説明

車両用制御装置

【課題】実ヨーレートの急変の影響を受けることなく、実横加速度を適正に補正することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用制御装置(制御部20)は、実ヨーレートYsの変化率が所定値以上か否かを判断する急変判定手段209と、舵角センサ92で検出する舵角量に基づいて規範ヨーレートYcを算出する規範ヨーレート演算手段202と、急変判定手段209によって変化率が所定値未満であると判断された場合には、実横加速度Gysを実ヨーレートYsに基づいて補正し、急変判定手段209によって変化率が所定値以上であると判断された場合には、実ヨーレートYsを規範ヨーレートYcに切り替えて実横加速度Gysを補正する補正手段220と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨーレートセンサで検出した実ヨーレートに基づいて横加速度を推定する車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヨーレートセンサや横加速度センサ等からの信号を用いて車両の挙動制御を行う車両用制御装置として、ヨーレートセンサと横加速度センサを一体的に備えたものが知られている(特許文献1参照)。このような車両用制御装置は、通常、車両前側のエンジンルーム内(車両重心とは異なる位置)に配置されるため、車両用制御装置と一体的に設けられる各センサも車両重心とは異なる位置に配置される。
【0003】
そして、横加速度センサが車両重心とは異なる位置に設けられる場合には、横加速度センサで検出した実横加速度を、車両重心の位置で検出した値に近づけるような補正を行う必要がある。この補正を行うためには、配置の影響を受けないヨーレートセンサで検出した実ヨーレートを用いて、実横加速度を補正する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−506572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実ヨーレートを用いて実横加速度の補正を行う場合には、ヨーレートセンサの異常(故障と疑われる場合)などによって実ヨーレートが急変すると、実横加速度の補正に大きな影響が出るといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、実ヨーレートの急変の影響を受けることなく、実横加速度を適正に補正することができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、車両の重心位置とは異なる位置に配置された横加速度センサで検出する実横加速度を、ヨーレートセンサで検出する実ヨーレートに基づいて前記重心位置で検出した値に近づける補正を実行する車両用制御装置であって、前記実ヨーレートの変化率が所定値以上か否かを判断する急変判定手段と、舵角センサで検出する舵角量に基づいて規範ヨーレートを算出する規範ヨーレート演算手段と、前記急変判定手段によって前記変化率が所定値未満であると判断された場合には、前記実横加速度を前記実ヨーレートに基づいて前記重心位置で検出した値に近づける補正を行い、前記急変判定手段によって前記変化率が所定値以上であると判断された場合には、前記実ヨーレートの代わりに前記規範ヨーレートに基づいて実横加速度を前記重心位置で検出した値に近づける補正を行う補正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、「所定値」とは、異常などの急激な変化を判定するための基準値であり、車両用制御装置が搭載される車両に応じた実験やシミュレーションなどによって適宜設定できる。
【0009】
本発明によれば、実ヨーレートの変化率が所定値以上である場合には、実横加速度の補正が規範ヨーレートに基づいて行われるので、実ヨーレートが急激に変化した場合であっても、この急激な変化の影響を受けずに、実横加速度を適正に補正することができる。また、実ヨーレートの変化率が所定値未満である場合には、ヨーレートセンサでの実測値(実ヨーレート)に基づいて、高精度に実横加速度を補正することができる。すなわち、本発明では、簡素な手法で制御の切り替えを行うことで、高精度な補正とヨーレートセンサ異常時の影響を受けないようにするフェールセーフの両立を図ることができる。
【0010】
また、本発明では、車体速度に関連するパラメータに基づいて車体速度を算出する車体速度演算手段を備え、前記規範ヨーレート演算手段が、前記舵角量と、前記車体速度とに基づいて規範ヨーレートを算出するのが望ましい。
【0011】
ここで、「車体速度に関連するパラメータ」とは、車体速度を求めるためのパラメータであり、例えば車輪速センサで検出される車輪速度や前後加速度センサから検出される前後加速度などが挙げられる。
【0012】
これによれば、舵角量と車体速度とによって規範ヨーレートを算出するので、規範ヨーレートを実測値(実ヨーレート)により近づけることができ、ヨーレートセンサ異常時の補正をより高精度に行うことができる。
【0013】
また、本発明では、前記補正手段が、前記実ヨーレートの変動時間に対応した所定時間の間だけ、前記規範ヨーレートに基づく補正を行い、所定時間後に前記実ヨーレートに基づく補正を再開するように構成されるのが望ましい。
