説明

車両用制動支援装置及び車両用制動支援方法

【課題】自車両前方の障害物XMに対する運転者の支援を、運転者の意図に応じてより適切に実施することを目的とする。
【解決手段】自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、予め設定した第1の閾値Th1より高く且つアクセルペダル22が操作されていないと判定すると、自車両MMに制動力を付与する。さらに、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1よりもリスクポテンシャルが高い第2の閾値Th2よりリスクポテンシャルが高いと判定すると、アクセルペダル22の操作状態に関わらず自車両MMに制動力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両進行方向の障害物に対する運転者の運転を支援するための車両用制動支援の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両前方の障害物に対する運転者の運転を支援するための車両用制動支援装置としては、例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置では、レーダーから得られる車両前方の障害物との車間距離及び相対速度に基づいて、制動回避限界を超えるか否か判断する。そして、制動回避限界を超えると判断したときに、制動力を付与して運転者の運転を支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-154607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように制動によって運転者の運転を支援する車両用運転支援装置においては、障害物に対する自車両の相対車速が高い走行シーンでの回避を可能とさせるためには制動力の付与(制動支援)を早期に開始するように設定する必要がある。しかし、早く制動支援を行いすぎると、運転者が障害物を追い抜くために加速して意図的に自車両が障害物に接近した場合などにおいて、運転者の意図に反する制動支援を実施することで運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、自車両進行方向の障害物に対する運転者の支援を、運転者の意図に応じてより適切に実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが、予め設定した第1の閾値よりもリスクポテンシャルが高く且つアクセルペダルが操作されていないと判定すると、自車両に制動力を付与する。さらに、自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが、第1の閾値よりもリスクポテンシャルが高い第2の閾値より高いと判定すると、アクセルペダルの操作状態に関わらず自車両に制動力を付与する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両進行方向の障害物に対し第2の閾値よりもリスクポテンシャルが高ければアクセルペダルの操作状態に関わらず自車両に制動力を付与することにより、確実に制動を付与して運転者の運転を支援する。一方、第2の閾値よりもリスクポテンシャルが低い第1の閾値から当該第2の閾値の間のリスクポテンシャルの場合には、アクセルペダルが操作されていない場合に自車両に制動力を付与することにより、運転者に加速意図がない場合のみ制動力を付与する。これによって、運転者の意図に応じて自車両に制動力を付与することができる。
【0008】
この結果、自車両進行方向の障害物に対する運転者の支援を、運転者の意図に応じてより適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る自車両のシステム構成を示す図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係るコントローラの構成を示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る自車両・障害物情報取得部の構成を示す図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る支援情報演算部の構成を示す図である。
【図5】本発明に基づく実施形態に係る制動力演算部の構成を示す図である。
【図6】本発明に基づく実施形態に係るアクセルペダル反力演算部の構成を示す図である。
【図7】制動力演算部の処理を説明する図である。
【図8】アクセルペダル反力演算部の処理を説明する図である。
【図9】本発明に基づく第1実施形態に係るタイムチャート例を示す図である。
【図10】本発明に基づく第2実施形態に係るリスクポテンシャルの算出を説明する図である。
【図11】本発明に基づく第3実施形態に係るタイムチャート例を示す図である。
【図12】本発明に基づく第4実施形態に係るタイムチャート例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における自車両MMのシステム構成を示す図である。
すなわち、自車両MMは、車輪速センサ1と、障害物情報検出センサ2と、アクセル開度センサ3と、スロットル開度センサ4と、シフトポジションセンサ5と、アクセルペダル反力付与装置11と、スロットル開度制御部21、コントローラ20及び不図示のトランスミッションを介して車輪に駆動力を付与する、車両の駆動源としてのエンジン23とを備える。
【0011】
車輪速センサ1は自車両MMの各輪30に対応して設けられ、各輪30の車輪速を検出してコントローラ20に出力する。
障害物情報検出センサ2は、自車両の進行方向である自車両前方に位置する障害物XMを検出して検出した障害物XMの情報をコントローラ20に出力する。障害物情報検出センサ2は、例えば自車両前方にレーザー光を出射すると共に反射光を受光し、そのレーザー光の出射から反射光の受光までの時間を検出してコントローラ20に出力するレーザーレーダーである。なお本実施形態においては、この障害物情報検出センサ2をレーザーレーダーとして記載するが、例えばミリ波レーダーやカメラ等の車両前方の障害物XMの情報を検出できるものであれば適宜変更可能である。
【0012】
アクセル開度センサ3は、運転者によって操作されるアクセルペダル22の開度(操作量)であるアクセル開度を検出し、検出したアクセル開度をコントローラ20に出力する。
スロットル開度センサ4は、エンジン23のスロットル開度を検出し、検出したスロットル開度をコントローラ20に出力する。
【0013】
シフトポジションセンサ5は、トランスミッション(不図示)のシフトポジション(トランスミッションの変速段若しくは変速比)を検出し、検出したシフトポジションをコントローラ20に出力する。
【0014】
アクセルペダル反力付与装置11は、コントローラ20からの指令に基づいて、運転者によって操作されるアクセルペダル22に操作反力を付与するモータ等を備えたアクチュエータである。なお、通常のアクセルペダル22と同様に、本実施形態におけるアクセルペダル22にはバネ等の反力付与構造によってアクセルペダル22の操作量に応じた反力(以下、通常反力と言う)が付与される。従って、このアクセルペダル反力付与装置11によって付与される操作反力は、上記通常反力に重畳して付与される反力である。つまり、実際にアクセルペダル22に発生する反力は、アクセルペダル反力付与装置11の非駆動時においては通常反力となり、一方、アクセルペダル反力付与装置11の駆動時には上記通常反力にアクセルペダル反力付与装置11によって付与される反力が加算された反力となる。
【0015】
スロットル開度制御部21は、アクセル開度センサ3によって検出されたアクセル開度に基づいてスロットル開度目標値を算出し、算出したスロットル開度目標値に基づいてエンジン23のスロットル開度を制御する。なおスロットル開度目標値は、例えばアクセル開度とスロットル開度目標値との相関関係を定めたマップを予め記憶しておき、アクセル開度センサ3によって検出されたアクセル開度に基づいてマップ引きによりスロットル開度目標値を算出すれば良い。また、例えばアクセル開度とスロットル開度目標値との相関関係を数式として予め記憶しておき、アクセル開度センサ3によって検出されたアクセル開度と予め記憶した数式とに基づいてスロットル開度目標値を算出しても良く、スロットル開度目標値の算出方法は適宜変更可能である。
【0016】
また自車両MMは、制動装置を備える。制動装置について説明すると、運転者が操作するブレーキペダル25が、ブースタ(不図示)を介してマスタシリンダ26に連結する。また、マスタシリンダ26は、流体圧回路27を介して各輪30の各ホイールシリンダ28に連結する。これにより、制動制御が作動しない状態では、運転者によるブレーキペダル25の踏み込み量に応じて、マスタシリンダ26で制動流体圧を昇圧する。その昇圧した制動流体圧を、流体圧回路27を通じて、各車輪30の各ホイールシリンダ28に供給する。制動流体圧制御部29は、コントローラ20から出力される制動力指令値に基づいて流体圧回路27中のアクチュエータを制御して、各輪30への制動流体圧を個別に制御する。
【0017】
ここで、制動流体圧制御部29及び流体圧回路27としては、例えばアンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)又はビークルダイナミックスコントロール装置(VDC)で使用する制動流体圧制御部を利用すればよい。
上記制動流体圧制御部29、流体圧回路27が、後述の制動力付与装置9を構成する。なお、制動力付与装置9は、油圧によって制動を付与する構成に限定しない。制動付与装置は、電動ブレーキなどから構成されていても良い。
【0018】
図2は、コントローラ20の内部構成を含めた本実施形態における制御ブロックを示した図である。なお、コントローラ20の内部構成以外の構成は上記図1と同様であるので、図1と同一の符番を付し、以下では説明を省略する。
コントローラ20は、自車両・障害物情報取得部6と、支援情報演算部7と、制動力演算部8と、アクセルペダル反力演算部10とを備える。
【0019】
以下、図3〜図6を参照して、自車両・障害物情報取得部6と、支援情報演算部7と、制動力演算部8と、アクセルペダル反力演算部10との処理内容を説明する。
図3は、本実施形態の自車両・障害物情報取得部6の構成を説明する図である。
自車両・障害物情報取得部6は、図3に示すように、自車速演算部6Aと、自車加減速度演算部6Bと、障害物情報演算部6Cと、エンジントルク検出部6Dと、自車両・障害物情報出力部6Eを備える。
【0020】
