説明

車両用平行軸式変速機の同期噛合装置

【課題】スリーブおよびギヤピースに互いのギヤ抜けを防止するテーパ面が形成された車両用平行軸式変速機の同期噛合装置において、テーパ面の形成に伴って形成されるガタに伴う、異音の発生やドライバビリティー低下を抑制することができる車両用平行軸式変速機の同期噛合装置を提供する。
【解決手段】外周歯46は、内周歯32の加速側テーパ面60および減速側テーパ面62の両方と接触可能な第1外周歯46aと、加速側テーパ面60と接触可能な第2外周歯46bとを、有し、第1外周歯46aの形状に基づいてガタL2が決定され、第2外周歯46bは、加速側テーパ面60と接触した際の接触面積が第1外周歯46aよりも大きくなるように形成される。このように構成されると、第1外周歯46aの形状に応じて回転方向のガタを低減することができるに伴い、ショックや異音の低減、およびドライバビリティーの向上が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用平行軸式変速機の同期噛合装置に係り、特に、変速や加減速時の異音の抑制やドライバビリティーの向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸に固設されたハブに相対回転不能且つ軸心方向への移動可能に設けられたスリーブと、前記回転軸と同軸心上に相対回転可能に支持され、前記スリーブに形成されている内周歯と噛合可能な外周歯が形成されていると共に、前記ハブ側に向かうほど外径が小さくなるテーパ状外周面が形成されているギヤピースと、前記スリーブの前記ギヤピースとの間に介装されて、前記スリーブが前記ギヤピース側へ移動する際に、前記スリーブの内周歯に当接することで同期完了するまで該スリーブの移動を阻止する外周歯を有するシンクロナイザリングとを、備える車両用平行軸式変速機の同期噛合装置がよく知られている。
【0003】
また、前記スリーブの内周歯および前記ギヤピースの外周歯には、互いの歯が噛み合った際にその抜けを防止するためのテーパ面がそれぞれ形成されている。図6に、従来のスリーブ200の内周歯およびギヤピース202の外周歯の形状および互いの歯の噛み合い時の相対位置(相対回転位置)を示す。図6に示すように、スリーブ200の内周歯およびギヤピース202の外周歯には、それぞれテーパ角θを有するテーパ面が形成されることで、互いの歯のギヤ抜けが防止される。上記テーパ面は、例えば特許文献1の歯車変速機の同期噛合装置や特許文献2の平行軸式変速機の同期機構(同期噛合装置)においても同様に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−190093号公報
【特許文献2】特開2003−28194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1および特許文献2をはじめとする同期噛合装置において、上記ギヤ抜けを防止するためのテーパ面が形成されると、回転方向に必ずガタL1が生じることとなる。例えば図6において、上記ガタL1は式(1)に基づいて、幾何学的に算出される。なお、Aがスリーブ200の内周歯とギヤピース202の外周歯との接触面の回転方向(図において左右方向に相当)と垂直な方向(図において上下方向)の長さであり、θがテーパ角を示している。
【0006】
L1=2×A・tanθ・・・・・(1)
【0007】
上記のようにガタL1が形成されると、例えば車両の加減速への切り替わり時において、スリーブ200の内周歯とギヤピース202の外周歯との相対回転位置が、実線で示す状態Aから破線で示す状態Bに移動する。このとき、ガタL1が大きいと、ショックや異音が発生し、また運転者のアクセル操作に対する応答性が鈍化してドライバビリティーが低下する問題があった。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、スリーブの内周歯およびギヤピースの外周歯に互いのギヤ抜けを防止するためのテーパ面が形成された車両用平行軸式変速機の同期噛合装置において、テーパ部の形成に伴って形成されるガタの増加に伴う、異音の発生やドライバビリティー低下を抑制することができる車両用平行軸式変速機の同期噛合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)回転軸に固設されたハブに相対回転不能且つ軸心方向への移動可能に設けられたスリーブと、前記回転軸と同軸心上に相対回転可能に支持されると共に、前記スリーブに形成されている内周歯と噛合可能な外周歯が形成されているギヤピースとを、有し、前記スリーブの内周歯および前記ギヤピースの外周歯には、互いの歯が噛み合った際の抜けを防止するための加速側テーパ面および減速側テーパ面がそれぞれ形成されている車両用平行軸式変速機の同期噛合装置であって、(b)前記スリーブの内周歯および前記ギヤピースの外周歯の一方を第1噛合歯とし、他方を第2噛合歯としたとき、(c)前記第1噛合歯は、(d)前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の両方と接触