説明

車両用前照灯ユニット

【課題】前後寸法を短縮でき且つヒートシンクの放熱性能を高めることができる車両用前照灯ユニットを提供する。
【解決手段】ヒートシンク3に固定した発光ダイオード4をレンズ2の後方に置かず、レンズ2の下方に配置すると共に、発光ダイオード4の光を導光体8によりレンズ2の後方のリフレクタ7に導くようにしたため、レンズ2からの前後寸法Lを短縮することができる。すなわち、発光ダイオード4の光は、導光体8の形状により、自由に所望の方向へ拡散且つ集光させることができるため、レンズ2とリフレクタ7との前後距離は短くて済み、レンズ2からの前後寸法Lの短縮化が可能となる。従って、フロントノーズの短い車体構造にも採用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用前照灯ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード等の高輝度の半導体発光素子を光源とした車両用前照灯ユニットが開発されている。この種の半導体発光素子は高輝度であるが、発熱量が大きいため、放熱手段としてのヒートシンクと一体化する必要がある。
【0003】
このような前照灯ユニットの一般的構造としては、ヒートシンクに固定された発光ダイオードの後方に、発光ダイオードからの光を前方に反射するリフレクタを配置し、これら発光ダイオードおよびリフレクタの前方に、リフレクタから反射された光を投影するレンズを配置している。つまり、発光ダイオードからの光をリフレクタで前向きに反射した後、レンズを通して前方へ照射するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005228502号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、リフレクタの焦点位置に発光ダイオードを配置する必要があるため、レンズ、ヒートシンクに固定された発光ダイオード、リフレクタが前後方向に列ぶことで、前後寸法が大きくなってしまい、フロントノーズの短い車体構造には採用できなくなる。また、ヒートシンクの位置は発光ダイオードと一緒にレンズの後方に配置する必要があり、通気性の良い場所を選んで設置することができないため、放熱性能を確保する面で不利であった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、前後寸法を短縮できる車両用前照灯ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、車両用前照灯ユニットであって、ヒートシンクに固定された半導体発光素子と、前記半導体発光素子の光を一端の入射面から導入して他端の出射面から照射する導光体と、前記導光体の出射面から照射された光を車両前方に反射するリフレクタと、前記リフレクタの前方に配置され前記リフレクタから反射された光を車両前方へ照射する投影レンズと、を備え、前記半導体発光素子は前記レンズの後方以外の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記ヒートシンクに固定された半導体発光素子が前記レンズの下方に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記導光体が車幅方向に長い断面形状の板状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記リフレクタの反射面が光を車幅方向での略放物柱面状であることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記導光体が板状で、入射面が前記半導体発光素子に向けて凸の湾曲面となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記導光体が板状で、入射面から出射面へ向けて漸次が厚さが減少していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ヒートシンクに固定した半導体発光素子をレンズの後方に置かず、後方以外の周囲位置(上下左右)に配置すると共に、半導体発光素子の光を導光体によりレンズの後方のリフレクタに導くようにしたため、レンズからリフレクタまでの前後寸法を短縮することができる。すなわち、半導体発光素子の光は、導光体の形状により、自由に所望の方向へ拡散且つ集光させることができるため、レンズとリフレクタとの前後距離は短くて済み、レンズからの前後寸法の短縮化が可能となる。従って、フロントノーズの短い車体構造にも採用することができる。また、ヒートシンクの位置が、放熱に不向きなレンズの後方以外に位置に配置されることとなるため、放熱性能が向上する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ヒートシンクを比較的通気性の良いレンズの下方の配置したため、ヒートシンクの放熱性能がさらに向上する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、導光体が車幅方向に長い断面形状の板状であるため、上下方向で拡散させない投射原理による配光パターンを得ることができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、リフレクタの反射面が車幅方向での略放物柱面状であるため、上下方向で拡散させない投射原理による配光パターンを得ることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、導光体の入射面が半導体発光素子に向けて凸の湾曲面となっているため、光の入射効率は平面にする場合に比べて向上する。