自車速演算部6Aは、上記各車輪速センサ1から入力した各車輪速に基づいて自車速を演算し、演算結果を上記自車両・障害物情報出力部6Eに出力する。なお、各車輪の車輪速から自車速を演算する方法は周知であるので詳述はしないが、例えば各車輪速の平均値あるいは最低値とタイヤ径とに基づいて自車速を算出する。
【0021】
自車加減速度演算部6Bは、上記車輪速センサ1から入力した各車輪速に基づいて自車の加減速度Aを演算し、演算結果を上記自車両・障害物情報出力部6Eに出力する。この自車加減速度演算部6Bは、例えば上記自車速演算部6Aと同様に自車速を算出すると共に、算出した自車速を微分して自車の加減速度Aを算出する。なお、この自車加減速度演算部6Bは、上記自車速演算部6Aにて算出した自車速を微分して自車の加減速度Aを算出しても良い。
【0022】
障害物情報演算部6Cは、上記障害物情報検出センサ2から入力したレーザー光の出射から受光までの時間(障害物情報検出値)に基づいて車両前方の障害物と自車両との距離(相対距離)及び自車両と障害物との相対速度である障害物情報を演算し、演算結果を上記自車両・障害物情報出力部6Eに出力する。
【0023】
エンジントルク検出部6Dは、上記スロットル開度センサ4から入力したスロットル開度に基づいてエンジン23の出力トルクを演算し、演算結果を上記自車両・障害物情報出力部6Eに出力する。なお、エンジン23の出力トルクは例えば、スロットル開度と出力トルクとの相関関係を定めたマップを予め記憶しておき、スロットル開度センサ4から受け取ったスロットル開度に基づいてマップ引きによって求めれば良い。また、スロットル開度と出力トルクとの相関関係を定めた数式を予め記憶しておき、スロットル開度センサ4から受け取ったスロットル開度と数式とに基づいてエンジン23の出力トルクを求めても良く、エンジン23の出力トルクの算出方法は適宜変更可能である。
【0024】
自車両・障害物情報出力部6Eは、上記自車速演算部6Aと、上記自車加減速度演算部6Bと、上記障害物情報演算部6Cと、上記アクセル開度センサ3と、上記エンジントルク検出部6Dと、上記シフトポジションセンサ5からそれぞれ出力された、自車速、加減速度、障害物情報、アクセル開度、エンジントルク、シフトポジションを入力し、これら入力した自車両MM及び障害物XMの情報を自車両・障害物情報として上記支援情報演算部7に出力する。
【0025】
図4は、本実施形態における支援情報演算部7の構成を説明する図である。
支援情報演算部7は、図4に示すように、リスクポテンシャル演算部7Aと、外乱推定部7Bと、支援情報出力部7Cとを備える。
【0026】
リスクポテンシャル演算部7Aは、上記自車両・障害物情報取得部6の自車両・障害物情報出力部6Eから入力した自車両・障害物情報に基づいてリスクポテンシャルを表わす値として自車両MMの前方の障害物XMに対する接近度合いを算出する。具体的には、前方の障害物XMの位置に自車両MMが到達するのに要する到達時間TTCを自車両MMの前方の障害物XMに対する接近度合いとして算出し、算出した到達時間TTCを上記支援情報出力部7Cに出力する。
【0027】
本実施形態では、前方の障害物XMの位置に自車両MMが到達するのに要する到達時間TTCをリスクポテンシャルを表わす値として算出する。すなわち到達時間TTCは前方障害物XMに自車両MMが到達するまでの時間であり接近度合いを表わす値である。従って到達時間TTCが小さいほど自車両MMの障害物XMに対する接近度合いが高く、リスクポテンシャル(自車両前方の障害物XMに対する自車両MMの接触のリスク度合い)が高いと言える。以下の説明では、到達時間TTCをリスクポテンシャルを表わす値とした場合で説明する。到達時間TTCは、下記(1)式で表される。
【0028】
TTC = D_tar/V_tar ・・・(1)
ここで、
D_tar:障害物XMとの相対距離
V_tar:障害物XMとの相対速度
である。
【0029】
到達時間TTCをリスクポテンシャルを表わす値とする場合には、到達時間TTCが小さいほどリスクポテンシャルが高く、到達時間TTCが大きいほどリスクポテンシャルが低くなる。なお、到達時間TTCの逆数をリスクポテンシャルとしてもよい。
【0030】
そして、上記リスクポテンシャル演算部7Aは、上記自車両・障害物情報取得部6から障害物XMとの相対距離D_tar[m]、障害物XMとの相対速度V_tar[m/s]を入力し、上記(1)式によって、リスクポテンシャルを表わす値としての到達時間TTCを演算する。
【0031】
ここで、障害物XMとの相対速度V_tarは、上記障害物情報検出センサ2によって検出された障害物XMとの相対距離D_tarを時間微分するなどの演算によって検出すればよい。但し、上記障害物情報検出センサ2にミリ波レーダーを用いた場合は出射したミリ波に対する反射波の周波数変化に基づいて相対速度を算出することが可能であり、相対速度の算出方法は上記に限定されない。
【0032】
外乱推定部7Bは、上記自車両・障害物情報取得部6から入力した自車両・障害物情報と、上記自車両・障害物情報取得部6から受け取った駆動力とシフトポジションもしくは上記制動力演算部8から入力した制動力演算処理結果との少なくも一つの情報に基づいて外乱推定値SUBを演算し、演算した外乱推定値SUBを上記支援情報出力部7Cに出力する。以下のように第1実施形態では、駆動力とシフトポジションを使用せず、自車両・障害物情報と制動力演算処理結果とに基づき外乱推定を求める場合を例示する。駆動力とシフトポジションに基づく外乱推定の演算については第4実施形態にて説明する。
【0033】
本実施形態の外乱推定値SUBは、制動指令値によって車両に制動を付与する際に、車両に発生する実際の制動力を抑制又は助長する外乱の度合いを表す推定値である。
本実施形態の外乱推定部7Bは、上記自車両・障害物情報取得部6から自車両MMの加減速度A[m/s2]を入力すると共に、上記制動力演算部8から前回処理時の第1制動力付与判断結果と制動力指令値P_brk[Mpa]を入力する。
【0034】
そして、外乱推定部7Bは、後述する制動力演算部8にて制動力指令値P_brkとして第1制動力指令値P_brk1が選択(到達時間TTCが後述するTTC1未満からTTC2以上の間であって、且つ制動力が付与されている状態が選択)され、予め設定した所定の値以上の制動力指令値が出力されている場合に外乱推定値SUBを演算する処理を行う。具体的には、例えば第1制動力指令値が所定の値である0.5[MPa]以上となっている場合に外乱推定を行う。所定の値以上としているのは、外乱推定値SUBを有意に演算可能なだけの制動が付与されている場合か否かを判定するためである。
【0035】
外乱推定値SUBの演算は、下記(2)式によって演算する。
SUB = |(A / P_brk) * ARMYU| ・・・(2)
【0036】
ここで、制動量制動力変換係数ARMYUは、後述のように減速度(負の加速度)を制動液圧に変換するための車両の諸元等に基づき設定される変換係数である。すなわち、制動量制動力変換係数ARMYUは、例えば所定の車両重量、路面摩擦係数、制動装置(摩擦ブレーキであればブレーキキャリパー)から車輪への制動トルク伝達率等を基準状態(理想状態)として実験等を行い、車輪速から求めた減速度と制動液圧との相関を表わす係数を予め求めたものである。
また、外乱推定値SUBの演算が行われなかった場合は、外乱推定値SUBを初期値である「1」に設定する。
【0037】
上記(2)式から分かるように、本実施形態では、制動力指令値によって車両に発生する制動力を抑制する(妨げる)外乱の度合いが大きいほど、外乱推定値SUBは1よりも小さな値となる。逆に、制動力指令値によって車両に発生する制動力より実際の制動力を助長する(増大する)外乱の度合いが大きいほど、外乱推定値SUBは1よりも大きな値となる。すなわち、制動量制動力変換係数ARMYUを求めた際の基準状態における制動液圧(制動力)に対する減速度に比較して、制動液圧(制動力)に対する実際の減速度が減少する外乱の度合いが大きいほど外乱推定値SUBは1よりも小さな値となり、逆に制動液圧に対する減速度が増大する外乱の度合いが大きいほど外乱推定値SUBは1よりも大きな値となる。
【0038】
また、本実施形態で推定する外乱は、上記(2)式から分かるように、上記外乱推定値SUBは、自車両MMに発生する制駆動力に対する影響の度合いを示している。
【0039】
上記外乱は、車両に制動力を付与する際の制動トルク伝達率、路面摩擦係数、車両重量の少なくとも1つを含む外乱である。摩擦ブレーキによって車輪を介して制動力を自車両MMに付与する場合には、車両に制動力を付与する際の制動トルク伝達率は、例えばブレーキパッドの摩擦係数などが対応する。
【0040】
支援情報出力部7Cは、上記自車両・障害物情報取得部6と、上記リスクポテンシャル演算部7A及び外乱推定部7Bから入力した情報を、上記制動力演算部8とアクセルペダル反力演算部10に出力する。
【0041】
図5は、本実施形態における制動力演算部8の構成を説明する図である。
制動力演算部8は、図5に示すように、第1閾値設定部8Aと、第1制動力付与判断部8Bと、第1制動量演算部8Cと、第1制動力指令値演算部8Dと、第2閾値設定部8Eと、第2制動力付与判断部8Fと、第2制動量演算部8Gと、第2制動力指令値演算部8Hと、制動力指令値選択部8Jと、を備える。
【0042】
第1閾値設定部8Aは、第1制動力付与判断を行うためのリスクポテンシャルである第1の閾値Th1として、到達時間閾値TTC1を設定する。第1閾値設定部8Aは、上記支援情報演算部7から入力した外乱推定値SUBに基づき、外乱推定値SUBが小さい(自車両MMの制動を妨げる外乱の度合いが大きい)ほど、大きくなるように到達時間閾値TTC1を設定する。
【0043】
具体的には、上記第1閾値設定部8Aは、予め設定した所定の値である到達時間TTC1_0に対し、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが小さいほど(車両に発生する制動力を抑制する(妨げる)外乱の度合いが大きいほど)、大きくなるように補正処理を行うことで到達時間閾値TTC1を求める。そして、求めた到達時間閾値TTC1を、第1制動力付与判断を行うためのリスクポテンシャルである第1の閾値Th1として設定する。具体的には例えばTTC1_0は3とし、TTC1は補正処理によって2.5〜3.5の間で設定する。
【0044】
例えば、1の閾値Th1としての到達時間閾値TTC1は、下記(3)式で演算する。
TTC1 = TTC1_0 ×(1/SUB) ・・・(3)
【0045】
また、第1制動力付与判断部8Bは、第1制動力付与の判断を行う。
