移動した推進軸18によってピストン19の紙面右方向への移動が規制され、ブレーキパッド11がその場所で保持される。
【0044】
このように構成されたブレーキ機構では、サービスブレーキ1が操作されると、それにより発生させられたW/C圧に基づいてピストン19が紙面左方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、制動力を発生させる。また、EPB2が操作されると、モータ10が駆動されることで平歯車15が回転させられ、それに伴って平歯車16および回転軸17が回転させられるため、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基づいて推進軸18がブレーキディスク12側(紙面左方向)に移動させられる。そして、それに伴ってピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、制動力を発生させる。このため、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対して制動力を発生させる共用のブレーキ機構とすることが可能となる。
【0045】
続いて、図3にアクチュエータ7の詳細構造を示したブレーキシステムの油圧回路図を示し、この図を参照してアクチュエータ7の詳細構造について説明する。
【0046】
図3に示されるように、アクチュエータ7内には、M/C5のプライマリ室およびセカンダリ室それぞれに対して連通させられた第1、第2配管系統30、40が構成されている。第1配管系統30は、左前輪FLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御し、第2配管系統40は、右前輪FRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御する。
【0047】
サービス制動力を発生させる際にM/C5に発生させられるM/C圧は、第1配管系統30と第2配管系統40を通じて各W/C31、32、41、42に伝えられる。第1配管系統30には、M/C5のプライマリ室とW/C31、32とを接続する管路Aが備えられていると共に、第2配管系統40には、M/C5のセカンダリ室とW/C41、42とを接続する管路Eが備えられ、これら各管路A、Eを通じてM/C圧がW/C31、32、41、42に伝えられる。
【0048】
また、管路A、Eは、連通状態と差圧状態に制御できる差圧制御弁33、43を備えている。差圧制御弁33、43は、ドライバがブレーキペダル3の操作を行うサービスブレーキ時には連通状態となるように弁位置が調整されており、差圧制御弁33、43に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
【0049】
この差圧制御弁33、43が差圧状態のときには、W/C31、32、41、42側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C31、32、41、42側からM/C5側へのみブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C31、32、41、42側がM/C5側よりも所定圧力高い状態が維持される。
【0050】
そして、管路A、E、差圧制御弁33、43よりも下流になるW/C31、32、41、42側において、2つの管路A1、A2、E1、E2に分岐する。管路A1、E1にはW/C31、41へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁34、44が備えられ、管路A2、E2にはW/C32、42へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁35、45が備えられている。
【0051】
これら第1、第2増圧制御弁34、35、44、45は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。第1、第2増圧制御弁34、35、44、45は、第1、第2増圧制御弁34、35、44、45に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0052】
管路A、Eにおける第1、第2増圧制御弁34、35、44、45及び各W/C31、32、41、42の間は、減圧管路としての管路B、Fを通じて調圧リザーバ36、46に接続されている。管路B、Eには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1、第2減圧制御弁37、38、47、48がそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁37、38、47、48は、第1、第2減圧制御弁37、38、47、48に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。
【0053】
調圧リザーバ36、46と主管路である管路A、Eとの間には還流管路となる管路C、Gが配設されている。管路C、Gには調圧リザーバ36、46からM/C5側あるいはW/C31、32、41、42側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ50によって駆動される自吸式のポンプ39、49が設けられている。モータ50は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
【0054】