【0014】
ここで、「所定時間」は、実ヨーレートが急激に変化してから当該実ヨーレート(フィルタ処理された値も含む)が略一定になるまでの変動時間に対応した時間であり、実験やシミュレーションなどによって適宜設定できる。
【0015】
これによれば、実ヨーレートの急変によって補正値が最も影響を受ける期間だけ、規範ヨーレートを用いるので、急変の影響を極力受けないように横加速度を補正することができるとともに、ヨーレートセンサの出力値が一時的に急変しただけの場合には再度実ヨーレートによる高精度な補正を行うことができる。
【0016】
また、本発明は、車両の走行状態における不安定さを示す不安定レベルが所定の閾値を超えている場合に車両の走行状態が不安定であると判定する不安定レベル判定手段を備え、前記補正手段が、前記不安定レベル判定手段によって車両の走行状態が不安定であると判定されていない場合のみに、前記規範ヨーレートを用いた補正を実行するのが望ましい。
【0017】
これによれば、車両の走行状態が不安定でない場合のみに、規範ヨーレートを用いるため、規範ヨーレートを用いた補正を高精度に行うことができる。
【0018】
また、本発明では、前記不安定レベル判定手段が、少なくとも前記実ヨーレートの変化率が前記所定値以上になる直前の実ヨーレートと舵角量とを用いて判定を行うのが望ましい。
【0019】
これによれば、急変直前の実ヨーレートと舵角量とを用いて判定を行うので、異常と疑われる直前の車両の走行状態(不安定レベル)を精度良く判定することができる。
【0020】
また、本発明は、前記補正手段によって補正された実横加速度を用いて、車両の挙動を抑制する車両挙動抑制制御を実行可能に構成されていてもよい。
【0021】
これによれば、ヨーレートセンサの異常により実ヨーレートが急変した場合であっても、規範ヨーレートに基づいて実横加速度を補正することで、車両の挙動を良好に抑制することができる。また、実ヨーレートの変化が少ない場合には、ヨーレートセンサでの実測値(実ヨーレート)に基づいて実横加速度を高精度に補正するので、高精度な補正値に基づいて、車両の挙動を良好に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、実ヨーレートの急変の影響を受けることなく、実横加速度を適正に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】車両用制御装置を備えた車両を示す構成図である。
【図2】車両用制御装置のブレーキ液圧回路を示す構成図である。
【図3】制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】実ヨーレートの急変時におけるヨーレートの変化を示すタイムチャート(a)と、横加速度の変化を示すタイムチャート(b)と、ヨーレートの微分値の変化を示すタイムチャート(c)と、タイマの変化を示すタイムチャート(d)である。
【図5】車両の重心位置と横加速度センサの位置の関係を示す図である。
【図6】制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、車両用制御装置100は、車両CRの各車輪Wに付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御するためのものであり、車両の重心位置よりも前側に位置するエンジンルーム内に設けられている。車両用制御装置100は、油路(液圧路)や各種部品が設けられた液圧ユニット10と、液圧ユニット10内の各種部品を適宜制御するための制御部20とを主に備えている。
【0025】
制御部20は、例えば、CPU、RAM、ROMおよび入出力回路を備えており、車輪速センサ91、舵角センサ92、横加速度センサ93およびヨーレートセンサ94からの入力と、ROMに記憶されたプログラムやデータに基づいて各演算処理を行うことによって制御を実行する。
【0026】
車輪速センサ91は、車輪Wの車輪速度を検出するセンサであり、各車輪Wに対応して設けられている。
舵角センサ92は、ステアリングSTの舵角量を検出するセンサであり、ステアリングSTの回転軸に設けられている。
【0027】
横加速度センサ93は、車両CRの横方向に働く加速度(横加速度)を検出するセンサであり、制御部20に一体的に設けられている。
ヨーレートセンサ94は、車両CRの旋回角速度(実ヨーレート)を検出するセンサであり、制御部20に一体的に設けられている。
【0028】
すなわち、横加速度センサ93とヨーレートセンサ94は、制御部20に一体的に設けられることによって、車両の重心位置とは異なる位置に配置されている。このような配置は、ヨーレートセンサ94の検出値には影響せず、横加速度センサ93の検出値に影響を与える。
【0029】
そのため、制御部20は、横加速度センサ93で検出する検出値(実横加速度)を、ヨーレートセンサ94で検出する検出値(実ヨーレート)に基づいて重心位置で検出した値に近づける補正を実行するように構成されている。なお、この補正については、後で詳述する。
【0030】
ホイールシリンダHは、マスタシリンダMCおよび車両用制御装置100により発生されたブレーキ液圧を各車輪Wに設けられた車輪ブレーキFR,FL,RR,RLの作動力に変換する液圧装置であり、それぞれ配管を介して車両用制御装置100の液圧ユニット10に接続されている。