第1制動力付与判断部8Bは、上記支援情報演算部7から入力した到達時間TTCが、上記第1閾値設定部8Aで設定された到達時間閾値TTC1未満であり、かつ上記支援情報演算部7より入力したアクセル開度が予め設定した所定の値(所定のアクセル開度)よりも小さい場合は、第1制動力を付与すると判断する。言い換えれば、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第1の閾値Th1より大きい場合(到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満である場合)であって、かつアクセル開度が予め設定した所定の値よりも小さい場合は第1制動力を付与すると判断する。上記条件を満足しない場合には第1制動力を付与しないと判断する。すなわち、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第1の閾値Th1より大きい場合(到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満である場合)であっても、かつアクセル開度が予め設定した所定の値以上である場合には、第1制動力を付与しないと判断する。
【0046】
なお、所定の値(所定のアクセル開度)とは、運転者がアクセルペダル22を踏んで加速意図があると判断できる最小のアクセル開度であり、すなわち運転者が意図的にアクセルを操作している(踏んでいる)と判定できる最小のアクセル開度であり、実験等によって予め定められたアクセル開度である。従って、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第1の閾値Th1より大きい場合であって、且つ上記支援情報演算部7より入力したアクセル開度が予め設定した所定の値(所定のアクセル開度)よりも小さい場合は、運転者が意図的なアクセル操作を行っていないと判定して第1制動力を付与する。一方、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第1の閾値Th1より大きい場合であっても、上記支援情報演算部7より入力したアクセル開度が予め設定した所定の値(所定のアクセル開度)以上である場合は、運転者は自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルを認識しながら意図的にアクセルを操作してると判定して第1制動力を付与しない。なお、上記所定の値(所定のアクセル開度)は、例えばアクセル開度が3.4[deg]とする。
【0047】
ここで、上記の通り外乱推定値SUBは、到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満であって、且つ第1制動力が付与されている状態が選択されている際に推定される値である。従って、到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満となった初回の時点では到達時間閾値TTC1はTTC1_0であるが、その後到達時間TTCが到達時間閾値TTC1以上となり、再び到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満となった際には外乱推定値SUBに基づいて設定された到達時間閾値TTC1に基づいて第1制動力の付与が判定される。
【0048】
第1制動量演算部8Cは、第1制動量DEC1を演算する。
第1制動量演算部8Cは、上記第1制動力付与判断部8Bの制動力付与判断結果に基づいて、減速度の目標値としての第1制動量DEC1を設定する。上記第1制動力付与判断部8Bで第1制動力を付与すると判断した場合は、予め設定した所定の増加率αで、所定の減速量DEC1_0[m/s2]まで第1制動量DEC1[m/s2]を増加して設定する。具体的には増加率αは2.5[m/s3]、DEC1_0は2.5[m/s2]とする。
【0049】
すなわち
第1制動量DEC1=α×t
但し、第1制動量DEC1≦DEC1_0
として第1制動量DEC1を設定する。なお、上記tは第1制動量演算部8Cの第1制動量DEC1の算出開始からの経過時間を表わす。
【0050】
また第1制動量演算部8Cは、上記第1制動力付与判断部8Bで第1制動力付与しないと判断された場合は、第1制動量DEC1[m/s2]を「0」に設定する。
【0051】
第1制動力指令値演算部8Dは、第1制動力指令値を演算する。
上記第1制動力指令値演算部8Dは、まず、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが小さい値であるほど(制動を妨げる外乱が大きいほど)大きくなるように制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu1を設定する。そして、第1制動力指令値演算部8Dは、上記第1制動量演算部8Cにて演算された第1制動量DEC1[m/s2]に基づき、下記(4)式を用いて制動力指令値P_brk1[Mpa]を演算する。
【0052】
P_brk1 =DEC1 × ARMYU ×α_armyu1 ・・・(4)
【0053】
ここで、制動量制動力変換係数ARMYUは、上述の通り制動力指令値(すなわち減速度の目標値)を液圧値に変換するための係数であって、車両の諸元等から設定された値であり、例えばARMYUは0.8とする。
【0054】
また、上記制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu1は、0.8を下限、1.2を上限として外乱推定値SUBの逆数を代入して設定する。なおここで、上記の通り外乱推定値SUBは、到達時間TTCが到達時間TTC1未満であって、且つ第1制動力が付与されている状態が選択されている際に推定される値である。従って、上記第1制動力付与判断部8Bで第1制動力付与を行なうと判定された時点(すなわち到達時間TTCが到達時間TTC1未満となった時点)での外乱推定値SUBは初期値「1」であり、上記制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu1は1が設定される。その後、外乱推定値SUBが推定されるに伴い、制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu1が補正して設定されることとなる。
【0055】
また第2閾値設定部8Eは、第2制動力付与判断を行うためのリスクポテンシャルである第2の閾値Th2として、到達時間閾値TTC2を設定する。
【0056】
第2閾値設定部8Eは、上記支援情報演算部7から入力した外乱推定値SUBに基づき、外乱推定値SUBが小さい(自車両MMの制動を妨げる外乱の度合いが大きい)ほど、到達時間閾値TTC2が大きくなるように到達時間閾値TTC2を設定する。
【0057】
本実施形態の第2閾値設定部8Eは、予め設定した所定の値である到達時間TTC2_0に対し、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが小さいほど(車両に発生する制動力を抑制する(妨げる)外乱の度合いが大きいほど)、大きくなるように補正処理を行うことで到達時間閾値TTC2を求める。そして、求めた到達時間閾値TTC2を、第2制動力付与判断を行うためのリスクポテンシャルである第2の閾値Th2として設定する。具体的には例えばTTC2_0は1とし、TTC2は補正処理によって0.8から1.2の間で設定する。なお、到達時間閾値TTC2は、到達時間閾値TTC1よりも小さくなるように設定する。
【0058】
例えば、到達時間閾値TTC2は、下記(5)式で演算する。
TTC2 = TTC2_0 ×(1/SUB) ・・・(5)
第2制動力付与判断部8Fは、第2制動力付与の判断を行う。
【0059】
第2制動力付与判断部8Fは、上記支援情報演算部7から入力した到達時間TTCが、上記第2閾値設定部8Eで設定された到達時間閾値TTC2未満である場合は第2制動力を付与すると判断する。言い換えれば、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第2の閾値Th2より大きい場合(到達時間TTCが到達時間閾値TTC2未満で有る場合)は第2制動力を付与すると判断する。また、上記条件を満足しない場合には、第2制動力を付与しないと判断する。
【0060】
第2制動量演算部8Gは、第2制動量DEC2を演算する。
上記第2制動量演算部8Gは、上記第2制動力付与判断部8Fの制動力付与判断結果に基づいて、減速度の目標値としての第2制動量DEC2を設定する。上記第2制動力付与判断部8Fで第2制動力付与すると判断された場合は、予め設定した所定の増加率βで、予め設定した所定の減速量であるDEC2_0[m/s2]まで第2制動量DEC2[m/s2]を増加して設定する。
【0061】
すなわち
第2制動量DEC2=β×t
但し、第2制動量DEC2≦DEC2_0
として第2制動量DEC2を設定する。なお、上記tは第2制動量演算部8Gの第2制動量DEC2の算出開始からの経過時間を表わす。
【0062】
また、上記第2制動量演算部8Gは、上記第2制動力付与判断部8Bで第2制動力付与しないと判断された場合は、第2制動量DEC2[m/s2]を「0」に設定する。具体的には例えば上記増加率βは10.0[m/s3]、DEC2_0は5.0[m/s2]とする。
【0063】
第2制動力指令値演算部8Hは、第2制動力指令値を演算する。
上記第2制動力指令値演算部8Hは、まず、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが小さい値であるほど大きくなるように制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu2を設定する。そして、第2制動力指令値演算部8Hは、上記第2制動量演算部8Gにて演算された第2制動量DEC2[m/s2]に基づき、下記(6)式を用いて制動力指令値P_brk2[Mpa]を演算する。
【0064】
P_brk2 =DEC2 × ARMYU ×α_armyu2 ・・・(6)
ここで、制動量制動力変換係数ARMYUは、制動力指令値(減速度の目標値)を液圧値に変換するための係数であって、車両の諸元等から設定する。例えば、ARMYUは0.8とする。
【0065】
また、上記制動量制動力変換係数補正ゲインα_armyu2は、0.8を下限、1.2を上限として外乱推定値SUBの逆数を代入して設定する。
【0066】
制動力指令値選択部8Jは、(7)式のように、上記第1制動力指令値演算部8Dで演算された第1制動力指令値P_brk1と、上記第2制動力指令値演算部8Hで演算された第2制動力指令値P_brk2のうち、値の大きい方を制動力指令値P_brkとする。そして、制動力指令値選択部8Jは、どちらを選択したかという制動力指令値の選択結果と制動力指令値P_brkを、上記制動力付与装置9(制動流体圧制御部29)と上記支援情報演算部7とに出力する。