可能な第1の歯と、(e)前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の少なくとも一方と接触可能な第2の歯とを、有し、(f)前記第1の歯の形状に基づいて回転方向のガタが決定され、(g)前記第2の歯を前記第2噛合歯の加速側テーパ面または減速側テーパ面と接触させた場合の接触面積が、前記第1の歯を前記第2噛合歯と接触させた場合の接触面積よりも大きくなるように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる発明の車両用平行軸式変速機の同期噛合装置によれば、前記第1噛合歯は、前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の両方と接触可能な第1の歯と、前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の少なくとも一方と接触可能な第2の歯とを、有し、前記第1の歯の形状に基づいて回転方向のガタが決定され、前記第2の歯を前記第2噛合歯の加速側テーパ面または減速側テーパ面と接触させた場合の接触面積が、前記第1の歯を第2噛合歯と接触させた場合の接触面積よりも大きくなるように形成される。このように第1噛合歯が形成されると、前記第1の歯の形状に応じて回転方向のガタを低減することができるに伴い、ショックや異音の低減、およびドライバビリティーの向上が可能となる。また、第1の歯によってガタを低減するに際して、その背反として第1の歯の接触面積が低減されてトルク伝達量が低下する問題が生じるが、前記第2の歯によって接触面積が確保されるため、第1噛合歯の回転方向の歯厚を増加するなどすることなく、トルク伝達量の確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が適用された車両用平行軸式変速機の同期噛合クラッチ(同期噛合装置)を示す断面図である。
【図2】図1の同期噛合クラッチにおいて、ギヤピースの外周歯とスリーブの内周歯とを円周まわりに展開した展開図である。
【図3】図2の外周歯および内周歯の噛合と、比較対象としての従来の外周歯および内周歯の噛合とに基づく、ガタの低減量を示す図である。
【図4】図2に示すギヤピースの外周歯およびスリーブの内周歯の他の態様を示す図である。
【図5】図2に示すギヤピースの外周歯およびスリーブの内周歯のさらに他の態様を示す図である。
【図6】従来のスリーブの内周歯およびギヤの外周歯の形状および互いの歯の噛み合い時の相対位置(相対回転位置)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、好適には、前記第1の歯によってガタを低減する場合、前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面と接触する接触面積を小さくなるように第1の歯が形成される、具体的には、第1の歯と第2噛合歯との接触面において、回転方向と直交する成分の長さ(軸方向成分)を小さくするように第1の歯が形成されるものである。このようにすれば、第1の歯と第2噛合歯とが、接触した際に回転方向において重複する長さが短くなることからガタが低減される。なお、上記ガタは、テーパが形成されることで接触時において互いの歯が回転方向において重複する成分の長さに相当する。
【0013】
また、好適には、前記第2の歯に形成されるテーパ面の長さが、第1の歯に形成されるテーパ面の長さよりも長く形成され、テーパ面の先端部の回転方向の長さは、第1の歯が第2の歯よりも長く形成される。このように形成されると、第2の歯が前記第2噛合歯の加速側テーパ面または減速側テーパ面と接触した際の接触面積が、前記第1の歯が前記第2噛合歯と接触した場合の接触面積よりも大きくなる。
【0014】
また、好適には、前記第1噛合歯の前記第2の歯は、加速走行時において前記第2噛合歯の加速側テーパ面と接触するものとする。このようにすれば、加速走行時では接触面積が減速走行時よりも大きくなる。したがって、加速走行時は伝達されるトルクが大きくなるが、接触面積も同様に大きくなることで、そのトルク伝達が可能となる。一方、減速走行時では加速走行時に比べて伝達されるトルクが小さくなるので、接触面積が小さくなってもそのトルク伝達が可能となる。
【0015】
また、好適には、前記第1の歯と前記第2の歯とは、円周方向において交互に配置されるものである。このようにすれば、例えば減速走行時において第2の歯が第2噛合歯と接触しなくとも、第1の歯が第2噛合歯の減速側テーパ面に複数個接触するため、接触面積が確保され、減速走行時のトルク伝達量が確保される。
【0016】
また、好適には、前記第1噛合歯が前記ギアピースの外周歯であり、前記第2噛合歯が前記スリーブの内周歯とする。このようにすれば、ギヤピースの外周歯が第1の歯および第2の歯の異なる形状の2つの歯で構成されることで、ガタが低減されると共に、トルク伝達量が確保される。
【0017】