【0031】
図2に示すように、液圧ユニット10は、運転者がブレーキペダルBPに加える踏力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧源であるマスタシリンダMCと、車輪ブレーキFR,FL,RR,RLとの間に配置されている。液圧ユニット10は、ブレーキ液が流通する油路を有する基体であるポンプボディ10a、油路上に複数配置された入口弁1、出口弁2などから構成されている。
【0032】
マスタシリンダMCの二つの出力ポートM1,M2はポンプボディ10aの入口ポート121に接続され、ポンプボディ10aの出口ポート122は各車輪ブレーキFR,FL,RR,RLに接続されている。そして、通常時はポンプボディ10a内の入口ポート121から出口ポート122までが連通した油路となっていることで、ブレーキペダルBPの踏力が各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに伝達されるようになっている。
【0033】
また、出力ポートM1から始まる油路は前輪左側の車輪ブレーキFLと後輪右側の車輪ブレーキRRに通じており、出力ポートM2から始まる油路は前輪右側の車輪ブレーキFRと後輪左側の車輪ブレーキRLに通じている。なお、以下では、出力ポートM1から始まる油路を「第一系統」と称し、出力ポートM2から始まる油路を「第二系統」と称する。
【0034】
液圧ユニット10には、その第一系統に各車輪ブレーキFL,RRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられており、同様に、その第二系統に各車輪ブレーキRL,FRに対応して二つの制御弁手段Vが設けられている。また、液圧ユニット10には、第一系統および第二系統のそれぞれに、リザーバ3、ポンプ4、ダンパ5、オリフィス5a、調圧弁(レギュレータ)R、吸入弁7、貯留室7aが設けられている。さらに、液圧ユニット10には、第一系統のポンプ4と第二系統のポンプ4とを駆動するための共通のモータ9が設けられている。このモータ9は、回転数制御可能なモータである。また、本実施形態では、第二系統にのみ圧力センサ8が設けられている。
【0035】
なお、以下では、マスタシリンダMCの出力ポートM1,M2から各調圧弁Rに至る油路を「出力液圧路A1」と称し、第一系統の調圧弁Rから車輪ブレーキFL,RRに至る油路および第二系統の調圧弁Rから車輪ブレーキRL,FRに至る油路をそれぞれ「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路A1からポンプ4に至る油路を「吸入液圧路C」と称し、ポンプ4から車輪液圧路Bに至る油路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る油路を「開放路E」と称する。
【0036】
制御弁手段Vは、マスタシリンダMCまたはポンプ4側から車輪ブレーキFL,RR,RL,FR側(詳細には、ホイールシリンダH側)への液圧の行き来を制御する弁であり、ホイールシリンダHの圧力を増加、保持または低下させることができる。そのため、制御弁手段Vは、入口弁1、出口弁2およびチェック弁1aを備えて構成されている。
【0037】
入口弁1は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRとマスタシリンダMCとの間、すなわち車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁である。入口弁1は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMCから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRへブレーキ液圧が伝達するのを許容している。また、入口弁1は、車輪Wがロックしそうになったときに制御部20により閉塞されることで、ブレーキペダルBPから各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに伝達するブレーキ液圧を遮断する。
【0038】
出口弁2は、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRと各リザーバ3との間、すなわち車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁2は、通常時に閉塞されているが、車輪Wがロックしそうになったときに制御部20により開放されることで、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに作用するブレーキ液圧を各リザーバ3に逃がす。
【0039】
チェック弁1aは、各入口弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入のみを許容する一方向弁であり、ブレーキペダルBPからの入力が解除された場合に、入口弁1を閉じた状態にしたときにおいても、各車輪ブレーキFL,FR,RL,RR側からマスタシリンダMC側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0040】