そして、調圧リザーバ36、46とM/C5の間には補助管路となる管路D、Hが設けられている。管路D、Hを通じ、ポンプ39、49にてM/C5からブレーキ液を吸入し、管路A、Eに吐出することで、W/C31、32、41、42側にブレーキ液を供給する。
【0055】
このようにしてアクチュエータ7が構成されており、ESC−ECU8が各種制御弁33〜35、37、38、43〜45、47、48やポンプ駆動用のモータ50を制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ7に備えられる油圧回路を制御する。これにより、アンチスキッド制御として、制動時の車輪スリップ時にW/C圧の減圧、保持、増圧を行うことで車輪ロックを防止したり、横滑り防止制御として、制御対象輪のW/C圧を自動加圧することで横滑り傾向(アンダーステア傾向もしくはオーバステア傾向)を抑制して理想的軌跡での旋回が行えるようにすることができる。このアクチュエータ7を用いたサービスブレーキ1の自動加圧機能をシール部材22の変形不良の是正に用いている。
【0056】
EPB−ECU9は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがってモータ10の回転を制御することにより駐車ブレーキ制御を行うものである。このEPB−ECU9が本発明の車両用制動制御装置に相当する。EPB−ECU9は、例えば車室内のインストルメントパネル(図示せず)に備えられた操作スイッチ(SW)23の操作状態に応じた信号等を入力し、操作SW23の操作状態に応じてモータ10を駆動する。さらに、EPB−ECU9は、インストルメントパネルに備えられたロック/リリース表示ランプ24に対してモータ10の駆動状態に応じて、ロック中であるかリリース中であるかを示す信号を出力する。
【0057】
具体的には、EPB−ECU9は、モータ10に流される電流(モータ電流)をモータ10の上流側もしくは下流側で検出するモータ電流検出、ロック制御を終了させるときの目標モータ電流(目標電流値)を演算する目標モータ電流演算、モータ電流が目標モータ電流に達したか否かの判定、操作SW23の操作状態に基づくモータ10の制御など、ロック・リリース制御を実行するための各種機能部を有している。このEPB−ECU9により操作SW23の状態やモータ電流に基づいてモータ10を正回転や逆回転させたりモータ10の回転を停止させることで、EPB2をロック・リリースする制御を行う。
【0058】
続いて、上記のように構成されたブレーキシステムを用いてEPB−ECU9が上記各種機能部および図示しない内蔵のROMに記憶されたプログラムに従って実行する駐車ブレーキ制御について説明する。図4は、駐車ブレーキ制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【0059】
まず、ステップ100において時間計測用カウンタやフラグリセットなどの一般的な初期化処理を行ったのち、ステップ110に進み、時間tが経過したか否かを判定する。ここでいう時間tは、制御周期を規定するものである。つまり、初期化処理が終了してからの時間もしくは前回本ステップで肯定判定されたときからの経過時間が時間tが経過するまで繰り返し本ステップでの判定が行われるようにすることで、時間tが経過するごとに駐車ブレーキ制御が実行されるようにしている。
【0060】
続く、ステップ120では、操作SW23がオンしているか否かを判定する。操作SW23がオンの状態とはドライバがEPB2を作動させてロック状態にしようとしていることを意味し、オフの状態とはドライバがEPB2をリリース状態にしようとしていることを意味している。このため、本ステップで肯定判定されればステップ130に進み、ロック状態フラグFLOCKがオンしているか否かを判定する。ここで、ロック状態フラグFLOCKとは、EPB2を作動させてロック状態になったときにオンされるフラグであり、このロック状態フラグFLOCKがオンになっているときには既にEPB2の作動が完了して所望の制動力が発生させられている状態となる。したがって、ここで否定判定された場合にのみステップ140のロック制御処理に進み、肯定判定された場合には既にロック制御処理が完了しているためステップ150に進む。
【0061】
ロック制御処理では、モータ10を回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて所望の制動力を発生させて車輪をロックするロック動作と、車輪をロックさせられる位置でモータ10の回転を停止し、この状態を維持するロック保持動作を実行する処理を行う。図5にロック制御処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してロック制御処理について説明する。
【0062】
まず、ステップ200では、ロック制御時間カウンタCTLが予め決められたロック時突入電流マスク時間KTLMを超えているか否かを判定する。ロック制御時間カウンタCTLとは、ロック制御が開始されてからの経過時間を計測するカウンタであり、ロック制御処理開始と同時にカウントを始める。ロック時突入電流マスク時間KTLMとは、ロック制御初期時に発生する突入電流をマスクするための時間であり、ロック制御に掛かると想定される最小時間(例えば、200ms)よりも短い時間に設定され、モータ10の回転速度などに応じて予め決められる。後述するステップ210のように、モータ電流IMOTORが目標モータ電流IMTARGETに到達した時にEPB2が発生させた制動力が所望の値に到達した、もしくは近づいたと判定するが、モータ10への電流供給初期時の突入電流などによりモータ電流IMOTORがその目標モータ電流IMTARGETを超えることもあり得る。このため、ロック制御時間カウンタCTLをロック時突入電流マスク時間KTLMと比較することで、制御初期時をマスクでき、突入電流などによる誤判定を防止することが可能となる。