【0067】
P_brk =MAX(P_brk1、P_brk2) ・・・(7)
【0068】
制動力付与装置9は、上記制動力演算部8から出力された制動力指令値P_brkを制動流体圧制御部29に入力し、制動流体圧制御部29は入力した制動力指令値P_brkに基づいて流体圧回路27中のアクチュエータを制御して、車輪30に制動力を付与する。なお、流体圧回路27中のアクチュエータは、例えば車輪30に設けたブレーキキャリパー内のピストンに液圧を付与可能な油圧式ブレーキアクチュエータ(ホイールシリンダ等)である。
【0069】
図6は、アクセルペダル反力演算部10の構成を説明する図である。
アクセルペダル反力演算部10は、図6に示すように、第3閾値設定部10Aと、ペダル反力付与判断部10Bと、ペダル反力量演算部10Cと、アクセルペダル反力指令値演算部10Dとを備える。
【0070】
第3閾値設定部10Aは、アクセルペダル反力付与判断を行うためのリスクポテンシャルである第3の閾値Th3として、到達時間閾値TTC3を設定する。
【0071】
第3閾値設定部10Aは、上記支援情報演算部7から入力した外乱推定値SUBに基づき、外乱推定値SUBが小さい(自車両MMの制動を妨げる外乱の度合いが大きい)ほど、到達時間閾値TTC3が大きくなるように、到達時間閾値TTC3を設定する。
【0072】
本実施形態の第3閾値設定部10Aは、予め設定した所定の値である到達時間TTC3_0に対し、外乱推定値SUBが小さい値であるほど大きくなるように補正を行って第3到達時間閾値TTC3を求める。そして、到達時間がTTC3を設定する。具体的にはTTC3_0は3とし、TTC3は補正処理によって2.5〜3.5の間で設定する。
【0073】
例えば、到達時間閾値TTC3は、下記(8)式で演算する。
TTC3 = TTC3_0 ×(1/SUB) ・・・(8)
【0074】
ここで、到達時間閾値TTC3は、到達時間閾値TTC2よりも大きくなるように設定する。更には、到達時間閾値TTC3は、到達時間閾値TTC1以上に設定することが好ましい。到達時間閾値TTC3を、到達時間閾値TTC1以上に設定する場合には、TTC3 =TTC1+TTC4と設定しても良い。但しTTC4はゼロ以上の予め定められた任意の値とする。
【0075】
ペダル反力付与判断部10Bは、アクセルペダル反力付与の判断を行う。
上記支援情報演算部7から入力した到達時間TTCが、上記第3閾値設定部8Aで設定された到達時間閾値TTC3未満である場合、アクセルペダル反力を付与すると判断する。言い換えれば、自車両MMの障害物XMに対するリスクポテンシャルが第3の閾値Th3より大きい場合(到達時間TTCが到達時間閾値TTC3未満である場合)はアクセルペダル反力を付与すると判断する。一方、上記条件を満足しない場合には、アクセルペダル反力を付与しないと判断する。
【0076】
ここで、上記の通り外乱推定値SUBは、到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満である場合であって、且つ第1制動力が付与されている状態が選択されている際に推定される値である。従って、到達時間TTCが到達時間閾値TTC3未満となった初回の時点では到達時間閾値TTC3はTTC3_0であるが、その後到達時間TTCが到達時間閾値TTC3以上となり、再び到達時間TTCが到達時間閾値TTC3未満となった際には外乱推定値SUBに基づいて設定された到達時間閾値TTC3に基づいてアクセルペダル反力付与の判断が行なわれる。
【0077】
ペダル反力量演算部10Cは、アクセルペダル反力量を演算する。
上記ペダル反力量演算部10Cは、アクセル開度が大きくほど大きくなるようにアクセルペダル反力量を演算する。具体的には、20〜25[N]の間でペダル反力量を演算する。なお、このアクセルペダル反力量は、運転者が意図してアクセルペダルを操作する場合には操作が可能であり、且つ運転者がアクセルペダル反力の変化を認識できる反力量である。
【0078】
アクセルペダル反力指令値演算部10Dは、アクセルペダル反力指令値を演算し、上記アクセルペダル反力付与装置11に出力する。
本実施形態のアクセルペダル反力指令値は、上記ペダル反力付与判断部10Bでアクセルペダル反力を付与すると判断された後、上記ペダル反力量演算部10Cで演算されたアクセルペダル反力量まで予め設定した所定の増加率でアクセルペダル反力指令値を増加していき、アクセルペダル反力指令値がアクセルペダル反力量まで達した後は上記支援情報演算部7から入力するアクセル開度が0になるまでアクセルペダル反力指令値を保持する。
【0079】
一方、アクセルペダル反力指令値は、上記ペダル反力付与判断部10Bでアクセルペダル反力を付与しないと判断した場合は、前回処理時に0以外のアクセルペダル反力指令値を出力していた場合はアクセルペダル反力指令値を所定の減少率で0まで減少させていき、それ以降は上記ペダル反力付与判断部10Bでアクセルペダル反力を付与すると判断されるまでアクセルペダル反力指令値を0とする。
【0080】
具体的には、例えばアクセルペダル反力指令値の増加率を7.5[N/sec]、減少率を30[N/sec]とする。
【0081】
ここで、上記説明では、上記リスクポテンシャル演算部7Aは、到達時間TTCをリスクポテンシャルを示す値としたが、自車両MMの障害物XMに対する接近度合いを表わす他の値をリスクポテンシャルを表わす値としても良い。具体的には、例えば障害物XMとの相対距離をリスクポテンシャルを示す値としてもよい。例えば障害物XMとの相対距離が大きければ(接近度合いが小さく)リスクポテンシャルが低く、障害物XMとの相対距離が小さければ(接近度合いが大きく)リスクポテンシャルが大きくなると言えるため、第1の閾値Th1、第2の閾値Th2、第3の閾値Th3に対応する閾値(相対距離閾値)も障害物XMとの相対距離に基づいて設定する。具体的には第1の閾値Th1としての相対距離閾値は7mに、第2の閾値Th2としての相対距離閾値は4mに、第3の閾値Th3としての相対距離閾値は8mに設定する。そして、自車両MMと障害物XMとの相対距離が各閾値よりも小さくなった場合に、リスクポテンシャルが各閾値で表わされるリスクポテンシャルより大きくなったと判定しても良い。
【0082】
また、上記リスクポテンシャル演算部7Aは、例えば下記(9)式によって演算される距離をリスクポテンシャルを表わす値としてもよい。
距離 = 空走距離 + 減速距離 + マージン距離 ・・・(9)
【0083】
ここで、空走距離は例えば障害物XMとの相対速度V_tarに所定の初期空走時間を乗算した値とする。具体的には初期空走時間は1[sec]とする。
【0084】
また、減速距離は、制動力を付与してから障害物XMとの相対速度V_tarが0になるまでに接近する距離として、下記式によって演算する。
減速距離 =(相対速度V_tar)
+(想定減速度2)/(想定減速度変化率×2)/(想定減速度×2)
− (想定減速度)3 / (想定減速度変化率2×6)・・・(10)
具体的には例えば想定減速度は5[m/s2]、想定減速度変化率は10[m/s2]とする。また、マージン距離は具体的には例えば3[m]とする。
【0085】
また、ここでは想定減速度を所定の値としたが、上記自車両・障害物情報取得部6から受け取った自車両MM加減速度に基づいて減速距離を演算してもよい。
【0086】
次に、上記制動力演算部8の処理を、図7を参照して説明する。
制動力演算部8の処理は、予め設定したサンプリング周期で実施され、先ずステップS10にて、支援情報演算部7から演算に必要な外乱推定値SUBやリスクポテンシャル等の情報を取得する。
【0087】
次に、ステップS20では、第1閾値設定部8Aが第1の閾値Th1を設定する。
次に、ステップS30では、第1制動力付与判断部8Bが、自車両MMの前方の障害物XMに対するリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも高いか否かを判定する。具体的には到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満であるか否かを判定する。条件を満足する場合にはステップS40に移行する。条件を満足しない場合には、ステップS60に移行する。
【0088】
ステップS40では、第1制動力付与判断部8Bが、運転者によるアクセル操作が行われているか否かを判定する。具体的には、実際のアクセル開度が運転者が意図的にアクセル操作を行なっていると判定できる程度の予め定められた所定のアクセル開度以上であるか否かを判定する。運転者によるアクセル操作が実施されている場合には、ステップS60に移行する。アクセル操作が実施されていない場合にはステップS50に移行する。
【0089】
ステップS50では、第1制動量演算部8Cが第1制動量を演算する。その後ステップS70に移行する。
ステップS60では、第1制動量演算部8Cが第1制動量に「0」を設定する。その後ステップS70に移行する。
ステップS70では、第1制動力指令値演算部8Dが、第1制動量に基づき第1制動力指令値を演算する。
【0090】
次に、ステップS80では、第2閾値設定部8Eが第2の閾値Th2を設定する。
次に、ステップS90では、第2制動力付与判断部8Fが、自車両MMの前方の障害物XMに対するリスクポテンシャルが、第2の閾値Th2で表されるリスクポテンシャルよりも高いか否かを判定する。具体的には、到達時間TTCがTTC2未満であるか否かを判定する。条件を満足する場合にはステップS100に移行する。条件を満足しない場合には、ステップS110に移行する。
【0091】
ステップS100では、第2制動量演算部8Gが第2制動量を演算する。その後ステップS120に移行する。
ステップS110では、第2制動量演算部8Gが第2制動量に「0」を設定する。その後ステップ120に移行する。
ステップS120では、第2制動力指令値演算部8Hが、第2制動量に基づき第2制動力指令値を演算する。
【0092】
次にステップS130では、制動力指令値選択部8Jが、第1制動力指令値と第2制動力指令値のうち大きい方を最終的な制動力指令値として選択する。
次にステップS140では、制動力指令値選択部8JがステップS130で選択された制動力指令値を制動力付与装置9(制動流体圧制御部29)に出力する。その後、復帰する。
【0093】
次に、上記アクセルペダル反力演算部10の処理を図8を参照して説明する。
アクセルペダル反力演算部10の処理は、予め設定したサンプリング周期で実施され、先ずステップS200にて、支援情報演算部7から演算に必要な外乱推定値SUBや到達時間TTC等の情報を取得する。