また、好適には、前記第2の歯が前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の両方で接触されるように、第2の歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面が異なる形状とされる。このようにすれば、前記第2の歯が加速走行時および減速走行時のいずれであっても第2噛合歯と接触するので、接触面積を効果的に確保することができ、トルク伝達量を確保することができる。
【0018】
また、好適には、第1噛合歯および第2噛合歯のチャンファ面が加速側と減速側とで異なる形状で形成される。このようにすれば、シフト操作時に発生する2段入りの力の発生が抑制され、滑らかなシフト操作が可能となる。
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明が適用された車両用平行軸式変速機10の同期噛合クラッチ(本発明の同期噛合装置に相当)12を示す断面図である。図1において、本実施例の車両用平行軸式変速機10は、平行な2軸間すなわち入力軸14(本発明の回転軸に相当)と図示しない出力軸との間に設けられたギヤ比が異なり且つ常時噛み合う複数対のギヤ対16と、それら複数対のギヤ対16に対応して設けられた複数の同期噛合クラッチ12とを備える所謂よく知られた常時噛合型平行軸式変速機である。この車両用平行軸式変速機10では、複数の同期噛合クラッチ12の係合状態が切り換えられて複数対のギヤ対16が択一的に動力伝達状態とされることによりギヤ段が切り換えられるようになっている。なお、図1は、上記複数対のギヤ対16のうち2対のギヤ対16とそれに対応して設けられた2つの同期噛合クラッチ12とを示す断面図である。
【0021】
上記2つの同期噛合クラッチ12は、それぞれ動力伝達を遮断する中立状態を示している。これら同期噛合クラッチ12は、共通の部材としてハブ18、スリーブ20、およびキー22を備え、また、個別にシンクロナイザリング24およびギヤピース26をそれぞれ備えて構成されている。なお、これらは基本的に同じ構成であるため、以下においては図1の左側の同期噛合クラッチ12に関して具体的に説明する。
【0022】
前記ハブ18は、入力軸14の外周に例えばスプライン嵌合により嵌め着けられることでその入力軸14に固設された円筒状部材である。そのハブ18の外周部には、周方向の所定の間隔で軸心Cに平行に設けられた複数の外周歯28と、周方向の所定の間隔で軸心Cに平行な方向に貫通して設けられた複数(本実施例では3つ)の溝30が設けられている。
【0023】
前記スリーブ20は、周方向の所定の間隔でハブ18の外周歯28に噛み合う内周歯32を有し、入力軸14に固設されたハブ18に軸心Cまわりの相対回転不能且つ軸方向の相対移動可能に装着された円筒状部材である。そして、スリーブ20は、図示しないシフトフォークを含むシフト操作装置のシフト操作に応じて、図1に示す動力伝達を遮断する中立位置と、ギヤピース26と噛み合うことで動力伝達状態とする動力伝達位置との間で軸方向に移動させられるようになっている。
【0024】
前記キー22は、軸心Cを中心とする径方向外側に突き出す凸部34を有し、ハブ18の溝30に嵌め入れられることによりハブ18に周方向の移動不能且つ軸心方向の移動可能に設けられた直方体状部材である。このキー22は、上記溝30の底面に軸心Cに向けて穿設された止まり穴36に収容されたスプリング38により径方向外側に付勢されており、スリーブ20の内周部に形成された凹部40に凸部34が嵌り込むことで、スリーブ20を軸方向におけるギヤピース26とギヤピース26との間に位置決めするようになっている。そして、キー22は、スリーブ20に前記シフト操作装置により軸方向の操作力が加わることによって、そのスリーブ20とともに軸方向に移動するようになっている。
【0025】
前記ギヤピース26は、入力軸14にニードルベアリング42を介して回転可能に支持された動力伝達歯車44のハブ18側に例えばスプライン嵌合により嵌め着けられた円筒状部材である。上記動力伝達歯車44は、ギヤ対16を構成する一方のギヤであって、図示しない出力軸に嵌め着けられて固定されたギヤ対16の他方のギヤに常時噛み合わされている。そして、上記ギヤピース26の外周部には、スリーブ20が前記シフト操作装置のシフト操作により前記動力伝達位置に位置させられた場合にそのスリーブ20の内周歯32と噛み合う外周歯46が設けられており、その外周歯46の内周側すなわちギヤピース26の内周部には、その内周部から軸心方向のハブ18側に向けて突設され、ハブ18に向かうほど外径が小さくなるテーパ状外周面48が形成された円筒状凸部50が設けられている。ギヤピース26は、動力伝達歯車44と一体的に回転駆動される。
【0026】