リザーバ3は、開放路Eに設けられており、各出口弁2が開放されることによって逃がされるブレーキ液圧を吸収する機能を有している。また、リザーバ3とポンプ4との間には、リザーバ3側からポンプ4側へのブレーキ液の流れのみを許容するチェック弁3aが介設されている。
【0041】
ポンプ4は、出力液圧路A1に通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、リザーバ3に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する機能を有している。これにより、リザーバ3により吸収されたブレーキ液をマスタシリンダMCに戻すことができるとともに、運転者がブレーキペダルBPを操作しない場合でもブレーキ液圧を発生して車輪ブレーキFL,RR,RL,FRに制動力を発生することができる。
なお、ポンプ4のブレーキ液の吐出量は、モータ9の回転数に依存しており、例えば、モータ9の回転数が大きくなると、ポンプ4によるブレーキ液の吐出量も大きくなる。
【0042】
ダンパ5およびオリフィス5aは、その協働作用によってポンプ4から吐出されたブレーキ液の圧力の脈動および後述する調圧弁Rが作動することにより発生する脈動を減衰させている。
【0043】
調圧弁Rは、通常時に開いていることで、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する。また、調圧弁Rは、ポンプ4が発生したブレーキ液圧によりホイールシリンダH側の圧力を増加するときには、ブレーキ液の流れを遮断しつつ、吐出液圧路D、車輪液圧路BおよびホイールシリンダH側の圧力を設定値以下に調節する機能を有している。そのため、調圧弁Rは、切換弁6およびチェック弁6aを備えて構成されている。
【0044】
切換弁6は、マスタシリンダMCに通じる出力液圧路A1と各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRに通じる車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁である。詳細は図示しないが、切換弁6の弁体は、付与される電流に応じた電磁力によって車輪液圧路BおよびホイールシリンダH側へ付勢されており、車輪液圧路Bの圧力が出力液圧路A1の圧力より所定値(この所定値は、付与される電流による)以上高くなった場合には、車輪液圧路Bから出力液圧路A1へ向けてブレーキ液が逃げることで、車輪液圧路B側の圧力が所定圧に調整される。
【0045】
チェック弁6aは、各切換弁6に並列に接続されている。このチェック弁6aは、出力液圧路A1から車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0046】
吸入弁7は、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁であり、吸入液圧路Cを開放する状態または遮断する状態に切り換えるものである。吸入弁7は、切換弁6が閉じるとき、すなわち、運転者がブレーキペダルBPを操作しない場合において各車輪ブレーキFL,FR,RL,RRにブレーキ液圧を作用させるときに制御部20により開放(開弁)される。
【0047】
圧力センサ8は、第二系統の出力液圧路A1のブレーキ液圧を検出するものであり、その検出結果は制御部20に入力される。
【0048】
次に、制御部20の詳細について説明する。
図3に示すように、制御部20は、各センサ91〜94等から入力された信号に基づいて液圧ユニット10内の制御弁手段V、切換弁6(調圧弁R)および吸入弁7の開閉動作ならびにモータ9の動作を制御して、各車輪ブレーキFL,RR,RL,FRの動作を制御するものである。具体的に、制御部20は、車体速度演算手段201、規範ヨーレート演算手段202、フィルタ手段203、2乗演算手段204、第1微分演算手段205、第2微分演算手段206、不安定レベル判定手段207、後退判定手段208、急変判定手段209、タイマ210、補正手段220および挙動抑制手段230を備えている。
【0049】
車体速度演算手段201は、各車輪速センサ91で検出される車輪速度(車体速度に関連するパラメータ)に基づいて車体速度を算出する機能を有している。車体速度演算手段201は、算出した車体速度を、規範ヨーレート演算手段202に出力する。
【0050】
規範ヨーレート演算手段202は、舵角センサ92で検出される舵角量と、車体速度演算手段201から出力されてくる車体速度とに基づいて、従来公知の方法により、規範ヨーレートYcを算出する機能を有している。規範ヨーレート演算手段202は、算出した規範ヨーレートYcを第2微分演算手段206および不安定レベル判定手段207に出力する。
【0051】
フィルタ手段203は、ヨーレートセンサ94で検出される実ヨーレートと、横加速度センサ93で検出される実横加速度に対して公知のフィルタ処理を行う機能を有している。具体的に、フィルタ手段203は、実ヨーレートや実横加速度が急な勾配で変化する場合に、その単位時間当たりの変化量を予め決められた上限値で制限することで、緩やかな勾配で変化させていくといったフィルタ処理を行う。そして、フィルタ手段203は、フィルタ処理をした実ヨーレートYsを、2乗演算手段204、第1微分演算手段205および不安定レベル判定手段207に出力するとともに、フィルタ処理した実横加速度Gysを補正手段220(詳しくは位置補正演算手段222)に出力する。