【0063】
したがって、ロック制御時間カウンタCTLがロック時突入電流マスク時間KTLMを超えていない状態であれば、まだロック制御が継続されることになるため、ステップ220に進んでロック動作を行う。具体的には、リリース状態フラグをオフすると共にロック制御時間カウンタCTLをインクリメントし、モータロック駆動をオン、つまりモータ10を正回転させる。これにより、モータ10の正回転に伴って平歯車15が駆動され、平歯車16および回転軸17が回転し、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基づいて推進軸18がブレーキディスク12側に移動させられ、それに伴ってピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12側に移動させられる。
【0064】
一方、ステップ200で肯定判定されると、ステップ210に進み、今回の制御周期のときのモータ電流IMOTORが目標モータ電流IMTARGETを超えているか否かを判定する。モータ電流IMOTORはモータ10に加えられる負荷に応じて変動するが、本実施形態の場合にはモータ10に加えられる負荷はブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けている押圧力に相当するため、モータ電流IMOTORが発生させた押圧力と対応した値となる。このため、モータ電流IMOTORが目標モータ電流IMTARGETを超えていれば発生させた押圧力により所望の制動力を発生させられた状態、つまりEPB2によりブレーキパッド11の摩擦面がブレーキディスク12の内壁面にある程度の力で押さえ付けられた状態となる。したがって、本ステップで肯定判定されるまではステップ220の処理を繰り返し、肯定判定されるとステップ230に進む。
【0065】
そして、ステップ230において、ロック動作が完了したことを意味するロック状態フラグFLOCKをオンすると共にロック制御時間カウンタCTLを0にし、ロック保持動作としてモータロック駆動をオフ(停止)する。これにより、モータ10の回転が停止され、回転軸17の回転が停止させられて、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により、推進軸18が同じ位置に保持されるため、その時に発生させた制動力が保持される。これにより、駐車中の車両の移動が規制される。このようにして、ロック制御処理が完了する。
【0066】
一方、図4のステップ120で否定判定された場合にはステップ160に進み、リリース状態フラグFRELがオンしているか否かを判定する。ここで、リリース状態フラグFRELとは、EPB2を作動させてリリース状態、つまりEPB2による制動力を解除した状態になったときにオンされるフラグであり、このリリース状態フラグFRELがオンになっているときには既にEPB2の作動が完了して制動力が解除させられている状態となる。したがって、ここで否定判定された場合にのみステップ170のリリース制御処理に進み、肯定判定された場合には既にリリース制御処理が完了しているためステップ150に進む。
【0067】
リリース制御処理では、モータ10を回転させることによりEPB2を作動させ、EPB−ECU9にて発生させられている制動力を解除する解除動作を実行する処理を行う。図6にリリース制御処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してリリース制御処理について説明する。
【0068】
まず、ステップ300では、リリース制御時間カウンタCTRが予め決められたリリース時突入電流マスク時間KTRM未満であるか否かを判定する。リリース制御時間カウンタCTRとは、リリース制御が開始されてからの経過時間を計測するカウンタであり、リリース制御処理開始と同時にカウントを始める。リリース時突入電流マスク時間KTRMとは、リリース初期時に発生する突入電流をマスクするための時間であり、リリース制御に掛かると想定される最小時間(例えば、200ms)よりも短い時間に設定され、モータ10の回転速度などに応じて予め決められる。後述するステップ330のように、前回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)と今回の制御周期に検出されたモータ電流IMOTOR(t)との差や、前回と前々回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)、IMOTOR(t-2)の差、つまりモータ電流IMOTORの微分値の絶対値に基づいて制動力が0になったことを検出しているが、モータ10への電流供給初期時の突入電流などによりその絶対値が制動力が0になったと判定する条件を満たすこともあり得る。このため、リリース制御時間カウンタCTRをリリース時突入電流マスク時間KTRMと比較することで、制御初期時をマスクでき、突入電流などによる誤判定を防止することが可能となる。
【0069】