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、導光体が入射面から出射面へ向けて漸次が厚さが減少しているため、光の上下方向での集光特性が更に向上し、高速走行時における視認性の良い配光パターンが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、前後寸法を短縮でき且つヒートシンクの放熱性能を高めることができる車両用前照灯ユニットを提供するという目的を、ヒートシンクに固定された半導体発光素子と、前記半導体発光素子の光を一端の入射面から導入して他端の出射面から照射する導光体と、前記導光体の出射面から照射された光を車両前方に反射するリフレクタと、前記リフレクタの前方に配置され前記リフレクタから反射された光を車両前方へ照射する投影レンズと、を設け、前記半導体発光素子を前記レンズの後方以外の周囲に配置することで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0019】
図1〜図5は、本発明の一実施例を示す図である。図1は、前面に透明カバーを有する灯室(図示せず)に収納される前照灯ユニット1を示している。この前照灯ユニット1は灯室内に複数設置されているが、この実施例では、そのうちの一つを代表して説明する。
【0020】
透明樹脂製のプロジェクター型のレンズ2は前向き状態で支持されている。このレンズ2の下方にはヒートシンク3が斜めに配置され、そのヒートシンク3の上面に車幅方向に複数(この例では3個)並んだ状態で発光ダイオード(半導体発光素子)4が固定されている。発光ダイオード4は、後端側が階段状に薄肉に形成された本体部の上面にチップ4aが剥き出しに露出した構造になっている。つまり、この発光ダイオード4はレンズ部を備えない構造である。
【0021】
発光ダイオード4はヒートシンク3に接した状態で固定され、発光ダイオード4で発生した熱をヒートシンク3側に伝えて放熱できる構造になっている。このヒートシンク3は灯室(図示せず)の下部から露出しており、車両前方から後方に向けて灯室の下方を流れる通気Aに当たるようになっている。
【0022】
ヒートシンク3の後面には、当該後面に沿って斜め上方に延びる板状のベースプレート5が固定されている。このベースプレート5の上部には、ベースプレート6から前方に突出するブラケット6を介して、レンズ2の真後ろに位置するリフレクタ7が支持されている。リフレクタ7の反射面は車幅方向での略放物柱面状として形成されている。前記レンズ2はこのリフレクタ7に図示せぬ支持部材を介して支持されている。
【0023】
そして、ヒートシンク3の上面には導光体8が固定されている。この導光体8は、発光ダイオード4のチップ4aの上部から、当該チップ4aと直交する方向(つまりヒートシンク3の上面と直交する方向)に沿って延在し、レンズ2の後方で且つリフレクタ7に対応する位置に延びている。言い換えると、導光体8は、ヒートシンク3の傾斜に対応して斜め上方に延びた縦置き状態に配置されている。導光体8は透明樹脂材料製で且つ車幅方向に長い断面形状を有する板状であり、下端部に形成された一対の脚部9により、発光ダイオード4のチップ4aの上部を跨いだ状態で設置されている。
【0024】
導光体8の下面は発光ダイオード4の光を導入する入射面8aとなっており、この入射面8aは車幅方向全幅に亘って発光ダイオード4に向けて凸の湾曲面となっている。導光体8の上端は平坦な出射面8bになっている。この導光体8は、図4及び図5の概略図で誇張図示されている通り、正面視では上下で同一幅だが、側面視では上方へ向けて漸次減少している(より具体的には、後面が出射面8bに対して垂直な垂直面であり、前面が当該垂直面に対して傾斜(この例では5°)傾斜した斜面である)。
【0025】
次に作用を説明する。発光ダイオード4のチップ4aからの光は、導光体8の入射面8aから内部に導入される。この時、導光体8の入射面8aが発光ダイオード4に対して凸の湾曲面となっているため、光の入射効率は平面に比べて20%以上向上する。
【0026】
導光体8内に導入された光は、導光体8が車幅方向に長い断面形状の板状であるため、車幅方向では拡散するが、その厚さ方向では拡散せずに集光する。特に、導光体8の厚さが上方へ向けて漸次減少しているため、その厚さ方向での集光効率は高い。
【0027】
そして、導光体8を通過して上面の出射面8bから照射された光は、リフレクタ7で反射された後、レンズ2を透過して前方へ照射される。前述のように、導光体8が車幅方向に長い断面形状の板状であり、そして、リフレクタ7の反射面が車幅方向での略放物柱面状であるため、上下方向で拡散させない投射原理による配光パターンを得ることができる。
【0028】
特に、導光体8の厚さが上方へ向けて漸次減少していることにより、その厚さ方向での集光が、リフレクタ7で反射されることにより、上下方向で効率の高い集光となり、高速走行時における視認性の良い配光パターンが得られるようになる。
【0029】
そして、前照灯ユニット1としては、ヒートシンク3に固定した発光ダイオード4を、レンズ2の後方に置かず、レンズ2の下方に配置すると共に、発光ダイオード4の光を導光体8によりレンズ2の後方のリフレクタ7に導くようにしたため、前照灯ユニット1におけるレンズ2からの前後寸法Lを短縮することができる。
【0030】
以下、本実施形態の効果を列挙する。
【0031】
(1)本実施形態の車両用前照灯ユニットは、ヒートシンク3に固定された半導体発光素子4と、前記半導体発光素子4の光を一端の入射面8aから導入して他端の出射面8bから照射する導光体8と、前記導光体8の出射面8bから照射された光を車両前方に反射するリフレクタ7と、前記リフレクタ7の前方に配置され前記リフレクタ7から反射された光を車両前方へ照射する投影レンズ2と、を備え、前記半導体発光素子4が前記レンズ2の後方以外の周囲に配置されている。