【0052】
2乗演算手段204は、フィルタ手段203から出力されてくるフィルタ処理された実ヨーレートYsを2乗演算する機能を有している。そして、2乗演算手段204は、算出した2乗値Ysを補正手段220(詳しくは位置補正演算手段222)に出力する。
【0053】
第1微分演算手段205は、フィルタ手段203から出力されてくるフィルタ処理された実ヨーレートYsの微分値dYs/dtを算出する機能を有している。そして、第1微分演算手段205は、算出した微分値dYs/dtを補正手段220(詳しくは選択手段221)に出力する。
【0054】
第2微分演算手段206は、規範ヨーレート演算手段202から出力されてくる規範ヨーレートYcの微分値dYc/dtを算出する機能を有している。そして、第2微分演算手段206は、算出した微分値dYc/dtを補正手段220(詳しくは選択手段221)に出力する。
【0055】
不安定レベル判定手段207は、フィルタ手段203から出力されてくるフィルタ処理された実ヨーレートYsと、規範ヨーレート演算手段202から出力されてくる規範ヨーレートYcとを用いて、車両の走行状態が不安定か否かを判定する機能を有している。具体的には、不安定レベル判定手段207は、実ヨーレートYsと規範ヨーレートYcの差分(実ヨーレートYsと規範ヨーレートYcの偏差)に対してフィルタ処理を行い、その値を不安定レベルとして用い、予め設定された所定の閾値と比較する。そして、不安定レベル判定手段207は、不安定レベルが閾値を超えている場合には不安定であると判定し、また、閾値以下の場合(偏差が所定値以内の場合)には安定であると判定し、信号を補正手段220(詳しくは選択手段221)に出力する。
【0056】
なお、本実施形態では、不安定レベル判定手段207は、常時判定を行っている。これにより、不安定レベル判定手段207は、実ヨーレートの変化率が所定値以上になる直前の実ヨーレートYsと規範ヨーレートYc(舵角量)とを用いて判定することが可能となっている。
【0057】
後退判定手段208は、図示せぬリバーススイッチ(ギア位置がリバースの位置に位置するか否かを検知するスイッチ)からのリバース信号に基づいて、従来公知の方法により、車両が後退しているか否かを判定する機能を有している。そして、後退判定手段208は、車両が後退していないと判定したときのみに、そのことを示す前進信号を補正手段220(詳しくは選択手段221)に出力する。なお、後退判定は、リバーススイッチを用いる方法に限られず、例えば前後加速度センサ等を用いて後退判定を行ってもよい。
【0058】
急変判定手段209は、ヨーレートセンサ94で検出される実ヨーレート(ヨーレート生値)の変化率(単位時間当たりの変化量)が所定値以上か否かを判断する機能を有している。そして、急変判定手段209は、実ヨーレートの変化率が所定値以上の場合には、そのことを示す急変信号をタイマ210に出力する。
【0059】
タイマ210では、急変信号を受けると、実ヨーレートの変動時間に対応した所定時間をカウンタ値としてセットし、このカウンタ値を徐々に減算(デクリメント)する機能を有している。ここで、「実ヨーレートの変動時間に対応した所定時間」は、実験やシミュレーション等によって適宜設定でき、本実施形態では、図4(d)に示すように、所定時間TAを、実ヨーレート(ヨーレート生値)の急変後にフィルタ処理された実ヨーレートの変動時間TCよりも長い時間に設定している。
【0060】
そして、タイマ210は、現在のカウンタ値を補正手段220(詳しくは、選択手段221)に出力する。
【0061】
補正手段220は、フィルタ手段203から出力されてくる実横加速度Gysを、以下の補正式(1)によって車両重心で検出した値に近づける補正を実行する機能を有している。
Gyc = Gys − Lx(dγ/dt) + Ly・γ ・・・(1)
Gyc:推定横加速度、Gys:フィルタ処理された実横加速度、Lx:横加速度センサ93に対する車両重心の前後方向の位置、Ly:横加速度センサ93に対する車両重心の左右方向の位置、γ:ヨーレート
【0062】
ここで、Lxは、図5に示すように、横加速度センサ93を基準にして重心GPが後方にあるときに正となり、Lyは、横加速度センサ93を基準にして重心GPが右方向にあるときに正となる。
【0063】
さらに、補正手段220は、急変判定手段209によって実ヨーレート(ヨーレート生値)の変化率が所定値未満であると判断された場合には、実横加速度Gysを実ヨーレートYsに基づいて補正し、急変判定手段209によって実ヨーレートの変化率が所定値以上であると判断された場合には、実ヨーレートYsの代わりに規範ヨーレートYcに基づいて実横加速度を補正する機能を有している。具体的に、補正手段220は、補正に大きな影響を与える補正式(1)の右辺の第2項「−Lx(dγ/dt)」におけるヨーレートの微分値を、実ヨーレートに基づく微分値dYs/dtと規範ヨーレートに基づく微分値dYc/dtとに適宜切り替えるようにしている。
【0064】