次に、ステップS210では、第3閾値設定部10Aが第3の閾値Th3の設定を行う。
【0094】
次に、ステップS220では、ペダル反力付与判断部が10Bが、自車両MMの前方の障害物XMに対するリスクポテンシャルが、第3の閾値Th3で表されるリスクポテンシャルよりも高いか否かを判定する。具体的には、到達時間TTCが到達時間閾値TTC3未満であるか否かを判定する。条件を満足する場合にはステップS230に移行する。条件を満足しない場合には、ステップS240に移行する。
【0095】
ステップS230では、ペダル反力量演算部10Cが、アクセルペダル22に付加するアクセルペダル反力量を演算する。その後ステップS250に移行する。
ステップS240では、ペダル反力量演算部10Cが、アクセルペダル反力量を「0」に設定した後、ステップS250に移行する。
ステップS250では、アクセルペダル反力指令値演算部10Dが、ペダル反力指令値を演算し、続いてステップS260にて、演算したペダル反力指令値をアクセルペダル反力付与装置11に出力する。その後、復帰する。
【0096】
(動作その他)
図9は、具体的な数値の例を付加した、上記本実施形態におけるタイムチャートの例である。
【0097】
図9に示すように、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第3の閾値Th3で表されるリスクポテンシャルよりも高くなると、すなわち到達時間TTCが到達時間閾値TTC3未満になると(時刻t1)、アクセルペダル反力を付与することで、運転者にアクセルペダルを戻す操作を促す。
【0098】
更に、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも高くなると、すなわち到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満になると(時刻t2)、運転者がアクセル操作を実施していない場合にだけ、第1制動力指令値に応じた制動力を車両に付与する。
【0099】
このように、第1制動力付与手段はアクセルペダル22が操作されていない場合にのみ制動力を付与する。このように、運転者が加速意図のない場合のみ制動力を付与することで、制動力を付与しても違和感の少ない走行シーンでのみ制動による支援を行うことができる。
【0100】
そして、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第2の閾値Th2で表されるリスクポテンシャルよりも高くなると、すなわち到達時間TTCが到達時間閾値TTC2未満になると(時刻t3)、運転者によるアクセル操作の有無に関わらず、第2制動力指令値に応じた制動力を車両に付与する。なお、第2制動力指令値は第1制動力指令値よりも高くなるように設定される。
【0101】
これによって、アクセル操作の有無に関わらず第2制動力指令値による制動を行うことで、確実に制動力を付与して、運転者の運転操作を支援することができる。
【0102】
また、第3の閾値Th3で表されるリスクポテンシャルを第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャル以下の値とすることにより(到達時間閾値TTC3を到達時間閾値TTC1以上の値とすることにより)、第1制動力指令値に基づく制動付与と同じ、もしくはそれよりも早いタイミングでアクセル反力を付与して、運転者のアクセル操作意図を確認した上で第1制動力指令値に基づく制動力を付与することができ、運転者の意図確認をより効果的なタイミングで行うことができる。
【0103】
すなわち上述のように、障害物XMに対するリスクを検知していない運転者に対してアクセルペダル反力による支援を行う。このとき、運転者に減速の意図がある場合には、運転者はアクセルペダル反力にしたがってアクセルペダル22を放す。そして、それと共に若しくはその後に、第1制動力指令値に基づき制動付与を行うので、より違和感の少ない、効果的な制動による支援を行うことができる。
【0104】
一方、運転者に減速意図が無い場合には、アクセルペダル反力にしたがわずアクセルペダル22を放さない。このような、制動力の付与が違和感につながる走行シーンにおいては第1制動力付与手段による制動力の付与を抑制することが可能となる。
【0105】
また、障害物XMに対する接近度合いである障害物XMとの相対距離D_tar、障害物XMとの相対速度V_tarを検出し、障害物XMとの相対速度V_tarで除算した値である到達時間TTCをリスクポテンシャルを表わす値とすることで、より運転者に違和感の少ないタイミングで運転支援を行うことができる。
【0106】
また、上記第1閾値設定部8A、第1制動力指令値演算部8D、第2閾値設定部8E、第2制動量演算部8−8、第3閾値設定部10Aで設定若しくは演算する値を、外乱推定値SUBに応じて補正を加える。これによって、外乱により制動が妨げられるような状況(外乱によって、制動液圧に対して実際に車両に発生する減速度が低下するような状況)では、より早いタイミングで、適切な制動量で支援を行うことができる。図9の例では、第1制動量DEC1を発生しているときの外乱に基づき、制動を助長する外乱が発生している(外乱によって、制動液圧に対して実際に車両に発生する減速度が増大している)と推定した場合の例である。この場合には、外乱推定値SUBに基づき、第1制動指令値を小さく補正すると共に、第2の閾値Th2で表されるリスクポテンシャルが高くなるように(到達時間閾値TTC2が小さくなるように)補正している。図9の例では、第2の閾値Th2の値が「1」から「0.8」に補正されている。これによって、障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが高い状況において、第2制動力付与手段による狙った通りの制動量を付与することが可能となる。
【0107】
また、外乱推定部7Bで自車両MMの車輪速と制動力に基づいて、制動力が発生させる制動量に対して影響を与える外乱を推定することにより、例えば摩擦ブレーキにおけるパッドμ、路面μ、車両重量等に起因する外乱を推定することができる。
【0108】
また、外乱推定部7Bで第1制動力指令値に基づき制動力を付与している際に外乱を推定することにより、第2制動力指令値に基づく制動力に関する外乱をより正確に推定することができる。すなわち、より第2制動力指令値に基づく制動力を付与するタイミングに近い、第1制動力指令値に基づき制動力を付与している際の外乱に基づいて第2の閾値Th2(到達時間閾値TTC2)および制動力指令値P_brk2を補正することにより、より適切に第2制動力付与手段による制動力付与を行なうことができる。
【0109】
ここで、本実施形態では、車輪速に基づき求めた加減速度と、制動力指令値とに基づいて外乱推定値SUBを演算している。すなわち、制動力指令値と車輪速に基づき求めた加減速度とに基づいて外乱推定値SUBを演算している。通常、制動液圧によって制動力を発生する制動力付与機構から車輪までの間に介在するフリクションは極小さく、従ってこのように制動力指令値と車輪速に基づいて外乱推定値SUBを演算することで、外乱推定値SUBをより精度良く求めることが出来る。
【0110】
ここで、リスクポテンシャル演算部7Aはリスクポテンシャル算出手段を構成する。アクセル開度センサ3はペダル検出手段を構成する。第1閾値設定部8A、第1制動力付与判断部8B、第1制動量演算部8C、第1制動力指令値演算部8D、制動力指令値選択部8J、制動力付与装置9は、第1制動力付与手段を構成する。第2閾値設定部8E、第2制動力付与判断部8F、第1制動量演算部8G、第1制動力指令値演算部8H、制動力指令値選択部8J、制動力付与装置9は、第2制動力付与手段を構成する。アクセルペダル反力演算部10はアクセルペダル反力付与手段を構成する。外乱推定部7Bは外乱推定手段を構成する。第1制動力指令値演算部8D及び第2制動力指令値演算部8Hは、第1〜第4補正手段を構成する。
【0111】
(本実施形態の効果)
(1)リスクポテンシャル算出手段は、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルを算出する。第1制動力付与手段は、上記算出したリスクポテンシャルが、予め設定した第1の閾値よりも高く、且つペダル検出手段の検出に基づきアクセルペダルが操作されていないと判定すると、自車両MMに制動力を付与する。第2制動力付与手段は、上記リスクポテンシャル算出手段が算出したリスクポテンシャルが、第1の閾値よりも高い第2の閾値より高いと判定すると、アクセルペダルの操作状態に関わらず自車両MMに制動力を付与する。
【0112】
これによって、自車両前方の障害物XMに対し第2の閾値よりもリスクポテンシャルが高ければ、確実に制動を付与して支援する。一方、第2の閾値よりもリスクポテンシャルが低い第1の閾値から当該第2の閾値の間のリスクポテンシャルの場合には、運転者が加速意図のない場合のみ制動力を付与する。これによって、運転者の意図に応じて、制動力を付与しても違和感の少ない走行シーンでのみ制動支援を行うことができる。
【0113】
この結果、自車両前方の障害物XMに対する制動による運転支援を、運転者の意図に応じてより適切に実施することが可能となる。
【0114】
(2)アクセルペダル反力付与手段は、上記リスクポテンシャル算出手段が求めたリスクポテンシャルが、予め設定した第3の閾値よりリスクポテンシャルが高いと判定すると、アクセルペダルに反力を付与する。
【0115】
これによって、障害物XMに対するリスクを認識していない運転者に対してアクセルペダル反力を付与することにより、リスクポテンシャルが高いことを運転者に報知すると共に、アクセルペダルを放す操作を促して運転を支援することが出来る。
【0116】
そして、運転者がアクセルペダル反力にしたがってアクセルペダルを放し、減速意図があることを確認した後に第1制動力指令値に基づく制動を行うことができ、より違和感の少ない、効果的な支援を行うことができる。一方、運転者に加速意図が有る場合には、アクセルペダル反力にしたがわずアクセルペダルを操作し続けることが可能なため、制動力の付与が違和感につながる走行シーンにおいては制動力を付与させないことが可能となる。
【0117】
(3)上記第3の閾値で表されるリスクポテンシャルは、第1の閾値で表されるリスクポテンシャルと等しいかそれよりも低い。
第3の閾値で表されるリスクポテンシャルを第1の閾値で表されるリスクポテンシャル以下の値とすることにより、第1制動力指令値に基づく制動付与開始と同時期、若しくは早いタイミングでアクセル反力を付与することが可能となる。この結果、運転者の意図を確認した上で、第1制動力指令値に基づく制動付与開始を行うことが可能となる。
【0118】