前記シンクロナイザリング24は、スリーブ20の内周歯32と係合可能な外周歯52と、ギヤピース26のテーパ状外周面48と面接触可能なテーパ状内周面54とを有し、ハブ18とギヤピース20との間におけるテーパ状外周面48の外方においてギヤピース26に対して相対回転可能且つ軸方向の移動可能に配設された円環状部材である。このシンクロナイザリング24のハブ18側の端部には、キー22の軸方向の一端部が嵌め入れられたキー溝56が設けられており、シンクロナイザリング24は、キー22、ハブ18、およびスリーブ20に対して周方向に所定角度の相対回転可能に設けられている。具体的には、シンクロナイザリング24は、シンクロナイザリング24とギヤピース26とが非同期状態である場合に、外周歯52が内周歯32に当接することでスリーブ20の外周歯46側への移動を阻止する阻止位置と、シンクロナイザリング24とギヤピース26とが同期状態である場合にスリーブ20の外周歯46側への移動を許容する許容位置との間で相対回転可能に設けられている。
【0027】
また、シンクロナイザリング24は、スリーブ20が前記シフト操作装置により軸方向の外周歯46側に移動させられることによって、そのスリーブ20と共に軸方向に移動させられるキー22により軸方向のギヤピース26側へ押圧されるようになっている。そして、シンクロナイザリング24のテーパ状内周面54は、上記押圧によってギヤピース26のテーパ状外周面48にテーパ嵌合されるようになっている。このとき、シンクロナイザリング24とギヤピース26とが非同期状態である場合には、テーパ状内周面54とテーパ状外周面48とが摩擦係合することでスリーブ20とギヤピース26の相互の回転速度差が減少させられるようになっている。
【0028】
このように構成された同期噛合クラッチ12において、スリーブ20に軸方向の操作力が加えられたときには、そのスリーブ20の回転とギヤピース26の回転とが同期したときにシンクロナイザリング24によりそのスリーブ20の軸心向の移動が許容され、スリーブ20の内周歯32とギヤピース26の外周歯46との噛み合いが行われるようになっている。これにより、入力軸14の回転がハブ18、スリーブ20、ギヤピース26、およびギヤ対16を介して前記出力軸に伝達されるようになっている。
【0029】
具体的には、シフト操作にしたがってスリーブ20が軸方向の外周歯46側に移動させられると、先ず、キー22がシンクロナイザリング24に当接させられてそのシンクロナイザリング24がギヤピース26側へ押圧されることによって、シンクロナイザリング24とギヤピース26とがテーパ嵌合させられる。このとき、スリーブ20とギヤピース26との相対回転速度差がある場合には、シンクロナイザリング24のテーパ状内周面54とギヤピース26のテーパ状外周面48との間に発生する摩擦力によってシンクロナイザリング24とギヤピース26との回転が次第に同期させられる。この同期までの期間は、シンクロナイザリング24の外周歯52がスリーブ20の内周歯32に当接することによって、スリーブ20の更なる軸方向の移動が阻止される。
【0030】
そして、上記スリーブ20とギヤピース26との相対回転速度差がなくなると、前記摩擦力が減少して内周歯32に対する外周歯52の阻止力が弱くなり、スリーブ20のギヤピース26側への更なる軸方向への移動が許容される。そして、スリーブ20に加えられる外周歯46側への操作力に従って、スプリング38の付勢力に抗してキー22の凸部34が凹部40から抜け出すと、スリーブ20が外周歯46に向けて移動させられてスリーブ20の内周歯32とギヤピース26の外周歯46とが互いに噛み合わされて同期噛合クラッチ12が係合状態(動力伝達状態)とされる。
【0031】
図2に、図1の同期噛合クラッチ12において、ギヤピース26の外周歯46(本発明の第1噛合歯に相当)とスリーブ20の内周歯32(本発明の第2噛合歯に相当)とを、円周まわりに展開した展開図を示す。図2においては、運転者によるシフト操作に基づいてスリーブ20がギヤピース26側(図2において上側)に移動させられることで、外周歯46と内周歯32とが噛み合った状態が示されている。また、ギヤピース26およびスリーブ20が図2において左から右方向へ移動(回転)する場合に車両が前進するものとし、実線で示すギヤピース26の外周歯46が加速走行時の状態を示しており、破線で示すギヤピース26の外周歯46が減速走行時の状態を示している。図2に示すように、噛合中において外周歯46および内周歯32が互いに接触する面には、それぞれ互いのギヤ抜け(噛合の抜け)を防止するための所定のテーパ角θを有するテーパ面が形成されている。
【0032】
具体的に説明すると、スリーブ20の内周歯32には、回転方向両側(図2において左右方向)に加速側テーパ面60および減速側テーパ面62がそれぞれ形成されている。また、ギヤピース26の外周歯46にも同様に、回転方向(周方向)の両側(図2において左右方向)に加速側テーパ面(64a、64b)および減速側テーパ面(66a、66b)がそれぞれ形成されている。なお、ギヤピース26の外周歯46において、加速側テーパ面および減速側テーパ面にそれぞれ異なる2つの符号を付したのは、後述するように、外周歯46が異なる2つの形状を有する外周歯(第1外周歯46a、第2外周歯46b)で構成されているためである。
【0033】