したがって、リリース制御時間カウンタCTRがリリース時突入電流マスク時間KTRM未満の状態であれば、リリース制御を継続すべく、ステップ310に進んでロック状態フラグをオフすると共にリリース制御時間カウンタCTRをインクリメントし、モータリリース駆動をオン、つまりモータ10を逆回転させる。これにより、モータ10の逆回転に伴って、回転軸17が回転され、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力に基づいて推進軸18がブレーキディスク12から離れる方向に移動させられる。これにより、ピストン19およびブレーキパッド11も同方向に移動させられる。
【0070】
また、これと同時に、加圧要求を示すフラグをオンし、EPB−ECU9からESC−ECU8に対して加圧要求信号を出力し、W/C圧の自動加圧を行わせることで、シール部材22の変形不良を是正する。図7を参照して、この作用について説明する。
【0071】
図7(a)は、サービスブレーキ1によるW/C圧が発生させられていない状況でロック制御が行われたときのシール部材22の様子を示した図であり、図7(b)は、加圧要求によってW/C圧を自動加圧したときのシール部材22の様子を示した図である。
【0072】
ロック制御時にドライバがブレーキペダル3を踏み込んでサービスブレーキ1によるW/C圧が発生させられている状況であれば、そのW/C圧に基づいてピストン19がブレーキパッド11をブレーキディスク12側に当接させる側に力が加えられる。このため、駐車ブレーキ時のモータ10の出力も減らすことができるし、シール部材22もピストン19とボディ14との間を通じてW/C圧が加えられるため、十分に変形させられる。
【0073】
しかしながら、サービスブレーキ1によるW/C圧が発生させられていない状況の場合には、シール部材22に対してピストン19とボディ14との間を通じてW/C圧が加えられないため、図7(a)に示すようにシール部材22の変形が不十分となる。これに対して、アクチュエータ7を用いたサービスブレーキ1の自動加圧によってW/C圧を発生させると、図7(b)に示すようにシール部材22に対してピストン19とボディ14との間を通じてW/C圧が加えられるため、シール部材22をより変形させられ、シール部材22の変形不良を是正できる。
【0074】
例えば、図7(a)、(b)に示す例では、シール部材22が配置される溝の形状をテーパ状にしており、シール部材22の変形部分がそのテーパ形状部分に入り込んで変形し易くなるようにしているが、図7(a)の状態だとテーパ形状部分への入り込み量が少ないのに対し、図7(b)の状態だとテーパ形状部分へより多く入り込んだ状態となる。このように、アクチュエータ7を用いたサービスブレーキ1の自動加圧によってW/C圧を発生させることで、シール部材22の変形不良を是正することが可能となる。
【0075】
一方、ステップ300において、リリース制御時間カウンタCTRがリリース時突入電流マスク時間KTRM以上であると判定されると、ステップ320に進む。ステップ320では、リリース制御時間カウンタCTRがリリース駆動時間KTR未満であるか否かを判定する。リリース制御が開始されてからの時間を示すリリース制御時間カウンタCTRがリリース駆動時間KTRを超えたか否かを判定することにより、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から所定距離離間したことを判定できる。ここで肯定判定されればステップ330に進む。
【0076】
そして、ステップ330では、前回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)と今回の制御周期に検出されたモータ電流IMOTOR(t)との差や、前回と前々回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)、IMOTOR(t-2)の差、つまりモータ電流IMOTORの微分値の絶対値が閾値KI(例えば0.2A)を超えているか否かを判定する。上述したように、モータ電流IMOTORはモータ10に加えられる負荷と対応した値となり、その負荷は推進軸18の先端がピストン19を押すことによる反力に相当している。そして、リリース制御によってブレーキパッド11がブレーキディスク12から離れる方向に移動させられることにより推進軸18の先端がピストン19を押す力が低下していくため、モータ電流IMOTORの絶対値が徐々に減少していく。このとき、モータ10を逆回転させる時に流れるモータ電流IMOTORが負の値で表されるとすると、モータ電流IMOTORが徐々に増加する。したがって、モータ電流IMOTOR(t-1)とモータ電流IMOTOR(t)の差の絶対値を求めることで、モータ負荷が変動している途中であるか否かが判る。よって、誤判定要因となるノイズを考慮しつつ、リリース制御によるモータ負荷の変動として想定されるモータ電流IMOTORの変化量以下の値に閾値KIを設定し、モータ電流IMOTORの微分値の絶対値が閾値KI以下になったことが2回連続して継続したときに、モータ負荷が無くなって推進軸18の先端がピストン19から離れ始める瞬間であることを判定する。
【0077】
このため、ステップ330で否定判定されるまでは、引き続きステップ310の処理を繰り返し実行し、ステップ330で肯定判定されるとステップ340に進む。ステップ340では、リリース制御時間カウンタCTRをインクリメントし、モータリリース駆動をオン、つまりモータ10を逆回転させる。これにより、ステップ310と同様の動作が行われ、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から所定距離離間するまで移動させられる。また、これと同時に加圧要求をオフする。つまり、ステップ310の処理によって、シール部材22に対してW/C圧を加え、既にシール部材22の変形不良を是正できているため、この後はサービスブレーキ1によるW/C圧の自動加圧を解除し、ピストン19が推進軸18と共にブレーキパッド11をブレーキディスク12から離間させる方向に移動させる。