(4)上記リスクポテンシャル算出手段は、上記障害物XMに対するリスクポテンシャルを表わす値として接近度合いを算出する。上記第1制動力付与手段及び第2制動力付与手段はそれぞれ、上記リスクポテンシャル算出手段によって算出された上記接近度合いに基づいて、自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが予め設定したリスクポテンシャルである第1の閾値よりも高いこと及び予め設定したリスクポテンシャルである第2の閾値よりも高いことを判定する。
障害物XMに対する接近度合いをリスクポテンシャルを表わす値とすることで、運転者の感覚に合った違和感の無い適切な支援を行うことが可能となる。
【0119】
(5)上記リスクポテンシャル算出手段は上記接近度合いを、自車両MMと障害物XMとの相対距離、障害物XMに対する自車両MMの相対速度、障害物XMに対する自車両MMの相対加減速度のうちの少なくとも1つに基づいて算出する。
障害物XMとの相対距離、相対速度、及び相対加減速度のうちの少なくとも1つに基づいて接近度合いを算出することで、物理量に基づいてリスクポテンシャルを求めることとなり、運転者の感覚により近いリスクポテンシャルを設定することが可能となる。
【0120】
(6)上記リスクポテンシャル算出手段は、障害物XM位置に自車両MMが到達すると推定される到達時間に基づきリスクポテンシャルを算出する。
障害物XMとの到達時間に基づくリスクポテンシャルによって支援可否の判定することにより、より運転者に違和感の少ないタイミングで支援を行うことが可能となる。
【0121】
(7)外乱推定手段は、自車両MMに付与される制動に影響を与える外乱を推定する。第1補正手段は、外乱推定手段が推定する外乱による、自車両MMに付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第1の閾値及び第2の閾値のうちの少なくとも一つの閾値をリスクポテンシャルが低い値に補正する。
外乱により制動が妨げられるような状況ではより早いタイミングで支援を行うことができ、外乱により制動が助長されるような状況ではより遅いタイミングで支援を行うことができ、外乱に対応して適切なタイミングで運転支援を行うことが可能となる。
【0122】
(8)第2補正手段は、外乱推定手段が推定する外乱による、自車両MMに付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第3の閾値をリスクポテンシャルが低い値に補正する。
外乱により制動が妨げられるような状況ではより早いタイミングで支援を行うことができ、外乱により制動が助長されるような状況ではより遅いタイミングで支援を行うことができ、外乱に対応して適切なタイミングで運転支援を行うことが可能となる。
【0123】
(9)第3補正手段は、外乱推定手段が推定する外乱による、自車両MMに付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、第1制動力付与手段もしくは第2制動力付与手段で付与する制動力を増大補正する。
外乱により制動が妨げられる、もしくは助長されるような状況では、それに応じた制動量で支援を行うことが可能となる。
【0124】
(10)第4補正手段は、外乱推定手段が推定する外乱による、自車両MMに付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、アクセルペダル反力付与手段で付与する反力を増大補正する。
外乱により制動が妨げられる、もしくは助長されるような状況では、それに応じたアクセルペダル反力で支援を行うことが可能となる。
【0125】
(11)上記外乱推定手段は、上記第1制動力付与手段によって制動力を付与しているときに、外乱を推定する。そして、上記外乱推定手段が推定した外乱に基づき、第2の閾値、及び上記第1制動力付与手段による制動力の少なくとも一方を補正する。
上記第1制動力付与手段によって制動力を付与している時に求めた外乱に応じて、第2の閾値、及び第1制動力付与手段による制動力の少なくとも一方を補正することで、リスクポテンシャルが第2の閾値よりも高い状態における、第2制動力付与手段による制動付与をより適正なタイミングで開始する、もしくは第1制動力付与手段による制動力をより適切な値とすることが可能となる。
【0126】
(12)上記外乱推定手段は、自車両MMの車輪速に基づいて算出した加減速度と、自車両MMに対する制動力指令値に基づいて、外乱を推定する。
【0127】
(変形例)
(1)第1実施形態の構成に対し、後述の第2〜第4の構成を適宜組み合わせてもよい。
(2)上記第1実施形態においては、外乱推定値SUBに応じて第1の閾値Th1、第2の閾値th2および第3の閾値Th3の全ての閾値を補正する例を示したが、これに限らず第1の閾値Th1、第2の閾値th2および第3の閾値Th3のいずれか1つあるいは2つを補正するようにしても良い。
【0128】
(3)上記第1実施形態においては、外乱推定値SUBに応じて制動力指令値P_brk1及び制動力指令値P_brk2の両方を補正する例を示したが、これに限らず、制動力指令値P_brk1もしくは制動力指令値P_brk2の一方を外乱推定値SUBに応じて補正するようにしても良い。
【0129】
(4)上記第1実施形態においては、第1の閾値Th1、第2の閾値th2および第3の閾値Th3と、制動力指令値P_brk1及び制動力指令値P_brk2とを外乱推定値SUBに応じて補正する例を示したが、これに限定されない。例えば第1の閾値Th1、第2の閾値th2および第3の閾値Th3のうちの一つ以上を補正、あるいは制動力指令値P_brk1もしくは制動力指令値P_brk2のうちのいずれかのみを補正、もしくは第1の閾値Th1、第2の閾値th2および第3の閾値Th3のうちの一つ以上と制動力指令値P_brk1及び制動力指令値P_brk2のうちの一つ以上を補正する等、適宜変更可能である。
【0130】
「第2実施形態」
次に第2実施形態について図面を参照して説明する。なお上記第1形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0131】
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、リスクポテンシャルを、自車両前方を撮像した画像に基づき演算する点が異なる。具体的には、撮像した画像に対する当該画像内に撮像されている障害物XMの情報から障害物XMとの接近度合いを算出する。すなわち、撮像した画像に対する当該画像内に撮像されている障害物XMの情報をリスクポテンシャルを表わす値として演算する。
【0132】
すなわち、本実施形態の障害物情報演算部6Cは、カメラ等の撮像手段から構成される。撮像手段は、自車両MMの前部に設置されて車両前方を撮像する。
【0133】
また、本実施形態のリスクポテンシャル演算部は7Aは、撮像手段が撮像した前方画像における障害物XMの占有率を接近度合い(すなわちリスクポテンシャルを表わす値)として演算する。例えば画像面積におけるターゲット画像の占める面積の割合を接近度合いとして演算する。例えば、リスクポテンシャル演算部7Aは、撮像手段が撮像した画像に対し、予め設定した画像フレームを適用し、その画像フレーム内に撮像されている前方の障害物XMの占有率を、接近度合いとして演算する。
【0134】
ここで、画像フレーム内に自車の走行路外の障害物XMも撮像する可能性がある。この場合、画像中の自車の走行路を認識する処理を実施して、占有率を計算する障害物XMから、当該自車の走行路の外に位置する障害物XMを除外する処理を施すと良い。自車の走行路の認識は、例えば白線や路肩等を認識して判定する。また自車の走行路の認識は、自車両MMの挙動(自車両MMに作用している横加速度や操舵角など)に基づき自車量の走行軌跡を予測し、その予測する走行軌跡によって認識してもよい。
【0135】
同一の障害物XMを撮像した場合、自車両MMが障害物XMに接近していない場合には、画像フレームに占める障害物XMの割合(占有率)は、図10(a)のように小さい。一方、自車両MMが障害物XMに接近している場合には、図10(b)のように占有率は大きい。
【0136】
したがって、本実施形態では、障害物XMの自車両に対する接近度合いが大きいほど、すなわちリスクポテンシャルが高くなるほど上記占有率が大きくなる。
【0137】
そして、上記第1閾値設定部8A、第2閾値設定部8E、第3閾値設定部10Aでは、前方画像における障害物XMの占有率の閾値を設定する。
具体的には第1の閾値Th1の初期値は45%、第2の閾値Th2の初期値は60%、第3の閾値Th3の初期値は45%とする。
【0138】
なお、第1実施形態と同様に、外乱推定値SUBに基づき第1の閾値Th1、第2の閾値Th2、第3の閾値Th3を補正する。すなわち、制動を妨げる外乱が大きいほど、各閾値で表すリスクポテンシャルが大きくなるように(各閾値が大きくなるように)各閾値を補正し、制動を助長する外乱が大きいほど、各閾値で表すリスクポテンシャルが小さくなるように(各閾値が小さくなるように)各閾値を補正する。
【0139】
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
ここで、上記実施形態では、障害物XMの占有面積を接近度合い(すなわちリスクポテンシャルを示す値)として演算しているが、これに限定しない。例えば、撮像された障害物XM自体の面積を接近度合いとしても良いし、撮像された障害物XMの横幅を接近度合いとしても良い。
【0140】
(作用など)
本実施形態では、前方画像に基づいて障害物XMに対する接近度合いを検出することによりリスクポテンシャルを求めている。このように、本実施形態では、障害物XMとの距離などを検出する装置を使用せず、前方画像を撮影する撮像手段を備えることで支援を行うことができる。
【0141】
(本実施形態の効果)
(1)撮像手段は、車両前方の画像を取得する。リスクポテンシャル算出手段は、撮像手段が取得する画像内の上記障害物XMに基づき接近度合いを求め、リスクポテンシャルを算出する。
障害物XMに対する運転者の視認状況に近い値としてリスクポテンシャルを設定することが可能となる。
【0142】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0143】
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態は上記第1実施形態に対し、外乱推定部における外乱を推定する方法、及び推定した外乱に応じた第1制動量、第2制動量の補正方法が異なる例である。
【0144】