例えば、加速走行時では、実線に示すように、内周歯32(スリーブ20)の加速側テーパ面60および外周歯46(ギヤピース26)の加速側テーパ面(64a、64b)が互いに押圧しあうことで、内周歯32側(スリーブ20側)から外周歯46(ギヤピース26側)へトルクが伝達される。一方、減速走行時では、外周歯46(ギヤピース26)が破線で示すように移動され、内周歯32(スリーブ20)の減速側テーパ面62および外周歯46(ギヤピース26)の減速側テーパ面66aが互いに押圧しあうことで、外周歯46側(ギヤピース26側)から内周歯32(スリーブ20側)へトルクが伝達される。そして、互いに接触しあう加速側テーパ面(60、64a、64b)、または減速側テーパ面(62、66a)が押圧する際に、テーパが形成されているので、ギヤ抜け(噛合の抜け)が防止される。
【0034】
ここで、上記テーパ面が形成されると、ギヤ抜けが防止される反面、回転方向(図2において左右方向)に必ずガタ(回転方向ガタ)が形成される。そして、上記ガタの分だけ、外周歯46は、内周歯32の間を相対的に移動可能(相対回転可能)となる。したがって、ガタが大きい場合、例えば加速走行から減速走行に切り替わると、外周歯46が内周歯32の加速側テーパ面60と接触した状態から減速側テーパ面62と接触した状態に切り替わるが、このときの外周歯46の移動量(回転量)が大きくなるに伴い、ショックや異音が発生し、また、アクセル操作に対するレスポンスが鈍化してドライバビリティーが低下する問題があった。
【0035】
これに対して、本実施例では、図2に示すように、ギヤピース26の外周歯46が異なる2つの外周歯で形成され、円周上において交互に配置されている。具体的には、外周歯46は、内周歯32の加速側テーパ面60および減速側テーパ面62の両方と接触可能な第1外周歯46a(本発明の第1の歯に相当)、および内周歯32の加速側テーパ面60と接触可能な第2外周歯46b(本発明の第2の歯に相当)の2つの外周歯で構成されており、円周上に交互に配置されている。そして、第1外周歯46aに基づいてガタが決定され、その形状に基づいてガタを低減することが可能となる。そして、ガタが低減されるに伴い、ショック、異音の発生が抑制され、ドライバビリティが向上する。以下、上記ガタの低減について説明する。
【0036】
図2に示すように、第1外周歯46aと第2外周歯46bとの回転方向(周方向)の最大幅(最大寸法)は共に等しく形成されており、その最大寸法の地点から共にテーパ角θとするテーパ面が形成されている。そして、第2外周歯46bに形成されるテーパ面(加速側テーパ面64b、減速側テーパ面66b)の長さは、第1外周歯46aに形成されるテーパ面(加速側テーパ面64a、減速側テーパ面66a)の長さよりも長く形成されている。これに伴い、互いのテーパ面の先端部の回転方向(周方向)の長さ(幅径)は、第1外周歯46aが第2外周歯46bよりも長く形成される。また、第1外周歯46aおよび第2外周歯46bの回転方向と直交する成分(図2において上下方向)の長さは、略等しく形成されている。上記のように形成されると、第2外周歯46bが例えば内周歯32の加速側テーパ面62と接触した際の接触面積が、第1外周歯46aが加速側テーパ面62と接触した場合の接触面積よりも大きくなる。
【0037】
ギヤピース26の第1外周歯46aは、スリーブ20およびギヤピース26の噛合時のガタを決定する形状を有している。すなわち、第1外周歯46aの形状に基づいてガタが決定される。第1外周歯46aの加速側テーパ面64aに基づくガタは、内周歯32の加速側テーパ面60と第1外周歯46aの加速側テーパ面64aとの接触面において、回転方向とは直交する成分(軸方向成分)の長さA2と、テーパ角θに基づいて算出される。なお、本実施例では、加速側テーパ面および減速側テーパ面が形成されるため、ガタは、加速側テーパ面および減速側テーパ面のそれぞれのテーパ面に基づいて形成されるガタの総和となる。これに対して、本実施例ではテーパ角θは加速側、減速側共に同じ角度に設定されているので、減速側テーパ面66aに基づくガタも加速側テーパ面64aに基づくガタと同じ値となる。したがって、本実施例では、加速側テーパ面によって形成されるガタを算出し、算出されたガタを2倍することで、減速側テーパ面を含んだ実際のガタを算出する。
【0038】
そして、第1外周歯46aのガタL2は、式(2)で算出される。なお、長さA2は、図2に示すように、内周歯32の加速側テーパ面60と第1外周歯46aの加速側テーパ面64aとが接触する接触面において、回転方向と直交する成分(軸方向成分)の長さを示している。式(2)より、ガタL2は、加速側テーパ面同士(60、64a)および減速側テーパ面同士(62、66a)が接触したときに重複される回転方向の長さに相当する。
【0039】
L2=2×A2・tanθ・・・・(2)
L1=2×A1・tanθ・・・・(3)
【0040】
そして、式(2)によって算出されたガタL2が内周歯32(スリーブ20)と外周歯46(ギヤピース26)とのガタとなる。ところで、第2外周歯46bにおいて必要とされるガタL1を算出する場合、ガタL1は式(3)で算出される。なお、A1は、図2に示すように、内周歯32の加速側テーパ面60と第2外周歯46bの加速側テーパ面64bとが接触した際の接触面において、回転方向と直交する成分(軸方向成分)の長さを示している。ここで、上記長さA1およびA2を比較すると、図2より、A1>A2であるため、ガタL1はガタL2よりも大きくなる(L1>L2)。これに対して、第1外周歯46aおよび第2外周歯46bは、相対回転不能(一体回転)であるため、外周歯46および内周歯32のガタは、結果的に小さい側であるガタL2となる。