【0078】
この後、リリース駆動時間KTRが経過してステップ320で否定判定されると、ステップ350に進み、リリースが完了したことを意味するリリース状態フラグFRELをオンすると共にリリース制御時間カウンタCTRを0にし、モータリリース駆動をオフする。したがって、モータ10の回転が停止され、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から離れた状態のままで保持される。このようにして、リリース制御処理が完了する。
【0079】
このようにして、ロック制御処理およびリリース制御処理が終了すると、図4のステップ150におけるロック・リリース表示処理を行う。図8にロック・リリース表示処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してロック・リリース表示処理について説明する。
【0080】
ステップ400では、ロック状態フラグFLOCKがオンされているか否かを判定する。ここで肯定判定されればステップ405に進んでロック・リリース表示ランプ24を点灯させ、否定判定されればステップ410に進んでロック・リリース表示ランプ24を消灯する。このように、ロック状態であればロック・リリース表示ランプ24を点灯し、リリース状態もしくはリリース制御が開始された状態のときにはロック・リリース表示ランプ24を消灯する。これにより、ドライバにロック状態であるか否かを認識させることが可能となる。このようにして、ロック・リリース表示処理が完了し、これに伴って駐車ブレーキ制御処理が完了する。
【0081】
図9は、このような駐車ブレーキ制御処理を実行したときのタイミングチャートである。この図に示されるように、時点T1において操作SW23がオンされてロック制御が開始されると、モータロック駆動がオンされ、モータ10が正回転させられて推進軸18がブレーキパッド11側に移動させられる。これと同時に、リリース状態フラグFRELがオフになる。
【0082】
続いて、時点T2ではロック時突入電流マスク時間KTLMが経過するまではモータ電流IMOTORの値に関わらずロック制御が継続させられるため、突入電流が発生してもロック制御が続けられる。そして、ロック時突入電流マスク時間KTLMが経過したのち、時点T3においてブレーキパッド11とブレーキディスク12とが接触してこれらの間のクリアランスが無くなると、制動力が発生させられる。これにより、モータ10に対する負荷が発生するため、モータ電流IMOTORが上昇していき、時点T4においてモータ電流IMOTORが目標モータ電流IMTARGETに達すると、モータロック駆動が停止させられる。これと同時に、ロック状態フラグFLOCKがオンされる。
【0083】
このようにして、ロック制御が行われ、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に押し付けられることで、所望の制動力が発生させられる。
【0084】
次に、時点T5において操作SW23がオフされてリリース制御が開始されると、モータリリース駆動がオンされ、モータ10が逆回転させられて推進軸18がブレーキパッド11をブレーキディスク12から離す側に移動させられる。これと同時に、ロック状態フラグFLOCKがオフされる。また、加圧要求を示すフラグがオンされることで、W/C圧が自動加圧される。これにより、シール部材22に対してピストン19とボディ14との間を通じてW/C圧が加えられるため、シール部材22をより変形させられ、シール部材22の変形不良を是正できる。
【0085】
続いて、リリース時突入電流マスク時間KTRMが経過するまではモータ電流IMOTORの値に関わらずリリース制御が継続させられるため、突入電流が発生してもリリース制御が続けられる。そして、時点T6において突入電流が無くなってからさらにリリース時突入電流マスク時間KTRMが経過し、時点T7において前回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)と今回の制御周期に検出されたモータ電流IMOTOR(t)との差や、前回と前々回の制御周期のときに検出されたモータ電流IMOTOR(t-1)、IMOTOR(t-2)の差の絶対値が共に閾値KI以下になると、推進軸18の先端がピストン19から離れ始める瞬間であるとして、リリース制御時間KTRが経過するまでモータ駆動が続けられる。これにより、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から離れていき、これらの間のクリアランスが広がっていく。この後、リリース制御時間KTRが経過すると、モータリリース駆動が停止させられる。これと同時に、リリース状態フラグFRELがオンされる。
【0086】
このようにして、リリース制御が行われ、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に所定距離のクリアランスが設けられ、必要なクリアランス量が確保される。
【0087】