なお、前述した補正式(1)の右辺の第3項「Ly・γ」は補正に大きな影響を与えないため、本実施形態では、第3項におけるヨーレートγについては、実ヨーレートYsを用いて規範ヨーレートYcへの切り替えは行わないようにしている。ただし、第3項におけるヨーレートγを、第2項と同様に規範ヨーレートYcに適宜切り替えるように構成してもよい。
【0065】
具体的に、補正手段220は、選択手段221と、位置補正演算手段222と、記憶部223とを備えている。なお、記憶部223には、前述した補正式(1)が記憶されている。
【0066】
選択手段221は、タイマ210から出力されてくるカウンタ値に基づいて、位置補正用の微分値(以下、「位置補正用微分値」ともいう。)として、実ヨーレートYsに基づく微分値dYs/dtを使用するか、規範ヨーレートYcに基づく微分値dYc/dtを使用するかを選択する機能を有している。
【0067】
具体的には、選択手段221は、カウンタ値が0であるときには、実ヨーレートYsに基づく微分値dYs/dtを選択し、その微分値を位置補正用微分値として位置補正演算手段222に出力する。また、選択手段221は、カウンタ値が0でないときには、規範ヨーレートYcに基づく微分値dYc/dtを選択し、その微分値を位置補正用微分値として位置補正演算手段222に出力する。
【0068】
すなわち、補正手段220は、図4(a),(d)に示すように、実ヨーレートの変動時間TCに対応した所定時間TA(カウンタ値)の間だけ、規範ヨーレートに基づく補正を行い、所定時間TA後に実ヨーレートに基づく補正を再開するように構成されている。
【0069】
さらに、選択手段221は、不安定レベル判定手段207からの信号を受信していないときには、カウンタ値を0にする機能を有している。これにより、選択手段221は、不安定レベル判定手段207からの信号を受信していないときには、実ヨーレートYsに基づく微分値dYs/dtを選択し、その微分値を位置補正用微分値として位置補正演算手段222に出力する。
【0070】
すなわち、補正手段220は、車両の走行状態が不安定でない場合のみに、規範ヨーレートを用いた補正を実行するように構成されている。
【0071】
また、選択手段221は、前進信号を受信していないときにも、カウンタ値を0にする機能を有している。これにより、選択手段221は、前進信号を受信していないときには、実ヨーレートYsに基づく微分値dYs/dtを選択し、その微分値を位置補正用微分値として位置補正演算手段222に出力する。
【0072】
さらに、選択手段221は、選択した微分値に公知のフィルタ処理(値の変動を抑制するフィルタ処理)をかけることで、微分値の前回値と今回値との差が急激に変わらないようにしている。
【0073】
位置補正演算手段222は、フィルタ手段203から出力されてくる実横加速度Gysを、2乗演算手段204から出力されてくる実ヨーレートの2乗値Ysと、選択手段221で選択した位置補正用微分値と、記憶部223から読み込んだ補正式(1)とに基づいて補正することで、推定横加速度Gycを算出する機能を有している。そして、位置補正演算手段222は、算出した推定横加速度Gycを挙動抑制手段230に出力する。
【0074】
挙動抑制手段230は、補正手段220によって補正された実横加速度(すなわち推定横加速度Gyc)を用いて、車両の挙動を抑制する公知の車両挙動抑制制御を実行可能に構成されている。具体的に、挙動抑制手段230は、実ヨーレートと規範ヨーレートの偏差により車両を安定させるためのモーメントを算出し、それに基づきキャリパに発生させるブレーキ圧を算出する。そして、モーメント算出の際には、横加速度でモーメント量のリミット値を取るようにしている。
【0075】
具体的には、例えば、低μ路(摩擦係数が低い路面)において大きなモーメントが算出されてしまうと、キャリパに発生させるブレーキ圧が高くなって車輪がロックするおそれがあるため、このような車輪のロックが発生しないように横加速度に基づいてモーメントに制限をかけている。
【0076】
また、挙動制御手段230は、実ヨーレートが異常で変動しても横加速度を参照して誤った挙動制御を抑えるようにモーメントに制限をかけている。ここで、この制御を行うには、横加速度センサが重心位置に配置されている場合には、横加速度を用いて誤った挙動制御を抑えることができるが、横加速度センサが重心位置に配置されておらず、実ヨーレートを用いて重心位置の横加速度に近づける補正を行う場合には、実ヨーレートが異常で変動した場合には、横加速度も影響を受けて変動してしまう。しかし、本発明では、ヨーレートセンサの異常時であっても補正後の横加速度の値の変動を防止できるため、誤った挙動制御を従来通りに抑えることが可能となっている。
【0077】
次に、図6を参照して、制御部20の動作について説明する。
図6に示すように、制御部20は、まず、各センサ93,94から実ヨーレートおよび実横加速度を取得し(S1)、取得した各データをフィルタ処理する(S2)。ステップS2の後、制御部20は、実ヨーレートの微分値dYs/dtと規範ヨーレートの微分値dYc/dtを算出するとともに(S3)、実ヨーレートの2乗値Ysを算出する(S4)。
【0078】
ステップS4の後、制御部20は、車両が後退中であるか否かを判断する(S5)。ステップS5において、後退中であると判断した場合には(Yes)、制御部20は、カウンタ値をゼロにする(S6)。