【0041】
例えば、加速走行においては、実線に示すように、内周歯32のの加速側テーパ面60および外周歯46の加速側テーパ面(64a、64b)が押圧し合う状態となる。この場合、第1外周歯46aおよび第2外周歯46b共に、スリーブ20の内周歯32と接触して押圧し合う状態となり、接触面積が大きくなる。一方、減速走行時においては、外周歯46(46a、46b)は破線に示す状態となる。具体的には、破線で示すように、第1外周歯46aと内周歯32とが、互いの減速側テーパ面(62、66a)で押圧し合う一方、第2外周歯46bの減速側テーパ面66bは、内周歯32の減速側テーパ面62と接触されないので、接触面積が加速走行時に比べて小さくなる。すなわち、第2外周歯46bの内周歯32間の相対移動(相対回転)可能な距離は、第1外周歯46aに基づくガタL2と同様となるため、そのガタL2に基づいて破線で示す位置までしか回転(移動)されない。
【0042】
したがって、本実施例では、トルクが大きくなる加速走行時に第1外周歯46aおよび第2外周歯46bの加速側テーパ面(64a、64b)と内周歯32の加速側テーパ面60とが押圧し合う一方、加速走行時よりも伝達トルクが小さくなる減速走行時では、第1外周歯46aの減速側テーパ面66aと内周歯32の減速側テーパ面62とが押圧し合うように設計される。このように設計されると、加速走行時においては、第1外周歯46aおよび第2外周歯46bの両加速側テーパ面(64a、64b)が内周歯32の加速側テーパ面60と接触することで接触面積が大きくなるに伴い、加速走行時の大きなトルクが伝達可能となる。一方、減速走行時においては、第1外周歯46aの減速側テーパ面66aと内周歯32の減速側テーパ面62のみが接触し、第2外周歯46bの減速側テーパ面66bが接触しないので、接触面積が加速走行時よりも小さくなる。しかしながら、減速走行時は伝達されるトルクが加速走行時よりも小さくなることから、接触面積が小さくなっても減速走行時のトルクを伝達することが可能になる。
【0043】
図3に、図2の外周歯46および内周歯32の噛合(図3において上側)と、比較対象としての従来の外周歯102および内周歯100の噛合(図3において下側)とに、基づくガタの低減量を示す。なお、図3に示す比較対象では、外周歯102を本実施例の第2外周歯46bと同様の形状とし、内周歯100を本実施例の内周歯32と同様の形状とした。従来においては、外周歯102は第2外周歯46bと全て同様の形状であるため、従来のガタL3は、図3の下側の実線および破線で示す外周歯102の移動量(回転量)となる。具体的には、外周歯102は第2外周歯46bと形状および接触面積が同様であることから、前述した式(2)と同様(L3=L1)となる。これに対して、本実施例では、ガタL2となることから、ガタが低減される。具体的なガタの低減量ΔLは、式(4)によって算出される。
【0044】
ΔL=L3−L2=L1−L2=2×α・tanθ・・・・・(4)
【0045】
ここで、αは、第1外周歯46aと外周歯102との接触面積の差に相当するものであり、具体的には、外周歯102と内周歯100との接触面における回転方向と垂直する方向の長さ(A1)と第1外周歯46aと内周歯32との接触面における回転方向と垂直する方向の長さ(A2)の差(α=A1−A2)となる。したがって、ガタL2を低減するため、第1外周歯46aの形状が、第1外周歯46aの加速側テーパ面64aが内周歯32の加速側テーパ面60と接触した際の長さA2が短くなるように形成される。言い換えると、第1外周歯46aの加速側テーパ面64aと内周歯32の加速テーパ60面との接触面積が小さくなるように形成される。なお、減速走行時に減速側テーパ面62に接触される第1外周歯46aの減速側テーパ面66aも同様に形成される。このように第1外周歯46aが形成されると、ガタの低減量ΔLは大きくなる、すなわちガタL2が小さくなる。
【0046】
ところで、上記のように接触面積を小さくすることでガタが小さくなることから、従来においても接触面積が小さくなるように設計されると、ガタが小さくなることになるが、その反面、伝達可能なトルクも同様に小さくなってしまうために、不具合が生じる可能性がある。これに対して、上述したように、加速走行時にトルクが大きくなる一方、減速走行時にトルクが小さくなることを考慮して、加速走行時の外周歯46の加速側テーパ面(64a、64b)および内周歯32の加速側テーパ面60の接触面積を大きくし、減速走行時の外周歯46の減速側テーパ面66aおよび内周歯32の減速側テーパ面の接触面積を小さくすることで、加速走行時および減速走行時のいずれにおいても十分なトルク伝達が可能な状態で、ガタが低減されることとなる。
【0047】