【0032】
そのため、従来構造ではレンズとリフレクタとの間に配置されていた半導体発光素子およびヒートシンクが、それ以外の部位に配置されることで、レンズ2からリフレクタ7までの前後距離が短くなり、これにより、前後寸法Lを短縮できる。従って、フロントノーズの短い車体構造にも採用することができる。
【0033】
また、半導体発光素子4およびヒートシンク3が、放熱に不向きなレンズ2の後方以外の部位に配置されるため、放熱性能が向上する。放熱性能が向上すれば、発光ダイオード4の更なる高輝度化も可能となる。
【0034】
(2)また本実施形態の車両用前照灯ユニットは、ヒートシンク3に固定された半導体発光素子4が、レンズ2の下方に配置されている。ここで、レンズ2の下方は特に通気性が良い場所であるため、すなわち、車両走行時には、車両前方から後方に向けて車両用前照灯ユニットの灯室の下方を、空気が流れていくため、レンズ2の下方は特に通気性を確保しやすく放熱しやすい場所である。そのため、このような通気性の優れるレンズ2の下方にヒートシンク3を配置することで、さらに放熱性が向上する。
【0035】
(3)本実施形態の車両用前照灯ユニットは、導光体8が車幅方向に長い断面形状の板状である。そのため、 導光体8の形状により、半導体発光素子4の光を車幅方向へ拡散させ且つ上下方向へ集光させることができるため、レンズ2とリフレクタ7との前後距離が短い構造において、上下に拡散させない配向パターンを得ることができる。
【0036】
(4)また本実施形態の車両用前照灯ユニットは、リフレクタ7の反射面が光を車幅方向での略放物柱面状である。そのため、半導体発光素子4の光を車幅方向に拡散させ且つ上下方向に拡散させないずに反射できるため、レンズ2とリフレクタ7との前後距離が短い構造において、上下に拡散させずに車幅方向に拡散させた配向パターを得ることができる。
【0037】
(5)また本実施形態の車両用前照灯ユニットは、導光体8が車幅方向に長い断面形状を有した板状であり且つ導光体8の入射面8aに沿って複数(この例では3つ)の半導体発光素子4が配置されているため、複数の発光素子を、それぞれ1つの導光体8、リフレクタ7およびレンズ2で共用できるため、部品点数が削減され、製造コストが削減される。
【0038】
(6)また本実施形態の車両用前照灯ユニットは、導光体8が板状で、入射面8aが半導体発光素子4に向けて凸の湾曲面となっている。そのため、光の入射効率は平面にする場合に比べて向上する。湾曲面の形状によっては、20%以上も光の入射効率が向上する。
【0039】
(7)また本実施形態の車両用前照灯ユニットは、導光体8が板状で、入射面8aから出射面8bへ向けて漸次が厚さが減少している。そのため、光の上下方向での集光特性が更に向上し、高速走行時における視認性の良い配光パターンが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上の実施例では、発光ダイオード4及びヒートシンク3を、レンズ2の下方に配置する例を示したが、車体前部の通気構造によっては、それらをレンズ2の横方向に配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る前照灯ユニットを示す斜視図。
【図2】前照灯ユニットを示す断面図。
【図3】導光体を示す斜視図。
【図4】導光体の形状を表す概略正面図。
【図5】導光体の形状を表す概略側面図。
【符号の説明】
【0042】
1 前照灯ユニット
2 レンズ
3 ヒートシンク
4 発光ダイオード(半導体発光素子)
4a チップ
5 ベースプレート
6 ブラケット
7 リフレクタ
8 導光体
8a 入射面
8b 出射面
9 脚部
A 通気
L 前後寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクに固定された半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の光を一端の入射面から導入して他端の出射面から照射する導光体と、
前記導光体の出射面から照射された光を車両前方に反射するリフレクタと、
前記リフレクタの前方に配置され前記リフレクタから反射された光を車両前方へ照射する投影レンズと、
を備え、
前記半導体発光素子は前記レンズの後方以外の周囲に配置されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記ヒートシンクに固定された半導体発光素子が、前記レンズの下方に配置されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記導光体が車幅方向に長い断面形状の板状に形成されていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記リフレクタの反射面が光を車幅方向での略放物柱面状であることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記導光体が板状で、入射面が前記半導体発光素子に向けて凸の湾曲面となっていることを特徴とする車両用前照灯ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用前照灯ユニットであって、
前記導光体が板状で、入射面から出射面へ向けて漸次が厚さが減少していることを特徴とする車両用前照灯ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−311120(P2007−311120A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137898(P2006−137898)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】