本実施形態の外乱推定部7Bは、上記自車両・障害物情報取得部6から入力した自車両MMの加減速度A[m/s2]と、制動力指令値P_brk0[Mpa]とから外乱推定を行う。上記制動力指令値演算部8Dで使用する制動量制動力変換係数をARMYUとすると、下記式によって外乱推定値SUBを演算する。
【0145】
SUB = (P_brk0 / ARMYU) −A ・・・(11)
すなわち、制動力指令値による制動力(制動液圧)と実際の加減速度との差から外乱推定値SUBを演算する。
【0146】
外乱推定値SUBを演算しない場合には、外乱推定値SUBに「0」を設定する。
ここで、本実施形態の外乱推定値SUBは、式(11)から分かるように、自車両MMに発生する制駆動力に対し影響を与える外乱による影響の度合いを示すものである。
【0147】
外乱は、走行路勾配、空気抵抗の少なくとも一方を含む外乱である。
本実施形態では、制動力が発生させる制動量に対して影響を与える外乱が、制動を助長する外乱(すなわち制動液圧に対する減速度が大きくなる外乱)であるほど、外乱推定値SUBは「0」よりも小さい値となる。一方、制動力が発生させる制動量に対して加算的に影響を与える外乱が、制動を妨げる外乱(すなわち制動液圧に対する減速度が小さくなる外乱)であるほど、外乱推定値SUBは「0」よりも大きな値となる。
【0148】
また、第1制動量演算部8Cでは、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが大きいほど(制動を妨げる外乱が大きいほど)、制動量補正量β_dec1が大きくなるように設定する。そして、予め設定した所定の減速量であるDEC1_0に対し上記制御量補正量β_dec1を加算することにより第1制動量DEC1を算出する。
【0149】
DEC1 = DEC1_0 + β_dec1 ・・・(12)
具体的には制御量補正量β_dec1は、−2.5[m/s2]を下限、2.5[m/s2]を上限として、外乱推定値SUBの値を代入して設定する。
【0150】
また、第1制動力指令値演算部8Dでは、上記第1制動量演算部8Cにて演算された第1制動量DEC1に基づき。下記式を用いて制動力指令値P_brk1を演算する。
【0151】
P_brk1 = DEC1 × ARMYU ・・・(13)
【0152】
制動量制動力変換係数ARMYUは、制動量を制動液圧に変換するための変換係数である。
【0153】
また、第2制動量演算部8Gでは、上記外乱推定部7Bにて演算された外乱推定値SUBが大きいほど(制動を妨げる外乱が大きいほど)、制動量補正量β_dec2が大きくなるように設定する。そして、予め設定した所定の減速量であるDEC2_0に対し上記制御量補正量β_dec2を加算することにより第2制動量DEC2を算出する。
【0154】
DEC2 = DEC2_0 + β_dec2 ・・・(14)
【0155】
具体的には制御量補正量β_dec2は−2.5 [m/s2]を下限、2.5[m/s2]を上限として外乱推定値SUBの符号反転値を代入して設定する。
【0156】
また、第2制動力指令値演算部8Hでは、上記第2制動量演算部8Gにて演算された第2制動量DEC2に基づいて下記式を用いて制動力指令値P_brkを演算する。
【0157】
P_brk2 = DEC2 × ARMYU ・・・(15)
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0158】
(動作その他)
図11は、本実施形態におけるタイムチャートの例である。なお、このタイムチャートでは、ペダル反力のタイムチャートについては省略している。
【0159】
この図11の例では、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも高くなると、すなわち到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満になると(時刻t2)、運転者がアクセル操作を実施していない場合に、第1制動力指令値に応じた制動力を車両に付与する。
【0160】
このように、第1制動力付与手段はアクセルペダル22が操作されていない場合にのみ制動力を付与する。このため、運転者が加速意図のない場合のみ制動力を付与することで、制動力を付与しても違和感の少ない走行シーンでのみ制動による支援を行うことができる。
【0161】
そして、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第2の閾値Th2で表されるリスクポテンシャルよりも高くなると、すなわち到達時間TTCが到達時間閾値TTC2未満になると(時刻t3)、運転者によるアクセル操作の有無に関わらず、第2制動力指令値に応じた制動力を車両に付与する。なお、第2制動力指令値は第1制動力指令値よりも高くなるように設定される。
【0162】
これによって、第1の閾値Th1(第1制動力指令値の演算開始判定をする閾値)よりもリスクポテンシャルの高い状態で演算する第2制動力指令値による制動を行うことで、障害物XMとの相対速度V_tarがより高い走行シーンにおいても当該障害物XMとの接触を回避できる制動による支援を行うことができる。
【0163】
また、本実施形態では、制動力が発生させる制動量に対して影響を与える外乱を推定する。そして、図11に示す例では、その外乱推定値SUBが、制動(減速度)を助長する外乱と推定されたので、外乱推定値SUBに基づき、第1制動指令値を小さく補正すると共に、第2の閾値Th2で表されるリスクポテンシャルが高くなるように(到達時間閾値TTC2が小さくなるように)補正している。図11の例では、第2の閾値Th2の値を「1」から「0.8」に補正されている。これによって、障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが高い状況において、第2制動力付与手段による狙った通りの制動量を付与することが可能となる。
【0164】
このように、本実施形態では、制動力が発生させる制動量に対する外乱を推定し、推定した外乱に応じて制動量を加算的に補正することで、走行路勾配、空気抵抗等の制御量に影響を与える外乱の影響を低減することができる。
【0165】
(本実施形態の効果)
(1)外乱推定手段は、自車両MMに発生する制駆動力に対し影響を与える外乱を推定するとともに、推定した外乱に応じて制動量を加算的に補正する。
制駆動力に影響を与える走行路勾配や空気抵抗等に起因する外乱の影響を低減することが可能となる。
【0166】
「第4実施形態」
次に、本実施形態について図面を参照して説明する。なお上記各実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
【0167】
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様である。ただし、外乱推定の処理が異なる。
上記第1実施形態では、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも高い場合であって、且つ第1の制動を実施している場合に、外乱推定値SUBを演算している。
【0168】
これに対し、本実施形態では、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも高くなる前から外乱推定値SUBを演算し、演算した外乱推定値SUBに基づいて第1の閾値Th1を設定する例である。
すなわち、本実施形態では、外乱推定部において、エンジントルクとシフトポジションに基づいて、制動支援を行っていないときでも外乱推定を実施する。
【0169】
具体的には、外乱推定部7Bでは、シフトポジションに基づいて現在選択中の変速ギアのギア比GPを取得する。ここで、車両の変速機が無段変速機である場合には変速機の入出力回転を検出してギア比を演算して設定してもよい。
上記自車両・障害物情報取得部6から受け取ったエンジントルクと、上記ギア比と、車両の諸元に基づいて設定された所定のトルク比、デフギア比、車重、タイヤ半径を考慮した下記式に基づいて発生加速度推定値A_tarを算出する。
【0170】
A_tar = エンジントルク×変速ギア比×トルク比×デフギア比
÷車重÷タイヤ半径 ・・・(16)
【0171】
そして、上記自車両・障害物情報取得部6から入力したアクセル開度に基づき、運転者がアクセル操作を行っていることを検出した場合には、外乱推定値SUBを演算する。すなわち、上記発生加速度推定値A_tarと、上記自車両・障害物情報取得部6から入力した自車の加減速度Aとに基づいて、下記式に基づいて外乱推定値SUBを演算する。
【0172】
SUB = A_tar − A ・・(17)
【0173】
また、運転者がアクセル操作を行っていない場合は、第1,第3実施形態と同様な方法にて制動指令値から外乱推定値SUBを演算する。すなわち、第1の制動を実施している場合には外乱推定値SUBを、第1の制動を実施している際の制動力指令値と実際の減速度とに基づいて算出し、第1の制動を実施していない場合には上記の方法で外乱推定値SUBを演算する。
【0174】
なお、外乱推定値SUBの演算方法による外乱推定値SUBの基準の違いを吸収するように調整しておく。例えば、第1実施形態で演算する外乱推定値SUBは、外乱による影響がない場合を「1」としているので、第1実施形態の方法で外乱推定値SUBを演算する場合には、例えば「1」を減算して、基準を「0」に設定しなおす。
そして、上記外乱推定値SUBに基づいて、第1及び第3実施形態と同様に各閾値、制御量を補正する。
【0175】
ここで、電気自動車などのエンジン23を動力源としない車両においては、上記演算と同等の演算を行うことにより発生加速度推定値A_tarを演算する。
【0176】
(動作その他)
図12は、本実施形態を採用した場合におけるタイムチャート例である。なお、この図12に示すタイムチャート例ではアクセル反力について図示を省略してある。
【0177】
本実施形態では、図12のタイムチャート例に示すように、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1や第3の閾値Th3で表されるリスクポテンシャルよりも低い状態(到達時間TTCが到達時間閾値TTC1や到達時間閾値TTC3よりも大きい状態)であっても、つまり、制動やペダル反力による運転支援を行う前でも、エンジントルクを検出することにより外乱を推定する。
【0178】
これによって、外乱の状況によって、制動やペダル反力を開始する判断基準となる第1の閾値Th1(到達時間閾値TTC1)や第3の閾値Th3(到達時間閾値TTC3)を適切な値に補正することが出来る。
【0179】