すなわち、加速走行時では、内周歯32の加速側テーパ面62と第1外周歯46aの加速側テーパ面64aおよび第2外周歯64bの加速側テーパ面64bとが接触させられるので、接触面積が大きくなる。さらに、第2外周歯46bの加速側テーパ面64bと内周歯32の加速側テーパ面62との接触面積が、第1外周歯46aの加速側テーパ面64aと内周歯32の加速側テーパ面62との接触面積よりも大きくなるように、第2外周歯46bが形成されているので、加速走行時の接触面積がさらに増加する。また、減速走行時は、上述したように、内周歯32の減速側テーパ面62と、第1外周歯46aの減速側テーパ面66aのみによる接触面積でトルクを受けることとなるが、第1外周歯46aと第2外周歯46bとは円周方向に交互に配置されているので、減速走行時に第2外周歯46bが内周歯32と接触しなくとも、複数個の第1外周歯46aが内周歯32と接触するので、接触面積が確保され、減速走行時のトルク伝達が可能となる。
【0048】
また、図2の第2外周歯46bにおいては、減速走行時に減速側テーパ面66bが内周歯32の減速側テーパ面62と接触しない設定であったが、図4に示すように、減速走行時であってもギヤピース26の第2外周歯70(図2と形状が異なるので、符号を70に変更)が内周歯32と接触可能に構成することもできる。なお、第1外周歯46aは図2と同様の寸法・形状とする。
【0049】
図4に示すように、第2外周歯70の加速側テーパ面72は、図2に示す第2外周歯46bの加速側テーパ面64bと同様であるが、減速側においては、回転方向に対して垂直な減速側面74に形成されている。すなわち、第2外周歯70の加速および減速時に接触される面が異なる形状とされている。また、これに対応して、その減速側面74と接触する側の内周歯32bには、回転方向と垂直な減速側面76が形成されている。そして、第1外周歯46aと第2外周歯70とが回転方向に交互に配置されるに伴い、内周歯32および内周歯32bも同様に交互に配置されている。
【0050】
上記のように構成される場合も同様に、第1外周歯46aに基づいてガタL2が決定され、従来よりもガタが低減される。また、減速走行時であっても、第1外周歯46aの減速側テーパ面66aと内周歯32の減速側テーパ面62が接触すると共に、第2外周歯70の減速側面74と内周歯32bの減速側面76とが接触されるように、ガタL2に基づいて減速側面74、76が形成されているので、加速走行時おいび減速走行時のいずれであっても接触面積が確保される。
【0051】
図5は、図4のように形成される内周歯(32、32b)および外周歯(46a、70)において、さらにシフト操作時の2段入りの力や確立を低減して、滑らかにシフトされるように、内周歯(32、32b)のチャンファ面および外周歯(46a、70)のチャンファ面において、加速走行側と減速走行側とで、それぞれ異なる形状としたものである。
【0052】
図5に示すように、内周歯32のチャンファ面80とチャンファ面82とが異なる形状に形成され、内周歯32bのチャンファ面84とチャンファ面86とが異なる形状で形成されている。また、第1外周歯46aのチャンファ面88とチャンファ面90とが異なる形状で形成され、第2外周歯70のチャンファ面92およびチャンファ面94が異なる形状で形成されている。このようにチャンファ面が加速走行側と減速走行側とで異なる形状に形成されることで、シフト操作時の2段入りの力が低減され、滑らかなシフトが可能となる。
【0053】
上述のように、本実施例によれば、ギヤピース26の外周歯46は、スリーブ20の内周歯32の加速側テーパ面60および減速側テーパ面62の両方と接触可能な第1外周歯46aと、内周歯32の加速側テーパ面60と接触可能な第2外周歯46bとを、有し、第1外周歯46aの形状に基づいてガタL2が決定され、第2外周歯46bは、内周歯32の加速側テーパ面60と接触した際の接触面積が第1外周歯46aよりも大きくなるように形成される。このように外周歯46が形成されると、第1外周歯46aの形状に応じて回転方向のガタを低減することができるに伴い、ショックや異音の低減、およびドライバビリティーの向上が可能となる。また、第1外周歯46aによってガタを低減するに際して、その背反として第1外周歯46aの接触面積が低減されてトルク伝達量が低下する問題が生じるが、第2外周歯46bによって接触面積が確保されるため、外周歯46の回転方向の歯厚を増加するなどすることなく、トルク伝達量の確保が可能となる。
【0054】
また、本実施例によれば、第1外周歯46aによってガタを低減する場合、内周歯32の加速側テーパ面60および減速側テーパ面62と接触する接触面積を小さくなるように第1外周歯46aが形成される、具体的には、第1外周歯46aと内周歯32との接触面において、回転方向と直交する成分の長さ(軸方向成分)を小さくするように第1外周歯46aが形成されるものである。このようにすれば、第1外周歯46aと内周歯とが、接触した際に回転方向において重複する長さが短くなることからガタが低減される。なお、上記ガタは、テーパ面が形成されることで接触時において互いの歯が回転方向において重複する成分の長さに相当する。
【0055】