以上説明したように、本実施形態では、リリース制御時におけるロック解除の直前、つまり推進軸18がピストン19を押圧することによって発生させていたEPB2の制動力が解除される直前に、W/C圧を自動加圧し、シール部材22の変形不足を是正するようにしている。このため、ピストン19を引き戻すときにシール部材22により大きな復元力を発生させることができ、その復元力に基づいてピストン19を引き戻すことが可能となる。よって、ピストン19を十分に移動させられ、ピストン19の引き戻し不足を防止することができる。また、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から所望距離離間させることができ、ドライバにブレーキの引き摺り感を与えることを防止することができる。
【0088】
なお、ここでいうロック解除とは、推進軸18がピストン19を押圧することによって発生させていたEPB2の制動力が解除されるタイミングを意味している。これは、推進軸18がピストン19を押さなくなったタイミング、換言すればピストン19から推進軸18が受ける反力が0になってステップ330で肯定判定されるタイミングに相当し、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から離れて制動力が0となるタイミングを意味しているわけではない。つまり、本実施形態のように、自動加圧によるW/C圧が発生させられている場合には、ピストン19から推進軸18が受ける反力が0になる瞬間は、まだ自動加圧によるW/C圧によってピストン19が押圧され、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に接していて制動力を発生させていることになる。このとき発生している制動力は、EPB2が発生させている制動力ではなく、サービスブレーキ1の自動加圧機能によって発生させている制動力である。
【0089】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、リリース制御時におけるロック解除の直前にW/C圧を自動加圧することでシール部材22の変形不足の是正を行っている。しかしながら、これに限らず、シール部材22の変形不足の是正は、リリース制御による解除動作終了前であればどの時点で行われても良い。すなわち、リリース制御による解除動作中にシール部材22の変形不足が是正されていれば、シール部材22の復元力を利用してピストン19を引き戻すことができる。したがって、リリース制御による解除動作終了前であれば、どの時点でシール部材22の変形不足を是正しても良い。
【0090】
ただし、好ましくはシール部材22の変形不足の是正をリリース制御によるロック解除以前に行われるようにすると良い。これは、リリース制御によるロック解除のタイミングまでは、ピストン19からシール部材22の接触面に加えられる力がシール部材22の変形方向と同方向になるが、ロック解除以後にその力がシール部材22の変形方向と逆方向になるためである。このようにすることで、W/C圧を自動加圧したときに、より確実にシール部材22の変形不足を是正することが可能となる。
【0091】
また、シール部材22の変形不足の是正をリリース制御時に限らず、ロック制御におけるロック動作終了直後に実施するようにしても良い。このように、ロック制御時にシール部材22の変形不足の是正を行っておくことで、リリース制御時に行う場合と比較して、リリース制御時にW/C圧の自動加圧を行う必要がなくなるため、より早くロック解除を行うことができ、リリース遅れを防止することができる。
【0092】
(2)上記実施形態では、必ずシール部材22の変形不足を是正するためのW/C圧の自動加圧を行うようにしたが、ドライバがブレーキ操作を行ってシール部材22の変形不足が解消されているような場合には、シール部材22の変形不足の是正を行う必要はない。このため、ロック制御のロック動作開始、つまり推進軸18がピストン19を押すことでEPB2による制動力を発生させ始めるタイミングからリリース制御によるロック解除時までの期間中に、W/C圧がシール部材22の変形不足の是正を行うのに必要となる必要液圧以上になったか否かをモニタし、その必要液圧以上になっていないときにのみ、シール部材22の変形不足の是正を行うようにしても良い。例えば、図3に示したように、W/C圧センサ60を備えると共に、EPB−ECU9にW/C圧センサ60の検出信号が入力されることでW/C圧を検出する圧力検出手段を備え、W/C圧がシール部材22の変形不足の是正を行うのに必要となる必要液圧以上になったときに、その履歴を記憶させるようにしておけば、その履歴に基づいてシール部材22の変形不足の是正を行う必要が有るか否かを判定できる。
【0093】
特に、上記実施形態のように、シール部材22の変形不足の是正をリリース制御によるロック解除の直前に行う場合には、解除動作時にはドライバがブレーキ操作を行うことが多いことから、シール部材22の変形不足の是正を行わなくても済む場合が多い。したがって、W/C圧が必要液圧以上になったことをモニタしておくことで、シール部材22の変形不足の是正のための自動加圧を行うためのアクチュエータ7の作動頻度を低減することが可能となる。
【0094】
また、このときの必要液圧を変化させても良い。すなわち、ブレーキパッド11の磨耗などにより、ピストン19の移動量が変化し、それに応じてシール部材22の変形不足の度合いも変化する。このため、ロック制御を行ったときのピストン19の移動位置をストロークセンサ等の移動位置推定手段によって推定し、その移動位置に応じて必要液圧を変化させるようにすれば、ロック時のピストン19の移動量の変化に対応して、シール部材22が変形不足であるか否かを判定することができる。
【0095】