【0079】
ステップS5において、後退中ではないと判断した場合には(No)、制御部20は、実ヨーレートの変化率の大きさが所定値以上であるか否か、すなわち急変したか否かを判断する(S7)。ステップS7において、実ヨーレートが急変したと判断した場合には(Yes)、制御部20は、不安定レベルが所定の閾値を超えているか否かを判断する(S8)。
【0080】
ステップS8において、不安定レベルが閾値以下であると判断した場合には(No)、制御部20は、カウンタ値を所定時間TAにセットする(S9)。ステップS7でNo、または、ステップS8でYesと判断した場合には、制御部20は、カウンタ値がゼロである場合にはゼロに維持し、ゼロでない場合にはカウンタ値を10msだけ減算する(S10)。
【0081】
ステップS6,S9,S10の後、制御部20は、カウンタ値がゼロであるか否かを判断する(S11)。ステップS11において、カウンタ値がゼロである場合には(Yes)、制御部20は、位置補正用微分値として実ヨーレートの微分値dYs/dtを選択する(S12)。
【0082】
また、ステップS11において、カウンタ値がゼロでない場合には(No)、制御部20は、位置補正用微分値として規範ヨーレートの微分値dYc/dtを選択する(S13)。ステップS12またはステップS13の後、制御部20は、選択した微分値に公知のフィルタ処理をかけた後(S14)、この微分値と実ヨーレートの2乗値と補正式(1)によって実横加速度Gysの位置補正を行って推定横加速度Gycを算出する(S15)。
【0083】
次に、図4を参照して、本実施形態での位置補正を行う場合と行わない場合とを比較して説明する。具体的には、ヨーレートセンサ94の異常によりヨーレートセンサ94での検出値が急変し、その検出値が正常出力に対してオフセットした値になってしまう場合の位置補正について説明する。なお、図4では、便宜上、実ヨーレートや規範ヨーレートなどの各値の違いが分かるように各値を示す線をずらして図示しているが、各線が近接して並行する部分は略同じ値となっている。
【0084】
車両を直進状態から緩やかに旋回していく場合には(時刻t1)、図4(a),(b)に示すように、フィルタ処理していない実ヨーレート(以下、「ヨーレート生値」という。)と、フィルタ処理された実ヨーレートと、規範ヨーレートと、実横加速度と、推定横加速度はともに緩やかに変化していく(時刻t1〜t2)。また、図4(c)に示すように、実ヨーレートの微分値と、規範ヨーレートの微分値は、略一定の値で推移する。
【0085】
このようにヨーレート生値が急変しない状況においては、図4(c)に示すように、位置補正用微分値として実ヨーレートの微分値が選択される(太字の1点鎖線参照)。
【0086】
そして、時刻t2において、ヨーレートセンサ94の異常により図4(a)に示すヨーレート生値が急変すると、図4(c)に示す実ヨーレートの微分値も一緒に急変することになる。そのため、本実施形態に係る位置補正を行わない場合には、推定横加速度は、図4(b)の破線で示すように、急変する実ヨーレートの微分値に応じて急変して、実横加速度から大きくずれてしまう。
【0087】
これに対し、本実施形態では、このような急変時には、ヨーレート生値の影響を受けない規範ヨーレートを用いて位置補正を行うようになっている(太字の2点鎖線参照)。すなわち、ヨーレート生値の急変時には、図4(d)に示すタイマのカウンタ値を所定時間TAにセットし、カウンタ値がゼロになるまでの間、図4(c)に示す位置補正用微分値として規範ヨーレートが選択される。これにより、図4(b)に実線で示すように、推定横加速度が実横加速度から大きくずれることが防止されている。
【0088】
そして、カウンタ値がゼロになった後は(時刻t3)、図4(c)に示す位置補正用微分値として実ヨーレートの微分値が選択される(太字の1点鎖線参照)。この際、規範ヨーレートの微分値と実ヨーレートの微分値がずれていても、公知のフィルタ処理により規範ヨーレートの微分値から実ヨーレートの微分値に緩やかに変化するようになっている。
【0089】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
実ヨーレート(ヨーレート生値)の変化率が所定値以上である場合には、実横加速度Gysの補正が規範ヨーレートYcに基づいて行われるので、実ヨーレートが急激に変化した場合であっても、この急激な変化の影響を受けずに、実横加速度Gysを適正に補正することができる。また、実ヨーレート(ヨーレート生値)の変化率が所定値未満である場合には、フィルタ処理された実ヨーレートYs(ヨーレート生値に対応した値)に基づいて、高精度に実横加速度Gysを補正することができる。すなわち、本発明では、簡素な手法で制御の切り替えを行うことで、高精度な補正とヨーレートセンサ異常時の影響を受けないようにするフェールセーフの両立を図ることができる。
【0090】
舵角量と車体速度とによって規範ヨーレートYcを算出するので、規範ヨーレートYcを実測値(ヨーレート生値)により近づけることができ、フェールセーフ時の補正をより高精度に行うことができる。
【0091】
実ヨーレートの急変によって補正値が最も影響を受ける期間だけ、規範ヨーレートYcを用いるので、急変の影響を極力受けないように横加速度を補正することができるとともに、ヨーレートセンサの出力値が一時的に急変しただけの場合には再度実ヨーレートYsによる高精度な補正を行うことができる。