また、本実施例によれば、外周歯46の第2外周歯46bは、加速走行時において内周歯32の加速側テーパ面60と接触するものとする。このようにすれば、加速走行時では接触面積が減速走行時よりも大きくなる。したがって、加速走行時は伝達されるトルクが大きくなるが、接触面積も同様に大きくなることで、そのトルク伝達が可能となる。一方、減速走行時では加速走行時に比べて伝達されるトルクが小さくなるので、接触面積が小さくなってもそのトルク伝達が可能となる。
【0056】
また、本実施例によれば、第1外周歯46aと第2外周歯46bとは、円周方向において交互に配置されるものである。このようにすれば、例えば減速走行時において第2外周歯46bが内周歯32と接触しなくとも、第1外周歯46aが内周歯32の減速側テーパ面62に複数個接触するため、接触面積が確保され、減速走行時のトルク伝達量が確保される。
【0057】
また、本実施例によれば、第2外周歯70が内周歯32の加速側テーパ面60および減速側面76の両方で接触されるように、第2外周歯70の加速側テーパ面72および減速側面74が異なる形状とされる。このようにすれば、第2外周歯70が加速走行時および減速走行時のいずれであっても内周歯32と接触するので、接触面積を効果的に確保することができ、トルク伝達量を確保することができる。
【0058】
また、本実施例によれば、外周歯46a、70および内周歯32、32bのチャンファ面が加速側と減速側とで異なる形状で形成される。このようにすれば、シフト操作時に発生する2段入りの力の発生が抑制され、滑らかなシフト操作が可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0060】
例えば、前述の実施例では、ギヤピース26の外周歯46が異なる2つの外周歯(46a、46b)から構成されるものであったが、スリーブ20の内周歯32側を異なる2つの内周歯から構成するものであっても構わない。すなわち、スリーブ20の形状とギヤピース26の形状を逆にして実施して構わない。このように構成されても前述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、前述の実施例では、加速走行時に接触面積が大きくなるように第1外周歯46aおよび第2外周歯46bが形成されていたが、必ずしも加速走行時に接触面積が大きくなるように限定する必要はなく、減速走行時において接触面積が大きくなるように第1外周歯46aおよび第2外周歯46bが形成されても構わない。
【0062】
また、前述の実施例では、減速側テーパ面および加速側テーパ面のテーパ角は共にテーパ角θとしたが、減速側テーパ面と加速側テーパ面とで異なるテーパ角を有するものであっても構わない。
【0063】
また、前述の実施例では、ギヤピース26と動力伝達歯車44とが別体で構成
されているが、一体成形されても構わない。
【0064】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
10:車両用平行軸式変速機
12:同期噛合クラッチ(同期噛合装置)
14:入力軸(回転軸)
18:ハブ
20:スリーブ
26:ギヤピース
32:内周歯(第2噛合歯)
46:外周歯(第1噛合歯)
46a:第1外周歯(第1の歯)
46b:第2外周歯(第2の歯)
60:加速側テーパ面
62:減速側テーパ面
64a:加速側テーパ面
64b:加速側テーパ面
66a:減速側テーパ面
66b:減速側テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固設されたハブに相対回転不能且つ軸心方向への移動可能に設けられたスリーブと、前記回転軸と同軸心上に相対回転可能に支持されると共に、前記スリーブに形成されている内周歯と噛合可能な外周歯が形成されているギヤピースとを、有し、前記スリーブの内周歯および前記ギヤピースの外周歯には、互いの歯が噛み合った際の抜けを防止するための加速側テーパ面および減速側テーパ面がそれぞれ形成されている車両用平行軸式変速機の同期噛合装置であって、
前記スリーブの内周歯および前記ギヤピースの外周歯の一方を第1噛合歯とし、他方を第2噛合歯としたとき、
前記第1噛合歯は、
前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の両方と接触可能な第1の歯と、
前記第2噛合歯の加速側テーパ面および減速側テーパ面の少なくとも一方と接触可能な第2の歯とを、有し、
前記第1の歯の形状に基づいて回転方向のガタが決定され、
前記第2の歯を前記第2噛合歯の加速側テーパ面または減速側テーパ面と接触させた場合の接触面積が、前記第1の歯を前記第2噛合歯と接触させた場合の接触面積よりも大きくなるように形成されることを特徴とする車両用平行軸式変速機の同期噛合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17362(P2011−17362A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161148(P2009−161148)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】