さらに、そのときに推定したピストン19の移動位置に応じて、サービスブレーキ1の自動加圧機能によるW/C圧の加圧液圧を設定するようにしても良い。すなわち、シール部材22の設計は、シール部材22の変形量がW/C圧に対応した量となるように行われている。そして、ピストン19の移動位置の変化に伴って、通常のブレーキ時、つまりドライバがブレーキペダル3を踏み込むことによってピストン19をその移動位置まで移動させるために必要なW/C圧も変化する。このため、ピストン19の移動位置の変化に伴って、その移動位置までピストン19を移動させるのに必要なW/C圧が変化すれば、それに対応してシール部材22の変形量も変化することになる。したがって、ピストン19の移動位置に応じてW/C圧の加圧液圧を設定することで、シール部材22の変形不足の是正に必要な加圧液圧を適切に設定することができる。
【0096】
この場合、例えばW/C圧の加圧液圧を、ブレーキパッド11をブレーキディスク12に当接させて車輪をロックさせたときのピストン19の移動位置から、さらにブレーキパッド11がブレーキディスク12に当接させる方向に移動させられる液圧に設定することができる。このようにすれば、通常のブレーキ時にブレーキパッド11がブレーキディスク12に当接させるまでピストン19を移動させるのに必要なW/C圧以上のW/C圧を発生させる状況を作り出すことができるため、確実にシール部材22の変形不足を是正することが可能となる。
【0097】
また、シール部材22の変形不良を是正可能な液圧を実験などによって予め求めておき、その予め求めておいた変形不良を是正可能な液圧をW/C圧として発生させるようにしても良い。このように、変形不良を是正可能な液圧を予め求めておけば、不必要に大きな液圧を発生させなくても良いため、アクチュエータ7の作動音や作動時間を低減することが可能となる。
【0098】
(3)上記実施形態のようにシール部材22の変形不足の是正のためのW/C圧の自動加圧を行う際に、同時に、モータ10を駆動してブレーキパッド11がブレーキディスク12に当接する方向にピストン19を移動させるようにしても良い。このように、自動加圧と同時にピストン19を移動させれば、シール部材22におけるピストン19との接触面にシール部材22を変形させたい方向の力を発生させることができるため、より確実にシール部材22の変形不足の是正を図ることが可能となる。
【0099】
(4)上記実施形態では、ステップ340において、加圧要求をオフするようにした。この場合、差圧制御弁33、43の差圧が0となるように差圧制御弁33、43が連通状態にさせられると共にモータ50の駆動が停止させられるため、W/C圧が急峻に低下させられることになる。しかしながら、急峻にW/C圧を低下させるとその圧力変動によってピストン19が瞬間的に移動させられて推進軸18に衝突し、音が発生したり、EPB2に過負荷を与えるという問題を発生させ得る。また、W/C圧を低下させる際には差圧制御弁33、43が連通状態にされるため、W/C圧がM/C5側に伝わり、それによる反力がブレーキペダル3を通じてドライバに伝わるという問題も発生させ得る。
【0100】
このため、図6のステップ340の処理では、加圧要求のオフに加えて、ステップ340中に括弧書きで示したように緩減要求を示すフラグをオンするようにすることができる。この緩減要求が出されると、ESC−ECU8が差圧制御弁33、43のソレノイドに流す電流値を所定勾配で低下させるようにすることで、W/C圧が緩やかに減圧させることができ、上記問題が発生しないようにできる。
【0101】
(5)上記実施形態では、図2に示されるようにモータ10を駆動することによって駐車ブレーキによる制動力を発生させることができるEPB2とサービスブレーキ1とが組み合わされた形態のブレーキ構成が適用される場合について説明した。しかしながら、これは単なる一例を示したに過ぎず、他の構造であっても構わない。例えば、ドライバがパーキングレバーを引張ることによってワイヤーが引張られ、推進軸18を駆動するための回転軸17を回転させるような形態のブレーキ機構についても、サービスブレーキ1の自動加圧機能を用いてシール部材22の変形不足を是正するためのW/C圧の自動加圧を行うことで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
(6)上記実施形態では、ディスクブレーキタイプのEPB2を例に挙げたが、他のタイプ、例えばドラムブレーキタイプのものであっても構わない。その場合、摩擦材と被摩擦材は、それぞれブレーキシューとドラムとなる。
【0103】
(7)上記実施形態では、電子制御手段として、ESC−ECU8とEPB−ECU9という2つのECUを備えた構成としたが、1つに統合されたECUとされていても良いし、他のECUによって上記各種処理を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0104】
1…サービスブレーキ、2…EPB、5…M/C、7…アクチュエータ、8…ESC−ECU、9…EPB−ECU、10…モータ、11…ブレーキパッド、12…ブレーキディスク、13…キャリパ、14…ボディ、14a…中空部、14b…通路、17…回転軸、17a…雄ネジ溝、18…推進軸、18a…雌ネジ溝、19…ピストン、22…シール部材、23…操作SW、31、32、41、42…W/C、60…W/C圧センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦材(11)と、
車輪に取り付けられた被摩擦材(12)と、
前記摩擦材(11)と前記被摩擦材(12)を使って機械的に制動力を発生させるパーキングブレーキ(2)と、