また、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルが、第1の閾値Th1で表されるリスクポテンシャルよりも大きくなって(到達時間TTCが到達時間閾値TTC1未満となって)、制動支援が開始された後は、制動に基づき外乱推定値SUBが演算されることで、上記各実施形態と同様に、第2の閾値Th2(到達時間閾値TTC2)が適切に補正されると共に、第2の閾値Th2以降の制動が適切となるように第2制動量DEC2を補正することが可能となる。
【0180】
(本実施形態の効果)
(1)外乱推定手段は、自車両MMに付与される制動に影響を与える外乱を推定する。第1補正手段は、外乱推定手段が推定する外乱による、自車両MMに付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第1の閾値及び第2の閾値のうちの少なくとも一つの閾値をリスクポテンシャルが低い値に補正する。
外乱により制動が妨げられるような状況ではより早いタイミングで支援を行うことができ、外乱により制動が助長されるような状況ではより遅いタイミングで支援を行うことができ、外乱に対応して適切なタイミングで運転支援を行うことが可能となる。
【0181】
(2)外乱推定手段は、駆動力に基づき外乱を推定する。
これによって、自車両MMに制動力が付与されていなくても、外乱を推定することが出来る。すなわち、制動力付与手段が第1制動力指令値演算手段及び第2制動力指令値演算手段の少なくとも一方が演算した制動力指令値に基づき自車両MMに制動力を付与する前であっても外乱を推定することが可能となる。
【0182】
なお、上記第1の実施形態から第4の実施形態においては、自車両前方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルに基づいて制動力を付与する例を説明したがこれに限らず、車両の後進時には自車両後方の障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルに基づいて制動力を付与するようにしても良い。すなわち、自車両進行方向の障害物XMを検出し、検出した障害物XMに対する自車両MMのリスクポテンシャルに基づいて制動力を付与すれば良い。
【符号の説明】
【0183】
1 車輪速センサ
2 障害物情報検出センサ
3 アクセル開度センサ
4 スロットル開度センサ
5 シフトポジションセンサ
6 自車両・障害物情報取得部
6A 自車速演算部
6B 自車加減速度演算部
6C 障害物情報演算部
6D トルク検出部
6E 自車両・障害物情報出力部
7 支援情報演算部
7A リスクポテンシャル演算部
7B 外乱推定部
7C 支援情報出力部
8 制動力演算部
8A 第1閾値設定部
8B 第1制動力付与判断部
8C 第1制動量演算部
8D 第1制動力指令値演算部
8E 第2閾値設定部
8F 第2制動力付与判断部
8G 第2制動量演算部
8H 第2制動力指令値演算部
8J 制動力指令値選択部
9 制動力付与装置
10 アクセルペダル反力演算部
10A 第3閾値設定部
10B ペダル反力付与判断部
10C ペダル反力量演算部
10D アクセルペダル反力指令値演算部
11 アクセルペダル反力付与装置
20 コントローラ
21 スロットル開度制御部
22 アクセルペダル
23 エンジン
25 ブレーキペダル
26 マスタシリンダ
27 流体圧回路
28 ホイールシリンダ
29 制動流体圧制御部
30 車輪
A 加減速度
A_tar 発生加速度推定値
DEC1 第1制動量
DEC2 第2制動量
MM 自車両
XM 障害物
P_brk 制動力指令値
P_brk1 第1制動力指令値
P_brk2 第2制動力指令値
SUB 外乱推定値
TTC 到達時間
Th1 第1の閾値
Th2 第2の閾値
Th3 第3の閾値
D_tar 相対距離
V_tar 相対速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
運転者のアクセルペダルの操作を検出するペダル検出手段と、
上記リスクポテンシャル算出手段が算出したリスクポテンシャルが、予め設定したリスクポテンシャルである第1の閾値よりも高く、且つペダル検出手段の検出に基づきアクセルペダルが操作されていないと判定すると、自車両に制動力を付与する第1制動力付与手段と、
上記リスクポテンシャル算出手段が算出したリスクポテンシャルが、第1の閾値よりも高い、予め設定したリスクポテンシャルである第2の閾値よりも高いと判定すると、アクセルペダルの操作状態に関わらず自車両に制動力を付与する第2制動力付与手段と、
を備えることを特徴とする車両用制動支援装置。
【請求項2】
上記リスクポテンシャル算出手段が求めたリスクポテンシャルが、予め設定したリスクポテンシャルである第3の閾値より高いと判定すると、アクセルペダルに反力を付与するアクセルペダル反力付与手段を備えることを特徴とする請求項1に記載した車両用制動支援装置。
【請求項3】
上記第3の閾値で表されるリスクポテンシャルは、第1の閾値で表されるリスクポテンシャル以下の値であることを特徴とする請求項2に記載した車両用制動支援装置。
【請求項4】
上記リスクポテンシャル算出手段は、上記リスクポテンシャルを表わす値として上記障害物に対する自車両の接近度合いを算出し、
上記第1制動力付与手段及び第2制動力付与手段はそれぞれ、上記リスクポテンシャル算出手段によって算出された上記接近度合いに基づいて、自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが予め設定したリスクポテンシャルである第1の閾値よりも高いこと及び予め設定したリスクポテンシャルである第2の閾値よりも高いことを判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両用制動支援装置。
【請求項5】
上記リスクポテンシャル算出手段は上記接近度合いを、自車両と障害物との相対距離、障害物に対する自車両の相対速度、障害物に対する自車両の相対加減速度のうちの少なくとも1つに基づいて算出することを特徴とする請求項4に記載した車両用制動支援装置。
【請求項6】
上記リスクポテンシャル算出手段は、障害物位置に自車両が到達すると推定される到達時間を上記接近度合いとして算出することを特徴とする請求項4に記載した車両用制動支援装置。
【請求項7】
自車両進行方向の画像を取得する撮像手段を備え、
上記リスクポテンシャル算出手段は、撮像手段が取得する画像内の上記障害物に基づき上記接近度合いを算出することを特徴とする請求項4に記載した車両用制動支援装置。
【請求項8】
自車両に付与される制動に影響を与える外乱を推定する外乱推定手段と、
外乱推定手段が推定する外乱による、自車両に付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第1の閾値及び第2の閾値のうちの少なくとも一つの閾値をリスクポテンシャルが低い値に補正する第1補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した車両用制動支援装置。
【請求項9】
自車両に付与される制動に影響を与える外乱を推定する外乱推定手段と、
外乱推定手段が推定する外乱による、自車両に付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第3の閾値をリスクポテンシャルが低い値に補正する第2補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した車両用制動支援装置。
【請求項10】
自車両に付与される制動に影響を与える外乱を推定する外乱推定手段と、
外乱推定手段が推定する外乱による、自車両に付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、上記第1制動力付与手段もしくは第2制動力付与手段の少なくとも一方で付与する制動力を増大補正する第3補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載した車両用制動支援装置。
【請求項11】
自車両に付与される制動に影響を与える外乱を推定する外乱推定手段と、
外乱推定手段が推定する外乱による、自車両に付与される制動を抑制する抑制度合いが大きい場合、当該抑制度合いが小さい場合と比較して、アクセルペダル反力付与手段で付与する反力を増大補正する第4補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した車両用制動支援装置。
【請求項12】
上記外乱推定手段は、上記第1制動力付与手段によって制動力を付与しているときに、外乱を推定し、
上記外乱推定手段が推定した外乱に基づき、第2の閾値、及び第1制動力付与手段による制動力、の少なくとも一方を補正することを特徴とする請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載した車両用制動支援装置。
【請求項13】
上記自車両の車輪速を検出する車輪速検出手段と、
上記車輪速検出手段によって検出された自車両の車輪速に基づいて自車両の加減速度を算出する加減速度算出手段とを備え、
上記外乱推定手段は、上記加減速度算出手段で算出した自車両の加減速度と、上記第1制動力付与手段によって自車両に付与している制動力とに基づいて、外乱を推定することを特徴とする請求項12に記載した車両用制動支援装置。
【請求項14】
上記外乱推定手段によって推定される外乱は、車両に制動力を付与する際の制動トルク伝達率、路面摩擦係数、車両重量の少なくとも1つに起因する外乱であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載した車両用制動支援装置。
【請求項15】
上記外乱推定手段によって推定される外乱は、走行路勾配及び空気抵抗の少なくとも一方に起因する外乱であることを特徴とする請求項8〜13に記載した車両用制動支援装置。
【請求項16】
自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが、予め設定した第1の閾値よりも高く且つアクセルペダルが操作されていないと判定すると、自車両に制動力を付与し、
自車両進行方向の障害物に対する自車両のリスクポテンシャルが、第1の閾値よりも高い第2の閾値よりリスクポテンシャルが高いと判定すると、アクセルペダルの操作状態に関わらず自車両に制動力を付与することを特徴とする車両用制動支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−25274(P2012−25274A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165959(P2010−165959)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】