【0092】
車両の走行状態が不安定でない場合のみに、規範ヨーレートYcを用いるため、規範ヨーレートYcを用いた補正を高精度に行うことができる。
【0093】
急変直前の実ヨーレートと舵角量とを用いて車両が不安定か否かを判定するので、異常と疑われる直前の車両の走行状態(不安定レベル)を精度良く判定することができる。
【0094】
ヨーレートセンサ94の異常により実ヨーレートが急変した場合であっても、規範ヨーレートYcに基づいて実横加速度Gysを補正することで、車両の挙動を良好に抑制することができる。また、実ヨーレートの変化率が所定値未満である場合には、フィルタ処理された実ヨーレートYs(ヨーレート生値に対応した値)に基づいて実横加速度Gysを高精度に補正するので、高精度な補正値に基づいて、車両の挙動を良好に抑制することができる。
【0095】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、車両の重心位置よりも前方に横加速度センサ93を配置したが、本発明はこれに限定されず、重心位置よりも後方に配置してもよい。
【0096】
前記実施形態では、規範ヨーレートを舵角量と車体速度に基づいて算出したが、本発明はこれに限定されず、例えば舵角量と車輪速度に基づいて算出してもよい。
【0097】
前記実施形態では、車輪速度に基づいて車体速度を算出したが、本発明はこれに限定されず、例えば前後加速度センサから検出される前後加速度に基づいて車体速度を算出してもよい。
【0098】
前記実施形態では、実ヨーレートと規範ヨーレートとの偏差に基づいて車両の走行状態が不安定か否かを判定したが、本発明はこれに限定されず、実ヨーレートと規範ヨーレートとをそれぞれ微分した各変化率を用いて不安定か否かを判定してもよい。また、車体速度とリア側(従動輪側)の車輪速度とから算出したス
リップ率に基づいて不安定か否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0099】
20 制御部
91 車輪速センサ
92 舵角センサ
93 横加速度センサ
94 ヨーレートセンサ
100 車両用制御装置
202 規範ヨーレート演算手段
209 急変判定手段
220 補正手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の重心位置とは異なる位置に配置された横加速度センサで検出する実横加速度を、ヨーレートセンサで検出する実ヨーレートに基づいて前記重心位置で検出した値に近づける補正を実行する車両用制御装置であって、
前記実ヨーレートの変化率が所定値以上か否かを判断する急変判定手段と、
舵角センサで検出する舵角量に基づいて規範ヨーレートを算出する規範ヨーレート演算手段と、
前記急変判定手段によって前記変化率が所定値未満であると判断された場合には、前記実横加速度を前記実ヨーレートに基づいて前記重心位置で検出した値に近づける補正を行い、前記急変判定手段によって前記変化率が所定値以上であると判断された場合には、前記実ヨーレートの代わりに前記規範ヨーレートに基づいて実横加速度を前記重心位置で検出した値に近づける補正を行う補正手段と、を備えたことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
車体速度に関連するパラメータに基づいて車体速度を算出する車体速度演算手段を備え、
前記規範ヨーレート演算手段は、前記舵角量と、前記車体速度とに基づいて規範ヨーレートを算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記実ヨーレートの変動時間に対応した所定時間の間だけ、前記規範ヨーレートに基づく補正を行い、所定時間後に前記実ヨーレートに基づく補正を再開することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
車両の走行状態における不安定さを示す不安定レベルが所定の閾値を超えている場合に車両の走行状態が不安定であると判定する不安定レベル判定手段を備え、
前記補正手段は、前記不安定レベル判定手段によって車両の走行状態が不安定であると判定されていない場合のみに、前記規範ヨーレートを用いた補正を実行することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記不安定レベル判定手段は、少なくとも前記実ヨーレートの変化率が前記所定値以上になる直前の実ヨーレートと舵角量とを用いて判定を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記補正手段によって補正された実横加速度を用いて、車両の挙動を抑制する車両挙動抑制制御を実行可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−41006(P2012−41006A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185889(P2010−185889)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】