前記摩擦材(11)と前記被摩擦材(12)を使って油圧で制動力を発生させるサービスブレーキ(1)と、
前記パーキングブレーキ(2)と前記サービスブレーキ(1)の動作を制御する電子制御手段(8、9)とを有してなる車両用制動制御装置であって、
前記パーキングブレーキ(2)は、ドライバの操作に基づいて機械的に前記摩擦材(11)が前記被摩擦材(12)に対し当接する方向に移動する移動部材(18)によって押圧部材(19)を移動させ、前記押圧部材(19)により、前記摩擦材(11)を前記被摩擦材(12)に移動押圧するロック動作と、押圧した状態を保持するロック保持動作と、前記摩擦材(11)が前記被摩擦材(12)に対し離間する方向に前記移動部材(18)を移動させることにより前記押圧部材(19)を移動させ、前記摩擦材(11)を前記被摩擦材(12)から離間させる解除動作を行うパーキングブレーキ機構を有し、
前記サービスブレーキ(1)は、ブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生手段(3〜5)と、前記ブレーキ液圧発生手段(3〜5)と接続され、前記ブレーキ液圧の増加により前記パーキングブレーキ(2)と共通の前記押圧部材(19)により前記摩擦材(11)を前記被摩擦材(12)に対し当接方向に移動し押圧し、前記ブレーキ液圧の減少により、前記押圧部材(19)により前記摩擦材(11)を前記被摩擦材(12)から離間する方向に移動させるホイールシリンダ(32、42)と、前記ホイールシリンダ(32、42)のブレーキ液圧を調整可能なブレーキ液圧調整手段(7)とを有し、
前記ホイールシリンダ(32、42)は、前記押圧部材(19)および前記移動部材(18)が収容される中空部(14a)を有するシリンダ状のボディ(14)が備えられていると共に、該ボディ(14a)と前記押圧部材(19)との間にシール部材(22)が備えられた構成とされ、
前記電子制御手段(9)は、前記ロック動作開始から前記解除動作終了までの期間中に、前記ブレーキ液圧調整手段(7)にて前記ホイールシリンダ(32、42)内のブレーキ液圧であるホイールシリンダ圧を自動加圧し、この加圧液圧を前記シール部材(22)に加えることで、前記シール部材(22)の変形量を是正する変形量是正加圧を行うこと特徴とする車両用制動制御装置。
【請求項2】
前記電子制御手段(9)は、前記ホイールシリンダ圧を検出する圧力検出手段を有し、前記ロック動作開始から前記解除動作開始までの期間中に、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて、予め設定した必要液圧以上のホイールシリンダ圧が発生させられていないときに、前記変形量是正加圧を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用制動制御装置。
【請求項3】
前記電子制御手段(9)は、前記押圧部材(19)の移動位置を推定する移動位置推定手段を有し、推定した前記移動位置に応じて前記必要液圧を変化させることを特徴とする請求項2に記載の車両用制動制御装置。
【請求項4】
前記電子制御手段(9)は、前記移動位置推定手段にて推定した前記移動位置に応じて前記変形是正加圧による加圧液圧を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両用制動制御装置。
【請求項5】
前記電子制御手段(9)は、前記変形是正加圧による前記加圧液圧を、前記ロック保持動作時の前記押圧部材(19)の移動位置から、さらに前記摩擦材(11)を前記被摩擦材(12)との当接側に移動させられる液圧に設定することを特徴とする請求項4に記載の車両用制動制御装置。
【請求項6】
前記電子制御手段(9)は、前記加圧液圧として、前記シール部材(22)の変形不良を是正可能な圧力として予め設定された圧力を設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用制動制御装置。
【請求項7】
前記電子制御手段(9)は、前記解除動作によって前記パーキングブレーキ(2)によって発生させていた制動力が解除されるロック解除の前に前記変形量是正加圧を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用制動制御装置。
【請求項8】
前記電子制御手段(9)は、前記ロック動作終了時に前記変形量是正加圧を実施することを特徴とする請求項7に記載の車両用制動制御装置。
【請求項9】
前記電子制御手段(9)は、前記解除動作中における前記ロック解除の前に前記変形量是正加圧を実施することを特徴とする請求項7に記載の車両用制動制御装置。
【請求項10】
前記パーキングブレーキ(2)は、電動駆動源(10)を有し、前記電子制御手段(9)の指令にしたがって前記移動部材(18)を用いて前記押圧部材(19)を移動させる電動パーキングブレーキであり、
前記電子制御手段(9)は、前記変形量是正加圧を実施するときに、前記電動パーキングブレーキによって、前記移動部材(18)により、前記摩擦材(11)が前記被摩擦材(12)との当接側に移動させる方向に前記押圧部材(19)を移動させることを特徴とする請求項7または8に記載の車両用制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−1053(P2012−1053A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136257(P2010−136257)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】